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特許5959320荷電粒子ビームの軸合わせ方法および荷電粒子ビーム装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959320
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】荷電粒子ビームの軸合わせ方法および荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20160719BHJP
   H01J 37/153 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H01J37/04 B
   H01J37/153 B
【請求項の数】4
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-124396(P2012-124396)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-251104(P2013-251104A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】山田 貢
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−047332(JP,A)
【文献】 特開2010−218912(JP,A)
【文献】 特開平10−012171(JP,A)
【文献】 特開2002−352758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/00−27/26、37/00−37/18、
37/21−37/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、対向するコイル面の磁極が第1極である第1コイルおよび第2コイルからなる第1のコイル対と、前記第1のコイル対とは異なる方向から前記荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、対向するコイル面の磁極が前記第1極と異なる第2極である第3コイルおよび第4コイルからなる第2のコイル対と、を有する非点収差補正レンズを備える荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法であって、
前記第1〜第4コイルに流れる電流を第1〜第6条件まで変えて、第1〜第6画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記第1〜第6画像データに基づいて、前記非点収差補正レンズを通過する前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための前記第1〜第4コイルの各電流値を算出する演算工程と、
を含み、
前記第1〜第4コイルに流れる電流Jは、非点収差を補正するための第1成分Iと、前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第2成分iと、の和J=I+iで表され、
前記第1条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しい所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第2条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しく、かつ、前記所与の電流値と異なる電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第3条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第3コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第4条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第3条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第5条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第1コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第6条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第5条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記演算工程では、
前記第1画像データの画像と、前記第2画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データの画像と、前記第4画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データの画像と、前記第6画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルに基づいて、前記第1〜第4コイルの各前記第2成分iを算出する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項2】
荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、流れる電流の向きが互いに逆向きである第1コイルおよび第2コイルからなる第1のコイル対と、前記第1のコイル対とは異なる方向から前記荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、流れる電流の向きが互いに逆向きである第3コイルおよび第4コイルからなる第2のコイル対と、を有する非点収差補正レンズを備える荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法であって、
前記第1〜第4コイルに流れる電流を第1〜第6条件まで変えて、第1〜第6画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記第1〜第6画像データに基づいて、前記非点収差補正レンズを通過する前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための前記第1〜第4コイルの各電流値を算出する演算工程と、
を含み、
前記第1〜第4コイルに流れる電流Jは、非点収差を補正するための第1成分Iと、前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第2成分iと、の和J=I+iで表され、
前記第1条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しい所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第2条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しく、かつ、前記所与の電流値と異なる電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第3条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第3コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第4条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第3条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第5条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第1コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第6条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第5条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記演算工程では、
前記第1画像データの画像と、前記第2画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データの画像と、前記第4画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データの画像と、前記第6画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルに基づいて、前記第1〜第4コイルの各前記第2成分iを算出する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項3】
荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、対向するコイル面の磁極が第1極である第
1コイルおよび第2コイルからなる第1のコイル対と、前記第1のコイル対とは異なる方向から前記荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、対向するコイル面の磁極が前記第1極と異なる第2極である第3コイルおよび第4コイルからなる第2のコイル対と、を有する非点収差補正レンズを備える荷電粒子ビーム装置であって、
前記第1〜第4コイルに流れる電流を第1〜第6条件まで変えて、第1〜第6画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記第1〜第6画像データに基づいて、前記非点収差補正レンズを通過する前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための前記第1〜第4コイルの各電流値を算出する演算手段と、
を含み、
前記第1〜第4コイルに流れる電流Jは、非点収差を補正するための第1成分Iと、前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第2成分iと、の和J=I+iで表され、
前記第1条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しい所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第2条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しく、かつ、前記所与の電流値と異なる電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第3条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第3コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第4条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第3条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第5条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第1コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第6条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第5条件での前記第1〜第4
コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記演算手段は、
前記第1画像データの画像と、前記第2画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データの画像と、前記第4画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データの画像と、前記第6画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルに基づいて、前記第1〜第4コイルの各前記第2成分iを算出する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、流れる電流の向きが互いに逆向きである第1コイルおよび第2コイルからなる第1のコイル対と、前記第1のコイル対とは異なる方向から前記荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、流れる電流の向きが互いに逆向きである第3コイルおよび第4コイルからなる第2のコイル対と、を有する非点収差補正レンズを備える荷電粒子ビーム装置であって、
前記第1〜第4コイルに流れる電流を第1〜第6条件まで変えて、第1〜第6画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記第1〜第6画像データに基づいて、前記非点収差補正レンズを通過する前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための前記第1〜第4コイルの各電流値を算出する演算手段と、
を含み、
前記第1〜第4コイルに流れる電流Jは、非点収差を補正するための第1成分Iと、前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第2成分iと、の和J=I+iで表され、
前記第1条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しい所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第2条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しく、かつ、前記所与の電流値と異なる電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第3条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第3コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第4条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第3条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第5条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第1コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第6条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第5条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記演算手段は、
前記第1画像データの画像と、前記第2画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データの画像と、前記第4画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データの画像と、前記第6画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルに基づいて、前記第1〜第4コイルの各前記第2成分iを算出する、荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームの軸合わせ方法および荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物、材料、半導体などの微細構造を観察、測定する走査型電子顕微鏡や半導体素子回路パターンの測長用走査型電子顕微鏡等の荷電粒子ビーム装置が知られている。
【0003】
荷電粒子ビーム装置では、荷電粒子ビーム(例えば電子ビーム)の形状が良好な円形であることが必要とされる。荷電粒子ビーム装置では、荷電粒子ビームに非点収差補正を行うことで、荷電粒子ビームの形状を補正している。
【0004】
例えば、特許文献1には、電子ビームを挟んで対向する対向コイルによって、非点収差補正を行うことが開示されている。ここで、対向するコイルの電子ビームへの偏向力のバランスが一致していないと、非点収差補正を行う際に、電子ビームが光軸中心から光軸外に偏向されてしまう。この電子ビームの偏向は観察する視野の移動となり、非点収差調整時の観察操作性を損なう要因になる。そのため、対向するコイルの電流値を可変しても、電子ビームへの偏向力がバランスするようにコイル電流を調整する必要がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、対向するコイルの電流値を可変しても電子ビームへの偏向力がバランスするように、非点収差補正を行う前に、磁界強度が零となる位置と電子ビームの位置とを一致させるセンタリング調整(電子ビームの軸合わせ)を行うことが記載されている。具体的には、特許文献1には、対向コイルに流される電流比率を逐次変化させ、逐次変化ごとに電子ビームを走査して位置検出マークのマーク位置情報および対向コイルに流される電流を変化させた場合のマーク位置変化情報を検出し、マーク位置変化情報が最小となる電流比率をセンタリング調整の最適値とする、電子ビームの軸合わせ方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−180158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の電子ビームの軸合わせ方法では、センタリング調整が最適値に至るためには、電子ビームの走査、および検出を繰り返し行わなければならず、センタリング調整に時間がかかるなど、容易に電子ビームの軸合わせを行うことができない場合がある。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる荷電粒子ビームの軸合わせ方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる荷電粒子ビーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る荷電粒子ビーム装置の軸合わせ方法は、
荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、対向するコイル面の磁極が第1極である第1コイルおよび第2コイルからなる第1のコイル対と、前記第1のコイル対とは異なる方向から前記荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、対向するコイル面の磁極が前記第1極と異なる第2極である第3コイルおよび第4コイルからなる第2のコイル対と、を有する非点収差補正レンズを備える荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法であって、
前記第1〜第4コイルに流れる電流を第1〜第6条件まで変えて、第1〜第6画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記第1〜第6画像データに基づいて、前記非点収差補正レンズを通過する前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための前記第1〜第4コイルの各電流値を算出する演算工程と、
を含み、
前記第1〜第4コイルに流れる電流Jは、非点収差を補正するための第1成分Iと、前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第2成分iと、の和J=I+iで表され、
前記第1条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しい所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい
電流値+i,−iであり、
前記第2条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しく、かつ、前記所与の電流値と異なる電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第3条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第3コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第4条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第3条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第5条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第1コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第6条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第5条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記演算工程では、
前記第1画像データの画像と、前記第2画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データの画像と、前記第4画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データの画像と、前記第6画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルに基づいて、前記第1〜第4コイルの各前記第2成分iを算出する
【0011】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、6つの画像データから、荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第1〜第4コイルの各電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【0012】
(2)本発明に係る荷電粒子ビーム装置の軸合わせ方法は、
荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、流れる電流の向きが互いに逆向きである第1コイルおよび第2コイルからなる第1のコイル対と、前記第1のコイル対とは異なる方向から前記荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、流れる電流の向きが互いに逆向きである第3コイルおよび第4コイルからなる第2のコイル対と、を有する非点収差補正レンズを備える荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法であって、
前記第1〜第4コイルに流れる電流を第1〜第6条件まで変えて、第1〜第6画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記第1〜第6画像データに基づいて、前記非点収差補正レンズを通過する前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための前記第1〜第4コイルの各電流値を算出する演算工程と、
を含み、
前記第1〜第4コイルに流れる電流Jは、非点収差を補正するための第1成分Iと、前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第2成分iと、の和J=I+iで表され、
前記第1条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しい所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第2条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しく、かつ、前記所与の電流値と異なる電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第3条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第3コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第4条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第3条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第5条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第1コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第6条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第
1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第5条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記演算工程では、
前記第1画像データの画像と、前記第2画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データの画像と、前記第4画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データの画像と、前記第6画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルに基づいて、前記第1〜第4コイルの各前記第2成分iを算出する
【0013】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、6つの画像データから、荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第1〜第4コイルの各電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【0015】
)本発明に係る荷電粒子ビーム装置は、
荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、対向するコイル面の磁極が第1極である第1コイルおよび第2コイルからなる第1のコイル対と、前記第1のコイル対とは異なる方向から前記荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、対向するコイル面の磁極が前記第1極と異なる第2極である第3コイルおよび第4コイルからなる第2のコイル対と、を有する非点収差補正レンズを備える荷電粒子ビーム装置であって、
前記第1〜第4コイルに流れる電流を第1〜第6条件まで変えて、第1〜第6画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記第1〜第6画像データに基づいて、前記非点収差補正レンズを通過する前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための前記第1〜第4コイルの各電流値を算出する演算手段と、
を含み、
前記第1〜第4コイルに流れる電流Jは、非点収差を補正するための第1成分Iと、前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第2成分iと、の和J=I+iで表され、
前記第1条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しい所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第2条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しく、かつ、前記所与の電流値と異なる電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第3条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値I
あり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第3コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第4条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第3条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第5条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第1コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第6条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第5条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記演算手段は、
前記第1画像データの画像と、前記第2画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データの画像と、前記第4画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データの画像と、前記第6画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルに基づいて、前記第1〜第4コイルの各前記第2成分iを算出する
【0016】
このような荷電粒子ビーム装置によれば、6つの画像データから、荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第1〜第4コイルの各電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【0017】
)本発明に係る荷電粒子ビーム装置は、
荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、流れる電流の向きが互いに逆向きである第1コイルおよび第2コイルからなる第1のコイル対と、前記第1のコイル対とは異なる方向から前記荷電粒子ビームの軸を介して互いに対向し、流れる電流の向きが互いに逆向きである第3コイルおよび第4コイルからなる第2のコイル対と、を有する非点収差補正レンズを備える荷電粒子ビーム装置であって、
前記第1〜第4コイルに流れる電流を第1〜第6条件まで変えて、第1〜第6画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記第1〜第6画像データに基づいて、前記非点収差補正レンズを通過する前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための前記第1〜第4コイルの各電流値を算出する演算手段と、
を含み、
前記第1〜第4コイルに流れる電流Jは、非点収差を補正するための第1成分Iと、前記荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第2成分iと、の和J=I+iで表され、
前記第1条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しい所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、
前記第2条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、互いに等しく、かつ、前記所与の電流値と異なる電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第3条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第3コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第4条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第3条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記第5条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第1条件での前記所与の電流値Iであり、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が前記第1条件での前記第1コイルの前記第2成分の絶対値と異なる電流値+i,−iであり、
前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第1条件での前記第3コイルおよび前記第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−iであり、
前記第6条件では、
前記第1〜第4コイルの前記第1成分Iは、前記第2条件での前記第1コイルの前記第1成分の電流値と同じ電流値Iであり、
前記第1〜第4コイルの前記第2成分iは、それぞれ前記第5条件での前記第1〜第4コイルの前記第2成分の電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iであり、
前記演算手段は、
前記第1画像データの画像と、前記第2画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データの画像と、前記第4画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データの画像と、前記第6画像データの画像と、の間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルに基づいて、前記第1〜第4コイルの各前記第2成分iを算出する
【0018】
このような荷電粒子ビーム装置によれば、6つの画像データから、荷電粒子ビームの軸の位置を補正するための第1〜第4コイルの各電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビ
ームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成を説明するための図。
図2】本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の非点収差補正レンズを、Z軸方向から見た模式図。
図3】本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の非点収差補正レンズ駆動回路の構成を説明するための図。
図4】本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の動作を示すフローチャート。
図5】本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の、第1四極子レンズにおける荷電粒子ビームの軸合わせの動作を示すフローチャート。
図6】フレーム1〜6の撮影条件を示す表。
図7】第1画像変位ベクトルAを説明するための図。
図8】画像変位ベクトルA,B,Cの関係を示す図
図9】ベクトルA,C,Lの距離と第1コイルおよび第2コイルの第2成分の電流値との関係を示す図。
図10】ベクトルA,B,Kの距離と第3コイルおよび第4コイルの第2成分の電流値との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0022】
1. 荷電粒子ビーム装置の構成
まず、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の構成を説明するための図である。ここでは、荷電粒子ビーム装置100が走査型電子顕微鏡(SEM)である場合について説明する。
【0023】
荷電粒子ビーム装置100は、図1に示すように、荷電粒子ビーム源4と、加速電圧用高圧電源6と、対物レンズ絞り8と、非点収差補正レンズ10と、非点収差補正レンズ駆動回路12と、走査コイル14と、走査信号発生器16と、対物レンズ18と、対物レンズ駆動回路19と、試料ステージ20と、検出器22と、観察画像表示装置24と、軸合わせ用撮影条件設定装置30と、メモリー32(フレームメモリー32a)と、画像変位ベクトル演算器34と、最適値演算器36と、を含んで構成されている。
【0024】
荷電粒子ビーム源4は、例えば、公知の電子銃であり、陰極から放出された電子を陽極
で加速し荷電粒子ビーム(電子ビーム)Bを放出する。荷電粒子ビーム源4として用いられる電子銃は、特に限定されず、例えば、タングステンフィラメント熱電子型や、熱電界放出型、冷陰極電界放出型などの電子銃を用いることができる。
【0025】
加速電圧用高圧電源6は、荷電粒子ビーム源4に対して、陰極から放出された電子を加速するための加速電圧を供給する。荷電粒子ビームBは、コンデンサーレンズ(図示せず)等によって集束されて、対物レンズ絞り8に入射する。
【0026】
対物レンズ絞り8は、荷電粒子ビーム源4の後方に配置されている。ここで、後方とは、荷電粒子ビームBの下流側に位置することをいい、図示の例では、−Z方向側に位置することをいう。また、前方とは、荷電粒子ビームBの上流側に位置することをいい、図示の例では、+Z方向側に位置することをいう。なお、Z方向は、対物レンズ18の光軸に沿う方向である。また、X方向およびX方向に垂直なY方向は、Z方向に直交する方向である。対物レンズ絞り8は、対物レンズ18に入射する荷電粒子ビームBを制限するための絞りである。例えば、対物レンズ絞り8は、対物レンズ18に入射する荷電粒子ビームBのうち、対物レンズ18の光軸近傍の荷電粒子ビームBだけを通して、それ以外を遮蔽する。
【0027】
非点収差補正レンズ10は、対物レンズ絞り8の後方に配置されている。非点収差補正レンズ10は、荷電粒子ビームBの軸を介して互いに対向するコイルを複数有している。非点収差補正レンズ10を構成するコイルには、非点収差補正レンズ駆動回路12から励磁電流が供給される。非点収差補正レンズ10は、荷電粒子ビームBの非点収差を補正することができる。非点収差補正レンズ10および非点収差補正レンズ駆動回路12の詳細については後述する。
【0028】
走査コイル14は、非点収差補正レンズ10の後方に配置されている。走査コイル14は、荷電粒子ビームBの試料S上での走査を行うための電磁コイルである。走査コイル14は、荷電粒子ビームBをX方向およびY方向に偏向することができ、荷電粒子ビームBを二次元的に走査することができる。走査コイル14は、走査信号発生器16からの走査信号に基づいて、荷電粒子ビームBの走査を行う。
【0029】
対物レンズ18は、走査コイル14の後方に配置されている。対物レンズ18は、荷電粒子ビームBを試料Sの表面で集束させる。対物レンズ18は、対物レンズ駆動回路19と接続され、対物レンズ18の励磁電流は、対物レンズ駆動回路19から供給される。
【0030】
試料ステージ20は、試料Sを支持し、試料Sの水平移動、上下移動、回転、傾斜などの動作を行うことができる。
【0031】
荷電粒子ビーム源4、対物レンズ絞り8、非点収差補正レンズ10、走査コイル14、対物レンズ18は、荷電粒子ビーム鏡筒2に収容されている。
【0032】
検出器22は、集束された荷電粒子ビームBの走査に基づいて、試料Sの表面から放出される二次電子や反射電子を検出する。検出器22によって検出された二次電子や反射電子の強度信号は、荷電粒子ビームBの走査信号と同期された画像データとして、フレームメモリー32aに記憶される。なお、荷電粒子ビームBの走査時においては、当該走査信号に基づく励磁電流が走査コイル14に供給される。
【0033】
検出器22は、図示の例では、対物レンズ18の前方に配置されているが、対物レンズ18の後方に配置されていてもよい。
【0034】
メモリー32は、画像データを記憶するためのフレームメモリー32aを有している。メモリー32は、さらに、画像データの撮影条件を記憶することができる。
【0035】
観察画像表示装置24は、フレームメモリー32aに記憶された画像データに基づいて、画像(SEM像)を表示する。
【0036】
軸合わせ用撮影条件設定装置30は、非点収差補正レンズ10を構成する第1〜第8コイル101〜108の電流の条件を変えて、画像データを取得することができる。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、第1〜第8コイル101〜108の励磁電流を制御して撮影条件を変えながら複数の画像データを取得し、メモリー32に画像データおよび撮影条件を記憶させることができる。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、非点収差補正レンズ駆動回路12に接続されており、非点収差補正レンズ駆動回路12を介して、第1〜第8コイル101〜108の励磁電流を制御する。
【0037】
画像変位ベクトル演算器34および最適値演算器36(演算手段の一例)は、フレームメモリー32aに保存された画像データから、荷電粒子ビームBの軸を合わせるための第1〜第8コイル101〜108の励磁電流の第2成分iを算出する。この算出された励磁電流値は、最適値演算器36から非点収差補正レンズ駆動回路12に出力される。
【0038】
画像変位ベクトル演算器34は、フレームメモリー32a上の指定した二つの画像に基づいて、画像変位ベクトルを算出する。最適値演算器36では、画像変位ベクトル演算器34で求められた画像変位ベクトルから第1〜第8コイル101〜108の励磁電流の第2成分iの最適値を算出する。この算出結果は、非点収差補正レンズ駆動回路12に出力され、非点収差補正レンズ駆動回路12は、この算出結果に基づいて、第1〜第8コイル101〜108に電流を供給する。
【0039】
図2は、非点収差補正レンズ10を、Z方向から見た模式図である。なお、図2において、コイル101〜108に付されている矢印は、各コイル101〜108に流れる電流(励磁電流)の向きを示している。
【0040】
非点収差補正レンズ10は、図2に示すように、第1四極子レンズ10aと、第2四極子レンズ10bと、を有している。
【0041】
第1四極子レンズ10aは、第1コイル101および第2コイル102からなる第1のコイル対P1と、第3コイル103および第4コイル104からなる第2のコイル対P2と、を有している。第1〜第4コイル101〜104は、それぞれ導体ループをなすコイルからなり、導体ループ面がXY面と直交する。そして、第1コイル101および第2コイル102は、X方向にコイル面101f,102fが対向し、第3コイル103および第4コイル104は、X方向に垂直なY方向にコイル面103f,104fが対向している。
【0042】
第1のコイル対P1をなす第1コイル101および第2コイル102には、互いに逆向きの電流が流れる。そのため、互いに対向する第1コイル101のコイル面101f、および第2コイル102のコイル面102fは、同じ磁極となり、図示の例ではS極(第1極)となる。図示の例では、第1コイル101では、電流が、コイルの上面(+Z方向)側を+Y方向に流れる。第2コイル102では、電流が、コイルの上面(+Z方向)側を−Y方向に流れる。
【0043】
また、第2のコイル対P2をなす第3コイル103および第4コイル104には、互いに逆向きの電流が流れる。そのため、互いに対向する第3コイル103のコイル面103
f、および第4コイル104のコイル面104fは、同じ磁極となり、図示の例ではN極(第2極)となる。図示の例では、第3コイル103では、電流が、コイルの上面(+Z方向)側を−X方向に流れる。第4コイル104では、電流が、コイルの上面(+Z方向)側を+X方向に流れる。
【0044】
第1四極子レンズ10aを通過する荷電粒子ビームBには、第1四極子レンズ10aを構成する4つのコイル101〜104が作る磁場によって、ローレンツ力LFが働く。第1四極子レンズ10aは、図示の例では、荷電粒子ビームBの軸と直交する面内において、荷電粒子ビームBに対して、X´方向に発散作用を生じさせ、X´軸に垂直なY´方向に集束作用を生じさせるような磁場を作っている。ここで、Y´方向は、Y軸をZ軸まわりに45°回転させたY´軸の方向であり、X´方向は、X軸をZ軸まわりに45°回転させたX´軸の方向である。第1四極子レンズ10aは、4つのコイル101〜104で非点収差を発生させ、荷電粒子ビームBの非点収差を打ち消すことができる。
【0045】
第2四極子レンズ10bは、第5コイル105および第6コイル106からなる第3のコイル対P3と、第7コイル107および第8コイル108からなる第4のコイル対P4と、を有している。第5〜第8コイル105〜108は、それぞれ導体ループをなすコイルからなり、導体ループ面がXY面と直交する。そして、第5コイル105および第6コイル106は、X´方向にコイル面105f,106fが対向し、第7コイル107および第8コイル108は、Y´方向にコイル面107f,108fが対向している。
【0046】
第3のコイル対P3をなす第5コイル105および第6コイル106には、互いに逆向きの電流が流れる。そのため、互いに対向する第5コイル105のコイル面105f、および第6コイル106のコイル面106fは、同じ磁極となり、図示の例ではS極(第1極)となる。図示の例では、第5コイル105では、電流が、コイルの上面(+Z方向)側を+Y´方向に流れる。第6コイル106では、電流が、コイルの上面(+Z方向)側を−Y´方向に流れる。
【0047】
また、第4のコイル対P4をなす第7コイル107および第8コイル108には、互いに逆向きの電流が流れる。そのため、互いに対向する第7コイル107のコイル面107f、および第8コイル108のコイル面108fは、同じ磁極となり、図示の例ではN極(第2極)となる。図示の例では、第7コイル107では、電流が、コイルの上面(+Z方向)側を−X´方向に流れる。第8コイル108では、電流が、コイルの上面(+Z方向)側を+X´方向に流れる。
【0048】
第2四極子レンズ10bを通過する荷電粒子ビームBには、第2四極子レンズ10bを構成する4つのコイル105〜108が作る磁場によって、ローレンツ力LFが働く。図示の例では、第2四極子レンズ10bは、荷電粒子ビームBの軸と直交する面内において、荷電粒子ビームBに対して、Y方向に発散作用を生じさせ、Y軸に直交するX方向に集束作用を生じさせるような磁場を作っている。第2四極子レンズ10bは、4つのコイル105〜108で非点収差を発生させ、荷電粒子ビームBの非点収差を打ち消すことができる。このように、非点収差補正レンズ10は、4つのコイルからなる2組の四極子レンズ10a,10bを45°回転させて配置した八極子レンズである。
【0049】
この八極子レンズを通過する荷電粒子ビームBに作用するローレンツ力は、第1四極子レンズ10aによるローレンツ力LFと第2四極子レンズ10bによるローレンツ力LFを重ね合わせの原理によって合成したものとなる。
【0050】
よって、第1四極子レンズ10aの電流の向きと強度、および第2四極子レンズ10bの電流の向きと強度を調整することによって、XY平面内での任意の角度(方向)と強度
について、荷電粒子ビームBの非点収差を補正することができる。
【0051】
第1〜第8コイル101〜108に流れる電流は、非点収差補正レンズ駆動回路12から供給される。図3は、非点収差補正レンズ駆動回路12の構成を説明するための図である。なお、図3では、非点収差補正レンズ駆動回路12のうち、第1四極子レンズ10aに流れる電流を供給する部分12aを図示している。以下、図3を参照しながら、非点収差補正レンズ駆動回路12のうち、第1四極子レンズ10aに流れる電流を供給する部分12aについて説明する。
【0052】
ここで、第1四極子レンズ10aを構成する第1〜第4コイル101〜104に流れる電流(励磁電流)J1,J2,J3,J4は、非点収差を補正するための第1成分Iと、荷電粒子ビームBの軸の位置を補正するための第2成分iと、の和I+iで表すことができる。すなわち、第1四極子レンズ10aでは、第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4の第1成分Iの電流値で非点収差の補正の程度が決まり、第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4の第2成分iで、荷電粒子ビームBの軸と直交する面内での、荷電粒子ビームBの軸の位置が決まる。なお、各コイル101〜104では、励磁電流の電流値の絶対値が大きいほど磁場が強くなり、第1四極子レンズ10aで発生する非点収差が大きくなる。また、各コイル101〜104では、電流値が負の値をとる場合は、電流値が正の値をとる場合と流れる電流の向きが逆であることを意味する。
【0053】
非点収差補正レンズ駆動回路12は、レジスタ202,204,206と、DAコンバーター208と、加算器210,212,214,216と、反転演算器218,220と、電圧電流変換増幅器226と、を有している。
【0054】
レジスタ202には、第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4の第1成分Iの電流値のデータが設定される。レジスタ204には、コイル101,102の励磁電流J1,J2の第2成分iの電流値(絶対値)のデータが設定される。レジスタ206には、コイル103,104の励磁電流J3,J4の第2成分iの電流値(絶対値)のデータが設定される。これらのデータは、軸合わせ用撮影条件設定装置30によって設定されることができる。ここでは、レジスタ202に電流値Iが設定され、レジスタ204に電流値iが設定され、レジスタ206に電流値iが設定された場合について説明する。レジスタ202,204,206に設定された電流値I,i,iのデータは、それぞれDAコンバーター208でデジタル電気信号からアナログ電気信号に変換されて、加算器210,212,214,216に供給される。ここで、レジスタ204からDAコンバーター208を介して加算器212に供給される信号は、反転演算器218によって、反転される。同様に、レジスタ206からDAコンバーター208を介して加算器216に供給される信号は、反転演算器220によって、反転される。そのため、加算器210,214では、レジスタ202からの信号Iと、レジスタ204,206からの信号i,iと、が加算され、加算器212,216では、レジスタ202からの信号Iと、レジスタ204,206からの信号が反転された信号−i,−iと、が加算される。そして、加算器210,212,214,216から電圧電流変換増幅器226を介して各コイル101〜104に電流が供給される。この結果、第1コイル101に供給される励磁電流J1は、J1=I+iとなり、第2コイル102に供給される励磁電流J2は、J2=I−iとなり、第3コイル103に供給される励磁電流J3は、J3=I+iとなり、第4コイル104に供給される励磁電流J4は、J4=I−iとなる。
【0055】
このように非点収差補正レンズ駆動回路12は、第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4の第1成分Iの電流値が、互いに等しい電流値Iとなるように電流を供給する。また、非点収差補正レンズ駆動回路12は、第1コイル101の励磁電流J1
の第2成分i、および第2コイル102の励磁電流J2の第2成分iが、正負が逆で絶対値が等しい電流値(+i,−i)となるように電流を供給する。また、非点収差補正レンズ駆動回路12は、第3コイル103の励磁電流J3の第2成分i、および第4コイル104の励磁電流J4の第2成分iが、正負が逆で絶対値が等しい電流値(+i,−i)となるように電流を供給する。これにより、荷電粒子ビームBの軸の位置を調整するための各コイル101〜104の励磁電流の第2成分iを変えても、非点収差補正レンズ10全体に流れる励磁電流の総量は変わらない。したがって、荷電粒子ビームBの軸の位置の調整と、非点収差の補正と、をそれぞれ独立して調整することができる。
【0056】
第1四極子レンズ10aにおいて、荷電粒子ビームBが通過する際に、荷電粒子ビームBの軸の位置が、第1四極子レンズ10aの中心軸10Cに一致していれば、荷電粒子ビームBは、第1四極子レンズ10aが発生させる非点収差の程度が変わっても(コイル101〜104の電流の第1成分Iの電流値が変わっても)、荷電粒子ビームBの軸の位置は変わらない。ここで、第1四極子レンズ10aの中心軸10Cの位置は、第1〜第4コイル101〜104の駆動に基づき荷電粒子ビームBへ作用する各方向のローレンツ力LFにおいて、互いに逆方向に作用するローレンツ力LFについて合成したときに、上記各方向すべての場合について零となる位置である。
【0057】
また、第1四極子レンズ10aの中心軸10Cは、第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4の第2成分iの電流値に応じて移動する。そのため、荷電粒子ビームBの軸の位置と、第1四極子レンズ10aの中心軸10Cの位置とが一致するような第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4の第2成分iの電流値を求めることで、荷電粒子ビームBの軸合わせを行うことができる。なお、荷電粒子ビームBの非点収差補正を行う場合には、第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4の第2成分iの電流値を固定した状態で、第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4の第1成分Iを変える。この場合には、非点収差の補正量は変化するものの、第1四極子レンズ10aの中心軸10Cの位置は変化しない。
【0058】
なお、非点収差補正レンズ駆動回路12のうち、第2四極子レンズ10bに流れる電流を供給する部分は、上述した第1四極子レンズ10aに流れる電流を供給する部分12aと同様でありその説明を省略する。また、第2四極子レンズ10bに流れる励磁電流の第1成分Iおよび第2成分iは、第1四極子レンズ10aに流れる励磁電流J1〜J4の第1成分Iおよび第2成分iと、独立している。すなわち、第1四極子レンズ10aに流れる励磁電流J1〜J4の第1成分Iおよび第2成分iと、第2四極子レンズ10bに流れる励磁電流の第1成分Iおよび第2成分iとは、異なる電流値を持つことができる。
【0059】
また、ここでは、図2に示すように、非点収差補正レンズ10が、2つの四極子レンズ10a,10bで構成されている場合について説明したが、図示はしないが、非点収差補正レンズ10は、1つの四極子レンズ10aで構成されていてもよい。この場合、非点収差補正レンズ駆動回路12は、第2四極子レンズ10bに流れる電流を供給する部分を有さなくてもよい。
【0060】
1.2. 荷電粒子ビーム装置の動作
次に、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の動作について説明する。図4は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の動作を示すフローチャートである。
【0061】
荷電粒子ビーム装置100では、まず、非点収差補正レンズ10の第1四極子レンズ10aについて、荷電粒子ビームBの軸合わせを行い(S1)、次に、非点収差補正レンズ10の第2四極子レンズ10bについて、荷電粒子ビームBの軸合わせを行う(S2)。その後、非点収差補正レンズ10で、荷電粒子ビームBの非点収差の補正を行う(S3)
【0062】
まず、第1四極子レンズ10aにおける荷電粒子ビームBの軸合わせ(S1)について説明する。ここで、第1四極子レンズ10aにおける荷電粒子ビームBの軸合わせとは、非点収差補正レンズ10を通過する荷電粒子ビームBの軸と、第1四極子レンズ10aの中心軸10Cと、を合わせることをいう。図5は、荷電粒子ビーム装置100の、第1四極子レンズ10aにおける荷電粒子ビームBの軸合わせの動作を示すフローチャートである。
【0063】
軸合わせ用撮影条件設定装置30によって第1〜第6画像データを取得する(S10)。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4を、後述する第1〜第6条件まで変えて、フレーム1〜6を撮影する。軸合わせ用撮影条件設定装置30によって撮影されたフレーム1〜6は、第1〜第6画像データとして、フレームメモリー32aに記憶される。また、フレーム1〜6(第1〜第6画像データ)の撮影条件は、メモリー32に記憶される。
【0064】
軸合わせ用撮影条件設定装置30は、まず、第1四極子レンズ10aを第1条件に設定する。具体的には、軸合わせ用撮影条件設定装置30は、レジスタ202に第1条件における第1〜第4コイル101〜104の励磁電流J1〜J4の第1成分Iの電流値のデータを設定し、レジスタ204に第1条件におけるコイル101,102の励磁電流J1,J2の第2成分iの電流値のデータを設定し、レジスタ206にコイル103,104の励磁電流J3,J4の第2成分iの電流値のデータを設定する。そして、第1四極子レンズ10aが第1条件に設定された状態で、試料Sを荷電粒子ビームBで走査して、第1画像データを取得する。このとき、第2四極子レンズ10bの電流値は、固定されている。次に、軸合わせ用撮影条件設定装置30は、同様に、第1四極子レンズ10aを第2条件に設定し、試料Sを荷電粒子ビームBで走査して、第2画像データを取得する。第2画像データの取得の際には、荷電粒子ビーム装置100では、第1四極子レンズ10aの励磁電流の電流値の条件だけが変わり、その他の条件は変更しない。すなわち、第2画像データの取得の場合と、第1画像データの取得の場合とは、第1四極子レンズ10aの励磁電流の電流値以外の条件(荷電粒子ビームBの走査領域、他のレンズの動作条件等)は同じである。同様に、軸合わせ用撮影条件設定装置30は、第3〜第6画像データを取得する。以上の工程により、軸合わせ用撮影条件設定装置30は、第1〜第6画像データを取得することができる。
【0065】
図6は、フレームの撮影条件を示す表である。各フレームの撮影条件は、図6に示す通りである。ここで、I,I,i,i,i,iは、電流値であり、所与の値(実数)である。ただし、電流値Iと電流値Iとは、異なる値を有する。また、電流値iと電流値iとは、異なる値を有する。また、電流値iと電流値iとは、異なる値を有する。
【0066】
各フレーム1〜6の撮影条件(第1〜第6条件)は、(第1コイル101の励磁電流J1、第2コイル102の励磁電流J2,第3コイルの励磁電流J3、第4コイル104の励磁電流J4)とすると以下の通りである。
【0067】
フレーム1を取得するときの撮影条件である第1条件は、(J1=I+i,J2=I−i,J3=I+i,J4=I−i)である。すなわち、第1条件では、第1〜第4コイル101の励磁電流J1の第1成分Iは、互いに等しい電流値Iであり、第1コイル101および第2コイル102の励磁電流J1,J2の第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i,−iであり、第3コイル103および第4コイル104の励磁電流J3,J4の第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しい電流値+i
−iである。
【0068】
フレーム2を取得するときの撮影条件である第2条件は、(J1=I+i,J2=I−i,J3=I+i,J4=I−i)である。すなわち、第2条件では、第1〜第4コイル101〜104の第1成分Iは、互いに等しく、かつ、電流値Iと異なる電流値Iであり、第1〜第4コイル101〜104の第2成分iは、それぞれ第1条件での第1〜第4コイル101〜104の第2成分iの電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iである。
【0069】
フレーム3を取得するときの撮影条件である第3条件は、(J1=I+i,J2=I−i,J3=I+i,J4=I−i)である。すなわち、第3条件では、第1〜第4コイルの第1成分Iは、第1条件での第1成分Iと同じ電流値Iであり、第1コイル101および第2コイル102の第2成分iは、それぞれ第1条件での第1コイル101および第2コイル102の第2成分iの電流値と同じ電流値+i,−iであり、第3コイル103および第4コイル104の第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が第1条件での第3コイル103の第2成分iの絶対値と異なる電流値+i,−iである。
【0070】
フレーム4を取得するときの撮影条件である第4条件は、(J1=I+i,J2=I−i,J3=I+i,J4=I−i)である。すなわち、第4条件では、第1〜第4コイル101〜104の第1成分Iは、第2条件での第1コイル101の第1成分Iの電流値と同じ電流値Iであり、第1〜第4コイル101〜104の第2成分iは、それぞれ第3条件での第1〜第4コイル101〜104の第2成分iの電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iである。
【0071】
フレーム5を取得するときの撮影条件である第5条件は、(J1=I+i,J2=I−i,J3=I+i,J4=I−i)である。すなわち、第5条件では、第1〜第4コイル101〜104の第1成分Iは、第1条件での第1成分Iの電流値Iであり、第1コイル101および第2コイル102の第2成分iは、正負が逆で絶対値が等しく、かつ、絶対値が第1条件での第1コイル101の第2成分iの絶対値と異なる電流値+i,−iであり、第3コイル103および第4コイル104の第2成分iは、それぞれ第1条件での第3コイル103および第4コイル104の第2成分iの電流値と同じ電流値+i,−iである。
【0072】
フレーム6を取得するときの撮影条件である第6条件は、(J1=I+i,J2=I−i,J3=I+i,J4=I−i)である。すなわち、第1〜第4コイル101〜104の第1成分Iは、第2条件での第1コイル101の第1成分Iの電流値と同じ電流値Iであり、第1〜第4コイル101〜104の第2成分iは、それぞれ第5条件での第1〜第4コイル101〜104の第2成分iの電流値と同じ電流値+i,−i,+i,−iである。
【0073】
電流値I,I,i,i,i,iは、軸合わせ用撮影条件設置装置30に設定される。例えば、電流値Iは、軸合わせ開始時のコイル101〜104の励磁電流の第1成分Iの電流値Iを所定の電流値ΔIだけ増加させた電流値I=I+ΔIである。電流値Iは、初期値Iを所定の電流値ΔIだけ減少させた電流値I=I−ΔIである。また、例えば、電流値iは、軸合わせ開始時の第1コイル101の励磁電流の第2成分iであり、電流値iは、軸合わせ開始時の第3コイル103の励磁電流の第2成分iである。また、例えば、電流値iは、電流値iを、所定の電流値Δiだけ増加させた電流値i=i+Δiであり、電流値iは、電流値iを、所定の電流値Δiだけ増加させた電流値i=i+Δiである。なお、電流値I
,i,i,i,iは、予め軸合わせ用撮影条件設置装置30に設定されていてもよい。
【0074】
なお、初期値iが正の場合に、変更量Δiを負の値とし、初期値iが負の場合に、変更量Δiを正の値としてもよい。同様に、初期値iが正の場合に、変更量Δiを負の値とし、初期値iが負の場合に、変更量Δiを正の値としてもよい。コイル101〜104の第2成分iの最適値は、本質的に第2成分iの値が0に近い値の場合が多いため、これによって、変更量Δi,Δiを、あらかじめ後述する第2成分iの最適値X3,Y3に近い向きにすることができる。したがって、最適値X3,Y3の算出精度が向上する。
【0075】
次に、画像変位ベクトル演算器34は、第1画像データの画像(フレーム1)と、第2画像データの画像(フレーム2)と、の間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルA(a,b)と、第3画像データの画像(フレーム3)と、第4画像データの画像(フレーム4)と、の間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルB(c、d)と、第5画像データの画像(フレーム5)と、第6画像データの画像(フレーム6)と、の間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルC(e,f)と、を算出する(S11)。
【0076】
ここで、画像変位ベクトルとは、2つの画像間での画像の位置ずれ量(方向、大きさ)を示すベクトルである。図7は、画像変位ベクトル(第1画像変位ベクトルA)を説明するための図である。なお、図7では、フレーム1とフレーム2とを重ねて図示している。第1画像変位ベクトルAは、図7で示すように、フレーム1で得られた試料Sに対応する像αと、フレーム2で得られた試料Sに対応する像βと、を結ぶベクトルである。第1画像変位ベクトルAは、第1〜第4コイル101〜104の第2成分iの電流値が+i,−i,+i,−iである場合での、第1〜第4コイル101〜104の第1成分Iの電流値の変化による像移動を示すベクトルである。同様に、第2画像変位ベクトルBは、第1〜第4コイル101〜104の第2成分iの電流値が+i,−i,+i,−iである場合での、第1〜第4コイル101〜104の第1成分Iの電流値の変化による像移動を示すベクトルである。同様に、第3画像変位ベクトルCは、第1〜第4コイル101〜104の第2成分iの電流値が+i,−i,+i,−iである場合での、第1〜第4コイル101〜104の第1成分Iの電流値の変化による像移動を示すベクトルである。
【0077】
画像変位ベクトルの算出は、例えば、2つの画像(フレーム)の相互相関演算で行うことができる。この場合、相互相関演算は、2つの画像の二次元フーリエ変換の複素共役の積の逆フーリエ変換で実行する。二次元の相互相関演算結果の最大値の座標が、画像変位ベクトルとなる。
【0078】
図8は、画像変位ベクトルA,B,Cの関係を示す図である。横軸xは、画像変位ベクトル座標系におけるx成分を示し、縦軸yは、画像変位ベクトル座標系におけるy成分を示す。
【0079】
最適値演算器36は、図8に示す、第1および第2コイル101,102の励磁電流J1,J2の第2成分iの電流値が最適となる最適推定点での画像変位ベクトルL(s,t)、および第3および第4コイル103,104の励磁電流J3,J4の第2成分iの電流値が最適となる最適推定点での画像変位ベクトルK(g,h)を算出する(S12)。
【0080】
図8の原点でのコイル101,102の第2成分iの電流値、およびコイル103,104の第2成分iの電流値が最適値となる。ここでは、図8の原点での電流値の算出を、画像変位ベクトルL,Kでの電流値の算出に置き換える。すなわち、図8に示す点での電流値が、コイル101,102の第2成分iの電流値が最適値X3となる画像変位ベクトル座標上の点(最適推定点)である。また、図8に示す点での電流値が、コイル103,104の第2成分iの電流値が最適値Y3となる画像変位ベクトル座標上の点(最適推定点)である。ここで、最適値X3とは、荷電粒子ビームBの軸と、第1四極子レンズ10aの中心軸10Cと、が一致したときのコイル101,102の第2成分iの電流値である。また、最適値Y3とは、荷電粒子ビームBの軸と、第1四極子レンズ10aの中心軸10Cと、が一致したときのコイル103,104の第2成分iの電流値である。
【0081】
図8に示すように、直線ACが、直線ABと平行で原点を通る直線L1と交わる点がL(s,t)である。同様に、直線ABが、直線ACと平行で原点を通る直線L2と交わる点がK(g,h)である。
【0082】
画像変位ベクトルK(g,h)、画像変位ベクトルL(s,t)は、例えば下記式1〜式4から算出する。
【0083】
【数1】
【0084】
次に、最適値演算器36は、ベクトルA、およびベクトルCでの電流値からベクトルでのコイル101,102の第2成分iの電流値(最適値X3)を算出する(S13)。
【0085】
図9は、ベクトルA,C,Lの距離とコイル101,102の第2成分iの電流値との関係を示す図である。図9に示すように、ベクトルAでの電流値i、ベクトルCでの電流値iからコイル101,102の第2成分iの最適値X3を算出する。最適値演算器36は、例えば、メモリー32に記憶されたベクトルA,Cでの電流値i,iを用いて算出を行う。コイル101,102の第2成分iの最適値X3は、例えば、下記式5、6から算出する。なお、式5は、図9に示すベクトルAの座標A点が、ベクトルCの座標C点とベクトルLの座標L点との間にある場合の式であり、式6は、ベクトルAの座標A点が、ベクトルCの座標C点とベクトルLの座標L点との間にない場合の式である。
【0086】
【数2】
【0087】
ただし、XAは、ベクトルAでの電流値iである。また、XCは、ベクトルCでの励磁電流値iである。
【0088】
図10は、ベクトルA,B,Kの距離とコイル103,104の第2成分iの電流値との関係を示す図である。最適値演算器36は、図10に示すように、ベクトルAでの励磁電流値i、ベクトルBでの励磁電流値iからコイル103,104の第2成分iの最適値Y3を算出する(S13)。コイル103,104の第2成分iの最適値Y3は、例えば、下記式7、8から算出する。なお、式7は、ベクトルAの座標A点が、ベクトルBの座標B点とベクトルKの座標K点との間にある場合の式であり、式8は、ベクトルAの座標A点が、ベクトルBの座標B点とベクトルKの座標K点との間にない場合の式である。
【0089】
【数3】
【0090】
ただし、YAは、ベクトルAでの電流値iである。また、YBは、ベクトルBでの電流値iである。
【0091】
以上の工程により、コイル101,102の第2成分iの最適値X3およびコイル103,104の第2成分iの最適値Y3を算出することができる。
【0092】
次に、最適値演算器36は、算出したコイル101〜104の励磁電流の最適値X3,Y3に基づいて制御信号を生成し、この制御信号を、図3に示す非点収差補正レンズ駆動回路12に出力して、レジスタ204に最適値X3を設定し、レジスタ206に最適値Y3を設定する。
【0093】
以上の工程により、第1四極子レンズ10aの荷電粒子ビームBの軸合わせを行うことができる。
【0094】
次に、第2四極子レンズ10bにおける荷電粒子ビームBの軸合わせを行う(S2)。
ここで、第2四極子レンズ10bにおける荷電粒子ビームBの軸合わせとは、非点収差補正レンズ10を通過する荷電粒子ビームBの軸と、第2四極子レンズ10bの中心軸10Cと、を合わせることをいう。第2四極子レンズ10bにおける荷電粒子ビームBの軸合わせでは、荷電粒子ビーム装置100は、上述した第1四極子レンズ10aにおける荷電粒子ビームBの軸合わせと同様の動作を行うため、詳細な説明は省略する。なお、荷電粒子ビーム装置100では、第2四極子レンズ10bにおける荷電粒子ビームBの軸合わせの際には、第1四極子レンズ10aの励磁電流は、固定されている。例えば、第1四極子レンズ10aの各コイル101〜104の第2成分iの電流値は、工程S1で算出された最適値に固定されている。
【0095】
次に、非点収差補正レンズ10を用いて、荷電粒子ビームBの非点収差の補正を行う(S3)。本工程では、非点収差補正レンズ10を構成する各コイル101〜108の第2成分iの電流値は、工程S1,S2で算出された電流値に固定されている。そして、各コイル101〜108の第1成分Iの電流値を調整して、荷電粒子ビームBの非点収差の補正を行う。本工程は、荷電粒子ビーム装置100の処理部(図示せず)で各コイル101〜108の第1成分Iの最適値を算出することにより行われてもよいし、ユーザーが各コイル101〜108の第1成分Iの電流値を変化させて最適値を求めることにより行われてもよい。
【0096】
以上の工程により、荷電粒子ビームBの軸合わせおよび荷電粒子ビームBの非点収差の補正を行うことができる。
【0097】
本実施形態では、上述のように、6つの画像データ(フレーム1〜6)から、コイル101〜108の励磁電流の第2成分iの最適値X3,Y3を求めることができる。本実施形態によれば、このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮することができる。
【0098】
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置は、第1〜第4コイル101〜104に流れる電流を第1〜第6条件まで変えて、第1〜第6画像データを取得する軸合わせ用撮影条件設定装置30と、第1〜第6画像データに基づいて、非点収差補正レンズ10を通過する荷電粒子ビームBの軸の位置を補正するための第1〜第4コイル101〜104の第2成分iの電流値を算出する画像変位ベクトル演算器34および最適値演算器36と、を有する。これにより、容易に、非点収差補正レンズ10の第1四極子レンズ10aにおいて、荷電粒子ビームの軸合わせができる。さらに、例えば、荷電粒子ビームBの軸合わせを自動化することができる。
【0099】
1.3. 変形例
次に、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法の変形例について説明する。
【0100】
上述した実施形態では、第1〜第6画像データを取得完了後に、画像変位ベクトルA,B,Cを算出したが、例えば、第1画像データと第2画像データとが取得できた時点で画像変位ベクトルAを算出し、第3画像データと第4画像データとが取得できた時点で画像変位ベクトルBを算出し、第5画像データと第6画像データとが取得できた時点で画像変位ベクトルCを算出してもよい。これにより、例えば、画像データの取得と、画像変位ベクトルの算出を並行して実行することができ、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間をより短縮することができる。
【0101】
なお、上述した各実施形態は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば
、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0102】
例えば、軸合わせ用撮影条件設定装置30、画像変位ベクトル演算器34、最適値演算器36の機能を、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現してもよい。
【0103】
また、上述した荷電粒子ビーム装置100の例では、非点収差補正レンズ10の各コイル101〜104の励磁電流の第2成分iを調整することで、荷電粒子ビームの軸合わせを行っていたが、非点収差補正レンズ10とは別に、荷電粒子ビームBを偏向させるための偏向コイルを設けて、この偏向コイルに流れる電流の最適値を求めることで、荷電粒子ビームの軸合わせを行ってもよい。このとき、この偏向コイルに流れる電流の最適値は、上述した実施形態と同様に算出することができる。
【0104】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0105】
2…荷電粒子ビーム鏡筒、4…荷電粒子ビーム源、6…加速電圧用高圧電源、10…非点収差補正レンズ、10a…第1四極子レンズ、10b…第2四極子レンズ、12…非点収差補正レンズ駆動回路、14…走査コイル、16…走査信号発生器、18…対物レンズ、19…対物レンズ駆動回路、20…試料ステージ、22…検出器、24…観察画像表示装置、30…軸合わせ用撮影条件設定装置、32…メモリー、32a…フレームメモリー、34…画像変位ベクトル演算器、36…最適値演算器、100…荷電粒子ビーム装置、101…第1コイル、102…第2コイル、103…第3コイル、104…第4コイル、105…第5コイル、106…第6コイル、107…第7コイル、108…第8コイル、202,204,206…レジスタ、208…DAコンバーター、210,212,214,216…加算器、218,220…反転演算器、226…電圧電流変換増幅器
図1
図2
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図10