特許第5959328号(P5959328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959328
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】片ボルト式挟締金具
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20160719BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F16B2/12 B
   E04G21/16
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-132257(P2012-132257)
(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公開番号】特開2013-256977(P2013-256977A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】596164504
【氏名又は名称】株式会社 名有
(73)【特許権者】
【識別番号】512152798
【氏名又は名称】歌代 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100126424
【弁理士】
【氏名又は名称】長島 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】歌代 宏
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−057957(JP,A)
【文献】 特開2008−267508(JP,A)
【文献】 実開昭61−175607(JP,U)
【文献】 米国特許第04924579(US,A)
【文献】 実公昭46−004526(JP,Y1)
【文献】 特開平07−217215(JP,A)
【文献】 実開昭53−038299(JP,U)
【文献】 実開昭52−003283(JP,U)
【文献】 実開昭47−022355(JP,U)
【文献】 実開昭53−119779(JP,U)
【文献】 実開昭60−150195(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3110734(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00−2/26
E04G 21/14−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の胴部と一体成形されている一のアーム部に装着されたボルトと、前記胴部と一体成形されている他のアーム部に形成されている受皿部とで複数の部材を挟締する片ボルト式挟締金具において、
前記他のアーム部は、胴部寄りの基部から先端部に向かって肉厚が徐々に厚くなる肉厚部を形成し、
前記受皿部に形成された凹部に固定チップの基部を装着し、前記ボルトと前記固定チップとで複数の部材を挟締することを特徴とする片ボルト式挟締金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル建築の基礎工事等において、作業講台や支保工架台等の設置の際、複数の部材を溶接等によることなく挟締する片ボルト式挟締金具に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル建築の基礎工事等において、作業講台や支保工架台等の設置の際、複数の部材を溶接等によることなく挟締する挟締金具としては、胴部と一体成形されている両アーム部を有するコの字形状の本体において、両アーム部に各ボルトを装着し、その2本のボルトで複数の部材を挟締する両ボルト式挟締金具と、胴部と一体成形されている両アーム部を有するコの字形状の本体において、一のアーム部にボルトを装着し、他のアーム部に形成された受皿部とで複数の部材を挟締する片ボルト式挟締金具とがある。
【0003】
両ボルト式挟締金具は、本体の胴部と一体成形された両アーム部に装着された各ボルトで複数の部材を挟締するので、複数の部材を挟締するボルトの先端部の強度と本体の強度を認定基準に適合するように別個に設定することができ、材料費の低減を図ることが可能である。
【0004】
これに対し片ボルト式挟締金具は、胴部と一体成形されている両アーム部を有するコの字形状の本体において、一のアーム部にボルトを装着し、他のアーム部に形成された受皿部とで複数の部材を挟締するので、認定基準に適合させるためには受皿部の強度をボルトの先端部の強度と同レベルにする必要がある。即ち、認定基準に適合させるためには、受皿部と一体成形されている本体の強度を認定基準で設定されている本体の強度より高いレベルであるボルトの先端部の強度と同レベルにする必要があり、材料費が高額となるとの不具合があった。
【0005】
更に片ボルト式挟締金具は、複数の部材を挟締する挟締位置が、ボルトと受皿部との中心位置ではなく受皿部側に偏った位置となる。即ち、受皿部が形成されている他のアーム部に掛かる荷重が、ボルトが装着されている一のアーム部に掛かる荷重より大きくなるため、他のアーム部の耐久性が一のアーム部より劣るとの不具合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の不具合点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、本体と一体成形されている受皿部の材質の強度をボルト先端部の材質の強度より低いレベルとしても認定基準に適合することができる片ボルト式挟締金具を提供することである。
【0007】
更に、別の目的は、複数の部材を挟締する挟締位置がボルトと受皿部との中心位置から偏り本体に偏心加重が掛かる場合であっても、本体の耐久性を充分確保することができる片ボルト式挟締金具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る片ボルト式挟締金具は、
本体の胴部と一体成形されている一のアーム部に装着されたボルトと、前記胴部と一体成形されている他のアーム部に形成されている受皿部とで複数の部材を挟締する片ボルト式挟締金具において、
前記他のアーム部は、胴部寄りの基部から先端部に向かって肉厚が徐々に厚くなる肉厚部を形成し、
前記受皿部に形成された凹部に固定チップの基部を装着し、前記ボルトと前記固定チップとで複数の部材を挟締することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を備えた本発明に係る片ボルト式金具は、本体の胴部と一体成形されている他のアーム部に形成された受皿部の凹部に装着された固定チップが、一のアーム部に装着されているボルトとで複数の部材を挟締するので、受皿部の強度を認定基準で設定されているボルトの先端部の強度と同レベルにする必要がない。従って受皿部と一体成形されている本体を、認定基準で設定されているボルト先端部の強度より低いレベルである本体の強度に適合させた材質で成形することができ、材料費の軽減を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係る片ボルト式金具は、固定チップの先端部に山型凸部を形成させているので、複数の部材をボルトとで挟締するときに複数の部材を確実に挟締することができる。しかも、山型凸部の断面における斜辺が受皿部の端面となす角度を30度乃至60度の範囲に設定したので、複数の部材を挟締したときに固定チップに作用する外力を分散することができ、固定チップの破損を防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る片ボルト式金具は、受皿部に形成された凹部に装着された固定チップがボルトとで複数の部材を挟締するので、固定チップの先端部の材質を本体の材質と別個に設定することができ、ボルトの先端部の材質と同レベルにすることで、認定基準に適合させることができる。
【0016】
また、本発明に係る片ボルト式金具は、固定チップが装着されている受皿部が形成されている他のアーム部を、ボルトが装着されている一のアーム部より肉厚としているので、複数の部材を挟締するときの挟締位置が受皿部側に偏り他のアーム部に偏心荷重が掛かっても他のアーム部の強度を一のアーム部の強度と同等レベルにすることができる。
【0017】
また、本発明に係る片ボルト式金具は、受皿部に形成された凹部に固定チップを装着する場合、固定チップを螺合により固定結合させ、または固定チップを接着剤により固定結合させ、または固定チップを圧入により固定結合させ、または固定チップを焼嵌めにより固定結合させているので、固定チップとボルトとで複数の部材を挟締したときに固定チップが受皿部の凹部から脱落するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る片ボルト式挟締金具の正面図である。
図2図1の片ボルト式挟締金具の右側面図である。
図3】本発明に係る固定チップの(1)は平面図であり、(2)は断面図である。
図4図3に係る固定チップを装着する場合であって、(1)は受皿部に形成された凹部の断面図であり、(2)は固定チップを(1)の凹部に装着した状態を示す断面図である。
図5】本発明に係る別の固定チップの(1)は平面図であり、(2)は断面図である。
図6図5に係る固定チップを装着する場合であって、(1)は受皿部に形成された凹部の断面図であり、(2)は固定チップを(1)の凹部に装着した状態を示す断面図である。
図7】本発明に係る別の片ボルト式挟締金具の正面図である。
図8図7の片ボルト式挟締金具の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示して説明する。ただし、この発明の範囲は、特に限定的記載がない限り、この実施の形態に記載されている内容に限定する趣旨のものではない。
【0020】
図1は、本発明に係る片ボルト式挟締金具の正面図であり、図2図1の片ボルト式挟締金具の右側面図であり、図3は本発明に係る固定チップの(1)は平面図、(2)は断面図であり、図4図3に係る固定チップを装着する場合であって、(1)は受皿部に形成された凹部の断面図であり、(2)は固定チップを(1)の凹部に装着した状態を示す断面図である。
【0021】
本発明に係る片ボルト式挟締金具1は、図1に示す通り、本体10と、ボルト40と、固定チップ50とを備えている。
【0022】
本体10は、胴部11と、胴部11と一体成形されている両アーム部(20,30)とで構成されていて、認定基準で規定されているJIS G 4051に定めるS35Cと同等以上の強度等を有する機械構造用鋼材等を使用し、熱間鍛造により成形されている。尚、認定基準とは、厚生労働省の委託に基き社団法人仮設工業会が設定し、平成6年1月1日より施行されることになった「挟締金具の認定基準」をいう。
【0023】
胴部11と一体成形されている両アーム部(20,30)の内の一のアーム部20は、先端部21に後述するボルト40が装着されるボルト孔22が形成されている。また、他のアーム部30の先端部31には受皿部32が形成されていて、受皿部32には、後述する固定チップ50の基部51が装着される凹部33が形成されていている。更に他のアーム部30は、図2に示す通り、胴部11寄りの基部36から先端部31に向かって徐々に厚くなる肉厚部34が形成されている。
【0024】
ボルト40は、頭部41及び軸部42共に、認定基準で規定されているJIS G 4104に定めるSCr420と同等以上の強度を有する材質で成形されていて、部材を挟締する軸部42の先端部43は強度・耐摩耗性を確保するため熱処理によりHRA75以上に硬化されている。
【0025】
固定チップ50は、基部51と部材を挟締する先端部52とが一体成形されていて、ボルトの認定基準で規定されているJIS G 4104に定めるSCr420と同レベル以上の強度を有する材質であるSCM・SNCM材等の高強度材を熱処理したもので成形されている。
【0026】
更に、先端部52には山型凸部53が形成されていて、図3に示す通り、山型凸部53の頂部54を通る位置で切断した垂直断面における山型凸部53の斜辺55が、凹部33が形成されないとしたときの受皿部32の端面35となす角度αは、30度乃至60度の範囲に設定することが好適であり、45度に設定することがより好適である。
【0027】
固定チップ50の基部51は、図4に示すような状態で、他のアーム部30の受皿部32に形成されている凹部33に接着剤等により固定結合されることで、装着されている。
【0028】
尚、固定チップ50の基部51を他のアーム部30の受皿部32に形成されている凹部33に装着する他の方法として、固定チップ50の基部51に螺子部を形成し、凹部33に形成した螺子部とで螺合させることで固定結合させても良い。更に、締め代を45/1000mm程度確保し、固定チップ50の基部51を凹部33に圧入し、または焼嵌めすることで固定結合させても良い。
【0029】
また、固定チップ50の先端部52に形成されている山型凸部53の形状は、図5に示す形状としても良く、この場合の固定チップ50を他のアーム部30に装着した状態は、図6に示す通りとなる。
【0030】
更に、図7及び図8に示す通り、固定チップ50は、他のアーム部30に形成された貫通された凹部33に装着するようにしても良い。
【0031】
上述の通り、本発明に掛かる片ボルト式挟締金具1は、本体10の胴部11と一体成形されている他のアーム部30の受皿部32に形成されている凹部33に装着された固定チップ50が、一のアーム部20に装着されているボルト40とで複数の部材を挟締するので、受皿部32の材質の強度を認定基準で規定されているボルト40の先端部43の材質の強度と同レベルにする必要がない。従って、受皿部30と一体成形されている本体10をボルト40の材質と別に設定することが可能となり、認定基準に適合させた強度の材料で成形することで、材料費の軽減を図ることが可能となる。
【0032】
また、固定チップ50の先端部52に山型凸部53を形成させているので、複数の部材をボルト40とで挟締するときに複数の部材を確実に挟締することが可能となる。しかも、頂部54を通る位置で山型凸部53を切断したときの断面における斜辺55が、凹部33が形成されないとしたときの受皿部32の端面35となす角度を30度乃至60度の範囲に設定しているので、複数の部材を挟締したときに固定チップ50に作用する外力を分散することができ、固定チップ50の破損を防止することが可能となる。
【0033】
また、受皿部32に形成された凹部33に装着された固定チップ50が、ボルト40とで複数の部材を挟締するので、固定チップ50の先端部52の材質を本体10の受皿部32の材質と別個に設定することが可能となり、固定チップ50の先端部52の材質をボルト40の先端部43の材質と同レベルにしても材料費の上昇を抑制することができ、しかも認定基準に適合させることが可能となる。
【0034】
また、固定チップ50が装着されている受皿部32が形成されている他のアーム部30は、基部36から先端部31に向かって肉厚が徐々に厚くなる肉厚部34が形成されているので、固定チップ50とボルト40とで複数の部材を挟締するときの挟締位置が受皿部32側に偏り他のアーム部30に偏心荷重が掛かっても他のアーム部30が破損するのを防止することが可能となる。
【0035】
また、受皿部32に形成された凹部33に固定チップ50を装着させる場合、固定チップ50の基部51と凹部33に螺子部を形成して螺合により固定結合させているので、固定チップ50が凹部33から脱落しないようにすることが可能となる。また、固定チップ50を凹部33に接着剤で固定結合させているので、固定チップ50が凹部33から脱落しないようにすることが可能となる。更に、締め代を45/1000mm程度確保して、固定チップ50を凹部33に圧入により固定結合させ、または固定チップ50を凹部33に焼嵌めにより固定結合させているので、固定チップ50が凹部33から脱落しないようにすることが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 片ボルト式挟締金具
10 本体
11 胴部
20,30 アーム部
21,31 先端部
22 ボルト穴
32 受皿部
33 凹部
34 肉厚部
35 端面
36 基部
40 ボルト
41 頭部
42 軸部
43,52 先端部
50 固定チップ
51 基部
53 山型凸部
54 頂部
55 斜辺
α 斜辺と端面のなす角度



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8