特許第5959329号(P5959329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959329パンタグラフ式荷役物運搬機の水平バランス装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959329
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】パンタグラフ式荷役物運搬機の水平バランス装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 19/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B66F19/00 D
   B66F19/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-133546(P2012-133546)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256362(P2013-256362A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100735
【氏名又は名称】アイコクアルファ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】長沼 憲昌
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−277700(JP,A)
【文献】 特開平9−175800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンタグラフ式アームの第1アームと第2アームを有し、本体部と該第1アームを繋いだエアーシリンダを有し該第2アーム先端位置により該エアーシリンダのエアー圧を可変させる制御部を有し、該パンタグラフ式アームの水平流れの防止をした荷役物運搬機において、荷役物の重量を昇降機構のモータの電流値で判断し、該第2アームの先端位置と該荷役物の重量に応じて該エアーシリンダのエアー圧を可変させる制御部を有した事を特徴としたパンタグラフ式荷役物運搬機の水平バランス装置。
【請求項2】
エアーシリンダへの供給圧が一定圧のエリアを複数設け、各該エリアとの間に供給圧を適宜可変させる可変エリアを設け、該第2アームの先端が該可変エリアを移動する時に該エアーシリンダのエアー圧を可変させることを特徴とした請求項1記載のパンタグラフ式荷役物運搬機の水平バランス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンタグラフ式の荷役物運搬機のアームの水平の流れに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、アームの水平方向への流れを防止する為に、本体とアームを繋ぐスプリング又はエアーシリンダがあった。スプリングの場合は、スプリングの伸びの長さと引っ張る力は比例しているのに対し、比例関係にないアームパターンがあるため、アームの水平方向への流れを防止できないエリアがあった。エアーシリンダの場合は、シリンダに一定圧を供給して、常に一定の力で引っ張っている。しかし、アームは、台座中心側、台座外側、昇降の下側、昇降の上側の位置により、アームが水平に流れようとする力が違うので、作業者は操作が重い位置があった。(特許文献1)特許文献1には、スプリングの代わりにエアーシリンダを用いてもよいと記載してある。また、アームは鉄製が多く、荷役物が重いほどアームが撓み、荷役物が重いほどアームが水平方向に流れやすくなる。水平とは、台座中心に外側から内側、内側から外側への方向をいう。ちなみに、旋回は、台座を中心に円周に回す事を言う。この発明では、水平方向の操作を述べる。
【0003】
図10は、従来の荷役物運搬機の概要図と第1アームと本体とを繋ぐシリンダとスプリングを取り付けた、エリアの区分けである。台座21に荷役物運搬機22が取り付けられている。荷役物運搬機22は、第1アーム23、第2アーム24、昇降機構25、旋回台26、昇降機構25のモータ(図示せず)、本体27と第1アーム23を繋いだシリンダ28とスプリング29を備えており、3次元に荷役物を運搬できる。荷役物と吊り具は図示していない。昇降機構25は本体27の中にある。エリアA〜Oのマス30は、側面から見た第2アーム24の先端の位置で、水平方向と上下方向の範囲を区切っている。水平方向をX軸、上下方向をY軸としている。後述する操作力とその方向について説明する。エリアA・B・F・G・K・Lは、第2アーム24先端が内側に流れようとする。エリアD・E・I・J・N・Oは、第2アーム24先端が外側に流れようとする。よって、流れようとする方向の逆方向に移動する時の作業者の操作力の数値を用いる。エリアC・H・Mは、中立している場合もあるが、外側又は内側に流れようとする場合もあるので、操作力が大きい方を採用した。例え中立しても、荷役物重量が増えるほど、操作力は大きくなる。図10の従来例と図1の実施例1は、荷役物を持ち上げ可能な定格重量が340kgの荷役物運搬機である。荷役物と吊り具は図示していない。
【0004】
図11は、シリンダ28の供給圧が一定時の荷役物が350kgの状態の操作力である。操作力は、各エリアの中心での数値である。エリアの端と中心では数値が違う。荷役物が350kgの状態の操作力は、エリアA:22.3kgf、エリアB:7.1kgfであり、エリアAからエリアOまで記載してある。荷役物350kgは、重量が重いので、エリアA・F・C・D・E・I・J・N・Oでは、作業者が操作部から手を放すと、アームが流れてしまう。その他のエリアは、流れはしないが、エリアによっては、流れようとする力が働いている。シリンダ28の供給圧は、どのエリアも0.4kgf/cm2である。
【0005】
図12は、シリンダ28の供給圧が一定時の荷役物が240kgの状態の操作力である。操作力は、各エリアの中心での数値である。エリアの端と中心では数値が違う。荷役物が240kgの状態の操作力は、エリアA:16.1kgf、エリアB:4.6kgfであり、エリアAからエリアOまで記載してある。シリンダ28の供給圧は、どのエリアも0.4kgf/cm2である。
【0006】
図13は、シリンダ28の供給圧が一定時の荷役物が0kgの状態の操作力である。操作力は、各エリアの中心での数値である。エリアの端と中心では数値が違う。荷役物が0kgの状態の操作力は、エリアA:2.4kgf、エリアB:1.1kgfであり、エリアAからエリアOまで記載してある。シリンダ28の供給圧は、どのエリアも0.4kgf/cm2である。
【0007】
また、従来技術には、水平の操作をモータを使って、水平駆動させるものがあった。これは操作レバーからの力をセンサーが感知してモータを駆動していた。よって、モータ駆動の為、全くアームの水平の流れは無い。しかし、操作レバー以外の、アームや荷役物を持って水平移動はできなかった。また、モータ駆動は、そのモータの特性上、スプリングやエアーシリンダに比べ、水平移動がスムースでなかった。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−132987号公報
【特許文献2】特開平11−11898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、スプリングや一定圧のエアーシリンダを用いた水平バランス装置では、アームが流れようとするので操作力が大きくなる点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アームの位置と荷役物の重量に応じて、水平バランス装置のエアーシリンダへの供給圧を可変させることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水平バランス装置では、アーム流れが無くなり、スムースな水平移動の操作ができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、荷役物運搬機と側面エリアの区分けである。(実施例1)
図2図2は、荷役物が350kg時のシリンダの供給圧のテーブルである。(実施例1)
図3図3は、荷役物が240kg時のシリンダの供給圧のテーブルである。(実施例1)
図4図4は、荷役物が100kg時のシリンダの供給圧のテーブルである。(実施例1)
図5図5は、荷役物が0kg時のシリンダの供給圧のテーブルである。(実施例1)
図6図6は、制御のフロー図である。(実施例1)
図7図7は、荷役物が350kgの状態の操作力である。(実施例1)
図8図8は、荷役物が240kgの状態の操作力である。(実施例1)
図9図9は、荷役物が0kgの状態の操作力である。(実施例1)
図10図10は、従来の荷役物運搬機と側面エリアの区分けである。
図11図11は、従来のシリンダの供給圧が一定時の荷役物が350kgの状態の操作力である。
図12図12は、シリンダの供給圧が一定時の荷役物が240kgの状態の操作力である。
図13図13は、シリンダの供給圧が一定時の荷役物が0kgの状態の操作力である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
アームの角度でアーム先端位置をセンシングして、第2アーム先端位置と荷役物重量に応じて、エアーシリンダの供給圧を制御して、スムースな水平移動の操作を実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1の荷役物運搬機と側面エリアの区分けである。台座1に荷役物運搬機2が取り付けられている。荷役物運搬機2は、第1アーム3、第2アーム4、昇降機構5、旋回台6、昇降機構5のモータ(図示せず)、本体7と第1アーム3を繋いだシリンダ8、
本体7と第1アーム3を繋いだスプリング9、シリンダ8の制御部(図示せず)を備えており、3次元に荷役物を運搬できる。荷役物と吊り具は図示していない。昇降機構5は本体7の中にある。エリアA〜Oのマス10は、側面から見た第2アーム4の先端の位置で、水平方向と上下方向の範囲を区切っている。水平方向をX軸、上下方向をY軸としている。第1アーム3と第2アーム4の角度により、第2アーム4の先端位置をセンシングするセンサ(図示せず)を備えている。
【0015】
図2は、実施例1の荷役物が350kg時のシリンダの供給圧のテーブルである。位置関係は、図1のマス10と同じである。エリアA:4.8kgf/cm2、エリアB:4.8kgf/cm2
であり、エリアAからエリアOまで記載してある。エリアの斜線部分は、エリアが移動する時に、その場所に応じて可変する。エリアBからエリアCに移動した時、斜線部分は、シリンダ8の供給圧が4.8kgf/cm2
から4.6kgf/cm2に適宜可変する可変エリアである。エリアBからエリアHに移動するときも同様に適宜可変する。可変させるのは、制御部で演算する。
【0016】
図3は、実施例1の荷役物が240kg時のシリンダの供給圧のテーブルである。位置関係は、図1のマス10と同じである。エリアA:3.4kgf/cm2、エリアB:3.4kgf/cm2
であり、エリアAからエリアOまで記載してある。エリアの斜線部分は、エリアが移動する時に、その場所に応じて可変する。エリアBからエリアCに移動した時、斜線部分は、シリンダの供給圧が3.4kgf/cm2
から3.0kgf/cm2に適宜可変する可変エリアである。エリアBからエリアHに移動するときも同様に適宜可変する。可変させるのは、制御部で演算する。
【0017】
図4は、実施例1の荷役物が100kg時のシリンダの供給圧のテーブルである。位置関係は、図1のマス10と同じである。エリアA:1.5kgf/cm2、エリアB:1.9kgf/cm2 であり、エリアAからエリアOまで記載してある。エリアの斜線部分は、エリアが移動する時に、その場所に応じて可変する。エリアBからエリアCに移動した時、斜線部分は、シリンダの供給圧が1.9kgf/cm2 から1.5kgf/cm2に適宜可変する可変エリアである。エリアBからエリアHに移動するときも同様に適宜可変する。可変させるのは、制御部で演算する。
【0018】
図5は、実施例1の荷役物が無く0kg時のシリンダの供給圧のテーブルである。位置関係は、図1のマス10と同じである。エリアA:0.9kgf/cm2、エリアB:1.3kgf/cm2
であり、エリアAからエリアOまで記載してある。エリアの斜線部分は、エリアが移動する時に、その場所に応じて可変する。エリアBからエリアCに移動した時、斜線部分は、シリンダの供給圧が1.3kgf/cm2
から1.2kgf/cm2に適宜可変する可変エリアである。エリアBからエリアHに移動するときも同様に適宜可変する。可変させるのは、制御部で演算する。
【0019】
図6は、実施例1の制御のフロー図である。最初に、演算11で、第1アーム3と第2アーム4の角度から第2アーム4の先端位置を演算する。次に、演算12で、現在のX座標でのシリンダ圧を、4つあるシリンダ圧テーブを参照して、4テーブル分を演算する。次に、演算13で、現在のY座標でのシリンダ圧を、演算12の演算結果を参照して、4テーブル分を演算する。次に、演算14で、最適シリンダ圧を、現在のモータ電流値と、演算13の演算結果を参照して演算する。言い換えると、3の時点で、4つあるシリンダ圧テーブルごとに最適シリンダ圧が演算されているいるので、それらを1次式でつなぎ、現在の荷役物重量に最適なシリンダの供給圧を演算する。荷役物重量は、昇降機構のモータの電流値で判る。次に、演算15で、演算結果を電空レギュレーターに出力する。電空レギュレーターに出力された結果を基にシリンダ8に最適なエアー圧が供給される。よって、第2アーム4の先端位置と、荷役物の重量に応じて、適宜シリンダ8の供給圧を制御する。
【0020】
図7は、実施例1の荷役物が350kgの状態の操作力である。操作力は、各エリアの中心での数値である。エリアの端と中心では数値が違う。荷役物が350kgの状態の操作力は、エリアA:3.8kgf、エリアB:3.6kgfであり、エリアAからエリアOまで記載してある。
【0021】
図8は、実施例1の荷役物が240kgの状態の操作力である。操作力は、各エリアの中心での数値である。エリアの端と中心では数値が違う。荷役物が240kgの状態の操作力は、エリアA:3.6kgf、エリアB:2.9kgfであり、エリアAからエリアOまで記載してある。
【0022】
図9は、実施例1の荷役物が無く0kgの状態の操作力である。操作力は、各エリアの中心での数値である。エリアの端と中心では数値が違う。荷役物が0kgの状態の操作力は、エリアA:1.2kgf、エリアB:0.8kgfであり、エリアAからエリアOまで記載してある。
【0023】
作動の流れを説明する。荷役物の重量が350kgの場合、エリアFでは、図2に示すシリンダ8の供給圧は
1.9kgf/cm2である。エリアFからエリアGに移動する過程で、図2の斜線部分を通過してエリアGに移動する。よって、図6のフロー図のように、最適なシリンダ8の供給圧を演算し、エアーがシリンダ8に供給される。エリアGでは、シリンダ8の供給圧は2.0kgf/cm2となる。斜線部分を通過する時は、シリンダ8の供給圧は徐々に変化する。シリンダ8の供給圧を一気に切替えると、ギクシャクした動きになるから、徐々に変化させる制御である。
【0024】
荷役物が350kgの場合で従来と本発明の操作力を比較する。エリアFでは、従来のシリンダ8の供給圧が一定の場合はエリアF7.9kgf、エリアG5.2kgfを必要としていた。本発明のシリンダ8の供給圧をエリア毎と重量に合わせて可変させた場合はエリアF3.9kgf、エリアG3.8kgfとなり、水平の操作力が少なくなり、作業者は快適な操作が可能になる。特に、エリアAの操作力を比較すると、顕著である。鉄製のアームは、荷役物が重くなるほどアームが撓みやすくなるが、本発明で、アームが水平に流れなくなる。
【0025】
実施例1では、シリンダ8とスプリング9の両方を用いるが、スプリング9を用いずシリンダ8単体の構成も良い。しかし、シリンダ8とスプリング9の両方を用いることで、シリンダ単体の構成よりエアー供給量を削減でき省エネである。また、万が一、エアーの急激な排出というトラブルが起きたとしても、スプリングでアームの挙動を抑えることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 台座
2 荷役物運搬機
3 第1アーム
4 第2アーム
5 昇降機構
6 旋回台
7 本体
8 シリンダ
9 スプリング
10 マス
11 演算
12 演算
13 演算
14 演算
15 演算
21 台座
22 荷役物運搬機
23 第1アーム
24 第2アーム
25 昇降機構
26 旋回台
27 本体
28 シリンダ
29 スプリング
30 マス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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