(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の取付部材と筒状の第2の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されており、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成された空気室が形成されていると共に、該空気室に連通されたオリフィス通路が形成されている防振装置において、
前記第2の取付部材の一方の開口部が前記本体ゴム弾性体によって閉塞されていると共に、該第2の取付部材の他方の開口部が直接に外部空間に晒された板状のオリフィス部材によって閉塞されており、それら本体ゴム弾性体とオリフィス部材の対向面間に前記空気室が形成されていると共に、該オリフィス部材における厚肉とされた外周部分には周方向に延びて該空気室に連通される前記オリフィス通路が形成されている一方、該オリフィス部材の中央部分が薄肉とされて該外周部分よりも該第2の取付部材の軸方向内方側に位置せしめられていること
を特徴とする防振装置。
前記オリフィス部材が前記第2の取付部材の前記他方の開口部に挿入されて、該第2の取付部材の内周面と該オリフィス部材の外周面が直接に重ね合わされて該オリフィス部材が該第2の取付部材に固定されている請求項2に記載の防振装置。
前記オリフィス部材の外周端部には、外周面に開口して周方向に延びる周溝が形成されており、該周溝の外周側開口が前記第2の取付部材で覆蓋されて前記オリフィス通路が形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の防振装置。
前記第2の取付部材の前記一方の開口部には内周側に突出する挟持部が形成されており、前記本体ゴム弾性体が該挟持部と前記オリフィス部材との間で挟持されている請求項1〜6の何れか1項に記載の防振装置。
前記オリフィス部材における前記挟持部との対向部分に挟持突起が形成されており、該挟持突起が周方向に連続して延びていると共に、該挟持突起が前記オリフィス通路の前記空気室への連通口を外れて設けられている請求項7に記載の防振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、部品点数の少ない簡単且つ軽量な構造によって、有効な防振効果を得ることができる防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様は、第1の取付部材と筒状の第2の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されており、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成された空気室が形成されていると共に、該空気室に連通されたオリフィス通路が形成されている防振装置において、前記第2の取付部材の一方の開口部が前記本体ゴム弾性体によって閉塞されていると共に、該第2の取付部材の他方の開口部が
直接に外部空間に晒された板状のオリフィス部材によって閉塞されており、それら本体ゴム弾性体とオリフィス部材の対向面間に前記空気室が形成されていると共に、
該オリフィス部材における厚肉とされた外周部分には周方向に延びて該空気室に連通される前記オリフィス通路
が形成されている
一方、該オリフィス部材の中央部分が薄肉とされて該外周部分よりも該第2の取付部材の軸方向内方側に位置せしめられていることを、特徴とする。
【0008】
このような第1の態様に従う構造とされた防振装置によれば、第2の取付部材の他方の開口部を閉塞して空気室を画成する部材と、オリフィス通路を形成する部材とが、何れも、オリフィス部材によって構成されている。それ故、空気の流動作用に基づく優れた防振効果を発揮する防振装置を、部品点数の少ない簡単な構造で軽量且つコンパクトに実現することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された防振装置において、前記オリフィス部材が前記第2の取付部材に直接に重ね合わされて固定されているものである。
【0010】
第2の態様によれば、第2の取付部材とオリフィス部材の間に特別なシール構造が設けられることなく、直接に重ね合わされて固定されていることから、構造の簡略化がより有利に実現される。しかも、流体として空気を用いることから、第2の取付部材とオリフィス部材の間で多少の漏れが生じたとしても、外部の空気によって補充されることから、流体封入式防振装置の液漏れのように防振性能の悪化が問題となることがなく、目的とする防振性能を安定して得ることができる。それ故、第2の取付部材とオリフィス部材の重ね合わせ面の寸法精度や滑らかさ等は、高度に要求されることがなく、製造の容易性が実現される。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載された防振装置において、前記オリフィス部材が前記第2の取付部材の前記他方の開口部に挿入されて、該第2の取付部材の内周面と該オリフィス部材の外周面が直接に重ね合わされて該オリフィス部材が該第2の取付部材に固定されているものである。
【0012】
第3の態様によれば、オリフィス部材が第2の取付部材の内周側に配設されることから、小径のオリフィス部材によって第2の
取付部材の他方の開口部を閉塞して空気室を形成することができる。また、第2の取付部材の内周面とオリフィス部材の外周面が直接に重ね合わされており、第2の取付部材とオリフィス部材の間にシールゴム層等のシール構造が設けられていないことから、部品点数の削減や構造の簡略化が実現される。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記オリフィス部材の外周端部には、外周面に開口して周方向に延びる周溝が形成されており、該周溝の外周側開口が前記第2の取付部材で覆蓋されて前記オリフィス通路が形成されているものである。
【0014】
第4の態様によれば、オリフィス通路の通路長を大きく確保することが可能となって、オリフィス通路のチューニング周波数をより低周波数に設定することができると共に、所定のチューニング周波数に設定されたオリフィス通路をより大きな通路断面積で形成することができる。しかも、オリフィス通路がオリフィス部材の外周面に開口する周溝を利用して形成されていることから、オリフィス部材の加工が容易であり、通路長の大きなオリフィス通路を簡単に得ることができる。なお、オリフィス通路を流動する流体が空気であることから、流体密性が高度に要求されることはなく、周溝の外周側開口を第2の取付部材で覆蓋してなるオリフィス通路であっても、特別なシール構造を省略することが可能である。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記オリフィス通路が前記空気室と大気中とを相互に連通するように設けられているものである。
【0016】
第5の態様によれば、振動入力時に、空気室に連通されたオリフィス通路の一端と、大気中に連通されたオリフィス通路の他端との間で大きな圧力差が生じることから、オリフィス通路を通じてより多くの空気が流動して、流体の流動作用に基づく防振効果が有利に発揮される。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1〜第4の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記オリフィス通路は、一方の端部が前記空気室に連通されていると共に、他方の端部が閉鎖されているものである。
【0018】
第6の態様によれば、オリフィス通路の他方の端部が閉鎖されていることにより、オリフィス通路およびそれに繋がる空気室への異物の侵入が防止されることから、耐久性の向上や防振性能の安定した維持が実現される。なお、オリフィス通路の他方の端部が閉鎖されていても、流動する流体が空気であることから、空気の圧縮性に基づいて、オリフィス通路における流体流動が実質的に生じて、気柱共振等に起因する防振効果が有効に発揮される。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1〜第6の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記第2の取付部材の前記一方の開口部には内周側に突出する挟持部が形成されており、前記本体ゴム弾性体が該挟持部と前記オリフィス部材との間で挟持されているものである。
【0020】
第7の態様によれば、本体ゴム弾性体が第2の取付部材に対して非接着で取り付けられることにより、本体ゴム弾性体の第2の取付部材による拘束が抑えられて、大荷重の入力時に本体ゴム弾性体の損傷が防止されることで、耐久性の向上が図られる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載された防振装置において、前記オリフィス部材における前記挟持部との対向部分に挟持突起が形成されており、該挟持突起が周方向に連続して延びていると共に、該挟持突起が前記オリフィス通路の前記空気室への連通口を外れて設けられているものである。
【0022】
第8の態様によれば、オリフィス部材に挟持突起が形成されることにより、挟持部と挟持突起の間に狭窄された領域を形成することができて、本体ゴム弾性体を充分な締め代で挟み込んで支持することができる。しかも、挟持突起が周方向に連続して延びていることで、本体ゴム弾性体を周上の広い範囲に亘って挟持することができて、本体ゴム弾性体の第2の取付部材に対する非接着での取り付けが安定して実現される。更に、挟持突起がオリフィス通路の空気室への連通口を外れて設けられていることから、オリフィス通路を通じた空気の流動が挟持突起によって妨げられることもない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、オリフィス通路が、第2の取付部材の他方の開口部を閉塞して空気室を外部空間から画成するオリフィス部材に形成されていることから、部品点数の少ない簡単且つ軽量な構造によって、流体の流動作用に基づく優れた防振性能を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1には、本発明に従う構造とされた防振装置の第1の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、マウント軸方向である
図1中の上下方向を言う。
【0027】
より詳細には、第1の取付部材12は、鉄やアルミニウム合金等で形成された高剛性の部材であって、逆向きの略円錐台形状を有する固着部18と、固着部18から上方に突出する略円柱形状の取付部20とを、一体で備えている。更に、固着部18の上端部には、外周側に突出する円環板状のフランジ部22が、全周に亘って一体形成されている。更にまた、取付部20には、中心軸上を上下に延びて上面に開口するボルト穴24が形成されており、内周面にねじ山が形成されている。
【0028】
第2の取付部材14は、第1の取付部材12と同様に高剛性の部材とされており、薄肉大径の略円筒形状を有している。また、第2の取付部材14は、軸方向中間部分に段差部26を備えており、段差部26よりも上側が小径筒部28とされていると共に、段差部26よりも下側が大径筒部30とされている。
【0029】
そして、第1の取付部材12が第2の取付部材14と同一中心軸上で上方に配置されて、それら第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状とされており、その小径側の端部が第1の取付部材12の固着部18およびフランジ部22に重ね合わされて加硫接着されていると共に、大径側の端部が第2の取付部材14の小径筒部28と大径筒部30の上端部とに重ね合わされて加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体16は、第1の取付部材12と第2の取付部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0030】
さらに、本体ゴム弾性体16には、大径凹所32が形成されている。大径凹所32は、本体ゴム弾性体16の大径側端面に開口する凹所であって、開口側が大径となる逆向きの略すり鉢形状を呈している。
【0031】
更にまた、本体ゴム弾性体16には、ストッパゴム34が一体形成されている。ストッパゴム34は、本体ゴム弾性体16の小径側端部から上方に突出して設けられており、第1の取付部材12のフランジ部22の外周面と上面に加硫接着されている。
【0032】
また、本体ゴム弾性体16の一体加硫成型品には、オリフィス部材36が取り付けられている。オリフィス部材36は、略円板形状を有する硬質の部材であって、鉄やアルミニウム合金等の金属材料や硬質の合成樹脂材料等で形成されている。更に、オリフィス部材36には、径方向中央部分において上面に開口する円形の中央凹所38が形成されており、後述する空気室44の容積が大きくされている。なお、オリフィス部材36の径方向中央部分は、中央凹所38と対応する円形の凹所が下面に開口して形成されることにより、外周部分よりも薄肉とされている。
【0033】
更にまた、厚肉とされたオリフィス部材36の外周部分には、周溝40が形成されている。周溝40は、オリフィス部材36の外周面に開口して周方向に延びる凹溝であって、本実施形態では螺旋状をなして周方向に2周弱の長さで延びている。
【0034】
かくの如き構造とされたオリフィス部材36は、第2の取付部材14に対して下側の開口部分に挿入されて、第2の取付部材14によって支持されている。即ち、オリフィス部材36は、大径筒部30における本体ゴム弾性体16の固着部分を外れた部分に下方から圧入されており、オリフィス部材36の外周面が第2の取付部材14の内周面に直接重ね合わされた状態で、第2の取付部材14に対して固定されている。更に、オリフィス部材36の第2の取付部材14への圧入後に、第2の取付部材14の下端部が縮径加工されることで、下方に向かって次第に小径となるテーパ係止部42が形成されている。これにより、オリフィス部材36の下方への変位が、テーパ係止部42への当接によって制限されており、オリフィス部材36の第2の取付部材14からの抜けが防止されている。
【0035】
なお、オリフィス部材36が第2の取付部材14の大径筒部30に対して下方から挿入された後、第2の取付部材14に対して八方絞り等の縮径加工が施されることにより、第2の取付部材14の内周面がオリフィス部材36の外周面に圧接されて、オリフィス部材36が第2の取付部材14に嵌着固定されてるようにしても良い。この場合には、テーパ係止部42を第2の取付部材14に対するオリフィス部材36の固定と同時に形成することもできる。
【0036】
このようにオリフィス部材36が第2の取付部材14に取り付けられることによって、第2の取付部材14は、上側の開口部が本体ゴム弾性体16で閉塞されていると共に、下側の開口部がオリフィス部材36で閉塞されている。そして、本体ゴム弾性体16とオリフィス部材36との軸方向対向面間には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される空気室44が形成されている。この空気室44は、空気で満たされている。
【0037】
また、オリフィス部材36に形成された周溝40は、外周側の開口が第2の取付部材14で覆蓋されることにより、トンネル状の流路とされている。そして、トンネル状流路の一方の端部が上連通口46を通じて空気室44に連通されていると共に、他方の端部が下連通口48を通じて大気に連通されている。これにより、オリフィス部材36には、空気室44と大気中とを相互に連通するオリフィス通路50が形成されている。なお、オリフィス通路50のチューニング周波数は、特に限定されるものではないが、例えば、エンジンシェイクに相当する数Hz程度の低周波数に設定される。
【0038】
このような構造とされたエンジンマウント10は、第1の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第2の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられており、パワーユニットが車両ボデーによってエンジンマウント10を介して防振支持されている。かかる車両への装着状態において、エンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、空気室44の内圧が大気圧に対して相対的に変化して、オリフィス通路50を通じて空気が流動する。これにより、流体の流動作用に基づいて目的とする防振効果(高減衰効果)が発揮されるようになっている。
【0039】
ここにおいて、エンジンマウント10では、空気室44を画成する部材と、オリフィス通路50を形成する部材とが、1つのオリフィス部材36によって構成されている。それ故、部品点数の少ない簡単な構造で、流体の流動作用による優れた防振効果を発揮するエンジンマウント10が実現される。
【0040】
また、流体として空気を用いることで、防振特性に影響するほどの多量の漏れでなければ流体の漏れが問題となり難く、第2の取付部材14とオリフィス部材36の間に特別なシール構造を設ける必要がない。それ故、構造の更なる簡略化が図られると共に、部材の寸法誤差の許容範囲が大きくされる。更に、第2の取付部材14とオリフィス部材36の間にシールゴム等がなく、それら第2の取付部材14とオリフィス部材36が直接に重ね合わされて固定されていることから、オリフィス部材36を第2の取付部材14に対して圧入によって容易に組み付けることも可能である。
【0041】
図2には、本発明に従う構造とされた防振装置の第2の実施形態として、自動車用のエンジンマウント60が示されている。なお、以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0042】
すなわち、エンジンマウント60では、第2の取付部材14の内周面にシールゴム層62が被着形成されている。シールゴム層62は、薄肉大径の略円筒形状を有するゴム層であって、本体ゴム弾性体16と一体形成されて、本体ゴム弾性体16の外周端から下方に延び出している。このシールゴム層62は、外周面が第2の取付部材14の大径筒部30の内周面に重ね合わされて固着されており、大径筒部30の内周面がシールゴム層62で被覆されている。
【0043】
そして、第2の取付部材14の大径筒部30におけるシールゴム層62の固着部分には、オリフィス部材36が嵌着されている。即ち、第2の取付部材14の大径筒部30に対してオリフィス部材36が挿入された後、第2の取付部材14に対して縮径加工が施されて、第2の取付部材14の内周面がオリフィス部材36の外周面に対してシールゴム層62を介して押し当てられている。これにより、オリフィス部材36が第2の取付部材14に対して流体密に組み付けられて、空気室44とオリフィス通路50が形成されている。
【0044】
このようなエンジンマウント60によれば、第2の取付部材14とオリフィス部材36の間にシールゴム層62が設けられていることによって、それら第2の取付部材14とオリフィス部材36の間を通じた空気の漏れが低減される。それ故、振動入力時には、空気室44と大気中との間でオリフィス通路50を通じた空気の流動がより効率的に惹起されて、優れた防振効果を得ることができる。
【0045】
図3には、本発明に従う構造とされた防振装置の第3の実施形態として、自動車用のエンジンマウント70が示されている。エンジンマウント70は、第1の取付部材12と第2の取付部材72が本体ゴム弾性体73で弾性連結された構造を有している。
【0046】
より詳細には、第2の取付部材72は、全体として薄肉大径の略円筒形状を有しており、筒状部74の上端に挟持部76が一体形成された構造を有している。筒状部74は、略一定の断面形状で上下に延びる円筒形状とされている。挟持部76は、筒状部74の上端から内周側に突出して設けられており、下方に凹の球殻断面で全周に亘って連続して延びる外周嵌合部78を有している。更に、挟持部76は、外周嵌合部78の内周側に設けられて、下方に凸の球殻断面で全周に亘って連続して延びる内周挟持部80と、内周挟持部80の内周端から上方に突出して設けられて、上方に向かって拡開するテーパ形状の折返し部82とを一体で備えている。
【0047】
本体ゴム弾性体73は、厚肉大径の略円錐台形状を有していると共に、上面に開口して環状に延びる挟持凹溝84が、内周挟持部80に対応する溝断面形状で形成されることにより、径方向の中間において部分的に薄肉とされている。更に、本体ゴム弾性体73における挟持凹溝84よりも外周側には、軸方向両側に突出して挟持凹溝84の形成部分よりも厚肉とされた係止部86が形成されている。このような構造とされた本体ゴム弾性体73は、小径側端部に第1の取付部材12が加硫接着されており、第1の取付部材12を備えた一体加硫成形品88として形成されている。
【0048】
そして、本体ゴム弾性体73の一体加硫成形品88は、
図4に示されているように、第2の取付部材72に対して下方から挿入されて、挟持凹溝84に内周挟持部80が重ね合わされると共に、係止部86の上方への突出部分が外周嵌合部78に嵌め込まれている。
【0049】
また、第2の取付部材72にオリフィス部材90が取り付けられることによって、本体ゴム弾性体73が第2の取付部材72とオリフィス部材90の間で挟持されている。オリフィス部材90は、第1の実施形態のオリフィス部材36と同様に、大径の略円板形状とされて、径方向の中央部分に中央凹所38が形成されていると共に、外周部分には周溝40が形成されている。
【0050】
さらに、オリフィス部材90には、挟持突起92が形成されている。挟持突起92は、厚肉とされた外周部分の内周端から上方に突出する突起であって、突出先端面が円弧状の湾曲面で構成された略一定の断面形状で、周方向に一周弱の長さで連続して延びている。更に、挟持突起92の周方向端部間を形成方向に延びる溝状の分断部94が、オリフィス通路50の上連通口46と位置決めされており、挟持突起92が上連通口46を外れて設けられている。なお、挟持突起92は、後述するオリフィス部材90の第2の取付部材72への装着状態において、第2の取付部材14の挟持部76と上下に対向して配置される位置に形成されている。
【0051】
そして、オリフィス部材90は、第2の取付部材72に対して下方から圧入固定されており、
図3に示されているように、本体ゴム弾性体73が第2の取付部材72とオリフィス部材90との間に挟持されている。即ち、本体ゴム弾性体73の外周端部は、上面が第2の取付部材72の挟持部76に重ね合わされていると共に、下面がオリフィス部材90の外周部分に重ね合わされており、挟持凹溝84の形成部分において内周挟持部80と挟持突起92の間で挟持されている。更に、本体ゴム弾性体73の係止部86の上方への突出部分が外周嵌合部78に嵌め入れられていると共に、係止部86の下方への突出部分が第2の取付部材72の筒状部74と挟持突起92との対向面間に嵌め入れられており、本体ゴム弾性体73の係止部86が内周挟持部80および挟持突起92の外周面に当接係止されている。これらによって、本体ゴム弾性体73の外周端部が、第2の取付部材72の挟持部76とオリフィス部材90との間に挟持されていると共に、荷重入力による内周側への抜けが防止されており、本体ゴム弾性体73が第2の取付部材72に対して非接着で取り付けられている。なお、本体ゴム弾性体73の係止部86には、同心円状に配置されて下方に突出する2つの弾性シール突部96が一体形成されて、それぞれ全周に亘って連続して延びている。この弾性シール突部96がオリフィス部材90の上面に押し当てられることで、空気室44の密閉性が高められている。
【0052】
また、本体ゴム弾性体73の一体加硫成形品88とオリフィス部材90が第2の取付部材72に取り付けられることで、本体ゴム弾性体73とオリフィス部材90の間には空気室44が形成されている。
【0053】
また、オリフィス部材90に形成された周溝40の開口が第2の取付部材72で覆蓋されることにより、空気室44と大気中とを相互に連通するオリフィス通路50が形成されている。更に、オリフィス通路50の空気室44側の端部を構成する上連通口46が、挟持突起92の周方向端部間に設けられた分断部94に対して位置決めされており、挟持突起92が上連通口46の開口を外れて形成されている。これにより、オリフィス通路50が分断部94を通じて空気室44に連通されている。
【0054】
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント70においても、空気室44を形成する部材と、オリフィス通路50を形成する部材が、1つのオリフィス部材90で構成されていることから、部品点数の少ない簡単な構造によって、空気の流動作用に基づいた優れた防振効果を得ることができる。
【0055】
また、エンジンマウント70では、本体ゴム弾性体73が第2の取付部材72に対して非固着で取り付けられて、本体ゴム弾性体73の第2の取付部材72による拘束が軽減されていることから、大荷重の入力によって本体ゴム弾性体73が大きく弾性変形しても、本体ゴム弾性体73の損傷が防止される。
【0056】
さらに、第2の取付部材72に内周挟持部80が設けられていると共に、オリフィス部材90に挟持突起92が形成されており、本体ゴム弾性体73の外周部分が内周挟持部80と挟持突起92の対向面間に形成される狭窄された領域で充分に挟持されている。しかも、内周挟持部80と挟持突起92の間に形成された狭窄領域よりも外周側に挿入される本体ゴム弾性体73の係止部86が、内周挟持部80および挟持突起92への係止によって、内周側への抜けを防止されている。
【0057】
図5には、本発明に従う構造とされた防振装置の第4の実施形態として、自動車用のエンジンマウント100が示されている。エンジンマウント100は、第1の取付部材12と第2の取付部材102が本体ゴム弾性体16で弾性連結された構造を有している。
【0058】
第2の取付部材102は、上下方向に延びる薄肉大径の略円筒形状を有しており、全長に亘って略一定の断面形状を有している。そして、第2の取付部材102の内周面には本体ゴム弾性体16の大径側端部の外周面が重ね合わされて加硫接着されている。本実施形態において、本体ゴム弾性体16は、第1の取付部材12と第2の取付部材102とを備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0059】
また、第2の取付部材102には、オリフィス部材104が取り付けられている。オリフィス部材104は、高剛性の部材とされており、厚肉大径の略円板形状を有する取付板部106と、取付板部106の径方向中間部分から上方に突出する嵌着筒部108とを、一体で備えている。
【0060】
より具体的には、取付板部106は、第2の取付部材102よりも大径の略円板形状を有しており、外周部分には複数のボルト孔110が厚さ方向に貫通して形成されている。更に、取付板部106の径方向中央には、厚さ方向に貫通する連通孔112が形成されている。また、取付板部106には、上方に突出する係止突起114が形成されており、嵌着筒部108よりも内周側において全周に亘って連続的に延びている。なお、係止突起114の断面形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、外周面がテーパ形状とされて、突出先端側に向かって次第に狭幅となる略台形断面を有している。
【0061】
嵌着筒部108は、厚肉大径の略円筒形状を有しており、取付板部106の径方向中間部分から上方に突出して形成されている。また、本実施形態の嵌着筒部108では、上面に開口するねじ穴116が周上の複数箇所に形成されており、図示しないストッパ部材がボルトで固定されるようになっている。なお、取付板部106に形成されたボルト孔110は、嵌着筒部108よりも外周側に形成されている。
【0062】
そして、オリフィス部材104の嵌着筒部108が第2の取付部材102に対して下方から圧入されて外嵌固定されている。なお、本体ゴム弾性体16における大径凹所32の開口部が、係止突起114の外周面に重ね合わされて、径方向で位置決めされている。本実施形態では、係止突起114の外周面が突出先端に向かって内周側に傾斜するテーパ形状とされていることから、係止突起114が大径凹所32にスムーズに挿入されて、径方向での位置決め作用が有効に発揮されるようになっている。
【0063】
かかるオリフィス部材104の第2の取付部材102への装着状態において、本体ゴム弾性体16に形成された大径凹所32の開口部がオリフィス部材104で覆蓋されて、空気室44が形成されている。なお、取付板部106における係止突起114の外周側には、上方に突出するシール突起118が全周に亘って連続して形成されており、シール突起118が本体ゴム弾性体16の外周端部下面に押し当てられることで、空気室44の流体密性が高められている。
【0064】
また、オリフィス部材104に形成された連通孔112は、一方の端部が空気室44に連通されていると共に、他方の端部が外部空間(大気中)に連通されており、空気室44と大気中とを相互に連通するオリフィス通路120が、連通孔112を利用して形成されている。
【0065】
かくの如き構造とされたエンジンマウント100は、第1の取付部材12がボルト穴24に螺着される図示しない取付用ボルトによって図示しないパワーユニットに取り付けられるようになっていると共に、第2の取付部材102が、図示しない車両ボデーに対して、オリフィス部材104のボルト孔110に挿通される図示しない取付用ボルトによって取り付けられるようになっている。要するに、本実施形態のエンジンマウント100では、第2の取付部材102がオリフィス部材104を介して車両ボデーに取り付けられるようになっており、オリフィス部材104が車両ボデーへの取付用ブラケットを兼ねている。
【0066】
このような本実施形態に従う構造のエンジンマウント100においても、空気室44の画成と、オリフィス通路120の形成が、1つのオリフィス部材104によって実現されるようになっており、部品点数の少ない簡単な構造で、優れた防振性能を備えたエンジンマウント100が実現される。
【0067】
さらに、本実施形態では、オリフィス部材104が、第2の取付部材102を車両ボデーに連結する取付用ブラケットとしての機能も備えており、更なる部品点数の削減が実現されている。
【0068】
図6には、本発明に従う構造とされた防振装置の第5の実施形態として、自動車用のエンジンマウント130が示されている。
【0069】
より詳細には、エンジンマウント130は、オリフィス部材132を備えている。オリフィス部材132は、第1の実施形態に示されたオリフィス部材36において下連通口48が省略された構造を有している。
【0070】
そして、オリフィス部材132は、第2の取付部材14の大径筒部30に圧入固定されており、周溝40の外周面が第2の取付部材14によって覆蓋されることで、オリフィス通路134が形成されている。このオリフィス通路134は、一方の端部が上連通口46を通じて空気室44に連通されている一方、他方の端部が閉鎖された袋小路状とされており、外部空間から隔てられている。
【0071】
かくの如き構造とされたエンジンマウント130では、車両への装着状態でエンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形による空気室44の容積変化に応じて、空気室44およびオリフィス通路134に充填された空気が圧縮乃至は膨張される。これにより、オリフィス通路134内では実質的な空気の流動が生じて、共振作用等の流動作用に基づいた防振効果が有効に発揮される。
【0072】
このようなエンジンマウント130においても、部品点数の削減による構造の簡略化や軽量化を実現しつつ、流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得ることができる。
【0073】
また、オリフィス通路134の他方の端部が閉鎖されて、オリフィス通路134および空気室44が大気中に開放されることなく、外部空間から遮断された態様で設けられている。それ故、雨水や砂塵等の異物がオリフィス通路134や空気室44に侵入するのを防いで、異物の詰まり等による防振特性への悪影響や、異物の付着による耐久性の低下等が、防止される。
【0074】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記第1〜第3の実施形態では、外周端部にオリフィス通路50を構成する周溝40を備えたオリフィス部材36,90が示されているが、第4の実施形態にも例示されているように、オリフィス部材の構造は特に限定されるものではない。具体的には、例えば、
図7に示されたエンジンマウント140では、オリフィス部材142が第2の取付部材14によって支持されている。このオリフィス部材142は、薄肉大径の略円板形状を有しており、径方向中央部分を厚さ方向に貫通する連通孔144を有していると共に、連通孔144の開口周縁部から下方に突出する流路形成筒部146が一体形成されている。そして、オリフィス部材142は、第2の取付部材14の大径筒部30に挿入されて、縮径加工によって第2の取付部材14がシールゴム層62を介して外周面に押し当てられると共に、テーパ係止部42によって下方への抜けが防止されて、第2の取付部材14に固定されている。かかるオリフィス部材142の第2の取付部材14への装着状態において、連通孔144および流路形成筒部146の中心孔が空気室44と大気中とを連通して設けられており、空気室44と大気中とを相互に連通するオリフィス通路148が、それら連通孔144および流路形成筒部146の中心孔によって構成されている。このようなエンジンマウント140によっても、部品点数の少ない簡単且つ軽量な構造で空気の流動作用に基づいた防振効果を有効に得ることができる。
【0075】
また、オリフィス部材を第2の取付部材に固定する手段としては、前記実施形態で例示された圧入固定や、縮径による嵌着固定の他、
図8に示されているようなかしめ固定等も採用され得る。即ち、
図8に示されたエンジンマウント150では、第2の取付部材152が、薄肉大径の略円筒形状とされた筒状部154と、筒状部154の下端に設けられたフランジ状の段差部26と、段差部26の外周端から下方に延び出す筒状のかしめ片156とを、一体で備えている。そして、オリフィス部材142が第2の取付部材152のかしめ片156に挿入されて、その外周端部が段差部26に下方から重ね合わされた後、オリフィス部材142の外周端部が内周側に折り曲げられたかしめ片156の下端部によってかしめ固定されている。なお、
図8のエンジンマウント150では、オリフィス部材142の外周端部が段差部26とかしめ片156に対して直接に重ね合わされて、かしめ固定されている。
【0076】
また、第5の実施形態では、下連通口48が省略されて、オリフィス通路134が硬質とされたオリフィス部材132の一部で閉塞された構造が例示されているが、オリフィス通路は、例えば、下連通口48が可撓性膜で覆われて閉塞されていても良い。この場合には、可撓性膜によって異物の侵入が防止されると共に、空気の圧縮性に加えて可撓性膜の変形によっても空気の流動が許容されることから、振動入力時にオリフィス通路を通じた空気の流動を効率的に惹起させることができる。
【0077】
さらに、オリフィス通路は、例えば、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される第1の空気室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されて、容積変化が容易に許容される第2の空気室とを、相互に連通するように設けられていても良い。この場合には、オリフィス部材が第1の空気室を画成する部材とオリフィス通路を形成する部材とを兼ねており、下連通口48を直接に可撓性膜で覆う場合に比して、可撓性膜の面積を大きく確保し易くなると共に、空気室およびオリフィス通路内の空気の体積が大きくなって許容される空気の圧縮量が大きくなる。それ故、オリフィス通路を通じた空気の流動がより効率的に許容されて、流体の流動作用に基づいた防振効果が有効に発揮される。
【0078】
本発明の適用範囲は、エンジンマウントに限定されるものではなく、例えばメンバマウントやボデーマウント、デフマウント等にも適用され得る。更に、本発明は、自動車用に用いられる防振装置だけでなく、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等に用いられる防振装置にも適用可能である。