特許第5959348号(P5959348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959348
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】電気かみそり
(51)【国際特許分類】
   B26B 19/38 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B26B19/38 H
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-159371(P2012-159371)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-18402(P2014-18402A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀作
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−089698(JP,A)
【文献】 特開2006−333998(JP,A)
【文献】 特開2002−095878(JP,A)
【文献】 特開2001−190867(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0159795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 19/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部(1)の上側にかみそりヘッド(2)を有し、かみそりヘッド(2)の上面に切断刃部(3)が設けてある電気かみそりであって、
本体部(1)とかみそりヘッド(2)との境界部(N)の後側に、手指をあてがうグリップ体(11)が配置されており、
側面から見るときのかみそりヘッド(2)の中心軸(P3)を基準にして、グリップ体(11)の後面に形成した第1指受部(32)を通る指当て平面(R)が、前記中心軸(P3)に対して前記境界部(N)より下方において交差するように傾斜させてあり、
本体部(1)の前面上部に形成される内凹み部に前指受部(30)が設けてあり、
本体部(1)の前面にスイッチパネル(8)が配置されており、
前指受部(30)に臨むスイッチパネル(8)の上端に、前指受部(30)と協同して手指を受止める指当壁(31)が膨出してあることを特徴とする電気かみそり。
【請求項2】
グリップ体(11)は、その上部が本体部(1)の上端より上方に突設してある請求項1に記載の電気かみそり。
【請求項3】
グリップ体(11)の後面に、グリップ体(11)の大半を占める下側の第1指受部(32)と、第1指受部(32)より上側に配置される第2指受部(33)とが設けられており、
第2指受部(33)が第1指受部(32)の傾斜方向と逆向きに傾斜させてある請求項1または2に記載の電気かみそり。
【請求項4】
グリップ体(11)の上端が、かみそりヘッド(2)の内部に区画される毛屑収容空間(S)の底壁(7a)より上方に突設してある請求項1から3のいずれかひとつに記載の電気かみそり。
【請求項5】
かみそりヘッド(2)の後面とグリップ体(11)の前面のいずれか一方に、かみそりヘッド(2)とグリップ体(11)との間の隙間を塞いでグリップ体(11)の撓み変形を阻止する補強体(51)が設けてある請求項1から4のいずれかひとつに記載の電気かみそり。
【請求項6】
側面から見るときの本体部(1)の中心軸が、前記境界部(N)の近傍において交差する上中心軸(P1)と下中心軸(P2)とでく字状に屈曲されており、
本体部(1)の上中心軸(P1)の延長上にかみそりヘッド(2)の中心軸(P3)を位置させて、かみそりヘッド(2)が本体部(1)の下中心軸(P2)に対して前傾させてあり、
本体部(1)の前面上部に形成される内凹み部に前指受部(30)が設けてある請求項1から5のいずれかひとつに記載の電気かみそり。
【請求項7】
グリップ体(11)が単独部品で構成されて、本体部(1)を構成する本体ケース(4)の背面上部の装着部(40)に固定してある請求項1から6のいずれかひとつに記載の電気かみそり。
【請求項8】
グリップ体(11)と本体ケース(4)の装着部(40)との間に、互いに係合してグリップ体(11)のずれ動きを阻止する係合構造が設けてある請求項7に記載の電気かみそり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かみそりヘッドの上面に切断刃部が設けてある電気かみそりに関し、グリップ構造に関して改良を加えたものである。
【背景技術】
【0002】
電気かみそりのグリップ構造に関して、特許文献1においては、本体ケースの左右側面から背面にわたって、エラストマー製の滑り止め部を連続して設けている。さらに、本体ケースの前面の上部と背面のトリマー操作部にも、エラストマー製の滑り止め部を部分的に形成して、使用時に電気かみそりが滑り落ちるのを防ぎ、使いやすさを向上している。
【0003】
また、特許文献2の電気かみそりにおいては、電気かみそりの使いやすさと操作性を向上するために、本体ケースの上部の前後面に、主表面壁より膨出する銀杏葉状の台地部を形成し、台地部と主表面壁との間にV字状の指受面を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−016813号公報(段落番号0033、図2
【特許文献2】特開2004−222980号公報(段落番号0032、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電気かみそりによれば、本体ケースの表面に手指に対する摩擦抵抗が大きなエラストマー製の滑り止め部を形成するので、使用時に電気かみそりが滑り落ちるのを防止できる。しかし、特許文献1の滑り止め部は、本体ケースの上端より下方にしか形成されていない。しかも、側面から見るときのかみそりヘッドの上下方向の中心線を通る平面を基準面とするとき、本体ケースの前面の上部と背面のトリマー操作部に形成した滑り止め部が、先の基準面と平行になっている。そのため、切断刃部の近くの部分を親指と人指し指とで前後に挟み持ってひげ切断を行う場合などに、電気かみそりが手から滑り落ちやすい。特許文献2の電気かみそりにおいても、本体ケースの前後面に膨出された台地部がほぼ平行であるため、前後の台地部を親指と人指し指で挟み持ってひげ切断を行う場合などに、電気かみそりが手から滑り落ちやすい。
【0006】
本発明者は、電気かみそりの落下事故の発生原因を検討した。その結果、電気かみそりの落下事故は、設計者が用意した「滑り止め部」や「指受面」等の推奨された部位に指先を当てがっていない状態で使用する際に発生しやすいことが判った。具体的には、例えば、滑り止め部や指受面より上側に位置するかみそりヘッドや本体部を、親指と人指し指とで前後に挟み持ってひげ切断を行う場合に、電気かみそりが落下しやすいことが判った。
【0007】
本発明は上記の知見に基づき提案されたものであって、その目的は、ユーザーが電気かみそりの上端側を持った状態で使用する場合であっても、電気かみそりの落下を防止して切断刃部等が破損するのを防止できる電気かみそりを提供することにある。
本発明の目的は、使用時の持ちやすさと操作性の向上を実現しながら、使用時の落下をよく防止して使い勝手を向上した電気かみそりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本体部1の上側にかみそりヘッド2を有し、かみそりヘッド2の上面に切断刃部3が設けてある電気かみそりを対象とする。本体部1とかみそりヘッド2との境界部Nの後側に、手指をあてがうグリップ体11を配置する。図1に示すように、側面から見るときのかみそりヘッド2の中心軸P3を基準にして、グリップ体11の後面に形成した第1指受部32を通る指当て平面Rが、前記中心軸P3に対して前記境界部Nより下方において交差するように傾斜してあることを特徴とする。
【0009】
第1指受部32を通る指当て平面Rは、図1に示すように第1指受部32が平坦面で形成してある場合には、側面から見るときの第1指受部32の平坦面を通る平面として特定することができ、指当て平面Rは、上面から見るときの本体部1の中心軸を通る前後方向の垂直平面と直交している。しかし、グリップ体11の第1指受部32の殆どは、例えば縦断面が外膨らみ状に湾曲し、さらに横断面が外膨らみ状に湾曲する3次元平面で形成される。さらに、第1指受部32の左右中央部の縦断面の外形線は、図2(a)に示すように単一の湾曲半径r1で形成した湾曲線である場合と、図2(b)に示すように複数の湾曲半径r1・r2で形成した湾曲線である場合と、図2(c)に示すように単一の湾曲半径r1で形成した内凹み状の湾曲線である場合と、図2(d)に示すように複数の湾曲半径r1・r2・r3で波形に形成した湾曲線である場合などがある。また、第1指受部32の横断面の形状も、縦断面の外形線と同様に外突状の湾曲線である場合と、内凹み状の湾曲線である場合と、複数の湾曲半径で形成した湾曲線である場合などがある。しかし、これらの湾曲線の途中形状の違いは、第1指受部32が平坦面である場合を基本にすると、平坦面の上端(始端部)と下端(終端部)の間の途中形状の変化として理解することができる。従って、本発明においては、図2において第1指受部32の左右中央部の縦断面の外形線の始端部aと終端部bとを結ぶ線を基準線Lにして、この基準線Lを通る縦平面であって、基準線Lを通る縦平面が、上面から見るときの本体部1の中心軸を通る前後方向の垂直平面と大きな交差角度で交差する平面を、第1指受部32を通る指当て平面Rとする。指当て平面Rは、基準線Lを通る平面が、上面から見るときの本体部1の中心軸を通る前後方向の垂直平面と直交する平面で形成することができる。
【0010】
グリップ体11は、その上部を本体部1の上端より上方に突設させる。
【0011】
グリップ体11の後面に、グリップ体11の大半を占める下側の第1指受部32と、第1指受部32より上側に配置される第2指受部33とを設ける。図1に示すように、第2指受部33は第1指受部32の傾斜方向と逆向きに傾斜させる。
【0012】
図5に示すように、グリップ体11の上端は、かみそりヘッド2の内部に区画される毛屑収容空間Sの底壁7aより上方に突設する。
【0013】
かみそりヘッド2の後面とグリップ体11の前面のいずれか一方に、かみそりヘッド2とグリップ体11との間の隙間を塞いでグリップ体11の撓み変形を阻止する補強体51を設ける。
【0014】
側面から見るときの本体部1の中心軸を、前記境界部Nの近傍において交差する上中心軸P1と下中心軸P2とでく字状に屈曲させる。本体部1の上中心軸P1の延長上にかみそりヘッド2の中心軸P3を位置させて、かみそりヘッド2を本体部1の下中心軸P2に対して前傾させる。本体部1の前面上部に形成される内凹み部に前指受部30を設ける。
【0015】
グリップ体11を単独部品で構成して、本体部1を構成する本体ケース4の背面上部の装着部40に固定する。
【0016】
グリップ体11と本体ケース4の装着部40との間に、互いに係合してグリップ体11のずれ動きを阻止する係合構造を設ける。
【0017】
本体部1の前面にスイッチパネル8を配置する。前指受部30に臨むスイッチパネル8の上端に、前指受部30と協同して手指を受止める指当壁31を膨出する。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、本体部1とかみそりヘッド2との境界部Nの後側に、手指をあてがうグリップ体11を配置し、グリップ体11の後面の第1指受部32を通る指当て平面Rを、かみそりヘッド2の中心軸P3に対して境界部Nより下方において交差するように傾斜させた。このように、かみそりヘッド2の中心軸P3と、グリップ体11の後面を通る指当て平面Rを逆ハ字状に配置すると、電気かみそりが手指から滑り落ちようとしても、かみそりヘッド2とグリップ体11の後面の少なくともいずれか一方が親指又は人指し指に引っ掛かるので、電気かみそりの落下を防止できる。従って、ユーザーが電気かみそりの上端側を持った状態で使用する場合であっても、電気かみそりの落下を防止して切断刃部3等が落下衝撃を受けて破損するのをよく防止できる。また、操作しやすい電気かみそりの上端側を持った状態でひげ切断を行えるので、電気かみそりを使用する際の持ちやすさと操作性の向上を実現できる。
【0019】
グリップ体11の上部が本体部1の上端より上方に突設してあると、さらに安定した状態で電気かみそりの上端側を挟み支持し、あるいは握り持つことができる。とくに、小さなスライドストロークで切断刃部3を繰り返し往復させ、あるいは切断刃部3の姿勢を頻繁に変更する使用形態において、電気かみそりをユーザーの意図どおりに操作して、使用時の操作性をさらに向上できる。
【0020】
グリップ体11に第1指受部32と、同指受部32より上側に配置される第2指受部33とを設け、第2指受部33を第1指受部32の傾斜方向と逆向きに傾斜させると、手指によるグリップ体11の保持姿勢を多様に変化させることができる。従って、ユーザーはグリップ体11を自分の好みにあった状態で保持してひげ切断を行うことができ、使用時の操作性をさらに向上することができる。とくに、互いに逆向きに傾斜する第1指受部32と第2指受部33とに指先をあてがった状態では、電気かみそりを安定した状態で支持して、切断刃部3を繰り返し往復させ、あるいは切断刃部3の姿勢を頻繁に変更する使用形態において、電気かみそりをユーザーの意図どおりに操作することができる。
【0021】
グリップ体11の上端を、かみそりヘッド2の内部に区画される毛屑収容空間Sの底壁7aより上方に突設させると、固定刃ホルダー17を取外して毛屑収容空間S内の毛屑の清掃を行なうとき、排出される毛屑が手指に付着するのをグリップ体11で阻止できる。さらに、毛屑収容空間S内を水洗い洗浄するとき、洗浄水が手指に付着するのをよく防止できる。
【0022】
かみそりヘッド2の後面とグリップ体11の前面のいずれか一方に補強体51を設けると、グリップ体11に前向きの外力が作用するとき、グリップ体11が前向きに撓み変形するのを防止できるので、手指によるグリップ体11の保持をさらに的確に行うことができる。また、かみそりヘッド2とグリップ体11との間の隙間を補強体51で塞ぐので、切断刃部3から落下する毛屑が、かみそりヘッド2とグリップ体11との間の隙間に入込んで堆積するのを防止できる。従って、ひげを切断するごとに、かみそりヘッド2とグリップ体11との間に入込んだ毛屑を除去する必要がなく、ひげ切断をより衛生的な状態で行うことができる。
【0023】
本体部1の中心軸を、上中心軸P1と下中心軸P2とでく字状に屈曲させ、かみそりヘッド2を本体部1の下中心軸P2に対して前傾させる電気かみそりによれば、本体部1の前面上部に形成される内凹み部を利用して前指受部30とすることができる。本体部1の中心軸がく字状に屈曲することに伴う内凹み部を利用して前指受部30とするので、別途前指受部30を形成する場合に比べて、本体部1の構造を簡素化できる。また、内凹み状の前指受部30は、同指受部30にあてがった手指が上下にずれ動くのをよく規制できる。さらに、前後に位置する前指受部30とグリップ体11とを挟み支持した状態で電気かみそりを使用する場合に、電気かみそりをより安定した状態で支持して、ひげ切断を迅速に行なうことができる。
【0024】
グリップ体11を単独部品で構成し、これを本体ケース4の装着部40に固定すると、グリップ体11が落下衝撃を受けて破損することがあっても、破損したグリップ体11を新規なグリップ体11と交換するだけで電気かみそりを元の状態に修復できる。また、呈色状態が異なる複数のグリップ体11を設けておくことにより、電気かみそりのデザイン性を拡大できるうえ、ユーザーは自分の好みに合ったグリップ体11を選定して使用することができる。
【0025】
グリップ体11と装着部40との間に、互いに係合してグリップ体11のずれ動きを阻止する係合構造を設けると、使用時に手指による大きな握り力や押圧力がグリップ体11に作用することがあっても、グリップ体11が装着部40に対してずれ動くのを確実に防止できる。従って、グリップ体11と本体部1とを前後に挟んだ状態で支持し、あるいは本体部1とグリップ体11とを同時に握り持った状態で支持する状態において、電気かみそりをぐら付きのない状態で的確に支持できる。
【0026】
前指受部30に臨むスイッチパネル8の上端に指当壁31を膨出すると、例えば前指受部30にあてがった親指の下面を指当壁31で受止めて、親指が下向きに滑るのを規制できる。これにより、前指受部30とグリップ体11の後の第1指受部32とを、親指と人指し指とで挟み持つ場合に、電気かみそりをさらに確りと支持して、ひげ切断をさらに的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る電気かみそりの構造原理を示す要部のみの側面図である。
図2】第1指受部の左右中央部の縦断面の外形線を示す説明図である。
図3】本発明の実施例1に係る電気かみそりの要部の側面図である。
図4】実施例1に係る電気かみそりの正面図である。
図5】実施例1に係る電気かみそりの要部の縦断側面図である。
図6】グリップ体の係合構造を示す背面図である。
図7】グリップ体を装着部に装着した状態の背面図である。
図8図7におけるA−A線断面図である。
図9】グリップ体の使用例を示す側面図である。
図10】グリップ体の別の使用例を示す側面図である。
図11】本発明の実施例2に係るグリップ体の側面図である。
図12】本発明の実施例3に係るグリップ体の一部破断側面図である。
図13】本発明の実施例4に係るグリップ体の側面図である。
図14】本発明の実施例5に係るグリップ体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施例1) 図3ないし図10は、本発明を往復動式の電気かみそりに適用した実施例1を示す。本発明における前後、左右、上下とは、図3図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。なお、構造原理を示す図1の電気かみそりは、本実施例で説明する電気かみそりと基本的に同じであり、第1指受部32が平坦面で形成してある点が異なるだけであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0029】
図4において電気かみそりは、グリップを兼ねる本体部1と、本体部1の上側に設けたかみそりヘッド2とで構成してあり、かみそりヘッド2の上面に切断刃部3が設けてある。図3に示すように、側面から見るときの本体部1の中心軸は、本体部1とかみそりヘッド2との境界部Nの近傍において交差する上中心軸P1と下中心軸P2とでく字状に屈曲させてある。また、側面から見るときのかみそりヘッド2の中心軸P3を上中心軸P1の延長上に位置させて、かみそりヘッド2が本体部1の大半を占める下中心軸P2に対して前傾させてある。
【0030】
本体部1は、上向きに開口する本体ケース4と、同ケース4の内部に収容されるモーター5および2次電池6と、本体ケース4の上端に固定されるヘッド支持ケース7などで構成してある。本体ケース4の前面には、スイッチパネル8が固定されて、その上部にモーター5への通電状態をオン・オフするスイッチノブ9が配置され、スイッチノブ9の下方に発光表示体10が配置してある。また、本体ケース4の背面上部には、手指をあてがうためのグリップケース(グリップ体)11が設けてある。この実施例では、グリップケース11を単独部品で構成して、後述するように本体ケース4の背面上部に固定した。
【0031】
かみそりヘッド2は、前後一対のメイン刃15と、両メイン刃15の間に配置されるセンター刃16と、固定刃ホルダー17などで構成してある。図5に示すように、メイン刃15は、スリット刃からなる可動刃18と、網刃からなる固定刃19とで構成してある。また、センター刃16は、それぞれスリット刃からなる可動刃20と固定刃21とで構成してあり、各固定刃19・21は固定刃ホルダー17で支持してある。モーター5の動力は、その出力軸に固定した偏心カム23と、ヘッド支持ケース7の内部に配置した振動子24で往復動力に変換したのち、駆動軸25を介してメイン刃15およびセンター刃16の各可動刃18・20に伝動される。先の切断刃部3は、一対のメイン刃15とセンター刃16とで構成される。
【0032】
固定刃ホルダー17は、ヘッド支持ケース7の上部周面に被せつけられて、図示していない左右のロック爪で分離不能にロックされている。ヘッド支持ケース7の左右には、ロック解除ボタン28が設けてあり、これらのロック解除ボタン28を進出ばねの付勢力に抗しながら同時に押し込み操作すると、ロック爪をロック解除状態にして固定刃ホルダー17をヘッド支持ケース7から取外すことができる。使用時に切断刃部3で切断された毛屑は、固定刃ホルダー17とヘッド支持ケース7とで区画された毛屑収容空間S(図5参照)内に収容されており、先に説明した要領で固定刃ホルダー17を取外すことにより、各可動刃18・20を露出させて毛屑を排出できる。
【0033】
使用時の持ちやすさと操作性の向上を実現し、さらに使用時に誤って電気かみそりが落下するのを防ぐために、本体部1の背面上部にグリップケース11を設け、さらに、本体部1の前面上部に前指受部30と指当壁31を設けている。
【0034】
図6および図7に示すように、グリップケース11は、各辺部が外突状に湾曲する逆台形状のプラスチック成形品からなり、その後面に、グリップケース11の大半を占める第1指受部32と、第1指受部32より上側に配置される第2指受部33とが設けてある。第1指受部32と第2指受部33は、両者の間の膨出面34で区分されている。第1指受部32の上下3個所には、水平の滑止め溝35が凹み形成してある。第1指受部32がかみそりヘッド2の中心軸P3から離れる向きへ後傾しているのに対して、第2指受部33は、第1指受部32の傾斜方向とは逆向きに前傾してある。第1指受部32の上部と膨出面34との間には、内凹み状に湾曲する指当面36が形成してある。
【0035】
グリップケース11を本体ケース4に対して強固に固定するために、本体ケース4の背面上部に樋体断面状の装着部40を膨出形成し、グリップケース11と装着部40の接合部との間に、グリップケース11のずれ動きを阻止する係合構造を設けている。詳しくは図6に示すように、グリップケース11の下部中央から下向きに第1係合爪41を突出し、同ケース11の中央部の左右に断面L字状の第2係合爪42を対向する状態で突出し、同ケース11の中央部の上下に直線リブ状の第3係合爪43を平行に突出している。また、グリップケース11の両側上部には、くさび状のスライド片44が突出してある。
【0036】
装着部40の側には、第1係合爪41と係合する係合溝45と、第2係合爪42と係合する断面L字状の連結片46と、下側の第3係合爪43と係合する第1切欠47が形成してある。加えて、装着部40の上部左右に、スライド片44をスライド案内するガイド溝48が凹み形成してある。上側の第3係合爪43と係合する第2切欠49は固定刃ホルダー17に形成してある。なお、図6におけるグリップケース11は、係合構造の理解を容易にするために、前後面を逆向きにした状態で表している。
【0037】
グリップケース11を上方から装着部40に差込装着して、図7に示すように、各係合爪41・42・43を係合溝45と連結片46と第1切欠47に係合し、この状態で固定刃ホルダー17をヘッド支持ケース7に装着して第2切欠49を第3係合爪43と係合することにより、グリップケース11を本体ケース4に強固に固定できる。この状態のグリップケース11は、本体ケース4および固定刃ホルダー17によって、前後、左右、上下方向への移動が規制されている。スライド片44がガイド溝48と係合していることも、グリップケース11の左右移動を規制することに役立っている。
【0038】
上記のように、装着部40に固定されたグリップケース11は、その上部が本体部1の上端より上方に突設している。この実施例では、グリップケース11の第1指受部32より上側、つまり膨出面34と第2指受部33を本体部1の上端より上側に突出させて、グリップケース11の上端が、かみそりヘッドの内部の毛屑収容空間Sの底壁7a(ヘッド支持ケース7の上端面)より上方に突設するようにした(図5参照)。このように、グリップケース11の上端が、毛屑収容空間Sの底壁7aより上方に位置させてあると、固定刃ホルダー17を取外して毛屑収容空間S内の毛屑の清掃を行なうとき、排出される毛屑が手指に付着するのをグリップケース11で阻止できる。また、毛屑収容空間S内を水洗い洗浄するとき、手指が濡れるのをよく防止できる。
【0039】
第1指受部32と第2指受部33とは、次のように形成してある。まず、図3に示すように、側面から見るときのかみそりヘッド2の中心を通る中心軸P3を基準にして、グリップケース11の後面の第1指受部32を通る指当て平面Rが中心軸P3に対して境界部Nより下方において交差するように後向きに傾斜させてある。第1指受部32を通る指当て平面Rとは、図2(a)に示すように、第1指受部32の左右中央部の縦断面の外形線の始端aと終端bとを結ぶ基準線Lを想定するとき、基準線Lを通る縦方向の平面であって、上面から見るときの本体部1の中心軸を通る前後方向の垂直平面と直交する平面である。なお、指当て平面Rは、先の基準線Lを通る平面が、上面から見るときの本体部1の中心軸を通る前後方向の垂直平面と大きな交差角度(60度以上〜90度未満)で交差するものであってもよい。以上のように、第1指受部32を通る指当て平面Rを後傾させることにより、前傾するかみそりヘッド2の前面および前指受部30と指当て平面Rとは、上広がり状(逆ハ字状)に傾斜する状態で前後に対向する。先に説明したように、第2指受部33は、第1指受部32の傾斜方向とは逆向きに前傾してある。
【0040】
図3に示すように前指受部30は、本体部1の前面上部に形成される内凹み部を利用して形成する。先に説明したように、本体部1は境界部Nの近傍において交差する上中心軸P1と下中心軸P2とでく字状に屈曲させてあり、そのため、本体ケース4の前壁を上中心軸P1と下中心軸P2に沿って形成することにより、ケース前面の上部に内凹み部が形成される。この内凹み部を前指受部30として利用することにより、第1指受部32と対向する位置に前指受部30を設けることができる。前指受部30の下側にはスイッチパネル8が配置してあり、前指受部30と協同して手指を受止める指当壁31が、スイッチパネル8の上端に膨出形成してある(図3参照)。指当壁31は下凹み状の湾曲面で形成してあり、前指受部30にあてがった親指の下面を受止めて、親指が下向きに滑るのを規制する。
【0041】
先に説明したように、かみそりヘッド2の中心軸P3と、第1指受部32を通る指当て平面Rとが逆ハ字状に傾斜してある関係で、かみそりヘッド2の後面とグリップケース11の前面の間にはV字状の隙間が形成される。この隙間を塞いでグリップケース11の前方への撓み変形を阻止するために補強体51を設けている。補強体51は、かみそりヘッド2の側とグリップケース11の側のいずれの側に設けてあってもよいが、この実施例では、固定刃ホルダー17の後壁を後向きに膨出して補強体51とし、装着部40より上側に突出するグリップケース11の前面を補強体51で受止められるようにした。
【0042】
通常の使用状態においては、図9に示すように、親指を前指受部30にあてがい、他の4指を本体部1の後面にあてがって、人指し指が第1指受部32に当る状態で本体部1を前後に挟み持ち、あるいは、本体部1の周囲を片手で握り持った状態でひげを剃る。いずれの場合にも、かみそりヘッド2の前面と、第1指受部32を通る指当て平面Rとは逆ハ字状に傾斜して、上広がり状の外郭形状になっている。そのため、電気かみそりが手指から滑り落ちようとしても、かみそりヘッド2の前面と第1指受部32の少なくともいずれか一方が、親指又は人指し指と接触して受止められる。従って、電気かみそりの落下を防止して切断刃部3等が破損するのをよく防止できる。
【0043】
本体部1を前後に挟み持った状態では、親指は内凹み状の前指受部30と指当壁31とによって2方向から支持される。また、人指し指は第1指受部32と、その上部の指当面36とによって2方向から支持されるので、全体として電気かみそりを安定した状態で支持することができる。また、親指の下面を指当壁31に押付け、人指し指の上面を指当面36に押付けるようにして電気かみそりを握り持つことにより、電気かみそりの持ちやすさを向上できる。これは、電気かみそりを握り持った状態において、親指および人指し指に互いに逆向きの押付け反力を作用させ、さらに残る3指で本体部1の下半部を受止めて、電気かみそりを手指に対して相対移動する余地のない状態で握り持つことができるからである。
【0044】
電気かみそりを持つ位置がかみそりヘッド2に近付くほど、切断刃部3をより正確にしかもすばやく動かすことができる。その場合には、図10に示すように、親指を前指受部30にあてがい、人指し指を第2指受部33に、中指を第1指受部32にあてがって、本体部1を前後に挟み持つ。この状態では、親指が前指受部30と指当壁31とによって2方向から支持される。また、人指し指と中指とで第2指受部33と第1指受部32とをはさんだ状態で確りと挟み持つことができる。従って、小さなスライドストロークで切断刃部3を繰り返し往復させ、あるいは切断刃部3の姿勢を頻繁に変更して、的確にひげを切断することができ、従来の電気かみそりに比べて操作性を向上できる。
【0045】
図11は、本発明に係るグリップケース11を変更した実施例2を示す。そこでは、グリップケース11の後面に、第1指受部32と、第1指受部32の下部に連続する第3指受部37を設けて、第1指受部32を通る指当て平面Rが、かみそりヘッド2の中心軸P3に対して、境界部Nより下方において大きな角度で交差するようにした。第3指受部37には、滑止め溝35を形成した。この実施例における第1指受部32は、実施例1の第1指受部32に比べて、第1指受部32を通る指当て平面Rとかみそりヘッド2の中心軸P3とで挟まれる角度を大きくして、第1指受部32にあてがった人指し指や中指をさらに確実に受止めることができる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。以下の実施例においても同じ扱いとする。
【0046】
図12は本発明に係るグリップケース11を変更した実施例3を示す。そこでは、グリップケース11を平板状の独立部品で構成して、その後面に第1指受面32のみを設けて、同面32の上下6個所に滑止め溝35を形成した。また、平板状に形成したグリップケース11の後面には、エラストマー製の滑止め体53を固定して、滑止め体53と接触する手指が滑るのを防止できるようにした。この実施例における第1指受部32を通る指当て平面Rは、本体部1の下中心軸P2と概ね平行になっている。
【0047】
図13は本発明に係る電気かみそりおよびグリップ体11を変更した実施例4を示す。そこでは、かみそりヘッド2の全体が、本体部1で前後、左右、上下の各方向へ浮動可能にフロート支持してある。また、グリップ体11は、本体ケース4と一体に形成して、その後面に第1指受部32と第2指受部33を設け、その前面に補強体51をグリップ体11と一体に形成するようにした。さらに、第2指受部33を下凹み状の湾曲面で形成して、第2指受部33にあてがった人指し指が滑るのを、さらに確実に防止できるようにした。また、前指受部30を境界部Nの近傍に設けて、上下方向により近い位置で本体ケース4とグリップ体11を挟み保持できるようにした。
【0048】
図14は本発明に係る電気かみそりおよびグリップケース11を変更した実施例5を示す。そこでは、グリップケース11に実施例2と同様の第1指受部32と第3指受部37を設けるようにした。また、グリップケース11の固定刃ホルダー17との対向面に補強体51を設けるようにした。補強体51の上端とグリップケース11の前面上部には、逆へ字状の凹みが形成されるので、この凹み部分を第2指受部32として利用することができる。この実施例における本体部1の中心軸は、下中心軸P2のみで垂直に形成し、その延長線上にかみそりヘッド2の中心軸P3を位置させるようにした。このように、本発明に係るグリップケース11は、本体部1の中心軸とかみそりヘッド2の中心軸が垂直線上に位置している電気かみそりにも支障なく適用することができる。
【0049】
上記の実施例では、グリップ体11を独立部品で成したがその必要はなく、本体ケース4と一体に形成することができる。その場合には、補強体51をグリップ体11と一体に形成することができる。本発明は、往復動式の切断刃部3を備えた電気かみそり以外に、ロータリー式のメイン刃を含む切断刃部3を備えた電気かみそりにも、支障なく適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 本体部
2 かみそりヘッド
3 切断刃部
4 本体ケース
11 グリップケース(グリップ体)
30 前指受部
31 指当壁
32 第1指受部
33 第2指受部
P1 本体部の上中心軸
P2 本体部の下中心軸
P3 かみそりヘッドの中心軸
R 第1指受部を通る指当て平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
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図14