(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バラ物を貯留する貯留槽の底部の水平床に沿って移動自在に設けられ、バラ物を切り出して水平床に形成した払出口から下方のコンベアにバラ物を払い出す回転払出機の払出制御方法において、回転ホイールの羽根の一回転での各羽根の角度における水平床からのバラ物の払出量を求めておき、回転ホイールの目標払出量に対して各回転角度における前記羽根による払出量の偏差を求め、その偏差に基づいて比例積分制御にて回転ホイールの一回転中の各回転角度の回転速度を制御することを特徴とする回転払出機の払出制御方法。
回転ホイールの一回転での各角度における払出量は、羽根で区画される水平床の各ゾーンの面積変化を回転角毎に求め、バラ物を払出口に払い出す羽根の前記ゾーンの面積変化から推定する請求項1記載の回転払出機の払出制御方法。
回転ホイールは、その回転角がエンコーダにより検出されると共にその回転角を回転ホイールの一回転をセンサで検出し、そのセンサにてエンコーダの検出角を0°〜360°に角度換算し、その角度に基づいて払出量を推定する請求項1記載の回転払出機の払出制御方法。
【背景技術】
【0002】
図12に示すように、発電所、製鉄所では石炭等のバラ物を貯留するサイロや貯留槽10の底部には、コンベア11が設けられた搬出室12が複数設けられ、その搬出室12の上部に、バラ物を掻き出して下部のコンベア11に払い出す回転払出機が走行自在に設けられている。
【0003】
図9〜
図11は、回転払出機13を示し、図において、貯留槽10の底部に形成された搬出室12の上部の水平床14には、その水平床14に沿ってバラ物Bをコンベア11上に落下させる払出口15が形成され、水平床14の両側には、バラ物Bを水平床14に案内するための傾斜壁16が設けられ、払出口15上には、山形状のトンネル部材17が設けられる。
【0004】
回転払出機13は、トンネル部材17内に設けたレール18上を走行する走行台車19と、その走行台車19の下部に設けられ、水平床14上を回転してバラ物Bを切り出して払出口15に落とすための回転ホイール20と、走行台車19に懸吊され払出口15から落下するバラ物Вをコンベア11に案内するシュート21とから構成される。また回転ホイール20は、回転体22に通常2〜8枚の円弧状の羽根23を設けて構成される。
【0005】
この回転払出機13は、走行台車19により回転ホイール20が水平床14上を移動しながら回転して、羽根23が、水平床14上のバラ物Bを切り出して払出口15から落下させ、シュート21を介してコンベア11上に払い出し、コンベア11にて貯留槽10の外部へ搬送する。
【0006】
この回転払出機13でバラ物Bを払い出す際には、コンベア11に常時一定の払出量で払い出すことが望ましい。
【0007】
従来は回転払出機13の回転ホイール20の回転速度を可変とすることで、払出機の流量を変化させ、トータルの払出量の制御を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、回転ホイール20は、その一回転における各羽根23の回転角度での払出量は一定ではなく、脈動を伴う問題がある。
【0010】
回転ホイール20は、その羽根23の枚数を少なくすれば構造が簡単となる反面、羽根23の角度によって払出量が変動するため周期的な脈動が大きくなる。
【0011】
このため、回転速度を速くして払出量を多くすると、一回転での脈動により払出量変化が大きく、コンベア11など下流側の設備のピーク能力を大きくしなければならならず、下流側の設備への負担が大きくなる問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、一回転における払出能力を平均化できる回転払出機の払出制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、バラ物を貯留する貯留槽の底部の水平床に沿って移動自在に設けられ、バラ物を切り出して水平床に形成した払出口から下方のコンベアにバラ物を払い出す回転払出機の払出制御方法において、回転ホイール
の羽根の一回転で
の各羽根の角度における
水平床からのバラ物の払出量を求めておき、回転ホイールの目標払出量に対して各回転角度における
前記羽根による払出量の偏差を求め、その偏差に基づいて比例積分制御にて回転ホイールの一回転中の各回転角度の回転速度を制御することを特徴とする回転払出機の払出制御方法である。
【0014】
請求項2の発明は、回転ホイールは、減速装置を介して駆動モータで回転され、その駆動モータがインバータで回転数可変に制御される請求項1記載の回転払出機の払出制御方法である。
【0015】
請求項3の発明は、回転ホイールの一回転での各角度における払出量は、羽根で区画される水平床の各ゾーンの面積変化を回転角毎に求め、バラ物を払出口に払い出す羽根の前記ゾーンの面積変化から推定する請求項1記載の回転払出機の払出制御方法である。
【0016】
請求項4の発明は、回転ホイールは、その回転角がエンコーダにより検出されると共にその回転角を回転ホイールの一回転をセンサで検出し、そのセンサにてエンコーダの検出角を0°〜360°に角度換算し、その角度に基づいて払出量を推定する請求項3記載の回転払出機の払出制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、回転ホイールの一回転中にその回転ホイールの回転速度を制御することで、脈動を抑え、払出能力を平均化できるので、設備全体がコンパクトになり、設備費が安くなるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の回転払出機の制御方法の一実施の形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明において、2枚羽根からなる回転払出機の払出制御を示し、
図2(a)は、制御ありとなしの一回転(0°〜360°)での各角度における払出量の変化、
図2(b)は、制御時の一回転での各角度における回転速度指令値を示す図である。
【
図3】
図2(b)で回転角度(0°〜90°)における速度指令値を作り出すための払出量のダイアグラムである。
【
図4】
図2(b)で回転角度(100°〜180°)における速度指令値を作り出すための払出量のダイアグラムである。
【
図5】本発明において、6枚羽根からなる回転払出機の払出制御を示し、
図5(a)は、制御ありとなしの一回転(0°〜360°)での各角度における払出量の変化、
図5(b)は、制御時の一回転での各角度における回転速度指令値を示す図である。
【
図6】
図5(b)で回転角度(0°〜60°)における速度指令値を作り出すための払出量のダイアグラムである。
【
図7】本発明において、8枚羽根からなる回転払出機の払出制御を示し、
図7(a)は、制御ありとなしの一回転(0°〜360°)での各角度における払出量の変化、
図7(b)は、制御時の一回転での各角度における回転速度指令値を示す図である。
【
図8】
図7(b)で回転角度(0°〜90°)における速度指令値を作り出すための払出量のダイアグラムである。
【
図12】回転払出機が設けられる貯留槽の破断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
先ず、回転払出機13の構成は、
図9〜
図11で説明した通りである。
【0021】
この回転払出機13の回転ホイール20は、羽根23が2〜8枚と種々形式があるが、本発明においては、回転払出機13のホイール角度に応じて角速度を可変とすることで瞬時払出量を平均化し、脈動を抑制するものである。
【0022】
この
図9〜
図11に示した回転払出機13をさらに詳しく説明すると、回転ホイール20は、減速機24を介して駆動モータ25で回転され、その駆動モータ25がインバータで回転数可変に制御され、回転ホイール20の回転速度を、通常2〜10rpmに制御すると共に、回転ホイール20の角度は、近接センサで0°位置を検出し、エンコーダで回転角度を検出し、一回転中に角度に応じてその回転速度を制御して、脈動を抑えた払い出しが行えるようにしたものである。また、走行台車19にはレール18を走行する車輪を駆動する駆動装置26が設けられる。
【0023】
さて
図1は、本発明の回転払出機の制御方法のブロック図を示したものである。
【0024】
この
図1の制御ブロックにおいては、払出量目標値(t/h)に対して回転ホールの払出量が回転角に応じて払出量が相違し脈動が生じるため、払出量目標値(t/h)に対して回転角毎に偏差e(t)を求め、この偏差を基に、オープンループで比例積分(PI制御)を行うものである。
【0025】
さて、図において、払出量設定器30から払出量目標値(t/h)が減算器31に入力される。
【0026】
一方、回転ホイールの回転は、パルスエンコーダ32により検出され、その検出値がホイール角度換算器33に入力される。また、定数0°発生器34の定数0°がパルス発生器35に入力されると共に回転ホイールの回転角0°の位置が0°補正用近接スイッチ36にて検出され、0°補正用近接スイッチ36で回転ホイールの0°の位置が検出されたときに、パルス発生器35のゲートを開いて、ホイール角度換算器33に0°信号を入力する。ホイール角度換算器33は、パルス発生器35から0°信号(リセット信号)が入力されるごとにパルスエンコーダ32で入力されたホイール角度を0°〜360°の角度に換算し、これを回転角払出量推定器37に出力する。回転角払出量推定器37は、定速回転時の回転角(0°〜360°)に応じた払出量(t/h)=F{ホイール角度(deg)}を関数(又はテーブル)として記憶しており、ホイール角度換算器33から入力される回転角(0°〜360°)の回転角度に応じた払出量を減算器31に出力する。
【0027】
減算器31は、払出量設定器30から入力される払出量目標値と、回転角払出量推定器37から入力される回転角毎の推定払出量との偏差e(t)を求め、以下この偏差を基に、PI制御を行う。
【0028】
PI制御は、操作量(回転速度指令値)をu(t)、偏差をe(t)、比例ゲインをK1、積分ゲインをK2とすると、
u(t)=K1{e(t)+ K2∫e(t)dt}
である。
【0029】
そこで、減算器31の偏差e(t)に乗算器38にて比例ゲインK1が乗算され、加算器39にて積分項が加算される。積分項は、積分値の平均(t/h)40と積分ゲインK2とが乗算器41にて乗算されて生成され、この乗算器41での乗算値を積分項として加算器39に出力する。
【0030】
また回転ホイールの一回転での払出量の偏差が0となる操作量を得るためにはオフセット補正ゲインK3を、加算器42で加算し、さらに加算器43で定速時のホイールの回転速度(rpm)44を加算して速度指令値(rpm)45を生成する。
【0031】
回転ホイール20の一回転で生じる脈動は、回転体22に取り付ける羽根23の枚数で相違するため、回転角払出量推定器37に格納する回転角毎の推定払出量は、その羽根数毎に格納され、実際に払い出している回転ホイール20の羽根数に基づいて推定払出量が出力される。
【0032】
図2(a)は、2枚羽根からなる回転ホイール一回転させたときの回転ホイールの速度制御ありとなしの一回転での各角度における払出量の変化を示し、
図2(b)は、制御時の各角度における回転速度指令値を示し、同様に
図5(a)は、6枚羽根の払出量の変化、
図5(b)は、制御時の各角度における回転速度指令値を、
図7(a)は、8枚羽根からなる回転ホイールの払出量の変化を示し、
図7(b)は、制御時の各角度における回転速度指令値を示したものである。
【0033】
これら
図2(b)、
図5(b)、
図7(b)に示した回転速度指令値は、
図1に示した回転角払出量推定器37で生成される回転角毎の推定払出量を基に作成される。
【0034】
この回転角毎の推定払出量を説明する。
【0035】
図3、
図4は、2枚羽根23からなる回転ホイール20−2を水平床14上で0°〜180°回転させたとき、その回転を10°間隔で示すと共にその各角度におけるバラ物を払出口15へ払い出す払出量を算出するためのダイアグラムを示したものである。
【0036】
この
図3、
図4において、回転ホイール20−2の羽根23にて、バラ物は、AゾーンとBゾーンに区画され、0°〜40°でAゾーン(A
0〜A
40)のバラ物が払出口15に払い出され、30°からВゾーンのバラ物が払い出され、180°で、A
0=B
180、B
0=A
180となり、0°の状態に戻る。
【0037】
これら回転角0°〜180°でのA、Bゾーンの面積は、回転ホイール20−2の直径と羽根形状から求めることができるため、例えば0°〜10°のときの払出量は、(A
0−A
10)×2、10°〜20°のときの払出量は(A
10−A
20)×2で求めることができる。この各角度における払出量は予めテーブルとして、或いは近似した関数で、回転角払出量推定器37に格納される。
【0038】
図6は、6枚羽根23からなる回転ホイール20−6の0°〜180°の回転を10°間隔で示すと共にその各角度におけるバラ物の払出量を算出するためのダイアグラムを示し、図において3枚の羽根23にて、バラ物は、A〜Cゾーンに区画され、0°〜40°でAゾーン(A
0〜A
40)のバラ物が払い出され、30°からВゾーンのバラ物が払い出され、60°で、B
60=A
0となり、0°の状態に戻るため、Вゾーン以下のCゾーン、Dゾーンも、A,Bゾーンの面積変化と同様の払出量で求めることができる。
【0039】
図8は、8枚羽根23からなる回転ホイール20−8の0°〜90°の回転を10°間隔で示すと共にその各角度におけるバラ物の払出量を算出するためのダイアグラムを示し、図において5枚の羽根23にて、バラ物は、A〜Fゾーンに区画され、0°〜10°でAゾーン(A
0〜A
40)と0°〜40°でВゾーン(B
0〜В
40)のバラ物が払い出され、40°からCゾーンのバラ物が払い出され、90°で、C
90=A
0となり、0°の状態に戻るため、Cゾーン以下のD〜Fゾーンは、A〜Cゾーンの面積変化と同様の払出量で求めることができる。
【0040】
このように回転ホイール20の羽根23の枚数に応じて回転角に応じた払出量を回転角払出量推定器37に格納し、払出量目標値と、回転角払出量推定器37から入力される回転角毎の推定払出量との偏差e(t)を求めて、
図2(b)、
図5(b)、
図7(b)に示すように一回転中に各角度で速度指令値を変えて回転ホイールを回転させることで、
図2(a)、
図5(a)、
図7(a)に示すように目標払出量に対して偏差の少ない平均化した払出が可能となる。また、回転払出機の脈動が少なくなることにより、払出量が安定し、下流側コンベアの裕度を小さくすることが可能となる。
【0041】
この回転角度に応じた払出量制御を、さらに説明する。
【0042】
先ず、
図3、
図4に示したように2枚羽根の回転ホイール20−2のAゾーンの面積は、0°で最大で、その面積変化量は0°〜10°が最大で、これを100とすると、10°〜20°で98.6%、20°〜30°で81.7%、30°〜40°で57.0%、40°〜50°で35.9%、50°〜60°で2.1%であり、払出量は100%〜2.1%まで変化する。
【0043】
図2(a)の2点鎖線で示した制御なしの払出量の曲線は、この面積変化から求めたものであり、標準払出量が1000(t/h)、回転ホイールの回転数が3rpmとしたとき、その一回転当たりの払出量変化を示したものである。この制御なしでは、回転ホイールの一回転での払出量は、60°、240°で、標準払出量に対して約10%、0°〜30°、120°〜210°、300°〜360°では標準払出量に対して130%近くとなり、一回転あたりで払出量の大きな脈動を生じる。
【0044】
そこで、本発明では、
図2(b)に示すように、
図3、
図4に示したA、Bゾーンの面積変化から、回転ホイール20−2の一回転当たりの回転速度を0°〜360°で、可変の速度指令値を作成し、その速度指令値で、回転角度60°、240°では、最大約6rpm相当の回転速度とし、0°〜30°、120°〜210°、300°〜360°では、約2.5rpm相当の回転速度とし、トータルで回転ホイールの回転数を結果的に3rpmとすることで、
図2(a)の実線で示した払出量の曲線とすることができる。
【0045】
このように制御することで、0°〜30°、120°〜210°、300°〜360°では、標準払出量にでき、また上述したように回転角60°、240°では、払出量は標準払出量に対して約10%となるが、回転角60°、240°での回転速度を6rpm相当とし、約30°〜60°、210°〜240°までの回転速度を、2.5rpm相当の回転速度から6rpmに上昇させ、回転角60°〜120°、240°〜300°の回転速度を6rpmから2.5rpm相当の回転速度に落とすことで、30°〜120°、210°〜300°の範囲では、払出量変化はあるものの、この範囲のトータルで、標準払出量に合わせることが可能となり、下流側のコンベアの負荷を軽減することができる。
【0046】
また、
図5の6枚羽根の回転ホイール、
図7の8枚の回転ホイールでは、2枚羽根の回転ホイールほど脈動範囲は少なくなるが、同様に
図4、
図6の各ゾーンの面積変化を基に速度指令を作成することで、脈動を抑えて平均化させ、常時目標払出量に制御することができる。
【0047】
上述の実施の形態では、回転ホイール20の羽根の枚数を2、6、8枚の例で説明したが、羽根数は、3、4枚の回転ホイールで構成するようにしてもよい。