(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959368
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】レーダアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/10 20060101AFI20160719BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20160719BHJP
H01Q 19/06 20060101ALI20160719BHJP
H01Q 13/02 20060101ALI20160719BHJP
H01Q 13/28 20060101ALI20160719BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
H01Q13/10
G01S7/03 246
H01Q19/06
H01Q13/02
H01Q13/28
H01Q1/42
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-186832(P2012-186832)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-45366(P2014-45366A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 裕三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智恭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 政秀
(72)【発明者】
【氏名】古賀 栄二
(72)【発明者】
【氏名】丸山 亮一
【審査官】
岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−324916(JP,A)
【文献】
特開2005−073212(JP,A)
【文献】
特開昭56−000717(JP,A)
【文献】
実開昭60−103920(JP,U)
【文献】
特開2007−074662(JP,A)
【文献】
特開2010−095195(JP,A)
【文献】
特開平11−004095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
G01S 7/00− 7/42
G01S 13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーン状のフレアの基部に放射導波管が設けられ、前記フレアの上下中央位置で電磁波放射方向に所定長の金属板が設けられ、さらに、上下方向の長さおよび前後方向の長さが所定長に設定された電波成形部材が、前記フレアの前方中心に設けられ、前記電波成形部材の上端縁から延びる上側支持部が、水平に延びて前記フレアの開口端縁に重なる水平部を有し、前記電波成形部材の下端縁から延びる下側支持部が、水平に延びて前記フレアの開口端縁に重なる水平部を有し、前記フレアおよび電波成形部材が誘電性のレドームによって覆われたレーダアンテナにおいて、
前記上側支持部および前記下側支持部の水平部を延伸させて、前記フレアの開口端縁と重ならない部位を発生させることで、前記電波成形部材とレドームとを前記フレアの前方先に配設し、
前記水平部と前記フレアの開口端縁とが重なる部位に対向して、電磁波を遮断する遮断部材を配設した、
ことを特徴とするレーダアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてレーダアンテナとして用いられるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダアンテナでは、利得の向上とサイドローブレベルの低減とが求められており、垂直面ビーム幅を狭ビーム化することで、利得の向上を図ったレーダアンテナ(アンテナ装置)が知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
このレーダアンテナは、ホーン(フレア)の基部にスロット導波管(放射導波管)が設けられ、上下中央位置で電磁波放射方向に所定長の金属板が設けられている。また、断面四辺形状の中空で、上下方向の寸法が放射される電磁波の1波長に相当し、前後方向の寸法が放射される電磁波の半波長に相当する主誘電体部材(電波成形板)が、ホーンの前方中心位置に設けられている。さらに、主誘電体部材をホーンの上端部に支持する上側支持誘電体部材と、主誘電体部材をホーンの下端部に支持する下側支持誘電体部材と、を備える。これにより、指向性を先鋭にして利得を向上させるとともに、小型化、軽量化を可能にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4508941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1のレーダアンテナによれば、従来に比べて高い利得を得ることができるが、レーダアンテナの機能・役割として、さらに利得が高く垂直面サイドローブレベルが低いことが好ましい。
【0006】
そこでこの発明は、利得をより高くし、かつ垂直面サイドローブレベルをより低くすることが可能なレーダアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ホーン状のフレアの基部に放射導波管が設けられ、前記フレアの上下中央位置で電磁波放射方向に所定長の金属板が設けられ、さらに、上下方向の長さおよび前後方向の長さが所定長に設定された電波成形部材が、前記フレアの前方中心に設けられ、
前記電波成形部材の上端縁から延びる上側支持部が、水平に延びて前記フレアの開口端縁に重なる水平部を有し、前記電波成形部材の下端縁から延びる下側支持部が、水平に延びて前記フレアの開口端縁に重なる水平部を有し、前記フレアおよび電波成形部材が誘電性のレドームによって覆われたレーダアンテナにおいて、
前記上側支持部および前記下側支持部の水平部を延伸させて、前記フレアの開口端縁と重ならない部位を発生させることで、前記電波成形部材とレドームとを前記フレアの前方先に配設し、
前記水平部と前記フレアの開口端縁とが重なる部位に対向して、電磁波を遮断する遮断部材を配設した、ことを特徴とする。
【0008】
本願発明者は、電磁界解析による計算および実験によって、従来(特許文献1のレーダアンテナ)に比べて電波成形部材とレドームとをフレアのより前方先に配設することで、従来よりも高い利得が得られ、かつサイドローブレベルをより低減できることを確認した。一方、電波成形部材とレドームとをフレアからより遠くに配設すると、レーダアンテナとしてのバックローブレベルが上昇することが判明した。このようにバックローブレベルが上昇すると、レーダ装置として偽像の発生が懸念される。このため、本願発明者は、電磁界解析により本現象が誘電体の導波効果によるものと断定し、これまでの経験より導波効果を遮断するため、電波成形部材とフレアとの接続部位周辺に、電磁波を遮断する遮断部材を配設することで、バックローブレベルを低減できることを確認した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、上記のように、より高い利得が得られるとともに、垂直面サイドローブレベルをより低減することができ、しかも、電波成形部材とレドームとをフレアのより前方先に配設することによるバックローブレベルの上昇を、抑制・低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施の形態に係るレーダアンテナを示す側面図である。
【
図2】
図1のレーダアンテナと従来のレーダアンテナとの比較を示す図である。
【
図3】
図1のレーダアンテナと従来のレーダアンテナとの垂直面指向性特性を示す図である。
【
図4】従来のレーダアンテナの電界強度分布(a)と、
図1のレーダアンテナの電界強度分布(b)とを示す図である。
【
図5】
図1のレーダアンテナにおいて、金属箔テープを配設しない場合の水平面指向性特性と、金属箔テープを配設した場合の水平面指向性特性とを示す図である。
【
図6】
図1のレーダアンテナにおける遮断部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態に係るレーダアンテナ1を示す側面図である。このレーダアンテナ1は、後述する電波成形部(電波成形部材)51の配設位置と金属箔テープ7(遮断部材)とを除いて、従来(特許第4508941号公報記載)のレーダアンテナと同等の構成、機能となっているため、従来と同じ点についての詳細な説明は省略するが、概略次のような構成等となっている。
【0013】
すなわち、ホーン状で導電性のフレア2の基部に放射導波管3が配設され、電磁波放射方向に所定長の金属板4が、フレア2の上下方向の中央位置に配設されている。また、フレア2の前面開口を塞ぐように、電波成形板5が配設されている。
【0014】
この電波成形板5は、全体が誘電体で、電波成形部(電波成形部材)51と上側支持部52と下側支持部53とを有している。電波成形部51は、断面がコ字状(略矩形)で、上下方向の長さD1および前後方向の長さD2が所定長に設定されている。具体的には、この実施の形態では、上下方向の長さD1が放射される電磁波の1波長とほぼ同寸法に設定され、前後方向の長さD2が放射される電磁波の半波長とほぼ同寸法に設定されている。ここで、特許第4508941号公報に記載のように、電波成形部51を中空の断面四辺形状・四角形のように形成・構成してもよい。
【0015】
上側支持部52は、電波成形部51の上端縁から斜め上方に延び、電波成形部51をフレア2の上端部に支持・接続する誘電体であり、水平に延びてフレア2の開口端縁2aに重なる水平部52aを有している。同様に下側支持部53は、電波成形部51の下端縁から斜め下方に延び、電波成形部51をフレア2の下端部に支持・接続する誘電体であり、水平に延びてフレア2の開口端縁2aに重なる水平部53aを有している。このような上側支持部52と下側支持部53とによって、電波成形部51が、フレア2の前方で上下方向の中心に位置するように配設されている。
【0016】
このようなフレア2および電波成形板5が、誘電性のレドーム6によって覆われている。なお、便宜上、断面がU字状で電波成形板5側を覆う部分を前方レドーム61とし、断面がU字状でフレア2側を覆う部分を後方レドーム62して、以下に説明する。
【0017】
そして、このような各構成要素2〜6が、水平方向(図面に対して垂直方向)に長く延びているものである。また、フレア2、放射導波管3および電波成形板5は、金属製の支持板63、64によってレドーム6内に支持、配設され、下部支持板63は、レドーム6の底面上を沿うように配設されている。
【0018】
このような構成において、このレーダアンテナ1は、できるだけ高利得が得られるように、電波成形部51と前方レドーム61とがフレア2のより前方先に配設されている。すなわち、従来においては、フレア2の開口面2bから電波成形部51までの距離は、電磁波の反射を抑制するために近づき過ぎないように、例えば、電磁波の半波長程度、あるいはそれより少し長い程度に設定されていた。これに対して、このレーダアンテナ1では、最も高い利得が得られるまで、フレア2の開口面2bから電波成形部51までの距離ができるだけ延ばされ、これに伴ってレドーム6(前方レドーム61)が前方先に延ばされている。
【0019】
具体的には、上側支持部52および下側支持部53の水平部52a、53aが延伸され、かつ、レドーム6の上面および底面水平部が延伸されている。これにより、
図2に示すように、従来のレーダアンテナ100に比べて、電波成形部51が延伸距離Eだけさらにフレア2の開口面2bから離れて配設され、レドーム6が延伸距離Eだけ長くなっている。
【0020】
さらに、後述するような理由から、電波成形板5とフレア2との接続部位周辺に、電磁波を遮断する金属箔テープ7が、レドーム6の長手方向に延びるように配設されている。すなわち、この実施の形態では、
図1に示すように、電波成形板5の上側支持部52の水平部52aとフレア2の開口端縁2aとが重なる部位の周辺に対向する、レドーム6の内面に金属箔テープ7が貼られている。ここで、レドーム6の底面上には、上記のように金属製の下部支持板63が配設されているため、電波成形板5の下側支持部53側には、金属箔テープ7が貼られていない。つまり、下部支持板63が、後述するような金属箔テープ7の役割、作用を果たしている。
【0021】
次に、このような構成のレーダアンテナ1の作用などについて説明する。
【0022】
本願発明者は、電磁界解析による計算および実験によって、電波成形部51および前方レドーム61をフレア2の開口面2bからより離すことで、従来よりも高い利得が得られ、かつサイドローブレベルをより低減できることを確認し、この考察結果に基づいて、レーダアンテナ1を上記のような構成とした。この結果、このレーダアンテナ1の利得は、
図3の第1の垂直面指向性特性L1に示すように、従来のレーダアンテナの垂直面指向性を示す第2の垂直面指向性特性L2に比べて、垂直面ビーム幅が狭ビーム化され(0°周辺における幅が狭く)、さらに、サイドローブレベル(−60°、+60°周辺におけるレベル)が低減していることが確認される。また、この結果、利得も向上することが確認された。
【0023】
ところで、電波成形部51および前方レドーム61をフレア2の開口面2bからより離すことで、より高い利得が得られ、かつサイドローブレベルをより低減できるのは、エネルギーがより正面方向に導波されるためと考えられる。すなわち、
図4の電界強度分布に示すように、従来のレーダアンテナ(a)に比べてこのレーダアンテナ1(b)では、強い放射電界がより正面側に集中し、垂直面ビーム幅が狭ビーム化されていることが確認される。さらに、従来のレーダアンテナ(a)に比べてこのレーダアンテナ1(b)では、上下方向(図中エリアA1、A2)における電界強度が弱く、サイドローブレベルが低減していることが確認される。ここで、図中、黒塗りが濃い部分は、放射電界が強いことを示し、黒塗りが薄い部分は、放射電界が弱いことを示している。
【0024】
一方、電波成形部51をフレア2の開口面2bからより離すと、バックローブレベルが上昇することが判明した。例えば、
図5の第3の水平面指向性特性L3に示すように、−170°付近でバックローブレベルが上昇することが確認された。そして、このようにバックローブレベルが上昇すると、レーダ装置として偽像の発生が懸念される。
【0025】
このため、本願発明者は、電磁界解析によって、上側支持部52および下側支持部53の水平部52a、53aを延伸したことで、フレア2の開口端縁2aと重なっていない水平部52a、53aの部位が発生し、この部位から電磁波が漏れることで、バックローブレベルが上昇する、ことが原因であるという考えに至った。すなわち、支持部52、53およびレドーム6が導波路となって、アンテナの背面に電磁波が誘導されやすくなることが、原因であるという考えに至った。
【0026】
そこで、電波成形板5とフレア2との接続部位周辺に、電磁波の誘導を遮断する部材を配設することで、バックローブレベルを低減することができるという考えに至り、上記のように金属箔テープ7を配設したものである。この結果、
図5の第4の水平面指向性特性L4に示すように、−170°付近におけるバックローブレベルが、約5dB低減していることが確認された。
【0027】
以上のように、このレーダアンテナ1によれば、より高い利得が得られるとともに、垂直面サイドローブレベルをより低減することができる。しかも、電波成形部51および前方レドーム61をフレア2の開口面2bからより離すことによるバックローブレベルの上昇を、抑制・低減することができる。
【0028】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、金属箔テープ7をレドーム6の内面に貼っているが、レドーム6の外面に貼ってもよく、また、レドーム6の底面にも金属箔テープ7を貼ってもよい。さらに、フレア2の開口端縁2aの周辺のみならず、レドーム6後方(後方レドーム62)に沿って延びるように、金属箔テープ7を貼ってもよく、これにより、バックローブレベルの上昇をより抑制・低減することが可能となる。
【0029】
また、遮断部材として金属箔テープ7に限らず、金属板を配設したり、金属製の塗料を塗布したりしてもよく、遮断部材をレドーム6内に埋め込むようにしてもよい。さらに、
図6に示すような導電性シールド8を、遮断部材としてレドーム6に押し付けるように配設してもよい。すなわち、この導電性シールド8は、スポンジ製で断面が四角形の棒体の周囲に、導電性の繊維が巻かれたシールド・パッキンであり、このような導電性シールド8を上側支持部52とレドーム6とで挟むように配設する。
【符号の説明】
【0030】
1 レーダアンテナ
2 フレア
2a 開口端縁
2b 開口面
3 放射導波管
4 金属板
5 電波成形板
51 電波成形部(電波成形部材)
52 上側支持部
53 下側支持部
6 レドーム
61 前方レドーム
62 後方レドーム
63 下部支持板
64 後部支持板
7 金属箔テープ(遮断部材)
8 導電性シールド(遮断部材)