(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、各図において、X軸方向が車両の前後方向に相当し、Y軸方向が車幅方向に相当し、Z軸方向が車両の上下方向に相当する。「X軸方向」、「Y軸方向」、「Z軸方向」は、各軸に平行な方向を表し、本発明の効果を損なわない程度の方向ずれを許容するものである。
【0009】
<エアバッグ取り付け構造1及びカーテンエアバッグ装置2の形態>
図1は、本発明の一実施形態であるエアバッグ取り付け構造1及びカーテンエアバッグ装置2を車両の外側且つ車両の左側方から見た概略側面図である。
図1は、エアバッグ取り付け構造1及びカーテンエアバッグ装置2の構成を説明しやすいように、車体の一部を透過的に示している。エアバッグ取り付け構造1及びカーテンエアバッグ装置2は、車両の両側の車体側面部に設けられている。なお、
図1には、車両の片側の車体側面部が示されているが、その反対側の車体側面部も同様の構成であるため、その図示を省略する。
【0010】
エアバッグ取り付け構造1は、フロントピラー部14と、サイドウィンドウ部9と、ルーフサイド部5と、カーテンエアバッグ装置2とを含んで構成された、車両構造の一部である。
【0011】
フロントピラー部14は、フロントガラス(フロントウィンドシールド)8の左右の両縁部に沿って延在する柱状部分であって、例えばAピラー部とも称されるものである。フロントピラー部14は、例えば、フロントピラー本体15と、フロントピラーガーニッシュ16とを有している。フロントピラー本体15は、車体フレームの一部を構成する金属部分である。フロントピラーガーニッシュ16は、フロントピラー本体15を車室側から覆う内装部材であって、例えばフロントピラートリムとも称される樹脂部材である。フロントピラー部14は、フロントピラー本体15に取り付けられるカーテンエアバッグ3の前端部82を、フロントピラーガーニッシュ16によって覆っている。前端部82は、カーテンエアバッグ3の折り畳み体30の車両前方側の部位であるが、詳細については後述する。
【0012】
サイドウィンドウ部9は、例えば、車体側面部の上側部位であって、フロントサイドガラス10と、サイドピラー部12と、リヤサイドガラス11と、リヤピラー部13とを含んで構成されたものである。
【0013】
フロントサイドガラス10は、車室内の前席(運転席又は助手席)の側方に設けられたウィンドウガラスであって、フロントピラー部14とサイドピラー部12との間に配置されたものである。フロントサイドガラス10は、前席の側方のドアに設けられた開閉可能なウィンドウガラスでもよいし、前席の側方の車体部位に設けられた嵌め殺しのウィンドウガラスでもよい。
【0014】
サイドピラー部12は、フロントサイドガラス10とリヤサイドガラス11との間に配置された柱状部分であって、例えばBピラー部とも称されるものである。サイドピラー部12も、フロントピラー部14と同様に、例えば、サイドピラー本体と、サイドピラーガーニッシュとを有している。
【0015】
リヤサイドガラス11は、車室内の後席の側方に設けられたウィンドウガラスであって、サイドピラー部12とリヤピラー部13との間に配置されたものである。リヤサイドガラス11は、後席の側方のドアに設けられた開閉可能なウィンドウガラスでもよいし、後席の側方の車体部位に設けられた嵌め殺しのウィンドウガラスでもよい。
【0016】
リヤピラー部13は、リヤサイドガラス11の車両後方側部位に沿って延在する柱状部分であって、例えばCピラー部とも称されるものである。リヤピラー部13も、フロントピラー部14と同様に、例えば、リヤピラー本体と、リヤピラーガーニッシュとを有している。
【0017】
ルーフサイド部5は、フロントピラー部14とサイドピラー部12とリヤピラー部13のそれぞれの上端部に接続されて、車両の前後方向に延在する部分である。ルーフサイド部5は、例えば、ルーフサイドレール6と、ルーフサイドガーニッシュ7とを有している。ルーフサイドレール6は、車体フレームの一部を構成する金属部材である。ルーフサイドガーニッシュ7は、ルーフサイドレール6を車室側から覆う内装部材であって、例えばルーフライニングとも称される樹脂部材である。ルーフサイド部5は、ルーフサイドレール6に取り付けられるカーテンエアバッグ3の本体部81及びインフレータ4を、ルーフサイドガーニッシュ7によって覆っている。本体部81は、カーテンエアバッグ3の折り畳み体30の中間部及び後端部(折り畳み体30の前端部82よりも車両後方側の部位)であるが、詳細については後述する。
【0018】
カーテンエアバッグ装置2は、例えば、車両の衝突又は衝突予測時等に、フロントピラー部14からルーフサイド部5にかけて収納されたカーテンエアバッグ3の折り畳み体30を、車両室内の側面に沿って下方に膨張展開させる乗員保護装置である。カーテンエアバッグ装置2は、インフレータ4と、本発明の一実施形態であるカーテンエアバッグ3とを備えている。
【0019】
インフレータ4は、車両の衝突又は衝突予測時等に、不図示の制御回路からの制御信号に基づいて、カーテンエアバッグ3の折り畳み体30を膨張展開させるガスを発生させるガス発生器である。
【0020】
カーテンエアバッグ3は、インフレータ4から供給されるガスによって、サイドウィンドウ部9及びフロントピラー部14と乗員との間に膨張展開するようにバッグ状に形成された布パネルである。カーテンエアバッグ3は、折り畳まれた状態で、ルーフサイド部5及びフロントピラー部14に収容されている。ルーフサイド部5には、カーテンエアバッグ3の折り畳み体30の本体部81が収納され、フロントピラー部14には、折り畳み体30の前端部82が収納されている。
【0021】
ルーフサイド部5は、カーテンエアバッグ3に設けられた複数のタブ23,24,25,26によってルーフサイドレール6に取り付けられる本体部81を、ルーフサイドガーニッシュ7によって覆っている。タブ23,24,25,26は、ルーフサイドレール6にボルト等の連結部材によって取り付けられる車両取り付け部である。タブ23,24,25,26がルーフサイドレール6に取り付けられることにより、折り畳み体30の本体部81は、ルーフサイドガーニッシュ7によって隠れるようにルーフサイドレール6に支持される。
【0022】
フロントピラー部14は、カーテンエアバッグ3に設けられた複数のタブ21,22によってフロントピラー本体15に取り付けられる前端部82を、フロントピラーガーニッシュ16によって覆っている。タブ21は、ボルト等の連結部材によって、フロントピラー本体15の下部又はその下部よりも上方の中間部に取り付けられる車両取り付け部である。タブ22は、タブ21のフロントピラー本体15への取り付け位置よりも上側でフロントピラー本体15に取り付けられる車両取り付け部である。タブ21,22は、他のタブ23〜26の設置位置よりも車両前方側に配置されている。タブ21は、全タブのうち最も車両前方側に位置する。タブ21,22がフロントピラー本体15に取り付けられることにより、折り畳み体30の前端部82は、フロントピラーガーニッシュ16によって隠れるようにフロントピラー本体15に支持される。
【0023】
折り畳み体30の本体部81は、インフレータ4からのガスの供給によって、ルーフサイドレール6とルーフサイドガーニッシュ7との間隙から膨張しながら突出し、サイドウィンドウ部8を覆うように展開する。一方、折り畳み体30の前端部82も、インフレータ4からのガスの供給によって、フロントピラー本体15とフロントピラーガーニッシュ16との間の間隙から膨張しながら突出し、フロントピラーガーニッシュ16を覆うように展開する。
【0024】
<カーテンエアバッグ3Aの形態>
図2は、
図1のカーテンエアバッグ3の第1の具体例であるカーテンエアバッグ3Aを展開した状態で車内側のパネル面を対向して見た概略側面図である。
【0025】
カーテンエアバッグ3Aは、X軸方向を長手方向とする互いにほぼ同一形状同一材質の2枚のパネル33a,33bを有し、互いに重ね合わされたパネル33a,33bの外周部同士が線状結合部34で接合されることにより形成されたバッグ構造を有している。パネル33a,33bの外周部同士は、例えば縫合によって接合されている。カーテンエアバッグ3Aが車両に搭載された状態では、パネル33aは車内側に配置される基布であり、パネル33bは車外側に配置される基布である。なお、
図2の場合、パネル33aの車両後方のルーフ側に、パネル33aと同一材質のパネル33dが重ね合わされているが、無くてもよい。
【0026】
カーテンエアバッグ3Aは、パネル33a,33bの外周部同士が線状結合部34で接合されることによって形成されたガス導入部32及びエアバッグ本体部31を有するものである。
【0027】
ガス導入部32は、エアバッグ本体部31の上縁部38に対して、上方且つ斜め後方に延出するように設けられた筒状部である。ガス導入部32は、インフレータ4(
図1参照)のガス噴出部が差し込まれた状態でインフレータ4に取り付けられる。インフレータ4からガス導入部32を介して流入するガスによって、エアバッグ本体部31に形成された主チャンバ36及び副チャンバ37、並びに中間チャンバ42は膨張する。
【0028】
主チャンバ36及び副チャンバ37、並びに中間チャンバ42は、パネル33a,33bが線状結合部34及び環状結合部35で接合されることによって形成された膨張部であって、ガス導入部32からのガスが流通して連なるように形成されたものである。
【0029】
線状結合部34及び環状結合部35は、ガス導入部32から流入したガスが外部に漏れたり、パネル33a,33bがガスの内圧によって分離したりしないように、パネル33a,33bを接合する。接合方法として、縫合、接着、溶着などが挙げられる。
【0030】
線状結合部34の一部は、カーテンエアバッグ3Aを周回するように設けられている。環状結合部35の一部は、パネル33a,33bを貫通する孔部の周りを囲むように設けられている。また、線状結合部34の一部及び環状結合部35の一部は、主チャンバ36を複数の区分膨張部に区切るように設けられている。
【0031】
主チャンバ36は、サイドウィンドウ部9(
図1参照)の一部又は全部を覆うように膨張可能な膨張部であって、
図2に示されるように、本体膨張部36a及び側端膨張部36bを有するものである。本体膨張部36a及び側端膨張部36bは、線状結合部34及び/又は環状結合部35によって区切られることにより形成される区分膨張部である。
【0032】
本体膨張部36aは、主チャンバ36の基部であって、主チャンバ36の中間部から後端部にかけて延在する部分である。図示の場合、本体膨張部36aは、更に複数の小膨張部に区切られている。本体膨張部36aは、例えば、
図1に示した、フロントサイドガラス10の車両後方側の部位、サイドピラー部12、リヤサイドガラス11及びリヤピラー部13のうち少なくとも一つを覆うように膨張する。
【0033】
側端膨張部36bは、
図2に示されるように、主チャンバ36の車両前方側の側端部であって、本体膨張部36aに対して車両前方側に形成されている。側端膨張部36bの車両前方側の前端は、Z方向に延在する最前端の線状結合部34aによって形成されている。線状結合部34aは、例えば
図2のように、上縁部38の切り欠き部41を起点に、主チャンバ36のZ方向の全幅(全高)の半分以上の部位まで延伸しているとよい。
【0034】
側端膨張部36bは、ガス導入部32から流入したガスが流通可能に本体膨張部36aに連通する。側端膨張部36bは、例えば、
図1に示したフロントサイドガラス10の車両前方側の部位を覆うように膨張する。そのため、側端膨張部36bは、ルーフサイド部5のルーフサイドレール6への取り付けに使用されるタブ23,24,25,26のうち最も車両前方側のタブ23の下方に設けられているとよい。
【0035】
中間チャンバ42は、主チャンバ36と副チャンバ37との間に設けられ、主チャンバ36の側端膨張部36bを通過したガスは、中間チャンバ42を経由して、副チャンバ37に流入する。
【0036】
本体膨張部36aの上方には、エアバッグ本体部31の上縁部38に対して上方に突出するように設けられた4個のタブ23,24,25,26が形成されている。タブ23,24,25,26は、ルーフサイド部5のルーフサイドレール6(
図1参照)への取り付けに用いられる車両取り付け部であって、上縁部38に沿って設けられたものである。タブ23,24,25,26には、例えば、ルーフサイドレール6に固定するための不図示の取り付けボルトを挿通可能な部位として、
図2に示されるように、取り付け孔20が形成されている。
【0037】
側端膨張部36bに対して車両前方側の側方には、エアバッグ本体部31の車両前方側の外縁部に対して突出するように設けられたタブ21Aが形成されている。タブ21Aは、フロントピラー部14のフロントピラー本体15(
図1参照)への取り付けに用いられる車両取り付け部である(
図1のタブ21の一例)。タブ21Aには、例えば、カーテンエアバッグ3Aをフロントピラー本体15に固定するための不図示の取り付けボルトを挿通可能な部位として、
図2に示されるように、取り付け孔20が形成されている。
【0038】
側端膨張部36bに対して車両前方側の側方且つタブ21Aよりも車両後方側の斜め上側には、タブ22Aが設けられている。タブ22Aは、フロントピラー本体15(
図1参照)への取り付けに用いられる車両取り付け部であって、タブ21Aよりも上側の取り付け位置でカーテンエアバッグ3Aをフロントピラー本体15に取り付けるためのものである(
図1のタブ22の一例)。タブ22Aには、例えば、フロントピラー本体15に固定するための不図示の取り付けボルトを挿通可能な部位として、
図2に示されるように、取り付け孔20が形成されている。
【0039】
タブ22Aは、中間チャンバ42の上側に設けられた切り抜き部39によって形成される。切り抜き部39は、カーテンエアバッグ3Aを構成するパネル33a,33bを貫通するようにU字状に形成された孔部であって、U字の底が下側に位置するように形成されたものである。
【0040】
また、カーテンエアバッグ3Aは、フロントピラー部14のフロントピラーガーニッシュ16(
図1参照)の一部又は全部を覆うように膨張可能な膨張部として、
図2に示されるように、副チャンバ37を備えている。
【0041】
副チャンバ37は、タブ21Aの取り付け孔20とタブ22Aの取り付け孔20とを通るように仮想的に引いた延長線L1に対して、主チャンバ36とは反対側に設けられている。延長線L1は、タブ21Aの一部又はタブ22Aの一部を通過すればよく、必ずしも取り付け孔20を通過する直線でなくてもよい。また、副チャンバ37の全部が延長線L1に対して主チャンバ36とは反対側に設けられなくてもよく、副チャンバ37の一部が延長線L1に対して主チャンバ36とは反対側に設けられる場合でもよい。
【0042】
副チャンバ37は、主チャンバ36の側端膨張部36bに中間チャンバ42を介して連通するように接続され、ガス導入部32からのガスが側端膨張部36b及び中間チャンバ42を経由して流入する。副チャンバ37は、ガスの流入によって、フロントピラーガーニッシュ16(
図1参照)の一部又は全部を覆うように膨張展開する。したがって、このような副チャンバ37を備えるカーテンエアバッグ3Aによれば、フロントピラーガーニッシュ16を十分に覆うことを容易にできる。
【0043】
副チャンバ37は、
図2に示されるように、例えば、主チャンバ36の上縁部38を通るように仮想的に引かれた延長線L2よりも上側に上方膨張部37aを有すると好適である。上方膨張部37aが副チャンバ37に形成されることにより、フロントピラーガーニッシュ16の中間部から上部にかけての部位を十分に覆うことを容易にできる。上方膨張部37aは、車両上側の斜め後方に突出するように湾曲している。なお、上方膨張部37aの全部が延長線L2よりも上側に設けられなくてもよく、上方膨張部37aの一部が延長線L2よりも上側に設けられる場合でもよい。
【0044】
副チャンバ37は、
図2に示されるように、例えば、タブ21Aに対して主チャンバ36とは反対側に側方膨張部37bを有すると好適である。側方膨張部37bが副チャンバ37に形成されることにより、フロントピラーガーニッシュ16の中間部から下部にかけての部位を十分に覆うことを容易にできる。側方膨張部37bは、車両前方側に突出するように湾曲している。なお、側方膨張部37bの全部がタブ21Aに対して主チャンバ36とは反対側に設けられなくてもよく、側方膨張部37bの一部がタブ21Aに対して主チャンバ36とは反対側に設けられる場合でもよい。
【0045】
<カーテンエアバッグ3Aの折り畳み方法>
図3は、
図2のカーテンエアバッグ3Aの折り畳み方法の一例を説明するための図である。
【0046】
最初に、
図3(a)に示されるように、フロントピラー本体15に留め付けられる車両前方側の2つのタブ21A,22Aが、それらの根元から車外側に折り上げられる。
【0047】
次に、
図3(b)に示されるように、タブ21Aよりも車両前方側に位置する側方膨張部37bは、パネル33aの面が谷折りになるように、車内側に折り返される。側方膨張部37bは、タブ21Aよりも車両前方側において、Z軸方向に平行な折り返し線で折り返されるとよい。
【0048】
次に、
図3(b),
図3(c)に示されるように、エアバッグ本体部31の主チャンバ36が、側方膨張部37bの折り重ね部とともに、主チャンバ36の下縁部40側から上縁部38まで折り畳まれる。主チャンバ36は、例えば、蛇腹折りでタブ23,24,25,26の付け根まで折り上げられると好適である。このように折り畳まれることによって、X軸方向を長手方向とする蛇腹部81Aが形成される。
【0049】
次に、
図3(c),
図3(d)に示されるように、蛇腹部81Aの車両前方側の部位である前方蛇腹部81Aaが、折り畳まれないまま蛇腹部81Aよりも上側に突出している副チャンバ37の上方膨張部37aによって巻かれる。前方蛇腹部81Aaは、車内側のパネル33aの面を内側に、上方膨張部37aで内巻きされるとよい。このように、前方蛇腹部81Aaが上方膨張部37aで包まれるように巻かれることによって、巻き部82Aが形成される。
【0050】
なお、
図2,
図3(a),
図3(b)に示されるように、主チャンバ36と副チャンバ37との境界部である中間チャンバ42の上方に、上縁部38に対して下方に向けて切り込まれた切り欠き部41が形成されている。切り欠き部41によって、上方膨張部37aで前方蛇腹部81Aaを巻き易くすることができる。
【0051】
このような折り畳み方法によって、平面状のカーテンエアバッグ3Aは、
図3(d)に示されるように、蛇腹部81A及び巻き部82Aを有する折り畳み体30Aに成形される。折り畳み体30Aは、折り崩れが生じないように、不図示の結束具によって形状保持されるとよい。なお、折り畳み体30A、蛇腹部81A及び巻き部82Aは、それぞれ、
図1のカーテンエアバッグ3の折り畳み体30、本体部81及び前端部82に相当する箇所である。
【0052】
<カーテンエアバッグ3Bの形態>
図4は、
図1のカーテンエアバッグ3の第2の具体例であるカーテンエアバッグ3Bを展開した状態で車内側のパネル面を対向して見た概略側面図である。
図2のカーテンエアバッグ3Aと同様の部分についての説明は省略又は簡略する。
【0053】
カーテンエアバッグ3Bは、X軸方向を長手方向とする互いにほぼ同一形状同一材質の2枚のパネル53a,53bを有し、互いに重ね合わされたパネル53a,53bの外周部同士が線状結合部54で接合されることにより形成されたバッグ構造を有している。パネル53aは車内側に配置される基布であり、パネル53bは車外側に配置される基布である。なお、
図4の場合、パネル53aの車両後方のルーフ側に、パネル53aと同一材質のパネル53dが重ね合わされているが、無くてもよい。
【0054】
カーテンエアバッグ3Bは、パネル53a,53bの外周部同士が線状結合部54で接合されることによって形成されたガス導入部52及びエアバッグ本体部51を有するものである。
【0055】
ガス導入部52は、エアバッグ本体部51の上縁部58に対して、上方且つ斜め後方に延出するように設けられた筒状部である。インフレータ4(
図1参照)からガス導入部52を介して流入するガスによって、エアバッグ本体部51に形成された主チャンバ56及び副チャンバ57、並びに中間チャンバ62は膨張する。
【0056】
主チャンバ56及び副チャンバ57、並びに中間チャンバ62は、パネル53a,53bが線状結合部54及び環状結合部55で接合されることによって形成された膨張部であって、ガス導入部52からのガスが流通して連なるように形成されたものである。
【0057】
主チャンバ56は、サイドウィンドウ部9(
図1参照)の一部又は全部を覆うように膨張可能な膨張部であって、
図4に示されるように、本体膨張部56a及び側端膨張部56bを有するものである。
【0058】
本体膨張部56aは、主チャンバ56の基部であって、主チャンバ56の中間部から後端部にかけて延在する部分である。本体膨張部56aは、例えば、
図1に示した、フロントサイドガラス10の車両後方側の部位、サイドピラー部12、リヤサイドガラス11及びリヤピラー部13のうち少なくとも一つを覆うように膨張する。
【0059】
側端膨張部56bは、
図4に示されるように、主チャンバ56の車両前方側の側端部であって、本体膨張部56aに対して車両前方側に形成されている。側端膨張部56bの車両前方側の前端は、Z方向に延在する最前端の線状結合部54aによって形成されている。線状結合部54aは、例えば
図4のように、上縁部58の切り欠き部61を起点に、主チャンバ56のZ方向の全幅(全高)の半分以上の部位まで延伸しているとよい。
【0060】
側端膨張部56bは、ガス導入部52から流入したガスが流通可能に本体膨張部56aに連通する。側端膨張部56bは、例えば、
図1に示したフロントサイドガラス10の車両前方側の部位を覆うように膨張する。そのため、側端膨張部56bは、ルーフサイド部5のルーフサイドレール6への取り付けに使用されるタブ23,24,25,26のうち最も車両前方側のタブ23の下方に設けられているとよい。
【0061】
中間チャンバ62は、主チャンバ56と副チャンバ57との間に設けられ、主チャンバ56の側端膨張部56bを通過したガスは、中間チャンバ62を経由して、副チャンバ57に流入する。
【0062】
側端膨張部56bに対して車両前方側の側方には、エアバッグ本体部51の車両前方側の外縁部に対して突出するように設けられたタブ21Bが形成されている。タブ21Bは、フロントピラー部14のフロントピラー本体15(
図1参照)への取り付けに用いられる車両取り付け部である(
図1のタブ21の一例)。
【0063】
図2において、側端膨張部56bに対して車両前方側の側方且つタブ21Bよりも車両後方側の斜め上側には、タブ22Bが設けられている。タブ22Bは、フロントピラー本体15(
図1参照)への取り付けに用いられる車両取り付け部であって、タブ21Bよりも上側の取り付け位置でカーテンエアバッグ3Bをフロントピラー本体15に取り付けるためのものである(
図1のタブ22の一例)。タブ22Bは、中間チャンバ62の上側に設けられている。
【0064】
タブ21B,22Bは、車外側のパネル53bの外面に重ね合わされたパネル53cに設けられている。パネル53cは、前縁部53c1、上縁部53c2、後縁部53c3及び下縁部53c4を有する基布であって、パネル53bと同一材質で成形されたものである。パネル53cは、車内側のパネル53aには接合されずに、パネル53bの車外側の外面に縫合等により線状結合部54及び環状結合部55で接合されている。
【0065】
タブ21Bは、前縁部53c1に対して車両前方側に突出するようにパネル53cに設けられている。タブ22Bは、上縁部53c2に対して車両上方側に突出するようにパネル53cに設けられている。
【0066】
また、カーテンエアバッグ3Bは、フロントピラー部14のフロントピラーガーニッシュ16(
図1参照)の一部又は全部を覆うように膨張可能な膨張部として、
図4に示されるように、副チャンバ57を備えている。
【0067】
副チャンバ57は、タブ21Bの取り付け孔20とタブ22Bの取り付け孔20とを通るように仮想的に引いた延長線L3に対して、主チャンバ56とは反対側に設けられている。延長線L3は、タブ21Bの一部又はタブ22Bの一部を通過すればよく、必ずしも取り付け孔20を通過する直線でなくてもよい。また、副チャンバ57の全部が延長線L3に対して主チャンバ56とは反対側に設けられなくてもよく、副チャンバ57の一部が延長線L3に対して主チャンバ56とは反対側に設けられる場合でもよい。
【0068】
副チャンバ57は、主チャンバ56の側端膨張部56bに中間チャンバ62を介して連通するように接続され、ガス導入部52からのガスが側端膨張部56b及び中間チャンバ62を経由して流入する。副チャンバ57は、ガスの流入によって、フロントピラーガーニッシュ16(
図1参照)の一部又は全部を覆うように膨張展開する。したがって、このような副チャンバ57を備えるカーテンエアバッグ3Bによれば、フロントピラーガーニッシュ16を十分に覆うことを容易にできる。
【0069】
副チャンバ57は、
図4に示されるように、例えば、主チャンバ56の上縁部58を通るように仮想的に引かれた延長線L4よりも上側に上方膨張部57aを有すると好適である。上方膨張部57aが副チャンバ57に形成されることにより、フロントピラーガーニッシュ16の中間部から上部にかけての部位を十分に覆うことを容易にできる。上方膨張部57aは、車両上側の斜め後方に突出するように湾曲している。なお、上方膨張部57aの全部が延長線L4よりも上側に設けられなくてもよく、上方膨張部57aの一部が延長線L4よりも上側に設けられる場合でもよい。
【0070】
副チャンバ57は、
図4に示されるように、例えば、タブ21Bに対して主チャンバ56とは反対側に側方膨張部57bを有すると好適である。側方膨張部57bが副チャンバ57に形成されることにより、フロントピラーガーニッシュ16の中間部から下部にかけての部位を十分に覆うことを容易にできる。側方膨張部57bは、車両前方側に突出するように湾曲している。なお、側方膨張部57bの全部がタブ21Bに対して主チャンバ56とは反対側に設けられなくてもよく、側方膨張部57bの一部がタブ21Bに対して主チャンバ56とは反対側に設けられる場合でもよい。
【0071】
<カーテンエアバッグ3Bの折り畳み方法>
図5は、
図4のカーテンエアバッグ3Bの折り畳み方法の一例を説明するための図である。
【0072】
最初に、
図5(a)に示されるように、タブ21Bよりも車両前方側に位置する側方膨張部57bは、パネル53aの面が谷折りになるように、車内側に折り返される。側方膨張部57bは、タブ21Bの根元付近において、Z軸方向に平行な折り返し線で折り返されるとよい。
【0073】
次に、
図5(a),
図5(b)に示されるように、エアバッグ本体部51の主チャンバ56が、側方膨張部57bの折り重ね部とともに、主チャンバ56の下縁部60側から上縁部58まで折り畳まれる。主チャンバ56は、例えば、蛇腹折りでタブ23,24,25,26の付け根まで折り上げられると好適である。このように折り畳まれることによって、X軸方向を長手方向とする蛇腹部81Bが形成される。
【0074】
次に、
図5(b),
図5(c)に示されるように、蛇腹部81Bの車両前方側の部位である前方蛇腹部81Baが、折り畳まれないまま蛇腹部81Bよりも上側に突出している副チャンバ57の上方膨張部57aによって巻かれる。前方蛇腹部81Baは、車内側のパネル53aの面を内側に、上方膨張部57aで内巻きされるとよい。このように、前方蛇腹部81Baが上方膨張部57aで包まれるように巻かれることによって、巻き部82Bが形成される。
【0075】
なお、
図4,
図5(a)に示されるように、主チャンバ56と副チャンバ57との境界部である中間チャンバ62の上方に、上縁部58に対して下方に向けて切り込まれた切り欠き部61が形成されている。切り欠き部61によって、上方膨張部57aで前方蛇腹部81Baを巻き易くすることができる。
【0076】
このような折り畳み方法によって、平面状のカーテンエアバッグ3Bは、
図5(c)に示されるように、蛇腹部81B及び巻き部82Bを有する折り畳み体30Bに成形される。折り畳み体30Bは、折り崩れが生じないように、不図示の結束具によって形状保持されるとよい。なお、折り畳み体30B、蛇腹部81B及び巻き部82Bは、それぞれ、
図1のカーテンエアバッグ3の折り畳み体30、本体部81及び前端部82に相当する箇所である。
【0077】
<カーテンエアバッグ3の折り畳み体30の膨張展開動作>
図6,
図7は、
図1に示されるセクションA−Aにおけるフロントピラー部14の断面図である。
図6は、折り畳み体30の前端部82(すなわち、巻き部82A,82B)の膨張展開前の収納状態の一例を示した断面図である。
図7は、前端部82が膨張展開することで、カーテンエアバッグ3がフロントピラーガーニッシュ16上に拡がった状態の一例を示した断面図である。
図6には、
図3(d)の折り畳み体30Aの場合を例示するが、
図5(c)の折り畳み体30Bの場合も同様である。
【0078】
図6に示されるように、前端部82は、フロントピラー本体15とフロントピラーガーニッシュ16との間の空間に収容されている。フロントピラー本体15のフランジ部15aとフロントピラーガーニッシュ16のフロントサイドガラス10側の縁16aとの間には、膨張中の前端部82が通過可能な間隙Sが形成されている。
【0079】
間隙Sは、前端部82が膨張せずに収容されている状態では、ウェザーストリップ71によって閉じられている。ウェザーストリップ71は、間隙Sを埋めるゴム製の閉塞部材である。ウェザーストリップ71は、狭持部71aと、蓋部71bとを有している。
【0080】
狭持部71aは、フランジ部15aを挟んでウェザーストリップ71をフロントピラー本体15に固定する手段である。蓋部71bは、前端部82が膨張する前に車室内の乗員が前端部82を視認できないように間隙Sを閉じており、膨張した前端部82の押圧によって間隙Sを解放するフラップ部である。
【0081】
インフレータ4からガスの供給が開始すると、副チャンバ37の上方膨張部37aで巻かれた前方蛇腹部81Aaが、上方膨張部37aよりも早く膨張し始める。そのため、前方蛇腹部81Aaの周囲を巻いている上方膨張部37aが、前方蛇腹部81AaのX軸方向に伸びながら膨張することに伴って、間隙SからX軸方向に引きずり出される。
【0082】
上方膨張部37aは、前端部82をZ軸方向において上から見たときに、前方蛇腹部81Aaを時計回りに内巻きしている。すなわち、
図3(d)に示したように、上方膨張部37aは、車内側のパネル33aの面を内側に前方蛇腹部81Aaを内巻きしている。このように巻かれているため、前方蛇腹部81Aaによって押し出された上方膨張部37aは、
図7のように、フロントピラーガーニッシュ16の縁16aで折り返されて、フロントピラーガーニッシュ16の乗員側の露出面16bに回りこむように膨張展開する。
【0083】
例えば、フロントピラーガーニッシュ16を覆うように膨張する副チャンバを有さない従来のエアバッグ3rの場合、
図7の点線で示されるように、フロントサイドガラス10に沿って膨張するにすぎない。そのため、フロントピラーガーニッシュ16の露出面16bを十分に覆うことは難しい。これに対し、本実施例によれば、露出面16bを十分に覆うことが容易なため、乗員と露出面16bとの衝突に対する対策を講じやすい。
【0084】
以上、エアバッグ、エアバッグ装置及びエアバッグ取り付け構造を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。他の実施例の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0085】
例えば、
図2において、ガス導入部32は、エアバッグ本体部31の上縁部38の中央部に設けられているが、エアバッグ本体部31の中央部に対して車両後方側に設けられてもよいし、車両前方側に設けられてもよい。また、主チャンバ36と副チャンバ37は共通のインフレータではなく、別のインフレータで膨張されるものでもよい。
図4のガス導入部52、主チャンバ56及び副チャンバ57についても同様である。
【0086】
また、
図2において、主チャンバ36と副チャンバ37との間に介在する中間チャンバ42は無くてもよく、副チャンバ37は主チャンバ36に直接つながっていてもよい。
図4の中間チャンバ62についても同様である。