特許第5959384号(P5959384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959384高周波アシスト磁気記録ヘッド、その製造方法、これを用いた磁気ヘッドアッセンブリ、及び磁気記録再生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959384
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】高周波アシスト磁気記録ヘッド、その製造方法、これを用いた磁気ヘッドアッセンブリ、及び磁気記録再生装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20160719BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G11B5/31 A
   G11B5/31 D
   G11B5/02 R
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-207565(P2012-207565)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-63546(P2014-63546A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 聡志
(72)【発明者】
【氏名】鴻井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】杉村 忍
(72)【発明者】
【氏名】藤田 倫仁
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】李 民
(72)【発明者】
【氏名】丁 汝航
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−119629(JP,A)
【文献】 特開2012−123871(JP,A)
【文献】 特開昭60−038713(JP,A)
【文献】 特開2010−146646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31
G11B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主磁極層上にスピントルク発振素子層を形成する工程、
該スピントルク発振素子層上にマスクを形成する工程
該マスクを介して該スピントルク発振素子層をイオンビームエッチングに供し、該スピントルク発振素子層を加工する工程、及び
該マスクを介して主磁極層を部分的に改質して飽和磁束密度を減少させることにより、該マスクに覆われて改質されない主磁極部と、該主磁極の周囲に設けられた改質部を形成する工程を含むことを特徴とする磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記改質された部分の主磁極層は、5kG以下の飽和磁束密度をもつことを特徴とする請求項1記載の磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記主磁極層を改質する工程は、フッ素、塩素、臭素、酸素、窒素、及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つのイオンを用いて行われることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記スピントルク発振素子層上にマスクを形成する工程の前に、
前記スピントルク発振素子層上に非磁性金属材料からなるキャップ層をさらに形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項5】
主磁極部と、
該主磁極部の周囲に設けられ、主磁極部と同様の材料がフッ素、塩素、臭素、酸素、窒素、及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つのイオンを用いて飽和磁束密度が減少するように改質された改質部と、
該主磁極部の上に形成されたスピントルク発振素子層とを具備することを特徴とする磁気記録ヘッド。
【請求項6】
請求項5記載の磁気記録ヘッドと、
前記磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダーと、
前記ヘッドスライダーを一端に搭載するサスペンションと、
前記サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームと、
を備えたことを特徴とする磁気ヘッドアセンブリ。
【請求項7】
磁気記録媒体と、請求項6に記載の磁気ヘッドアセンブリとを備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波アシスト磁気記録ヘッド、その製造方法、これを用いた磁気ヘッドアッセンブリ、及び磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主磁極とスピントルク発振子(STO)を自己整合(セルフアライメント)的に位置合わせさせて製造する高周波アシスト記録(MAMR)ヘッドにおいては、主磁極とSTO位置を揃える必要がある。しかしながら、セルフアライメントでSTOと一緒に主磁極をイオンビームエッチング(IBE)で加工すると、削られた高Bsの主磁極材料がSTOの側壁に再付着する。再付着した主磁極材料によりSTOの発振が著しく抑制される。一方、再付着した主磁極材料をIBEで完全に除去するとSTO層へのダメージやSTOの形状劣化が顕著に見られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−90767号公報
【特許文献2】特開2009−170007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、主磁極上でのSTOの安定発振が可能な高周波アシスト記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、主磁極層上にスピントルク発振素子層を形成する工程、
該スピントルク発振素子層上にマスクを形成する工程
該マスクを介して該スピントルク発振素子層をイオンビームエッチングに供し、該スピントルク発振素子層を加工する工程、及び
該マスクを介して主磁極層を部分的に改質して飽和磁束密度を減少させることにより、該マスクに覆われて改質されない主磁極部と、該主磁極の周囲に設けられた改質部を形成する工程を含むことを特徴とする磁気記録ヘッドの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態にかかる磁気記録ヘッドの一例を表す模式図である。
図2】実施形態にかかる磁気記録ヘッドの製造方法を表す図である。
図3】実施形態にかかる磁気記録ヘッドのフリンジ特性の一例を表すグラフ図である。
図4】実施形態にかかる磁気ヘッドアセンブリの一例を表す概略図である。
図5】実施形態にかかる磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図である。
図6】実施形態にかかる磁気記録ヘッドの他の一例を表す模式図である。
図7】実施形態にかかる磁気記録ヘッドのフリンジ特性の他の一例を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態にかかる磁気記録ヘッドの製造方法は、主磁極層上にスピントルク発振素子層を形成する工程、スピントルク発振素子層上にマスクを形成する工程、及びマスクを介してイオンビームエッチングにより、スピントルク発振素子層を加工する工程、マスクを介して主磁極層を部分的に改質する工程を含む。主磁極層を部分的に改質する工程により、改質された部分の主磁極層の飽和磁束密度を減少させ、マスクに覆われて改質されない主磁極部と、主磁極の周囲に設けられた改質部を形成することができる。
【0008】
また、実施形態にかかる磁気記録ヘッドは、主磁極部と、主磁極部の周囲に設けられた改質部と、主磁極部の上に形成されたスピントルク発振素子層とを含む。改質部では、主磁極部と同様の材料がフッ素、塩素、臭素、酸素、窒素、及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つのイオンにより飽和磁束密度が減少するように改質されている。
【0009】
さらに、実施形邸にかかる磁気ヘッドアセンブリは、上記磁気記録ヘッドと、磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダーと、ヘッドスライダーを一端に搭載するサスペンションと、サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームとを備えている。
【0010】
さらにまた、実施形態にかかる磁気記録再生装置は、磁気記録媒体と、上記磁気ヘッドアセンブリとを備えている。
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に実施形態にかかる磁気記録ヘッドの一例を表す模式図を示す。
【0013】
図1は、高周波アシスト磁気記録ヘッド10をエアベアリング面(ABS)から見た構成を例示している。
【0014】
図1に表すように、実施の形態における高周波アシスト磁気記録ヘッド10は、主磁極(MP)層1と、主磁極層1の周囲に設けられた改質部2と、主磁極層1の上に形成されたスピントルク発振素子(STO)層3とを含む。主磁極層1とSTO層3は自己整合的に位置合わせされており、主磁極層1の幅とSTO層3の幅がほぼ同等となる。改質部2は主磁極層1の周囲に設けられ、主磁極層1と同様の材料とこの材料に注入されたO,F,N,B,Cl,及びBrからなる群から選択される少なくとも1種のイオンを含む。
【0015】
STO層3上にはさらに主磁極層1と磁気回路を形成するライトシールド4が設けられる。
【0016】
改質部2と主磁極層1はBsが異なり、Bsの小さな改質部2が主磁極層1の外側に配置されている。STO層3の幅より外側の主磁極材料のBsを磁気記録媒体への磁気記録ができない程度まで小さくすることで、フリンジ特性を劣化させずに記録することができる。
【0017】
また、高周波アシスト磁気記録ヘッド10では、STO層3はパターニングされているが、主磁極層1はパターニングされていない。実施形態によれば、主磁極層1のSTO層3の幅より外側の領域をエッチングする代わりに改質して改質部2を形成しているため、エッチングによりSTO側壁へ主磁極材料が再付着すること、及びそれによりSTO安定発振が抑制されることを回避できる。
【0018】
図2は、実施形態に係る高周波アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を表す図を示す。
【0019】
図2(a)に示すように、まず、主磁極層1を成膜する。
【0020】
主磁極材料としてはBsの高い軟磁性材料を用いることができる。例えばFeCo合金は一般的な合金金属中最も高いBsを有する材料として実用化されている。
【0021】
次に、STO層3を成膜する。STO層3は例えば、主磁極層からライトシールドにかけて順に設けられた、スピン注入層、中間層、及び発振層を含むことができる。さらに、スピン注入層と主磁極の間に設けられた下地層と、ライトシールドと発振層との間に設けられたキャップ層とを含むことができる。
【0022】
発振層として、例えば、膜面内方向に磁気異方性を有するFeCoAl合金を用いる事ができる。さらに、Si、Ge、Mn、Cr、Bの少なくともいずれか1つ以上を添加した材料を用いることができる。これにより、例えば、発振層とスピン注入層とのBs、Hk(異方性磁界)、及び、スピントルク伝達効率を調整することができる。
【0023】
中間層として、例えば、Cu、Au、Agなどのスピン透過率の高い材料を用いることができる。中間層の層厚は、1原子層から3nmとすることができる。これにより発振層とスピン注入層の交換結合を最適な値に調節することが可能となる。
【0024】
スピン注入層として、例えば、膜面直方向に磁化配向したCoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNb等のCoCr系磁性、TbFeCo等のRE−TM系アモルファス合金磁性層、Co/Pd、Co/Pt、CoCrTa/Pd等のCo人工格子磁性層、CoPt系やFePt系の合金磁性層、SmCo系合金磁性層など、垂直配向性に優れた材料、CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi等の、比較的、飽和磁束密度の大きく膜面内方向に磁気異方性を有する軟磁性層、及びCoFeSi、CoMnSi、CoMnAl等のグループから選択されるホイスラー合金、膜面内方向に磁化が配向したCoCr系の磁性合金膜などを用いることができる。さらに、複数の上記材料を積層したものを用いることができる。
【0025】
下地層およびキャップ層として、例えば、Ti、Cu、Ru、Taなどの電気抵抗が低い非磁性金属材料を用いることができる。
【0026】
次に、STOおよび主磁極形状を得るためのマスクを形成する。マスクには例えばフォトレジストが用いられるが、CやSi、Alおよびその酸化物、窒化物等のハードマスクを用いることもできる。
【0027】
続いて、図2(b)に示すように、IBE法を用いて、STO層3のマスク未覆部を除去する。STO層はイオン注入によってマスク未覆部を非磁性化させると注入イオンの拡散によりマスク被覆部との境界がぼやけてしまい、STOの均一発振が抑制されると共に、発振の駆動電流が増加してしまうため、IBE法を用いる必要がある。IBEは例えば、加速電圧200〜400V、ビーム角度を50度の条件で行う。
【0028】
さらに、図2(c)に示すように、イオン注入法を用いてマスクを介して主磁極層1を改質し、改質部2を形成する。
【0029】
改質は、主磁極層1を完全に非磁性化する必要はなく、記録媒体に記録できない程度まで飽和磁束密度Bsが下げられれば良い。
【0030】
図3に、改質のためにイオン注入量を変化した場合の磁気記録ヘッドのフリンジ特性の一例をシミュレーションにより求めた結果を示す。
【0031】
図中、101は改質部2のBsが0kGの場合、102は改質部2のBsが5kGの場合、103は改質部2のBsが10kGの場合、及び104は改質部2のBsが24kGの場合を各々示す。
【0032】
縦軸は記録トラックにかかる有効磁界強度、横軸は記録トラックからの距離を示しており、改質部2のBsを低下させるほど隣接トラックの有効磁界強度を抑制できることが判る。
【0033】
現在一般的に用いられているCoCr系垂直記録媒体においては、不可逆反転磁界が3000Oe程度であるため、隣接トラックの有効磁界強度を3000Oe程度以下にすることが望ましい。例えば200nmの位置に隣接トラックがある場合、主磁極層のBsを5kGまで低下させることで、隣接トラックの有効磁界強度を3000Oe程度まで抑制することができる。したがって、イオン注入による改質はBsを5kG以下まで低下させることが好ましいが、フリンジ特性は記録媒体の材料や記録ヘッドの構成および隣接トラックの位置(記録密度)によって異なるため、その限りではない。
【0034】
また、イオン注入に用いるイオンはハロゲン系(フッ素、塩素、臭素等)や酸素、窒素、ホウ素などが挙げられる。イオン注入では10〜30keV程度の加速電圧で深さ方向に50nm〜100nm程度の改質を行うことができるが、STOにダメージを与えない程度のマスク耐性を得ることが困難である。
【0035】
このことから、この主磁極改質工程は、イオンを用いたRIE(Reactive Ion Etching)と組み合わせることができる。例えばICP(Inductively Coupled Plasma)装置やECR(Electron Cyclotron Resonance)装置を用いた場合、主磁極層の改質はSTOのキャップ層に用いている薄いRuやTaでもSTOを保護することができるため、イオン注入時のマスクを薄くすることができる。例えば、ICP装置を用いる場合は基板バイアスを100W、ECRを用いる場合は加速電圧を1keV印加させることで深さ方向に10nmの改質を行うことができる。また、RIEによる改質では、マスク剥離も同時に行うことができる。以上のように、イオン注入法とRIE法を組み合わせることで、STOにダメージを入れることなく主磁極の改質を行うことができる。
【0036】
次に、図2(d)に示すように、STO周囲の埋め込みと平坦化処理を行い、平坦化層6を形成する。埋め込みはSiOやAlなどの絶縁酸化物を用いることができる。また、FeCoNi等のシールド材料を用いてサイドシールドとすることもできる。平坦化処理はCMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いることができるが、イオンビームエッチングを用いて平坦化を行っても良い。
【0037】
次に、図2(e)に示すように、ライトシールド4として例えばFeCoNiを成膜する。
【0038】
このようにして、実施形態に係る高周波アシスト磁気記録ヘッド10が得られる。
【0039】
図4は、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。
【0040】
すなわち、磁気ヘッドアッセンブリ160は、例えば駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155を有し、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。
【0041】
サスペンション154の先端には、磁気記録ヘッド10を具備するヘッドスライダー30が取り付けられている。サスペンション154は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164を有し、このリード線164とヘッドスライダー3に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。
【0042】
図5に、実施形態にかかる磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図を示す。
【0043】
実施形態にかかる磁気記録再生装置は、上述の垂直磁気記録媒体と磁気ヘッドとを具備する。
【0044】
実施形態にかかる磁気記録再生装置100において、情報を記録するための剛構成の磁気ディスク62はスピンドル63に装着されており、図示しないスピンドルモータによって一定回転数で回転駆動される。磁気ディスク62にアクセスして情報の記録を行うための、実施形態にかかる記録ヘッド及び情報の再生を行うためのMRヘッドを搭載したスライダー64は、薄板状の板ばねからなるサスペンション65の先端に取付けられている。サスペンション65は図示しない駆動コイルを保持するボビン部等を有するアーム66の一端側に接続されている。
【0045】
アーム66の他端側には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ67が設けられている。ボイスコイルモータ67は、アーム66のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、それを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークにより構成される磁気回路とから構成されている。
【0046】
アーム66は、固定軸の上下2カ所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ67によって回転揺動駆動される。すなわち、磁気ディスク62上におけるスライダー64の位置は、ボイスコイルモータ67によって制御される。なお、図5中、61は筐体を示している。
【0047】
実施形態にかかる磁気記録再生装置は、磁気ヘッドアセンブリに搭載された磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体へ信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部をさらに含むことができる。
【0048】
以下、実施例を示し、実施形態を具体的に説明する。
【0049】
実施例1
図2(a)ないし図2(e)に示すような方法で、高周波アシスト磁気記録ヘッドを作製した。STOおよび主磁極パターン形成条件を以下に述べる。
【0050】
まず、STOおよび主磁極形状を得るためのマスクは、200nmのCと10nmのSiからなるハードマスクを用いた。ハードマスクは、フォトレジストを用いてパターンを形成し、このパターンを元にCFガスを用いたRIEでSi層を加工し、Si層をマスクに酸素ガスを用いたRIEでC層を加工することで転写した。
【0051】
いずれも次にIBE法を用いてSTOを形成した。STO層のIBEは、加速電圧300Vでビーム角度を50度で行い、SIMS(Secondary Ion−microprobe Mass Spectrometer)を用いてSTOの下地層を検出するまでエッチングを行った。
【0052】
その後、窒素を用いて主磁極層にイオン注入を行った。イオン注入は20keVのエネルギーで注入量3×1015atoms/cmの注入を行った。
【0053】
さらに、酸素ガスを用いたRIEでCからなるハードマスクを除去した。RIEはアンテナ、バイアスいずれも100Wのパワーで行った。
【0054】
図6に、実施形態にかかる磁気記録ヘッドの他の一例を表す模式図を示す。
【0055】
その後、図6に示したように、Alからなるサイドギャップ膜11とRuからなる鍍金用の下地膜12をスパッタリング法により成膜し、サイドシールド膜6を鍍金法によって成膜し、ライトシールド4としてFeCoNiを形成して磁気記録ヘッド20を得た。
【0056】
得られた磁気記録ヘッド20について、有効磁界のトラックプロファイルを調べた。
【0057】
図7に、磁気記録ヘッド20のフリンジ特性をシミュレーションにより求めた結果を示す。
【0058】
縦軸は記録トラックにかかる有効磁界強度、横軸は記録トラックからの距離を示している。
【0059】
図中、201は主磁極をIBEによりパターニングした場合、202は主磁極にイオン注入を行った場合を各々示す。
【0060】
図7に示すように、主磁極にイオン注入を行った場合も、比較例で述べる主磁極層をIBEで作製した場合と同程度のフリンジ特性が得られた。
【0061】
また、得られた磁気記録ヘッドについて、スピンスタンドを用いてSTOの駆動電流密度を変えて記録電流を印加することにより、R−Iw(抵抗−記録電流)特性を調べた。
【0062】
その結果を下記表1に示す。
【0063】
表1から明らかなように、7×10A/cmで高周波発振に付随する抵抗上昇が見られた。
【0064】
以上より、実施形態にかかる高周波磁気ヘッドがフリンジ特性を劣化させずに低駆動電流で高周波発振が得られることを確認した。これにより、実施形態にかかる高周波磁気ヘッドは、主磁極上でのSTOの安定発振が可能であることがわかった。
【0065】
実施例2
酸素を用いてイオン注入を行った以外実施例1と同様の方法で磁気記録ヘッドを作製した。
【0066】
イオン注入は20keVのエネルギーで注入量3×1015atoms/cmの注入を行った。
【0067】
得られた磁気記録ヘッドについて、R−Iw特性を調べたところ、実施例1と同程度の8×10A/cm以下で高周波発振に付随する抵抗上昇が見られた。
【0068】
この結果を下記表1に示す。
【0069】
これにより、実施例2にかかる高周波磁気ヘッドは、主磁極上でのSTOの安定発振が可能であることがわかった。
【0070】
実施例3
ホウ素を用いてイオン注入を行った以外実施例1と同様の方法で磁気記録ヘッドを作製した。
【0071】
イオン注入は20keVのエネルギーで注入量3×1015atoms/cmの注入を行った。
【0072】
得られた磁気記録ヘッドについて、R−Iw特性を調べたところ、実施例1と同程度の8×10A/cm以下で高周波発振に付随する抵抗上昇が見られた。
【0073】
この結果を下記表1に示す。
【0074】
これにより、実施例3にかかる高周波磁気ヘッドは、主磁極上でのSTOの安定発振が可能であることがわかった。
【0075】
実施例4
フッ素を用いてイオン注入を行った以外実施例1と同様の方法で磁気記録ヘッドを作製した。
【0076】
イオン注入は20keVのエネルギーで注入量3×1015atoms/cmの注入を行った。
【0077】
得られた磁気記録ヘッドについて、R−Iw特性を調べたところ、実施例1と同程度の7×10A/cm以下で高周波発振に付随する抵抗上昇が見られた。
【0078】
この結果を下記表1に示す。
【0079】
これにより、実施例4にかかる高周波磁気ヘッドは、主磁極上でのSTOの安定発振が可能であることがわかった。
【0080】
比較例1
図3(c)の改質工程を行う代わりに、IBEで主磁極をエッチングしたこと以外は、実施例1と同様の方法で高周波アシスト磁気記録ヘッドを作製した。
【0081】
主磁極層のIBEは、STO層と同様に加速電圧300Vでビーム角度を50度で行った。
【0082】
EDX分析より、STO側壁の再付着物は主磁極材料であるCoFeを主成分としていた。
【0083】
得られた磁気記録ヘッドについて、R−Iw特性を調べたところ、高周波発振に付随する抵抗上昇は2×10A/cmであり、実施例1〜4と比較して発振開始の電流密度が高く、高周波発振が起こりにくくなっていることが確認できた。
【0084】
この結果を下記表1に示す。
【表1】
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1…主磁極層、2…改質部、3…STO層、4…ライトシールド、5…マスク、6…平坦化層、10,20…磁気記録ヘッド、11…サイドギャップ膜、12…下地膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7