特許第5959391号(P5959391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959391
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】積層シート及びフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B32B27/30 B
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-213092(P2012-213092)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-65240(P2014-65240A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】星 進
(72)【発明者】
【氏名】森藤 一夫
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−244635(JP,A)
【文献】 特開平02−215528(JP,A)
【文献】 特開2006−212988(JP,A)
【文献】 特開2000−309767(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/128397(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/050046(WO,A1)
【文献】 特開2012−021078(JP,A)
【文献】 特表2009−530473(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0225427(US,A1)
【文献】 特開2006−123482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
C09J1/00−5/10
C09J9/00−201/10
B29C47/00−47/96
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と中間層との間に接着層を含む、積層シート又はフィルムであって、
前記表面層が、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み
前記中間層が、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAの少なくとも1個と、共役ジエンの重合体ブロックBの少なくとも1個と、からなるブロック共重合体を含み、
前記接着層が、50〜80質量%の、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(A)と、20〜50質量%の、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(B)と、を含むブロック共重合体混合物を含み、
ブロック共重合体(A)は、ビニル芳香族炭化水素含有量30〜50質量%と共役ジエン含有量50〜70質量%からなり、GPC測定によるピーク分子量が3万〜7万であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量を1万〜3万の範囲に少なくとも1つ有し、
ブロック共重合体(B)は、ビニル芳香族炭化水素含有量30〜50質量%と共役ジエン含有量50〜70質量%からなり、GPC測定によるピーク分子量が7万を超え13万以下であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量を1万〜3万の範囲に少なくとも1つ有する、積層シート又はフィルム。
【請求項2】
前記ブロック共重合体混合物が、55〜75質量%の前記ブロック共重合体(A)と、25〜45質量%の前記ブロック共重合体(B)と、を含む、請求項1に記載の積層シート又はフィルム。
【請求項3】
前記接着層が、前記ブロック共重合体混合物と、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(C)と、を含み、
前記ブロック共重合体(C)は、ビニル芳香族炭化水素含有量60〜95質量%と共役ジエン含有量5〜40質量%からなり、GPC測定によるピーク分子量が5万〜50万であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量を1万〜10万の範囲に少なくとも1つ有し、
前記接着層のビニル芳香族炭化水素含有量が50質量%を超え80質量%以下、共役ジエン含有量が20質量%以上50質量%未満である、請求項1又は2に記載の積層シート又はフィルム。
【請求項4】
前記ブロック共重合体(B)が、ブロック共重合体(A)から非ハロゲン系カップリング剤を用いて得られるブロック共重合体である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層シート又はフィルム。
【請求項5】
前記中間層が、0.1〜80質量%の、下記(a)〜(c)からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル芳香族炭化水素系重合体をさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層シート又はフィルム。
(a)スチレン系重合体
(b)ビニル芳香族炭化水素と、脂肪族不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸無水物及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の脂肪族不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体
(c)ゴム変性スチレン系重合体
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、PMMA樹脂、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート三元共重合体樹脂(MBS樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の積層シート又はフィルム。
【請求項7】
前記表面層と前記中間層の厚さ比が、表面層/中間層/表面層として、1/2/1〜1/20/1で、接着層の厚さが表面層の5〜100%である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層シート又はフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート及びフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族炭化水素含有量が比較的高い、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるブロック共重合体は、透明性、耐衝撃性等の特性を利用して、射出成形用途や、シート及びフィルム等の押し出し成形用途等に使用されている。また、かかるブロック共重合体を各種熱可塑性樹脂と組み合わせて相互の特性を改良する試みがなされているが、この場合、相互の相容性が不十分であることから、例えばブロック共重合体と熱可塑性樹脂を積層してシート及びフィルムを成形したとしても剥離強度が十分ではない等の問題点を有している。
【0003】
そこで、従来からブロック共重合体と熱可塑性樹脂の積層シート及びフィルムとして機械物性及び/又は剥離強度を改良する種々の検討がなされている。
特許文献1には、透明性,剛性及び耐衝撃強度に優れる積層樹脂シートを得るため、ラメラ構造を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体を表層とし、スチレン−ブタジエンブロック共重合体にスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとをグラフト共重合した樹脂を内層とした成型用積層樹脂シートが開示されている。
特許文献2には、透明性、柔軟性、耐寒性、ヒートシール強度等に優れた多層積層体を得るため、ポリオレフィン樹脂と特定構造の水添ジエン系共重合体の多層積層体が開示されている。
特許文献3には、透明性、柔軟性、耐熱性、衝撃強度等に優れる多層積層体を得るため、ポリオレフィン系樹脂と特定構造の水添ジエン系共重合体を基材層とし、結晶性ポリ−4−メチル−1−ペンテン系樹脂を表層とする多層積層体が開示されている。
特許文献4には、剛性、耐衝撃性等の物性バランスに優れるとともに、耐剥離性、耐油性、耐薬品性を満足する多層樹脂シートを得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる特定構造のブロック共重合体を含む基材層に、実質的に非晶質なポリエステル系重合体からなる表面層を積層してなる多層樹脂シートが開示されている。
特許文献5には、耐熱性、低温収縮性、耐溶剤性に優れると共に、低コストでベースフィルムの層間剥離が発生し難いシュリンクラベルとして、外面層がポリエステル系樹脂からなり、中間層がスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂からなる積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−314611号公報
【特許文献2】特開平9−327893号公報
【特許文献3】特開平10−34849号公報
【特許文献4】特開2001−121664号公報
【特許文献5】特開2004−170715号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかしながら、上述したような従来開示されている積層シート及びフィルムは、いずれにおいても、透明性、剛性、耐衝撃性及び剥離強度において未だ改良の余地があり、積層シート及びフィルムとして、十分な特性を有していない。
本発明が解決しようとする課題は、透明性、剛性、耐衝撃性及び剥離強度に優れる積層シート及びフィルムを提供することである。
【0006】
本発明者らは、上述したような積層シート及びフィルムに関する従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、積層シート及びフィルムにおける、表面層として熱可塑性樹脂を使用し、中間層として特定のブロック共重合体を使用し、接着層として特定のブロック共重合体混合物を使用することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は下記の通りである。
[1]表面層と中間層との間に接着層を含む、積層シート又はフィルムであって、
前記表面層が、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み
前記中間層が、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAの少なくとも1個と、共役ジエンの重合体ブロックBの少なくとも1個と、からなるブロック共重合体を含み、
前記接着層が、50〜80質量%の、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(A)と、20〜50質量%の、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(B)と、を含むブロック共重合体混合物を含み、
ブロック共重合体(A)は、ビニル芳香族炭化水素含有量30〜50質量%と共役ジエン含有量50〜70質量%からなり、GPC測定によるピーク分子量が3万〜7万であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量を1万〜3万の範囲に少なくとも1つ有し、
ブロック共重合体(B)は、ビニル芳香族炭化水素含有量30〜50質量%と共役ジエン含有量50〜70質量%からなり、GPC測定によるピーク分子量が7万を超え13万以下であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量を1万〜3万の範囲に少なくとも1つ有する、積層シート又はフィルム。
[2]前記ブロック共重合体混合物が、55〜75質量%の前記ブロック共重合体(A)と、25〜45質量%の前記ブロック共重合体(B)と、を含む、[1]に記載の積層シート又はフィルム。
[3]前記接着層が、前記ブロック共重合体混合物と、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(C)と、を含み、
前記ブロック共重合体(C)は、ビニル芳香族炭化水素含有量60〜95質量%と共役ジエン含有量5〜40質量%からなり、GPC測定によるピーク分子量が5万〜50万であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量を1万〜10万の範囲に少なくとも1つ有し、
前記接着層のビニル芳香族炭化水素含有量が50質量%を超え80質量%以下、共役ジエン含有量が20質量%以上50質量%未満である、[1]又は[2]に記載の積層シート又はフィルム。
[4]前記ブロック共重合体(B)が、ブロック共重合体(A)から非ハロゲン系カップリング剤を用いて得られるブロック共重合体である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の積層シート又はフィルム。
[5]前記中間層が、0.1〜80質量%の、下記(a)〜(c)からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル芳香族炭化水素系重合体をさらに含む、[1]乃至[4]のいずれかに記載の積層シート又はフィルム。
(a)スチレン系重合体
(b)ビニル芳香族炭化水素と、脂肪族不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸無水物及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の脂肪族不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体
(c)ゴム変性スチレン系重合体
[6]前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、PMMA樹脂、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート三元共重合体樹脂(MBS樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれる少なくとも1種である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の積層シート又はフィルム。
[7]前記表面層と前記中間層の厚さ比が、表面層/中間層/表面層として、1/2/1〜1/20/1で、接着層の厚さが表面層の5〜100%である、[1]乃至[6]のいずれかに記載の積層シート又はフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明性、剛性、低温及び剥離強度に優れる積層シート及びフィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、説明する。
本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0010】
〔積層シート及びフィルム〕
本実施形態の積層シート及びフィルムは、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む表面層と、ブロック共重合体を含む中間層との間に接着層を含む積層シート及びフィルムである。
本実施形態においては、厚さが0.25mm以上をシートと称し、厚さが0.25mm未満をフィルムと称する。
本実施形態の積層シート及びフィルムは、透明性、剛性、低温伸びに優れ、取り分け中間層と表面層との剥離強度が大きいことから、外部応力による剥離が起こりにくい特徴を有する。
【0011】
(表面層)
本実施形態の積層シート及びフィルムを構成する表面層は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む。
【0012】
表面層に使用する熱可塑性樹脂は特に制限されるものではなく、例えば「2010年版 プラスチック成形材料商取引便覧(改訂26版);化学工業日報社」に記載の「II.熱可塑性樹脂」等が挙げられる。
表面層に使用する好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、PMMA樹脂、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート三元共重合体樹脂(MBS樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びポリフェニレンエーテル系樹脂である。
熱可塑性樹脂は、少なくとも1種を用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系重合体、及びポリブテン−1系共重合体等、並びにカルボン酸基をさらに付与した変性重合体等が挙げられ、これら重合体(樹脂)から選ばれる少なくとも1種を主成分(好ましくは、全成分中の50質量%)としていればよい。
ポリエチレン系重合体としては、例えば、ポリエチレン、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、その他のエチレンと不飽和脂肪酸類との共重合体、エチレン系アイオノマー樹脂、及びエチレン−αオレフイン共重合体等のエチレン系共重合体等が挙げられる。
好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂(ランダム共重合体及びランダム共重合体を脂環族飽和炭化水素系樹脂、石油樹脂、テンペン樹脂、ロジン類で変性したものも含む)、高密度ポリエチレン、リニアー低密度ポリエチレン(L・LDPE)、超低密度ポリエチレン、アイオノマー樹脂(例えばエチレン系)等である。
【0014】
AS樹脂は、アクリロニトリル10〜50質量%、スチレン50〜90質量%のモノマー構成を有する樹脂が好ましく、AS樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリロニトリルとスチレンの乳化重合、懸濁重合及び連続塊状重合等が挙げられる。
【0015】
ABS樹脂は、アクリロニトリル10〜20質量%、ブタジエン40〜70質量%、スチレン20〜40質量%のモノマー構成を有する樹脂が好ましく、ABS樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、(1)ブタジエンをまず乳化重合し、ポリブタジエンゴムラテックスとし、このラテックスの存在下にスチレンとアクリロニトリルを乳化させてグラフト重合させる方法、(2)ポリブタジエン固形ゴムを使用し、これをアクリロニトリルとスチレンに溶解した状態で重合させ、ゴム相が転相してゴム粒子が形成した後に水中に分散させてグラフト重合を完結する塊状/懸濁重合させる方法等が挙げられる。
【0016】
PMMA樹脂は、メチルメタクリレートを80質量%以上含む透明な重合体等が挙げられ、メチルメタクリレート単一重合体の他に、メチルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート又はブチルアクリレート等を1〜20質量%含む共重合体であってもよい。
また、PMMA樹脂には、アクリルエラストマーを含むことができるが、アクリルエラストマーは積層フィルムを白化させることがあるので、アクリルエラストマーを含むPMMA樹脂の使用を避けることが好ましいが、アクリルエラストマーを含む場合、好ましい配合比率は70〜100質量部のメチルメタクリレートを80質量%以上含む透明な重合体に対して0〜30質量部である。市販されている、多層粒子の形をしたアクリルエラストマーを含む「耐衝撃性」PMMAとよばれるグレードのPMMA樹脂を用いることができる。
【0017】
スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート三元共重合体樹脂(MBS樹脂)は、メタクリル酸メチルとブタジエンとスチレンを原料とした共重合体であり、ゴム層であるブタジエンとスチレンの共重合体(SBR)をコアとし、メタクリル酸メチルとスチレンの共重合体(MS)をシェルとしたコアシェル型の熱可塑性樹脂である。
ブタジエンとスチレンの共重合体(SBR)以外の、ポリブタジエン系ゴムやポリアクリル酸エステル系ゴム等をコアとしたMBS樹脂を用いてもよい。
MBS樹脂における、ゴム層であるゴム状重合体の好ましい含有量は5〜30質量%である。
【0018】
ポリエステル系樹脂は、構成単位がエステル結合の繰り返しによって結合されている線状ポリマーである。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p,p'−ジカルボキシジフェニル、2,6−ナフタリンジカルボン酸などの二塩基酸又はこれらの誘導体と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、p−キシレングリコール、ビスフェノールAなどのグリコール(またはジオール)との縮重合体、ピバロラクトン、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等の開環重合体等が挙げられる。
【0019】
ポリアミド系樹脂は、構成単位がアミド結合の繰り返しによって結合されている線状ポリマーである。
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ε−アミノカプロラクタムやω−アミノラウロラクタムなどの開環重合体及び共重合体、ε−アミノウンデカン酸の縮重合体、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸との縮重合体等が挙げられ、具体的には、ナイロン−46、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12、及びナイロン−6−ナイロン−12共重合体等が挙げられる。
【0020】
ポリカーボネート系樹脂は、構成単位が炭酸エステル結合の繰り返しによって結合されている線状ポリマーである。
ポリカーボオネート系樹脂としては、例えば、4,4'−ジヒドロキシジフェニルアルカン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシ化合物とホスゲンの反応によって得られる重合体、及び前記ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応によって得られる重合体等が挙げられ、具体的には、ポリ−4,4'−ジオキシジフェニル−2,2'−プロパンカーボネート等が挙げられる。
【0021】
ポリウレタン系樹脂は、構成単位がポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(1,6−ヘキサンアジペート)、ポリカプロラクトン等のポリエステルジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコールから選ばれるグリコール成分と、芳香族、脂環族及び脂肪族系ジイソシアネートから選ばれ、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート成分と、の重付加反応によって得られる構成単位がウレタン結合の繰り返しによって結合されているポリマーであり、熱可塑性ポリウレタンである。
【0022】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、構成単位がポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−イソブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−4−クロル−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモ重合体等が挙げられ、好ましくは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルである。
前記構成単位中にアルキル3置換フェノール、例えば、2,3,6−トリメチルフェノールを一部に含有する共重合体であってもよく、公知の他のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいてもよい。公知の他のフェニレンエーテルユニットとしては、例えば、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット、及び2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。また、上述したポリフェニレンエーテル系樹脂にスチレン系化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等がグラフト化されたグラフト共重合体でもよい。
【0023】
表面層を構成する組成物を製造する方法については、特に制限されるものではなく、公
知の方法を利用できる。
例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュ
ー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、
各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が適用できる。
特に、押出機による溶融混練法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。
【0024】
(中間層)
本実施形態において、中間層とは、積層シート及びフィルムにおける表面層及び接着層以外の層を意味する。
【0025】
本実施形態の積層シート及びフィルムを構成する中間層は、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAの少なくとも1個と、共役ジエンの重合体ブロックBの少なくとも1個と、からなるブロック共重合体を含む。
ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAとして、「主体とする」とは、ビニル芳香族炭化水素を90質量%を超えて含むことを意味し、かかる重合体ブロックAとしては、ビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロック、又はビニル芳香族炭化水素を90質量%を超えて含有する、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体ブロックが挙げられる。
共役ジエンの重合体ブロックBとしては、ビニル芳香族炭化水素を5〜90質量%含有する、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体ブロック、又は共役ジエン単独重合体ブロックが挙げられる。
【0026】
ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックA及び共役ジエンの重合体ブロックB中に、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体部分が存在する場合、共重合されているビニル芳香族炭化水素は、重合体ブロックA又は重合体ブロックB中に均一に分布していても、テーパー(漸減)状に分布していてもよい。
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体部分は、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分が複数個共存してもよい。
【0027】
中間層に含まれるブロック共重合体が、重合体ブロックA及び重合体ブロックBの一方又は双方において複数個からなる場合には、複数個の重合体ブロック同士は分子量、組成、種類等が互いに異なるものであってもよい。
【0028】
中間層に含まれるブロック共重合体は、従来公知の方法により合成することができるが、例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭57−49567号公報、特公昭58−11446号公報等に開示されている、炭化水素溶剤中で有機リチウム化合物等のアニオン重合開始剤を用いてビニル芳香族炭化水素と共役ジエンをブロック共重合する方法により合成することができる。
【0029】
中間層に含まれるブロック共重合体のポリマー構造としては、例えば、下記(i)〜(iii)のような線状ブロック共重合体が挙げられる。
A−(B−A)n・・・(i)
A−(B−A)n−B・・・(ii)
B−(A−B)n+1・・・(iii)
ここで、Aはビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAであり、Bは共役ジエンの重合体ブロックBである。
重合体ブロックAと重合体ブロックBとの境界は、必ずしも明瞭に区別される必要はない。
nは1以上の整数であり、一般的には1〜5である。
また、中間層に含まれるブロック共重合体のポリマー構造は、上記線状ブロック共重合体のほか、下記(iv)〜(vii)のような構造のものも挙げられる。
[(A−B)km−X・・・(iv)
[(A−B)k−A]m−X・・・(v)
[(B−A)km−X・・・(vi)
[(B−A)k−B]m−X・・・(vii)
ここで、A、Bは、式(i)〜(iii)と同様であり、k及びmは1以上の整数であり、一般的には1〜5である。
Xは、例えば、四塩化ケイ素、四塩化スズ等のカップリング剤の残基、又は多官能有機リチウム化合物等のアニオン重合開始剤の残基を示し、ブロック共重合体としては、ラジアルブロック共重合体又はこれらのブロック共重合体の任意のポリマー構造の混合物が使用できる。
【0030】
ビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。
ビニル芳香族炭化水素としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
共役ジエンとしては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
共役ジエンとしては、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
共役ジエンとして、1,3−ブタジエンとイソプレンとを併用する場合、1,3−ブタジエンとイソプレンとの全質量に対してイソプレンは10質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。
イソプレンが10質量%以上であると、高温での成形加工時等に熱分解を起こさず分子量が低下しないため外観特性や機械的強度のバランス性能の良好なブロック共重合体とすることができる。
【0033】
中間層に含まれるブロック共重合体を製造する際には、炭化水素溶媒中で、アニオン重合開始剤を用いて反応させることが好ましい。
【0034】
アニオン重合開始剤としては、有機リチウム化合物を用いることができ、例えば、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物等が挙げられ、具体的には、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチル
リチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。
アニオン重合開始剤としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
炭化水素溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
炭化水素溶媒としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0036】
ブロック共重合体を製造する際には、重合速度の調整、重合した共役ジエン部のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)の変更、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの反応比の調整等の目的で、極性化合物及び/又はランダム化剤を用いることができる。
極性化合物及びランダム化剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類;チオエーテル類;ホスフィン類;ホスホルアミド類;アルキルベンゼンスルホン酸塩;カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
【0037】
ブロック共重合体の重合温度は、一般的には−10℃〜150℃であり、好ましくは4
0℃〜120℃である。
重合に要する時間は、条件によって異なるが、一般的には48時間以内であり、特に良好な条件を選定することにより1〜10時間で重合を行うことができる。
また、重合を行う際の系の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスをもって置換した状態とすることが好ましい。
重合を行う際の圧力は、上記重合温度において、モノマーとしてのビニル芳香族炭化水素及び共役ジエン、並びに反応溶媒としての炭化水素溶媒を液層に維持するのに充分な圧力であれば特に制限されるものではない。
重合系内に触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないよう留意することが必要である。
【0038】
ブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素の含有量は、50〜95質量%であることが好ましく、55〜95質量%であることがより好ましく、60〜95質量%であることがさらに好ましい。
ブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素の含有量が50〜95質量%であると、低温伸びと剛性のバランス性能が良好で、透明性に優れた、中間層とすることができる。
【0039】
ブロック共重合体中に組み込まれているビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのブロック率は、10〜98質量%が好ましく、15〜95質量%がより好ましく、20〜90質量%がさらに好ましい。
ブロック率が10〜98質量%であることにより、本実施形態の積層シート及びフィルムの剛性と低温伸びのバランスが優れたものとなる。
【0040】
ビニル芳香族炭化水素ブロックのブロック率は、ブロック共重合体の製造時において、少なくとも一部のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとが共重合する工程におけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比、重合反応性比等を調整することにより制御できる。
【0041】
具体的な方法としては、(イ)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの混合物を連続的に重合系に供給して重合する、及び/又は、(ロ)極性化合物及び/又はランダム化剤を使用してビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとを共重合する、等の方法が挙げられる。
【0042】
ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのブロック率は、四酸化オスミウムを触媒として、ジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法〕により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を定量し、下記の式により算出することができる。


ブロック共重合体中のビニル芳香族
炭化水素重合体ブロックの質量
ブロック率(%)= ―――――――――――――――――――――― ×100
ブロック共重合体中の全ビニル
芳香族炭化水素の質量
【0043】
ブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのGPC測定によるピーク分子量は、好ましくは0.5万〜20万、より好ましくは0.7万〜18万の範囲に少なくとも1つ有する。
かかるピーク分子量が0.5万〜20万であることにより、優れた剛性と伸びが得られ、成形加工性と透明性も良好なものとなる。
【0044】
ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量は、四酸化オスミウムを触媒として、ジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法〕により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析することにより求めることができる。
具体的には、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分をGPCにかけてGPC曲線を得た後、単分散ポリスチレンをGPC測定して、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの分子量から作成した検量線を作成し、常法(「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー」、81〜85頁(1976年、日本国丸善株式会社発行)に従って算出することによって、ピーク分子量を求めることができる。
ピーク分子量とは、分子量分布曲線における横軸を分子量とした時の縦軸の高さの変化量の第1次微分値が零となる分子量を意味する。
【0045】
ブロック共重合体のGPC測定によるピーク分子量は、3万〜100万であることが好ましく、4万〜80万であることがより好ましく、5万〜60万であることがさらに好ましい。
かかるピーク分子量は、本実施形態の積層シート及びフィルムの中間層を構成する組成物の機械的強度を良好なものとする観点から、3万以上であることが好ましく、良好な加工性や熱可塑性樹脂との相容性を確保する観点からは100万以下であることが好ましい。
【0046】
ブロック共重合体のピーク分子量についてもブロック共重合体を試料とする以外は前述と同様にGPCで分析することにより求めることができる。
【0047】
ブロック共重合体は、合成工程において溶液として得られるが、必要に応じて触媒残渣を除去して溶液から分離する。
溶媒の分離方法としては、例えば重合を行った後、又は従来公知の方法により水添を行った後の溶液に、アセトン又はアルコール等の、ブロック共重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて、ブロック共重合体を沈澱させて回収する方法や、ブロック共重合体の溶液を撹拌下で熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、さらには直接溶液を加熱して溶媒を留去する方法等が挙げられる。
ブロック共重合体には、必要に応じて、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加してもよい。
【0048】
本実施形態の積層シート及びフィルムを構成する中間層は、上述したブロック共重合体に、ビニル芳香族炭化水素系重合体をさらに含んでもよい。
ブロック共重合体に、ビニル芳香族炭化水素系重合体を組み合わせることにより、剛性に優れる積層シート及びフィルムを得ることができる。
ビニル芳香族炭化水素系重合体の含有量は、中間層を構成する樹脂成分として、0.1〜80質量%であることが好ましく、0.3〜75質量%であることがより好ましく、1〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0049】
ビニル芳香族炭化水素系重合体としては、下記(a)〜(c)からなる群から選ばれる
少なくとも1種を使用することが好ましい。
(a)スチレン系重合体
(b)ビニル芳香族炭化水素と、脂肪族不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸無水物、脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の脂肪族不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体
(c)ゴム変性スチレン系重合体
【0050】
(a)スチレン系重合体は、共重合可能なモノマーとスチレンとを重合して得られる重合体(但し、(b)を除く)であって、スチレンと共重合可能なモノマーとしては、α−メチルスチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
スチレン系重合体としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体等が挙げられ、中でも、ポリスチレンが好ましい。
(a)スチレン系重合体の製造方法としては、スチレン系樹脂を製造する公知の方法、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を用いることができる。
スチレン系重合体の重量平均分子量は、一般に5万〜50万である。
スチレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよく、剛性改良剤として利用できる。
【0051】
(b)ビニル芳香族炭化水素と、脂肪族不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸無水物、脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の脂肪族不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体において、脂肪族不飽和カルボン酸の誘導体とは、脂肪族不飽和カルボン酸無水物及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルが挙げられる。
脂肪族不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。
脂肪族不飽和カルボン酸無水物としては、無水フマル酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
脂肪族不飽和カルボン酸エステルとしては、脂肪族不飽和カルボン酸と炭素数C1〜C12、好ましくはC2〜C12のアルコールとのモノ又はジエステル等が挙げられる。
脂肪族不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等のアクリル酸エステルやメタアクリル酸エステル、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸等と炭素数C1〜C12のアルコールとのα、β不飽和ジカルボン酸モノエステル又はジエステル等が挙げられる。
【0052】
脂肪族不飽和カルボン酸及び/又は脂肪族不飽和カルボン酸誘導体の含有量は、一般に5〜50質量%であり、好ましくは8〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%である。
【0053】
(b)共重合体の製造方法としては、スチレン系樹脂を製造する公知の方法、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を用いることができる。
(b)共重合体の重量平均分子量は、一般に5万〜50万である。
(b)共重合体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
(b)共重合体としては、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体のうち、スチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体が透明性を維持できるため好ましい。
【0055】
脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体の中でも特に好ましいものとしては、スチレンとアクリル酸n−ブチルとを主体とする共重合体が挙げられ、スチレンとアクリル酸n−ブチルとの合計量が50質量%以上であることが好ましく、スチレンとアクリル酸n−ブチルとの合計量が60質量%以上からなるスチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体がより好ましい。
スチレンとアクリル酸n−ブチルとを主体とする芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体を中間層にさらに用いた熱収縮積層フィルムは、透明性と低温伸びが良好である。
【0056】
(c)ゴム変性スチレン系重合体としては、例えば、ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとエラストマーとの混合物を重合することによって得られるもの等が挙げられる。
重合方法としては、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等が一般的に行われている。
ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとしては、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等が挙げられる。
共重合可能なエラストマーとしては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム等が挙げられる。
かかるエラストマーは、ビニル芳香族炭化水素及び共重合可能なモノマー100質量部に対して一般に3〜50質量部で、このモノマーに溶解して、又はラテックス状となって乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等に供される。
【0057】
好ましい(c)ゴム変性スチレン系重合体としては、耐衝撃性ゴム変性スチレン系重合体(HIPS)が挙げられる。
(c)ゴム変性スチレン系重合体は、剛性、伸びの改良剤として利用できる。
【0058】
(c)ゴム変性スチレン系重合体の重量平均分子量は、一般に5万〜50万である。
(c)ゴム変性スチレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0059】
ゴム変性スチレン系重合体の含有量は、透明性維持を考慮すると、ブロック共重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
【0060】
ビニル芳香族炭化水素系重合体は、そのメルトフローレート(MFR、G条件で温度200℃、荷重5Kg)が、成形加工の点から0.1〜100g/10minであることが好ましく、より好ましくは0.5〜50g/10min、さらに好ましくは1〜30g/10minである。
ブロック共重合体と、ビニル芳香族炭化水素系重合体とを含む中間層の場合、必要に応じて添加剤を配合してもよい。
【0061】
本実施形態における好ましい添加剤としては、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤等も用いられ、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)等に開示されているもので、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、スラッグウール、ガラス繊維等の無機充填剤;カーボンブラック、酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン等が挙げられる。
【0062】
中間層を構成する組成物を製造する方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を利用できる。
例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が適用できる。
特に、押出機による溶融混練法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。
溶融混練温度は、必要に応じて使用するビニル芳香族炭化水素系重合体の軟化温度、溶融粘度、ブロック共重合体の熱劣化等を考慮して、100〜350℃が好ましく、150〜350℃がより好ましく、180〜330℃がさらに好ましい。
溶融混練時間(又は溶融混練工程の平均滞留時間)は、混練度合い(分散性)や生産性、ブロック共重合体、ビニル芳香族炭化水素系重合体等の劣化等を考慮して、0.2〜60分が好ましく、0.5〜30分がより好ましく、1〜20分がさらに好ましい。
【0063】
(接着層)
本実施形態の積層シート及びフィルムは、中間層、接着層、表面層の順に積層され、接着層は、中間層と表面層との間に形成される。
【0064】
本実施形態において、接着層とは、積層シート及びフィルムの表面層と中間層の剥離防止機能を付与する層である。
【0065】
本実施形態の積層シート及びフィルムを構成する接着層は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(A)と、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(B)と、を含むブロック共重合体混合物を含む。
ブロック共重合体混合物中において、ブロック共重合体(A)を50〜80質量%、ブロック共重合体(B)を20〜50質量%含む。
好ましくは、ブロック共重合体混合物中において、ブロック共重合体(A)を55〜75質量%、ブロック共重合体(B)を25〜45質量%含む。
ブロック共重合体(A)とブロック共重合体(B)をかかる含有量で接着層に含むことにより、表面層と中間層の層間剥離強度に優れる積層シート及びフィルムとすることができる。
【0066】
ブロック共重合体(A)は、ビニル芳香族炭化水素含有量30〜50質量%と、共役ジエン含有量50〜70質量%からなる重合体である。
好ましくはビニル芳香族炭化水素含有量が32〜48質量%、共役ジエン含有量が52〜68質量%であり、ビニル芳香族炭化水素含有量と共役ジエン含有量とがかかる範囲内にあることにより、表面層と中間層の層間剥離強度に優れる積層シート及びフィルムとすることができる。
【0067】
ブロック共重合体(A)のGPC測定によるピーク分子量は3万〜7万であり、好ましくは3.5万〜6.5万であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量は1万〜3万、好ましくは1万〜2.7万、より好ましくは1.2万〜2.5万の範囲に少なくとも1つ有する。
【0068】
ブロック共重合体(B)は、ビニル芳香族炭化水素含有量30〜50質量%と、共役ジエン含有量50〜70質量%からなる重合体である。
好ましくはビニル芳香族炭化水素含有量が32〜48質量%、共役ジエン含有量が52〜68質量%であり、ビニル芳香族炭化水素含有量と共役ジエン含有量とがかかる範囲内にあることにより、表面層と中間層の層間剥離強度に優れる積層シート及びフィルムとすることができる。
【0069】
ブロック共重合体(B)のGPC測定によるピーク分子量は7万を超え13万以下であり、好ましくは7.5万〜12.5万であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量は1万〜3万、好ましくは1万〜2.7万、より好ましくは1.2万〜2.5万の範囲に少なくとも1つ有する。
【0070】
ブロック共重合体(A)のGPC測定によるピーク分子量が3万〜7万であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量が1万〜3万の範囲に少なくとも1つ有し、ブロック共重合体(B)のGPC測定によるピーク分子量が7万を超え13万以下であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量が1万〜3万の範囲に少なくとも1つ有するブロック共重合体混合物とすることによってフィルムの製膜性及び表面層と中間層の層間剥離強度に優れる積層シート及びフィルムとすることができる。
【0071】
ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)のピーク分子量はGPC測定により求めることができる。
具体的には、ブロック共重合体(A)又はブロック共重合体(B)をGPCにかけてGPC曲線を得た後、単分散ポリスチレンをGPCにかけてそのピークカウント数と分子量から作成した検量線を用いて、常法(「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー」、81〜85頁(1976年、日本国丸善株式会社発行)に従って算出することによって、ピーク分子量を求めることができる。
ピーク分子量とは、分子量分布曲線における横軸を分子量とした時の縦軸の高さの変化量の第1次微分値が零となる分子量を意味する。
【0072】
ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量についてもビニル芳香族炭化水素重合体ブロックを試料とする以外は前述と同様にGPCで分析することにより求めることができる。
ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)は、それぞれ、例えば、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物をアニオン重合開始剤としてビニル芳香族炭化水素を重合させ、次いで、得られた重合体と共役ジエンを重合させ、更に場合によりこれらの操作を繰り返す方法により製造することができる。
ブロック共重合体のピーク分子量は、有機リチウム化合物量を制御することにより調整することができる。
【0073】
ブロック共重合体混合物は、2種類のブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)を混合させることにより得ることができる。
かかる混合方法としては、それぞれの重合反応終了後、反応溶液を混合して、水、アルコール、酸等を添加して活性種を失活させ、又は、それぞれの重合反応終了後、反応溶液を別々に失活させ、混合して、得られた混合溶液を、例えばスチームストリッピング等を行って重合溶媒を分離し、乾燥する方法が挙げられる。
ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)をそれぞれの反応溶液から個別に重合溶媒を分離、乾燥して得られたブロック共重合体をロール等でブレンドして得る方法も挙げられる。
【0074】
ブロック共重合体混合物は以下の方法によっても得ることができる。
ブロック共重合体(A)を重合した後、重合系内に適当なカップリング剤を有機リチウム化合物に対して、所定量添加することにより得られる共重合体生成物をブロック共重合体(B)とし、得られたブロック共重合体(B)を、ブロック共重合体(A)と混合することにより得ることができる。
かかる方法により得られるブロック共重合体混合物は、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロック部分の分子量及び分子量分布がブロック共重合体(A)とブロック共重合体(B)でまったく同じになるため、表面層と中間層の層間剥離強度に優れる積層シート及びフィルムとすることができる。
【0075】
ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)は、中間層に使用するブロック共重合体と同様に従来公知の方法により製造でき、ビニル芳香族炭化水素の種類、共役ジエンの種類、炭化水素溶媒の種類、有機リチウム化合物の種類並びに極性化合物及びランダム化剤の種類等についても中間層に使用するブロック共重合体と同様のものが使用できる。
【0076】
ブロック共重合体(B)がブロック共重合体(A)をカップリング反応することによって得られる場合、カップリング剤としては、例えば2官能性の、ジグリシジルエーテル、ジ(グリシジルオキシ)(メチル)フェニルシランのようなエポキシ化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランのようなアルコキシケイ素化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチルのようなエステル化合物、ジビニルベンゼン等のようなビニルアレン類、ジクロルジメチルシラン、フェニルメチルジクロロシランのようなハロゲン化ケイ素化合物、ジクロロジメチルスズ、テトラクロロスズのようなスズ化合物、テトラクロロシランのようなケイ素化合物、等が挙げられる。
中でも、2官能カップリング剤が好適に用いられ、また、加工時の加熱変色性の観点から、非ハロゲン系カップリング剤を用いることが好ましい。
カップリング剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0077】
本実施形態において、ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)を含むブロック共重合体混合物と、ブロック共重合体(C)と、を含む接着層であってもよい。
ブロック共重合体(C)は、ビニル芳香族炭化水素含有量60〜95質量%と、共役ジエン含有量5〜40質量%からなる重合体であり、好ましくはビニル芳香族炭化水素含有量63〜90質量%と、共役ジエン含有量10〜37質量%からなる重合体である。
【0078】
ブロック共重合体(C)は、GPC測定によるピーク分子量が5万〜50万であり、好ましくは7万〜30万であり、ブロック共重合体(C)を構成するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量を1万〜10万の範囲、好ましくは2万〜8万の範囲に少なくとも1つ有する。
ブロック共重合体(C)を含有した接着層のビニル芳香族炭化水素含有量は50質量%を超え80質量%以下、好ましくは53〜75質量%であり、共役ジエン含有量が20質量%以上50質量%未満、好ましくは25〜47質量%である。
接着層にブロック共重合体(C)を混合使用した際のビニル芳香族炭化水素含有量が50質量%を超え80質量%以下の範囲にあってはフィルムの剛性と剥離強度に優れる。
【0079】
本実施形態において、好ましくはブロック共重合体混合物を1〜60質量%、ブロック共重合体(C)を40〜99質量%、より好ましくはブロック共重合体混合物を3〜55質量%、ブロック共重合体(C)を45〜97質量%、さらに好ましくはブロック共重合体混合物を5〜50質量%、ブロック共重合体(C)を50〜95質量%含む。
【0080】
ブロック共重合体(C)は、中間層に使用するブロック共重合体と同様に従来公知の方法により製造でき、ビニル芳香族炭化水素の種類、共役ジエンの種類、炭化水素溶媒の種類、有機リチウム化合物の種類並びに極性化合物及びランダム化剤の種類等についても中間層に使用するブロック共重合体と同様のものが使用できる。
また、ブロック共重合体(C)として、中間層に使用するブロック共重合体と同一のブロック共重合体を用いてもよい。
【0081】
ブロック共重合体混合物には、所望により添加剤を使用することができ、接着層を構成する組成物を製造する方法については、特に制限されるものではなく、中間層について例示した公知の方法を利用できる。
【0082】
(積層シート及びフィルムの構成)
本実施形態の積層シート及びフィルムは、表面層と中間層との間に接着層を有する少なくとも3層構成のものであれば、層構成は特に限定されるものではない。
本実施形態における積層構成は、表面層/接着層/中間層からなる3種構成である。積層シート及びフィルムを構成する表面層と中間層の厚さ比は、表面層/中間層/表面層として、1/2/1〜1/20/1であることが好ましく、1/4/1〜1/15/1であることがより好ましい。
接着層の厚さは表面層の厚さの5〜100%の厚さであることが接着効果及び透明性の点から好ましい。
【0083】
好ましい層構成は表面層/接着層/中間層/接着層/表面層の3種5層である。5層の場合、表層/接着層/中間層/接着層/裏層という構成となっていてもよく、この場合、表層と裏層に用いられる表面層は同一であっても、異なっていてもよい。
【0084】
〔積層シート及びフィルムの製造方法〕
本実施形態の積層シート及びフィルムは、中間層、表面層及び接着層を構成する材料を、Tダイを備えた押出機を用いて、共押出しすることによって製造することができる。押出に際しては、Tダイ法、チューブラ法等の既存の方法を採用してもよい。
また、中間層を構成する材料、表面層を構成する材料及び接着層を構成する材料を、別々にシート化し、その後にプレス法やロールニップ法等を用いて積層しても本実施形態の積層シート及びフィルムを製造することができる。
【0085】
本実施形態の積層シート及びフィルムは、成形加工時の寸法変化を小さくするため、実質的に延伸しないことが好ましく、押出方向(MD)及び押出直角方向(TD)の70℃温水中での10秒間の熱収縮率は3%以下であることが好ましい。なお、本実施形態において、実質的に延伸しないとは、成形時に僅かながら巻き取り応力による延伸がかかってもよいことを意味し、熱収縮フィルム等における延伸を行っていないことを意味する。
【実施例】
【0086】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。本実施形態は、後述する実施例により制限されるものではない。なお、本実施例において用いられる測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0087】
(1)スチレン含量
紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
【0088】
(2)ブロック共重合体のGPC測定によるピーク分子量、数平均分子量
ブロック共重合体10mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLに溶解し、得られた溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定により、単分散ポリスチレンについて作成した検量線から、ピーク分子量及び数平均分子量を求めた。なお、GPCの測定条件を下記に示す。
単分散ポリスチレン:TSKスタンダードポリスチレン(東ソー(株)製)
カラム:TSKゲルスーパーマルチポアHZ−M(東ソー(株)製)
カラム温度:42℃
溶媒:THF
流量:2mL/min
測定装置:HLC−8220(東ソー(株)製)
検出器:RI
【0089】
(3)ブロック率
四酸化オスミウムを触媒としてジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法〕により得たスチレンブロック成分を定量し、下記の式から求めた。

スチレンブロックの質量
ブロック率(%)= ―――――――――――――――――― ×100
全スチレンの質量
【0090】
(4)スチレンブロックのピーク分子量
前記(3)と同様の方法で得たスチレンブロック成分を前記(2)と同様の方法で測定して求めた。
【0091】
(5)メルトフローレート(MFR)
ASTM D1238に準拠し、200℃、荷重5kgの条件で測定した。
【0092】
(6)引張弾性率(剛性の目安)
試験片としては、フィルムからMD及びTD方向に幅を10mm、標線間を100mmとする長さに短冊状に切り出したものを用いた。
測定温度は23℃とし、引張速度は10mm/minで行い、JIS K−6732に準拠して測定した。MD及びTD方向の平均値を引張弾性率(MPa)の値とした。
【0093】
(7)0℃伸び(低温伸びの目安)
試験片としては、フィルムからMD方向に幅を15mm、標線間を40mmとする長さに短冊状に切り出したものを用いた。
測定温度は0℃、引張速度は100mm/minで行い、JIS K−6732に準拠して測定した。0℃伸びは、値が大きい方が好ましい。
【0094】
(8)ヘーズ値(透明性の目安)
積層シート表面に流動パラフィンを塗布し、ASTM D1003に準拠して測定した。
【0095】
(9)剥離強度
積層シートの表面層を含む層を剥離層として、中間層を含む層を被剥離層としてMD方向に幅1cmで180度方向に剥離速度150mm/minで剥離させた強度を測定した。値が大きいほど剥離強度が強く望ましい。
【0096】
<ブロック共重合体の製造>
(ブロック共重合体A−1)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン37質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.145質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で45分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン63質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で75分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体A−1を得た。
【0097】
(ブロック共重合体A−2)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン45質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.125質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で50分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン55質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で65分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体A−2を得た。
【0098】
(ブロック共重合体A−3)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.107質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で25分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン80質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で95分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体A−3を得た。
【0099】
(ブロック共重合体A−4)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン58質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.155質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で65分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン42質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で55分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体A−4を得た。
【0100】
(ブロック共重合体A−5)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン38質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.243質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で45分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン62質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で75分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体A−5を得た。
【0101】
(ブロック共重合体A−6)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.099質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で55分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン52質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で70分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体A−6を得た。
【0102】
(ブロック共重合体A−7)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン31質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.284質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で40分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン69質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で80分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体A−7を得た。
【0103】
ブロック共重合体A−1〜A−7のスチレン含量(質量%)、ブロック共重合体のピーク分子量(万)、スチレンブロックのピーク分子量(万)を表1に示した。
【0104】
【表1】
【0105】
(ブロック共重合体B−1)
A−1と同様の重合反応終了後、重合器にカップリング剤としてジメトキシシランをn−ブチルリチウムに対し、当量添加し、カップリング反応させた後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体B−1を得た。
【0106】
(ブロック共重合体B−2)
A−2と同様の重合反応終了後、重合器にカップリング剤としてジメトキシシランをn−ブチルリチウムに対し、当量添加し、カップリング反応させた後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体B−2を得た。
【0107】
(ブロック共重合体B−3)
A−3と同様の重合反応終了後、重合器にカップリング剤としてジメトキシシランをn−ブチルリチウムに対し、当量添加し、カップリング反応させた後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体B−3を得た。
【0108】
(ブロック共重合体B−4)
A−4と同様の重合反応終了後、重合器にカップリング剤としてジメトキシシランをn−ブチルリチウムに対し、当量添加し、カップリング反応させた後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体B−4を得た。
【0109】
(ブロック共重合体B−5)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン19質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.049質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で25分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン62質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で75分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン19質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で25分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体B−5を得た。
【0110】
(ブロック共重合体B−6)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.07質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で60分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン52質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で65分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体B−6を得た。
【0111】
(ブロック共重合体B−7)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン11質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.08質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で15分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン35質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で45分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で15分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン34質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で45分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で15分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えて、ブロック共重合体B−7を得た。
【0112】
ブロック共重合体B−1〜B−7のスチレン含量(質量%)、ブロック共重合体のピーク分子量(万)、スチレンブロックのピーク分子量(万)を表2に示した。
【0113】
【表2】
【0114】
(ブロック共重合体C−1)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン31質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.075質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で35分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン36質量部とスチレン2質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で45分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン31質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で35分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えた。その後、脱溶剤の後、ペレット化し、ブロック共重合体C−1を得た。
【0115】
(ブロック共重合体C−2)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン29質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.058質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で35分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン27質量部とスチレン16質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で55分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン28質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で35分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えた。その後、脱溶剤の後、ペレット化し、ブロック共重合体C−2を得た。
【0116】
(ブロック共重合体C−3)
攪拌機を備えたオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.070質量部、テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウムに対して0.3倍モル添加し、65℃で30分間連続供給して重合を行った。
次に、1,3−ブタジエン17質量部とスチレン23質量部とを含むシクロヘキサン溶液を、65℃で40分間連続供給して重合を行った。
次に、スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液を、65℃で30分間連続供給して重合を行った。
反応終了後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して等モル添加した後、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを、ブロック共重合体100質量部に対して、0.5質量部を加えた。その後、脱溶剤の後、ペレット化し、ブロック共重合体C−3を得た。
【0117】
ブロック共重合体C−1〜C−3のスチレン含量(質量%)、ブロック共重合体のピーク分子量、スチレンブロックのピーク分子量及びブロック率を表3に示した。
【0118】
【表3】
【0119】
<ビニル芳香族炭化水素系共重合体の製造例>
ビニル芳香族炭化水素系共重合体D−1及びD−2を作製した。
撹拌器付き10Lオートクレーブに、スチレンとアクリル酸n−ブチルとを、下記表4に示す比率で5kg添加し、同時にエチルベンゼン0.3kgと、MFRを調整するため1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを所定量仕込み、110〜150℃で2〜10時間重合した後、ベント押出機で未反応スチレン、アクリル酸n−ブチル、エチルベンゼンを回収して製造した。
得られたD−1のMFRは、3.0g/10minであった。D−2のMFRは、2.6g/10minであった。
ビニル芳香族炭化水素系重合体D−1、D―2のスチレン含量(質量%)を表4に示した。
【0120】
【表4】
【0121】
<熱可塑性樹脂>
実施例に使用した熱可塑性樹脂を表5に示した。
【0122】
【表5】
【0123】
〔実施例1〜10、比較例1〜8〕
中間層及び接着層として表6、7のブロック共重合体(A)、(B)、(C)を使用し、表面層として表7、8に示した熱可塑性樹脂を使用し、押出量を、中間層/接着層/表面層=15/0.5/1の割合にて、中間層及び接着層の樹脂温度200〜210℃、表面層の樹脂温度210〜260℃の範囲で設定された押出機で溶融し、口金にて合流させ、3種5層(積層比(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層)=0.5/0.25/15/0.25/0.5)にて押出し、キャストロールで冷却し、厚さ0.4mmの積層シートを得た。
なお、接着層に使用したブロック共重合体(A)及び(B)は溶液の状態で混合した後、脱溶剤後にペレット化したものを用いた。
得られた積層シートの物性結果を表8及び表9に示した。表8及び表9示す結果から明らかなように、本実施形態の積層シート(実施例1〜10)は、透明性、剛性、低温伸び及び剥離強度に優れ、食品用のケース、包装用材料、ブリスター等に好適であることが分かった。また、実施例1〜10、比較例1〜8の積層シートの押出方向(MD)及び押出直角方向(TD)の70℃温水中での10秒間の熱収縮率は3%以下であり、寸法変化が小さいものであった。
【0124】
【表6】
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の積層シート及びフィルムは、食品用のケース、包装用材料、ブリスター等として用いることができるので、産業上の利用可能性を有する。