(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959434
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】手持ち式ヘアドライヤ
(51)【国際特許分類】
A45D 20/12 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
A45D20/12 J
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-523581(P2012-523581)
(86)(22)【出願日】2010年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-500824(P2013-500824A)
(43)【公表日】2013年1月10日
(86)【国際出願番号】NO2010000236
(87)【国際公開番号】WO2011016729
(87)【国際公開日】20110210
【審査請求日】2013年5月30日
(31)【優先権主張番号】20092808
(32)【優先日】2009年8月6日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】512030142
【氏名又は名称】デュアル・エアー・アーエス
【氏名又は名称原語表記】DUAL AIR AS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100125106
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(72)【発明者】
【氏名】マルティンセン,ヴィグディス・エム・ペー
(72)【発明者】
【氏名】アーセボ,シーヴ・エリーゼ
【審査官】
村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−238649(JP,A)
【文献】
実開昭58−169803(JP,U)
【文献】
実開昭58−032706(JP,U)
【文献】
特表2006−528504(JP,A)
【文献】
特開平03−009703(JP,A)
【文献】
実開平01−011103(JP,U)
【文献】
実開平01−011104(JP,U)
【文献】
特開昭62−246310(JP,A)
【文献】
特開2008−054770(JP,A)
【文献】
実開平02−146507(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0085997(US,A1)
【文献】
特開2004−105751(JP,A)
【文献】
特開平08−191711(JP,A)
【文献】
特開平08−056739(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/120283(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式のヘアドライヤであって、
空気供給デバイスと、
上部と下部の反対方向に伸びる空気の各吹き出し口と、
空気の流れおよび空気の温度を制御する各制御デバイスと、
少なくとも一つの空気の加熱のための加熱素子と、
前記上部および下部に伸びる各空気吹き出し口が、互いに約180°又は互いに約165°を含むそれ以下の角度で配置され、前記上部および下部に伸びる各空気吹き出し口が、前記空気供給デバイスに対して実質的に直角方向であり、空気の流れを方向付ける制御デバイスにより、(a)前記上部に伸びる空気吹き出し口に全ての空気の流れを方向付け且つ下部に伸びる空気吹き出し口への前記全ての空気の流れを妨げるか、又は、(b)前記下部に伸びる空気吹き出し口に全ての空気の流れを方向付け且つ上部に伸びる空気吹き出し口への前記全ての空気の流れを妨げるか、の何れかのために前記空気供給デバイスに配置された案内デバイスと、
前記ヘアドライヤが前記上部および/又は下部に伸びる各空気吹き出し口により保持できるように、前記上部および下部に伸びる各空気吹き出し口の少なくとも一方に、且つ、該空気吹き出し口と一体に配置された持ち手、
を含み、
前記各制御デバイスが、前記持ち手により前記ヘアドライヤを保持した時のユーザの指により制御できる位置に配置される、
ヘアドライヤ。
【請求項2】
前記全ての空気の流れを方向付ける前記案内デバイスが、
前記空気供給デバイスに枢着式に接続されたスロットルであって、前記上部に伸びる空気吹き出し口への前記全ての空気の流れを妨げ、および前記下部に伸びる空気吹き出し口への前記全ての空気の流れを開放する、ならびに逆も同様である位置へ、前記スロットルを枢動させるためのアクチュエータと動作可能に接続されたスロットルを含む、
請求項1記載のヘアドライヤ。
【請求項3】
前記持ち手が、前記下部に伸びる空気吹き出し口と一体であること、および前記持ち手が、断熱材料を備える、
請求項1記載のヘアドライヤ。
【請求項4】
前記空気の流れを方向付ける制御デバイスが、前記組み合わされた下部に伸びる空気吹き出し口および持ち手の上部に配置された、
請求項3記載のヘアドライヤ。
【請求項5】
前記全ての空気の流れが、ケーブルを介して電気コンセントからの電気を動力とするヘアドライヤと一体である電動モータによって駆動されるファンによって作られ、
前記ケーブルが、前記ヘアドライヤの筐体に対して垂直方向に枢動可能に接続された保持デバイスの中に配置された、
請求項1記載のヘアドライヤ。
【請求項6】
前記持ち手の少なくとも一部が、増大した摩擦力を有する表面を備える、
請求項1記載のヘアドライヤ。
【請求項7】
前記上部および下部に伸びる各空気吹き出し口が、互いに約165°の角度で配置された、
請求項1記載のヘアドライヤ。
【請求項8】
前記上部および下部に伸びる各空気吹き出し口が、互いに約180°の角度で配置された、
請求項1記載のヘアドライヤ。
【請求項9】
前記スロットルが、動作位置で、前記空気供給デバイスから前記上部および下部に伸びる各空気吹き出し口へアーチ型のチャネルを形成するように、アーチ型である、
請求項2記載のヘアドライヤ。
【請求項10】
前記加熱素子が、前記空気供給デバイスに結合される、
請求項1記載のヘアドライヤ。
【請求項11】
複数の加熱素子が、前記上部および下部に伸びる各空気吹き出し口の各々内に備えられる、
請求項1記載のヘアドライヤ。
【請求項12】
前記上部および下部に伸びる各空気吹き出し口の縦軸が、前記空気供給デバイスの縦軸に対して実質的に直角方向である、
請求項1記載のヘアドライヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の導入部に記述されているような手持ち式ヘアドライヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
美容師は、疲労障害および病欠に関して非難されやすい職業群において働いている。多くの美容師は、予定された年金受給年齢になる前に長時間労働の停止を余儀なくされる。この問題の実質的な理由は、ヘアドライヤの長期使用である。上から下への方向に乾かすとき、美容師は空気を上から髪に向かって下方へ方向付けなければならず、美容師は、空気を正しい方向に方向付けるために、肘を上方へ捻ることによって腕を持ち上げ、および手首を捻らなければならない。これは、手首と同様に肩へのストレスという結果になる。下から上への方向に乾かすとき、美容師は、傾いた作業姿勢で手首を捻る動作で作業することが多い。美容師が頭頂部の髪を乾かそうとするとき、彼女自身が顧客の上に背伸びして、肩および腕を上げて作業しなければ、空気を正しい方向に方向付けることは困難な場合がある。美容師が額の髪を乾かすとき、空気が下から来るようにしたいことが多く、それによって手首を捻る動作の対象となる。従来技術のヘアドライヤの別の問題は、持ち手である。従来技術のヘアドライヤは、プラスチック材料のなめらかな持ち手を有し、それは、手が整髪料にまみれているときに、美容師が持ち手をよりしっかりと握り締めること、および持ち手を直すことを余儀なくする。上から下方への方向に乾かすとき、親指の関節または指は増大したストレスまたは疲労をかけられる。
【0003】
今日の美容院にあるヘアドライヤに加えて、ヘアドライヤの例は、特許文献に見られることがある。たとえば、英国特許第1559423号およびドイツ特許第2743743号は、持ち手が空気吹き出し口と同じ軸に沿った位置に調節可能なヘアドライヤを示す。米国特許出願公開第2008/0040694号は、空気吹き出し口のネックも持ち手として役立つことができ、下方への方向に乾かすときの人間工学を改良するヘアドライヤを説明する。後者の解決法の欠点は、ユーザが持ち手を第1の持ち手から他方に変えなければならないことである。欧州特許第1649773号は、空気吹き出し口の方向と並行に配置された、人間工学的に形成された持ち手を有するヘアドライヤを説明する。しかしながら、このヘアドライヤは、美容師が空気の流れる方向を変えようとするときの手首への疲労の問題を解決しない。米国特許第4,195,217号は、吹き出し口に沿った持ち手表面を有する、円筒形に形成されたヘアドライヤ筐体を説明する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的
本発明の目的は、ユーザの疲労ならびに腕および肩への疲弊障害を減らす、特にプロのユーザのための、ヘアドライヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明
この目的は、特許請求項1の特徴部分によるヘアドライヤで達成される。さらなる有益な特徴は、添付の従属請求項から明らかになる。
【0006】
本発明は、空気供給、空気の吹き出しのためのノズルまたは吹き出し口、使用中にヘアドライヤを取り扱うための持ち手のためのデバイス類、空気の搬送および空気の温度を制御するための制御デバイス、ならびに任意で、空気の加熱のための加熱素子を含む、手持ち式ヘアドライヤに関するものである。
【0007】
本発明によれば、ヘアドライヤは、空気を吹き出すために空気供給デバイスから伸びる、上部吹き出し口および下部吹き出し口を含む2つの別々の吹き出し口、および制御デバイスの手段により空気の流れを上部または下部吹き出し口のいずれかに方向付けるために、空気供給デバイスに配置された案内手段を含むことを特徴とする。
【0008】
好ましい実施形態では、それらの吹き出し口は、空気供給デバイスから実質的に反対方向へ伸びる。特に好ましい実施形態では、それら吹き出し口は、互いに約165°の角度で配置される。
【0009】
空気の流れを一方または他方のネックに方向付ける能力を持つダブルネック設計のヘアドライヤは、別の人の髪を乾かしているユーザに、手、腕、および肩への疲労の実質的な削減を提供する。下記の例示説明が、さらに詳細に本発明の詳細および利益を明らかにするだろう。
【0010】
本発明は、図面によって支持される一実施形態の例の手段により、さらに詳細に以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】側面から見た本発明に係るヘアドライヤを示す。
【
図2a】
図1と同様のヘアドライヤを示し、電源ケーブル用の枢動アタッチメントを図示する。
【
図2b】
図1と同様のヘアドライヤを示し、電源ケーブル用の枢動アタッチメントを図示する。
【
図3a】空気の流れを上方へ制御するためのスロットルを有する、本発明に係るヘアドライヤの概略および簡略化した断面図を示す。
【
図3b】空気の流れを下方へ制御するためのスロットルを有する、本発明に係るヘアドライヤの概略および簡略化した断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、参照番号1で表示された、特にプロ、たとえばヘアデザイナおよび美容師による使用のために設計された、本発明に係る手持ち式ヘアドライヤの実施形態の例が記述されている。ヘアドライヤは、空気吸い込み口5およびファン11を有する筐体4を備える。本発明に係るヘアドライヤの新規性および進歩性は、一般的に4で表示される空気供給から実質的に反対の方向へ伸びる上部吹き出し口2および下部吹き出し口3の形態の2つの空気吹き出し口を呈することである。このようにして、ユーザは、実質的にいかなる角度でも腕および手首を捻らずに、普通座っている別の人の髪を下から上方へ乾かすこと、頭頂部を乾かすこと、および正面の髪を乾かすことが可能になる。そのうえ、ドライヤは、筐体4の中のファン11と接続して、またはそれぞれの吹き出し口2および3の中のいずれかに、加熱素子(図示せず)を備えることができる。
【0013】
持ち手は、好ましくは下部吹き出し口3と一体である。このようにして、ユーザは、たとえば頭頂部を乾かす間に、従来のヘアドライヤを用いるのと同じ高さに腕を持ち上げなくてもよい。持ち手表面の少なくとも一部は、好ましくは、例えば整髪料のせいで滑りやすい手を有するユーザのためにヘアドライヤのまわりの持ち手を改良するために、およびさらにユーザの手への疲労を減らすために、増大した摩擦力を持つ材料を備え、またはそれによって形成される。これは、2つの方法、例えば、その表面を擦過するか又は輪郭を描くことにより、増大した摩擦力を持つコーティングを施すことにより、達成することができる。持ち手は、好ましくは、暖かい空気で乾かす間の手の加熱を減らすために、断熱材料を備え、またはそれによって形成される。
【0014】
流れの方向は、
図3aおよび3bに関連してさらに詳細に論じるように、空気が上部吹き出し口2を通して、または下部吹き出し口3を通してのいずれかで流れ出るように、スロットルまたは同様の手段により制御することができる。流れの方向は、制御デバイス10の手段により制御され、ここでは、空気供給筐体4に隣接する下部吹き出し口3の上端に配置されたボタンの形態で図示される。この、流れの方向についての制御デバイス10の場所は、ユーザが最小限の労力で流れの方向を変えることができるように、親指がボタン10に対して寄りかかる動作位置でヘアドライヤを保持することを可能にする。
【0015】
そのうえ、ヘアドライヤは、一般に参照番号8で表示される、それ自体は公知である制御デバイス、たとえばスタート/ストップおよび加熱コントローラを備える。この実施形態では、制御デバイス8は、空気供給筐体4における流れの方向のための制御デバイス10に対面するドライヤの反対の側面に配置される。冷風ボタン9は、混合空気吹き出し口および持ち手3の上端において制御デバイス8の下に配置され、冷たい空気を必要とするときは人指し指によって簡単に制御することができる。
【0016】
ヘアドライヤの重心は、好ましくは、手の上、すなわち、この実施形態では、空気供給筐体4のエリアに置かれている。ユーザが間違った方法でヘアドライヤを保持すると、ユーザは、重心のバランスが崩れていることを簡単に感じ、重みを直すために持ち手を変えることをユーザに促すであろう。
【0017】
吹き出し口2および3は同じ軸に沿って配置することができ、それは、それらが互いに180°の角度を形成することを意味する。しかしながら、本発明者らは、上部吹き出し口2がユーザから離れて、およびスタイリングされる人に向かって向くことまたは傾斜するように、吹き出し口が互いに約165°の角度で配置されることが好ましいことを見出した。ここで、述べられた角度は、その驚くべき技術的効果を得るためのいかなる要件も表すことは全くないこと、および同様または実質的に等しい効果が述べられた以外の角度で得ることができることが強調されるべきである。
【0018】
図2aおよび2bは、電源ケーブルを介した一般的な電源からの電力を動力とするヘアドライヤの代替実施形態を図示する。電源ケーブル(図示せず)は、この実施形態では垂直方向に空気供給筐体4と枢動可能に接続された、ケーブルホルダ6に収納される。この配置は、ヘアドライヤを、天井からぶら下がる電源ケーブル、または床の上に横たわる電源ケーブルに適応することをより容易にする。
【0019】
図3aおよび3bは、ヘアドライヤ1を通して、概略断面図の形態で、空気の流れを上部空気吹き出し口2または下部空気吹き出し口3のいずれかに方向付けるためのスロットル12の例を示す。スロットル12は、この実施形態では、ピボット13を介してファン11と枢動可能に接続された、細長いアーチ型の板として形成される。スロットル12は、ユーザがボタン10を押すとモータ(図示せず)によってピボット13のまわりを枢動するように設計される。
図3aは、全ての空気が、ファン11の手段により吸い込み口5から上部空気吹き出し口2を通して上へ吹き出され、その一方でスロットル12が下部空気吹き出し口3の吸い込み口の開口部を覆う、動作モードを示す。空気の流れは、
図3aおよび3bの矢印によって表示される。スロットル12のアーチ形状は、流速を最適化し、雑音を減らすために、一方または他方の方向にスロットルを通る流れの抵抗を減らす。
図3bは、
図3aと同様の図面であるが、空気が下部空気吹き出し口3を通して方向付けられた状態を図示する。
【0020】
本発明は、従来技術のヘアドライヤと比べて実質的な利益を有する。ダブルネック設計は、肘を垂直に捻らずに、別の人の髪を上からと同様に下から乾かすことを可能にする。別の利益は、手首が実質的に垂直な姿勢でスタイリングを行うことができるので、ユーザは実質的にいかなる角度にも手首を捻る必要がないことである。空気が流れる方向、冷風、温風等を制御するボタンと組み合わされた下部空気吹き出し口と一体の人間工学設計の持ち手は、従来技術のヘアドライヤと比べて腕を持ち上げる高さが低いという結果になる。持ち手およびボタンの設計の別の利益は、指、特に親指への疲労が最小限にされることである。
【0021】
したがって、本発明に係るヘアドライヤは、美容師の腕および肩への疲労を実質的に減らすという結果になり、美容師は、その理由で、彼らのキャリアを伸ばすこと、および間違った作業姿勢が原因となる病欠を減らすことができる。
【0022】
上記の説明が本発明の実施形態の例のみを解説すること、およびヘアドライヤが本発明の基本的な概念からから逸脱しない範囲で異なる変形例の対象となることができることが強調されるべきである。したがって、それぞれの空気吹き出し口間の角度は、厳密に180°または厳密に165°でなくてはならないことはない。そのうえ、ヘアドライヤのファンモータがバッテリを動力とすること、または空気が外部空気供給から頭上のホースを介して供給されることが考えられる。そのうえ、解説された空気スロットルは、換気および空気搬送の分野の当業者の範囲内であろう数え切れない方法で形成することができる。