(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1は、膨化性を改善するために卵が用いられているが、卵はコレステロールが高く、得られる菓子類のコレステロール含量も高くなってしまう。また、上記特許文献2は、菓子類に身体によい健康食品として知られている植物繊維を含有させているが、大豆から大豆タンパク以外の食物繊維等を取り除いておきながら、菓子類の材料に食物繊維をあえて含有させるのは、効率的ではない。更に、特許文献1〜3は、大豆タンパク、またはゲル化性大豆タンパクを用いているので、大豆の栄養成分すべてを食することができない。
【0007】
一方、上記のように、大豆にはイソフラボン等の人体に有益な成分が豊富に含まれるため、大豆による青臭みが無く、且つ、大豆を手軽に沢山摂取することが可能な食品が求められているが、従来から存在する食品は必ずしも手軽に沢山摂取できるものではない。より手軽に食すことが可能な食品として菓子類があるが、上記のように、従来の大豆菓子は大豆による青臭みを回避するために大豆に含まれる成分の一部(例えば、大豆蛋白)のみを用いているか、大豆由来成分の配合割合が低いため、大豆由来の全成分を手軽に沢山摂取することを可能にするものではない。また、大豆の含有量を多くして焼成すると、煎り豆のような苦味が強くなる。
【0008】
このような現状の下、本発明は、大豆の青臭みや苦味がなく、且つ、手軽に大豆由来の栄養成分全て(大豆から外皮を除いた成分)を摂取することが可能な新たな食品を提供することを目的とする。つまり、本発明の目的は、大豆の栄養成分すべてを摂取でき、大豆の青臭さや苦味がなく、風味がよく、手軽に食することができ、且つ、苦味を抑えながら大豆の含有量を増やすことができ、子供から大人まで食することができる食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、大豆、デンプン及びα化デンプンを用い、焼いて中空状にした菓子とすることで、本発明の目的を達成することができることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、上記成分を含む中空状の菓子とすることで、チップスのような食感の手軽に食べられる食品である。本発明の食品は、チップスのような食感であるサクサク又はパリッとした軽快な歯あたりとなめらかな口当たりであるので、子供から大人まで食べることができる食品である。また、本発明は、上記成分を含む中空状の菓子とすることで、大豆を用いて大豆の栄養成分すべてを含有させても、大豆の青臭さや煎り豆のような苦味のない、風味の良い食品である。さらに、本発明の中空状の菓子は、大豆、デンプン及びα化デンプンの3成分を用いることで、良好な中空状に膨化できる。このように3成分を配合させることで、大豆の含有量を多くしても良好な中空状の菓子を得ることができる。従来技術では、大豆の含有量を多くすると煎り豆のような苦味が強くなってしまうが、本発明のように上記の3成分を有する中空状の菓子とすることで、サクサクと口どけがよくなり苦味を和らげることができ、これによりほど良い香ばしさが得られる。中空状の菓子を、以下、中空菓子という。
【0011】
中空菓子に関し、従来は特許文献4〜7に記載の小麦粉を用いた菓子等が知られている。しかし、特許文献4及び6に記載されるような小麦粉を用いた中空菓子は、その製造工程が複雑で、生地を圧延して好きな形状に成型するには適していない。特許文献4及び5に開示される中空菓子は、生地を焼成した後、フライ処理することで粉っぽさをなくして風味を改善している。よって、このような技術で作成された中空菓子では、多量の油脂の摂取が余儀なくされるため、健康管理という観点から好ましくない。特許文献4、6及び7に記載される中空菓子は、その生地の取扱性と菓子の膨化性を良くするという目的等から、比較的多量の糖質が配合されている。よって、このような中空菓子を多量に摂取すれば、糖分の摂取量が過剰になることが危惧されるため健康管理という観点から好ましくない。
【0012】
本発明者は、上記のごとく課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、大豆、デンプン及びα化デンプンを配合した生地を焼成して中空状に焼き上げることにより、(1)大豆の青臭さや煎り豆のような苦味がなく、中空菓子としての十分な強度を備え、且つ、硬過ぎず、歯で噛み砕いた時にサクサク又はパリッとした軽快な歯あたりとなめらかな口当たりを備えた中空菓子が得られること、及び(2)他の膨化剤の添加、油で揚げる処理又はエクストルーダー等の装置を用いなくても、生地の加熱処理にのみよって簡便に効率良く中空菓子が得られることを見出した。
【0013】
また、本発明者は、従来の小麦粉を用いた中空菓子のように比較的多量の糖類を大豆を配合した生地に添加すると、かえって生地がベタつき取り扱い性が低下すること、及び、大豆を配合した生地に従来技術と同等量の脂質を添加すると十分な膨化が得られないことを見出した。これは、従来の中空菓子の主原料として用いられる小麦粉と大豆とではその組成が大きく異なることに起因していると考えられる。例えば、小麦粉は炭水化物が全体の70%以上を占めるのに対し、大豆はタンパク質が主成分であり、その含量は全体の30〜45%である。また大豆に含まれる炭水化物の含量は約10〜22%であり、そのうちのおおよそ16%は食物繊維の状態で存在する。
【0014】
上記のような新たな知見に基づいて、本発明者は、更なる研究を重ねた結果、当該生地で固形物又は可食性固形物となる生地を覆うことにより、固形物又は可食性固形物を中空菓子の殻に穴を開けることなく、簡便に中空内に収容することが可能であることを見出した。更に本発明者等は、そのようにして中空内に収容された可食性固形物は中空の内壁に付着せず、それを中空内で自由に動かすことができ、カラカラと音を鳴らすことも可能であることを見出した。
【0015】
本発明は、以上のような知見に基づいて完成した発明である。以下に、代表的な本発明を例示する。
項1. 大豆、デンプン及びα化デンプンを含む生地を焼成して得られる、中空菓子。
項2. 大豆の配合割合が、生地の乾燥重量を100重量部として1〜80重量部である、項1に記載の中空菓子。
項3. デンプンの配合割合が、生地の乾燥重量を100重量部として5〜90重量部である、項1又は2に記載の中空菓子。
項4. α化デンプンの配合割合が、生地の乾燥重量を100重量部として5〜50重量部である、項1〜3のいずれかに記載の中空菓子。
項5. 大豆が粉末状又はペースト状の大豆である、項1〜4のいずれかに記載の中空菓子。
項6. α化デンプンがα化加工デンプンを含む、項1〜5のいずれかに記載の中空菓子。
項7. α化加工デンプンの配合割合が、生地の乾燥重量を100重量部として1〜49重量部である、項6に記載の中空菓子。
項8. デンプンが、キャッサバデンプン、くずデンプン、バレイショデンプン、米デンプン、小麦デンプン、サゴデンプン、サツマイモデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、ワキシコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワラビデンプン、レンコンデンプン、緑豆デンプン、小豆デンプン、インゲンデンプン及びエンドウデンプンから成る群より選択される一種以上である、項1〜7のいずれかに記載の中空菓子。
項9. α化デンプンがα化キャッサバデンプン、α化くずデンプン、α化バレイショデンプン、α化米デンプン、α化小麦デンプン、α化サゴデンプン、α化サツマイモデンプン、α化ジャガイモデンプン、α化トウモロコシデンプン、α化ワキシコーンスターチ、α化ハイアミロースコーンスターチ、α化ワラビデンプン、α化レンコンデンプン、α化緑豆デンプン、α化小豆デンプン、α化インゲンデンプン及びα化エンドウデンプンから成る群より選択される一種以上である、項1〜8のいずれかに記載の中空菓子。
項10. α化加工デンプンがα化ヒドロキシプロピル化デンプン、α化リン酸架橋デンプン及びα化ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから成る群から選択される一種以上である、項6〜9のいずれかに記載の中空菓子。
項11. α化加工デンプンが、α化加工キャッサバデンプン、α化加工くずデンプン、α化加工バレイショデンプン、α化加工米デンプン、α化加工小麦デンプン、α化加工サゴデンプン、α化加工サツマイモデンプン、α化加工ジャガイモデンプン、α化加工トウモロコシデンプン、α化加工ワキシコーンスターチ、α化加工ハイアミロースコーンスターチ、α化加工ワラビデンプン、α化加工レンコンデンプン、α化加工緑豆デンプン、α化加工小豆デンプン、α化加工インゲンデンプン及びα化加工エンドウデンプンから成る群より選択される一種以上である、項1〜10のいずれかに記載の中空菓子。
項12. 殻で形成される中空が実質的に単一の空間である、項1〜11のいずれかに記載の中空菓子。
項13. 中空内に内容物を収容する、項1〜12のいずれかに記載の中空菓子。
項14. 内容物が可食物である、項13に記載の中空菓子。
項15. 可食物が可食性固形物である、項14に記載の中空菓子。
項16. 可食性固形物が中空内で移動可能である、項15に記載の中空菓子。
項17. 中空を形成する殻に穴を開けずに内容物が中空内に収容されている、請求項12〜16のいずれかに記載の中空菓子。
項18. 可食性固形物が種実類又は焼き菓子である、項12〜17のいずれかに記載の中空菓子。
項19. 可食性固形物が大豆、デンプン、α化デンプンを含む生地を加熱して得られる、項14〜18のいずれかに記載の中空菓子。
項20. 可食性固形物の原料である、大豆、デンプン、及びα化デンプンの配合比率が、乾燥重量換算で1〜80:10〜90:5〜50である、項19に記載の中空菓子。
項21. 以下の工程を含む、中空菓子の製造方法:
(1) 大豆、デンプン、及びα化デンプンを含む生地を調製する工程、及び
(2) 生地を焼成する工程。
項22. 更に、生地をシート状に成形する工程を含む、項21に記載の方法。
項23. 更に、シート状の生地を二枚重ね合わせる工程を含む、項22に記載の方法。
項24. 更に、該生地で、内容物となる物又はその生地を覆う工程を含む、項19〜23のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、子供から大人まで手軽に、そして大豆の栄養成分すべてを摂取できる食品、すなわち、中空状の菓子(以下、中空菓子という。)を提供することができる。本発明の中空菓子は、大豆の栄養成分すべてを含んだ大豆を用いても、青臭さや煎り豆のような苦味のない、風味のよい菓子である。
【0017】
本発明の中空菓子は、比較的多量の大豆を含んでいでも、良好な中空が形成される。中空を形成する殻は、菓子としての十分な強度を有するため、壊れ難く、持ち運び性等の取り扱い性に優れている。一方で、本発明の中空菓子の殻は硬過ぎず、歯で噛み砕いた時にサクサク又はパリッとした軽快な歯当たりを与えることができる。このような良好な歯当たりに加え、本発明の中空菓子は、噛み砕かれた後に歯に絡みついたり、付着したりすることがなく、口当たりが滑らかである。即ち、本発明の中空菓子は、殻の強度と噛んだ時の軽快な歯当たりと滑らかな食感を備えている。さらに、本発明は、菓子を中空状にして、サクサクと口どけ良くすることで、大豆の含有量を高くしても、煎り豆のような苦味が和らぎ、むしろほど良い香ばしさのある菓子とすることができる。
【0018】
本発明の中空菓子は、大豆を原料に含むため、消費者が大豆由来の栄養素を簡便に摂取し、特に、大豆に含まれるイソフラボン類等の成分による生理作用を享受することを可能にする。また、本発明の中空菓子は、油で揚げる工程を必要としないため、油脂成分の含有量を低く抑えることが可能であり、低カロリーでダイエット食にも適している。油脂成分の含量を低く抑えることにより、菓子表面のべた付きもなく、保存安定性にも優れているため、他の保存料等の添加を低減することができる。さらに本発明の中空菓子は、卵やベーキングパウダー等の膨化剤を使用する必要がないため、これらの摂取が好ましく無い消費者向けの食品としても適している。
【0019】
本発明の中空菓子は、大豆、デンプン及びα化デンプンを含む生地を、所望の形状に成型して、加熱焼成することで容易に製造可能であるため、エクストルーダー等の中空を形成するための装置を使用する必要がない。よって、本発明の中空菓子は、消費者の嗜好等に合わせて容易にその形状を設計変更することが可能である。本発明の中空菓子は、種々の形状に成形された生地を加熱焼成することで膨化し、全体として丸みを帯びたふっくらとした立体感のある形状となる。従って、消費者は本発明の中空菓子の外観を視覚的に楽しむことができる。
【0020】
本発明の中空菓子は、穴を開けること無く内容物を中空内に収容することが可能である。中空内に固形物を有する場合は、その固形物は中空内をコロコロと転がることが可能である。よって、そのような中空菓子を振ることでカラカラした音を立てることも可能である。このように、本発明の中空菓子は、消費者の味覚や視覚だけでなく、聴覚をも満足させることができる。
【0021】
本発明の中空菓子の製造方法は、大豆、デンプン及びα化デンプンを含む生地を用いることで、焼成後の焼き菓子に割れが発生することを抑制しつつ、効率的に上記のような優れた性質を備えた中空菓子を製造することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.中空菓子 本発明は、大豆、デンプン及びα化デンプンを含む生地を焼成して得られる、中空菓子を提供する。ここにおいて、大豆、デンプン及びα化デンプンを含む生地を焼成して得られる、中空菓子を本発明の中空菓子とも表記する。
【0023】
(A)大豆
本発明の中空菓子を製造するための生地には、その成分として大豆が含まれる。この大豆は、中空菓子を製造するための生地に混練するのに適した形状であれば特に制限されないが、好ましくは粉末状及び/又はペースト状の大豆である。
【0024】
粉末状の大豆(即ち、大豆粉)は、食品の分野において大豆粉として知られるものであれば特に制限なく使用することができる。例えば、生の大豆を単に粉末化した大豆粉や加熱処理、脱脂処理、トリプシンインヒビターの除去等の更なる加工を施した大豆粉が知られるがこれらを特に制限なく本発明の中空菓子製造用の生地に含まれる大豆として使用することができる。
【0025】
よって、市販される大豆粉をそのまま使用することもでき、大豆から大豆粉を製造して使用することもできる。大豆粉を製造する場合は、公知の方法に従って製造することができる。例えば、大豆の皮を剥き、離脱した皮を分離し、加熱処理し、粉末化する方法を挙げることができる。このような方法としては、例えば、特開2006−129877号公報に記載の加工大豆粉末素材の製造方法を挙げることができる。
【0026】
大豆の粉末化は、通常の粉末化のための各種装置を用いて実施することができる。そのような装置としては粉砕処理機、磨砕処理機などを挙げることができる。具体的粉末化処理は、例えば、先ずロールがけにより圧偏してフレーク状とし、次いで乾燥し、最終的にグラインダーなどを用いて磨砕することにより行われる。粉末化の程度は、中空菓子の製造に適する限り特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0027】
ペースト状の大豆(即ち、大豆ペースト)は、食品の分野において大豆ペーストとして知られるものであれば特に制限なく、本発明の中空菓子を製造するための生地の成分として使用することができる。市販される大豆ペーストをそのまま使用することもでき、大豆から大豆ペーストを製造して使用することもできる。大豆ペーストは公知手法に従って製造することができ、例えば、原料大豆を適当な時間水に浸した後、これを適当な時間蒸す。蒸しあがった大豆を適宜洗浄して、裏ごし機等を用いて大豆を潰し、ペースト状にすることによって得ることができる。
【0028】
大豆粉又は大豆ペーストを製造するための原料大豆は、その品種などに制限はなく、一般に大豆として知られる各種の大豆を利用できる。例えば、黒豆や緑豆を使用することもできる。
【0029】
(B)デンプン
本発明の中空菓子の原料として使用されるデンプンは、食品分野においてα化デンプンや加工デンプンとして知られるデンプン以外の通常のデンプンである。食品分野において使用されるデンプンであれば、その由来等は特に制限されず、市販されているデンプンをそのまま使用することができる。具体的例としては、小麦デンプン、米デンプン(例えば、もち米デンプン、粳米デンプン)、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ等の穀類デンプン;バレイショデンプン、キャッサバ(タピオカ)デンプン、サツマイモデンプン、レンコンデンプン、クワイデンプン、ジャガイモデンプン等のイモ類デンプン;緑豆デンプン、エンドウデンプン、ソラマメデンプン、小豆デンプン、インゲンデンプン等の豆類デンプン;くずデンプン、カタクリデンプン、ワラビデンプン等の野草類デンプン、及びサゴデンプン等の幹茎デンプン等を挙げることができる。
【0030】
上記のようなデンプンを目的とする中空菓子の食感及び品質等に応じて1種又は2種以上適宜選択して使用することができる。中空菓子に軽い食感を付与するという観点から好ましいデンプンは、キャッサバデンプン、くずデンプン、米デンプン、小麦デンプン、サゴデンプン、サツマイモデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、ワキシコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワラビデンプン、レンコンデンプン、バレイショデンプン、緑豆デンプン、小豆デンプン、インゲンデンプン及びエンドウデンプンである。
【0031】
デンプンには、通常、アミロースとアミロペクチンが含まれる。本発明に使用されるデンプンにおけるアミロペクチンとアミロースの存在比は特に制限されない。
【0032】
上記のデンプンは、その一部を加工デンプンで置き換えることが可能である。ここで、加工デンプンとは下記のα化加工デンプンとは区別される加工デンプンであり、α化されていない(非α化)加工デンプンである。デンプンの一部として加工デンプンを用いることにより、生地のリターン適性が良好となる。リターン適性とは、生地を繰り返し成形してもその物性(例えば、生地の柔らかさ、取り扱い性)が変化しない又はし難い性質ことを意味する。本発明で使用可能な加工デンプンの種類は特に制限されないが、リターン適性の改良という観点から、好ましくは、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸物エステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、及びリン酸架橋デンプンからなる群より選択される1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0033】
(C)α化デンプン
本発明の中空菓子を製造するための生地にはα化デンプンが配合される。理論によって制限される訳ではないが、α化デンプンを生地に配合することにより、良好な膨化作用が得られる。α化デンプンは、糊化済みデンプン又は冷水可溶性デンプンとも呼ばれる。本発明において使用することができるα化デンプンは、中空菓子の製造に適している限り、その種類(例えば、α化手段、由来及び更なる加工の有無)はとくに制限されない。よって、α化デンプンは、市販されているα化デンプンを適宜購入して使用してもよく、常法に従って製造することもできる。α化デンプンは、例えば、デンプンに水を加えてドウにしたものを、加熱加圧しながら押出し機で押出し、急冷乾燥して粉砕することによって得ることができる。
【0034】
α化デンプンの具体例としては、例えば、上記(B)デンプンの項で例示した各種のデンプンをα化したデンプンを挙げることができる。優れた膨化性と得られる中空菓子に軽快な歯当たりを付与するという観点から、より好ましいα化デンプンは、キャッサバデンプン、くずデンプン、バレイショデンプン、米デンプン、小麦デンプン、サゴデンプン、サツマイモデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、ワキシコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワラビデンプン、レンコンデンプン、緑豆デンプン、小豆デンプン、インゲンデンプン及びエンドウデンプン等をα化したデンプンである。
【0035】
本発明で使用されるα化デンプンは、α化処理だけでなく他の加工処理が施されたα化加工デンプンであっても良い。α化加工デンプンを用いる場合、α化デンプンのすべて又は一部をα化加工デンプンとすることができる。α化デンプンのすべてを、α化加工デンプンとする場合、膨化性は良好であるが、歯に付きやすくなる傾向がある。本書において、そのような他の加工が施されていないデンプンと区別するため、α化に加えてそれ以外の加工が施されたデンプンをα化加工デンプンと呼ぶ。α化以外の更なる加工の種類としては、限定的ではないが、例えば、酸化処理、架橋処理、エーテル化処理、エステル化処理、湿熱処理、油脂加工処理、グラフト化処理、焙焼処理、及び多孔質化処理を挙げることができる。本書においては、このようなα化加工デンプンと区別するため、上記のような更なる加工が施されていないα化デンプンを必要に応じてα化非加工デンプンと記載する。α化加工デンプンは市場に存在するため、それらを適宜購入して使用することができる。また、常法に従ってデンプンから製造することも可能である。
【0036】
生地の膨化性を向上させ、且つ、サクサク又はパリッとしたより軽快な食感を中空菓子に付与するという観点から好ましいα化加工デンプンは、α化されたエーテル化デンプン、α化された架橋デンプン及びα化されたエーテル化架橋デンプンである。α化されたエーテル化デンプンとしては、α化ヒドロキシプロピルデンプン、α化カルボキシメチルデンプン、及びα化カチオンデンプンを挙げることができ、好ましくは、ヒドロキシプロピルデンプンである。α化された架橋デンプンとしては、α化リン酸架橋デンプン及びα化グリセロール架橋デンプンを挙げることができ、好ましくはα化リン酸架橋デンプンである。α化されたエーテル化デンプン、α化架橋デンプン、α化されたエーテル化架橋デンプンの中では、α化されたエーテル架橋デンプンが好ましく、中でもヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンが好ましい。
【0037】
これらのα化加工デンプンの種類は、特に制限されず、例えば、前記(B)デンプンの項で例示した各種デンプンを上記のような各種の処理を施してα化加工デンプンとして使用することができる。具体的には、α化加工デンプンが、α化加工キャッサバデンプン、α化加工くずデンプン、α化加工バレイショデンプン、α化加工米デンプン、α化加工小麦デンプン、α化加工サゴデンプン、α化加工サツマイモデンプン、α化加工ジャガイモデンプン、α化加工トウモロコシデンプン、α化加工ワキシコーンスターチ、α化加工ハイアミロースコーンスターチ、α化加工ワラビデンプン、α化加工レンコンデンプン、α化加工緑豆デンプン、α化加工小豆デンプン、α化加工インゲンデンプン及びα化加工エンドウデンプン等を挙げることができる。好ましくは、キャッサバデンプン及びバレイショデンプンである。バレイショデンプンはもち種であることが好ましい。
【0038】
本発明の中空菓子を製造するための生地に使用されるα化デンプンは、上述するような各種α化デンプンから1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。好適な一実施形態においては、α化以外の加工処理がされていないα化デンプンとα化加工デンプンとを組み合わせて、本発明の中空菓子製造用の生地の原料として使用される。
【0039】
(D)その他の原料
本発明の中空菓子は、大豆粉、デンプン及びα化デンプンのみを原料として製造されてもよい。本発明の中空菓子は、良好な歯当たり、食感、呈味、殻の強度、膨化率といった特性を害しないことを限度として、菓子の分野で通常使用される各種他の原料を添加することができる。そのような他の成分としては、例えば、糖類、蛋白質素材、脂質、食塩、種子、酵素、香味料、調味料、各種食品添加物などを挙げることができる。
【0040】
糖類としては、例えば、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、水飴、澱粉分解物及び水溶性食物繊維を挙げることができ、当該分野で市販される任意の糖類を使用することができる。より具体的には砂糖、異性化糖、ぶどう糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、マルチトール、パラチニット;水飴、デキストリン等の澱粉分解物; ポリデキストロース等の食物繊維が挙げられる。目的とする焼菓子の甘味の程度、食感、焼色、膨化程度に伴う形状等を調整するために、必要に応じて1種又は2種以上の糖類を選択して用いることができる。
【0041】
蛋白質素材としては、例えば牛乳、脱脂乳などの乳製品の他、カゼイン、アルブミン、グロブリンなどの乳蛋白、ゼラチン、全卵、卵白、卵黄、全卵粉末などを挙げることができる。但し、本発明の中空菓子を製造するための生地は、卵を配合しなくても加熱処理によって十分な膨化を示すため、卵アレルギー等を考慮して卵の使用は避けることができる。
【0042】
脂質としては、公知の各種の食用油脂類を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、米油、綿実油、コーン油、大豆油、オリーブ油、ヒマワリ油、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、落花生油、バター、ラード、ヤシ油、ナッツ油、パーム油、菜種油、マーガリン、ショートニング等の動植物油を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
種子としては、通常焼き菓子等に利用されている公知の各種の種子類を用いることができ、たとえば、アーモンドや大豆などを挙げることができる。これらの種子を添加する場合は、例えば、種子を砕き、生地に練りこむことによって中空菓子に配合することができる。また、種子の皮を生地に練り込んで使用することも可能である。
【0044】
酵素としては、例えば、製菓用に一般によく知られている各種のプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼなどを例示することができる。これらを添加することにより、大豆粉の口当たりをまろやかにすることができる。
【0045】
さらに、必要に応じて、栄養価を高めたり、風香味を付与したり、着色したりする目的で用いられる種々の添加物を含有することができる。
【0046】
該添加物としては、調製する各種食品形態において通常用いられている添加物を挙げることができ、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0047】
そのような添加物としては、例えば、栄養価増強を目的とする各種ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、葉酸、パントテン酸など)、ミネラル類(カルシウム、鉄、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、リン、クロールなどの塩類)などを挙げることができる。また該添加剤には、香味付与を目的とする香料(合成香料及び天然香料)、天然甘味剤(ソーマチン、ステビアなど)及び合成甘味剤(サッカリン、スクラロース、アスパルテームなど)、醤油、味噌、化学調味料、風味物質(チーズ、チョコレートなど)など、着色を目的とするカラメル、天然着色料など、その他、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)、安定剤、防腐剤などをそれぞれ例示できる。これらの添加剤はそれぞれ1種単独でも2種以上組み合わせても利用することができる。
【0048】
(E)配合割合等
本発明の中空菓子の原料である大豆、デンプン及びα化デンプンは、大豆から得られる栄養価や風味等と、その他の成分との組み合わせによって得られる膨化作用、殻の強度及び食感を考慮して適宜設定することができる。
【0049】
本発明の中空菓子を製造するための生地に配合される大豆の量は特に制限されないが、より多くの大豆由来の栄養素を簡便に享受させるという観点から、中空菓子の良好な食感や風味等維持できる限り、より多く配合することが好ましい。また大豆の含量が少な過ぎるとα化デンプンと組み合わせても中空菓子に十分な強度が得られず、膨化性も低くなり、結果として良好な食感が得られない。このような観点から大豆の配合量は、例えば、生地の乾燥重量を100重量部として1重量部以上であり、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは35重量部以上、より更に好ましくは40重量部以上である。一方で、大豆粉の配合割合が高過ぎても、中空菓子は硬くなり、風味の点でも大豆特有の青臭さや苦味が顕著になる。このような観点から大豆粉の配合量は、生地の乾燥重量を100重量部として、好ましくは80重量部以下であり、より好ましくは70重量部以下である。
【0050】
デンプンを添加することにより、α化デンプンによる強い粘性によって、生地が成型後に収縮することや中空菓子を食した際に菓子が歯に付着するベタ付きを抑制し、中空菓子にサクサク又はカリッとした歯ごたえの良い食感を与えることができる。一方でデンプンの含量が多過ぎると生地が切れ易くなり、成型が難しくなる。このような観点からデンプンの配合量は、例えば、生地の乾燥重量を100重量部として5〜90重量部であり、好ましくは10〜60重量部であり、より好ましくは15〜40重量部である。
【0051】
上記(B)に示す通り、生地に配合されるデンプンの一部を加工デンプンで置き換えることにより、生地のリターン適性を改良することが可能である。このようなこのよう観点から生地に配合される加工デンプン(非α化加工デンプン)の配合割合は、例えば、生地の乾燥重量を100重量部として、1〜89重量部であり、好ましくは1〜80重量部である。デンプンと加工デンプンとを併用する場合、デンプンの配合割合は、例えば、生地の乾燥重量を100重量部として、1〜89重量部であり、好ましくは1〜80重量部である。加工デンプンを用いる場合は、α化加工デンプンを用いなくてもよい。
【0052】
α化デンプンは、主として生地を膨化させるために添加されるが、粘性が高いため、配合量が高過ぎると生地の成形後に縮みが生じ易く所望の形状に成型することが困難になる。また、α化デンプン(特に、α化デンプンの一部をα化加工デンプンに置き換えてもよく、α化デンプンの一部をα化加工デンプンに置き換えてα化デンプンとα化加工デンプンを併用する場合で、α化加工デンプンを多く添加する場合)を多く添加すると焼き上がった菓子を食した際に、歯にまとわり付くベタ付きを生じる。さらに、α化デンプンの配合割合が高いと生地の粘性が強くなるため、その取り扱い性が悪くなる。このような観点からα化デンプンの配合量は、例えば、生地の乾燥重量を100重量部として5〜50重量部であり、好ましくは5〜45重量部であり、より好ましくは10〜45重量部である。
【0053】
本発明において、大豆を高含量として菓子を製造する場合、膨化させることの点からいうと、大豆とα化デンプンのみや、大豆とα化加工デンプンのみでも良好に膨化させることができる。
【0054】
上記(C)α化デンプンの項に記載するように、α化デンプンとしてα化加工デンプンを使用することにより、生地の膨化性をより高め、更に出来上がった菓子にサクサクとしたより軽快な食感を与えることができる。一方で、α化加工デンプンも粘性が強いため、過剰に添加した場合は、生地の成形後に縮みが生じ易くなる。特にα化加工デンプンの配合割合が高くなると菓子を食した際に歯にまとわり付くベタ付きを生じる。よって、生地中のα化デンプンとしてα化加工デンプンのみを使用することは可能であるが、歯へのベタ付きを抑えつつ軽快な食感を中空菓子に付与するという観点から、生地中のα化デンプンの一部をα化加工デンプンに置き換えることが望ましい。即ち、α化デンプンとして、α化デンプンのみを用いてもよく、また、α化デンプンの一部をα化加工デンプンに置き換えて、α化加工デンプンとα化以外の加工が施されていないα化デンプンとを組み合わせて使用することが好ましい。
【0055】
次にα化加工デンプンとα化以外の加工が施されていないデンプンとを併用する場合の各々の配合割合について説明するが、以下α化以外の加工が施されていないデンプンをα化非加工デンプンと表示する。尚、α化非加工デンプンは、通常加工デンプンとして知られる加工以外の加工処理が施されていてもよい。
【0056】
α化非加工デンプンとα化加工デンプンとを併用する場合、α化非加工デンプンの配合割合は、生地の乾燥重量を100重量部として、通常1〜49重量部であり、好ましくは1〜40重量部である。
【0057】
α化非加工デンプンとα化加工デンプンとを併用する場合、α化加工デンプンの配合割合は、生地の乾燥重量を100重量部として、通常1〜49重量部であり、好ましくは1〜40重量部である。
【0058】
なお、本発明において、デンプン、加工デンプン、α化デンプン、及びα化加工デンプンの4種類すべてを用いて中空菓子を製造してもよい。この場合は、各成分の特性と、得られる菓子の風味や歯ごたえなどを考慮し、これら4成分の配合割合を適宜調整して中空菓子を製造する。
【0059】
以上の成分の他に、生地の作製には、通常水又は水に他の成分を溶解・懸濁させた液体が添加される。生地に含まれる水分量は、通常、生地の乾燥重量を100重量部として、30〜60重量部である。
【0060】
焼き上がった中空菓子に含まれる水分含量は、通常、40mg/g以下であり、好ましくは35mg/g以下であり、好ましくは25mg/g以下である。
【0061】
上記(5)その他の成分で記載した原料については、本発明の中空菓子の優れた食感、風味、膨化性、殻の強度といった特性を阻害しない範囲で、適宜添加することができる。
【0062】
本発明の中空菓子の摂取に伴う糖類の過剰摂取を回避するという観点から、本発明の中空菓子に糖を含有させる場合は、菓子の味を調整する程度の少量を含有させることが好ましい。糖質の含有量が多いと、生地がべたついたり、型につきやすくなったり、焼成時に焦げたり、焼きムラが発生する原因ともなるため好ましくない。よって、生地に添加される糖類の配合割合は、生地に配合されるデンプン及びα化デンプンの総乾燥重量を100重量部として10重量部未満であることが好ましく、より好ましくは0〜6重量部であり、より好ましくは0〜3重量部である。
【0063】
同様に、本発明の中空菓子の摂取に伴う脂質の摂取量が過剰になることを回避するという観点から、本発明の中空菓子に脂質を添加する場合は、その含有量は少量であることが好ましい。また、生地に脂質を過剰に添加すると十分な膨化が得られない原因ともなり得る。なお、ここで説明している脂質は、上記(A)に示す大豆に含まれる脂質以外に添加する脂質を意味する。
【0064】
(F)中空菓子の物理的特性
本発明の中空菓子は、上記原料を含む生地を加熱することによって得られる薄い殻で形成される中空を有する。当該殻は、中空菓子を袋や箱等の容器に複数入れて持ち運んでも簡単には壊れない強度を有する。
【0065】
本発明の中空菓子は、上記のような強度を有する一方で、サクサクとした軽い食感を備えている。よって、中空を形成する殻の厚みは、厚過ぎないことが好ましい。このような観点から生地の厚みは通常0.5〜5mmであり、好ましくは0.5〜3mmである。
【0066】
好適な一実施形態において、本発明の中空菓子は、実質的に単一の中空を有する。実質的に単一の中空を有するとは、菓子の内壁付近に微細な孔を有することは許容されるが、基本的には、一つの中空菓子は、そのような細孔と比較して大きな単一の中空を有することを意味する。即ち、好適な一実施形態において、中空菓子の中空は、パン、クラッカー、煎餅、おかき、クッキー等の膨化菓子・食品が典型的に有する、種々のサイズの多数の孔から成る形状とは区別される。
【0067】
更に、本発明の中空菓子が有する中空は、中空内に豆等の固形物が収容された場合に、その固形物が中空内で動くことが可能な構造を有することが好ましい。即ち、中空を形成する殻の内壁は、顕著な突起を有していないことが好ましい。
【0068】
本発明の中空菓子は、生地を所望の形状に成形して加熱処理することにより、ふっくらとした丸みを帯びた種々の立体的形状に成形することができる。例えば、本発明の中空菓子は、大豆粉を原料としているため、大豆やその鞘の形状とすることや、球形、半円形、三日月形、棒状、各種の動物やキャラクターの形状とすることができる。
【0069】
(G)内容物
好適な一実施形態において、本発明の中空菓子は、中空に内容物を収容する。内容物は、目的に応じて適宜選択することが可能であり、例えば、可食性の内容物のほか、占いや神籤の用途で用いられる紙等を内容物として中空内に収容することが可能である。中空菓子と一緒に食することが可能という観点から好ましい内容物は可食性の内容物である。可食性内容物としては、菓子や食品の分野でフィリング又は詰め物として用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、クリーム状の食品、ゼリー状の食品、及び固形物である食品を可食物として中空内に収容することができる。
【0070】
中空に収容される好ましい可食物は、生地の焼成時に、生地から流れ出ることを制限可能な可食物である。このような可食物は、液体以外の食品であり、例えば、生地と一緒に焼き上げることが可能な焼き菓子、常温で固形の食品、ある程度の粘性を有するクリーム類及びペースト状の可食物を挙げることができる。このような可食物は、後述する方法に従うことで、焼成後に中空内に充填する工程を必要としないため、簡便且つ効率的にそれらが収容された中空菓子の製造が可能という観点から好ましい。
【0071】
そのような焼き菓子及び固形の可食物の例としては以下を挙げることができる:ビスケット、クラッカー、クッキー、スナック等の焼き菓子類;大豆、アーモンド、マカデミアナッツ、カシューナッツ、胡桃、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、コーヒー豆、カカオ豆、松の実、かぼちゃの種、ピーナッツ、麻の実、ひまわりの種、銀杏、栗、ゴマ等の種実類;甘納豆、乾燥大豆、乾燥納豆等の加工豆類;レーズン、乾燥アプリコット、乾燥パパイヤ、乾燥サンザシ、乾燥アップル、乾燥オレンジ、乾燥パイナップル、乾燥バナナ、乾燥マンゴー、乾燥ココナッツ、乾燥クランベリー、乾燥ブルーベリー、乾燥プルーン、乾燥イチヂク、乾燥ピーチ、乾燥ナシ、乾燥柿等のドライフルーツ;ドライトマト、乾燥ニンジン、干しサツマイモ、干しシイタケ等の乾燥野菜類;カスタードクリーム、あんこクリーム、チーズクリーム、バニラクリーム等のクリーム類;フルーツソース、野菜ソース、サルサソース、チリソース、ケチャップソース等のソース類;キャラメル、ファッジ等の砂糖菓子類;イチゴジャム、ブドウジャム、マーマレード、ブルーベリージャム、カリンジャム、ユズジャム、リンゴジャム等のジャム類;ピーナッツバター、アーモンドバター、ヘーゼルナッツバター等のバター類;チョコレート等の油性菓子類;フルーツゼリー、コンニャクゼリー等のゼリー類;ラムネ菓子やサプリメント等の錠菓類。
【0072】
中でも好ましいのは、原料に大豆粉を用いた焼き菓子である。このような焼き菓子を中空に収容することにより、中空菓子の殻だけでなく、内容物からも大豆に由来した栄養素を享受することが可能である。
【0073】
可食物が液状等の流動性が高い物質である場合は、焼成後に中空菓子に穴を開けて充填することができる。
【0074】
可食性固形物が中空内に収容される場合、収容される可食物の量や数は特に制限されない。適当な大きさに調製された単一の可食性固形物のみを収容してもよく、中空の容量が許容する限り多くの可食物を複数個又は最大限収容してもよい。固形の可食物を中空内に収容する場合、中空菓子を動かすことにより、内容物が中空菓子の内壁に衝突してカラカラと音を生じる。このような音を楽しむという観点から好ましい可食性固形物の数は、例えば、2個又は3個である。
【0075】
本発明によれば、後述するように、中空菓子の殻に穴を開けることなく、可食性固形物を中空内に収容することが可能である。よって、好適な一実施形態において、本発明の中空菓子は、殻に穴を開けることなく可食性の固形物が収容された中空菓子である。
【0076】
好適な一実施形態において、可食性固形物は、大豆を原料とする焼き菓子である。そのような焼き菓子は、例えば、上記に説明する本発明の中空菓子の生地と同様に、大豆、デンプン及びα化デンプンを含む生地を加熱処理することによって得ることができる。このような焼き菓子を作製するための生地は、大豆、デンプン及びα化デンプンを、適宜配合して水等の液体を加えて混練して作製することができる。好ましくは、内容物としての焼き菓子の原料は、上述した中空菓子の生地と同様の配合割合で各原料粉が混合される。中空菓子を焼成した際に、中空の内壁と内容物としての焼き菓子とが分離し易くするという観点から、内容物の生地の水分は、中空菓子の生地の水分よりも少ないことが好ましい。具体的には、焼き菓子の生地の水分は、通常、その生地の乾燥重量を100重量部として、30〜60重量部である。
【0077】
2.中空菓子の製造方法
本発明の中空菓子は、以下の工程を経ることによって製造することができる:
(1) 大豆粉、デンプン、α化デンプン及びα化加工デンプンを含む生地を調製する工程、及び
(2) 生地を焼成する工程。
【0078】
(H)生地の調製
本発明の製造方法においては、まず工程(1)で大豆粉、デンプン及びα化デンプン並びに必要に応じて上記した他の原料を調合、混合、混練して生地を作製する。各成分の混合、混練による生地の調製は、得られる生地が均一になるように通常用いられる装置等を利用して、一般的な条件下で行うことができる。
【0079】
例えば、まず粉末状の各原料成分を秤量し、それらを混合する。各原料の秤量は、上記(6)配合割合の記載に従って行うことができる。次いで、混合粉末に水及び/又は水分を多く含む液状動物性蛋白質素材(例えば、牛乳や全卵等)を加えて混合し、混練して中空菓子製造用の生地を得ることが出来る。原料粉の混合及び混練は、適当な温度条件下で行うことができるが、温度が高すぎるとデンプン類の粘化が進み過ぎ、生地がベタ付いて切れ難くなる等、取り扱い性に問題が生じ得る。このような観点から生地の調製は、5〜45℃で行うことが好ましい。
【0080】
次いで上記で得られる生地を任意の形状に成型する。例えば、生地を通常の方法に従って、例えばデポジター、圧延ローラーなどを用いてシート状に延展し、目的とする形状の型等を用いて生地を裁断し成型することができる。この際のシートの厚みは、目的とする中空菓子の大きさ、形状、堅さ、強度、食感等を考慮して任意に設定することができるが、好ましくは0.5〜5.0mmであり、より好ましくは0.5〜3.0mmである。延展した生地からの成型は、通常用いられる方法で行うことができ、例えば、所望の形状の型で生地を抜き取る方法で成型することができる。成型する形状は、任意であり、例えば、上記のように大豆に似せた形状や各種キャラクターの形状とすることができる。
【0081】
(I)焼成
次に、工程(2)として生地成型物を加熱焼成する。加熱焼成は、使用する原料素材、生地の水分含量などに応じて、一般に製菓製造において採用されている条件・手法を適宜選択して実施することができる。加熱温度範囲は、例えば、約130〜280℃であり、好ましくは150〜260℃であり、より好ましくは160〜250℃である。加熱時間は通常約8〜20分であり、好ましくは8〜15分であり、より好ましくは8〜11分である。
【0082】
加熱焼成のための熱源としては、特に制約はなく熱水、蒸気、電気ヒーター、ガスオーブンなどの燃焼熱を利用するもの、遠赤外線、赤外線、マイクロ波、高周波、及びジュール熱などの各種のものを用いることができる。
【0083】
本発明においては、大豆、デンプン及びα化デンプンを含む生地を焼成することにより、生地が膨化し、中心に中空を有するふっくらとした丸みのある立体的な中空菓子を得ることができる。焼成は、所望の形状に成形された一枚のシート状の生地に対して行ってもよく、二枚以上の生地を重ねた生地に対して行ってもよい。大豆、デンプン及びα化デンプンを含むことにより、本発明の中空菓子製造用の生地は、一枚のシート状であっても加熱処理によって見事な膨化性を示し、中空菓子となる。中空内に可食性固形物を収容した中空菓子を製造する場合は、二枚の生地を重ねた状態で焼成することが好ましい。
【0084】
このような手法によって、大豆、デンプン及びα化デンプンを含む生地を焼成することにより、十分な強度を有し、且つ、サクサクとした軽い歯当たりと良好な風味を供えた中空菓子を得ることができる。
【0085】
(J)可食物の収容
本発明によれば、上記のようにして作製する中空菓子の中空内に任意の可食物を収容した中空菓子を得ることができる。可食物の収容は当該技術分野において公知の装置や手法を適宜選択して行うことができる。例えば、液状、ゲル状、ゼリー状、又は温度調節によって流動性を呈する可食物は、中空菓子の殻に小さな穴を開け、その穴を通して、それらの可食物を中空内に充填することができる。可食性の固形物についても、中空菓子の殻に穴を開けてその中に導入することは可能である。しかし、導入する固形物の大きさによっては、大きな穴を形成する必要があり、そのような穴の形成が困難であって、穴を塞がなければ固形物が漏れてしまい、大きな穴の充填は容易ではないことから、中空内への固形物の導入は殻に穴を開けずに行うことが好ましい。
【0086】
中空を形成する殻に穴を開けずに中空内に可食性固形物を収容することは、例えば、内容物となるものを生地で覆い、それを焼成することによって可能となる。可食性固形物を生地で覆う手法は、特に制限されないが、例えば、一枚のシート状の生地の上に可食性固形物を配置し、可食性シートの一端を可食性固形物を包み込むように折り返し、成型用の型で生地を切り抜いて、同時に上下のシートの周囲を圧着させることによって行うことが可能である。また、2枚のシート状の生地を用意し、その2枚のシートの間に可食性固形物を挟むようにして、2枚のシート状の生地を重ね合わせ、その上から成型用の型を押し当てて生地を切り抜き、生地の周囲を圧着させることで可食性固形物を生地で覆うことも可能である。このようにして可食性固形物を生地で覆ったものを焼成することにより、中空内に可食性固形物が収容された中空菓子を得ることができる。
【0087】
内容物を生地で包む際に、内容物と接する生地の表面に打ち粉をすることにより、焼き上がった時の中空菓子の内壁と内容物とのくっつきを安定的に防止することができる。打ち粉は生地の表面と内容物とがくっつかないようにすることができる粉であれば特に制限されず、例えば、ジャガイモデンプン、コーンスターチ等を用いることができる。
【0088】
内容物として焼き菓子を用いる場合も、上記の要領で焼成後に焼き菓子となる生地を中空菓子の生地に包むことで、中空内に焼き菓子が収容された中空菓子を製造することができる。生地同士は互いに粘性を有し、くっつき易いため、打ち粉に加えて、内容物と成る焼き菓子の生地の水分を少なくすることによって、生地同士のくっつきを抑え、焼成時にその焼き菓子が中空の内壁と分離した中空菓子とすることが可能である。
【実施例】
【0089】
以下、具体的な試験例を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
試験例1:中空菓子の製造及びその評価
下記の表1の上段に示す各成分を所定量用意し、それらを混合してこれに適量の水を加え、10分間混練する。このようにして得られた生地を厚さ1mmのシート状に延ばし、円形に成型する。これを200℃に予熱されたガスオーブンにて10分間焼成して中空菓子を製造する。
【0091】
このようにして得られる中空菓子を下記の表2に示す評価基準に従い評価し、その結果を表1の下段に示す。尚、表1において、処方No.(12)は比較例であり、それ以外は実施例である。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
試験例2(実施例):可食性固形物を収容した中空菓子の製造
試験例1で製造した処方例(4)の生地を、厚さ1mmのシート状に延展する。一方で、中空内に収容するための可食性固形物として表3に示す原料を所定量用意し、粉末原料を混合してこれに水を加えて混練し、内容物としての焼き菓子用の生地を作製する。
【0095】
【表3】
【0096】
得られた可食性固形物用の生地を0.1g切断し球状に丸め、これを内容物としての焼き菓子用の生地とする。先に作製した生地をデンプンで打ち粉してその中央に丸めた生地を2個配置する。そして、配置した焼き菓子用の生地を挟むようにしてもう一枚の半円形状のシートを上から被せ、2枚のシートを重ね合わせる。これに半円状の型を上から押し当て、生地を切り抜き、同時に上下の生地の周囲を圧着させる。これを200℃に予熱されたガスオーブンにて10分間焼成する。
【0097】
得られた中空菓子は、外観は試験例1で得られた中空菓子と同様にふっくらと丸みを帯びていたが、中空の中には可食性固形物が存在し、中空菓子を振ることによってカラカラと音が鳴る。これにより、中空菓子の中で可食性固形物が分離して存在し、自由に転がることが可能であることが確認される。この中空菓子の殻をナイフを用いて開き、中に玉状の焼き菓子が2個あることを確認する。
【0098】
試験例3(実施例):紙を収容した中空菓子の製造
試験例2と同様に処方例(1)の生地を、厚さ1mmのシート状に延展し、半円の形状に成型する。この表面をデンプンで打ち粉して、生地の中央に5cm×5cmに切り取ったクッキングペーパーを折り畳んで配置し、その上から別の半円形状に成型した生地を被せ、生地同士を圧着させる。これを200℃に予熱されたガスオーブンにて10分間焼成する。
【0099】
このようにして得られた中空菓子は、十分な膨化を示し、半円状で且つふっくらとした立体的な形状を有する。また、中空菓子を割ると中に紙があり、紙と殻とは分離しているため、容易に取り出すことができる。
【0100】
試験例4(実施例):中空菓子の製造及びその評価
試験例1の処方(5)と処方(6)において、下記のデンプン、加工デンプン、α化デンプン、α化加工デンプンの中から適宜組み合わせて用い、試験例1と同様に中空菓子を製造する。なお、デンプン等は、1種類でも数種類を併用してもよい。
【0101】
得られる中空菓子は、デンプン等をどのような種類の組み合わせにするかにより多少食感や物性などに差が生じるものの、試験例1とほぼ同様に良好な中空菓子を得ることができる。
【0102】
[デンプン]
キャッサバデンプン、くずデンプン、米デンプン、小麦デンプン、サゴデンプン、サツマイモデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、ワキシコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワラビデンプン、レンコンデンプン、バレイショデンプン、緑豆デンプン、小豆デンプン、インゲンデンプン、エンドウデンプン
【0103】
[加工デンプン]
アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸物エステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン
【0104】
[α化デンプン]
α化キャッサバデンプン、α化くずデンプン、α化バレイショデンプン、α化米デンプン、α化小麦デンプン、α化サゴデンプン、α化サツマイモデンプン、α化ジャガイモデンプン、α化トウモロコシデンプン、α化ワキシコーンスターチ、α化ハイアミロースコーンスターチ、α化ワラビデンプン、α化レンコンデンプン、α化緑豆デンプン、α化小豆デンプン、α化インゲンデンプン、α化エンドウデンプン
【0105】
[α化加工デンプン]
α化加工キャッサバデンプン、α化加工くずデンプン、α化加工バレイショデンプン、α化加工米デンプン、α化加工小麦デンプン、α化加工サゴデンプン、α化加工サツマイモデンプン、α化加工ジャガイモデンプン、α化加工トウモロコシデンプン、α化加工ワキシコーンスターチ、α化加工ハイアミロースコーンスターチ、α化加工ワラビデンプン、α化加工レンコンデンプン、α化加工緑豆デンプン、α化加工小豆デンプン、α化加工インゲンデンプン、α化加工エンドウデンプン