特許第5959456号(P5959456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959456旅行業界のCS向上のための位置情報収集システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959456
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】旅行業界のCS向上のための位置情報収集システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/14 20120101AFI20160719BHJP
   G06Q 30/02 20120101ALI20160719BHJP
【FI】
   G06Q50/14
   G06Q30/02 398
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-49328(P2013-49328)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-174907(P2014-174907A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】511275326
【氏名又は名称】グレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井関 容司郎
【審査官】 山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−007482(JP,A)
【文献】 特開2004−199197(JP,A)
【文献】 特開2006−262189(JP,A)
【文献】 特開2010−036721(JP,A)
【文献】 特開2009−018021(JP,A)
【文献】 特開2005−158007(JP,A)
【文献】 特開2004−227376(JP,A)
【文献】 特開2009−009292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観光客の位置情報を取得するための方法であって、以下のステップを含む方法:
・観光客を識別するため、及び観光客が携行する物品に記録するための識別情報を第一の情報処理装置が生成するステップと、
・前記識別情報を、第二の情報処理装置が、ネットワークを介して、前記第一の情報処理装置から取得するステップと(ここで、第二の情報処理装置は宿泊施設に少なくとも1つ備えられる装置である)、
・観光客に係る情報(前記観光客に係る情報は、少なくとも性別、行動人数を含む)を、前記識別情報と共に、第一セット情報として、前記第二の情報処理装置に記憶するステップと、
・前記第二の情報処理装置が、前記第一セット情報を、ネットワークを介して、第一の情報処理装置にアップロードするステップと、
・前記観光客が各観光地を訪問した際に提示した前記識別情報を、第三の情報処理装置が読み取るステップと(ここで、第三の情報処理装置は各観光地に少なくとも1つ備えられる)、
・前記読み取りが行われた位置及び時間を表す情報を、前記識別情報と共に、第二セット情報として、前記第三の情報処理装置が記憶するステップと、
・前記第二セット情報を、ネットワークを介して、第一の情報処理装置に、前記第三の情報処理装置が、アップロードするステップと、
・前記第一セット情報に含まれる観光客に係る情報と、前記第二セット情報に含まれる前記位置及び時間を表す情報とが対応付けられた第三のセット情報を、前記識別情報を用いて、前記第の情報処理装置が作成するステップ。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、更に以下のステップを含む方法:
前記第三のセット情報から、特定の1つの識別情報を有する少なくとも1つのデータを前記第の情報処理装置が抽出するステップと、
前記データを、該レコードの中に含まれる時間情報に基づいて前記第の情報処理装置がソートするステップと、
前記第の情報処理装置が、前記ソートされたデータから位置情報を抽出して、観光ルート情報を作成するステップと、
前記第の情報処理装置が、前記識別情報を用いて、前記観光ルート情報を、前記第一のセット情報に結合し、第四のセット情報を作成するステップ。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記第四のセット情報をデータマイニングに活用するステップを含む方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、観光客が携行する物品が、電気的又は磁気的記憶手段を持たない物品である方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、観光客が携行する物品が、紙、アクセサリー、キーホルダーのいずれかである方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、観光客に係る情報が、氏名、住所、生年月日、国籍のうち少なくとも1つを更に含む情報である方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、観光客に係る情報が、氏名、住所、生年月日、国籍のうち少なくとも1つを更に含む情報であり、
前記第三のセット情報を用いて、観光客の国籍、住所、年代、性別、行動人数のいずれかのカテゴリーで分類し、過去の観光客がたどった観光ルートの統計情報を作成する処理を実行するステップを更に含む方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、観光客に係る情報が、氏名、住所、生年月日、国籍のうち少なくとも1つを更に含む情報であり、
前記第三のセット情報及び/又は第四のセット情報を用いて、観光客の国籍、住所、年代、性別、行動人数のいずれかのカテゴリーで分類し、過去の観光客がたどった観光ルートの統計情報を作成する処理を実行するステップを更に含む方法。
【請求項9】
観光ルートを提案するための方法であって、以下のステップを含む方法:
請求項7又は8に記載の統計情報を取得するステップと、
観光客に係る年齢層、国籍、性別、行動人数のいずれかの情報を検索条件として設定するステップと、
前記検索条件と前記統計情報とを用いて、前記検索条件に該当する観光ルートを数の多い順に抽出するステップと、
前記抽出された観光ルートを提示するステップ。
【請求項10】
観光客の位置情報を取得するための情報処理装置であって、
以下の手段を備える前記情報処理装置:
(1) 観光客を識別するため、及び観光客が携行する物品に記録するための識別情報を生成する識別情報生成モジュールと、
(2) 前記識別情報を、宿泊施設に少なくとも1つ備えられる装置(以降、第一端末と表記)に送信するネットワークモジュールと、
(3) 前記第一端末から、第一セット情報を受信するネットワークモジュールと、
(ここで、前記第一セット情報は、観光客に係る情報(前記観光客に係る情報は、少なくとも性別、行動人数を含む)が前記識別情報と共に前記第一端末に記憶された情報である)
(4) 各観光地に少なくとも1つ備えられる装置(以降、第二端末と表記)から、第二セット情報を受信するネットワークモジュールと、
(ここで、前記第二セット情報は、前記観光客が各観光地を訪問した際に提示した前記識別情報が、読み取りが行われた位置及び時間を表す情報と共に、前記第二端末に記憶された情報である)
(5) 前記第一セット情報に含まれる観光客に係る情報と、前記第二セット情報に含まれる前記位置及び時間を表す情報とが対応付けられた第三のセット情報を、前記識別情報を用いて作成する処理部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置情報を収集するためのシステム及び方法に関する。より具体的には、観光客が実際に採用した観光ルートの情報を収集するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旅行の際には、訪れる観光スポットを予め決めておく場合もあれば、行った先で決める場合もある。また、特開平9−218643号公報には観光ルートの候補を予め提案するシステムが開示されている。該システムでは、まず、操作者が、車載の端末装置に旅行の目的地と旅行者の人的情報とを入力する。前記旅行計画出力装置は、前記データベースを検索して、与えられた前記目的地および前記人的情報に適合する旅行計画を抽出する。前記適合する旅行計画が複数ある場合、複数の適合する旅行計画のうちで、過去に採用された回数が多いものまたは少ないものが、優先的に操作者に提示される。
【0003】
特開2008−46907号では、位置情報を個人情報と結びつける手段を開示している。具体的には、個人情報については保険会社経由で取得する。その一方で、位置情報については、対象物にGPS機能の付いた装置を取り付け、監視会社がその位置情報を受け取る。また、該監視会社は、保険会社から個人情報を受け取り、位置情報と個人情報をマッチングさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−218643号
【特許文献2】特開2008−46907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
観光業を活性化するためには、観光客の満足度を高めてリピーターを増やすことは重要であり、そのために、観光客のデータ収集は非常に重要となる。特に、観光客がどういった観光スポットを訪れたかに関する情報は非常に重要である。また、単にこうした情報だけでなく、観光客のプロフィールと共に収集できれば更に有用であろう。
【0006】
しかし、特開2008−46907号のような方法を用いる場合、位置情報を取得するために、わざわざGPS機能付の装置を観光客が携行する必要性が出てきてしまう。近年はGPS機能のついた機器(携帯電話やスマートフォンなど)が普及しつつあるが、観光客の中にはこうした機器を全く持たない人もいるだろう。また、仮にこうした機器を持っていたとしても、バッテリー消耗等の理由からGPS機能を日常的にOFFにしているユーザーも多い。従って、特開2008−46907号のような方法では、観光客は、自身の所有する機器のGPS機能をわざわざONにするというひと手間を強いられることとなる。
【0007】
更に言えば、観光客に対して観光ルートを提案する場合も、過去の観光客が実際に通ったルートを提案できた方が望ましい。特開平9−218643号に開示された方法では、提案された観光ルートを採用された回数に基づいて抽出しているが、ここで開示しているのは、あくまで旅行計画として採用したという事実に過ぎず、実際に採用した計画通りのルートを観光客が通ったかどうかは別問題である(現地での突然の計画変更は往々にしてあり得る)。
【0008】
以上の事情に鑑みて、本発明は、観光客に特段の手間を煩わせることなく、観光客が観光地で通った位置情報(観光ルート)の情報を収集する方法又はシステムを提供ことを第一の目的とする。
【0009】
更に、本発明は、観光客が実際に採用した観光ルートをデータとして蓄積させ、これに基づいた観光ルートの提案を行う事を可能にする方法又はシステムを提供することを第二の目的とする。
【0010】
また、本発明は、観光業に携わる地元の視点からでは気がつかないような、観光客に人気のある観光ルートを発掘することを第三の目的とする(即ち、地元の人間とっては対して珍しくもないものが、観光客にとっては珍しく新鮮にうつり、有力な観光スポットとなるケースがある)。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一側面において以下のように特定される方法又はシステムである。
(1) 観光客の位置情報を取得するための方法であって、
・観光客を識別するため、及び観光客が携行する物品に記録するための識別情報を第一の情報処理装置が生成するステップと、
・前記識別情報を、第二の情報処理装置が、ネットワークを介して、前記第一の情報処理装置から取得するステップと(ここで、第二の情報処理装置は宿泊施設に少なくとも1つ備えられる装置である)、
・観光客に係る情報を、前記識別情報と共に、第一セット情報として、前記第二の情報処理装置に記憶するステップと、
・前記第二の情報処理装置が、前記第一セット情報を、ネットワークを介して、第一の情報処理装置にアップロードするステップと、
・前記観光客が各観光地を訪問した際に提示した前記識別情報を、第三の情報処理装置が読み取るステップと(ここで、第三の情報処理装置は各観光地に少なくとも1つ備えられる)、
・前記読み取りが行われた位置及び時間を表す情報を、前記識別情報と共に、第二セット情報として、前記第三の情報処理装置が記憶するステップと、
・前記第二セット情報を、ネットワークを介して、第一の情報処理装置に、前記第三の情報処理装置が、アップロードするステップと、
・前記第一セット情報に含まれる観光客に係る情報と、前記第二セット情報に含まれる前記位置及び時間を表す情報とが対応付けられた第三のセット情報を、前記識別情報を用いて、前記第三の情報処理装置が作成するステップ。
【0012】
また、一側面において、本発明は、以下の方法である。
(2) 上記(1)に記載の方法であって、更に以下のステップを含む方法:
前記第三のセット情報から、特定の1つの識別情報を有する少なくとも1つのデータを前記第三の情報処理装置が抽出するステップと、
前記データを、該レコードの中に含まれる時間情報に基づいて前記第三の情報処理装置がソートするステップと、
前記第三の情報処理装置が、前記ソートされたデータから位置情報を抽出して、観光ルート情報を作成するステップと、
前記第三の情報処理装置が、前記識別情報を用いて、前記観光ルート情報を、前記第一のセット情報に結合し、第四のセット情報を作成するステップ。
【0013】
(3) 上記(2)に記載の方法であって、前記第四のセット情報をデータマイニングに活用するステップを含む方法。
【0014】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法であって、観光客が携行する物品が、電気的又は磁気的記憶手段を持たない物品である方法。
【0015】
(5) 上記(4)に記載の方法であって、観光客が携行する物品が、紙、アクセサリー、キーホルダーのいずれかである方法。
【0016】
(6) 上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法であって、観光客に係る情報が、氏名、住所、生年月日、国籍、性別、行動人数のうち少なくとも1つを含む情報である方法。
【0017】
(7) 上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法であって、観光客に係る情報が、氏名、住所、生年月日、国籍、性別、行動人数のうち少なくとも1つを含む情報であり、
前記第三のセット情報及び/又は第四のセット情報を用いて、観光客の国籍、住所、年代、性別、行動人数のいずれかのカテゴリーで分類し、過去の観光客がたどった観光ルートの統計情報を作成する処理を実行するステップを更に含む方法。
【0018】
(8) 観光ルートを提案するための方法であって、以下のステップを含む方法:
上記(7)に記載の統計情報を取得するステップと、
観光客に係る年齢層、国籍、性別、行動人数のいずれかの情報を検索条件として設定するステップと、
前記検索条件と前記統計情報とを用いて、前記検索条件に該当する観光ルートを数の多い順に抽出するステップと、
前記抽出された観光ルートを提示するステップ。
【0019】
上記(1)〜(8)に記載のステップを実行する手段を備えるシステム。
【発明の効果】
【0020】
一側面に係る本発明では、観光客に係る情報は、第二の情報処理装置を用いて記録される。そして、第二の情報処理装置は宿泊施設に供えられる装置である。また、宿泊施設では、チェックインをする際に、宿泊客(観光客)による氏名や住所等の入力が通常行われる。即ち、観光客にとってみれば、観光客に係る情報を収集するための余分な手間は全くと言っていいほどかからない。宿帳等に記入してもらうというこれまでと同じ作業を行うだけであり、そこでの情報を別途目的で流用させてもらうだけである。
【0021】
また、観光客を識別するための識別情報を、前記第三の情報処理装置が各観光スポットで読み取りを行い、その際に読み取りを行った場所と時間も同時に記録を行う。このことにより、観光客の訪れた場所と時間の情報を収集することができる。また、GPS端末等の装置を観光客は携帯する必要がない。
【0022】
一側面に係る本発明では、特定の識別情報に関してレコードを抽出して時系列に並べ替える作業を行う。これにより、いつどの場所を訪れたかという断片的な情報から、観光ルートという有機的なつながりを持った情報を生成することができる。
【0023】
また、こうした観光ルートのデータは、観光客の国籍、住所、年代、性別、行動人数のいずれかのカテゴリーで分類し、過去の観光客がたどった観光ルートの統計情報を作成することができる。これにより、上記カテゴリー別の傾向を調べることができる。また、こうした統計情報は、観光客が実際に訪れた記録に基づいている。そして、上述したようにGPS等の特殊な装置を必要としないためより多くの観光客からデータを収集することができる(つまり、母集団が大きくなる)。従って、統計情報としての信頼性も高い。また、地元では認識されていないが、外部の観光客からは人気のある観光スポットを探ることも可能となるであろう。
【0024】
また、年齢層、国籍、性別、行動人数のいずれかを検索条件としてこれらの信頼性の高い統計情報から検索を行うことにより、特定の人気のある観光ルートを抽出することができる。そして、抽出された観光ルートを、お勧め観光ルートとして提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係る本発明で用いるハードウェアの構成である。
図2】一実施形態に係る本発明で用いるシステム構成図である。
図3】一実施形態に係る本発明の方法で構築されるデータである。
図4】一実施形態に係る本発明の方法で構築されるデータである。
図5】一実施形態に係る本発明の方法で構築されるデータである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための具体的な形態について詳述する。該形態の説明は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。
【0027】
1.ハードウェア(情報処理装置)構成
本発明を実施する際、特殊な装置は必要ない。当分野で通常用いられている情報処理装置で十分である(例えば、メインフレーム、サーバー、パーソナルコンピュータなど)。具体的には、図1に示すように、処理部(例えばCPU)、記憶部(例えば、メモリ、HDD等)、入力部(例えば、キーボード、マウス、バーコードリーダー、RFIDリーダー、カメラ等)、出力部(例えば、表示装置(ディスプレイ等))を備えた装置であればよい。また、インターネット、LAN等のネットワークを利用する形態であれば、ネットワークモジュールを備えることが好ましい。
【0028】
2.システム構成
上記ハードウェアは、観光地域内の所定の場所に設置することができる。そして、前記ハードウェアは、少なくとも3種類の役割に応じて設置することができる。
【0029】
具体的には、1つめの役割を持つハードウェアは、所有者または使用権限者としては特に限定されない。例を挙げるとすれば、観光業サービスを提供する企業、観光組合、NPO、商工会議所、ホテル旅館組合、飲食店組合、チェーン展開している企業等である。また、該1つめのハードウェアはこれらの団体の事務所等に実際に設置する必要はなく、レンタルサーバー等外部団体が提供するサービスを利用する形態であってもよい。
【0030】
2番目のハードウェアは、旅館やホテル等の宿泊施設に設置される。後述するように、2番目のハードウェアは、1番目のハードウェアと情報のやり取りをネットワーク経由で行う。
【0031】
3番目のハードウェアは、観光スポット(例えば、売店、食事所、入館口のチケット売り場など)に設置することができる。後述するように、2番目のハードウェアは、1番目のハードウェアと情報のやり取りをネットワーク経由で行う。
【0032】
上記ネットワークは、インターネット、プライベートネットワーク、又は仮想プライベートネットワーク(VPN)等公知のネットワークであってもよい。
【0033】
3.第一の実施形態
(3−1)チェックイン
観光客は、滞在先の宿泊施設に到着したら、チェックインを通常行う。この際に観光客は、観光客自身に係る様々な情報(個人情報等)を必ず宿帳等に記入することとなる。個人情報の具体例をあげると、国籍、住所、名前、性別、生年月日、職業等様々な項目が挙げられるがこれらに限定されない。また、個人情報以外にも、記入してもよい情報としては、一緒に行動する人数等(一人、友達同士、夫婦、又は家族など)も挙げられる。
【0034】
(3−2)識別情報(ID)の付与
観光客のチェックインの受付を行う宿泊施設は、上述の2番目のハードウェアを備えることができる。そして、該ハードウェアは上述したネットワークに接続されている。宿泊施設は、チェックインした観光客に付与するための識別情報を取得する処理を行う。
【0035】
識別情報を生成するための手段は、当分野で公知の方法で行うことができる。例えば、データベースサーバー等に接続してシーケンスを取得して、コードを生成するようにしてもよい。或いは、ランダムなコードを生成するアルゴリズムを使用して任意の識別コードを生成するようにしてもよい。いずれの方法であっても、過去に生成した識別コードと重複することの無いように一意の識別情報を生成することが重要となる。
【0036】
識別情報を生成するステップは、上述した1番目のハードウェアが実行する形態であってもよい。例えば、観光地域の観光組合等が所有又は使用権限を有するサーバー等で実行する形態であってもよい。いずれにしてもこの場合には、1番目のハードウェアが識別情報生成モジュールを備えることになる。そして、宿泊施設に備えられた2番目のハードウェアは、1番目のハードウェアへ、識別情報発行のリクエストをネットワーク経由で行うことができる。それに応じて、1番目のハードウェアは、2番目のハードウェアへ識別情報をネットワーク経由で送ることができる。
【0037】
取得した識別情報は、任意の媒体に記録して観光客に手渡すことができる。識別情報を付与する媒体として好ましいのは、観光客が観光地を巡る際に携帯して行ける物である。例えば、紙媒体(観光パンフレットなど(更に好ましいのは地図や写真を収録してアルバムにすることができるもの))、アクセサリー・記念品(観光土産、例えばキーホルダー等の携行物)、電磁気的記憶媒体(ICカード、磁気カードなど)、電子情報端末(携帯電話、スマートフォンなど)に、上記識別情報を付与してもよい。
【0038】
好ましいのは、非電磁気的媒体である。ここで、非電磁気的媒体とは、上述した電磁気的記憶媒体や電子情報端末のような電気的又は磁気的な手段による記憶機構を持たない媒体物をいう。例えば、磁気カードやICチップ搭載カードのみならず、スマートフォンや携帯電話なども除外される。非電磁気的媒体として、特に好ましいのは、紙媒体やアクセサリー・記念品である。理由の1つとしては、デジタルデバイドのような問題から、上述した電磁気的媒体に相当する物を持たない人でも対応できることが挙げられる。また、紙媒体(観光パンフレット、観光地図、及び/又はフォトアルバム)やアクセサリー・記念品であれば、思い出の品として、少なくとも長期間保持する可能性が高い。従って、こうした物品を再度携行して同じ観光地を再び訪れたときに、リピーターの識別等に役立つ可能性がある(一方で、上述した電磁気的媒体(カード、スマートフォンなど)は、古くなれば廃棄や買換えされる可能性が高い)。
【0039】
上記媒体に応じて、識別情報の記録形態も変えることができる。上述した紙媒体やアクセサリー・記念品であれば、バーコード(1次元、2次元など)でもよいし、識別コード(任意のアルファベット、数値、及び/又は記号等の組合せ)等を印字・刻印してもよい。上述した電磁気的記憶媒体、電子情報端末であれば、内蔵される電気的メモリや磁気的メモリに適合する規格に変換して保存すればよい。しかし、識別情報の記録形態は、該識別情報を機械的に読み取る作業ができるようなものであることが望ましい。こうした利点を考慮すると、バーコードやOCR認識可能な文字・記号などが好ましい。また、電磁気的記憶媒体、電子情報端末であれば、RFID等遠隔読み取り操作が可能なICチップ内に識別情報を記憶するのも有用であろう。
【0040】
宿泊施設側は、識別情報を記録した媒体物(例えば、紙媒体やアクセサリー・記念品)を観光客に提供する。或いは、観光客側が元々所有している電磁気的記憶媒体、電子情報端末に該識別情報を記憶させる。
【0041】
(3−3)識別情報と個人情報等の入力・保存
その後、宿泊施設側は、前記識別情報と、観光客がチェックインの際に入力した情報を共に入力・保存する。より具体的には、2番目のハードウェアの入力部から、これらの情報を受け取り、記憶部に一旦保存することができる。これらの情報は、識別情報と観光客がチェックインの際に入力した情報との組み合わせである1番目の組み合わせ情報として記憶部に保存することができる。また、これらの情報は、ネットワーク経由で1番目のハードウェアにアップロードしてもよい。そして、1番目のハードウェアは、ネットワークモジュールを経由してアップロードされた1番目の組み合わせ情報を記憶部に保存することができる。いずれにしても、これら識別情報及びチェックイン情報がセットで保存されることにより、識別情報が分かれば、観光客の名前や住所等の様々な情報を引き出すことができるようになる。
【0042】
もっとも、近年は個人情報保護法などの理由から個人を特定するための情報の扱いには細心の注意が必要となる。従って、こうした事情を回避するため、観光客がチェックインの際に入力した情報をアップロードする際には、個人を特定できない範囲まで絞っても良い。例えば、氏名のアップロードは除外したり、住所については都道府県レベルでのアップロードにとどめたり、生年月日の代わりに、大まかな年齢の情報をアップロードする等の工夫をすればよい。
【0043】
(3−4)チェックイン後の観光客の行動
上述したように識別情報を付与した媒体を受け取った観光客は、その後、宿泊先周辺の観光スポットを廻る。ここで、観光客は、各所(土産店、チケット購入店、食事処など)で、識別情報を提示する。例えば、観光パンフレットに識別情報を印字している場合には、上述したようなバーコードリーダーやOCR機器に提示してもよい。また、ICチップ等が内蔵されたカード等であれば、RFIDリーダーに対してカード等をかざせばよい。
【0044】
ここで、観光客が識別情報を提示する動機を持たせるために、料金の割引等クーポンとしての機能を識別情報に持たせても良い。或いは、提示するたびにポイントが加算されるような仕組みにしてもよい。
【0045】
上記観光スポット各所では、ネットワークに接続された3番目のハードウェアが備えられている。そして、観光客が識別情報を提示した時、又は提示した後で、該識別情報を、3番目のハードウェアの入力部が受け取る(例えば、バーコードリーダー、RFIDリーダー、又は画像認識若しくはOCR認識機能のついたカメラ等で識別情報を取得してもよい)。そして、この識別情報は、3番目のハードウェアの記憶部に記憶される。ここで、3番目のハードウェアは、該ハードウェアが設置されている場所の情報(即ち観光スポットの位置情報)を記憶するモジュールと、時計モジュールを備えても良い。そして、上記識別情報が記憶部に記憶される際に、観光スポットの位置情報や読み取りが行われた時間の情報も共に記録することができる。即ち、識別情報と位置情報と時間の情報の組み合わせを2番目の組み合わせ情報として記憶することができる。
【0046】
位置情報については、具体的な観光スポットの名前や識別コードで表しても良いし、住所で表現しても良いし、或いは経度・緯度の組み合わせで表現してもよい。記録された2番目の組み合わせ情報は、ネットワークを経由して前記1番目のハードウェアにアップロードされる。また、上記位置情報や時間のほかに、観光客がその場で利用したサービスの内容や金額を記録し、1番目のハードウェアにアップロードしてもよい。
【0047】
(3−5)データの蓄積
上述した仕組みにより、1番目のハードウェアの記憶部においては、一方(2番目のハードウェア、宿泊施設側)からは、1番目の組み合わせ情報(識別情報と観光客に係る情報(個人情報等)の組み合わせ)を記憶することができる。もう一方(3番目のハードウェア、観光スポット側)からは、2番目の組み合わせ情報(識別情報、位置情報、及び時間の情報)を記憶することができる。従って、1番目のハードウェアの処理部は、識別情報を手がかりに、観光客に係る情報(個人情報等)と、位置情報及び時間の情報とをマッチングさせることができる。そして、1番目のハードウェアの処理部は、図3にあるように誰がいつどこの場所を訪問したかについての情報データを生成することができ、それを3番目の組み合わせ情報として記憶部に記憶することができる。さらに、後述するように、蓄積した情報を時系列で分析することにより、その人物が利用した観光ルートを特定することができる。
【0048】
本願発明の特筆すべきこととして、こうした位置情報や時間の情報を収集する際にGPS等の特殊な装置を要さないことが挙げられる。近年、GPS機能付の電子機器(携帯電話、スマートフォン、腕時計、カメラ等)が普及しつつあるが、観光客のなかにはこうした機器を全く持たない者もいるだろう。また、仮にこうした機能を持った電子機器を所有していたとしても、バッテリー消耗等理由からその機能をオフにしている場合もある。しかし、上記仕組みを用いることにより、GPS機能付の電子機器を全く必要とすることなく、特定の人物の位置情報や移動ルートを情報として収集することができる。
【0049】
4.第二の実施形態
上記第一の実施形態で収集されたデータは、図3にあるような形で1番目のハードウェアの記憶部に記憶することができる。
【0050】
また、特定のID、特定の日付でデータを絞り、時系列でソートする処理を1番目のハードウェアの処理部が実行することにより、特定のIDに係る観光客がたどった観光ルートを特定することができ、図4にあるような形に加工して保存することができる(無論、保存することは必ずしも必要ではなく、データベースであれば、クエリーを随時実行したり、ビューを設けたり、スナップショットの形式であってもよい)。例えば、図3の例でいえば、ID=1の観光客のデータを一旦抽出して、そのデータを、時系列順にソートする。すると、該観光客は、C→A→Bという観光ルートを通ったことが分かる。また、こうした観光ルートを表現するために、前記ソートをしたあと、観光ルートの欄を設けて図4のようにデータを再構成してもよい。そして、再構成したデータを4番目の組み合わせ情報データとして記憶部に記憶することができる。
【0051】
また、図3図4上部のデータには別情報のデータを付加することができる。別情報のデータの具体例としては、観光目的、評価、コメントなどが挙げられる(図4下部)。こうした情報は、観光協会等側が事後的に分析して入力してもよい。この場合には、1番目のハードウェアの記憶部に上記情報を記憶することができる。
【0052】
あるいは、こうした別情報のデータは、観光客が宿泊施設をチェックアウトする際にアンケートをとったり、別途口コミサイトを設けたりなどして、収集しても良い。アンケートをとる場合には、宿泊施設側が、2番目のハードウェアを用いてアンケートの内容を入力し、ネットワークを介して、1番目のハードウェアにアップロードすることができる。即ち、チェックイン時に観光客が入力した情報と同様の手段で行う事ができる。
【0053】
また、上述したデータは、データマイニングに活用することが可能である。例えば、上記IDには、年齢、国籍、住所、性別、行動人数(一人旅、友達同士、夫婦、ツアー客)等の情報が付随している。これらの各特性を所定のグループ群に更に分類して集計することができる。例えば、年齢であれば、20代、30代、40代といったグループ群に更に分けて集計することができる。住所であれば、各都道府県のグループにわけてもよいし、関東、東北、中部といった地方のグループにわけて集計してもよい。従って、どの年代(例えば図5)、どの国籍、どの地域に住む人には、どの観光スポット又はどの観光ルートが人気なのか、といったような傾向を統計学的に集計することができる。こうした集計処理は任意のハードウェアの処理部及び記憶部を用いて行っても良い。好ましくは、上記データが記憶部に保存されている1番目のハードウェアの処理部及び記憶部を用いて行う事ができる。

【0054】
あるいは、上記情報のほかに、別途情報を組み合せてもよい。例えば気象情報、季節を組み合わせて、これらに応じて観光スポット又は観光ルートにどのような傾向が見られるかを探っても良い。また、図5に記載されているように、目的、評価、コメント等を事後的に追加して観光ルートとの相関を調べるための統計としてもよい。
【0055】
いずれにしても、上記実施形態で収集されたデータ及び分析結果は、観光客が実際に取った行動に基づくデータであるためその信頼性はかなり高いものとなる。また、地元の人間では気がつかないような人気のある観光スポットを探ることも可能となる。
【0056】
5.第三の実施形態
上記実施形態で収集・分析したデータは、観光ルートの提案に活用することができる。一具体例においては、任意の検索用ハードウェアを用意し、該ハードウェアの記憶部に上述した統計情報を記憶させる。ここで、検索用のハードウェアは、上記統計情報の作成を実行したハードウェアや上記1番目のハードウェアと同一の物であっても良い。また、該ハードウェアは、ネットワーク経由で上記2番目のハードウェアと接続されている。そして、2番目のハードウェアの処理部は、観光ルートの検索画面を、ネットワーク経由で、上記検索用ハードウェアにリクエストする処理を実行する。前記リクエストを受けて、検索用ハードウェアの処理部は、検索用の画面を作成し、2番目のハードウェアに伝送する。2番目のハードウェアの入力部は、チェックインした観光客が入力した情報(例えば、年齢、性別、国籍、行動人数など)を用いて、これらの情報の一部を検索条件として受け付ける。そして、処理部が検索処理の実行を検索用ハードウェアに対してリクエストする。検索用ハードウェアの処理部は前記リクエスト内容に含まれる検索条件を抽出して検索条件として設定する。その後、検索用ハードウェアに記憶された統計情報、具体的には観光ルートに対して、前記検索条件を用いて検索処理を実行する。
【0057】
検索条件に一致する観光ルートが見つかった場合、処理部は任意の条件で検索結果をソートする。任意の条件とは、例えば、過去の実績が最も多い観光ルートから降順にソートするような条件であってもよい。および/または、上述したような口コミ評価のデータが付加されているようであれば、評価の高いものから順にソートするような条件であっても良い。
【0058】
検索条件に一致する観光ルートが見つからなかった場合の対応方法、或いはより多くの観光ルートが検索されるような対応方法として、検索処理は、完全一致検索とせず、公知の類似検索アルゴリズムを採用してもよい。
【0059】
以上のような仕組みを用いることにより、観光客のプロフィール情報に応じた適切な観光ルート提案を行うことが可能となる。
【0060】
ルートの検索をする際には、識別情報を検索条件として入力してもよい。これにより、二回以上訪問した観光客(即ちリピーター)に対しては、過去に通った観光ルートを敢えて提案しないようにすることも可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5