特許第5959469号(P5959469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959469
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20160719BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20160719BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20160719BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20160719BHJP
   D21H 19/58 20060101ALI20160719BHJP
   D21H 19/44 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B41M5/00 B
   D21H27/00 Z
   D21H19/58
   D21H19/44
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-83209(P2013-83209)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-205270(P2014-205270A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越紀州製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】目黒 章久
(72)【発明者】
【氏名】岡田 喜仁
(72)【発明者】
【氏名】西浦 雅志
(72)【発明者】
【氏名】太田 好彦
(72)【発明者】
【氏名】沓名 稔
(72)【発明者】
【氏名】恩田 有里子
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−305237(JP,A)
【文献】 特開2010−228304(JP,A)
【文献】 特開2010−221688(JP,A)
【文献】 特開2002−240424(JP,A)
【文献】 特開2010−234677(JP,A)
【文献】 特開2007−076213(JP,A)
【文献】 特開平05−059694(JP,A)
【文献】 特開平08−025800(JP,A)
【文献】 特開2001−071635(JP,A)
【文献】 特開2001−277701(JP,A)
【文献】 特開2003−108007(JP,A)
【文献】 特開2004−276519(JP,A)
【文献】 特開2005−280341(JP,A)
【文献】 国際公開第03/039881(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
B41M 5/50
B41M 5/52
D21H 19/44
D21H 19/58
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の少なくとも片面に顔料とスチレンブタジエンラテックスを含有するインク受容層を設け乾燥させた後に直接キャレンダー処理することを含み、前記インク受容層にカチオン性物質と潤滑剤とを含有し、該カチオン性物質が、カチオン性高分子化合物及び/又は2価以上の金属塩であり、潤滑剤が、高級脂肪酸塩、ポリエチレンエマルジョン、またはパラフィンワックスエマルジョンであることを特徴とするインクジェット印刷用紙の製造方法。
【請求項2】
前記高級脂肪酸塩がステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウムのいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷用紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用紙に関する。更に詳しくは一般印刷用塗工紙と同様の風合いを有するインクジェット印刷用紙、特にオンデマンドインクジェット印刷用紙に関すものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、染料インクや顔料インクの液滴を吐出し、記録紙上に付着させることによってドットを形成し、記録を行う方式である。近年、インクジェットプリンター、インク、記録媒体の技術的進歩によって、印字品質の高い記録が可能になってきている。また、商業印刷等の分野においては、可変情報をデジタル化して高速に印刷する、いわゆるオンデマンド印刷方式が導入されつつあり、オンデマンド印刷方式を採用しているインクジェット印刷機も登場しつつある。本オンデマンド印刷方式においては、情報を製版することなく紙などのメディアに直接印刷することが可能なために少部数の印刷にも適している。最近では、装置の高速化や高精細化に著しい進歩が見られることによる用途の拡大に伴い、一般印刷用塗工紙(例えば一般オフセット印刷用紙)と同様の風合いを有する塗工紙にもインクジェット適性を付与する要望が発生してきている。
【0003】
しかし、一般的な印刷用塗工紙をインクジェット印刷方式で印刷する場合、特に、銀塩写真と同様の解像度と再現性を求められる場合など、インクジェット用インクの吸収性が著しく悪く、画像鮮明性やインク乾燥性が悪化して実用に耐えなくなってしまう問題がある。この理由として、一般的な印刷用塗工紙な塗工層に使用する顔料の細孔容積が著しく低く、バインダーとして一般的に使用されるラテックスが塗工層の細孔容積を著しく低下させてしまうことが挙げられる。
【0004】
一方、インクジェット用紙のインク受容層としては、通常、シリカ、アルミナ、ベーマイト等の比表面積の大きな顔料を主成分として用いて塗工層の細孔容積を大きくしたものが使用されている。しかし、これらのインクジェット用紙は、風合いが一般的な印刷塗工用紙に比べ劣るうえに、シリカ、アルミナ、ベーマイト等が高価であるため、特にオンデマンド印刷などの商業印刷分野においては実用的ではない。
【0005】
また、従来のインクジェット印刷用紙の技術としては、塗工層に使用する顔料である炭酸カルシウムの吸油量を適正値に限定した印刷用紙(特許文献1)、塗工層に使用する顔料であるカオリンクレーの粒子径を適正値に限定した印刷用紙(特許文献2)が開示されているが、インク吸収性と発色性が不十分である。すなわち、これらの技術は一般的な印刷用塗工紙と同様の風合いをインクジェット記録用紙に持たせることを目的としたものであるが、一方ではインク吸水性・インク乾燥性が劣ってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−082464
【特許文献2】特開2008−238612
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、一般印刷用塗工紙と同様の風合いを保ちつつ、印字品位の高いインクジェット印刷用紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、高速で吐出されるインクを塗工層表面に定着させるために、顔料とスチレンブタジエンラテックスを含有するインク受容層中にカチオン性物質を含有させることで、細孔容積の低いインク受容層でもインクが受容層表面に適正に定着することを見出した。また、本発明のインクジェット印刷用紙は一般印刷用塗工紙と同様の風合いを醸し出すためにインク受容層を設けた後にキャレンダー処理を施すが、キャレンダーロール表面の汚れが発生すると白紙面感が劣化する。しかし、インク受容層に潤滑剤を含有させることでこの白紙面感の劣化を防止する効果のあることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、一般印刷用塗工紙と同様の風合いを有する安価なインクジェット印刷用紙を提供することができる。また、本発明であれば、従来の一般印刷用塗工紙と同様の製造効率を維持することが可能であり、特にオンデマンド印刷など商業的印刷分野での使用に最適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)基紙
本実施形態に係るインクジェット印刷用紙の基紙に使用するパルプ繊維はLBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプである。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。また、本発明に係る基紙を構成するパルプは、インクジェット印刷用紙として適切な叩解度を有する紙料とすることが好ましい。適切な叩解度としては、例えば、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、350〜650mlCSFである。
【0011】
本実施形態に係る基紙に使用する填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、焼成クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウムである。基紙中の填料含有量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、2〜20質量部であることが好ましい。より好ましくは3〜17質量部である。さらに好ましくは、4〜15質量部である。2質量部以下では白色度向上、不透明度向上等の効果が得られない。20質量部を超えると基紙の強度が不足し印刷・加工に耐えられず実質使用することが出来ない。
【0012】
本実施形態に係る基紙に使用するパルプ、填料以外には内添サイズ剤、湿潤紙力増強剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などの各種助剤を、各製品に合わせて好適に配合することができる。内添サイズ剤は、各種公知のものが使用でき、特に限定されず、例えば、強化ロジンサイズ剤、酸性ロジンサイズ剤、弱酸性ロジンサイズ剤、AKD、ASAである。前記内添紙力増強剤としては、従来公知の紙力増強剤を使用することが可能であり、例えば、澱粉系紙力増強剤、ポリアクリルアミド系紙力増強剤、ポリビニルアルコール系紙力増強剤である。
【0013】
基紙を抄紙する方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造できる。
【0014】
本実施形態に係る抄紙方法で得られる基紙には、表面サイズ液を塗布しても良い。表面サイズ液として澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの公知の水溶性高分子などが上げられるが特に限定されるものではない。基紙の坪量は、特に限定されないが、通常30〜300g/mである。
【0015】
(2)インク受容層
インク受容層に含有させる顔料としては、一般に印刷用塗工紙に使用されている公知の白色顔料が例示できる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン(クレーを含む)、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、プラスチックピグメント等の有機高分子微粒子等であり、これらの中から目的に応じて1種あるいは2種以上が適宜選択して使用される。また、本発明においては、高価なアルミナ、シリカ、ベーマイト等の顔料は使用しないことが好ましい。
【0016】
本発明においては、インク受容層に用いるバインダーとしてスチレンブタジエンラテックスを使用することが必要である。スチレンブタジエンラテックスをインク受容層のバインダーとして使用することで、塗工層強度を従来の一般印刷用塗工紙と同様の強度にすることが可能であり、また安価であるので製造コストを低く抑えることが可能である。更に塗工層の脱落を防ぎ、キャレンダー処理の際のキャレンダーロール汚れを抑制することで白紙面感の悪化を防ぐことができる。また、本発明においては、インク受容層のバインダーとしてスチレンブタジエンラテックス以外の公知のバインダーも用いることができる。このようなバインダーとしては、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、等の合成樹脂類等が例示できる。これらの中から目的に応じて1種あるいは2種以上が適宜選択して使用される。特に印刷用塗工紙で一般に用いられる澱粉とスチレンブタジエンラテックスの組み合わせがインク受容層の塗工層強度及びコスト抑制の観点から好ましい。
【0017】
インク受容層に配合するバインダーの配合量は特に限定されないが、全顔料100質量部に対し3〜50質量部とすることが好ましく、5〜40質量部とすることがより好ましい。配合量が3質量部未満であると塗工層が脱落する恐れがあり、50質量部を超えると、インク吸収性が悪化するために裏移りが発生する可能性がある。また、インク受容層に配合するスチレンブタジエンラテックスの配合量は、全顔料100質量部に対し3〜30質量部が好ましい。3質量部未満では塗工層が脱落する恐れがあり、30質量部を超える場合ではインク吸収性が悪化するために裏移りが発生する可能性がある。
【0018】
本発明においては、前記インク受容層中にカチオン性物質を含有させる必要がある。インクはアニオン性であるため、インク受容層中のカチオン性物質がインクを固着させる効果があるために、着弾したインクが滲まずに適正なドットを形成することが可能となるからである。カチオン性物質をインク受容層中に含有させる方法としては、インク受容層塗工液に含有させる方法、インク受容層塗工液を塗布後にインク受容層表面にカチオン性物質を含む塗工液を塗工する方法、等が挙げられる。前記カチオン性物質のインク受容層中の含有量(両面にインク受容層塗料を塗工する場合は片面当たりの含有量)としては、例えば、0.02〜5.0g/mあり、0.05〜3.0g/mであることが好ましい。0.02g/m未満の場合はインクのにじみが発生する恐れがあり、5.0g/mを超える場合は、キャレンダーのロール表面が汚れ、インク受容層表面に欠点を発生させて印刷用紙の風合いを損ねてしまう。
【0019】
本発明においては、前記カチオン性物質をカチオン性高分子化合物及び/又は2価以上の金属塩とする。本発明で用いるカチオン性高分子化合物は、例えば、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリアミン、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリビニルピリジウムハライド、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリスチレン共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアミド共重合物、ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、メラミン樹脂酸コロイド、尿素系樹脂、カチオン変性ポリビニルアルコール、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型化合物、ポリアミジン化合物、その他第4級アンモニウム塩類、カチオン変性ポリウレタン樹脂である。これらは1種を単独で使用するか、又は2種以上を併用してもよい。
【0020】
2価以上の金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、ジルコニウム塩、チタン塩、亜鉛塩である。これらは1種を単独で使用するか、又は2種以上を併用してもよい。なお、本実施形態では、金属塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸などの無機酸の金属塩と蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸などの有機酸の金属塩とを包含する。
【0021】
本発明においては、インクとして顔料インクが使用される場合において特に、前記カチオン性物質が2価以上の金属塩を含有することが好ましい。より顔料インクの定着性に優れ、滲みを抑制することが可能である。更に、前記2価以上の金属塩がカルシウム塩、マグネシウム塩のいずれか1種以上であることがインクの滲み抑制の観点から更に好ましい。
【0022】
しかし、インク受容層中に前記カチオン性物質を含有させるとキャレンダーのロール表面が汚れやすくなり、インク受容層表面に欠点を発生させて風合いを損ねてしまう。また、発生した欠点の影響で光沢度が低下する。そこで、本発明におけるインクジェット印刷用紙は一般印刷塗工紙のような風合いを醸し出すためにインク受容層を設けた後、キャレンダー処理を施して光沢を付与することが必要である。この際に生じる汚れを抑制するために、本発明においては、前記インク受容層中に潤滑剤を含有させる必要がある。インク受容層に潤滑剤を含有させることでキャレンダーのロール表面の汚れを抑制することが可能である。
【0023】
本実施形態でいう潤滑剤の例として、液状潤滑剤、液状潤滑剤の固化物、固体潤滑剤などがあげられる。具体的には高級脂肪酸塩、ポリエチレンエマルジョン、パラフィンワックスエマルジョン等を使用することが可能である。前記潤滑剤のインク受容層中の配合量としては、顔料100質量部に対して0.01〜3.0質量部であることが好ましい。0.01質量部未満の場合はキャレンダーのロール表面の汚れを抑制する効果に乏しく、3.0質量部を超える場合は白紙光沢を低下させる恐れがある。本実施形態においてはインク受容層が、潤滑剤として高級脂肪酸塩を含有することが好ましい。高級脂肪酸塩としては、白紙光沢の維持とキャレンダーのロール表面の汚れを抑制するという観点から、水に不溶である高級脂肪酸塩がよく、さらにステアリン酸カルシウムの水分散物、ステアリン酸アンモニウムの水分散物のいずれか1種以上を含有することが更に好ましい。
【0024】
また、前記インク受容層には、必要に応じ各種助剤、例えば、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、耐水化剤、分散剤、流動変性剤、紫外線吸収剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、pH調節剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤が必要に応じて適宜配合される。
【0025】
(3)塗工方式
前記インク受容層を塗工する方式としては、特に限定することはなく、一般に使用されている塗工装置が使用される。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
【0026】
インク受容層の基紙への塗工量は、特に限定されるものではないが、固形分換算で基紙の片面あたり2〜40g/mとすることが好ましい。塗工量が2g/m未満では所望の白紙光沢を得ることが困難となり、40g/mを超える場合はコスト的に不利となる。また、インク受容層を形成する塗工液を2回以上塗工して、インク受容層を2層以上で構成することも可能である。更に、基紙とインク受容層との間には顔料とバインダーを主体としたアンダー層を設けてもよい。
(4)キャレンダー処理
本発明においては、基紙にインク受容層を設けた後にキャレンダー処理を行うが、処理装置としては、通常のスーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、シューニップキャレンダー、ソフトキャレンダー、等が用いられる。その際の加圧装置形態、加圧ニップ数、温度条件等の処理条件を適宜調節して処理することが出来る。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。この実施例は本発明の範囲を限定するものではない。また、実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り固形質量部及び固形質量%を示す。
【0028】
(実施例1)
<基紙の作製>
カナディアンスタンダードフリーネス450mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部、軽質炭酸カルシウム(TP−121:奥多摩工業社製)10部、カチオン化澱粉(ネオタック30T:日本食品加工社製)0.3部、中性ロジンサイズ(CC167:星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量70g/mの基紙を作製した。この基紙にはゲートロールコーターにより、酸化澱粉(MS3800:日本食品化工社製)を両面で乾燥塗布量2.5g/mとなるように塗布している。
【0029】
<インク受容層用塗工液の調製>
カオリンクレー(コンツアー1500、イメリス社製)60部、重質炭酸カルシウム(カービラックス、イメリス社製)40部に分散剤(アロンT−50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作成した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(MS4600、日本食品加工社製)2部、スチレンブタジエンラテックス(PA0372、日本エイアンドエル株式会社)10部、カチオン性物質として金属塩(硫酸マグネシウム)3.5部、潤滑剤としてステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)2.5部に水を加えて固形分濃度50%のインク受容層用塗工液を調製した。
【0030】
<インクジェット印刷用紙の作製>
上記で得られたインク受容層用塗工液を、基紙の両面に、ブレードコーターで片面当たり乾燥塗工質量が10g/mになるように塗工し、乾燥後にキャレンダー処理を行い、坪量が90g/mのインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/mであった。
【0031】
(実施例2)
インク受容層用塗工液の調製において、金属塩を塩化カルシウムに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。塩化カルシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/mであった。
【0032】
(実施例3)
インク受容層用塗工液の調製において、金属塩を塩化アルミニウムに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。塩化アルミニウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/mであった。
【0033】
(実施例4)
インク受容層用塗工液の調製において、潤滑剤を、ステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)2.5部からステアリン酸アンモニウム(ノプコDC−100A、サンノプコ社製)2.5部に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/mであった。
【0034】
(実施例5)
インク受容層用塗工液の調製において、硫酸マグネシウムの添加量を0.6質量部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.05g/mであった。
【0035】
(実施例6)
<インク受容層用塗工液の調製>
カオリンクレー(コンツアー1500、イメリス社製)75部、軽質炭酸カルシウム(TP123CS、奥多摩工業社製)25部に分散剤(アロンT−50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作成した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉澱粉(MS4600、日本食品加工社製)2部、スチレンブタジエンラテックス(PA0372、日本エイアンドエル株式会社)10部、潤滑剤としてステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)2.5部に水を加えて固形分濃度50%のインク受容層用塗工液を調製した。
【0036】
<インクジェット印刷用紙の作製>
実施例1と同様の方法で作製した基紙の両面にインク受容層用塗料をブレードコーターを用いて、片面当たり乾燥塗工質量が10g/mになるように塗工した。その後、カチオン性物質として金属塩(硫酸マグネシウム)の5%水溶液を片面当たり2.5g/m(硫酸マグネシウム絶乾塗工量)になるように両面に塗工し、乾燥した。その後、キャレンダー処理を行い、坪量が95g/mのインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/mであった。
【0037】
(実施例7)
インクジェット印刷用紙の作製において、カチオン性物質としてカチオン性高分子(ハイマックスSC607:ハイモ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。カチオン性高分子インク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/mであった。
【0038】
(実施例8)
インクジェット印刷用紙の作製において、金属塩として硫酸マグネシウム10%水溶液を片面当たり4g/m(硫酸マグネシウム絶乾塗工量)になるように両面に塗工した以外は、実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり4g/mであった。
【0039】
(実施例9)
インク受容層用塗工液の調製において、ステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)の添加量を0.3質量部とした以外は実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/mであった。
【0040】
(実施例10)
インク受容層用塗工液の調製において、ステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)の添加量を0.05質量部とした以外は実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/mであった。
【0041】
(実施例11)
インク受容層用塗工液の調製において、潤滑剤を、ステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)2.5部からポリエチレンエマルジョン(ノプコートPEM17、サンノプコ社製)2.5部に変更した以外は実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/mであった。
【0042】
(比較例1)
インク受容層用塗工液の調製において、硫酸マグネシウムを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0g/mであった。
【0043】
(比較例2)
インク受容層用塗工液の調製において、潤滑剤であるステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/mであった。
【0044】
(比較例3)
インク受容層用塗工液の調製において、バインダーであるスチレンブタジエンラテックス(PA0372、日本エイアンドエル株式会社)を添加せず、リン酸エステル化澱粉 (MS4600、日本食品加工社製)の添加量を12部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/mであった。
【0045】
各実施例及び比較例で得られたインクジェット印刷用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1及び表2に示す。
(1)インクの滲み評価
以下の2機種のインクジェットプリンターを用いて白抜き文字の印字を行い、インクの滲み具合を目視で以下のように評価した。
プリンターA:CM8060 ColorMFP(ヒューレットパッカード社製)
プリンターB:PX−101(EPSON社製)
◎:滲みが全くなく、実用できる。
○:滲みが僅かに発生するが、実用できる。
△:滲みが発生し、実用不可。
×:滲みが著しく発生し、実用不可。
【0046】
(2)白紙光沢
JIS−P8142に準じ、75度光沢度計を用いて測定を行った。数値が高い方が高級感に優れていて好ましい。
【0047】
(3)白紙面感
白紙面感を以下のように目視で評価した。
◎:キャレンダーロール表面に汚れが全くなく、白紙面感に非常に優れており、実用できる。
○:キャレンダーロール表面に僅かに汚れが発生するが、白紙面感に優れており、実用できる。
△:キャレンダーロール表面に汚れが発生し、白紙面感に劣り、実用不可。
×:キャレンダーロール表面に汚れが著しく発生し、白紙面感が著しく劣り、実用不可。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1、2から明らかなように、実施例1〜11で得られたインクジェット印刷用紙は、一般印刷用塗工紙と同様の風合いを保ちつつ、インクジェットの印字に優れている。
【0051】
比較例1で得られたインクジェット印刷用紙は、カチオン性物質がインク受容層に含有されていないために、インクの滲みに劣った。比較例2で得られたインクジェット印刷用紙は、潤滑剤がインク受容層に含有されていないために、キャレンダーロールが汚れて白紙面感に劣った。比較例3で得られたインクジェット印刷用紙は、インク受容層のバインダーとしてスチレンブタジエンラテックスがインク受容層に含有されていないために、キャレンダーロールが汚れて白紙面感に劣り、また光沢度も劣った。