【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。この実施例は本発明の範囲を限定するものではない。また、実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り固形質量部及び固形質量%を示す。
【0028】
(実施例1)
<基紙の作製>
カナディアンスタンダードフリーネス450mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部、軽質炭酸カルシウム(TP−121:奥多摩工業社製)10部、カチオン化澱粉(ネオタック30T:日本食品加工社製)0.3部、中性ロジンサイズ(CC167:星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量70g/m
2の基紙を作製した。この基紙にはゲートロールコーターにより、酸化澱粉(MS3800:日本食品化工社製)を両面で乾燥塗布量2.5g/m
2となるように塗布している。
【0029】
<インク受容層用塗工液の調製>
カオリンクレー(コンツアー1500、イメリス社製)60部、重質炭酸カルシウム(カービラックス、イメリス社製)40部に分散剤(アロンT−50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作成した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(MS4600、日本食品加工社製)2部、スチレンブタジエンラテックス(PA0372、日本エイアンドエル株式会社)10部、カチオン性物質として金属塩(硫酸マグネシウム)3.5部、潤滑剤としてステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)2.5部に水を加えて固形分濃度50%のインク受容層用塗工液を調製した。
【0030】
<インクジェット印刷用紙の作製>
上記で得られたインク受容層用塗工液を、基紙の両面に、ブレードコーターで片面当たり乾燥塗工質量が10g/m
2になるように塗工し、乾燥後にキャレンダー処理を行い、坪量が90g/m
2のインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/m
2であった。
【0031】
(実施例2)
インク受容層用塗工液の調製において、金属塩を塩化カルシウムに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。塩化カルシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/m
2であった。
【0032】
(実施例3)
インク受容層用塗工液の調製において、金属塩を塩化アルミニウムに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。塩化アルミニウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/m
2であった。
【0033】
(実施例4)
インク受容層用塗工液の調製において、潤滑剤を、ステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)2.5部からステアリン酸アンモニウム(ノプコDC−100A、サンノプコ社製)2.5部に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/m
2であった。
【0034】
(実施例5)
インク受容層用塗工液の調製において、硫酸マグネシウムの添加量を0.6質量部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.05g/m
2であった。
【0035】
(実施例6)
<インク受容層用塗工液の調製>
カオリンクレー(コンツアー1500、イメリス社製)75部、軽質炭酸カルシウム(TP123CS、奥多摩工業社製)25部に分散剤(アロンT−50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作成した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉澱粉(MS4600、日本食品加工社製)2部、スチレンブタジエンラテックス(PA0372、日本エイアンドエル株式会社)10部、潤滑剤としてステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)2.5部に水を加えて固形分濃度50%のインク受容層用塗工液を調製した。
【0036】
<インクジェット印刷用紙の作製>
実施例1と同様の方法で作製した基紙の両面にインク受容層用塗料をブレードコーターを用いて、片面当たり乾燥塗工質量が10g/m
2になるように塗工した。その後、カチオン性物質として金属塩(硫酸マグネシウム)の5%水溶液を片面当たり2.5g/m
2(硫酸マグネシウム絶乾塗工量)になるように両面に塗工し、乾燥した。その後、キャレンダー処理を行い、坪量が95g/m
2のインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/m
2であった。
【0037】
(実施例7)
インクジェット印刷用紙の作製において、カチオン性物質としてカチオン性高分子(ハイマックスSC607:ハイモ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。カチオン性高分子インク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/m
2であった。
【0038】
(実施例8)
インクジェット印刷用紙の作製において、金属塩として硫酸マグネシウム10%水溶液を片面当たり4g/m
2(硫酸マグネシウム絶乾塗工量)になるように両面に塗工した以外は、実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり4g/m
2であった。
【0039】
(実施例9)
インク受容層用塗工液の調製において、ステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)の添加量を0.3質量部とした以外は実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/m
2であった。
【0040】
(実施例10)
インク受容層用塗工液の調製において、ステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)の添加量を0.05質量部とした以外は実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/m
2であった。
【0041】
(実施例11)
インク受容層用塗工液の調製において、潤滑剤を、ステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)2.5部からポリエチレンエマルジョン(ノプコートPEM17、サンノプコ社製)2.5部に変更した以外は実施例6と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり2.5g/m
2であった。
【0042】
(比較例1)
インク受容層用塗工液の調製において、硫酸マグネシウムを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0g/m
2であった。
【0043】
(比較例2)
インク受容層用塗工液の調製において、潤滑剤であるステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/m
2であった。
【0044】
(比較例3)
インク受容層用塗工液の調製において、バインダーであるスチレンブタジエンラテックス(PA0372、日本エイアンドエル株式会社)を添加せず、リン酸エステル化澱粉 (MS4600、日本食品加工社製)の添加量を12部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。硫酸マグネシウムのインク受容層中の含有量は片面当たり0.30g/m
2であった。
【0045】
各実施例及び比較例で得られたインクジェット印刷用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1及び表2に示す。
(1)インクの滲み評価
以下の2機種のインクジェットプリンターを用いて白抜き文字の印字を行い、インクの滲み具合を目視で以下のように評価した。
プリンターA:CM8060 ColorMFP(ヒューレットパッカード社製)
プリンターB:PX−101(EPSON社製)
◎:滲みが全くなく、実用できる。
○:滲みが僅かに発生するが、実用できる。
△:滲みが発生し、実用不可。
×:滲みが著しく発生し、実用不可。
【0046】
(2)白紙光沢
JIS−P8142に準じ、75度光沢度計を用いて測定を行った。数値が高い方が高級感に優れていて好ましい。
【0047】
(3)白紙面感
白紙面感を以下のように目視で評価した。
◎:キャレンダーロール表面に汚れが全くなく、白紙面感に非常に優れており、実用できる。
○:キャレンダーロール表面に僅かに汚れが発生するが、白紙面感に優れており、実用できる。
△:キャレンダーロール表面に汚れが発生し、白紙面感に劣り、実用不可。
×:キャレンダーロール表面に汚れが著しく発生し、白紙面感が著しく劣り、実用不可。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1、2から明らかなように、実施例1〜11で得られたインクジェット印刷用紙は、一般印刷用塗工紙と同様の風合いを保ちつつ、インクジェットの印字に優れている。
【0051】
比較例1で得られたインクジェット印刷用紙は、カチオン性物質がインク受容層に含有されていないために、インクの滲みに劣った。比較例2で得られたインクジェット印刷用紙は、潤滑剤がインク受容層に含有されていないために、キャレンダーロールが汚れて白紙面感に劣った。比較例3で得られたインクジェット印刷用紙は、インク受容層のバインダーとしてスチレンブタジエンラテックスがインク受容層に含有されていないために、キャレンダーロールが汚れて白紙面感に劣り、また光沢度も劣った。