【実施例】
【0027】
本発明の第1実施形態に係るチェーンガイド100について図面に基づいて説明する。
【0028】
チェーンガイド100は、取付対象であるエンジンブロック(図示しない)に固定される固定ガイドとして構成され、前述した公知のタイミングシステムに適用されるものである。
【0029】
チェーンガイド100は、
図1および
図2に示すように、走行するチェーンを摺動案内する案内シュー110と、案内シュー110をチェーン走行方向に沿って補強して強度、剛性、耐久性を向上させるベース部材120とを備えている。
【0030】
案内シュー110は、
図1に示すように、チェーン走行方向に延びる走行案内部111を有し、合成樹脂材料で形成されている。案内シュー110は、その係合片をベース部材120に対して係合することにより、ベース部材120に対して取り付けられる。
【0031】
ベース部材120は、金属製の板材からなり、
図1および
図2に示すように、チェーン走行方向に沿って所定の湾曲形状に形成され、案内シュー110を支持する板状のシュー支持部121を有している。
【0032】
ベース部材120の長手方向両端には、
図1および
図2に示すように、各1本のスリット124が形成されている。各スリット124は、ベース部材120の長手方向端部を起点して内側に向けてチェーン走行方向に沿って延びている。スリット124の終点部には、
図3に示すように、肉ヌスミ部126が形成されている。
【0033】
ベース部材120は、
図1および
図2に示すように、その長手方向両端に、スリット124によって幅方向に区分され、長手方向の外側に向けて片持ち梁状に延びる各1つの分割片部125をそれぞれ有している。各分割片部125は、幅方向におけるベース部材120の一側縁において、シュー支持部121に支持される案内シュー110より外側位置に形成されている。分割片部125の先端には、その先端を屈曲して丸めた管状孔部123が設けられている。この管状孔部123は、ボルト等の取付軸(図示しない)を挿通させるためのものであり、この管状孔部123を有する分割片部125が、エンジンブロックにチェーンガイド100を取り付けるための取付部122として機能する。
【0034】
本実施形態では、取付部122が、
図1および
図2に示すように、チェーン走行方向の上流側では表面側に、下流側では裏面側に延びるように形成されている。なお、
図1〜3の図示右方向がチェーン走行方向の上流側、左方向がチェーン走行方向の下流側とし、走行案内部111のチェーン走行面側が表面側、その反対面が裏面側とした。
【0035】
このようにして得られた第1実施形態のチェーンガイド100では、スリット124により幅方向に区分されたベース部材120の分割片部125を幅方向と直交した面内で屈曲させることでエンジンブロック等の取付対象に取り付けるための取付部122を形成できるため、折り曲げ加工時に大きな加工力を必要とせず、精度良く曲げ加工を施すことが可能となる。
【0036】
また、取付部122を形成する前のベース部材120(平面上に展開した状態)は、
図3に示すように、分割片部125がシュー支持部121から幅方向に大きく突出することがないため、1枚の金属板から打ち抜き等で製造する際に、材料の無駄も少なく、製造コストを低減することができる。
【0037】
また、取付部122が分割片部125の先端を屈曲して形成された管状孔部123を有することにより、エンジンブロックに取り付けるためのボルト等が挿通される取付孔を曲げ加工のみで形成することでき、打ち抜き等で形成する場合に比べエンジンブロックに応じた形状や位置の変更が容易となり、製造コストを低減することができる。また、取付孔(管状孔部123)の長さが、分割片部125の幅に相当する長さとなることで、エンジンブロックにボルト等が挿通されて取り付けた時の安定性が向上する。また、分割片部125の先端を屈曲して丸めることにより、周辺部材との干渉を回避することができる。
【0038】
また、スリット124により幅方向に区分されたベース部材120の分割片部125を利用して取付部122を形成することにより、取付部122が弾性を発揮してダンパー効果を生じ、騒音の発生を抑制することができる。
【0039】
また、分割片部125がシュー支持部121に支持される案内シュー110より外側位置に形成されていることにより、分割片部125を上方(案内シュー110側)に屈曲させて取付部122を形成することが可能となり、エンジンブロックに応じた設計の自由度が向上する。
【0040】
また、スリット124の終点部に肉ヌスミ部126を設けたことにより、分割片部125に曲げ加工を行った際のスリット124の終点部に加わる応力集中や歪を緩和することが可能となり、ベース部材120の強度を維持し耐久性を向上することができる。
【0041】
また、分割片部125がベース部材120の長手方向の端部を起点に設けられたスリット124により幅方向に分割されていることにより、分割片部125を屈曲して取付部122を形成した際に、端部付近のシュー支持部121の幅が狭くなり弾性変形しやすくなるため、最も振動しやすいチェーンの接触、離脱位置となる案内シュー110の端部近傍を弾性的に支持することが可能となり、また、取付部122をベース部材120の長手方向の両端にそれぞれ設けたことにより、チェーンからの力をベース部材120全体で均等に受けることができる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態に係るチェーンガイド200について、
図4および
図5に基づいて説明する。ここで、第2実施形態では、一部構成以外は、前述した第1実施形態と全く同じである。そのため、第1実施形態に関する明細書および図面に示す100番台の符号を200番台の符号に読み替えることによって、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0043】
本発明の第2実施形態に係るチェーンガイド200では、
図4および
図5に示すように、分割片部225(取付部222)が、チェーン走行方向の上流側および下流側の両方で、下方に屈曲して裏面側に延びるように形成されている。これにより、取付部222を形成する前のベース部材220(平面上に展開した状態)の幅を、案内シュー210支持のための幅以内に収めることが可能となり、さらに材料の無駄も少なく、製造コストを低減することができる。
【0044】
次に、本発明の第3実施形態に係るチェーンガイド300について、
図6および
図7に基づいて説明する。ここで、第3実施形態では、一部構成以外は、前述した第1実施形態と全く同じである。そのため、第1実施形態に関する明細書および図面に示す100番台の符号を300番台の符号に読み替えることによって、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0045】
本発明の第3実施形態に係るチェーンガイド300では、
図6および
図7に示すように、分割片部325(取付部322)が、チェーン走行方向の上流側および下流側の両方で、上方に屈曲して表面側に延びるように形成されている。
【0046】
次に、本発明の第4実施形態に係るチェーンガイド400について、
図8〜10に基づいて説明する。ここで、第4実施形態では、一部構成以外は、前述した第1実施形態と全く同じである。そのため、第1実施形態に関する明細書および図面に示す100番台の符号を400番台の符号に読み替えることによって、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0047】
本発明の第4実施形態に係るチェーンガイド400では、
図8〜10に示すように、ベース部材420にT字状のスリット424が形成されている。このT字状のスリット424は、
図10に示すように、ベース部材420の長手方向の中間部において、チェーン走行方向に沿って延びる走行方向スリット424aと、走行方向スリット424aの長手方向の中央部からベース部材420の幅方向の一側縁まで、幅方向に沿って延びる幅方向スリット424bとから構成されている。幅方向スリット424bの両端(両終点部)には、
図10に示すように、肉ヌスミ部426が形成されている。
【0048】
ベース部材420は、
図8〜10に示すように、スリット424によって幅方向に区分され、その長手方向の中間部を支持部として中央側に向けて片持ち梁状に延びる2つの分割片部425を有している。各分割片部425は、
図8および
図9に示すように、幅方向におけるベース部材420の一側縁において、シュー支持部421に支持される案内シュー410より外側位置に形成されている。分割片部425の先端には、その先端を屈曲して丸めた管状孔部423が設けられている。この管状孔部423は、ボルト等の取付軸(図示しない)を挿通させるためのものであり、この管状孔部423を有する分割片部425が、エンジンブロックにチェーンガイド400を取り付けるための取付部422として機能する。
【0049】
本実施形態では、取付部422が、
図8および
図9に示すように、チェーン走行方向の上流側では表面側に、下流側では裏面側に延びるように形成されている。なお、
図8および
図9の図示右方向がチェーン走行方向の上流側、左方向がチェーン走行方向の下流側とし、走行案内部411のチェーン走行面側が表面側、その反対面が裏面側とした。
【0050】
このようにして得られた第4実施形態に係るチェーンガイド400では、第1実施形態における効果に加えて、分割片部425がベース部材420の長手方向の中間部を起点に設けられたスリット424により幅方向に分割されていることにより、ベース部材420の長手方向端部においてシュー支持部421の幅が狭くなることを回避することができるとともに、分割片部425を屈曲して取付部422を形成した際に、中央部のシュー支持部421の幅が狭くなりベース部材420が全体的に弾性変形しやすくなるため、走行するチェーンを弾性的に支持して振動や衝撃を吸収することが可能となる。
【0051】
次に、本発明の第5実施形態に係るチェーンガイド500について、
図11および
図12に基づいて説明する。ここで、第5実施形態では、一部構成以外は、前述した第4実施形態と全く同じである。そのため、第4実施形態に関する明細書および図面に示す400番台の符号を500番台の符号に読み替えることによって、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0052】
本発明の第5実施形態に係るチェーンガイド500では、
図11および
図12に示すように、分割片部525(取付部522)が、チェーン走行方向の上流側および下流側の両方で、下方に屈曲して裏面側に延びるように形成されている。これにより、取付部522を形成する前のベース部材520(平面上に展開した状態)の幅を、案内シュー510支持のための幅以内に収めることが可能となり、さらに材料の無駄も少なく、製造コストを低減することができる。
【0053】
次に、本発明の第6実施形態に係るチェーンガイド600について、
図13〜15に基づいて説明する。ここで、第6実施形態では、一部構成以外は、前述した第1実施形態と全く同じである。そのため、第1実施形態に関する明細書および図面に示す100番台の符号を600番台の符号に読み替えることによって、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0054】
本発明の第6実施形態に係るチェーンガイド600では、
図13〜15に示すように、ベース部材620の長手方向両端に、各2本のスリット624が形成されている。各スリット624は、ベース部材620の長手方向端部を起点して内側に向けてチェーン走行方向に沿って延びている。スリット624の終点部には、
図15に示すように、肉ヌスミ部626が形成されている。
【0055】
ベース部材620は、
図13〜15に示すように、その長手方向両端に、スリット624によって幅方向に区分された2つの分割片部625をそれぞれ有している。各分割片部625は、
図13〜15に示すように、幅方向におけるベース部材620の両側縁において、シュー支持部621に支持される案内シュー610より外側位置に形成されている。分割片部625の先端には、その先端を屈曲して丸めた管状孔部623が設けられている。この管状孔部623は、ボルト等の取付軸(図示しない)を挿通させるためのものであり、この管状孔部623を有する分割片部625が、エンジンブロックにチェーンガイド600を取り付けるための取付部622として機能する。
【0056】
本実施形態では、取付部622が、
図13および
図14に示すように、チェーン走行方向の上流側では表面側に、下流側では裏面側に延びるように形成されている。なお、
図13および
図14の図示右方向がチェーン走行方向の上流側、左方向がチェーン走行方向の下流側とし、走行案内部611のチェーン走行面側が表面側、その反対面が裏面側とした。
【0057】
このようにして得られた第6実施形態のチェーンガイド600では、第1実施形態における効果に加えて、分割片部625が長手方向の同じ位置の幅方向に複数形成されていることにより、幅方向に平行に複数の取付部622を形成し、実質的に広い幅の取付部622とすることが可能となるため、エンジンブロックに取り付けた時の安定性がさらに向上する。
【0058】
次に、本発明の第7実施形態に係るチェーンガイド700について、
図16および
図17に基づいて説明する。ここで、第7実施形態では、一部構成以外は、前述した第6実施形態と全く同じである。そのため、第6実施形態に関する明細書および図面に示す600番台の符号を700番台の符号に読み替えることによって、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0059】
本発明の第7実施形態に係るチェーンガイド700では、
図16および
図17に示すように、分割片部725(取付部722)が、チェーン走行方向の上流側および下流側の両方で、下方に屈曲して裏面側に延びるように形成されている。これにより、取付部722を形成する前のベース部材720(平面上に展開した状態)の幅を、案内シュー710支持のための幅以内に収めることが可能となり、さらに材料の無駄も少なく、製造コストを低減することができる。
【0060】
以上説明した各実施形態は、本発明に係るチェーンガイドの具体例であるが、本発明に係るチェーンガイドはこれらに限定されるものではなく、各構成部材の形状、位置、寸法、配置関係等、様々な変形が可能であり、各実施形態の各構成部材の形状を適宜組み合わせてもよい。
例えば、分割片部(取付部)の形成位置についても、上記の第1〜7実施形態以外にも様々な実施態様が考えられ、例えば、
図18(a)に示すように、スリット824によってベース部材820の長手方向の各両端を3つの片に幅方向に分割し、各両端における3つの片のうち真ん中の片を分割片部825(取付部822)として利用する例や、
図18(b)に示すように、スリット824によってベース部材の長手方向の中間部を3つの片に幅方向に分割し、3つの片のうち両外側の片を分割片部825(取付部822)として利用する例や、
図18(c)に示すように、スリット824によってベース部材の長手方向の中間部を3つの片に幅方向に分割し、3つの片のうち真ん中の片を分割片部825(取付部822)として利用する例などが挙げられる。また、分割片部を延ばし取付部を形成する方向(表面側または裏面側)についても、実施形態に応じて任意に決定すればよい。
また、前述の各実施形態は、タイミングシステムを有するエンジン内に設けられるものであるが、これに限定されず様々な機器類に適用可能である。
また、チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、種々の産業分野において利用可能である。
また、上述した第1〜7実施形態の各構成を、任意に組み合わせてチェーンガイドを構成しても何ら構わない。