特許第5959483号(P5959483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イービー アイピー ライブリド ビー.ブイ.の特許一覧

特許5959483女性性的機能不全の処置におけるテストステロンを含む薬剤の組み合わせ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959483
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】女性性的機能不全の処置におけるテストステロンを含む薬剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/568 20060101AFI20160719BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20160719BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20160719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   A61K31/568
   A61K31/4985
   A61P15/00
   A61P43/00 121
   A61K9/20
   A61K47/40
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-169079(P2013-169079)
(22)【出願日】2013年8月16日
(62)【分割の表示】特願2008-539947(P2008-539947)の分割
【原出願日】2006年11月10日
(65)【公開番号】特開2013-241463(P2013-241463A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2013年9月12日
(31)【優先権主張番号】05077577.4
(32)【優先日】2005年11月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515113190
【氏名又は名称】イービー アイピー ライブリド ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】トゥイテン ジャン ヨハン アドリアーン
(72)【発明者】
【氏名】ブローメールズ ヨハネス マルティナス マリア
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2003/011300(WO,A1)
【文献】 特表2005−500347(JP,A)
【文献】 特表2002−543128(JP,A)
【文献】 特表2003−530304(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/007166(WO,A1)
【文献】 特表2007−516949(JP,A)
【文献】 特表2001−520999(JP,A)
【文献】 特表2004−520320(JP,A)
【文献】 特表平11−504902(JP,A)
【文献】 特表2003−530430(JP,A)
【文献】 Arch Gen Psychiatry,2000年,Vol.57,pp.149-53
【文献】 Abdulmaged M.Traish et al,Drug Discovery Today: Disease Mechanisms,2004年,1(1),p.91-97
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/568
A61K 31/4985
A61K 9/20
A61K 47/40
A61P 15/00
A61P 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性性的機能不全治療剤の調製におけるテストステロン若しくは同種の活性を有するその類似体およびタダラフィルの組み合わせの使用
ここで、該治療剤は、該タダラフィルが経口で、および該テストステロン若しくはその類似体が舌下で、頬粘膜(buco-mucosally)でまたは鼻腔内で、女性性的機能不全を患う患者に同時または別々に投与されるように、且つ該タダラフィルが、該テストステロンまたはその類似体の前または本質的に同時に放出されるように用いられることを特徴とする
【請求項2】
該治療剤が、テストステロン若しくはその類似体およびタダラフィルが互いに30分以内に放出されるように用いられることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
該治療剤が、タダラフィルが、テストステロンまたはその類似体の2〜14時間前に放出されるように用いられることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項4】
該治療剤が、テストステロンまたはその類似体が、それが投与された患者の血液循環中にテストステロンまたはその類似体の短時間のピークが認められるように供給されるように用いられることを特徴とする求項1乃至3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
該治療剤が、テストステロンまたはその類似体が、予測される性的活動に3〜5.5時間先行して放出されるように用いられることを特徴とする求項1乃至4のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
該治療剤が、テストステロン若しくはその類似体およびタダラフィルが、単一製剤にて提供されるように用いられることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
該治療剤が、テストステロン若しくはその類似体を含んだ少なくとも一つの薬学的組成物およびタダラフィルを含んだ少なくとも1つの薬学的組成物を含む、請求項1乃至5のいずれか一項記載の使用。
【請求項8】
テストステロン若しくはその類似体が、シクロデキストリンと共に製剤化されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項記載の治療剤。
【請求項9】
タダラフィルが経口で、およびテストステロン若しくはその類似体が舌下で、頬粘膜(buco-mucosally)でまたは鼻腔内で、女性性的機能不全を患う患者に、同時または別々に投与されるように、且つ該タダラフィルが、該テストステロンまたはその類似体の前または同時に出されるように用いられることを特徴とするテストステロン若しくはその類似体、およびタダラフィルを組み合わせてなる女性性的機能不全治療剤
【請求項10】
該治療剤が、テストステロン若しくはその類似体、およびタダラフィルが互いに30分以内に放出されるように用いられることを特徴とする、請求項9記載の治療剤。
【請求項11】
該治療剤が、タダラフィルが、テストステロンまたはその類似体の2〜14時間前に放出されるように用いられることを特徴とする、請求項9記載の治療剤。
【請求項12】
該治療剤が、テストステロンまたはその類似体が、それが投与された患者の血液循環中にテストステロンまたはその類似体の短時間のピークが認められるように処方されることを特徴とする、請求項9乃至11のいずれか一項記載の治療剤
【請求項13】
該治療剤が、テストステロンまたはその類似体が、予測される性的活動に3〜5.5時間先行して放出されるように用いられることを特徴とする、請求項9乃至12のいずれか一項記載の治療剤。
【請求項14】
該治療剤が、テストステロン若しくはその類似体、およびタダラフィルが、単一製剤にて提供されるように用いられることを特徴とする、請求項9乃至13のいずれか一項記載の治療剤。
【請求項15】
該治療剤が、テストステロン若しくはその類似体を含んだ少なくとも一つの薬学的組成物、およびタダラフィルを含んだ少なくとも1つの薬学的組成物を含む、請求項9乃至13のいずれか一項記載の治療剤。
【請求項16】
テストステロン若しくはその類似体シクロデキストリンと共に製剤化されていることを特徴とする、請求項9乃至15のいずれか一項記載の治療剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性性的機能不全の分野に関する。本発明は、具体的には、女性性的機能不全(女性性的興奮障害(FSAD)または女性性的欲求障害(FSDD)などの)を伴う女性被験者における性的健康に対するテストステロンまたはその類似体およびタダラフィルの組み合わせの影響に関する。本発明はさらに、テストステロンまたはその類似体および平滑筋収縮を少なくとも部分的に阻害できる化合物、例えば、アドレナリン作動性の緊張を少なくとも部分的に阻害できる化合物の組み合わせの影響に関する。本発明はさらに、女性性的機能不全の処置における他の組み合わせ療法を開示する。
【背景技術】
【0002】
女性性的機能不全(FSD)は、性的活動における関心の欠乏、性的興奮に到達するまたは維持することの度重なる失敗、十分な興奮の後にオルガズムに到達することができないことを含む、性的機能のさまざまな妨害または機能障害を指す。最近の研究では、アメリカ合衆国において、女性の43%が性的機能不全を患うと推定された1。低い性的欲求(22%有病率)および性的興奮問題(14%有病率)は、女性の性的機能不全の最も一般的な部類に属する。これらの部類は、研究者およびセラピストに対し仮の定義および許容される用語集を提供するうえで便利である。しかしながら、これらの障害が、互いに完全に独立であると推測するのは、間違いである可能性がある。症例研究および疫学的研究の両方から、これらの障害が重複し、かつ相互依存しうることが明らかである。症例によっては、他方の障害をもたらした一次障害を同定することが可能でありうるが、多くの症例においては、これは不可能といってよい。
【0003】
いくつかの研究において、選択的5型ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害剤は、勃起機能不全を伴う男性において、平均してほぼ正常な機能まで、勃起機能を改善することが示されている15。陰茎において、神経および内皮細胞から放出される一酸化窒素(NO)が、環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生を誘導する。cGMPは勃起の誘導に必要な、平滑筋を弛緩させるうえで重要な機構である。このヌクレオチドは、ホスホジエステラーゼによって加水分解され、陰茎海綿体における主な活性はPDE5によるものである。したがって、性的刺激の間、勃起機能に対するNO/cGMPの作用は、PDE5-阻害剤によって高められると思われる。両性の性器は共通の発生起源を有する。最近では、陰核が、前膣壁を包埋する勃起組織複合体からなることが示されている(O'connel et al 1998)。陰核勃起および膣の前壁は、女性の性的興奮および反応に大いに関与する。最近では、シルデナフィル-PDE5阻害剤が、性的に機能的な女性において性行為の実行を改善することが示されている。さらに、ラット陰核の平滑筋の弛緩および充血は、陰茎勃起におけるのと同じ細胞内および細胞外機構によって引き起こされることが最近になって見出されている(Gragasin, et al., 2004)。
【0004】
男性でも女性でも共に、同様の特殊な血管機構が性器反応に関与するものの、膣パルス振幅(VPA)の増大が勃起に等価なものと考えることはできない。勃起に必要だが十分ではない条件は、動脈の拡張およびその結果生じる血液流入の増大である。陰茎中には、小さな不規則な区画(血管空間)を含む体(陰茎海綿体(2つ)および尿道海綿体(1つ))が存在する。海綿体類洞壁(cavernous sinusoidal wall)における平滑筋は、活動交感神経(アドレナリン作動性)の緊張の制御下で、通常は緊張性に収縮する。体の海綿体平滑筋の弛緩は、血液を伴う区画の充填および拡大を引き起こし、勃起を伴うと思われる。正確な機構は不明であるが、交感神経支配および副交感神経により駆動されるNANC (非コリン作動性非アドレナリン作動性)神経支配(一酸化窒素)は、共に身体の平滑筋の弛緩における主たるメディエータであると考えられている。陰茎において、血管の交感神経支配はまばらであるのに対し、小柱の平滑筋はこの系によって十分に神経支配されている。対照的に、陰茎の血管は副交感神経系によって十分に神経支配されているのに対し、この系による小柱の平滑筋の神経支配はまばらである。その結果として、勃起の発生に関わる過程に及ぼす末梢神経系のこれら2つの部分の比較的独立した作用が存在する。陰茎動脈の拡張の開始およびそれに続く海綿体組織への血流の増加は、副交感神経系によって調節される(このコリン作動性活動の増大の開始は脳によるシグナルに依存する)。しかしながら、平滑筋の弛緩なしに、勃起はないと考えられる。交感神経の緊張の低減およびその結果として起こる平滑筋の弛緩は、勃起の開始に対して比較的独立した必要条件であるように思われる。このように、陰茎勃起は仙骨副交感神経支配の活動増大および交感神経経路の活動低下に反応して起こる。陰茎において、NANC神経および内皮細胞から放出される一酸化窒素(NO)は、環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生を誘導する。cGMPは勃起の誘導に必要な、平滑筋を弛緩させるうえで重要な機構である。NOの産生および放出は、例えば、同じ節後交感神経節によって媒介される副交感神経枝の異所性阻害の、結果的な低減を通じた交感神経枝の活動の低下によって影響を受ける可能性がある。
【0005】
女性性的障害の処置のため、成功の程度の差はあれども、いくつかの異なる処置が提案されかつ適用されている。これらの処置は完全に成功していないか、または副作用がとても許容されないかのいずれかである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、好ましくは特定の好都合な投与量スキームにおいて与えられる、治療的物質の複数の新たな組み合わせであって、有効でありかつ重篤な副作用を及ぼさない組み合わせを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
したがって、本発明は、テストステロンまたはその類似体およびタダラフィルが本質的に同時に放出され、かつ前記テストステロンまたはその類似体が、それが投与された被験者の血液循環中にテストステロンまたはその類似体のピークが認められるように供給される、女性性的機能不全の処置のための薬物の調製における、テストステロンまたはその類似体およびタダラフィルの組み合わせの使用を提供する。本発明のこの部分によれば、理論によって束縛されるとは考えないが、中枢神経系および末梢系に及ぼす効果が必要であり、それによってテストステロンまたはその類似体(同種の活性を有する)は中枢系へのシグナルをもたらし、かつタダラフィルは末梢シグナルをもたらす。本発明によれば、遊離テストステロンのレベルは、少なくとも約0.010 nmol/Lの遊離テストステロンのピーク血漿レベルとなるはずであり、これは典型的にはテストステロンの投与から1〜20分後に生じると考えられる。この血漿テストステロンピークから約3時間半〜5時間半後に、テストステロン効果のピークがあり、すなわち、性的に機能的な女性における性器興奮に及ぼすテストステロンの効果には時間的ずれがある。最近まで、タダラフィルは、FSDの処置において少なくとも部分的に有効であるようにテストステロンの数時間後に投与されるべきであると考えられていた。しかしながら、今回、テストステロンまたはその類似体およびタダラフィルは、本質的に同時に放出されてもよい(タダラフィルの効果およびテストステロンの効果の重複をもたらす)こと、ならびにこれがFSDの処置をもたらすことが開示される。
【0008】
「本質的に同時に」という用語は、好ましくはテストステロンまたはその類似体およびタダラフィルが、互いに30分以内に、好ましくは25〜30分以内に、より好ましくは20〜25分以内に、さらにより好ましくは15〜20分または10〜15分以内に処置された被験者の体内に放出されること、ならびに最も好ましくはこれら2つの化合物が互いに5〜10分以内に被験者の中で放出されることを意味すると理解されるべきである。
【0009】
テストステロンまたはその類似体の製剤に応じておよびタダラフィルの製剤に応じて、さまざまな可能性がある。例えば、テストステロン(またはその類似体)およびタダラフィルは共に、それらが本質的に同時に、例えば互いに30分以内に放出されるような方法で投与から2〜3時間(例えば2時間)後に活性化合物の放出(すなわち遅延放出)をもたらすよう処方される。テストステロン(またはその類似体)およびタダラフィルがそのような方法で処方される場合、その製剤は性的活動に先立ち、少なくとも3時間〜4時間半に加えて放出時間(この例では2時間)で服用されなければならない。性的活動に使われる/供される時間の量に応じて、製剤投与の的確な瞬間にばらつきがありうることは当業者に明らかである。これらの差異は本発明に包含される。しかしながら、テストステロン(またはその類似体)およびタダラフィルを、それらが投与後すぐ本質的に共に放出されるように処方することも可能である。このような場合には、その製剤は性的活動のおよそ3時間〜4時間半前に服用されなければならない。さらに、テストステロン(またはその類似体)およびタダラフィルは別々に処方されてもよく(この場合その製剤は同時にもしくは後に服用されてもよく)、またはそれらの化合物は1つのおよび同じ製剤に処方されてもよく、この場合それらの化合物は同時に服用される。種々の変更が製剤になされてもよく、それらは全て本発明の範囲内であることが、当業者には明らかなはずである。好ましい態様において、テストステロン(またはその類似体)およびタダラフィルは同時に投与または服用され、それによりそれらの製剤の一方を(全くまたは時間内に)服用することを忘れる危険性を減らし、その結果、有効な処置の修正を高められる。しかしながら、処置される女性被験者が服薬に関して非常に厳密である場合、テストステロン(またはその類似体)およびタダラフィルは時間内に別々に服用されてもよいことは明らかである。上記の態様において、活性成分(すなわちタダラフィルおよびテストステロン)の放出は、それらが本質的に同時に放出されるように注意が払われねばならない。
【0010】
本発明者らは、今やタダラフィルの効果が12〜36時間持続することを知っていることから、初めにタダラフィルを放出し、その後にテストステロンを放出することも可能である。好ましくは、テストステロンは、タダラフィルの効果が低下し始める前の最後の3時間〜4時間半で放出され、これはおよそ12〜24時間後である。
【0011】
それ故に、さらに別の態様において、本発明は、タダラフィルがテストステロンまたはその類似体の前に被験者中に放出または投与され、かつ前記テストステロンまたはその類似体が、それが投与された被験者の血液循環中にテストステロンまたはその類似体のピークが認められるように供給される、FSDの処置のための薬物の調製におけるテストステロンまたはその類似体およびタダラフィルの組み合わせの使用を提供する。好ましくは、タダラフィルはテストステロンまたはその類似体の2〜14時間前に、より好ましくは4〜12時間前におよび最も好ましくは6〜10時間前に放出される。そのような手法は午前中の性的活動に非常に有用である。所望の性的活動の前の晩、タダラフィルは、これが投与後にまたは例えば1時間以内に放出されるような製剤中で投与/服用される。テストステロンは、これが6〜10時間後に放出されるように供給される。この放出は3時間〜4時間半後に、問題の女性が覚醒し、性的活動に刺激を与えられるように整えられる。
【0012】
テストステロンは、これが投与された被験者の血液循環中に(短時間の)(高い、すなわち正常なテストステロン血清レベルの10〜100倍大きい)テストステロンのピークが認められる製剤中で与えられることが好ましい。「短時間の」という用語は、血清テストステロンレベルの急増が認められ、かつ投与からおよそ1〜20分後にテストステロンのピーク血清レベルが得られることを意味する。ピーク血清レベルは急激に減少し、およそ120分後にテストステロン血清レベルはテストステロン投与前のレベルに戻る。そこで本発明は、テストステロンまたはその類似体が舌下製剤、好ましくはシクロデキストリンを担体として含んだ舌下製剤の形態で供給される使用を提供する。適当な投与経路の別の例は、頬粘膜(buco-mucosally)または鼻腔内であり、これはシクロデキストリン製剤または他の通常の賦形剤、希釈剤などの使用によって行われてもよい。製剤の典型的な例としてはヒドロキシプロピル-βシクロデキストリンが挙げられるが、他のβシクロデキストリンおよび他の通常の賦形剤、希釈剤などは、1度の短い破裂で本質的に全てのテストステロンを放出する、テストステロンまたはその類似体を含んだ製剤を調製するための技術分野の技術の範囲内である。前記破裂は通常、投与後すぐの短い時間間隔の範囲内(例えば60〜120秒の範囲内、より好ましくは60秒の範囲内)にあり、約1〜20分後にテストステロンの血中ピークレベルをもたらすと考えられる。好ましい態様において、調合薬は舌下投与向けにデザインされ、さらに好ましくは、前記組成物はヒドロキシプロピル-βシクロデキストリンなどのシクロデキストリンを含む。調製されるテストステロンサンプル(テストステロン0.5 mgの場合)の典型的な例は、テストステロン0.5 mg、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(担体) 5 mg、エタノール5 ml、および水5 mlからなるが、これらの物質の量の各々は、もっと多くてもまたはもっと少なくてもよい。
【0013】
循環血液中のテストステロンは通常、SHBG (ステロイドホルモン結合グロブリン)によっておよびアルブミンによって結合されている。本発明において定義されるテストステロンのピーク血漿レベルが、遊離テストステロン、つまりアルブミンおよびSHBGによって結合されていない画分として存在し計算されることが重要である。したがって、与えられるテストステロンの用量は、アルブミンおよびSHBGを飽和するのに十分に高くあるべきであり(すなわち、テストステロンの濃度は、SHBGもしくはアルブミンによるテストステロンとの完全な結合に勝るのに十分に高くなければならない)、またはSHBG上のテストステロン結合部位に対する競合物の使用のような、アルブミンもしくはSHBGへの結合を回避する別の方法がデザインされなければならない。
【0014】
本発明の場合、選択の投与経路は最も侵襲性の低い(例えば経口の、頬粘膜の(buco-mucosal)または鼻腔内の)経路である。性的行動に対する意欲は、侵襲性の投与経路によって悪影響を受けるべきではない。
【0015】
本発明は同様に、テストステロンまたはその類似体を含んだ少なくとも1つの薬学的組成物およびタダラフィルを含んだ少なくとも1つの薬学的組成物を含む、部分品のキットであって、前記組成物の投与に関する使用説明書をさらに含むキット、好ましくは前記組成物を本質的に同時に投与するための使用説明書を含むキットまたはタダラフィルを初めに投与し、かつテストステロンをその後に投与するための使用説明書を含むキットを提供する。
【0016】
好ましい態様において、テストステロンを含んだ前記組成物は、標的部位で本質的に即座に(例えば、60秒以内に)全てのテストステロンを放出するようにデザインされる。前記キットは、好ましくは、性的活動の3.5〜4.5時間前にテストステロンを含んだ薬学的組成物およびタダラフィルを含んだ薬学的組成物を使用するための使用説明書を含む。部分品のキットが有効量の各活性成分を含むことは当業者には明らかである。部分品のキットは、テストステロンまたはその類似体の舌下製剤およびタダラフィルを含んだ錠剤または別の製剤を含むことができる。テストステロンを含んだ薬学的組成物あたりのテストステロンの量は、少なくとも0.3 mgのテストステロンおよび多くとも2.5 mgのテストステロンである。処置される被験者の体重ならびにアルブミンおよびSHBGレベルに応じて、もっと高いまたはもっと低い用量が必要となりうる。タダラフィルを含んだ薬学的組成物は、少なくとも5 mgのタダラフィルおよび多くとも20 mgのタダラフィルを含む。この場合もやはり、この用量は患者の体重によって異なりうる。すでに上述した理由のため、本発明によるキットは、SHBG結合でテストステロン(またはその類似体)と競合できる化合物をさらに含むことができる。
【0017】
テストステロンは17-β-ヒドロキシアンドロスト-4-エン-3-オンという化学名で公知でもあり、さまざまな方法で得ることができる。すわなち、テストステロンは自然から単離し精製してもよく、または任意の様式で合成的に産生されてもよい。「またはその類似体」という用語は、テストステロンの任意の有用な代謝体または前駆体、例えば、代謝体のジヒドロテストステロンを含む。テストステロンの代謝体が使用される場合、本明細書において記述されている時間枠に若干の変更があるかもしれないが、このことは過度の負担なく当業者によって容易に確定されうる。
【0018】
タダラフィルは、ピラジノ[1',2':1,6]ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン, 6-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-, (6R,12aR)-と化学的に命名される。活性成分であるタダラフィルに加えて、各錠剤は以下の成分: クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、酸化鉄、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、滑石、二酸化チタン、およびトリアセチン、を含有する。すでに上述したように、錠剤はそのまま服用されてもよく、または例えば徐放製剤で処方される。
【0019】
本発明の部分品のキットの効果をさらに高めるため、このキットは、認知的介入および刺激のための手段をさらに含むことができる。そのような情報は任意のデータ担体(紙、CD、DVD)で存在してもよく、受動的もしくは双方向的であってもよく、またはそれは前記の認知に関する刺激の目的で少なくとも部分的にデザインされたウェブサイトへのリンクであってもよい。場合によっては、前記の認知に関する刺激の情報を無意識的に、例えば潜在的に提示することが好ましい。
【0020】
本発明のキットの効果をさらに高めるため、被験者における中脳辺縁のドーパミン作動性経路を刺激する物質が前記キットに加えられてもよい。この経路は、性的行動に関わる報酬探索の増大をもたらすのに役立つ、比較的異なる種類の報酬系に関係している。そのような化合物の例は、アポモルフィン、つまりドーパミンD2アゴニスト; アリピプラゾール、つまり部分的ドーパミンD2アゴニスト; ペルゴリド、つまり非選択的ドーパミン(DA)アゴニスト; プラミペキソール、つまりD2およびD4受容体と比較してD3受容体に選択性を有する新しいドーパミン受容体アゴニスト; ブロモクリプチン、つまり非選択的ドーパミン(DA)アゴニスト; 塩酸ロピニロール、つまりD2およびD3ドーパミン受容体サブタイプで比較的高いインビトロの特異性および完全な固有活性を有する非エルゴリンドーパミンアゴニスト、これはD2またはD4受容体サブタイプに対してよりもD3受容体サブタイプに対して高い親和性で結合する; ロキシンドール、つまり強力な(自己受容体)「選択的」D3ドーパミンアゴニスト; カベルゴリン、つまりドーパミンD2アゴニスト; リスリド、つまり非選択的ドーパミン(DA)アゴニスト、および自己受容体アンタゴニスト; (+)-AJ 76、つまりD3選択性のドーパミン(DA)自己受容体アンタゴニスト; (+)-UH232、つまりドーパミン神経末端の自己受容体に選択的に拮抗できるドーパミン伝達の刺激物、および再取り込み遮断薬; ブプロピオン、つまりノルエピネフリン、セロトニンおよびドーパミンのニューロンへの取り込みの阻害剤; アミネプチン、つまり(相対的に)選択的なドーパミン再取り込み阻害剤; GBR 12909(バノキセリン)、つまりドーパミン再取り込み阻害剤; ならびにアマンタジン; NMDA受容体アンタゴニストおよびドーパミン再取り込み阻害剤、である。
【0021】
本発明のキットの効果をさらに高めるため、中枢および末梢のアドレナリン作動性の緊張を阻害する、すなわち、中枢および末梢の細胞外ノルエピネフリン濃度を阻害するかまたは抑制する物質が(任意で)添加されてもよい。中枢神経系に位置するα2アドレナリン受容体の活性化は、交感神経系の緊張の阻害をもたらす。そのような化合物の例は、クロニジン、つまりα2アドレナリン受容体アゴニスト; イミダゾリン、つまり部分的α2アドレナリン受容体アゴニスト; およびデクスメデトミジン、つまりα2アドレナリン受容体アゴニスト、である。末梢でのα1アドレナリン受容体の拮抗作用は、アドレナリン作動性の緊張の作用(ノルエピネフリン)を遮断する。そのような化合物の例は、プラゾシン、チモキサミン(モキシシリト)、NMI-870、HMP12またはフェントラミン、である。
【0022】
性的欲求の低下、性的興奮の問題およびオルガズムの妨害は、精神薬理学的処置の候補である。これらの部類の性的問題は、比較的無関係な神経伝達機能によって調節される、ヒトの性的反応の3つの(移行および重複)期(性的欲求、性的興奮およびオルガズム)とも関連している。伝統的に、動機付けされた行動は、欲求および完了要素に分けられている。報酬および満足を得ることを目的とした活動は、欲求要素に属する。基本的な欲求動機付けの過程は内因性の脳機能であり、報酬に対する刺激の予測値に特に関係する。動機となって関連する情報(すなわち、報酬を予測する刺激)の処理は、中脳辺縁ドーパミン系の一要素である中脳-側坐核(meso-accumbens)ドーパミン作動(DA)系(すなわち、側坐核(NAS)を神経支配する腹側被蓋野(VTA)のDAニューロン)の活動の増大を引き起こす。性交に関係する報酬を予想する場合、この系の活動は、柔軟性のあるアプローチ行動の間に増大する2。これらのドーパミン作動性経路の活動の増大によって、性的動機、とりわけ予想的な性的行動が促進される3。アリピプラゾールは、中でも、ドーパミン作動性経路に影響を与える薬物の一例であり、これをテストステロンまたはその類似体およびPDE5阻害剤と組み合わせて使用し、性的動機および行動に影響を及ぼすことができる。アリピプラゾールは、ドーパミンD2受容体およびセロトニン5-HT1a受容体の高親和性部分的アゴニストであり、かつ5-HT2a受容体のアンタゴニストである。アリピプラゾールは、これがいっそう高い親和性を有する、D2受容体、とりわけシナプス前D2受容体でのその部分的アゴニスト作用に起因するドーパミン系安定剤として記述されている。ドーパミン神経末端に位置する自己受容体の刺激は、ドーパミン合成および放出の阻害を引き起こす。したがって、中脳-側坐核DA系の低ドーパミン作動性状態においては、アリピプラゾールは、シナプス前D2受容体に拮抗し、VTAにおけるNASに投射する(NAS-projecting)DA核を自己阻害から解放すると考えられる。内側前頭前皮質(mPFC)は行動阻害を媒介する。mPFC中のドーパミンは行動阻害において重要な役割を果たす。mPFC-DAの阻害的役割の実例は中脳-側坐核DA系の阻害であり、すなわち細胞外で高濃度のmPFC-DAにより中脳-側坐核DA活動が阻害され、かつ細胞外で低濃度のmPFC-DAにより脱抑制を通じて中脳-側坐核DA活動が活性化される。故に、FSDにおけるドーパミン作動性の役割は中脳-側坐核DAに制限されるのではなく、mPFC-DAに拡張可能であり、この場合にはFSDの症候が、側坐核DAの阻害を介してかまたはFSADに関与するその他の認知もしくは情動因子の阻害を介してではあるが、高活動のmPFC-DAで増強されると考えられる。その次に、アリピプラゾールの部分的アゴニスト作用は、mPFCにおけるシナプス前D2受容体の受容体活性化作用を通じてFSD (総体症状)の軽減に良い効果をもたらし、それによってこの領域におけるDA放出を阻害すると考えられる。性的報酬の予測は性器の興奮をもたらすはずであり、これには少なくとも3つの重要な神経伝達物質である、アセチルコリン、ノルエピネフリンおよび一酸化窒素が関与している。アセチルコリンおよび一酸化窒素は共に、男性での勃起ならびに女性での膣潤滑および膨潤を促進する。ノルエピネフリンは男性での勃起ならびに女性での膣潤滑および膨潤を阻害する。オルガズム、つまりヒトの性的反応の完了期は、下行脊髄ノルアドレナリン作動性線維(descending spinal noradrenergic fiber)および性器の神経支配により促進され、下行脊髄セロトニン作動性線維(descending spinal serotonergic fiber)により阻害される。
【0023】
部分品のキットは、心理学的もしくは生理学的原因またはその組み合わせを介するものであるとしても、任意の形態のFSDを患う任意の個体に有用である。したがって、SSRI類などのその他の薬剤および/または薬物が原因でFSDを有する被験者、性腺機能低下症などを患う被験者にも有用である。
【0024】
タダラフィルと併用されたテストステロンの服用を伴う処置により、性的刺激、性器興奮および可能な主観的体験の間の明らかな関連の学習を作ると思われる、脳および身体の機能の変化がもたらされる。さらに、テストステロンおよびタダラフィルの組み合わせによるFSDの処置は、好ましくは「アプローチ誘導」処置によって増強される。より恒久的な心理的変化を生み出すため、性的関連刺激の下でテストステロンおよびタダラフィルによって活性化された中枢および身体の過程が認知される必要があり、かつ前向きの快楽的気分(positive hedonic tone)または行動的アプローチ系の活性化と関連付けられるようになる必要がある。性器興奮に注意を集中することによる身体反応の認知は、テストステロンによって可能になり(それによって性器興奮はタダラフィルにより相乗的に高められる)、口頭指示によって強調されうる。前向きの快楽的気分は、FSD患者群において当然と考えることはできない。前向きの気分を達成するため、患者は薬物の有効期の間に(すなわち、テストステロン摂取から少なくとも3時間後に)正の刺激に曝露されうる。これらの積極的に動機付けされる刺激は、おそらく配偶者の顔を含めて、患者の性的に好ましい性別の人物の幸せな顔の像からなる。顔の像は潜在的に思い起こされ、したがって控えめに行動的アプローチ系が活性化される。
【0025】
FSDの処置は、患者が性器興奮を、前向きの快楽的気分または行動的アプローチ系の活性化と関連付けることを学習する状況を作り出すことからなってもよい。これには、(性的刺激およびタダラフィルによる)性器興奮の誘因、(テストステロンによって可能にされる)性的刺激および性器興奮への持続的注意、ならびに(幸せな顔の像の潜在的提起による)行動的アプローチ系の活性化が、必要になる。
【0026】
本発明は、女性性的機能不全を患う女性を、タダラフィルおよびテストステロンまたはその類似体の組み合わせをその女性に与えることで処置する方法をさらに提供する。
【0027】
テストステロン(またはその類似体)、および一般的にはPDE5阻害剤、および具体的にはタダラフィルの使用に加えて、少なくとも1つの他の化合物とのテストステロン(またはその類似体)の組み合わせもFSDの処置に適している。PDE5阻害剤の置き換えの1例は、広くは平滑筋収縮を少なくとも部分的に阻害できる化合物であり、好ましくはアドレナリン作動性の緊張を少なくとも部分的に阻害できる(または抑制できる)化合物である。アドレナリン作動性の緊張の阻害または抑制は、(i) アドレナリン受容体での利用可能なノルエピネフリンの量の減少(例えば、自己受容体の受容体活性化作用を通じたノルエピネフリンの合成または放出の阻害による)、および/または(ii) シナプス後アドレナリン受容体での利用可能なノルエピネフリンの効果の減少(例えば、シナプス後アドレナリン受容体の遮断による)、および/または(iii) シナプス後アドレナリン受容体活性化の効果の減少(例えば、ノルエピネフリンの下流の妨害による)をもたらすと解釈されるべきである。さらに別の態様において、本発明は故に、テストステロンまたはその類似体が投与された被験者の血液循環中にテストステロンまたはその類似体のピークが認められるようにそれが供給される、FSDの処置のための薬物の調製における、テストステロンまたはその類似体およびアドレナリン作動性の緊張を少なくとも部分的に阻害できる化合物の組み合わせの使用を提供する。好ましい態様において、アドレナリン作動性の緊張を少なくとも部分的に阻害できる前記化合物は、プラゾシン、チモキサミン(モキシシリト)、NMI-870、HMP12もしくはフェントラミンのようなα1アドレナリン受容体アンタゴニスト、またはクロニジン(α2アドレナリン受容体アゴニスト)、イミダゾリン(部分的α2アドレナリン受容体アゴニスト)もしくはデクスメデトミジン(α2アドレナリン受容体アゴニスト)のようなα2アドレナリン受容体アゴニストである。平滑筋収縮を少なくとも部分的に阻害できる化合物の例は、Rhoキナーゼアンタゴニスト、神経ペプチドYアンタゴニストまたはアンギオテンシンIIアンタゴニストである。
【0028】
テストステロン(またはその類似体)の適当な濃度および製剤は、上記の通りである。
【0029】
上記の化合物(例えば、記述したアドレナリン受容体アンタゴニスト)は、その効果がテストステロンの効果と少なくとも部分的に一致するような方法で投薬されかつ放出されなければならない、すなわち、前記化合物の効果はテストステロン(またはその類似体)の放出から3.5〜5.5時間後に存在していなければならないことが当業者には明らかである。当業者は、前記化合物の薬理動力学に基づき、前記化合物に適した製剤および適した濃度を容易に判定することができる。
【0030】
PDE5は副交感神経鎖の一部であり、PDE5の存在は平滑筋弛緩を阻害し、したがってその後に、平滑筋組織の収縮を引き起こす。PDE5阻害剤を介したPDE5の阻害は、FSDを処置できる1つの方法である。しかしながら、有機硝酸塩(例えば、グアニル酸シクラーゼ刺激剤であるニトログリセリン)、K+チャネル開口薬(例えば、BMS-2231321)、PGE1アゴニスト(例えば、アルプロスタジルもしくはプロスタサイクリンもしくは血管活性腸管ポリペプチド(VIP)アゴニスト(例えば、アビプタジル)のような化合物を用いることで、または一酸化窒素(例えば、吸入を介して)もしくはグルタミン酸L-アルギニン(NOの前駆体)を投与することで、副交感神経により駆動される応答を促進すること(すなわち、平滑筋弛緩の促進)も可能である。
【0031】
本発明は、上記の化合物(例えば、アドレナリン作動性の緊張を少なくとも部分的に阻害できるまたは抑制できる化合物)のいずれかとの組み合わせでの、バルデナフィル、シルデナフィルもしくはタダラフィルのような、PDE5阻害剤またはその他公知のPDE5阻害剤のいずれかとの組み合わせでのテストステロン(またはその類似体)の使用をさらに提供する。PDE5阻害剤の量は依然として拡大しており、非限定的な例は以下である: E-4021、E-8010、E-4010、AWD-12-217 (ザプリナスト)、AWD12-210、UK-343,664、UK-369003、UK-357903、BMS-341400、BMS-223131、FR226807、FR-229934、EMR-6203、Sch-51866、IC485、TA-1790、DA-8159、NCX-911またはKS-505a。その他の例は国際公開公報第96/26940号中に見出すことができる。
【0032】
すでに記述したように、タダラフィルを、テストステロンと同時に放出されるような方法で投与することができる。しかしながら、タダラフィルはバルデナフィルまたはシルデナフィルについて以下に記述されるように供給されてもよい。
【0033】
バルデナフィルまたはシルデナフィルは、そのピーク効果がテストステロンの効果と少なくとも部分的に重複するような方法で供給されることが好ましい。そのような重複を得るため、テストステロンが最初に供給され(好ましくは舌下製剤として)、バルデナフィルまたはシルデナフィルが、テストステロンの投与からおよそ1.5〜2.5時間後に、さらにより好ましくは血漿遊離テストステロンのピークから約3〜4時間後にCmaxが現れるように供給されることが好ましい。これは、例えば、徐放型のシルデナフィルもしくはバルデナフィルによって、または遅延放出製剤を通じて実現される。
【0034】
バルデナフィルの経口投与に対する典型的な例は、ピペラジン, 1-[[3-(1,4-ジヒドロ-5-メチル-4-オキソ-7-プロピルイミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-2-イル)-4-エトキシフェニル]スルホニル]-4-エチル-, 一塩酸塩と化学的に命名されるバルデナフィルHClにおいて与えられる。活性成分であるバルデナフィルHClに加えて、各錠剤は微結晶性セルロース、クロスポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、黄酸化鉄、および赤酸化鉄を含有する。その他の例は、1-[[3-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-1Hピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)-4-エトキシフェニル]スルホニル]-4-メチルピペラジンクエン酸塩と化学的に命名されるクエン酸シルデナフィルにおいて与えられる。活性成分であるクエン酸シルデナフィルに加えて、各錠剤は以下の成分: 微結晶性セルロース、無水第二リン酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、ラクトース、トリアセチン、およびFD & C Blue #2アルミニウムレーキを含有する。
【0035】
テストステロンを含んだ薬学的組成物あたりのテストステロンの量は、少なくとも0.3 mgのテストステロンおよび多くとも2.5 mgのテストステロンである。処置される被験者の体重ならびにアルブミンおよびSHBGレベルに応じて、もっと高いまたはもっと低い用量が必要になりうる。PDE5阻害剤を含んだ薬学的組成物は、少なくとも25 mgのシルデナフィル(もしくは5 mgのバルデナフィル、もしくは5 mgのタダラフィル)および多くとも100 mgのシルデナフィル(もしくは20 mgのバルデナフィル、もしくは20 mgのタダラフィル)、または他のPDE5阻害剤の同程度の投与量を含む。この場合もやはり、これらの用量は患者の体重によって異なりうる。すでに上述した理由のため、本発明によるキットは、SHBG結合でテストステロンまたはその類似体と競合できる化合物をさらに含むことができる。
【0036】
上記の組み合わせの化合物(例えばテストステロン(またはその類似体)およびアドレナリン作動性の緊張を少なくとも部分的に阻害できる化合物および任意でPDE5阻害剤)は都合良く部分品のキットとして一緒に包装され、好ましくは別個の(または一体の)化合物を投与する方法および時間に関する使用説明書と共に、部分品のキットとして一緒に包装されてもよい。
【0037】
そのようなキットは、十分な性的刺激に適した条件の間に性器興奮に注意を向ける認知的介入のための手段、または患者の性的に好ましい性別の人物の幸せな顔の像への潜在的曝露による行動的アプローチ系の活性化、もしくは前向きの快楽的気分を誘発する認知的介入のための手段を、さらに含むことができる。あるいは部分品のキットはドーパミン経路のアゴニストをさらに含むことができる。
【0038】
PDE5阻害剤がない場合、PDE5はcGMPに結合し、カルシウムチャネルの閉口およびカリウムチャネルの開口を阻害し(すなわち平滑筋の過分極を阻害し)、したがってPDE5は平滑筋弛緩を阻害する。PDE5とcGMPとの間の相互作用は、薬物開発の潜在的標的であるPDE5のGAF-A N末端ドメインの相互作用によって達成される。さらに別の態様において、本発明は、テストステロンまたはその類似体が投与された被験者の血液循環中にテストステロンまたはその類似体のピークが認められるようにそれが供給される、女性性的機能不全の処置のための薬物の調製における、テストステロンまたはその類似体およびGAF-AドメインとcGMPとの間の相互作用を少なくとも部分的に阻害できる化合物(例えばGAF-A遮断薬)の組み合わせの使用を提供する。例えば、GAF-A遮断薬の存在は、cGMPへのPDE5の結合を少なくとも部分的に阻止し、結果的に平滑筋細胞の弛緩を引き起こす。
【0039】
テストステロン(またはその類似体)に適した製剤は、上記に示されている。
【0040】
GAF-AドメインとcGMPとの間の相互作用を少なくとも部分的に阻害できる化合物(例えばGAF-A遮断薬)は、その効果がテストステロンの効果と少なくとも部分的に一致するような方法で投薬されかつ放出されなければならない、すなわち、前記化合物の効果はテストステロン(またはその類似体)の誘導された血漿ピークから3.5〜5.5時間後に存在していなければならないことが、当業者には明らかである。当業者は、前記化合物の薬理動力学に基づき、前記化合物に適した製剤および適した濃度を容易に判定することができる。
【0041】
本発明は、以下の、非限定的な例でさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0042】
実験の部
実験1: FSDを有する女性における官能的映画からの抜粋に応じてVPAに及ぼすタダラフィル投与との組み合わせでのシクロデキストリン結合テストステロン投与の有効性
二重盲検の、無作為割当てプラセボ対照交差試験のデザインにおいて、女性性的機能不全(FSD)を有する女性16人の群に、タダラフィル(10 mg)単独、舌下のシクロデキストリン結合テストステロン(0.5 mg)単独、タダラフィルおよび舌下のシクロデキストリン結合テストステロン併用(それぞれ10 mgおよび0.5 mg)またはプラセボを、4つの別々の実験日の間に投与する。膣パルス振幅を、薬物投与の直後に、および薬物投与の4時間後に、中性的および官能的映画からの抜粋に応じて測定する。4つの実験日は(少なくとも)3日間隔てる。全ての薬物投与に対し、被験者にタダラフィルまたはプラセボのいずれかからなるカプセル1回、およびテストステロン含有または不含の液状シクロデキストリン懸濁液(これは無味である) 1回を投与する。共に同時に服用する。舌下のシクロデキストリン結合テストステロンの効果の時間的ずれ(およそ4時間)は、高い(およそ>95%のタダラフィルCmax)タダラフィル血清濃度(タダラフィルのTmax 2時間; T1/2 = 17.5時間)と重複する。
【0043】
実験の時間中、VPAを測定するために被験者はタンポン状の膣プローブ(光電脈波)を挿入しなければならない。次いで、被験者は10分の中性的映画の断片、引き続き5分の官能的映画の断片を見る。これらのベースライン測定の後、被験者に上記の4通りの薬の組み合わせのうち1つを投与する。投薬の後、もう1組の中性的(5分)および官能的(5分)映画の断片を見せる。その後、膣プローブを取り出す。4時間後、中性的(5分)および官能的(5分)映画の断片に応じて別のVPA測定を行う。実験日の間中、血圧(仰臥位および立位)、心拍数、呼吸数、および体温をモニターする。
【0044】
実験に先行してスクリーニング視察を行う。このスクリーニング視察の中で、Flevo病院, Almereの婦人科の専門医学実習者が被験者を問診しかつ検査して、FSDを診断しかつ研究参加資格を判定する。質問票、すなわち女性の性機能指標(Female Sexual Function Index; FSFI)に記入するよう被験者にお願いする。妊娠もしくは授乳、膣感染症、膣および/もしくは外陰部に対する大きな手術、未検出の主な婦人科的病気または原因不明の婦人科的病状を除外するため、被験者をスクリーニングする。体重、身長、血圧(仰臥位および立位)を測定する。心臓血管の状態を試験し、顕著な異常がないかECGを調べる。
【0045】
内分泌学的な、神経学的な、または精神医学的な病歴および/または処置歴を有する被験者。標準的な血液化学検査および血液検査を行う。参加者は実験の前夜におよび当日にアルコールまたは向精神薬を使用しないように義務付けられる。生理の期間中、被験者は検査されない。
【0046】
実験2: FSDを有する女性における官能的映画からの抜粋に応じてVPAに及ぼすプラゾシン投与との組み合わせでのシクロデキストリン結合テストステロン投与の有効性
二重盲検の、無作為割当てプラセボ対照交差試験のデザインにおいて、女性性的機能不全(FSD)を有する女性16人の群に、プラゾシン(0.5 mg)単独、舌下のシクロデキストリン結合テストステロン(0.5 mg)単独、タダラフィルおよび舌下のシクロデキストリン結合テストステロン併用(それぞれ0.5 mgおよび0.5 mg)またはプラセボを、4つの別々の実験日の間に投与する。膣パルス振幅を、薬物投与の直後に、および薬物投与の4時間後に、中性的および官能的映画からの抜粋に応じて測定する。4つの実験日は(少なくとも)3日間隔てる。全ての薬物投与に対し、被験者にプラゾシンまたはプラセボのいずれかからなるカプセル1回、およびテストステロン含有またはテストステロンを含まない液状シクロデキストリン懸濁液(これは無味である) 1回を投与する。舌下のシクロデキストリン結合テストステロンの効果の時間的ずれ(およそ4時間)は、高い(およそ>95%のプラゾシンCmax)プラゾシン血清濃度(プラゾシンのTmax 1〜2時間; T1/2 = 2〜3時間)と重複しなければならない。それ故に、プラゾシンは、プラゾシンCmaxが血漿遊離テストステロンのピークから約3〜4時間後に現れるような方法で投与されなければならない。それ故に、プラゾシンは舌下のテストステロン投与からおよそ2.5時間後に投与されなければならず、あるいはプラゾシンは、これが投与からおよそ2.5時間後に放出されるように、またはCmaxが血漿遊離テストステロンのピークから約3〜4時間後に現れるように修飾されなければならない。
【0047】
この実験例では、プラゾシンの遅延放出(2.5時間)製剤を使用する。
【0048】
実験の時間中、VPAを測定するために被験者はタンポン状の膣プローブ(光電脈波)を挿入しなければならない。次いで、被験者は10分の中性的映画の断片、引き続き5分の官能的映画の断片を見る。これらのベースライン測定の後、被験者に上記の4通りの薬の組み合わせのうち1つを投与する。投薬の後、もう1組の中性的(5分)および官能的(5分)映画の断片を見せる。その後、膣プローブを取り出す。4時間後、中性的(5分)および官能的(5分)映画の断片に応じて別のVPA測定を行う。実験日の間中、血圧(仰臥位および立位)、心拍数、呼吸数、および体温をモニターする。
【0049】
実験に先行してスクリーニング視察を行う。このスクリーニング視察の中で、Flevo病院, Almereの婦人科の専門医学実習者が被験者を問診しかつ検査して、FSDを診断しかつ研究参加資格を判定する。質問票、すなわち女性の性機能指標(Female Sexual Function Index; FSFI)に記入するよう被験者にお願いする。妊娠もしくは授乳、膣感染症、膣および/もしくは外陰部に対する大きな手術、未検出の主な婦人科的病気または原因不明の婦人科的病状を除外するため、被験者をスクリーニングする。体重、身長、血圧(仰臥位および立位)を測定する。心臓血管の状態を試験し、顕著な異常がないかECGを調べる。
【0050】
内分泌学的な、神経学的な、または精神医学的な病歴および/または処置歴を有する被験者。標準的な血液化学検査および血液検査を行う。参加者は実験の前夜におよび当日にアルコールまたは向精神薬を使用しないように義務付けられる。生理の期間中、被験者は検査されない。
【0051】
参考文献