(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959495
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】軸受の軸への取付構造
(51)【国際特許分類】
F16C 35/06 20060101AFI20160719BHJP
F16C 19/38 20060101ALI20160719BHJP
F16C 23/06 20060101ALI20160719BHJP
F16C 35/073 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
F16C35/06 A
F16C19/38
F16C23/06
F16C35/073
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-263829(P2013-263829)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-121240(P2015-121240A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】505060026
【氏名又は名称】日本ピローブロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077724
【弁理士】
【氏名又は名称】京口 清
(72)【発明者】
【氏名】小林 百太郎
【審査官】
中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−008377(JP,A)
【文献】
実開昭59−070932(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0235933(US,A1)
【文献】
実開平05−022848(JP,U)
【文献】
実開昭55−026111(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/06
F16C 19/38
F16C 23/06
F16C 35/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受の内輪の延長部外周に、雄ネジ部とテーパ−部を設け、該テーパー部に周方向へ等間隔状で切割り部を形成し、
上記雄ネジ部へ螺装する固定用ナットの側面から、周方向へ等間隔状に固定ボルト用の雌ネジ孔を設け、
上記延長部外周のテーパー部へ内周のテーパー部で套合する固定用カラーに、上記固定用ナットの雌ネジ孔に対応したボルト通挿用孔と、同じく側面から周方向へ等間隔状に取外しボルト用の雌ネジ孔を形成することにより、
軸受を軸へ取り付け固定時には、固定ボルトを固定用カラーのボルト通挿用孔から、固定用ナットの雌ネジ孔へ螺合して締め付け、取り外し時には、取外しボルトを固定用カラーの雌ネジ孔へ螺合し、その先端部で固定用ナットの側面を押圧して取り外しを可能としたことを特徴とする、軸受の軸への取付構造。
【請求項2】
軸受の内輪の片側に形成した延長部外周に、雄ネジ部とテーパ−部を設け、該テーパー部に周方向へ等間隔状で切割り部を形成し、
上記雄ネジ部へ螺装する固定用ナットの側面から、周方向へ等間隔状に固定ボルト用の雌ネジ孔を設け、
上記延長部外周のテーパー部へ内周のテーパー部で套合する固定用カラーに、上記固定用ナットの雌ネジ孔に対応したボルト通挿用孔と、同じく側面から周方向へ等間隔状に取外しボルト用の雌ネジ孔を形成することにより、
軸受を軸へ取り付け固定時には、固定ボルトを固定用カラーのボルト通挿用孔から、固定用ナットの雌ネジ雌ネジ孔へ螺合して締め付け、取り外し時には、取外しボルトを固定用カラーの雌ネジ孔へ螺合し、その先端部で固定用ナットの側面を押圧して取り外しを可側面したことを特徴とする、軸受の軸への取付構造。
【請求項3】
軸受の内輪の両側に形成した各延長部外周に、雄ネジ部とテーパ−部を各々設け、該各テーパー部に周方向へ等間隔状で切割り部を各々形成し、
上記各雄ネジ部へ螺装する各固定用ナットの側面から、周方向へ等間隔状に固定ボルト用の雌ネジ孔を各々設け、
上記各延長部外周の各テーパー部へ内周のテーパー部で套合する各固定用カラーに、上記各固定用ナットの雌ネジ孔に対応したボルト通挿用孔と、同じく側面から周方向へ等間隔状に取外しボルト用の雌ネジ孔を各々形成することにより、
軸受を軸へ取り付け固定時には、固定ボルトを各固定用カラーの各ボルト通挿用孔から、各固定用ナットの各雌ネジ孔へ各々螺合して締め付け、取り外し時には、取外しボルトを各固定用カラーの各雌ネジ孔へ各々螺合し、その先端部で各固定用ナットの側面を押圧して取り外しを可能としたことを特徴とする、軸受の軸への取付構造。
【請求項4】
取外しボルトを固定ボルトと兼用するようにした、請求項1ないし3のいずれかに記載の軸受の軸への取付構造。
【請求項5】
取外しボルトを固定ボルトとは別個のものにした、請求項1ないし3のいずれかに記載の軸受の軸への取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば軸受においてその内輪(インナーレース)を回転軸(以下、軸という)に取り付け固定する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸受を軸に取り付け固定する手段としては、従来より幾つかのものが提案されている。例えば次のようなものがある。
【0003】
イ)同心のカラー(スリーブ)に螺装された止めネジを締付けることにより、上記カラーを変形させて内輪を押さえ込み、軸受を軸に取り付け固定するもの。
【0004】
ロ)アダプタースリーブのロックナットを締め付けることにより、軸受内周のテーパー面とスリーブ外周のテーパー面とを密着させて、軸受を軸に取り付け固定するもの。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】a)JIS規格のB−1558:2009,P.2の「3.4同心固定輪付き軸受」、P.4で「
図2−同心固定輪付き軸受(UM型)」として表示されているもの。これは上記のイ)で述べたカラーと止めネジを用いたものである。
【非特許文献2】b)同JIS規格のB−1558:2009のP.4で「
図5−テーパー穴軸受(UK型)」として表示されているもの。これが上記ロ)で述べたテーパー面を用いたものである。
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2006−9967号公報 これは、上記ロ)と同様にテーパー面を利用したものであるが、ロックナットの締め込みと、該ナットに形成した2個以上の貫通孔にボルトを螺装することにより、ボルトの先端面にて軸受内輪の端面が押圧されて、軸受が軸に套装してあるアダプタースリーブのテーパー上を大径側へ移動することで、取り付け固定するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来技術には、次のような問題点がある。
まず、上記非特許文献のイ)に記載のものは、同心カラーに取り付けられた止めネジの締め付けだけで、軸受を軸に取り付け固定するものであるが、両者の軸心の狂いが大きくなってしまう。また、止めネジによる両者の取り付け固定は、軸受の片側のみから行うために、反対側では内輪と軸とのすきまにより浮いた状態となるから、高速回転や高精度の回転では使用し難い面がある。しかも、止めネジの締め付けにより軸の周囲にカエリ等のキズが生じ、軸受を取り外すときに抜き難くなる不具合が発生する。
【0008】
次に、上記非特許文献ロ)に記載のものでは、スリープ、ロックナット、座金等のアダプターを用いて軸受を軸に取り付け固定するので、上記イ)のものと異なり、軸心の狂いは小さくなる。しかし、ロックナットの締結の際にスリープが軸受の内輪を引っ張ることになるから、軸受内部で転がり位置のズレが発生するおそれがあるため、その取り付け固定の作業には熟練を要している。
【0009】
上記特許文献1に記載のものは、押圧機能付ナットに関するものであるが、内輪の内周のテーパーとアダプタースリーブ外周のテーパーとの関係は、軸受を軸に取り付ける場合と取り外す場合とで逆向きになっている必要がある。そのため、この押圧機能付ナットおよびアダプタースリーブは、取り付け時または取り外し時の一方だけにしか対応することができなかった。
【0010】
また軸受を軸に取り付ける場合に、内輪はアダプタースリーブのテーパーの大径側へ押されて固定するため、軸受内部のすきまを減少させてベアリング機能に影響を及ぼすおそれもあった。
【0011】
本発明は、軸受の軸への取付構造に関して、上記従来手段における問題点の解消を課題としたものである。即ち、本発明の目的は、軸と軸受との軸心の狂いが小さく、軸受内部の転がり位置がズレ難く、軸表面をキズ付けることも少なくて、比較的簡単に取り付け固定作業を行えると共に、取り付けと取り外しの両方に対応でき、しかも軸受内部のすきまを減少させることのない、軸受の軸への取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る軸受の軸への取付構造は、
軸受2の内輪3の延長部4外周に、雄ネジ部6とテーパ−部7を設け、該テーパー部7に周方向へ等間隔状で切割り部8を形成し、
上記雄ネジ部6へ螺装する固定用ナット9の側面から、周方向へ等間隔状に固定ボルト13用の雌ネジ孔12を設け、
上記延長部4外周のテーパー部7へ内周のテーパー部15で套合する固定用カラー14に、その側面から上記固定用ナット9の雌ネジ孔12に対応したボルト通挿用孔17と、同じく周方向へ等間隔状に取外しボルト19用の雌ネジ孔18を形成して、
軸受2を軸1へ取り付け固定時には、固定ボルト13を固定用カラー14のボルト通挿用孔17から、固定用ナット9の雌ネジ孔12へ螺合して締め付け、取り外し時には、固定ボルト13を取り外した後に、取外しボルト19を固定用カラー14の雌ネジ孔18へ螺合し、その先端部で固定用ナット9の側面11を押圧可能としたものである。
【0013】
上記構成において、内輪3の側方への延長部4を内輪3の片側に形成して、上記のごとく構成したもの(例えば
図1参照)に限らず、延長部4を内輪3の両側に形成して、上記と同様の構成を設けるようにしてもよい(例えば
図5参照)。また、固定ボルト13と取外しボルト19は兼用してもよいが、別のものを用いてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の軸受の軸への取付構造によれば、次の作用・効果を有する。
1)軸受2を軸1へ取り付け固定、及び取り外し作業を、特に熟練者でなくても容易・迅速に行うことができるようになる。
【0015】
まず、軸受2を軸1に取り付け固定する場合には、軸受2の内輪3の延長部4に形成してある雄ネジ部6に、固定用ナット9を段差部5で止まる位置まで螺装させる。次いで固定用カラー14を、内周のテーパー部15で内輪3側のテーパー部7に套合させる。この際に固定用カラー14の各ボルト通挿用孔17が、固定用ナット9の各雌ネジ孔12に一致するように周方向の位置を調節しておく。そして、その軸受2を軸1上の所定位置に套合させ、この状態で固定ボルト13を、上記固定用カラー14の各ボルト通挿用孔17から、固定用ナット9の各雌ネジ孔12へ螺合させて、均等に締め付けていく。
【0016】
この締め付けにより、固定用カラー14が固定用ナット9側へ押される、換言すれば固定用ナット側へ引かれる力(例えば
図3の矢印F参照)が作用し、固定用カラー14のテーパー部15が内輪3側のテーパー部7上に乗り上げて嵌合する。これで、内輪3側のテーパー部7が内径方向へ押される力(例えば
図3の矢印f参照)が作用するから、該テーパー部7に形成してある複数個の切割り部8が絞られることになり、軸受2が軸1に取りけ付け固定される。
【0017】
次に、軸受2を軸1から取り外す場合には、上記各固定ボルト13を緩めて取り外しておき、固定用カラー14の側面に形成してある取外しボルト用の各雌ネジ孔18に、取外しボルト19を螺合して締付ければよい。
【0018】
これで、該取外しボルト19の先端部が固定用ナット9の側面11を押圧することになり、固定用カラー14を内輪延長部4の側端方向(例えば
図4で右方向)へ押し出す力(同図で矢印r参照)が作用する。その結果、延長部4のテーパー部7の切割り部8を絞る力が解けるから、軸受2の軸方向への移動が可能となり、該軸受2は容易に取り外すことができる。
【0019】
2)本構成の軸受の軸への取付構造によれば、軸受2を軸1へ取り付けた場合に、両者1,2間の軸心の狂いを小さく抑えることができる。
軸受2を軸1へ取り付けた場合に、上記のように延長部4のテーパー部7に形成した周方向へ等間隔状の複数個の切割り部8が、均等に軸心方向へ絞られることにより、軸受2が軸1に取り付け固定がなされている。そのため、軸受2と軸1との軸心の狂いをきわめて小さく抑えることができる。
【0020】
3)同じく、上記の如く軸受2を軸1へ取り付け固定する場合に、軸受内部の転がり位置のズレを無くせる。
即ち、軸受2を軸1へ取り付け固定する作業は、固定ボルト13の締め付けで固定用カラー14が固定用ナット9側へ引かれることにより行われている。軸受2の内輪3が軸方向へ移動しないから、取り付け作業中に軸受2の内部で転がり位置がズレるようなことが無くなり、この面でも取り付け作業が簡単となり、容易・迅速に取り付け固定作業を行うことができる。
【0021】
4)同じく、軸受2を軸1へ取り付け固定する場合に、軸1の周囲にキズを付けることが少なくできる。
【0022】
上記の如く、軸受2を軸1へ取り付け固定する作業は、固定ボルト13の締め付けにより、内輪延長部4のテーパー部7の切割り部8を軸心方向へ絞って行うものである。そのため、軸1の周囲に擦りキズを付けることも少なくできる。
【0023】
5)本構成の軸受の軸への取付構造によれば、取り付け固定時と取り外し時の両方の作業に対応でき、かつ軸受内部のすきまを減少させることもなくなる。
【0024】
即ち、本構成では内輪3と固定用ナット9と固定用カラー14とを組合わせた構造としてある。従来技術(特開2006−9967)では、テーパー部の向きの関係で、取り付け固定時か取り外し時いずれか一方にだけしか使用できなかったが、本構成では軸受2を軸1へ取り付け固定する際は勿論のこと、そのままの状態で取り外し作業にも使用することができる。
【0025】
また上記従来技術と異なり、内輪延長部4のテーパー部7の切割り部8を軸心方向へ絞って、軸受2を軸1へ取り付け固定するものであるから、その取り付け固定により軸受2の内部すきまを減少させることは無く、ベアリングの性能に悪影響を及ぼす心配も無くせる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
軸受2の内輪3の延長部4外周に、雄ネジ部6とテーパ−部7を設け、該テーパー部7に周方向へ等間隔状で切割り部8を設け、上記雄ネジ部6へ螺装する固定用ナット9に、その側面に周方向へ等間隔状に固定ボルト13用の雌ネジ孔12を形成し、内周のテーパー部15で上記延長部4外周のテーパー部7へ套合する固定用カラー14に、その側端面に周方向へ等間隔状で、上記固定用ナット9の雌ネジ孔12に対応するボルト通挿用孔17と、取外しボルト19用の雌ネジ孔18を形成することにより、軸受2を軸1へ取り付け固定時には、固定ボルト13を固定用カラー14のボルト通挿用孔17から固定用ナット9の雌ネジ孔12へ螺合して締め付け、また取り外し時には、取外しボルト19を、固定用カラー14の雌ネジ孔18へ螺合して先端部で固定用ナット9の側面11を押圧させ、固定用カラー14を内輪延長部4の側端方向へ押し出させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施例の一部省略縦断正面図である。
【
図2】
図1で示したものの一部縦断右側面図である。
【
図3】
図1で示したものの要部の縦断正面図である。
【
図4】
図1で示したもので、取外し用の雌ネジ孔の位置で縦断した要部の縦断正面図である。
【
図5】本発明の第2の実施例の一部省略縦断正面図である。
【
図6】
図1で示したもので用いた固定用ナットの側面図である。
【
図7】
図1で示したもので用いた固定用カラーの側面図である。
【実施例1】
【0028】
図1ないし
図4、及び
図6、
図7は、本発明に係る軸受の軸への取付構造の第1の実施例を示すものである。
【0029】
1は軸を示し、2は上記軸1に取り付け固定する軸受を示す。該軸受2の内輪3には側方への延長部4を形成してあり、該延長部4の軸受2寄り外周に形成した段差部5を経て雄ネジ部6を形成してある。
【0030】
また延長部4には、雄ネジ部6に続いて、先寄りほど小径となるテーパー部7を形成すると共に、該テーパー部7に周方向へ等間隔状でここでは6箇所に、軸方向への切割り部8を形成してある。
【0031】
9は固定用ナットを示し、その内周には上記内輪延長部4の雄ネジ部6へ螺装可能な雌ネジ部10を形成してある。また該固定用ナット9の側面から、周方向へ等間隔状でここでは3箇所に、固定ボルト13を螺合可能な雌ネジ孔12を形成してある。
【0032】
14は固定用カラーを示し、その内周は上記内輪延長部4外周のテーパー部7に対応するテーパー部15を形成してあり、延長部4外周のテーパー部7へ套合可能としてある。また該固定用カラー14の側面から、周方向へ等間隔状でここでは2箇所に、取外しボルト19用に貫通した雌ネジ孔18を形成すると共に、上記固定用ナット9の雌ネジ孔12に対応して、固定ボルト13用に貫通したボルト通挿用孔17を形成してある。
【0033】
そして、軸受2を軸1に取り付け固定する場合には、上記のように、軸受2を軸1の所定位置に套合させておき、該軸受2の内輪延長部4に形成した雄ネジ部6に、固定用ナット9を内周の雌ネジ部10で段差部5まで螺合しておき、その後に該雄ネジ部6より側端側のテーパー部7へ、固定用カラー14を内周のテーパー部15により套合させる。次いで該固定用カラー14の各ボルト通挿用孔17から、固定ボルト13を固定用ナット9の雌ネジ孔12に各々螺合して均等に締め付ければよい。
【0034】
これで、固定用カラー14に
図3の矢印Fで示すような力が作用して、該固定用カラー14内周のテーパー部15が内輪延長部4外周のテーパー部7へ乗り上げて嵌合する。そのため、内輪延長部4のテーパー部7に形成した各切割り部8は、同
図3の矢印fで示す力を受けて軸心方向へ締め付けられるから、軸受2が軸1上に取り付け固定されることになる。
【0035】
他方、軸受2を軸1から取り外す場合は、予め上記各固定ボルト13を緩めて取り外しておき、取外しボルト19を固定用カラー14の取外し用の雌ネジ孔18へ螺合させて、締め付ければよい。これで、取外しボルト19の先端部が固定用ナット9の側面11を押圧することになり、固定用カラー14には
図4の矢印rで示す力が働いて、内輪延長部4の側端方向(同図で右方向)へ押し出される。そのため、該固定用カラー14は内輪延長部4のテーパー部7から外れ、切割り部8も絞り力を受けなくなるから、軸受2は軸1上を移動可能となって取り外せる。
【0036】
上記固定用ナット9や固定用カラー14の材質は、ここでは機械構造用炭素鋼のS17Cとし、固定ボルト13や取外しボルト19の材質は、ここではクロムモリブデン鋼のSCM435とした。また上記固定用カラー14や固定用ナット9には、ここではメッキ処理をし、上記ボルト13,19はここでは四三酸化鉄皮膜処理を施したものを用いた。
【0037】
なお、上記取り付け固定および取り外し作業に伴う作用・効果は、先の発明の効果の項で詳しく説明したのと同様であるから、ここでは説明を省略する。また、図示例は球面コロ軸受に用いた例で示しているが、他の軸受でも用いられることは勿論である。
【実施例2】
【0038】
図5は第2の実施例を示し、軸受2の軸1への取り付け固定をその両側で行う場合であり、上記実施例1で述べたことを軸受2の両側で行ったものであるから、詳細はここでは省略して概略を説明する。
【0039】
軸受2の内輪3の両側に延長部4を形成し、各延長部4の外周に雄ネジ部6とテーパー部7を形成してあり、該各テーパー部7には周方向へ等間隔状で6箇所に切割り部8を形成してある。
【0040】
9は固定用ナットを示し、その内面には雄ネジ部6へ螺装する雌ネジ部10を有し、また該各固定用ナット9の側面から、周方向へ等間隔状に固定ボルト用の雌ネジ孔12を形成してある。
【0041】
14は固定用カラーを示し、その内周には上記内輪3の延長部4外周のテーパー部7に対応して套合可能なテーパー部15を有する。該固定用カラー14の側面から、上記固定用ナット9の雌ネジ孔12に対応して、周方向へ等間隔状にボルト通挿用孔17と、同じく周方向へ等間隔状でここでは2箇所に取外しボルト19用の雌ネジ孔18を形成してある。
【0042】
軸受2を軸1に取り付け固定する場合や取り外す場合の作用・効果は、上記実施例1で述べた点とほぼ同様であり、ここでは記載を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
軸受2を軸1へ取り付け固定する場合において、特に熟練者でなくても容易・迅速に作業が行え、軸1と軸受2との軸心の狂いを小さくできると共に、軸受2内部で転がり位置がズレ難く、また軸1の周囲をキズ付けることもなく、かつ取り付け固定と取り外しの両方を行いたい場合に大いに有用である。
【符号の説明】
【0044】
1−軸
2−軸受
3−内輪
4−延長部
5−段差部
6−雄ネジ部
7−テーパー部
8−切割り部
9−固定用ナット
10−雌ネジ部
11−側面
12−雌ネジ孔
13−固定ボルト
14−固定用カラー
15−テーパー部
16−コロ
17−ボルト通挿用孔
18−雌ネジ孔
19−取外しボルト
F−力
f−力
r−力