(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959519
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】連続的に搬送される材料を処理する(軟化させる)ための装置および方法
(51)【国際特許分類】
D06C 19/00 20060101AFI20160719BHJP
D06C 3/06 20060101ALI20160719BHJP
B29C 55/18 20060101ALI20160719BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
D06C19/00
D06C3/06 Z
B29C55/18
B29L7:00
【請求項の数】29
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-526406(P2013-526406)
(86)(22)【出願日】2011年8月24日
(65)【公表番号】特表2013-539505(P2013-539505A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】EP2011064500
(87)【国際公開番号】WO2012028497
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月11日
(31)【優先権主張番号】10174942.2
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512171892
【氏名又は名称】ベニンガー・ツェル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BENNINGER ZELL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリッカー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヒス,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】トラウト,クラウス・ディーター
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−099339(JP,A)
【文献】
特開2007−177384(JP,A)
【文献】
特開2007−315901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06C 19/00
B29C 55/18
D06C 3/06
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される材料(2)を軟化させるための装置であって、
材料を変形させるための少なくとも1つのユニットを備え、
前記ユニットは1対のローラを含み、
前記1対のローラの各ローラ(3,4)はいずれの場合もプロファイルを備え、前記プロファイルは歯部であり、
前記ローラは、前記材料がローラ(3,4)間に通されると前記材料(2)がプロファイルの機械的作用によって変形されるように、互いに動作可能に接続され、
前記ローラ(3,4)は別個に駆動可能であり、
前記ローラ(3,4)の各々は、ロータリドライブ(5,6)が割当てられ、
前記ローラ(3,4)の前記ロータリドライブ(5,6)は制御手段によって別個に制御可能であり、
前記装置は、対のローラの前記歯部のぞれぞれのフランク部分間に生じる隙間幅(A,B)を検出するためのセンサを備え、
前記センサは、電子的に制御手段に動作可能に接続され、
前記ロータリドライブは、隙間幅(A,B)を互いに等しくすることができるように前記制御手段によって別個に制御される、装置。
【請求項2】
前記連続的に搬送される材料(2)は、タイヤコードの縦糸を含むシート状構造である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ロータリドライブ(5,6)は、いずれの場合も、直接、前記ローラ(3,4)に接続される、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ロータリドライブ(5,6)は、いずれの場合も、予め張力をかけられたギヤ(7)を介して前記ローラ(3,4)に接続される、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記ロータリドライブ(5,6)は、中央制御装置(8)に接続される、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記ロータリドライブ(5,6)は、シリアルインターフェイスを介して前記中央制御装置(8)に接続される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ロータリドライブ(5,6)はいずれの場合も電動機を有し、
前記電動機はデジタルドライブ装置を介して制御可能である、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記ローラはロータリエンコーダを備え、前記制御手段はロータリエンコーダに電子的に接続される、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記ローラ(3,4)の角度位置および/または角速度(ω1,ω2)を調整するためのコントローラを有する、請求項1から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記ロータリドライブ(5,6)は、いずれの場合も、別個の制御ループ回路に割当てられる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
センサ(14)を備え、
前記センサは、対のローラの前にあるかまたは後ろにあり、
前記センサ(14)は、ローラ(3,4)を制御するための制御手段に電子的に接続され、
前記センサは材料の速度(v3)を検出する、請求項1から10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記ローラ(3,4)の回転軸同士の間の距離(A)を短くするかまたは長くするための液圧式または気圧式変位手段(9)を備える、請求項1から11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記対のローラのうちの一方のローラ(3)は、その回転軸に対して固定キャリア(15)上に固定して装着され、前記対のローラのうちの他方のローラ(4)は、固定キャリア上に、位置を調整するためおよび/または距離(A)を短くするかもしくは長くするために移動可能に装着される、請求項1から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記変位装置(9)は、縦糸の角度を変える目的で、制御手段を介して作動させることができる、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記ローラ(3,4)は、直線状の歯部または螺旋状の歯部を備えた平歯車として構成される、請求項1から14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記ローラ(3,4)は、インボリュート状またはサイクロイド状の歯部を有する、請求項1から15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
1対のローラのうち前記ローラ(3,4)の前記歯部は、少なくとも通常の動作段階において、侵入深さ(t)が歯深さ(h)の0.1〜から0.6になるように、互いに係合するよう構成される、請求項1から16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記ローラ(3,4)は、歯部の領域においてクロムめっきまたは硬化される、請求項1から17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
対のローラを備えた少なくとも2つの変形ユニットを備え、
前記少なくとも2対のローラはいずれの場合も異なる歯部を有する、請求項1から18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
1対のローラ(3,4)を備えた少なくとも1つの変形ユニットと、
ナイフエッジを備えた少なくとも1つの変形ユニットとを備え、
前記ナイフエッジは、材料の方向に対して横方向に延びる、請求項1から19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
材料は、機械的作用によって変形されて、撓みやすくなる、またはより柔らかくなる、請求項1〜20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記ロータリドライブ(5,6)は、軟化の度合いを適合するように制御可能である、請求項1〜21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
連続的に搬送される材料(2)を軟化させるための方法であって、
互いに動作可能に接続され、いずれの場合も歯部を有する2つのローラ(3,4)間に材料を通すステップを含み、前記材料は、前記2つのローラ間に通されると歯(11,12,13)の機械的作用によって変形され、前記方法はさらに、
角速度およびローラ位置の点で同期した動作を維持する目的で、ローラ(3,4)のロータリドライブ(5,6)を制御するステップを含み、
対の歯付きローラのぞれぞれのフランク部分間に生じる隙間幅(A,B)は、隙間幅(A,B)を互いに等しくすることができるように前記制御手段によって別個に制御される、方法。
【請求項24】
前記連続的に搬送される材料(2)は、タイヤコードの縦糸を含むシート状構造である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から22のいずれかに記載の装置を用いる、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
先行分または遅れ分をもたらすよう、材料速度とローラ(3,4)の回転速度との相対的移動が設定される、請求項23〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
材料は、対のローラを備えた少なくとも2つの変形ユニットの間を通され、
前記少なくとも2対のローラはいずれの場合も異なる歯部を有し、
それぞれの対のローラのロータリドライブは、歯部の領域においてさまざまな回転速度が得られるように作動させられる、請求項23〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
材料は、機械的作用によって変形されて、撓みやすくなる、またはより柔らかくなる、請求項23〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記ロータリドライブ(5,6)は、軟化の度合いを適合するように制御可能である、請求項23〜28のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送される材料を処理するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この材料はシート状構造、たとえば布織物、であってもよい。本発明に従った装置は、タイヤコードの縦糸(Fadenschar)を処理するのに特に適している。タイヤコードの製造時に、接着促進剤を含浸させてある織物を乾燥機に通す。特に、ポリエステルからなる織物または糸を用いる場合、含浸および熱処理により材料が不所望に硬化してしまう。可撓性のある材料特性を回復させるために偏向(Umlenkungen)によって材料を変形および軟化させることが公知である。
【0003】
タイヤコードの製造用の合成繊維または織物を局所的に変形させるためのユニットが公知である。このユニットにおいては、材料が、材料方向に対して横方向に延びるナイフエッジを通過するようにして、このストリッピング作用によりこの材料を局所的に曲げる。このタイプの変形ユニットは、たとえば、出願人(Benninger Zell GmbH)から「Softener Paraflex」という名称で公知であり、添付の
図1に示される。この装置の1つの不利点として、ナイフエッジが材料、特に合成糸に施された含浸膜、に損傷を及ぼすおそれのあることが挙げられる。実際には、ナイフエッジによって含浸箇所から削り取られた過剰な材料が、変形ユニットの通過後に設備部分に付着したままになる可能性があり、さらには、追従する材料(糸の小繊維)によって巻き込まれて混入し、結果として、糸に対する含浸が不均一になってしまうことが判明した。曲げ要素が摩擦により加熱され、このため比較的高い費用をかけて冷却しなければならなくなったり、摩擦の結果として静電気が帯電したりするというさらなる問題が起こる。
【0004】
GB792570から公知となる装置においては、個々の糸または織り糸が、張力を高める目的で1対のローラ間に通される。ローラは、先のとがった歯を備えた歯部(Verzahnungen)を有する。歯の作用により、糸が変形し、これにより機械的に引っ張られる。スプラインシャフトのうちの一本を磁気ブレーキによって制動することができ、結果として、このスプラインシャフトに動作可能に接続された他のスプラインシャフトが自動的に制動される。テストにより、装置が、たとえば、より糸を軟化させるためなどの特定の応用分野においては幾らか適していないことが判明した。この構成は、とりわけ、変形プロセスの制御が困難になるという不利点を有する。特に、歯付きローラ(Zahnwalzen)間の隙間幅が小さすぎるため、不所望な応力ピークや糸の挟みつぶしがほとんど防止できなくなってしまう。これにより、結果として、含浸が損なわれるかまたは、さらには糸もしくは小繊維が破損してしまう可能性がある。さらなる不利点として、糸の張力に対して不十分な作用しか及ぼすことができないことが挙げられる。さらに、この構成は、接着促進剤を予め糸に含浸させた縦糸を処理するのには適していない。この構成においては、糸上に過剰な材料があれば欠陥を引起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、この発明の目的は、公知のものが有する不利点を回避し、特に、材料をその変形中に慎重に処理する装置および方法を提供することである。さらに、変形中のプロセス条件は正確に制御可能にされるべきであり、最終生成物は、特に含浸品質および軟化度合いに関して、より厳密な要件を満たさなければならない。さらに、装置は、エネルギの点から効率的に動作させることができなければならず、可能な限り冷却なしで管理できなければならない。ナイフエッジを用いて動作する従来の装置と比べて、糸に対する摩耗や、その結果生じる廃物が少なくなるはずである。このような摩耗は、タイヤコードのゴム接着特性に対して悪影響を及ぼす。最終的に、装置は、タイヤコード製造用の既存の設備に設置するのにも適したものとなるはずである(「改装(Retrofit)」として公知である)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、本発明に従うと、独立クレームの特徴を有する装置および方法によって達成される。
【0007】
装置は、材料を局所的に変形させるための1つ以上のユニットを有する。変形ユニットは1対のローラからなる。各々のローラは、ローラ表面区域の領域においてプロファイル(Profilienrung)を備える。プロファイルは好ましくは歯部であってもよい。プロファイルまたは歯部は、好ましくはローラ幅全体にわたって軸方向に延在し得る。材料をローラ間に通らせると、プロファイルまたは歯の機械的作用によって材料が移送方向に変形され、結果として、撓みやすくなるかまたはより柔らかくなる。このような1対の歯付きローラは、先に述べたナイフエッジで動作する従来の変形ユニットと比べて、空間要件が低いことで識別される。ローラは別個に駆動可能であり、その結果、材料の変形についてのパラメータ(特に、ローラの位置、角度のある歯面の遊びAおよびB;
図3および
図4)を正確に制御することができる。装置は、変形中に慎重に材料を処理するので、結果として、高品質の最終生成物を製造することができる。材料を挟みつぶしてしまうことは、製品品質の点からも不所望なことであり、これは、本発明に従った装置によって防止することができるかまたは少なくとも大幅に抑制することができる。装置はエネルギ効率に関してさらなる利点を有しており、発生する熱がわずかであるため、変形プロセス中に冷却する必要がなくなる。
【0008】
装置は、移送方向に対して連続して配置された2つ、3つまたはそれ以上の変形ユニットを有してもよい。歯部を備えたモータ駆動可能な対のローラは、搬送または移送手段の機能を果たすこともできるという利点を有する。この場合、少なくとも1対のローラを備えたユニットに加えて、少なくとも1つの牽引機構が付加的に用いられれば有利である。しかしながら、理論的には、障害のない搬送を維持するために牽引機構のためのローラを追加する必要のないことも想到可能であるだろう。1列の対のローラのうち最後の対のローラは牽引機構の機能を果たし得る。
【0009】
対のローラを備えた少なくとも2つの変形ユニットが設けられ、少なくとも2対のローラがいずれの場合にも異なる歯部を有していれば、有利になり得る。異なる歯輪郭を有する2つ以上の器具を連続して装着するための設備も存在する。たとえば、装置は、粗い歯部(たとえば14個の歯)を有するローラを備えた変形ユニットと、続いて、より細かい歯部(たとえば40個の歯)を有する変形ユニットとを備えてもよく、結果として、織物のタイプに応じて軟化作用/軟化度合いをさらに向上させることができる。
【0010】
さらに、装置が、1対のローラを備えた少なくとも1つの変形ユニットと、材料方向に対して横方向に延びるナイフエッジを備えた、たとえば「Softener Paraflex」タイプの少なくとも1つの変形ユニットとを有していれば有利であり得る。「Softener Paraflex」器具は、ナイフエッジを必要に応じて動作位置または非作動位置へと調整することができるという利点を有する。この変形例は、いわば普遍的な解決策を成すものであり、すべてのタイプの織物についてあらゆる最適化可能性を提供する。このような装置は、たとえば、「Softener Paraflex」器具と、14個の歯を有するローラを備えた変形ユニットと、40個の歯からなる歯部を備えた変形ユニットとを(有利には、材料搬送方向にこの順で)有していてもよい。
【0011】
これらローラは、好ましくは2つの別個のデジタルドライブ(Digitalantriebe)の制御下で、歯部間に隙間を形成するように互いに係合するよう配置される。しかしながら、ローラのそれぞれの歯同士は、単にローラ間に通される材料があるせいで、直接接触しない。
【0012】
さらなる動作パラメータとして、対のローラの回転軸同士の間の距離(中心距離C)が挙げられる。中心距離を設定することにより、糸または織物の規格に応じて糸の曲がり度合いに影響を及ぼすことができる。
【0013】
1対のローラのそれぞれのローラは、軸方向に平行に延びる回転軸を有し得る。動作中、ローラは、同じ回転速度で同期的に、但し互いに反対方向に回転する。凹凸断面または歯部は、ローラの表面区域に沿って軸方向に延在し得る。言い換えれば、凹凸断面または歯部は横方向に、好ましくは材料の移送方向に対して直角に、延びている。小さな空間しか必要とされないため、装置は既存の設備に設置するのにも適している。特に、たとえばナイフエッジに基づいた従来のシステムは、高い費用をかけることなく簡単に交換され得る(改装)。
【0014】
入口側および出口側の両方において、材料の搬送経路が、2つの回転軸によって形成される面を基準にして対のローラに対してほぼ垂直に延びていれば、有利であり得る。したがって、この場合、歯付きローラの領域に直に撓みがあることは望ましくない。材料は、たとえば、好ましくはローラまたはロールの形状をした対応するガイドおよび偏向手段によって垂直な移送経路に沿って変形ユニットにまで導かれたり、変形ユニットから遠ざけられたりし得る。しかしながら、特定の応用分野の場合、入口側および/または出口側で、凹凸のあるシャフトのうちの1つのシャフトの円周に少なくとも部分的に沿って材料を導くことも想到可能であるだろう。
【0015】
対のローラの各ローラはロータリドライブ(Drehantrieb)を有する。このタイプのロータリドライブは、好ましくは電動機であってもよく、たとえば、ブラシレス直流モータまたは単相、二相もしくは三相ACモータであってもよい。ロータリドライブは、好ましくは、角度測定システムとしてロータリエンコーダまたはパルス発生器を有していてもよい。制御および調整の観点から、ロータリドライブがサーボドライブ(たとえば、ACサーボモータ)として、特にデジタルサーボドライブとして設計されていれば特に有利であり得る。「デジタルドライブ(digital drive)」という語はまた、以下において、ロータリエンコーダまたはパルス発生器を角度測定システムとして備えたデジタルサーボドライブのために用いられる。こうしてローラ間の隙間(A,B)を設定して、正確に制御することができる。糸の挟みつぶしを避けるために、隙間または距離AおよびBは、対応する制御または調整によって正確に維持されなければならない(目標A=B)。
【0016】
ローラの2つのロータリドライブは、制御手段によって別個に制御可能である。制御手段を用いると、動作パラメータ、特に隙間AおよびBならびに回転速度、を簡単に最適化および/または変更することができる。特に、この構成により、ローラの正確な位置と、これによりローラ間の隙間とを常時設定することができる。こうして、材料を不所望に挟みつぶしてしまうことを回避することができ、織物の厚さに応じて軟化を最適化することができる。
【0017】
特定の意図された用途の場合、ローラの回転速度が材料速度よりも速くなるようにローラのロータリドライブを作動させ、結果として、織物のタイプに応じて軟化作用を最適化することができれば、有利であり得る。材料速度は、この場合、2つの牽引機構を介して設定することができてもよく、いずれの場合も、牽引機構が変形ユニットに対してローラの前にあるかまたは後ろにある。
【0018】
さらには、いずれの場合も、ロータリドライブが直接的にまたは好ましくは予め張力のかけられたギヤを介してローラに接続されていれば有利であり得る。この構成により、調整および/または制御の点から比較的低費用で、2つのローラを同期的に、但し反対方向に回転するよう駆動することができる。
【0019】
ロータリドライブは、好ましくはシリアルインターフェイスを介して、好ましくは中央制御装置に接続される。
【0020】
いずれの場合にもロータリドライブがデジタルドライブ装置を介して制御可能である電動機を有していれば、制御および調整の点で利点が得られる。このタイプのデジタルドライブにより、1対のローラのそれぞれのローラについての角度付き同期動作を特に単純なやり方で維持することができる。デジタルドライブは、特にロータリドライブと歯付きシャフトとが直接接続されている場合、および上述の予め張力のかけられたギヤが用いられ、ギヤの遊びを実質的に排除できる場合には、好適である。
【0021】
制御手段はロータリエンコーダに電子的に接続されてもよく、これにより、いずれの場合にも、ローラの角速度と瞬時位置とについての信号を生成することができる。
【0022】
電動機は、好ましくは、一体化されたロータリエンコーダを有しており、これにより、パルス状の信号を生成することができる。これらの信号は、制御装置のコントローラによって評価することができ、これに基づいて、モータシャフトの回転速度、回転数および回転角を得ることができる。
【0023】
特にデジタルドライブが直接的なシャフト接続と組合せてまたは予め張力のかけられたギヤと組合せて用いられる場合に、達成できるものについては、ローラの回転速度、回転位置および調整を繰り返し達成する必要がない。制御装置によってローラの回転速度および回転位置に直接作用を及ぼすことができる。上述の第1の変形例においては、2つのローラを2つの制御回路によって制御することができる。
【0024】
しかしながら、代替的には、または場合によってはさらに付加的には、制御手段がローラの角速度および位置(角度位置)を調整するためのコントローラを有していれば有利であり得る(第2の変形例)。ローラのロータリドライブを調整すると、たとえば、材料のさまざまな性質のバランスを最適にとることができるという利点が得られる。ロータリドライブは、いずれの場合も、別個の制御ループ回路に割当てられてもよい。
【0025】
1対のローラの歯部同士の間の隙間幅を検出するためのセンサを設けることにより、動作の監視を最適化し得る。センサにより、対の歯付きローラのそれぞれのフランク部分の間に生じる隙間幅を直接的または間接的に測定することができる。間接的に測定する場合、ローラおよび歯部の幾何学的形態を考慮に入れて、2つのローラの角度位置によってそれぞれの隙間幅を計算することができる。センサは、ロータリドライブの制御により隙間幅を互いに等しくすることができるように、制御手段と電子的に協働する。
【0026】
装置は、材料の速度を検出するためのセンサを備えてもよい。このセンサは、移送方向に対して対のローラの前にあり得るかまたは後ろにあり得る。この場合、センサは、ローラを制御するための制御手段に電子的に接続され得る。速度センサは好ましくは非接触型光学センサ、特にレーザセンサ、であり得る。装置によって、材料の先行分または遅れ分を必要に応じて単純なやり方で設定することができる。
【0027】
装置は調整装置を有してもよく、これにより、ローラの回転軸間の距離を設定することができる。
【0028】
調整装置は、ローラの回転軸によって予め定められる距離を短くするかまたは長くするための液圧式または気圧式の変位手段を備えてもよい。この距離を短くすることにより、局所的な変形の効果を高めることができる。変位手段は、たとえば気圧または液圧ピストン/シリンダユニットによって形成されてもよい。上述の変位手段の代わりに、代替的には、たとえばステッピングモータによって動作可能なリニアドライブも構想され得る。気圧または液圧ピストン/シリンダユニットを用いると、とりわけ、糸を太くするかまたは継ぎ合わせた場合(縦糸の接続点)に歯部同士の間の隙間を広くすることができるという利点が得られる。
【0029】
対のローラのうちの一方のローラを、その回転軸に対して、装置の固定キャリア上に固定するよう装着してもよい。対のローラのうちの他方のローラを、固定キャリア上に、距離を短くするかまたは長くするために移動可能に装着してもよい。しかしながら、当然、両方のローラを移動可能となるように構成することも理論的には可能である。
【0030】
縦糸の角度を変える目的で変位装置または手段を制御手段によって制御することができるという点で、縦糸の変形に対して特に簡単に影響を及ぼすことができる。
【0031】
ローラは、直線状の歯部または螺旋状の歯部を備えた平歯車の形状であってもよい。
ローラは、インボリュート状またはサイクロイド状の歯部を有してもよい。しかしながら、他の歯部の幾何学的形態も当然想到可能である。たとえば、歯部は、歯先円の領域においておよび/または歯底の領域において、歯先上に半径を有し得る。実現可能な型には、たとえば、14または40個の歯(すなわち、z=14または40)が備わっていてもよい。しかしながら、他のzの数も当然想到可能であり得る。材料のタイプに応じて、特定の装置において、さまざまな数の歯、係数および歯先形状を有するローラが用いられてもよい。しかしながら、代替的には、ローラはプロファイルを有していてもよい。
【0032】
驚くべきことに、いずれも異なる歯部を有している2つ以上の対のローラを連続的に用いている装置は、良好な軟化結果をもたらすことが判明した。たとえば、変形ユニットは、z=14である第1の対のローラと、z=40である第2の対のローラとを含み得る。結果として、当該方法の普遍性を広範囲のタイプの織物に対して拡張させることができる。このタイプの複数対のローラを備えた構成も、他のドライブ解決策を有する装置にとって有利になり得る。この場合、別個の作動可能なドライブを必ずしも設ける必要はないだろう。
【0033】
1対のローラのそれぞれのローラの歯部は、侵入深さtが歯深さの約0.1〜0.6に達するように、少なくとも通常の動作段階において互いに係合するよう構成され得る。
【0034】
驚くべきことには、摩耗を避けるために、歯部の領域においてローラをクロムめっきまたは硬化すると、特に良好な軟化結果を達成することができることが判明した。
【0035】
本発明のさらなる局面は、好ましくは上述の装置を用いて、連続的に搬送される材料を処理するための方法に関する。材料は2つの協働するローラ間に通される。材料は、このようにローラ間に通されると、歯の機械的作用によって変形される。ローラのロータリドライブは、角速度およびローラ位置に関して同期する動作を維持する目的で、有利には中央制御装置によって制御される。
【0036】
プロファイルのあるローラまたは歯付きローラの円周速度が歯部の領域における材料速度よりも速くなる(先行する)ように当該ローラの回転速度が選択されれば、有利であり得る。このタイプの動作においては、含浸によって糸に施された過剰な材料を、ここでも特に単純に除去することができるか、または、軟化プロセスに対する影響を高めることができる。
【0037】
先行分または遅れ分をもたらすために、材料速度とローラの回転速度との相対的移動を設定することができる。
【0038】
材料は、対のローラを備えた少なくとも2つの変形ユニット間に通すことができ、いずれの場合も、少なくとも2対のローラは異なる歯部を備えている。それぞれの対のローラのロータリドライブは、異なる対のローラの場合には、歯部の領域において異なる回転速度が得られるように、制御可能である。2つの変形ユニットは、個々に相対的に移動させて(先行させて)制御することができる。こうして各ユニットはそれ自体の先行分を有し得るかまたは発生させ得る。このため、織物のタイプに応じて、軟化の度合いをさらに適合させることができる。
【0039】
本発明のさらなる個々の特徴および利点は、以下の具体的な実施例の説明および添付の図面から得られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】先行技術に従った材料を変形させるためのユニットを備えた設備を示す概略図である。
【
図2】材料を変形させるための、本発明に従ったユニットを備えた設備を示す簡略図である。
【
図4】変形ユニットの変形領域を大幅に拡大して示す図(
図1の詳細D)である。
【
図7】さらなる具体的な実施例に従った装置を示す図である。
【
図8】
図7に従った装置のローラの断面を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、材料2を変形させるための2つのユニットを備えた従来のタイプの構造を有する設備を示す。設備は、2つの牽引機構23および29ならびに2つの測定ローラ27および28を有する。20で示される変形ユニットは2つの要素21,22を備える。これら2つの要素21,22はナイフエッジを備え、このナイフエッジを通るよう材料2を導いて、同時に折り曲げる。20′で示される第2の変形ユニットは、同様に作動位置にある。非作動位置にするために、変形ユニット20,20′をたとえばレバー機構(図示せず)によって回動させることができる。この回動は対応する矢印によって示される。ナイフエッジにより、摩擦に起因する比較的高い制動作用がもたらされる。偏向させるローラ24が2つのユニット間に位置する。
図1に従った基本的な設定は、たとえば、出願人の「Softener Paraflex」装置において実現される。
【0042】
本発明に従って
図2が示す設備においては、材料2がe方向に連続的に搬送される。この場合、材料2は、変形(軟化)を目的として、以下においてより詳細に説明されるユニット1を通過する。ユニット1は逆方向に回転するローラ3,4を有する。設備は、いずれの場合も、変形ユニットの上流および下流において牽引機構23,29を備える。測定ローラ27および28により、材料の引張り力を測定および設定することができる。
図2から推論され得るように、上記測定ローラ27および28は、材料がほぼ真直ぐな線に沿って垂直に変形ユニット2にまで導かれたり変形ユニット2から遠ざけられたりするように、この材料を偏向させる。材料の速度またはユニットの上流および下流における引張り力は、牽引機構のデジタルドライブによって制御および設定することができる。
【0043】
図3は、歯部を備えた2つの逆方向回転ローラ3および4を示す。e方向に搬送される材料2は、ローラ3と4との間に通される。ローラ3および4は、この場合、これらローラ間に受取られる材料2が歯部の機械的作用によって変形され、かつ移送方向eから逸れて変形されるか、または、ループ化によって移送方向に処理されるように、互いに動作可能に接続される。1で示される変形ユニットは、シート状の構造を処理するための装置の一体部分をなす。特に好ましい適用分野は、この場合、タイヤコードの製造である。対応する装置は、含浸区画と、後続の乾燥区画とを有する。この変形ユニットは、材料の移送方向に対して乾燥区画(ここでは図示せず)に追従するように装置に設置することができる。この変形ユニットは、その構造寸法がコンパクトであるため、既存の設備に設置するのにも適している。2つのローラ3および4は、寸法決めおよび歯付けに関して等しく構成される。
【0044】
図4は、
図1における対の歯車の噛合いの詳細を拡大して示す図である。
図3から、そして特に
図4に従った詳細図から推論されるように、個々の歯は歯付きギヤと同様に明らかに互いに係合しているが。この互いとの噛合いにより歯同士が接触することはない。材料2への損傷を避けるために、少なくとも通常の動作段階において歯部同士の間に十分な隙間距離を設けなければならない。
図4においては、歯11の歯車フランクと歯12の歯車フランクとの間の第1の隙間距離をAで示し、歯11のフランクと歯13のフランクとの間の第2の隙間距離をBで示す。歯11が、隣接する歯12と13との間にある反対側の歯底領域へと侵入する深さをtで示し、歯の深さをhで示す。
【0045】
歯先円の線を
図4において破線で示す。歯11は、
図2に従った位置では、歯12と歯13との間でちょうど中心に位置する。この位置で歯の最大侵入深さtが得られる。ローラ3、4はインボリュート歯部を有する。
【0046】
さらに、材料を破損させたり材料に損傷をもたらしたりすることなく、材料に突然起こる非平坦(Unebenheiten)または肥厚化(Verdickungen)を相殺することができるように、ローラのうち少なくとも1つが移動可能に配置されれば、有利であり得る。対応する変位方向は、
図3において矢印aで示される。
【0047】
最適に動作させるために、ローラ3および4は同期的に回転しなければならず、隙間A、Bが制御されなければならず、隙間幅は好ましくは等しくなければならない。このために、個々のローラ3,4を駆動するためのそれぞれのロータリドライブは、デジタル制御装置8に電子的に接続される。制御装置8は、ロータリドライブに制御信号を送信し、これにより、ローラが等しい角速度(ω1=ω2)で回転し、ローラのそれぞれの位置は同じままとなる(条件A=B)。結果として歯部の円周領域における速度v1,v2は同様に等しくなる。F1およびF2は、e方向または反対方向に作用する材料に対する引張り力を示す。センサ14により、材料の速度v3を測定することができる。たとえばACサーボモータとして構成されるロータリドライブ5,6は、ロータリエンコーダによって、特に、非常に高い角度分解能を有するデジタルエンコーダによって、制御される。調整システムにおけるギヤの遊びを回避するために、デジタルエンコーダは好ましくはローラに直接固定される。
【0048】
代替的には、または、ローラのためにロータリドライブのロータリエンコーダを介して制御することに加えて、自動制御を行ってもよい。17および18はセンサを示しており、これらセンサを用いて、ローラの角速度および角度位置を測定することができる。これらのセンサ17,18は、信号線を介して制御装置8に接続可能であり、いずれの場合にも、ロータリエンコーダとともに1つまたは共通の制御ループ回路を形成することができる。自動制御のために制御装置には比較器が組込まれてもよい。比較器は、それ自体公知の方法で、回転の速度または回数についての実際の測定値を所望の値と比較する。制御装置8は、この比較に基づいて、調整を目的として補正する態様でロータリドライブに作用する。同様にして、ローラの位置または角度位置が検出され、互いに比較され、補正または調整されなければならない。ロータリドライブと、必要に応じて材料センサ14と、場合によってはさらに、ローラ円周上の角速度および/または回転速度ならびにローラの角度位置を検出するためのセンサ17および18とが、バスシステムを介して互いにリンクされてもよい。ローラ3および4の如何なる異なる回転速度も制御ループ回路を介して補正することができる。
【0049】
多くの場合、材料の移送速度およびローラの回転速度が等しければ有利である。しかしながら、仮に歯付きローラ3および4が搬送速度よりも速い速度で移動する場合(すなわち、v1,v2>v3)、糸の引張り力を大きくして、軟化作用を増大させることができる。特にタイヤコード製造の応用分野においては、ポリエステル糸上の過剰な含浸材料を特に簡単に除去することができるか、または、縦糸をさらにもっと軟化させることができる。しかしながら、応用される特定の分野または場合には、ローラが材料よりもゆっくりと移動すれば有利であり得る。
【0050】
たとえば矢印aの方向にローラ3を移動させた結果、回転同期動作の場合、対のローラ間の距離Cにより、隙間幅A,Bを同じ方向に大きく(または小さく)することができ、こうしてさまざまな材料に適合させることができる。さらに、隙間幅を変えることにより、歯によって作用される材料のループ化の度合いを設定することができ、結果として、軟化作用の強さに影響を及ぼすことができる。
【0051】
図5および
図6は、本発明に従った変形ユニット1の構造の詳細を示す。
図3から推論され得るように、ローラ3の歯部は、搬送される材料の最大布幅を規定するローラ幅W全体にわたって延在する。さらに、
図5において、ローラのためのロータリドライブとしての電動機5,6を見ることができる。5で示されるAC電動機は、デジタルロータリエンコーダまたはパルス発生器を備えており、ローラ3と同軸上に配置され、ローラ3に直接接続される。直接接続は固定継ぎ手16を介してなされる。第2のローラのうち、4′で示される端面接続片のみが
図5に示される。ローラの接続片4′はギヤ7に結合されており、これにより、電動機6とギヤ接続される。ロータリドライブがサーボモータとして設計されれば、制御および調整の点で特に有利になり得る。電動機はたとえばブラシレス直流モータであってもよい。測定された回転速度または角速度(v1またはω1、v2またはω2)ならびに回転位置および角度位置は、閉制御ループまたは場合によっては開制御ループにおいて制御装置によって調整することができる。この制御装置は、速度および角度位置の実際の測定値と速度の所望値または角度位置の所望値とを比較し、制御装置の比較器ユニットによって、対応する変数を調整の目的でロータリエンコーダに送信する。ローラ3,4は、真直ぐな歯部を備えた平歯車の形状である。
【0052】
図6は、材料が垂直な移送経路に沿って、側面図において真直ぐに変形ユニット1にまで導かれ、最終的に変形ユニット1から遠ざけられる図を示す。移送方向eは上向きに延びている。しかしながら、当然、他の向きまたは方向を考慮に入れてもよい。
図6は気圧ピストン/シリンダユニット9を示す。この気圧ピストン/シリンダユニット9により、ローラをa方向に前後に移動させることができる。気圧ピストン/シリンダユニット9は、連結式に支持要素26に接続され、その上にローラ4が回転可能に装着される。支持要素はその上方端部が、回転の中心を通って停止キャリア15に接続される。レバーが比較的大きいために、ローラ4をa方向に有利に変位させることが確実にされる。ローラは、いずれの場合にも14個の歯を有しており、たとえば、128mmの歯先円直径と、約93mmの歯底円直径とを有し得る。
【0053】
図7は、本発明に従った変形または軟化ユニット1のさらなる変形例を示す。この変形または軟化ユニットは、異なる歯部を有するローラが用いられている点においてのみ、本質的に、先の具体的な実施例に従ったユニットとは異なっている。この具体的な実施例においては、ローラ3および4はいずれの場合も40個の歯を備える。歯部に関する構造上の詳細は、ローラ30および40の断面を縮尺通りに示す添付の
図8から推論され得る。
【0054】
図8から推論され得るように、個々の歯12,13は、ほぼ真直ぐに延びるフランク線を有する。それぞれの歯面同士の間の歯先および歯底は、ほぼ円形の構成をなす(たとえば、1mm〜3mmの直径)。隣接する歯12と13との間のフランク角はβで示され、この具体的な実施例においては29°となる。