特許第5959525号(P5959525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959525
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】コンピュータネットワークのサーバ
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/414 20060101AFI20160719BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G05B19/414 Z
   G05B19/418 Z
【請求項の数】21
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-540290(P2013-540290)
(86)(22)【出願日】2011年10月31日
(65)【公表番号】特表2013-546079(P2013-546079A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2011069100
(87)【国際公開番号】WO2012069284
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年8月4日
(31)【優先権主張番号】102010052556.1
(32)【優先日】2010年11月25日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】202010017375.2
(32)【優先日】2010年11月25日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011108361.1
(32)【優先日】2011年7月22日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/510,816
(32)【優先日】2011年7月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512178927
【氏名又は名称】コメット グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】ベンシュ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クレイマー、ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】フロニウス、ユエルゲン
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−265034(JP,A)
【文献】 特開2008−296301(JP,A)
【文献】 特開2007−264824(JP,A)
【文献】 特開2007−102625(JP,A)
【文献】 特開平09−269808(JP,A)
【文献】 特開平03−184746(JP,A)
【文献】 特開昭62−063049(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0004786(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0059434(US,A1)
【文献】 Zhai Wen-zheng ; Hu Yue-li,Design and Implementation of CNC Machine Remote Monitoring and Controlling System Based on Embedded Internet,Proceedings of 2010 International Conference on Intelligent System Design and Engineering Application (ISDEA),2010年10月,Volume:1,pp.506 - 509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/414
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワーク(1)のサーバ(19)であって、
前記サーバ(19)は、通信回路(20)を介して前記通信ネットワーク(1)に接続されており、
前記サーバ(19)上で、データベース(21、22)にアクセスするデータベースアプリケーションが動作し、
前記データベース(21、22)は、データの収集と管理のために形成されており、
前記サーバ(19)は、前記通信ネットワーク(1)を介して直接的に、または前記通信ネットワーク(1)の追加サーバ(9)を介して間接的に、さまざまな企業(6、7、8)に割り当てられた、ツール(18)を使用するための複数の工作機械(2、3、4、5)に接続されており、
前記サーバ(19)は、前記複数の工作機械(2、3、4、5)の前記ツール(18)のデータ、前記複数の工作機械(2、3、4、5)のツールホルダ(17)のデータ、前記複数の工作機械(2、3、4、5)のデータ、および前記ツール(18)に関する動的情報受信する受信手段を備え、
前記サーバ(19)は、受信されたデータと、前記データベース(21、22)にファイルされているデータベースファイルデータとを処理して、前記ツール(18)に関するアップデートされたデータを生成する処理手段を備え、
前記アップデートされたデータの情報量は、前記受信されたデータと、前記データベース(21、22)にファイルされている前記データベースファイルデータと、の情報量の合計を超える、
ことを特徴とするサーバ(19)。
【請求項2】
前記複数の工作機械が、前記ツール(18)再研磨、再コーティング、検査、測定、または評価するための器を含むことを特徴とする、請求項1に記載のサーバ(19)。
【請求項3】
前記工作機械(2、3、4、5)のツール(18)のデータ、前記ツールホルダ(17)のデータ、前記器のデータからなる群から選択された少なくとも1つであって、前記サーバ(19)が受信可能なデータが、前記ツール(18)の識別データ、前記ツールホルダ(17)の識別データ、前記器の識別データ、からなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項2に記載のサーバ(19)。
【請求項4】
前記ツール(18)が複数の個別部品を含み、前記複数の個別部品の少なくとも1つに、個別の識別データが割り当てられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項5】
前記工作機械(2、3、4、5)、および前記器からなる群から選択された少なくとも1つのデータであって、前記サーバ(19)が受信可能なデータが、前記複数の工作機械(2、3、4、5)の識別データ、前記複数の工作機械(2、3、4、5)の運転パラメータ、前記器の運転パラメータ、タイポロジックな機械情報、ワークピース情報、およびワークピース材料情報、からなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項6】
前記データベース(21、22)にファイルされている前記データベースファイルデータは、前記サーバ(19)が受信可能なデータに属し、かつ、前記ツール(18)に関する静的情報を含むことを特徴とする、請求項に記載のサーバ(19)。
【請求項7】
前記受信されたデータと、前記データベース(21、22)にファイルされている前記データベースファイルデータを処理する前記処理手段が、受信された前記動的情報、前記データベース(21、22)から得た前記静的情報、前記複数の工作機械(2、3、4、5)の前記運転パラメータ、および前記器の前記運転パラメータ、からなる群から選択された少なくとも1つを処理して、前記ツール(18)に関するアップデートされた情報を生成し、
前記アップデートされた情報の情報量は、受信された前記動的情報、前記データベース(21、22)から得た前記静的情報、前記複数の工作機械(2、3、4、5)の前記運転パラメータ、および前記器の前記運転パラメータ、の情報量の合計を超える、
ことを特徴とする、請求項に記載のサーバ(19)。
【請求項8】
前記受信手段は、前記ツール(18)の製造者の、前記ツール(18)に関する製造者情報を、前記通信ネットワーク(1)に接続された前記追加サーバ(9)から受信するためにも形成されており、
前記処理手段は、前記アップデートされた情報を、前記製造者情報にも依存して生成するために形成されている、
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項9】
前記受信手段は、前記ツール(18)に関するサービスをツール製造者と第三者とに提供するサービス提供者のサービス提供者情報を、前記通信ネットワーク(1)に接続された前記追加サーバ(9)から受信するためにも形成されており、
前記サービス提供者は前記ツール(18)に変更を加え、
前記処理手段は、前記アップデートされた情報を、前記サービス提供者情報にも依存して生成するために形成されている、
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項10】
前記サーバ(19)は、生成され、かつ、前記アップデートされた情報をデータベース(21、22)に記憶する記憶手段を備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項11】
前記サーバ(19)は、前記ツールの製造者の前記追加サーバ(9)にファイルされている前記製造者情報をアップデートするため、生成され、かつ、前記アップデートされた情報を前記ツールの製造者の前記追加サーバ(9)に伝送する手段を備えることを特徴とする、請求項に記載のサーバ(19)。
【請求項12】
前記データベース(21、22)には、前記複数の工作機械(2、3、4、5)および前記器、の少なくとも1つのプログラミングのための、ソフトウェアが記憶されており、
前記処理手段は、前記アップデートされた情報に基づいてアップデートされたソフトウェアを生成するために形成され、
前記サーバ(19)は、前記アップデートされたソフトウェアを前記複数の工作機械(2、3、4、5)、および前記器、の少なくとも1つに、前記通信ネットワーク(1)を介して伝送する伝送手段を備えることを特徴とする、請求項2〜11のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項13】
前記ソフトウェアは、推奨切削データ、前記複数の工作機械(2、3、4、5)の設定プログラム、および衝突解析モデル、からなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項12に記載のサーバ(19)。
【請求項14】
前記サーバ(19)の前記処理手段によって生成され、かつ、前記アップデートされた情報は、使用された前記ツール(18)、対応する前記ツールホルダ(17)、および前記複数の工作機械(2、3、4、5)、からなる群から選択された少なくとも1つについて、将来を指向するステートメントを含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項15】
生成され、かつ、前記アップデートされた情報が、前記ツール(18)の残り寿命、使用頻度、使用時間、交換時期、切削データ、前記ツール(18)によって製造された部品の部品品質、および使用されたバイトに関するデータ、からなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項16】
前記処理手段は、前記動的情報、前記データベース(21、22)から得た前記静的情報、および前記複数の工作機械(2、3、4、5)の前記運転パラメータ、からなる群から選択された少なくとも1つを、ニューラルネットワーク、分類、および統計的評価、からなる群から選択された少なくとも1つによって処理するために形成されていることを特徴とする、請求項に記載のサーバ(19)。
【請求項17】
前記サーバ(19)は、前記データベース(21、22)に記憶されている情報および生成され、かつ、前記アップデートされた情報、の少なくとも1つを、前記通信ネットワーク(1)を介して前記サーバ(19)に接続されているクライアント(25)の少なくとも1つに宛てて伝送する手段を備えることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項18】
前記サーバ(19)は、前記データベース(21、22)に記憶されている前記情報および生成され、かつ、前記アップデートされた情報、の少なくとも1つにアクセスする権限を前記クライアント(25)が付与されているか、を点検する点検手段を備えることを特徴とする、請求項17に記載のサーバ(19)。
【請求項19】
前記サーバ(19)介して、前記クライアント(25)が、前記データベース(21、22)に記憶された前記情報および生成され、かつ、前記アップデートされた情報、の少なくとも1つにアクセスすることを特徴とする、請求項17または18に記載のサーバ(19)。
【請求項20】
前記サーバ(19)は、閉じたコントロールループの制御装置を形成することを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載のサーバ(19)。
【請求項21】
前記コントロールループの制御対象が、前記複数の工作機械(2、3、4、5)によって形成され、
前記コントロールループの測定装置が、センサよって形成され、
前記コントロールループのアクチュエータが、使用された前記ツール(18)と同じタイプのツール製造するための機器であり、
前記測定装置は、前記工作機械(2、3、4、5)の前記ツール(18)または前記ツールホルダ(17)のデータ、および工作機械(2、3、4、5)のデータ、および前記ツール(18)に関する動的情報からなる群から選択されたすくなくとも1つを収集して、信号量として前記通信ネットワーク(1)を介して前記サーバ(19)に伝送し、
前記サーバ(19)の前記処理手段は、受信されたデータまたは情報によって、前記データベース(21、22)にファイルされたデータによって、少なくとも1つの指令量(Fuerungsgroesse)によって、制御偏差を検出し、
前記サーバ(19)の前記処理手段は1つのレギュレータを備え、
前記レギュレータは、前記制御偏差によって前記アクチュエータのための前記信号量を検出して、前記アクチュエータに伝送する、
ことを特徴とする、請求項20に記載のサーバ(19)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータネットワークの次のようなサーバに関する。すなわち、このサーバは、通信回路を介してネットワークに接続され、データの収集と管理のために形成されたデータベースアプリケーションを実行するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のサーバについては、さまざまに異なる用途のための、さまざまに異なる実施形態のものが、従来の技術から公知である。このサーバは、専用のコンピュータとして形成することができ、このコンピュータ上で、サーバソフトウェアやデータベースアプリケーションが動作する。代替的に、このサーバを、任意のコンピュータ上で動作するサーバソフトウェアとして形成することもできる。この場合、コンピュータを、サーバソフトウェアの処理のためだけでなく、そのほかの任務をも意図することも、考えられる。
【0003】
そのほか従来の技術による工作機械分野では、ツール(Werkzeug)および/またはツールホルダ(Werkzeughalter)に一意的な識別表示を設けることが公知である。この識別表示を、たとえば工作機械のツール管理のために読み込んで、次のように翻訳、処理することができる。すなわち、工作機械はどの時点でも、どのツールがツールマガジンに収められ、どのツールがツールスピンドルにあり、または使用中であるかを、知っているものとする。ツールまたはツールホルダの識別表示は、たとえば、それら識別表示を工作機械が無接触で読み出しできるような表示とする。このことは、たとえば、特許文献1から公知である。さらに特許文献2から公知のこととして、ツールホルダに設けられたメモリに、ツールに関する追加的情報を記憶させ、この情報を、必要があれば工作機械から読み出して、工作機械上で動作する制御プログラムがこの情報を考慮に入れることができる。この種の情報は、たとえばツールの長さ、直径、または摩耗である。
【0004】
ツールまたはツールホルダの識別データは、それに適した記憶手段に、たとえばバーコード、いわゆるQRコード(登録商標)、データマトリックス、またはRFIDタグといった記憶手段に、記憶されている。ツールおよび/またはツールホルダの識別データのための記憶手段は、これらツールおよび/またはツールホルダ上に外側から取り付けられ、そして/またはツールおよび/またはツールホルダの中に組み込まれることができる。記憶手段に記憶された識別データは、光学的経路で、または無線接続を介して、またはそのほか任意の方法で、無接触で読み出しできる。そのために工作機械はそれに適した読み出し手段を備える。
【0005】
従来の技術から公知である工作機械の場合、ツールまたはツールホルダの識別データの評価と処理、およびツールに関する追加的情報であってこの識別データと関連があるものの評価と処理は、設備的にはそのときどきの工作機械に、そして空間的にはそのときどきの工作機械の使用場所に限られている。たとえば第1の工作機械において、識別データによって識別されたある特定のツールについて、たとえばそのツールの有効寿命(Nutzungsdauer)および/または使用形態といったさらなる情報が検出されて記憶される場合、これらの追加的情報は、ツールがほかの工作機械に、場合によってはほかの使用場所へと交換された後は、そこではもはや利用できない。摩耗したツールが、ある特定の工作機械で初めて使用される場合、そこでは新品のツールと見なされる。なぜならば、ツールの有効寿命および/または使用形態についての情報が存在しないからである。
【0006】
また公知の工作機械においては、データ処理の方法と範囲が非常に限定されている。このデータ処理は、工作機械における(ツールマガジン、スピンドルにおける、または使用中の)ツールのその時点のポジションに関する情報の検出や、個々のツールの寸法と摩耗に応じた補正データの検出または処理に限られる。各ツール、各工作機械、または各使用場所に関する広範囲なデータ処理、たとえば、複数の工作機械の複数のツールに、そればかりか使用場所を異にするそれらツールに割り当てられた情報、データ、および/または運転パラメータの統計的評価によるそのようなデータ処理は、従来の技術によっては実現できない。
【0007】
工作機械のツールを開発、製造する際、ツール製造者は通常、自分たちの長年の技術的経験に頼る。ツールの使用現場からツール製造者へのフィードバックは、ほとんどない。せいぜい極端に異常なツール不具合があった場合に、ツール製造者宛てに返却物が生じ、その返却物は、ツールに生じた損傷とその原因に関して調査される。しかしツール製造者におけるツールの調査は、わずかな個別のケースに限られる。損傷発生前またはその時点におけるツール使用に関する情報が原因究明に必要であるが、この情報の場合、ツール製造者は、ツールユーザからの情報に頼らざるを得ない。これにより、損傷原因の究明はしばしば時間がかかり、多大の作業を要する。それどころか、ときには正確な原因究明が不可能であるか、またはユーザのからの情報が不正確であるかまたは不完全であるため、誤った原因が求められる。このタイプの別なツールを将来製造する際、そして/または将来ツールを開発、製造する際に、ツール損傷とその原因を考慮に入れることは、まったくわずかな例外として行われる。なぜなら、それは非常に手間がかかり、結局のところ信頼性に欠けるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0214666号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0462279号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来の技術を出発点として、本発明の課題は、工作機械のツールのライフサイクルをよりよく、とくに隙間なく、そして信頼性をもって観察して、ツール製造者と、必要であれば、権限ある第三者と、に、ツールの有効寿命、使用形態、残り寿命などに関するあらゆる種類の追加的情報と、信頼性ある情報とを供給し、そしてツールのユーザと製造者のためそのような付加価値を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、冒頭に挙げた種類のサーバから出発して、次のことを提案する。すなわち、まずサーバを、通信ネットワークを介して直接に、またはネットワークのそのほかのサーバを介して間接的に、複数のさまざまな企業(Unternehmen)に属する企業内部の(unternehmensinternen)工作機械および/またはそのほかの機器に接続させる。ここにいうそのほかの機器とは、ツールおよび/またはワークピースを再研磨、再コーティング、検査、測定、または評価するためのものである。次に、サーバに、工作機械のツールまたはツールホルダの識別データを、そして/または工作機械の識別データおよび/または運転パラメータを、そして/またはツールに関する動的情報を、受信する手段を持たせる。次に、データベースアプリケーションに、ツールに関する静的情報であって上記識別データに割り当てられたものをファイルする。次に、サーバに、受信された動的情報、データベースから得た静的情報および/または工作機械の操作パラメータを処理する手段を持たせて、ツールに関するアップデートされた情報を生成する。この場合、アップデートされた情報の情報量は、受信された動的情報、データベースから得た静的情報および工作機械の操作パラメータの情報量の合計を超えるものである。
【0011】
さまざまな企業に属するそのほかの企業内部の機器、すなわちツールの再研磨、再コーティング、検査、測定、または評価のためのこれらの機器、かつネットワークのサーバが好ましくはそのほかのサーバを介して接続されているこれらの機器は、たとえば次のものの再生のための任意のマシンツールとする。すなわち、ツール、事前設定システム、測定機器、コーティング設備、コーティング機器、ツールの保管場所(たとえば取り出しを記帳している(mit buchener Entnahme)委託倉庫またはツールチェスト)、またはそのほかの検出装置と通信装置、たとえばMES/BDE(運転データ収集)端末、移動電話、およびサーバから物的データまたは切削データなどを呼び出すためのPCに類した機器、すなわち任意のそのほかのデータ受信器、データ伝送回路、および/またはデータユーザを再生するための任意のマシンツールである。
【0012】
したがって本発明が提案するのは、一つの企業または企業立地点内部の個別または複数の工作機械だけでなく、さまざまに異なる、空間的に分散された企業または企業立地点を超えて配分された複数の工作機械および/またはデータ受信器、データ伝送回路、および/またはデータユーザをも、相互にネットワーク化することである。工作機械および/またはそのほかのデータ受信器、データ伝送回路、および/またはデータユーザを相互にネットワーク化するには、通信ネットワークが使用される。この通信ネットワークは、任意の通信ネットワーク、とくにインターネットであってよい。この通信ネットワークを介して、工作機械および/またはそのほかのデータ受信器、データ伝送回路、および/またはデータユーザは、任意の情報を伝送でき、これらの情報は本発明によるサーバに合流する。伝送された情報は、詳細には、識別データであって、この識別データは、工作機械および/またはそのほかのデータ受信器、データ伝送回路、および/またはデータユーザで用いられる、またはそこに存在するツールまたはそのツールホルダの識別データであり、工作機械の識別データ、および/または工作機械の運転パラメータである。運転パラメータとはたとえば、ある特定のツールに対する工作機械の回転数、送り、および/または使用時間である。伝送された情報は、タイポロジックな機械情報、すなわち製造システムに関するタイポロジックな情報であり得る。それはたとえば、工作機械の構造(たとえばガントリ、ポータル、コンソール、トランスファライン、ロータリテーブルマシンなど)、スピンドルとツールとの間の相対的自由度の数(NC軸の数)、剛性マトリックス(たとえば、相対的、絶対的、静的、動的剛性マトリックス)、または検出されたツールと実際に結び付けられる安定性ダイアグラムである。
【0013】
本発明によって得られた付加価値情報は、使用条件の適合または最適化のため、そしてツールの安全性改善のために用いることができる。こうして、たとえばツール使用中に機械に集められる情報、とくに使用パラメータを、使用条件の適合のために、たとえば送り速度、切削速度、残り寿命などを上げたり、下げたりするために援用できる。
【0014】
タイポロジックな機械情報を用いて、サーバでは機械分類を行うことができ、次にこの機械分類を、個別のツール、ツールタイプ、材料に割り当てることができる。この区分は、たとえば入力量ベクトルとして、1つのニューラルネットワークに供給することができ、このニューラルネットワークは、使用されたツール、ツールホルダ、および/または工作機械に関する予想を行うことができる。ニューラルネットワークは自己学習型に形成することができるので、検出された事例の増加と、評価基準の適合とを介して、さらに精細に予想を行うことができる。より多くの工作機械についてより多くのタイポロジックな情報が得られて、評価できれば、ツール、ツールホルダ、および/または工作機械に関する予想が、それだけ多くの信頼性を持つようになる。当然のことであるが、タイポロジックな情報に基づいて、ニューラルネットワークを用いるのとは別な方法で、たとえばグループ分けおよび/または統計的評価を用いて、予想を行うこともできる。
【0015】
行われる予想は、たとえば次のことに関する。すなわち、ツールまたは工作機械の予想される残り寿命(Standzeit)、あたえられた使用条件下におけるツールの将来の摩耗、そのときどきの使用ケースに対する工作機械の最適な運転パラメータ、詳細には、ツールの推測される将来の摩耗を考慮した上での運転パラメータ、バイト(Schneidplatte)またはツール全体の交換が生じると予想される時点、およびそのほか任意の将来に向けてのツールおよび/または工作機械関連のステートメント(Aussagen)に関する。
【0016】
加工作業それぞれ、ツールそれぞれ、とくに材料それぞれの情報を用いて、サーバではワークピース分類/材料分類を行うことができる。この場合、またもやさまざまに異なる分類を、ツールとツールタイプに割り当てることができる。これによって、ツールまたは工作機械の加工能力、予想される寿命(残り寿命)について、非常に正確で信頼性ある評価が可能となる。
【0017】
ツールまたはツールホルダに割り当てられた識別データは、それ自体従来の技術から公知の方法で、それに適した記憶手段に記憶されている。この記憶手段は、ツールまたはツールホルダの上または中に配置されていて、それに適した読み取り手段、たとえば工作機械の倉庫・在庫管理部門のロジスティックス読み取り機器によって(たとえば棚卸などのため)、無接触で読み出すことができる。当然のこととして、別個の読み取り手段を設けて、この読み取り手段が、読み込まれた情報を伝送する目的で、工作機械に接続されることも考えられる。同様にして、工作機械が識別データを、接触型の方法、たとえばスキャニングパターンを用いて読み込むことも考えられる。したがって、いずれの工作機械もいかなる時も、どのツールが工作機械に取り付けられているかについて、工作機械におけるツールのポジションについて、とくに、どのツールが使用中であるか、または使用中であったかについて、展望を持たなければならない。これらの情報やこのほかの情報は、工作機械から、通信ネットワークを介してサーバに伝送される。
【0018】
さらには、ツールまたはツールホルダに割り当てられた識別データを、事前設定機器またはツール管理プログラムによって読み込むことが考えられる。事前設定機器によって、たとえばツールの切削位置を考慮して、ツールを使用する前に工作機械中で測定できる。そのためにこの事前設定機器には、ワークピースの代わりに測定機器が設けられている。事前設定機器は、工作機械でツールを使用するときに考慮される補正値を求める。このためには、1つの方法として、工作機械の中で、補正値に相当する補正を手動で行うことができる。代替的に、この補正値を工作機械に伝送し、そこでツール使用時に自動的に考慮することができる。補正値の伝送は、手動で、または事前設定機器と工作機械との間のデータ通信回路を介して行うことができる。
【0019】
サーバのデータベースアプリケーションにおいては、ツールに関して識別データに割り当てられた静的情報がファイルされている。この静的情報は、たとえば、ツールの種類、製造者、製造日付、ツールの寸法、バイトの個数、材料などである。ツールとしてはとくに、ワークピースの切削加工のためのツールが用いられる。ツールの種類は、たとえば、ドリル、旋削工具、フライス、精密旋盤、リーマ、ホーン、砥石または砥石車、ワークピースの仕上げ研磨のための摩擦片、仕上げベルトまたは仕上げ砥石、または金属その他の材料からなるワークピースを切削加工するそのほか任意のツールである。当然のことであるが、本発明は、そのほかのツールにも用いることができる。たとえば、成形ツール(Umformwerkzeuge)、とくにパンチングツール/スタンピングツール、そしてまた、深絞りポンチ、ダイおよびポンチなどである。基本的に本発明は、あらゆる種類の機械ツールのために使用でき、この機械ツールは、摩耗から生じる摩損と、それにより知られる最終的寿命の下にある。ある特定のツールに対してデータベースアプリケーションに記憶されている静的情報の種類と範囲は、ツールの種類に、そしてデータベースアプリケーションに基づくデータベースまたは記憶媒体の容量に、そしてアップデートされた情報の計算に望まれる正確さと信頼性に、強く依存する。
【0020】
サーバにおけるツールまたはツールホルダの一意的識別を可能とする識別データのほかに、工作機械は、そのほかの情報、たとえばツールに関する動的情報をもサーバに伝送する。伝送される動的情報は、たとえば、ツールの有効寿命と仕様形態、ツールの摩耗、バイトの起こりうる交換に関する情報、加工されるワークピースの材料と寸法などである。個々のツールおよび/または割り当てられたツールホルダを、追加的センサを持つものとして形成することが考えられる。この場合、センサ信号は、やはり動的情報としてサーバに伝送することができる。こうしてたとえば、ツールホルダに力センサ、振動センサ、またはトルクセンサを組み込み、このセンサは、ツールが使用されている間、ツールに作用する力またはトルクの大きさを検出して、それに適した送信手段により、好ましくは無接触で工作機械の対応する読み取り手段に伝送することが考えられる。次にこの読み取り手段から、これらのデータは、本発明によるサーバに伝送される。動的情報は、ツールの使用場所での環境条件に関する情報でもあり得る。したがってたとえば、工作機械の環境においてまたは工作機械自体において、それに適したセンサ、たとえば温度を検出する、そして/または精密加工のときは湿度そのほかの値を検出するセンサを設けることが考えられる。さらには、一般的プロセス監視のためのセンサを、ツールが使用されている間、動的プロセスパラメータの検出に用いることができる。このプロセスパラメータもまた、サーバに伝送できる。さらには、ある特定のツールとともに用いられた冷媒、研磨剤、またはラップ材の量もまた、動的な情報であってよく、工作機械から中央のサーバに伝送される。
【0021】
さまざまなツールに関して受信された識別データを用い、サーバでは、現在いかなる工作機械にいかなるツールが存在するか、または使用されているかを、データベースに記憶されている静的情報によって正確かつ一意的に検出することができる。サーバはさらに、受信された動的情報、データベースからの静的情報、および/または工作機械の運転パラメータを処理する手段を備える。サーバに合流する情報を適切に処理することにより、情報上の付加価値を生み出すことができ、この付加価値をツール製造者と第三者に提供することができる。情報の処理は、ツールそれぞれに、すなわちツールのいずれに対しても別々に行うことができ、また複数の同種のツール(ツールタイプ)に対しては、または異なるツール、場合によっては異なる企業または異なる企業立地点の異なる工作機械のツールに対しても、そして/または異なる製造者のツールに対しても、広範囲のこれらツールに対して行うことができる。このような方法で、たとえばニューラルネットワークにより、そして/または利用可能な静的および/または動的情報および運転パラメータの統計的処理によって、特定のツールタイプに対し、個別ケースの偏差から独立した代表性ある平均値を求めることができる。この平均値によって、このツールタイプのツールの品質と寿命(残り寿命)について、信頼性あるステートメントが可能となる。これらの情報は、たとえば製造者が考慮に入れて、将来、このツールタイプのツールの品質、安全性、そして/または残り寿命を適合させることができ、すなわち、向上させまたは削減することができる。
【0022】
本発明によって、いわばツールの製造からツールの使用を経てツール製造者にふたたび戻るという、1つの閉じたコントロールループが形成される。
【0023】
この動作のループは、制御対象として工作機械におけるツールの使用を含む。この使用は、たとえばツールの残り寿命をできるだけ長くするという観点から、最適化されるべきである。制御量としては、使用されるツールの動的情報が、測定装置によって、たとえばそれに適したセンサまたはモデルとしての測定装置によって検出され、そして信号量として、ネットワークを介してサーバにフィードバックされる。サーバでは、ネットワークを介して受信された動的情報や、サーバに記憶された静的情報のデータ処理の枠の中で、1つまたは複数の指令量との比較によって、1つの制御偏差(Regeldifferenz)が形成される。この指令量は、たとえば1つの摩耗値によって形成される。この摩耗値は、ツールとそのツールを用いた工作機械のそのときどきの使用に、またはワークピースの材料に、またはそのほかのパラメータに依存するものであり得る。またこの摩耗値は、たとえばできるだけ小さいもの、または少ないものとしたい。指令量はレギュレータに導かれ、このレギュレータは、1つまたは複数のアクチュエータを、たとえば観察されているタイプのツールを製造する機械として、ツールの摩耗が最小になるように制御する。そのとき必要があれば、ツールのそのときどきの使用、およびそのツールを使用する工作機械のそのときどきの使用、またはそのツールを用いて加工されるワークピースの材料、またはそのほかのパラメータを考慮して制御する。すると最適化された条件の下で製造されたツールを、ふたたび上記の方法で観察することができる。
【0024】
このコントロールループは、反応時間が複数日以上かかる。ネットワークを介してサーバにフィードバックされる情報は、かならずしもいずれもが同時に、アクチュエータ制御の際に考慮されるわけではない。むしろ、諸情報がアクチュエータの制御に影響を持つ前に、まずある程度の時間にわたって、たとえば複数時間、複数日、または複数週にわたって、情報を集めて処理することが考えられる。同様に、集められて処理された情報がアクチュエータの制御に影響を持つ前に、まずある程度の個数のさまざまなツール(ツールタイプが同じであることが好ましい)の情報が存在しなければならないことが考えられる。
【0025】
当然のことであるが、ある特定のタイプのツールの品質または寿命を検出することは、個別情報の合計に対して情報上の付加価値を持つアップデートされた情報を生成するために、本発明によるサーバを使用する無数の可能性のうちの、ただ1つにすぎない。ある特定のツールタイプについて検出された寿命を介し、そしてこのタイプのツールの従来の使用期間に関する情報を用いて、ツールの予想される残り寿命、またはいつバイトまたはツール全体の交換が予想されるかを、求めることができる。対応するツールの製造と供給、および発注者におけるそれと関連性ある経理上の措置の生成(たとえば商品受け入れの調整、納品書作成と送付、請求書作成、運送委託、在庫量調整、発注プロセスの開始と監視、および配送追跡システムまたは発注システムへのデータ供給)は、上記情報のおかげで、信頼性をもって時期に遅れず調整が可能である。サーバのデータベースに記憶された情報を用いれば、ツールの在庫が分かるだけでなく、その場所が特定される。
【0026】
データベースにファイルされたデータの首尾一貫性を確保できるよう、データベースには、好ましくは未処理データだけが、または基本データだけが記憶されて、付加価値情報を得るために利用されるものとし、ツール、工作機械、および/または企業の領域で事前処理済み、あるいは評価済みのデータは記憶されないものとする。さもなければ、諸データは、ツール、工作機械、および/または企業の領域で、さまざまな事前処理または評価を受け、それにより、データベースでは、内容の首尾一貫性と統一性に関する問題が生じる危険が存在することとなろう。
【0027】
サーバで生成されアップデートされた情報にアクセス可能とされ得る第三者とは、たとえば、サーバの監視を受けるある特定のタイプのツールを使用して、その使用するツールのその時点の状態と将来(寿命)に関しできるだけ包括的に報告が行われる、このような企業または企業立地点である。すなわち、サーバの処理手段によって行われる広範囲な情報評価と情報処理は、ツールの現在の状態に関するアップデートされた情報の生成を可能とするだけではなく、ツールの将来に関する適切な評価と信頼性あるステートメントを可能とするものである。たとえばこの将来とは、ツールがよく切れなくなるか欠陥を持つようになるまでの、ツールに予想されるその後の残り寿命である。とくにツールの将来に関するステートメントを生成するには、できるだけ多くのツールに関する情報と、対応する工作機械の運転パラメータにアクセスできることと、これらを評価することとが重要である。これらのことは、本発明によるサーバを使用して初めて可能となる。
【0028】
さらには、サーバとそこにファイルされている情報にアクセスする第三者が、次のような可能性を得ることも考えられるであろう。それは、データベースに含まれる情報とデータを評価するための、そして個別の付加価値情報または補完的データベースフィールドを生成するための、新しい機能とアルゴリズムを、存在するデータベースフィールドに基づいてプログラミングする可能性である。そうすると、この新しい機能、アルゴリズム、またはデータフィールドを、第三者はサービスとして、たとえばアプリケーション(いわゆる「App」)の範囲内として提供し、販売することができる。そのためにはこのデータベース構造は公開され、その際、データベースの内容、すなわちそこにファイルされている情報とデータは秘密のままとし、第三者にはアクセスできないものとする。
【0029】
それだけではなく本発明はさらに多くの利点を持つ。たとえば、個別のコードを介して、すなわちツールまたはツールホルダの識別データを介して、ある特定のツールをそのほか多数の情報とリンクすることが可能である。ツール製造者における「品質保証」の環境では、測定値、製造データなどを特定のツールに割り当てることによって、ツールユーザ側に苦情が生じた場合、ツール不具合の原因をより簡単に見つけることができる。追加的な可能性は、たとえば、ある特定のチャージに対する的を絞ったリコールの際に存在する。ツールの「製造」の環境においては、たとえば、ワークピースまたはそのワークピースから製造されるツールを識別し、そして製造部門によってコントロールする(委嘱書類を省略する)ために、個別のコードを利用することが考えられる。
【0030】
ユーザ(ツールのユーザ)における「商品受け取りチェック」の環境では、ツールの一意的な識別表示が、納入されるツールの受け取りをチェックするための、プログラム、図面、技術仕様書などの自動的ダウンロードを可能とする。
【0031】
事前設定機器による「ツール事前設定」の環境では、取り付けられたツールが、個別のコードによって識別可能となり、さまざまなツールに、特定の設定値、推奨切削データなどを割り当てることができる。さらには、ツールの個別のコードに依存して、工作機械のための対応する設定プログラムを、本発明によるサーバから自動的にダウンロードすることが考えられる。
【0032】
企業のユーザにおける「NCプログラミング」の環境では、ツールの個別コードが、工作機械のため、対応する推奨切削データ、衝突解析モデル(2D、3D)などの自動的ダウンロードを可能とする。「ツール利用」の環境では、個別のコードが、ツール使用時間、切削データ、そのツールで製造された部品の品質などの検出、検出された値のサーバへの伝送、検出されたデータのある特定のツールまたはツールタイプへの割り当てを可能とする。それどころか、データベースに含まれている情報を用いて、ツールに推奨ベストプラクティスをあたえることが考えられるであろう。しかしこのような推奨ベストプラクティスは、周囲の工作機械システムに依存するので、推奨ベストプラクティスを検出するためには、工作機械に関する情報(たとえば製造者、タイプ、製造年度など)と、必要があればそのほかユーザに依存する情報を記憶させるべきであろう。
【0033】
「購入/加工」の環境では、個別のコードが、たとえば代替品取り付けまたはほかのツールのバイトの識別を可能とする。ここに挙げた情報のほか、ツール製造者、販売者、顧客(ツールのユーザ)などに関する任意の追加的情報を検出して、個別のコードを介して特定のツールに割り当て、アップデートされた情報を生成する際に考慮することができる。
【0034】
切れなくなったツールまたはバイトを研磨するための「再研磨サービス」の環境では、ツールの個別のコードが、対応する図面、それに切削材料/ラベリング、機械プログラム、実施済みそして/または可能性ある再研磨の回数に関する情報、顧客情報、オリジナルの注文番号などに関する情報の自動的ダウンロードを可能とする。さらにはツールコンディショニングのために、ツールに関する情報、たとえば使用時間のような使用パラメータ、履歴、加工されたワークピースの個数、以前の運転中に生じた(欠陥)データなどを、サーバから呼び出すこともできる。ツールコンディショニングを行った後、好ましくは、ツールに割り当てられている定義されたデータを、データベースにファイルして、そのデータには、ツールのコンディショニングを実行したことと、コンディショニングの方法と範囲が記載されているものとする。
【0035】
ツールまたはツールホルダのいずれの識別コードもユニークな(einmalig)ものであって、いずれのツールに対しても、またはツールのいずれの組み込み部品に対しても、一意的に(ツールタイプに対して、およびツールの個別部分に対して)付与することができる。いずれのコードも、1つの特定のデータベースエントリに一意的に割り当てられている。ツールの個別部品が、ツールのいずれの個別部品に対しても、個別の識別コードを持つ限り、そのときどきのデータベースエントリには、1つの特定のツールタイプに当てはまるすべての情報が記憶されているか、あるいはこのデータベースエントリは、これらの情報の参照を指示する。この識別コードは、たとえば1つの数字/文字組み合わせであって、この組み合わせは、光学的方法、無線通信、またはそのほかの方法によって自動的に読み出し可能な記憶素子(たとえばRFIDタグ、データマトリックス、バーコード、QRコード(登録商標)など)に記憶されている。好ましくはこの記憶素子は、識別コードのほか、追加的な情報を記憶できないものとする。しかし、ツールの使用中または使用後、任意の情報、たとえばツールの使用パラメータを、記憶素子に記憶することができるものとすることも考えられる。このような記憶素子は、たとえば書き込み可能なRFIDタグとして形成されている。これらの情報もまた、読み出して、サーバに伝送し、データベースにファイルすることができる。データベースから、これらの情報は、ツールコンディショニングの際に照会され、ツールコンディショニングの最適化のために援用できる。
【0036】
当然のことながら、ツール全体だけでなく、ツールの個別部品にも、そのときどきに個別の識別コードを割り当てて、個別部品ごとに記憶することが考えられる。ツールの個別部品とは、たとえば、ツールホルダ、バイト、またはインサート(SchneidplattenまたはWendeschneidplatten)などである。個別部品の個々のコードは、同様に読み込み可能であり、データベースに記憶できる。するとデータベースには、多数の個別部品に関する情報がファイルされる。さまざまなツールが、データベースまたはデータベースに割り当てられた加工ユニットにおいて、個別部品からバーチャルに組み立てられ、その結果、ある1つの特定のツールがいかなる個別部品から組み立てされたものであるか、つねに知られていることとなる。するとツールがさまざまな個別部品から新たに組み立てられる場合、たとえば、1つの新しいホルダに収められる場合、またはエクステンションが交換される場合、またはバイトが交換される場合、このことは、データベースで問題なくアップデートの対象となる。
【0037】
データベースは、リレーショナルでかつ自由にコンフィギュレーション可能なフィールド(relationale frei konfigurierbare Felder)を含む。いずれのフィールドも、補完可能であり、情報を供給することができる。データベースのすべてのフィールドに対しても、個別の読み出し/書き込み権が存在する。データベースは、ツールまたはツールの個別の部品のバーチャルな取り付けと取り外しを許容する。たとえば、ホルダにおけるドリルのバイトであって、このホルダから、取り付けられたツールの場所/ポジション、全体の寸法などが得られる。識別は、結合関係にあるあらゆる識別コードを介して、ツール全体に対して行われる。
【0038】
第三者からサーバへの照会は、通常対応するツールの識別コード、またはそのほかの定義(たとえばアイテム番号、名称など)と、要求されている情報を取得するための第三者への権限付与を証明する権限付与コードとを含む。このような権限付与コードは、サーバの運用者がその第三者に分配できる。このコードは、たとえば照会元の機器の立地点に関する情報、照会元の機器を識別するための情報、照会された情報を用いて生成される。こうして顧客別に、購入情報またはジオメトリ情報を供給できる。悪用またはパスワード入力は抑止され、機器の切り替え(使用済み機器を未知の第三者に販売)があっても、悪用による、または許可されないデータ照会は不可能であろう。要求元が権限付与されていることを、伝送された権限付与コードによって、サーバが確認して初めて、希望された情報が、識別コードまたはそのほかの定義によってツールに伝送される。こうして、たとえば顧客すなわちツールのユーザにおいて、ツールの事前設定機器、タイプ、説明、寸法、そのほかのデータを、自動的にダウンロードできる。しかし購入者には、ドリル本体を例に取ると、バイトのタイプ、単価、注文条件、および/またはみずからの在庫を調べることが可能となる。これらの情報によれば、在庫管理のための予測データ、到達費用、期限、そのほかの処理データを調べることさえ、購入者には可能となる。
【0039】
本発明では、情報上の付加価値を得るために、データベースから得た情報をより高いレベルで圧縮する。たとえば顧客または購入者において、同一アイテム(たとえばツールまたはバイト)の個数を求めることができる。そのためには、ツールの使用場所のコードを、1つの特定の階層に弾力的に割り当てることもできる。たとえば、設定機器が顧客Bの工場Aにあって、販売され、次に別の工場Cまたは別の顧客Dの下にある場合、使用場所のコードを考慮に入れるべきであろう。新しい工場Cまたは別の顧客Dは、アップデートされた情報であって、この情報は、データストックをアップデートするためにデータベースに記憶される。
【0040】
最後に、第三者、たとえばツール製造者、顧客(ツールのユーザ)、または任意のそのほかの者が、データおよび情報をサーバに戻して、書き込み箇所/読み出し箇所に依存してデータベースエントリに記憶することが考えられる。したがってたとえば、使用されたバイトと切削データを、使用されたドリルと使用された機械に依存して記憶することが考えられる。同じドリルをほかの機械で使用する際には、場合によって、ほかのバイトが使用されて、別な切削データが得られる。
【0041】
バイト、ホルダ、ツール、そして事前設定機器、工作機械をリンクすることにより(匿名で)、顧客の使用挙動に関して興味ある情報を収集できる。これらの情報は、詳細には、使用頻度、使用時間、交換時期などである。この場合、履歴との比較の中で変更された使用挙動と、さまざまに異なる使用場所間の比較評価とは、ツール供給者にとって非常に興味がある。たとえば、使用時間のばらつき範囲、たとえば国別レベルで見た著しい相違を、機械別または顧客別などで評価することができる。製品イノベーションによって顧客側が体験した改善に関する、具体的調査も可能である。
【0042】
サーバで合流するこれらすべての情報は、中央のサーバにあるデータと情報の適切な統計的分析によって得られ、評価される。すると、これらの情報は、ツール製造者と任意の第三者にとってかなりの情報価値を持つ。この情報価値は、運用者モデルの場合、たとえば費用負担させて、またはサービス提供として、前記ツール製造者と第三者に提供し、アクセス可能とすることができる。最終顧客(ツールのユーザ)のもとで本発明が使用される場合、このモデルによって、前記ツール製造者と第三者はさらに、生産性向上の実現の逆推論を引き出すことができる。このことは顧客との価格交渉に利用でき、あるいは、将来の価格展開の基盤として契約で取り決めることができる。このシステムが、たとえば工作機械でサーバ補正が義務として行われるように設計されていて、その結果、工作機械からサーバへのデータ伝送と情報伝送が抑止されまたは迂回するといった「裏切り」の可能性が除外されている場合、これら使用されたツールまたはツールホルダによって行われる工作機械のライフ・サイクル・コスト(Life‐Cycle‐Cost)観察(Betrachtung)、そしてさらには「ペイ・パー・パーツ(Pay‐Per‐Part)」(加工されたワークピース1個当たりの支払い)、または「ペイ・パー・フィーチャー(Pay‐Per‐Feature)」(ジオメトリエレメント1個当たりの支払い)、詳細には、「ペイ・パー・ホール(Pay‐Per‐Hole)」(穴あけ1個当たりの支払い)をベースとする販売モデルを作成できる。
【0043】
本発明のそのほかの事項と利点を、下記に図面を引用しながらさらに詳しく説明する。この場合挙げられた諸事項は、単独でも、任意の組み合わせの形のものであっても、本発明の対象物である。図面の示す内容は下記の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】第1の好ましい実施例による本発明のサーバをともなうコンピュータネットワークである。
図2】第2の好ましい実施例による本発明のサーバをともなうコンピュータネットワークである。
図3】第3の好ましい実施例による本発明のサーバをともなうコンピュータネットワークである。
図4】第4の好ましい実施例による本発明のサーバをともなうコンピュータネットワークである。
図5】本発明によるサーバである。
図6】本発明によるサーバ上で情報を処理する方法のフローチャートである。
図7】第1の好ましい実施形態による本発明のサーバの情報を照会する方法のフローチャートである。
図8】第2の好ましい実施形態による本発明のサーバの情報を照会する方法のフローチャートである。
図9】第3の好ましい実施形態による本発明のサーバの情報を照会する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、参照番号1を付した通信ネットワークを示す。通信ネットワーク1は、データを伝送する任意のネットワーク、詳細には、インターネットとして形成されることができる。通信ネットワーク1は、図1では、シンボリックにクラウドとしてのみ示す。しかし、通信ネットワーク1の形態は、当業者には従来の技術から公知である。
【0046】
通信ネットワーク1には、さまざまな加入者デバイスとして、工作機械2、3、4、5が接続されている。工作機械2〜5は、空間的には、好ましくはさまざまな立地点6、7、8に配置されている。さまざまな立地点6〜8とは、さまざまな企業または企業立地点であり得る。工作機械2、3は、企業内部のサーバ9を介して間接的に通信ネットワーク1に接続されている。工作機械2、3とサーバ9との間のデータ伝送線10、11を介するデータ伝送は、任意の伝送プロトコルに従って行うことができる。詳細には、企業内部の所有権を主張できるプロトコル、またはIP(インターネットプロトコル)を用いるデータ伝送が考えられる。データ伝送回路12を介するサーバ9と通信ネットワーク1との間のデータ伝送は、同様に任意のデータ伝送プロトコルに従って行うことができる。通信ネットワーク1がインターネットとして形成されている限り、データ回路12を介するデータ伝送は、好ましくはIPに従って行われる。したがってサーバ9は、好ましくはインターネットサーバとして形成されている。当然のことながら、図示の工作機械2、3だけでなく、そのほかにも工作機械がサーバ9に接続されているものとすることができる。このことは、工作機械2と3との間の3つの点で示されている。そのほかサーバ9に接続された工作機械も、同様に立地点6の内部に、または空間的に同立地点から離れて、たとえばそのほかの企業または企業立地点に配置されるものとすることができる。
【0047】
工作機械4と、工作機械4の右近傍の3つの点で示されているように、場合によってはさらなる工作機械が、立地点7に配置され、データ伝送回路13を介して直接通信ネットワーク1に接続されている。工作機械4と通信ネットワーク1との間のデータ回路13を介するデータ伝送は、任意のプロトコル、詳細には、IPに従って行われる。したがって、伝送されるべきデータを、使用された伝送プロトコルに従って準備するため、工作機械4は、それに適したインタフェース14を持ち、このインタフェースは、インタフェース機能を実行するためのハードウェアとソフトウェアとを持つ。
【0048】
最後に、工作機械5と、工作機械5の下の3つの点で示されているように、場合によってはさらなる工作機械が、立地点8に配置されている。立地点8の工作機械5と、場合によってはこれらさらなる工作機械が、データ伝送回路15を介して直接に通信ネットワーク1に接続されている。工作機械5と通信ネットワーク1との間のデータ回路15を介するデータ伝送は、任意のプロトコル、詳細には、IPに従って行うことができる。したがって、伝送されるデータを準備するため、工作機械5は、それに適したインタフェース16と、インタフェース機能を実行するハードウェアとソフトウェアとを備える。
【0049】
当然のことながら、工作機械は示された参照符号2〜5よりも多くの工作機械、また立地点も示された参照符号6〜8よりも多くの立地点を設けることが考えられる。さらには、ある特定の立地点の工作機械の一部は、サーバを介して間接的に、そして一部は直接的に、通信ネットワーク1に接続されることが考えられる。接続された工作機械2〜5は、好ましくは、ワークピースを切削加工する工作機械として形成されている。工作機械2〜5は、詳細には、穴あけ、旋削、フライス削り、ホーニング、研磨、仕上げ研磨、仕上げ、または鋸引きのために形成されていて、対応するツールを備える。工作機械2〜5のいずれもが、通常はツールマガジンに複数のツールを蓄え、所望の加工ステップのため、ワークピースの加工に対応するツールを装備する。これらの工作機械はいわゆる回転ツールホルダを備え、これらのホルダには、複数のツールを装備することができる。したがって、さまざまな加工ステップと、ワークピースのさまざまな加工方法のためには、ツールリボルバを動かすことによって、所望のツールを加工ポジションに持って来さえすればいいが、その際、いずれの加工ステップのためにも、ツールマガジンに収められたツールにアクセスする必要はない。比較的複雑な工作機械2〜5が公知であって、これらの工作機械は、そのツールマガジンに無数のさまざまなツール、それどころか100個までのツールを備えている。そしてこれら工作機械のツールリボルバは、複数のさまざまなツールを収めることができ、この場合10個以上のツールが考えられる。図1では、非常に単純化されているが、工作機械2〜5のいずれに対しても、その中にツール18を保持するツールホルダ17を1つだけ示している。
【0050】
それだけでなく、本発明のサーバ19は、データ伝送回路20を介して通信ネットワーク1に接続されている。このサーバ19は、1つまたは複数のデータベース21、22にアクセスする。データベース21、22は、サーバ19に直接接続されたものとすることができる。このことはたとえば、データ伝送回路23を介してサーバ19と接続されているデータベース21の場合に当てはまる。代替的に、データベース21をサーバ19に組み込まれたその構成部分とすることが考えられる。別な方法として、データベース21、22を通信ネットワーク1に接続されたものとすることもできる。このことはたとえば、データ伝送回路24を介して通信ネットワーク1に接続されているデータベース22の場合に当てはまる。この場合、サーバ19は、データ回路20、24および通信ネットワークを介して、データベース22にアクセスする。当然のことながら、図示したデータベース21、22より多くのデータベースも、サーバ19または通信ネットワーク1に接続でき、サーバ19はこれらのデータベースにアクセスする。最後にクライアント25は、データ伝送回路26を介して、通信ネットワーク1に接続されている。
【0051】
本発明の基盤として、工作機械2〜5のツールホルダ17および/またはツール18には、できるだけ広範囲にわたって、ツールホルダ17またはツール18のいずれにも一意的に割り当てられた識別データがそれぞれ設けられている。これらの識別データは、数字または文字の任意の組み合わせを含む。識別データは、バーコード、データマトリックス、QRコード(登録商標)、RFIDラベル、またはこれらに類似の記憶手段に、記憶することができる。これら記憶手段は、好ましくはツールホルダ17またはツール18の上または中に配置されている。工作機械2〜5は、ツールホルダ17またはツール18の識別データを無接触で読み込むために、それに適した読み込み手段を備える。読み込み手段27は、バーコード、データマトリックス、またはQRコード(登録商標)の場合は光学的に、RFIDラベルの場合は好ましくは無線通信で動作する。工作機械2〜5は、ツールホルダ17またはツール18の識別データをサーバ19に伝送する。
【0052】
データベース21、22には、ツール18について識別データに割り当てられた静的情報がファイルされている。これらの情報は、たとえばツール18の種類(たとえばドリル、旋削工具、フライス、ホーン、砥石または砥石車、リーマ、仕上げベルトまたは仕上げ砥石、または鋸)、ツールの製造者、ツールの材料、交換用バイトの個数、種類および仕様、ツールのための推奨切削データ、ツールの検査プログラム、ツールの図面または技術的仕様書、衝突解析モデル(2D、3D)などである。ツール18の受信された識別データを用いれば、サーバ19は、どのようなツールが、観察されたツール、または観察された工作機械が必要とするツールなのかを、一意的に検出できる。観察されたツール18のため、推奨切削データ、DIN4000に定める特性(それに匹敵するツールを見つけるためのツールの説明(Beschreibung))、衝突解析モデル、検査プログラム、図面、または技術的仕様書、またはそのほかデータベース21、22から得たものや、たとえばクライアント25を介してサーバ19にアクセスする第三者から得たものを伝送できる。
【0053】
ツール18の識別データのほか、工作機械2〜5のそのほかの任意の情報もまた、サーバ19に伝送することができる。このような情報は、たとえば工作機械2〜5の識別データおよび/または運転パラメータを含む。工作機械2〜5の識別データを用いれば、サーバ19は、所の識別データに割り当てられてデータベース21、22にファイルされている追加的な情報によって、工作機械のどの種類にかかわることであるかを、正確に検出できる。工作機械2〜5の運転パラメータは、たとえば、回転数、送り速度、使用時間などを含む。この種類のデータは、時間的な変化の下にあるので、動的情報と呼ばれる。
【0054】
サーバ19はさらに、受信された動的情報、データベース21、22から得た静的情報、および/または工作機械2〜5の運転パラメータを処理する手段を備える。受信された情報およびパラメータを適切に評価、処理することによって、本発明のサーバ19は、ツール18に関するアップデートされた情報を生成することができる。この場合重要なのは、サーバ19には、多数のツール18および工作機械2〜5から、たくさんのさまざまな情報が集められるということである。このたくさんのデータと、それらデータが中央の場所、すなわちサーバ19で利用に供されることにより、ツール18に関してアップデートされた情報を生成することが、初めて可能となる。この場合、アップデートされた情報の情報量は、受信された動的情報、データベース21、22から得た静的情報、および運転パラメータの情報量の合計を超える。これにより本発明のサーバは、従来の技術と比べて情報上の真正の付加価値を提供し、この付加価値は、ツール製造者も任意の第三者も、製造プロセスとサービスプロセスの改善と最適化に利用することができる。
【0055】
クライアント25は、ネットワーク1における任意の箇所に配置できる。こうして、たとえば、クライアント25を、任意の立地点、たとえば立地点7(図2参照)の企業に配置することが考えられる。この企業は、クライアント25を通じて、ネットワーク1を介してサーバ19にアクセスすることにより、ツール18に関する付加価値情報、たとえばツール18の最適な使用(「ベスト‐プラクティス」)のための推奨、推奨切削データ、衝突解析モデル(2D、3D)などを得る。
【0056】
同様にして、クライアント25をツール製造者28(図3参照)の下に配置することが考えられよう。ツール製造者28における品質保証の環境で、測定値、製造データなどを特定のツール18に割り当てることにより、ツールユーザ側で苦情が出た場合、ツール不具合の原因をより容易に見つけることができる。追加的な可能性として、たとえば、製造されたツール18のある特定のチャージに的を絞ったリコールがある。ツール18の製造という環境では、たとえば、ワークピース、またはこれらワークピースから製造されたツール18を識別して、製造過程において統制するために、ツール18の個別のコードを利用すること(依頼書類の省略)が考えられる。
【0057】
最後に、クライアント25を再研磨サービス29(図4参照)に配置することも考えられよう。対応する図面、切削材料・コーティングに関する情報、機械語プログラム、すでに行われた、および/または、今後可能な再研磨の回数、顧客情報、オリジナル注文番号などを、サーバ19がネットワーク1を介してダウンロードすることが、ツール18の個別のコードによって可能となる。さらにはツールコンディショニングのため、ツール18自体に関する情報を、サーバ19が照会することもできる。この情報の例として、使用時間のような使用パラメータ、履歴、加工されたワークピースの個数、従来運転中に生じた(欠陥)データの個数などがある。ツールコンディショニングを行った後は、好ましくは、ツール18に割り当てられ、定義されたデータをデータベース21、22にファイルする。これらデータには、ツール18のコンディショニングが行われたことと、コンディショニングの方法および範囲と、が記載されているものとする。当然のことながら、任意の立地点に配分、配置されているクライアント25は、サーバ19と、このサーバにファイルされているデータおよび付加価値情報にアクセスすることができる。
【0058】
企業内の工作機械2〜5、企業外に配置された工作機械、それにツールの再コンディショニングのための任意の加工機械、再研磨機、事前設定機器、測定システムなどは、情報量上の付加価値をもつアップデートされたデータを利用できる。
【0059】
本発明によるサーバ19を図5に詳しく示した。このサーバは、データベース21、22との通信、データ交換のためのインタフェース30を備える。インタフェース30は、ソフトウェア31の一部であってサーバ19のマイクロプロセッサ32上で動作するデータベースアプリケーションによって制御され、管理される。またサーバ19は、通信ネットワーク1にサーバを接続するインタフェース33を備える。このインタフェース33は同様に、マイクロプロセッサ32上で動作するソフトウェア31によって、または同ソフトウェアの一部によって制御され、管理される。さらに、サーバ19はインタフェース34を備え、このインタフェースを介して、入力手段、たとえばキーボード35、コンピュータマウスを接続されている。インタフェース34の制御と管理は、同様に、ソフトウェア31の一部を介して、詳細には、マイクロプロセッサ32のOSを介して行われる。最後にサーバ19は、インタフェース36を備え、このインタフェースを介して、出力ユニット、たとえばコンピュータスクリーン37が接続されている。インタフェース36もまた、ソフトウェア31の一部によって、詳細には、マイクロプロセッサ32のOSによって制御されている。
【0060】
サーバ19の処理手段は、サーバ19において、ソフトウェア31または同ソフトウェアの一部31aとして実現されている。この処理手段は、ツール18および工作機械2〜5の受信された識別データ、同様に工作機械2〜5から受信された動的情報、場合によっては工作機械2〜5のそのほかの情報またはデータ、そして受信された識別データを用いてデータベース21、22から取り出された対応するツール18の静的情報を行う。ソフトウェア処理手段31aは、マイクロプロセッサ32上で動作可能であり、ツール18に関するアップデートされた情報を生成するため、上記諸情報の所望の評価と処理を実行する。ソフトウェアの一部31aによる情報の処理または評価は、詳細には、1つの統計的評価を含む。この統計的評価によって、ツール18の将来に関する信頼性あるステートメントが可能となる。ツールの将来に関するこの情報によって、交換ツールの製造時間と供給時間を調整、制御することができ、ツールの使用を交換ツールの可能な供給期日に適合させることができる。これは、製造を正常に維持し、ツールの機能停止によって作業停止を生じることのないようにするためである。アップデートされた情報は、ツール18の使用時間と使用方法に関するデータや、そこからそれぞれ得られるツール18の残り寿命に関するデータを含むことができる。
【0061】
サーバ19で生成されアップデートされて、その中に付加価値を含む情報は、データベース21、22の1つまたは複数に記憶することができる。アップデートされた情報、またはその情報の一部を、工作機械2〜5に返送することも考えられる。データベース21、22にファイルされた情報、かつアップデートされた情報を含む同情報に、第三者がクライアント25を通じてアクセスすることも、同様に考えられる。この方法で、所望のツール18のため、ツール使用時間、検査プログラム、図面、または技術的仕様書をダウンロードできる。クライアント25を通じてサーバ19またはデータベース21、22を検索する第三者は、たとえばさまざまな立地点6〜8における工作機械2〜5の運用者である。代替的に、これら第三者は、ツール18の製造者やアップデートされた情報を考慮に入れることによって、製造プロセスの最適化を望む同製造者であってもよい。第三者が、クライアント25を通じて、サーバ19に、またはデータベース21、22に記憶された内容に、アクセスする前に、サーバ19はその第三者が権限付与されているかどうか検査できる。この方法で、サーバ19によって生成されアップデートされた情報と、データベース21、22に記憶されたツール18に関するデータとは、第三者に有料で提供できる。その結果、上記のインフラストラクチャを装備するため、そしてこのインフラストラクチャの入手と保守に必要な費用のための大きな出費は、少なくともその一部分が、第三者の使用料によって回収される。
【0062】
図6は、ソフトウェア31のソフトウェアルーチンである。このソフトウェアによって、静的および動的情報、工作機械2〜5の運転パラメータ、それに場合によってはそのほかの情報が処理、評価され、そしてアップデートされた情報が生成される。この方法は、たとえば次の各ステップを含む:ステップ40で本方法を開始する。ステップ41で、ツール18、ツールホルダ17、および/または工作機械2〜5の識別データが受信される。ステップ42で、ツール18に関する動的情報が受信される。次にステップ43で、受信された識別データに対応する静的情報が、データベース21、22の1つまたは複数からロードされる。次にステップ44で、アップデートされた情報45を生成するため、サーバ19で、受信またはロードされたデータの本来の処理が行われる。これらアップデートされた情報を、サーバ19で、第三者による照会のため、たとえばクライアント25を通じての照会のために提供することができる。またはステップ46で、データベース21、22の1つまたは複数が記憶することができる。照会ステップ47では、このルーチンを終了させたいかどうか、たとえばサーバ19のオペレータ(Betreiber)に対する問い合わせ(プロンプト)に基づいて照会される。「はい」である場合、この処理ルーチンはステップ48で終了される。「はい」でなければ、ふたたびステップ41にジャンプし、ステップ41〜47をふたたび実行する。
【0063】
図7は、ソフトウェア31のソフトウェアルーチンのフローチャートを示す。このソフトウェアルーチンは、クライアント25によるサーバ19またはデータベース21、22への照会を生じる。この方法はたとえば次の各ステップを含む:ステップ50で本方法を開始する。ステップ51で、クライアント25は、サーバ19に対する照会を開始する。この照会は、クライアント25の権限付与コードを含む。照会ステップ52では、権限付与コードの有効性が照会される。クライアント25が、要求された情報のダウンロードの権限を付与されている場合、要求された情報は、ステップ53でデータベース21、22からロードされ、ステップ54でクライアントに伝送される。権限が付与されていなければ、ふたたびステップ51にジャンプする。ステップ55でこの照会ルーチンが終了する。要求された情報に関するデータは、クライアント25の照会に含まれていてもよく、あるいは権限付与コードによって識別された顧客のためにサーバにあってもよい。
【0064】
図8は、ソフトウェア31のソフトウェアルーチンのフローチャートのもう1つの実施例を示す。このソフトウェアルーチンは、クライアント25によるサーバ19またはデータベース21、22への照会を生じる。図7のフローチャートと異なって、ステップ53(データベース21、22から情報/データをロードする)と、ステップ54(データベース21、22からロードした情報/データをクライアント25に伝送する)との間に、もう1つのステップ56を設けている。クライアント25は、その照会(ステップ51)と共に、サーバ19によるデータの所望の評価を発注することができる。そのためにこの実施例では、さまざまなスタンダード処理アルゴリズムが、サーバ19に存在する。クライアント25は、これらアルゴリズムから1つまたは複数を選択できる。クライアント25によって選択されたアルゴリズムは、サーバ19への照会と共に伝送される。次にステップ56では、データベース21、22からロードされた情報/データの評価または処理が、所望のアルゴリズムに従って行われる。評価の結果または処理されたデータは、次にステップ54で、クライアント25に伝送される。これには、データベース21、22から得た情報/データの計算限界的(rechenintensive)/メモリ限界的な(speicherintensive)評価/処理を、クライアント25ではする必要がなくなるという利点がある。したがってクライアントを、より小さく、より安価に形成できる。場合によっては、ネットワーク1を介するデータ伝送容量も節減できる。なぜならば、データベース21、22から読み出されたデータ/情報は、必ずしもすべてクライアント25に伝送する必要はなくなり、評価の結果または処理されたデータを伝送すればよいからである。
【0065】
図9に記載するもう1つの実施例では、データベース21、22から得たデータ/情報の評価または処理は、サーバではなく、ローカルのクライアント25で行う。そのためステップ57では、まずクライアント25において、データを評価/処理するための少なくとも1つの所望のアルゴリズムが選択される。選択されたアルゴリズムのために必要なデータ/情報は、クライアント25に行われる照会の対象とされ、これらデータ/情報はステップ51で伝送される。選択されたアルゴリズムのため必要なデータ/情報は、クライアント25のユーザが手動で入力でき、あるいは、クライアント25が選択されたアルゴリズムによって自動的に検出することができる。サーバ19における照会の処理は、上記の図7の実施例と同様の方法で行われる。すると、サーバ19からクライアント25に伝送されたデータ/情報(ステップ54)は、クライアント25において、先行するステップ57で選択されたアルゴリズムに従って評価/処理されるので、クライアント25は所望の情報を利用できることになる。
【0066】
本発明は、「コンピュータネットワークのサーバ」というタイトルで、2011年7月22日に出願された米国特許出願第61/510,816号を基礎とする優先権を主張するものであり、当該出願はその全体が、本明細書により本出願の内容に属する。本出願はさらに、2010年11月25日に出願された独国特許出願第102010052556.1号を基礎とする優先権を主張する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9