特許第5959530号(P5959530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959530NO2生成器増強のための構造的ディーゼル酸化触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959530
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】NO2生成器増強のための構造的ディーゼル酸化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20160719BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B01D53/86 100
   B01J23/44 AZAB
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-543535(P2013-543535)
(86)(22)【出願日】2010年12月14日
(65)【公表番号】特表2014-500145(P2014-500145A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2010007614
(87)【国際公開番号】WO2012079598
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年12月13日
【審判番号】不服2015-9269(P2015-9269/J1)
【審判請求日】2015年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン・エイチ・ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ヘッジコック
(72)【発明者】
【氏名】フランク−ヴァルター・シュッツェ
(72)【発明者】
【氏名】アンケ・ヴェルツ
【合議体】
【審判長】 真々田 忠博
【審判官】 萩原 周治
【審判官】 中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/118125(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/36
B01J 21/00-38/74
F01N 3/00-3/02
F01N 3/04-3/38
F01N 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル排ガスの浄化のための装置であって、排ガスの流れ方向に、
(a)前方触媒として、第1のキャリア基材上に配置された第1の酸化触媒、および直後に後方触媒として、第2のキャリア基材上に配置された第2の酸化触媒(ここで、前記第1および第2の酸化触媒は、それらの触媒活性コーティング中にパラジウムおよび白金を含有し、前記第1および第2のキャリア基材は、フロースルー基材である)、または
(b)前方触媒として、キャリア基材上に配置された第1の酸化触媒、および直後に後方触媒として、前記キャリア基材上に配置された第2の酸化触媒(ここで、前記キャリア基材は、フロースルー基材であり、前記第1および前記第2の酸化触媒は、それらの触媒活性コーティング中にパラジウムおよび白金を含有する)
の触媒の帯域化配置を備え;
さらに、前記前方触媒中の白金およびパラジウムの合計量は、それぞれ、30〜250g/ftであり、5〜100g/ftである前記後方触媒と比べて高く、
前記前方触媒中のPt:Pd比は、前記後方触媒中のPt:P比よりも低い、装置。
【請求項2】
前記同じキャリア基材の上流端部上に前記第1の酸化触媒の帯域を有する単一体からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1および第2の酸化触媒のそれぞれについて別個のキャリア基材からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記後方触媒に、前記排ガスの流れ方向に、さらなる排出抑制コンポーネントが続く、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記さらなる排出抑制コンポーネントが、フィルタ体である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記さらなる排出抑制コンポーネントが、NO抑制触媒である、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記NOx抑制触媒が、SCR触媒である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記NOx抑制触媒が、LNT触媒である、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記さらなる排出抑制コンポーネントが、SCRと、LNTと、フィルタ体との組合せおよび構成のすべてを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記酸化触媒が、セラミック製または金属製フロースルーハニカム体上の白金およびパラジウム含有触媒活性コーティングからなる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
方酸化触媒および後方酸化触媒が、同じフロースルー体上にある、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
方酸化触媒および後方酸化触媒が、同じコンバータ中に含まれる場合でさえも、別個のフロースルー体上にある、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
白金が、酸化アルミニウム、ランタン酸化物安定化酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化セリウム、セリウム−ジルコニウム混合酸化物、希土類金属三二酸化物、ゼオライトおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の酸化物担体材料に適用される、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
パラジウムが、酸化アルミニウム、ランタン酸化物安定化酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化セリウム、セリウム−ジルコニウム混合酸化物、希土類金属三二酸化物、ゼオライトおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の酸化物担体材料に適用される、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の装置を通してディーゼル排ガスを導くステップを含む、ディーゼル排ガスを浄化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
NO2の発生は、ディーゼル微粒子フィルタの受動的再生、ならびに低温SCR(「Selection Catalytic Reduction(選択触媒還元)」)活性の増強にとって重要になってきている。従来のディーゼル酸化触媒(DOC)の低温活性は、白金族金属(PGM)、典型的にはPtまたはPdの取込みに由来してきた。燃料品質の改善、具体的には超低硫黄ディーゼルの利用性増加とともに、高活性DOC上での硫酸塩の形成は、あまり問題でなくなってきた。結果として、HCおよびCO酸化のための低温活性の改善は、PGM負荷の増加によって得ることができた。Ptに比べてPdに関連したコスト利点のために、DCC配合物中のより高いPdレベルの利用が一般的になってきた。Pdが、Ptの熱安定性に有効であり、高温老化後の混合物の性能を増強することも認められてきている。Pdは、HCおよびCCの酸化に効果的に使用され得るが、NOのNO2への酸化に関してPtと同じくらい有効であるわけでない。PtおよびPdの混合物中で、NO酸化の効率は、Pt/Pd比の低下とともに低下することがみられる。
【背景技術】
【0002】
NOx排出の相当の減少を強いるより厳格な排ガス規制の採用によって、最新のディーゼル燃焼方法論が、エンジンからのNOxレベルを最小化するために展開されてきた。残念なことに、これらの燃焼方法論の多くも、COおよびHCのより高いエンジン外レベル、ならびにより低い排気温度をもたらす。この組合せは、COおよびHC排出に対処するためにより低いDCCライトオフ温度に対する必要性を強要する。これは、そして次ぎに、高いPGM負荷を有するDOCの使用を、付随したDOCのコストの増加とともに、さらに増加させてきた。
【0003】
同時に、より厳格な排ガス規制は、PM排出を抑制するために微粒子フィルタの組込みを強いている。多くの用途で、DOCは、NOをNO2に酸化するために使用されている。次いで、発生したNO2は、煤のための有効な低温酸化剤として機能する。COおよびHCの酸化と同様に、排気流中のNO2のより高い割合の発生は、より高いPGM負荷によって、やはり付随したDOCのコストの増加とともに、利せられる。
【0004】
最新の燃焼方法論は、エンジン外微粒子のレベルを維持またはさらには増加させながら、より低いエンジン外NOxレベルをしばしばもたらすので、フィルタ内の許容できないレベルの煤の蓄積(すなわち、許容できないエンジン逆圧および付随した燃料経済不利益)を防止するための十分な速度でのNO2の「受動的」燃焼煤への利用性は、蓄積された煤を燃焼させる他の手段の利用を必要とする。しばしば活性再生と呼ばれるこの種の「脱煤する」プロセスは、酸素が煤を有効に燃焼することができる時点までフィルタ内に蓄積された煤を加熱することによって達成され得る。多くの用途で、DOCは、捕捉された微粒子の燃焼を開始させるために必要な熱を発生させるために用いられている。これは、そして次ぎに、DOCの熱的耐久性要件を増加させてきた。さらに、これは、老化状態で十分な低温性能を得るためにPGM負荷増加に対する要求をしばしばもたらしてきた。
【0005】
重要なことに、活性フィルタ再生に関連した熱発生に付随した燃料経済不利益もある。煤蓄積が、結果として、受動的フィルタ再生は、活性フィルタ再生が必要とされる時点に達することを防止するにはそれ自体不十分であり得るにしても、NO2による微粒子の燃焼は、煤蓄積の速度を減少させ得る。煤蓄積速度のこの減少は、活性再生が必要とされる頻度を減少させ、結果として、フィルタ稼動に付随した燃料経済不利点を低くさせる。さらに、これは、付随したDOCのコストの増加とともに、高いPOM負荷、具体的には、NO2を増加させるためにより高いPt割合を強要する。
【0006】
PtおよびPdのコストと性能との妥協の結果として、システム性能を維持または向上させながら、DOCに対するPGMコストの寄与を最小化する努力の中で、多くの最適化研究が行われてきた。第1は高いPOM負荷を有し、第2は低いPGM負荷を有する2種の触媒の組合せの適用は公知である。高いおよび低いPGM負荷の帯域または帯が、単一の触媒基材に適用され、2種の触媒の組合せのものと同様の活性を与え得ることも公知である。両方のタイプの構成を図11に示す。異なるPGM比が、これらの2種の触媒の組合せまたは帯域化/帯状化された触媒の設計で適用され得ることも、当技術分野で公知である。これらの設計が、HCおよびCO性能に対する改善された活性を与えてきた一方、今日まで、これらの設計は、PGMコストを最小化しながら、同時にNO2生成を増強させることには、限定された成功を示してきた。
【0007】
ディーゼル排ガスの浄化のための装置が、公知であり、この装置は、排ガスの流れ方向に、酸化触媒、触媒活性コーティングを有するディーゼル微粒子フィルタ、および外部の還元剤供給源から還元剤を導入するための装置の下流に、SCR(「選択的触媒還元」)触媒を備える。
【0008】
ディーゼルエンジンの未処理排ガスは、一酸化炭素CO、炭化水素HCおよび窒素酸化物NOxに加えて、最大15体積%の比較的高い酸素含有量を含む。未処理排ガスはまた、気筒中の不完全な燃料燃焼から生じる煤残留分および可能性がある有機凝集体から主として構成される微粒子排出物も含む。
【0009】
欧州、北米および日本におけるディーゼル車両に対する将来の法的排ガス制限の順守は、排ガスから微粒子および窒素酸化物を同時に除去することを必要とさせる。比較的燃費の良い排ガスからの有害ガスである一酸化炭素および炭化水素は、適切な酸化触媒での酸化により容易に無害にさせ得る。さらなる触媒活性コーティングの有無にかかわらず、ディーゼル微粒子フィルタは、微粒子排気物の除去に適した装置である。高い酸素含有量のために、窒素を形成するための窒素酸化物の還元(「排ガス」の脱窒素化)は、より困難である。公知の方法は、適切な触媒での窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)である。
【0010】
この方法は、現在ディーゼルエンジン排ガスの脱窒素化のための好ましい選択肢である。排ガス中に含まれる窒素酸化物の還元は、外部供給源から投与方式で排気流中に導入される還元剤を用いてSCR法で行われる。還元剤として、アンモニア、またはアンモニアを放出する化合物、例えば、尿素またはカルバミン酸アンモニウムなどの使用が好ましい。前駆体化合物からその場で恐らくは生成されるアンモニアは、SCR触媒で均化反応において排ガスからの窒素酸化物と反応して、窒素および水を形成する。
【0011】
ディーゼルエンジン排ガスの脱窒素化のための別の適切な方法は、酸素に富む稼動条件の間にNOxを貯蔵し、燃料豊富の稼動の短期間の間に貯蔵されたNOxを放出および還元することができる触媒を用いる。このような装置は、NOx吸収材または希薄NOx捕捉(LNT)として公知である。
【0012】
今のところ、来るべき法的基準を満たすために、異なる排ガス浄化ユニットの組合せは避けられない。ディーゼルエンジン排ガスの浄化ための装置は、少なくとも1つの酸化的に活性な触媒コンバータ、および脱窒素化のために、還元剤(好ましくは、アンモニアまたは尿素溶液)を導入するための上流の装置および外部還元剤供給源(例えば、尿素溶液またはアンモニア貯蔵の補助タンク)と一緒のSCR触媒、またはLNTを備えなければならない。微粒子排出物が酸素による直接酸化によって酸化触媒によって除去され得るように、微粒子排出物を十分に低く保つようにエンジン内の燃焼を最適化することによって、それが可能でない場合、微粒子フィルタの使用がさらに必要である。
【0013】
対応する排ガス浄化システムが既に説明されてきたが;一部は、現在実用試験段階にあり、他のものは既に商業的に実施されている。
【0014】
例えば、(特許文献1)には、そのシステムにおいて酸化触媒が微粒子フィルタの上流に接続されている、NOおよび微粒子含有排ガスの処理のためのシステムが記載されている。微粒子フィルタの流出側に還元剤供給源および還元剤の投与装置、ならびにSCR触媒が配置されている。(特許文献1)に記載された方法では、排ガス中のNO2比率、したがって、NO2/NO比は、酸化触媒でのNOの少なくとも部分的な酸化によって増加し、NO2/NO比は、好ましくはSCR触媒にとって最適条件である所定レベルに設定される。
【0015】
SCR触媒にとっての最適条件であるNO2/NO比は、現在知られているSCR触媒のすべてについて1である。排気ガス中に含まれるNOxが、NOおよびNO2のみからなる場合、最適NO2/NOxの比は、0.3と0.7の間、好ましくは0.4と0.6の間であり、特に好ましくは0.5である。前記比が(特許文献1)によるシステム中SCR触媒の上流で達成されるかどうかは、排ガス温度、したがって、エンジンの稼動状態、酸化触媒の活性、ならびに酸化触媒の下流で接続されているディーゼル微粒子フィルタの設計および煤負荷に依存する。
【0016】
従来のディーゼルエンジンの未処理排ガスは、NON中に非常に低い比率のNO2のみを含む。主たる比率の窒素酸化物は、一酸化窒素NOである。前記未処理ガスが、酸化触媒の上を通るにつれて、NOは、少なくとも部分的に酸化されて、NO2を形成する。NO2形成の速度は、酸化触媒の活性および排ガス温度に依存する。かなりの量の煤が、流出側に配置されるディーゼル微粒子フィルタ上に堆積する場合、酸化触媒の下流のNO中に存在するNO2の比率は、十分な排ガス温度によって、さらに減少する。NOは、NO2による煤の酸化の間にNO2から主として形成されるので、本質的に排ガスの脱窒素化は起こらない。結果として、脱窒素化は、下流のSCR触媒によって行われなければならず、このために、NO2/NOの比は、酸化触媒およびディーゼル微粒子フィルタの全体にわたって最適値に設定されなければならない。しかし、(特許文献1)により、SCR触媒の上流の排ガス中のNO2/NO比の設定が酸化触媒およびフィルタの全体にわたってどのように実現され得るかに関して技術的教示は与えられていない。
【0017】
(特許文献1)で検討されていないが、実際に起こるさらなる問題は、そのシステム中で起こる「受動的」微粒子フィルタ再生、すなわち、酸化触媒によって生成したNO2による酸化によって、その場で起こる、煤の燃焼がそれ自体で一般に十分でなく、微粒子フィルタが煤で閉塞されるようになるのを防止することができず、結果として、許容できない値に排ガス逆圧が上昇する。適用される補助手段が必要であり、これは、例えば、微粒子フィルタの圧力降下が、臨界閾値を超える場合に、さらなる「活性」ディーゼル微粒子フィルタ再生によって行われ得る。
【0018】
補助手段には、酸化触媒の上流の排気流中への、または排気ピストンストロークの間の燃焼室の気筒中への燃料のさらなる噴射が含まれる。前記装置によって時々排ガス中に通る未燃焼の燃料は、熱の放出とともに酸化触媒にわたって燃焼され;酸化触媒は、酸素含有雰囲気において煤の発火温度を相当に超えている、すなわち、500〜650℃の範囲にある温度に下流のディーゼル微粒子フィルタを加熱するために、「加熱触媒」として用いられる。このように得られる温度上昇の結果として、煤粒子は、排ガス中に含まれる酸素によって「焼尽」される。
【0019】
酸化触媒が、「活性」ディーゼル微粒子フィルタ再生において「加熱触媒」として機能し得るために、酸化触媒は、変換挙動および老化安定性に関していくつかの要求を満たさなければならない。酸化触媒は、それにより「いっぱいにされ」、したがって停止する酸化反応なしに、短時間で酸化によって多量の未燃焼炭化水素を変換することができなければならない。これは、触媒のクエンチングとも呼ばれる。ここで、酸化触媒を通っての未燃焼炭化水素の破過は、さらに下流に配置されるSCR触媒の汚染をもたらし得るので、未燃焼炭化水素の変換は、可能な限り完全でなければならない。排気システムの最後における未燃焼炭化水素の破過は、法的制限が順守されない結果も有し得る。燃料が、酸化触媒にわたって完全に多く燃焼され得ればされ得るほど、活性再生の方法論はより柔軟であることができる。さらに、酸化触媒が、低い排ガス温度(180〜250℃)でさえも「点火する(ignite)」ことが重要な要件である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許第B−1054722号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、加熱触媒としても理想的に適している酸化触媒は、極度に低い排ガス温度でさえも非常に高いHC変換率を与えなければならず、ここで、HC変換率は、「点火温度」(ライトオフ温度)に到達するや否やできる限り急激に最高値まで増加するべきである。さらに、触媒は、炭化水素の燃焼の間に生成される発熱エネルギーの結果として、その活性があまりに大き過ぎる程に損なわれない老化に関して十分に安定でなければならない。性能要求は、以下に要約で「加熱性能」と呼ばれる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、「活性」微粒子フィルタ再生の場合に酸化触媒が最良の「加熱性能」を示す、排ガス浄化帯域化触媒システムを提供することが意図される。
【0023】
本明細書で開示される発明は、フィルタ再生、ならびに低温HC(炭化水素)およびCO活性のための効率的な加熱性能とともに熱的に耐久性のあるNO2生成を与える帯域化触媒設計である。重要なことには、それは、PGM(白金族金属)利用およびその付随した触媒コストへの影響を最小化しながら、両方の機能を与える。低Pt/Pd比を有する比較的高く負荷された前方触媒、続いて高Pt/Pd比の比較的低く負荷された後方触媒が、驚くべきことに望ましい均衡のとれた性能をもたらすことが発見された。
【0024】
この種のDOC(「ディーゼル酸化触媒」)性能は、独立型DOC+CDPF(触媒ディーゼル微粒子フィルタ)システムで、またはNO2利用性の増加が望ましいSCR(選択的触媒還元)またはLNT(希薄NOx捕捉)触媒を組み込むより大きなシステムの一部として利用され得る。このような設計には、図12および図13に示されるとおりにDOC+(C)DPF+SCR、DOC+SCR+(C)DPF、DOC+SCR+SCRフィルタ、DOC+SCRフィルタ、DOC+SCRFilter+SCR、DOC+LNT、DOC+LNT+(C)DPF、DOC+LNT+(C)DPF+SCR、およびDOC+LNT+SCR+(C)DPFが含まれる。これらのシステムのすべては、コンポーネントの順序を反映し、SCRシステムについては、NH3を発生させ得るLNTが先行しない限りは適当な尿素/NH3前駆体噴射、および(C)DPF再生のためのHC噴射(気化器を含む)、リフォーマーのためのHC/CO/H2噴射などを組み込むことが意味される。HC、CO、NH3、およびH2Sのスリップ抑制のためのさらなる下流のコンポーネントの組込みも、場合によって組み込まれる。
【0025】
本明細書で記載されるとおりに、4:1、2:1、1;1、および1:1/10:1(全体として1.4:1)のPt/Pd比を有する帯域化触媒DOCの相対的なコストおよび性能が比較される。それぞれの場合に、基材の等しい長さを前方帯域に55g/&および後方帯域に15g/ftのPGM負荷で帯域化することによって、触媒を調製した。Pt/Pd比は、本発明を例証する1.4:1試料を除いて、前方および後方の帯域で同等であった。チャートは、1.4:1設計が、老化後に、高温HD(ヘビーデューティ)FTP(連邦テスト法)試験上でのHCについて同等のライトオフ性能(HC変換)、HD−FTPおよびSET(補足エミッションテスト)のテスト中の同等の加熱性能[ここで、活性再生が引き起こされる(同様のHCスリップレベルで高温DOC外温度を生じさせる)]、ならびにHD−FTPおよびSETテスト上での優れたNO酸化活性(NO2/NOx比)を与える。
【0026】
本発明の目的は、ディーゼル排ガスの浄化のための装置によって達成され、この装置は、帯域化触媒構造(architecture)を特徴とし、かつ排ガスの流れ方向に、前方酸化触媒、および直後に、後方酸化触媒を備える。「直後に」という表現は、前方と後方触媒の間に位置する他の種類のフィルタまたは材料が存在しないことを明らかにすることが意図される。
【0027】
より詳細には、ディーゼル排ガスの浄化のための出願人の装置は、排ガスの流れ方向に、前方触媒としてキャリア基材に配置された第1の酸化触媒および後方触媒として前方触媒の直後に、キャリア基材上に配置された第2の酸化触媒を備え、ここで、第1および第2の酸化触媒は、それらの触媒活性コーティング中に白金およびパラジウムを含有し、さらに、前方触媒中の白金およびパラジウムの合計量は、後方触媒に比べて高く、さらに、前方触媒中の白金対パラジウムの比は、比較的低く、後方触媒中の白金対パラジウムの比は、比較的高い。それぞれの場合のキャリア基材は、スルーフロー基材である。白金の合計量対パラジウムの合計量の比は、好ましくは1:8と15:1の間であり、ここで、前方酸化触媒中の白金:パラジウムの負荷は比較的高く、後方ディーゼル微粒子フィルタの触媒活性コーティング中の白金:パラジウムの負荷は比較的低い。
【0028】
第1および第2の酸化触媒は、セラミック製または金属製スルーフローハニカム体上の白金およびパラジウム含有触媒活性コーティングからなることができる。
【0029】
場合によって、外部還元剤供給源から還元剤を導入する装置、およびSCR触媒が存在していてもよい。この場合、帯域化DOCの後方酸化触媒は、外部還元剤の噴射ポイントの上流に位置している。両方の装置の活性が、NO2利用性に依存しているので、SCR触媒に代えて、代替のNOx制御装置であるLNTが適用される場合、以下のものと同様の配置が適用される。
【0030】
上流位置において、DOCからのNO2生成は、SCRの入口に送り込まれる排気に直接送り込まれる。この入口濃度は、前に検討されたようにSCR触媒の活性を制御する。SCR触媒は、NOxを大きく変換するので、受動的煤燃焼のためのNO2利用性は限られる。この場合、任意の下流のフィルタ触媒コーティング内のPGM負荷レベルおよびタイプは、NO2形成によって影響されないが、コストおよび酸素に基づく煤燃焼速度などの他のパラメータによって影響される。
【0031】
PCT/EP2008/008995号明細書において、下流位置の微粒子フィルタが示され、DOCからのNO2生成は、フィルタの入口に送り込まれる排気に直接送りこまれる。この入口濃度は、フィルタ上の受動的煤燃焼の速度に寄与する。フィルタの出口でのNO2濃度は、入口濃度、フィルタ内の煤負荷、温度ならびにフィルタ上でのPOM負荷および組成に依存しており、下流のNOx抑制触媒の活性に寄与する。
【0032】
本発明において、酸化触媒のためのキャリア基材は、炭化ケイ素、コーディアライト、チタン酸アルミニウム、およびムライトなどのセラミックス材料から構成されるスルーフロー基材である。金属製スルーフロー基材も用いることができる。
【0033】
酸化触媒は、酸化アルミニウム、ランタン酸化物安定化酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化セリウム、セリウム−ジルコニウム混合酸化物、希土類金属三二酸化物、ゼオライトおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の酸化物担体材料に適用される。次いで、酸化触媒に加えて酸化物担体またはウォッシュコートが、スルーフローキャリア基材に適用される。
【0034】
稼動状態の大部分において可能な限り最適なNO2/NO比を得ることが望ましく、これは、ディーゼル車両に典型的であり、ここでは、かなりの窒素酸化物含有量が、浄化されるべき排ガス中に存在する。また、酸化触媒は、重要な稼動ポイントで「活性」ディーゼルフィルタ再生を可能にするために、十分に良好な「加熱性能」を有することが望ましい。
【0035】
高レベルの白金含有量を有する酸化触媒は、NO2を形成するNOの酸化においてディーゼル排ガス中高い変換率をもたらすことは公知である。大量のパラジウムを有する酸化触媒が、低温においてさえもディーゼル排ガス中で、大量の未燃焼炭化水素のほぼ完全な変換を与え得ることも公知である。残念なことに、高レベルの白金含有量を有する老化した触媒は、高い支配的なレベルの炭化水素含有量の場合に失活する傾向があり、一方パラジウムは、十分なレベルのNO酸化活性を有しない。ここで、まず触媒コンバータの要求されるNO変換性能と、第2にその「加熱性能」との間で目的の対立がある。コストの理由だけについても、この対立は、酸化触媒における2種の貴金属パラジウムおよび白金の単純な「付加」によって解決し得ない。さらに、これらの金属は、混合または合金される場合に「付加」効果が事実上消失するように、負に相互作用し得る。
【0036】
米国特許出願第12/226,857号明細書で説明されているように、排ガス流が、ディーゼル微粒子フィルタを横切って導かれるので、NO2形成にかなりの寄与が起こる場合に、有利であることがわかった。米国特許出願第12/126,857号明細書で述べられたような最近の研究は、「活性」微粒子フィルタ再生における過剰な経費は、酸化触媒および微粒子フィルタにわたっての貴金属白金およびパラジウムの標的分布によって回避することができ、酸化触媒の良好な「加熱性能」は、前記触媒のPGMコストを最小化するとともに、同時にフィルタまたはNOx抑制触媒の上流の排ガス中のNO2/NO比の増加をもたらしながら、確保され得る。米国特許出願12/226,857号明細書によれば、酸化触媒中の白金:パラジウムの比は、好ましくは6:1と同じくらいである。
【0037】
本発明によれば、前方触媒上の第1の酸化触媒中の白金対パラジウムの比は、広い範囲にわたって変えることができ、好ましくは0と5の間、より好ましくは0.1と2の間、特に好ましくは0.3と1.2の間、最も好ましくは1.0であり得、その結果として、現在使用中および試験段階にある実際にディーゼルエンジンのすべて、ならびに広範な車両、装置、および発電設備を含む将来のディーゼルエンジン用途の多くのためのコスト最適化排気システムを提供することが可能である。後方触媒上の第2の酸化触媒において、白金対パラジウムの比は、広い範囲にわたって変えることができ、好ましくは2と50の間、より好ましくは5と20の間、最も好ましくは10と15の間であり得る。
【0038】
上述のとおり、前方触媒が、高負荷のPGMを有し、後方酸化触媒がより低い負荷のPGMを有する場合、上記システムにおいて例外的な結果が得られる。
【0039】
前方酸化触媒について白金およびパラジウムの負荷の範囲は、30〜250g/ftのPGMであり得る一方、後方酸化触媒について白金およびパラジウムの負荷の範囲は、5〜100g/ftであり得る。
【0040】
「前方」および「後方」という用語は、排気流の流れ方向における触媒のそれぞれの位置を意味するために使用される。同等の用語は、それぞれ、「第1の」および「第2の」または「上流の」および「下流の」である。
【0041】
前方酸化触媒および後方酸化触媒は、2つの明確で分離された帯域を形成する2つの基材上の2つの別個のコンポーネントの形態で存在し得る。代替として、前方酸化触媒は、キャリア基材の上流側に位置し得る一方、後方酸化触媒は、同じキャリア基材の下流部分に位置し得る。これらのコンポーネントは、例えば、小量の設置スペースだけが、ディーゼル乗用車の排気システムで利用できる場合、恐らくは一つの筐体に収容され得る。前記コンポーネントが、異なる位置での異なる2つの筐体に位置づけられることも同様に可能である(エンジンの近くおよび/または、自動車の車体底面の上)。
【0042】
第1の酸化触媒は、ハニカム体などのセラミック製または金属製のスルーフローキャリア基材に適用される、白金およびパラジウム含有触媒活性コーティングからなる。好ましくは、1平方センチメートル当たり15〜150個、特に好ましくは1平方センチメートル当たり60〜100個のセルを有するセラミック製スルーフローハニカム体が用いられる。好ましい基材のダクト壁厚は、好ましくは0.05と0.25ミリメートルの間、特に好ましくは0.07と0.17ミリメートルの間である。
【0043】
第2の酸化触媒は、白金およびパラジウム含有触媒活性コーティングと第2のセラミック製または金属製スルーフローキャリア基材とからなる。第2のスルーフローキャリア基材は、第1のスルーフローキャリア基材と別個で異なることができるか、または第2の酸化触媒は、第1のスルーフロー基材の下流部分に配置することができ、第1の酸化触媒は、その上流の端部で隔離される。
【0044】
本発明による装置において、白金およびパラジウムは、第1および第2の酸化触媒において、触媒活性コーティグ中に含有される。貴金属白金およびパラジウムは、好ましくは1種または複数の酸化物担体材料上に与えられる。それらは、必要に応じて、異なる担体材料に別個に適用されてもよいか、または1種もしくは複数の担体材料上に一緒に与えられてもよい。ここで、担体材料は、酸化アルミニウム、ランタン酸化物安定化酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化セリウム、セリウム−ジルコニウム混合酸化物、希土類金属三二酸化物、ゼオライトおよびそれらの混合物からなる群から選択される。酸化アルミニウム、ランタン酸化物安定化酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、二酸化チタンおよびゼオライトが、担体材料として好ましく用いられる。
【0045】
本発明の2種の酸化触媒の好ましい実施形態において、白金および/またはパラジウムは、担体材料として酸化アルミニウムおよび/またはアルミノケイ酸塩に適用されるために与えられる。酸化触媒の触媒活性コーティング内のゼオライトの取込みは、用途に依存する。
【0046】
記載された好ましい担体材料への貴金属の適用は、当業者に知られている、注入、沈降、浸漬、「含浸法(incipient wetness)」と呼ばれる作業法および文献から公知の他の技術からなる慣用の方法を用いて行われる。どの従来技術の方法がそれぞれの場合で好ましいかは、前記方法および当技術分野で知られている標的適用(target application)を用いて得ることができる貴金属の粒径にとりわけ依存する。
【0047】
特に高い収率を、5〜10ナノメートルの平均粒径を有する白金豊富な貴金属粒子上でのNO酸化において得ることができることが認められた。このような大きな、白金豊富な貴金属粒子を担体材料上に生成させるために、例えば、担体材料上に単に穏やかに吸収する貴金属前駆体化合物を用いる慣用の沈降−注入法(precipitation−injection process)を選択することが可能である。新ヨーロッパドライビングサイクル(New European Driving Cycle)(NEDCにおける平均温度<250℃)上でのフィルタの非常に低い稼動温度の用途におけるディーゼル排ガスの浄化に対して、6:1と同じくらいの白金:パラジウム比を有する酸化触媒が、有用であることがわかった。
【0048】
頻繁な「活性」ディーゼル微粒子フィルタ再生が必要な場合である、高温用途または微粒子重負荷排ガスの浄化のために、排ガス浄化装置、したがって、排ガス浄化ユニットが、高レベルの老化安定性を有することが対照的に比較的に大きく重要である。このような用途に好ましい貴金属含有コンポーネントは、例えば、通常は酸化物担体材料が、前記担体材料の孔が満たされるかまたは自由に流れるままであるように、貴金属前駆体化合物の適切な水溶液で湿らされることでもたらされ得る。次いで、貴金属は、その後の高速の焼成プロセスで孔に熱的に固定される。このようなプロセスから得られる貴金属含有粉末コンポーネントは、処理されて、コーティング懸濁液を形成し、スルーフローハニカム体および/またはフィルタ体に適用またはそれらの中に形成されてもよい。
【0049】
スルーフローハニカム体への触媒活性コーティングの適用は、その後の熱的後処理(焼成、および必要に応じて、形成ガスまたは水素による還元)とともに、慣用のデップコーティングプロセスまたはポンピングおよび吸引コーティングプロセスを用いて行われ、これらは、これらの排ガス浄化ユニットについて従来技術から十分に周知である。
【0050】
以前に知られたSCR触媒のすべては、本発明による装置で使用されても良い。従来技術から公知であり、かつ市販されている、バナジウム−酸化物ベースのSCR触媒ならびに鉄−交換および/または銅−交換ゼオライト化合物が、特に適切である。また、例えば、酸化セリウムもしくはセリウム−遷移金属混合酸化物および/または酸化タングステンを含む遷移金属酸化物ベースのSCR触媒コンバータ技術も適切である。このSCR触媒コーティングは、スルーフローまたはウォールフローフィルタ基材に適用されてもよい。
【0051】
以前に知られたLNT触媒のすべては、本発明による装置に使用されてもよい。従来技術から公知であり、かつ市販されている、アルカリおよびアルカリ土類NOx貯蔵材料に基づくNOx吸収材が、特に適切である。この触媒コーティングは、スルーフローまたはウォールフローフィルタ基材に適用されてもよい。
【0052】
本装置は、ディーゼル排ガスの浄化に適しており、好ましくは自動車または他のディーゼル動力装置で使用されてもよい。本発明は、以下に本明細書で一部の実施例および図に基づいて以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の「帯域化」構成を有する典型的なディーゼル酸化触媒設計を記載するチャートである。
図2】Pt/Pdのいくつかの比で相対的な白金族金属のコストを示すグラフである。
図3図3(a)は、ディーゼル排気内インジェクションのために組み立てられており、図3(b)は、温度対時間のグラフである。
図4図4(a)および図4(b)は、1200サイクルの老化についての柱状グラフである。
図5】高温HD−FTPテストの結果:HC性能を示す。
図6】高温HD−FTPテストにおけるHC変換の結果を示す。
図7】高温HD−FTPテストにおけるNO2/NO形成の結果を示す。
図8】SETテストにおけるNO2形成の結果を示す。
図9】高温HD−FTP試験におけるフィルタ再生−温度上昇およびHCスリップを示す。
図10】SETテストにおけるフィルタ再生を示す。
図11】本発明による帯域化または帯状化された基材の説明図である。
図12】帯域化基材のためのさらなる設計を示す。
図13】本発明による帯域化基材のためのさらなる設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
エンジンテスト
エンジンテストに関して、様々な酸化触媒を、個々にまたは一般的なディーゼル微粒子フィルタとともに評価した。
【0055】
種々の試料についてのPGM負荷および分布は、図1に要約する。グラム単位の合計の貴金属含有量は、触媒の体積に対するものである。それぞれの試料についての前方および後方の帯域長は、同等であった。全体のPGM量は同等であった。結果として、種々の装置に対する貴金属コストは変化したが、図2は、規定のPtおよびPdコスト基準について種々の試料の相対的コストを示す。歴史的にPtは、Pdよりもより高く評価されてきたことに留意されたい。結果として、同等の負荷において、白金豊富な配合物は、より高価である。触媒コーティングは、当業者に一般的である方法を用いて適用した。
【0056】
本発明による酸化触媒および比較触媒を作製するために、均一なケイ素−アルミニウム混合酸化物(混合酸化物の全質量に対して5重量%のSiO;BET表面積:150m/g)をスラリー化し、白金およびパラジウムの硝酸塩の水溶液とともに摩砕した。得られたスラリーを慣用のディップコーティング法を用いて、7.5インチの直径および5.2インチの長さを有する円筒状スルーフローハニカム体に適用した。スルーフローハニカム体は、1平方インチ当たり400個のセルおよび4ミルのセル壁厚さを有した。得られた触媒を300℃で4時間乾燥させ、その後、空気中500℃で2時間焼成した。
【0057】
このようにして得られた酸化触媒を、繰り返し活性再生サイクルの効果を模擬実験するために設計されたエンジン老化法にかけ、その後特徴付けした。このために、350〜400℃の排気温度を発生させるために、エンジンを一定の速度および負荷で稼動させた。同時に2つのDOCを老化させるために、エンジン排気を分かれて、それぞれディーゼル燃料噴射器、DOC、および排気ラインを備えた、並行な排気ライン中に流入させた。図3aは、このシステムの画像である。ディーゼル燃料を噴射し、これらの排気脚部のそれぞれの内部で蒸発させ、最終的にDOCに送達し、ここで、それは燃焼されて、触媒内で発熱をもたらした。フィードバック制御を用いて、ディーゼル燃料噴射速度を調節することによって、DOC出口温度を625℃で10分間維持した。次いで、燃料噴射を止めて、DOCを冷却させた。図3bは、この老化サイクルの説明図である。それぞれのDOCを評価前にこの老化の1200サイクルまたは300時間にさらした。これらの1200サイクルにわたるそれぞれの老化システムを通しての温度プロファイルを示す柱状グラフを、図4aおよび図4bに提示する。
【0058】
老化に続いて、酸化触媒のそれぞれを高温HD−FTPおよびSETテストに対するHC酸化を評価した。
【0059】
図5は、高温HD−FTPテストの間DOCに送り込まれた、標準排気ベンチを用いて測定したエンジン外HCレベルの等価を示し、一連の排気ベンチ測定に基づく標準計算法を用いて決定したHC変換レベルを図6に要約する。それらは、1.4:1、2:1、および4:1のPt/Pd比の触媒についてほぼ同等の性能を示す。1;1の触媒は、このテスト条件下で同様の、しかしわずかに劣るHC酸化性能を与えた。
【0060】
図7は、同じ一連の高温HD−FTP試験の間にFTIRで測定したNO2対NOxの比を示す。テスト中へほぼ250秒でのライトオフ後に、1.4:1の触媒は、相当により高いNO2/NOx比を一貫して与えた。
【0061】
図8は、対応する一連のSET試験の間にFTIRで測定した対応するNO2対NOx比を示す。やはり、1.4:1の触媒は、相当により高いNO2/NOx比を一貫して与えた。
【0062】
種々の酸化触媒の加熱能は、HD−FTPまたはSETテストのいずれかで引き起こされた一連の活性再生について評価した。HD−FTP再生について測定したDOC外温度およびHCレベルの比較を、図9に示す。フィルタ再生についてSET試験の対応する結果を図10に示す。両タイプのテストにおいて、すべての触媒は、活性再生の間に発熱をもたらし、HCスリップを抑制する同様の能力を示した。
図1
図2
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図3