特許第5959531号(P5959531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959531鉄粒子の分散体及び洗浄剤をベースとする燃料添加剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959531
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】鉄粒子の分散体及び洗浄剤をベースとする燃料添加剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/222 20060101AFI20160719BHJP
   C10L 1/12 20060101ALI20160719BHJP
   C10L 1/188 20060101ALI20160719BHJP
   C10L 1/196 20060101ALI20160719BHJP
   C10L 10/06 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   C10L1/222
   C10L1/12
   C10L1/188
   C10L1/196
   C10L10/06
【請求項の数】30
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2013-545294(P2013-545294)
(86)(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公表番号】特表2014-507498(P2014-507498A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】EP2011073348
(87)【国際公開番号】WO2012084906
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】1061065
(32)【優先日】2010年12月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508076598
【氏名又は名称】ロディア オペレーションズ
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ロリアン・ダランソン
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル・ラルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニー・アーレ
(72)【発明者】
【氏名】デービッド・ジェイ・モアトン
(72)【発明者】
【氏名】マルコム・ジー・ジェイ・マクダフ
(72)【発明者】
【氏名】マガリ・ピュドラー
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522683(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/140190(WO,A1)
【文献】 特表2010−522782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00− 1/32
C10L 5/00− 7/04
C10L 9/00− 11/08
C10M 101/00−177/00
C01G 49/00− 49/08
B01J 13/00
B01J 21/00− 38/74
C11D 1/00− 19/00
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散体と第四級アンモニウム塩を含む洗浄剤とを含む組成物であって、前記分散体が、
−有機相;
−少なくとも1の両親媒性物質、及び
−前記有機相中に、個々の粒子又は粒子凝集体の形態で分散した固形物であって、結晶化状態の鉄化合物から成り、X線回折(XRD)により測定した場合の前記粒子の平均径DXRDが12nm以下である固形物
を含む組成物。
【請求項2】
酸素化洗浄剤添加剤を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第四級アンモニウム塩が、以下の反応生成物:
(i)以下を含む少なくとも1種の化合物:
(a)炭化水素置換基を有するアシル化剤と、該アシル化剤と縮合可能な酸素又は窒素元素を含む化合物との縮合生成物であって、少なくとも1個の第三級アミン官能基を有する縮合生成物;
(b)少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むポリアルケン置換基を有するアミン;及び
(c)少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むマンニッヒ反応生成物であって、炭化水素置換基を有するフェニル、アルデヒド及びアミンから誘導される該マンニッヒ反応生成物;及び
(ii)化合物(i)の第三級アミン官能基を第四級窒素に転化するために好適な第四級化剤
を含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第四級アンモニウム塩が、以下の反応生成物:
(i)炭化水素置換基を有するアシル化剤と、該アシル化剤と縮合可能な酸素又は窒素元素を含む化合物との縮合生成物であって、少なくとも1個の第三級アミン官能基を有する縮合生成物;及び
(ii)硫酸ジアルキル、ハロゲン化ベンジル、炭化水素置換基を有するカーボネート、酸と組み合わされた炭化水素置換基を有するエポキシド又はそれらの混合物を含む第四級化剤
を含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
炭化水素置換基を有するアシル化剤が、コハク酸系ポリイソブチレン酸無水物であり、該アシル化剤と縮合可能な酸素又は窒素を含む化合物が、ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ヘキサメチレンテトラアミン及びビス(ヘキサメチレン)トリアミンの中から選択されることを含む請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
酸素化洗浄剤添加剤が、コハク酸無水物又はコハク酸ヘッド基を有するポリイソブチレン化合物である請求項2〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子の平均径DXRDが8nm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記分散体の有機相が、非極性炭化水素をベースとすることを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記両親媒性物質が、10〜50個の炭素原子を有するカルボン酸である請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記両親媒性物質が、10〜25個の炭素原子を有するカルボン酸である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
透過電子顕微鏡法により測定した場合の粒子の個数の少なくとも80%の径DTEMが、12nm以下である請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
透過電子顕微鏡法により測定した場合の粒子の個数の少なくとも80%の径DTEMが、8nm以下である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記粒子が3nmから12nmの間の中位径Φ50を有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記粒子が4nmから10nmの間の中位径Φ50を有する請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記固形物を、動的光散乱法(DLS)により測定した場合に、50nm以下の流体力学直径Dhを有する請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記固形物を、動的光散乱法(DLS)により測定した場合に、30nm以下の流体力学直径Dhを有する請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記固形物を、動的光散乱法(DLS)により測定した場合に、20nm以下の流体力学直径Dhを有する請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記固形物を、動的光散乱法(DLS)により測定した場合に、16nm以下の流体力学直径Dhを有する請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記両親媒性物質のモル数と鉄のモル数とのモル比が0.2から1である請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記両親媒性物質のモル数と鉄のモル数とのモル比が0.2から0.8である請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
濃度を前記組成物の全重量に基づく鉄金属の重量%で示した場合に、鉄含有量が0.05%から25%である請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
濃度を前記組成物の全重量に基づく鉄金属の重量%で示した場合に、鉄含有量が2%から15%である請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を内燃エンジンの燃料添加剤として用いることを含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物をPFの再生のための燃料添加剤として用いることを含む、請求項23に記載の組成物の使用。
【請求項25】
第四級アンモニウム塩を含む洗浄剤を、請求項1〜22のいずれか1項に記載の分散体と接触させて混合させて、前記組成物を得るステップを含む請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項26】
燃料と請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物とを含む添加剤入り燃料。
【請求項27】
前記燃料が、ガス油及びバイオ燃料からなる群の中から選択される請求項26に記載の添加剤入り燃料。
【請求項28】
鉄の質量含有率が、燃料の全質量を基準として1から50ppmの鉄金属を含む請求項26又は27に記載の添加剤入り燃料。
【請求項29】
鉄の質量含有率が、燃料の全質量を基準として2から20ppmの鉄金属を含む請求項28に記載の添加剤入り燃料。
【請求項30】
内燃エンジンに適用するための方法であって、エンジンに燃料と請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を供給するためステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジン用燃料添加剤として特に有用な組成内での、洗浄剤及び鉄粒子の有機分散体の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料、特にガス油がエンジン中で燃焼する際に、炭素系物質が炭素系粒子(以下においてはこれを「煤(すす)」と称する)を形成する傾向があり、これは環境及び健康の両面で有害であると言われている。長い間、これらの煤の放出を軽減することができる技術の研究が求められてきている。
【0003】
満足できる解決策は、煤なしでガスを逃がすために排ガスライン中にそのチャネル中で煤をブロックする粒子フィルター(以下、PFと記す)を導入することから成るものである。所定量の累積煤がPF中に得られた時に、煤が燃焼してPFのチャネルからなくなる。このPF再生ステップは通常、エンジンの正常運転の際のガスの温度より高い温度において達成され、煤は通常、空気中で650℃を超える温度で燃焼する。
【0004】
PFの再生を補助するために、直接的に又は間接的に煤の酸化を促進する目的を持つ触媒が一般的に用いられる。煤の酸化を促進することにより、より低温においてそれらの酸化が可能になり、エンジンの正常運転の際により一層頻繁にこの温度に到達するようなる。従って、エンジンの運転の間に煤の一部が連続的に燃焼できるようになる。
【0005】
触媒はまた、PFを再生するのに必要な温度を下げて、この再生温度が触媒の存在なしでの煤の燃焼温度より低くなる可能性を提供する。この触媒はまた、煤の酸化速度を促進して、PFを再生するために必要な時間を短縮することもできる。
【0006】
PFの再生を補助するための添加剤であって、エンジンに供給される燃料又は燃料含有触媒(Fuel Borne Catalyst)(FBC)によって方向付けされるものの使用は、触媒式煤フィルター(Catalyzed Soot Filter)(CSF、触媒はPF中に固定される)と称される競争技術と比較して、PFの再生をより迅速に且つより低温において可能にし、これがPFを再生するための燃料消費の減少(及びCO2放出の減少)に貢献するので、多くの基準を満たすことが証明された。
【0007】
コモンレールシステム(common-rail system)及び高圧直接燃料インジェクション式のディーゼルエンジンのような新たなエンジン技術は高性能であるが、しかし燃料の品質に対して敏感である。ディーゼルエンジンの運転の間にそのインジェクター中に付着物が形成することがあることが特に知られている。付着物の量及びその形成速度は、エンジン中に用いられる燃料の品質に依存するが、エンジン中に存在する燃料添加剤の性状にも依存する。
【0008】
「燃料添加剤」とは、ここでは、エンジン中における燃料の分布の改善及び/又はエンジンの運転性能の改善及び/又はエンジンの経時運転安定性の改善を可能にする任意の添加剤を意味する。不安定成分(例えばバイオ燃料中に一般的に存在する脂肪酸メチルエステル)を含有する燃料は、それらを含有しない鉱油燃料より多くの付着物を形成する傾向がある。
【0009】
さらに、銅や亜鉛のようなある種の金属が燃料中に存在すると、付着物の量の増加をもたらすことがあり、かくしてインジェクターの汚染レベルの悪化をもたらすことがある。燃料中に存在する金属は、様々な原因から由来するもの、例えば燃料と燃料分配ネットワークとの間の接触から又は他の任意の汚染物質から由来する金属である。金属はまた、PFの再生を補助するための金属添加剤の場合におけるように、燃料中に故意に導入することもある。たとえこれらの添加剤がPFの再生にとって有益であって望ましいものであったとしても、あるものは燃料回路中、特に燃料インジェクター中において、付着物の形成を促進することがある。
【0010】
付着物はエンジン出力のロスをもたらすことがあり、最終的にはエンジンの損傷にまで行く可能性がある。これらの付着物はまた、シリンダー中での燃焼の品質を低下させたり、汚染物質の放出及びエンジン燃料消費の増加をもたらしたりすることもある。洗浄剤添加物は、インジェクター中の付着物の形成を減らしたり抑制したりすることが知られている。
【0011】
PFの再生を補助するための燃料添加剤の中では、希土類、特にセリウム、及び/又は鉄をベースとする分散体が、PF再生について有効であり且つ煤の酸化温度の低下に寄与することが知られている。これらの分散体は、良好な分散性、高い経時安定性及び導入された燃料中においてそれほど濃度でなくても充分な触媒活性を有しているべきである。
【0012】
今日まで知られている分散体は、これらの基準のすべてを常に満たすものではない。それらは、例えば良好な分散性を持つが、(特に脂肪酸メチルエステルを含有する燃料又は他の植物起源の酸化しやすい燃料中に導入された時には、)充分な安定性を持たないことがある。これらの分散体は、充分に安定であるが、それらが経済上興味深いものであるためには高すぎる金属濃度で触媒活性を有することがある。さらに、前に示したように、これらの分散体はすべて、燃料インジェクターの運転に対する影響が限られたものであるべきであり、特にバイオ燃料や金属含有燃料の存在下においてさえ燃料インジェクターにもたらす汚染が限られたものであるべきである。さらに、燃料中におけるFBCの存在は、(特にバイオ燃料を含有する場合の)燃料の耐酸化性の低下をもたらすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、PFの再生を補助するための添加剤であって、良好な安定性を有し、インジェクターの汚染が少なく、しかも(特にバイオ燃料の存在下における)燃料の耐酸化性の低下が少ないものを提供することが求められている。
【0014】
好ましくは、それほど高濃度でなくても充分な触媒活性を有する添加剤含有組成物を提供することが求められている。
【0015】
本発明の目的は、このタイプの用途によく適した組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的で、本発明は、第四級アンモニウム塩を含む洗浄剤及び結晶化状態にある鉄粒子の有機分散体の形にあるPF再生補助用添加剤を含む組成物を提供することにある。
【0017】
前記分散体は、小さい寸法の結晶化状態の鉄化合物の粒子及び少なくとも1種の両親媒性物質を含む。
【0018】
ある場合において、洗浄剤はさらに、酸素化洗浄剤を含んでいてもよい。
【0019】
本発明はまた、燃料及び前述した組成物を含む、添加剤入り燃料をも提供する。
【0020】
より特定的には、本発明は、分散体と第四級アンモニウム塩を含む洗浄剤とを含む組成物であって、分散体が
−有機相;
−少なくとも1種の両親媒性物質、及び
−有機相中に個々の粒子の形又は粒子凝集体の形で分散した固形物であって、結晶化状態の鉄化合物から成り、X線回折(XRD)により測定した場合の前記粒子の平均径DXRD(最初のDは上線付き。以下同様)が12nm以下である固形物、を含む、組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
有機分散体
本発明に係る組成物の分散体は、以下の手順を含む方法に従って調製することができる:
a)水性相中で塩基とFe(II)/Fe(III)のモル比が0.45から0.55、好ましくは約0.5、有利には0.5であるFe(II)塩とFe(III)塩とを含む混合物とを接触させ、水性相のpHを8より高いpH値に維持することにより、沈殿物を得ることと、
b)それにより得られた沈殿物、随意には水性相から分離された沈殿物を、両親媒性物質の存在下で有機相と接触させることにより、有機相中に分散体を得ること。
【0022】
本発明に係る分散体中に分散された固形物は、個々の(個別化した)固体粒子か、或いはそのような粒子の凝集体である。該粒子はさらに、残留量の結合又は吸着イオン、例えばナトリウムイオン又はアンモニウムイオンを随意に含有していてもよい。
【0023】
本発明に係る分散体は非常に安定であるという有利な点を有する。本発明に係る分散体の粒子は、数ヶ月後であっても沈降しないし、分散体はデカント(傾斜法によって上澄みを静かに注ぐこと)しない。更には、ガス油タイプ、特にバイオ燃料ベースの燃料と良好な親和性を有し得る。
【0024】
好ましい代替によれば、それは更に高い触媒活性を有し得る。
【0025】
本発明に係る組成物の分散体は有機相中の分散体である。
【0026】
この目的のために、大抵の場合、有機相は、有機相の総質量を基準として、少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%が有機溶剤又は有機溶剤の混合物から成るものである。
【0027】
有機相は、随意に、有機溶剤又は有機溶剤の混合物のみから成る。
【0028】
この有機相は、特に分散体の用途に応じて選択される。
【0029】
有機相の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンのような脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタンのような脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンのような芳香族炭化水素、液状ナフテンを挙げることができる。また、Isopar又はSolvesso(EXXON社による登録商標)タイプの石油留分、特にIsoparL又はSolvesso100(これはメチルエチルベンゼンとトリメチルベンゼンとの混合物を本質的に含有する)、Solvesso150(これはアルキルベンゼンの混合物、特にジメチルベンゼンとテトラエチルベンゼンとの混合物を含有する)も好適である。有機相はまた、石油留分から成ることもできる。
【0030】
また、極性塩素化炭化水素、例えばクロロベンゼンやジクロロベンゼン、クロロトルエンを有機相として用いることもできる。エーテル類並びに脂肪族及び脂環式ケトン類、例えばジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メシチルオキシドも検討することができる。
【0031】
また、アルコールをベースとする極性溶媒、例えば2−エチルヘキサノールを検討することもできる。
【0032】
有機相はまた、非極性炭化水素、特に脂肪族炭化水素をベースとするものも有利であり得る。
【0033】
この好ましいカテゴリーにおいては、イソパラフィン系及びパラフィン系C11及びC12炭化水素を本質的に含有するIsoparタイプの石油留分を挙げることができる。
【0034】
本発明に係る分散体は、少なくとも1種の両親媒性物質を含有する。
【0035】
この両親媒性物質は、粒子の分散体を安定化する効果を有する。これはまた、分散体の調製の際の(水性相と有機相との間の)相間移動剤としても用いられる。
【0036】
好ましくは、両親媒性物質は、一般的に10〜50個の炭素原子、好ましくは10〜25個の炭素原子を有するカルボン酸である。
【0037】
この酸は、直鎖状又は分岐鎖状であることができる。これは、アリール、脂肪族又はアリール脂肪族酸から選択することができ、これらは随意に他の官能基を有していてもよいが、但し、これらの官能基は本発明に係る分散体のために用いるのが望ましい媒体中で安定であることを条件とする。
【0038】
例えば、天然又は合成の脂肪族カルボン酸を用いることができる。もちろん、混合物状の酸を用いることができる。
【0039】
例として、トール油、大豆、牛脂油、アマニ油、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸及びその異性体、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、ヘキサン酸を挙げることができる。
【0040】
好ましい両親媒性物質としては、ステアリン酸及びその異性体、例えばCroda社からのPrisorine 3501のような鎖長分布を含有する酸又は物質の混合物を挙げることができる。
【0041】
この両親媒性物質はまた、1種以上のポリ酸、例えばポリブテニル基で置換されたコハク酸から成ることもできる。これらのポリ酸は、単独で用いることもでき、平均して10〜20個の炭素原子を有する1種以上の脂肪族モノカルボン酸と組み合わせて用いることもできる。
【0042】
例として、オレイン酸と500〜1300g/モルの範囲、より特定的には700〜1000g/モルの範囲の平均分子量(ガスクロマトグラフィーで測定)を有するポリブテニル基で置換された1種又は数種のコハク酸との混合物を挙げることができる。
【0043】
本発明の特徴によれば、組成物の分散体の粒子は、結晶化状態の鉄化合物をベースとする。
【0044】
前述の方法の手順を適用することによって得られる結晶化状態は、少なくとも1の定義された鉄の結晶化構造の特性ピークを示すX線回折技術(XRD)により特に観察される。
【0045】
本発明に係る分散体の固形物は、鉄化合物の粒子、又は粒子の凝集体の形態をなしており、その組成物は本質的には結晶化状態にある酸化鉄に相当する。
【0046】
本発明に係る粒子を構成する酸化鉄の結晶化状態は、典型的にはマグヘマイト(γ−Fe23)タイプのFe(III)酸化物であるか、及び/又はマグネタイト(Fe34)タイプのFe(II)及びFe(III)酸化物である。
【0047】
前述の方法は、一般的にはマグヘマイトタイプのFe(III)酸化物及び/又はマグネタイトタイプのFe(II)及びFe(III)酸化物をベースとする粒子を得る可能性を提供するものであり、マグネタイトは例えば酸素と接触してマグネタイトタイプのFe(III)酸化物に酸化される。
【0048】
好ましくは、分散体中で4nm以上のサイズを有する粒子は、その少なくとも90%、有利には少なくとも95%、選択的には少なくとも99%が結晶化状態の鉄化合物の形態である。
【0049】
本発明の他の特徴によれば、分散体の粒子をXRDで測定した場合の平均径DXRDは12nm以下である。
【0050】
好ましくは、分散体の粒子をXRDで測定した場合の平均径DXRDは8nm以下、好ましくは7nm以下、選択的には6nm以下、有利には5nm以下である。
【0051】
一般的にはこの平均径は少なくとも4nmである。
【0052】
本発明に係る粒子の結晶化性状は、特にXRD分析により検出される。XRD図は、これらの粒子の2つの特徴を定義することができる:
−結晶相の性状:測定された回折ピークの位置とそれらの相対強度がマグネタイト又はマグヘマイト相の特徴を示し、その結晶相はシートICDD01−088−0315に対応すること;及び
−結晶子(又は結晶化領域)の平均径DXRDであって、この径はマグヘマイト/マグネタイトの結晶面(440)の回折ピークの半分の高さにおける幅から計算すること:
【0053】
【数1】
ここで:
λ:波長=1.54Å、
k:形状因子で0.89に相当、
H:関連線の半分の高さにおける全幅であり、度(degree)で示される、
s:LaB6分析により決定された場合の角度θでの機器幅=0.072°、
θ マグネタイト及び/又はマグヘマイトの回折ピーク(440)の回折角(ラジアン)=0.547ラジアン
【0054】
XRD分析は、液体サンプルの特性評価が可能な、例えばエクスパート・プロ・MPD・パナティカル(X’Pert PRO MPD PANalytical)型の市販装置、特にθ−θゴニオメータから成る装置によって実施することができる。サンプルはデータ取得の間は水平に置かれ、移動するのはソースと検出器である。
【0055】
この装置は、供給業者により提供された、エクスパート・データコレクタ・ソフトウェアパッケージ(X’Pert Datacollector software package)により動作し、得られた回折図の利用は、エクスパート・ハイスコア・プラス・ソフトウェアパッケージ(X’Pert HighScore Plus software package)のバージョン2.0以上のもの(供給業者:パナリティカル(PANalytical)を用いて行われる。
【0056】
本発明に係る他の特徴によれば、粒子の本質部(即ち、数基準で少なくとも80%)が、12nm以下、より特定的には8nm以下、好ましくは7nm以下、選択的には6nm以下の径DXRDを有することが好ましい。
【0057】
典型的には、粒子の少なくとも90%、より特定的には少なくとも粒子の95%が、前述の値以下の径DTEMを有する。
【0058】
この径DTEMは、分散体を透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて、粒子が高倍率で観察でき且つそれらの粒子径を測定可能な撮像モードを用いて分析することにより検出することができる。
【0059】
好ましくは、及び粒子の径の測定の更なる正確性のためには、以下の手順に従って進めることが可能である。
【0060】
本発明に係る分散体は、約0.035%もの鉄の質量含有率を得るために、その溶剤により事前に希釈される。それによって希釈された分散体は、その後(銅グリッド上に支持された炭素系ポリマー膜のような)観察グリッド上に配置し、溶剤を蒸発させる。
【0061】
例えば、80万倍の範囲にまで拡大可能な透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧を120kVに選択するのが好ましい。
【0062】
本方法の原理は、顕微鏡で様々な領域(約10箇所)を調べ、250粒子の寸法を、これらの粒子を球形粒子と考えて測定することから成る。粒子は、その外周の少なくとも半分が定義可能である場合に識別可能なものとして見積もる。従って、径DTEMは、粒子の境界線を再現する円の直径に対応する。利用可能な粒子の特定は、ソフトウェアパッケージ、例えばImageJ、Adobe Photoshop又はAnalysis等を用いて実行される。
【0063】
そこから粒子の累積粒度分布が推定され、これを0〜20nmの範囲の40の粒子径のクラスに、各クラスの幅は0.5nmとして、グループ分けする。各クラスにおいて又は各DTEMについての数が、個数較差粒子径分布(number differential grain size distribution)を示すための基本データである。
【0064】
更に、本発明に係る分散体の粒子は、TEMによって観察される微細な粒子径を有することが好ましい。
【0065】
それらは中位径(メディアン径)Φ50を有し、好ましくは3nmから12nmの間であり、より特定的には4nmから10nmの間である。
【0066】
個数中位径Φ50は、TEM顕微鏡写真上でカウントした粒子の50%がこの値よりも小さい直径を有し、カウントした粒子の50%がこの値より大きい直径を有するような直径である。
【0067】
本発明に係る粒子は、好ましくは0.1から0.5の多分散指数Pnを有する。
【0068】
この多分散指数Pnは、以下の式に従って、TEMによって決定された個数粒子径分布から計算される:
【数2】
ここで、Φ16は粒子の16%がこの値よりも小さい直径を有し、Φ84は粒子の84%がこの値よりも小さな直径を有するような直径である。
【0069】
この基準に適合する本発明に係る粒子は良好な単分散性を示す。
【0070】
固形物の分散状態は、動的光散乱法(DLS)、更には準弾性光散乱法(QELS)又は更には光子相関分光法とも証される方法によって特徴づけることができる。この技術は、固形物の流体力学直径Dhの測定を可能にし、その値は粒子の凝集体の存在によって多大な影響を受けるものである。
【0071】
本発明の選択的特徴によれば、本発明の固形物は、動的光散乱法(DLS)により測定した場合に、50nm以下、好ましくは30nm以下、選択的には20nm以下、有利には16nm以下の流体力学直径Dhを有する。
【0072】
本発明に係る分散体の固形物の流体力学直径Dhは、1から4g.L-1の鉄濃度を得るためにその溶剤によるその分散体の希釈後に、本発明に係る分散体を基に測定することができる。
【0073】
光散乱装置であるALVシリーズ5000コリレータとALVコリレータソフトウェアパッケージV3.0以上を備えるALVCGS3(マルバーン)装置が備えられる。この装置は、いわゆる「コッペル・キュムラント法(Koppel cumulants)」といわれるデータ処理法を使用しており、これが流体力学直径Dhの値を利用する可能性を与えている。
【0074】
流体力学直径の計算においては、溶剤に用いられる粘度値や屈折率に対応する温度(典型的には25℃)で測定を行い、測定角(典型的には90°に設定)を用いることが重要である。
【0075】
埃によるサンプルの汚染や測定の歪みを避けるために、ラミナーフローフードを用いた取扱作業と同様な希釈の調整を行うことがまた推奨される。
【0076】
散乱強度が安定しており、自己相関関数に異常がない場合には、実験データは有効であると考えられる。最終的には、散乱強度は各装置に定義された限界の範囲内に含まれるであろう。
【0077】
分散体の物質のこの好適な特徴はその安定性を高めることである。粒子の個々の性状もまた、粒子と煤との間で得られる広範囲の接触表面積を増大させるものであり、ゆえに本発明に係る分散体の触媒活性を改良することに寄与するものである。
【0078】
本発明に係る分散体は更に、有機層中で非晶質形態の鉄化合物の粒子、特に寸法が4nm以上の粒子を含有する。
【0079】
鉄化合物の非晶質性は、結晶質の鉄の相の特性ピークが全く観測されない場合には、この化合物のXRD分析により示すことができる。
【0080】
好ましくは、非晶質形態の鉄化合物の粒子は、分散体の鉄粒子の総量数の最大でも75%を示す。4nm以上の径を有する粒子に関し、非晶質形態の鉄化合物の粒子は、4nm以上の径を有する鉄粒子の総量数の最大でも50%を示す。
【0081】
本発明の特定の実施の形態によれば、本発明に係る組成物の分散体(DSP1)中に分散した固形物は、個々の粒子又は粒子凝集体の形態であり、結晶化状態の鉄化合物から成るものであり:
−該粒子はX線回折(XRD)により測定した場合に、7nm以下の平均径DXRDを有し;
−透過電子顕微鏡法(TEM)により測定した場合に、該粒子の個数のうち少なくとも80%が7nm以下の径DTEMを有する。
【0082】
この分散体(DSP1)の固形物は、動的光散乱法(DLS)により測定した場合に、好ましくは30nm以下の流体力学直径Dhを有する。
【0083】
本発明の他の特定の実施の形態によれば、本発明に係る組成物の分散体(DSP2)の有機相は無極性の有機相であり、本発明に係る組成物の分散体中に分散した固形物は、個々の粒子又は粒子凝集体の形態であり、結晶化状態の鉄化合物から成るものであり:
−動的光散乱法(DLS)により測定した場合に、該固形物は30nm以下の流体力学直径Dhを有し;
−X線回折(XRD)により測定した場合に、該粒子は7nm以下の平均径DXRDを有し;
−透過電子顕微鏡法(TEM)により測定した場合に、該粒子の個数のうち少なくとも80%が7nm以下の径DTEMを有する。
【0084】
選択的な又はより特有なパラメータDXRD、Dh、DTEMもまた、上述した直径Φ50及び指数Pnと同様に、これらの値がDSP1及びDSP2の特徴の記載事項における前述の制限に適合する限りにおいて、分散体DSP1及びDSP2に対してここに適用される。
【0085】
本発明に係る分散体は、少なくとも2%、より特定的には少なくとも5%の鉄化合物の質量濃度を有することができ、この濃度は、分散体の総質量に対する鉄金属の質量で表される。この濃度は、一般的には最大20%の範囲を有することができる。
【0086】
鉄の含有量は、本発明に係る分散体に直接適用されるX(線)蛍光分光法を用いた測定等のような当業者に知られる任意の技術によって決定することができる。
【0087】
本発明はまた、本発明に係る分散体を調製するための方法に関する。
【0088】
本方法のステップa)においては、塩基とモル比(Fe(II)/Fe(III)が0.45から0.55、好ましくは0.5、有利には0.5のFe(II)塩とFe(III)塩とを含む混合物とを水性相中、典型的には塩基と鉄塩の水溶液中で接触させる。
【0089】
塩基としては、特に水酸化物タイプの化合物を使用することができる。アルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物及びアンモニアを挙げることができる。第2級、第3級又は第4級アミンもまた使用することができる。
【0090】
鉄塩としては、任意の水溶性塩を使用することができる。Fe(II)塩としては、塩化第一鉄(FeCl2)を挙げることができる。Fe(III)塩としては、硝酸第二鉄(Fe(NO33)を挙げることができる。
【0091】
ステップa)において、Fe(II)塩、Fe(III)塩及び塩基の間で生じる反応は、一般的には、反応媒体中で鉄塩と塩基とを接触させた上で、形成された反応混合物のpHが8以上の条件となるようにして行われる。
【0092】
好ましくは、ステップa)において、反応混合物のpHは、8以上の値に維持される。このpH値は、典型的には9から13の間を含む。
【0093】
鉄塩と塩基との水性相中での接触は、鉄塩の溶液を、pHが少なくとも8の塩基を含む溶液へ導入することにより達成することができる。鉄塩と塩基とを、例えば硝酸ナトリウム等の塩を3mol.L-1以下の濃度で含み、pHを8以上の値に事前に調節した溶液中に導入することもまた可能である。鉄塩の溶液と塩基を含む溶液それぞれの流量を調節することによってpH条件を満足させて、接触を連続的に行うことが可能である。
【0094】
本発明の好適な実施の形態によれば、鉄塩と塩基間の反応の際に、水性相のpHを一定に維持させるように条件を操作することが可能である。pHを一定に維持することにより、設定値に対して+/−0.2pH単位の変動を意味するものである。鉄塩と塩基間の反応の際において、そのような条件は、例えば鉄塩の溶液を塩基の溶液へ導入するにあたっては、追加的な量の塩基を水性相中へ付加することによって得ることができる。
【0095】
本発明の範囲内において、発明者らは、粒子の寸法が、水性相で維持されるpHに依存して調整され得ることを観察している。典型的には、特定の理論に縛られることを意図するものではないが、水性相のpHが高いほど、粒子の寸法がますます小さくなる。
【0096】
ステップa)の反応は一般的には室温で行われる。この反応は、有利には、空気、窒素又は窒素−空気混合物雰囲気下で行うことができる。
【0097】
ステップa)の反応の最後(終点)では、沈殿物が得られる。随意には、沈殿物を一定期間(例えば数時間)水性相中で維持することによって熟成(粗大化)させることが可能である。
【0098】
本発明の方法の第1の有利な代替手段によれば、沈殿物は、ステップa)の最後に分離せずに、ステップa)の反応の水性相中に懸濁したままにしておく。
【0099】
本発明の方法の他の代替手段によれば、ステップa)の後且つステップb)の前に、ステップa)の最後で形成された沈殿物を水性相から分離するステップα)を含む。この分離ステップα)は、任意の既知の方法によって行われる。分離された沈殿物はその後、例えば水などで洗浄することができる。好ましくは、沈殿物は、任意の乾燥法又は凍結乾燥法又はこの種の任意の操作には影響を受けないものである。沈殿物は、随意には、第2の水性相中に再懸濁させることもできる。
【0100】
有機相中の分散体を得るために、ステップb)において、ステップa)の最後に得られた沈殿物は、それが水性相から分離されていてもいなくとも、有機相と接触され、この中で分散体が望ましく得られる。この有機相は上述した種類のものである。
【0101】
ステップb)の接触は、随意にはステップa)の最後で得られた懸濁液の中和後に、前述の両親媒性物質の存在下で達成される。
【0102】
好ましくは、両親媒性物質のモル数と鉄のモル数との間のモル比は、0.2から1であり、選択的には0.2から0.8である。
【0103】
組み込まれる有機相の量は上述した酸素濃度を得るために調整される。
【0104】
ステップb)における分散体の様々な素成分の導入順序は問題にはならない。得られた沈殿物、両親媒性物質及び有機相は、同時に入れて接触させても良い。
【0105】
両親媒性物質と有機相とのプリミックス(事前混合物)を生成することもまた可能である。沈殿物と有機相との接触は、反応器内において、空気、窒素又は空気−窒素混合物雰囲気下で行うことができる。
【0106】
沈殿物と有機相との接触は、室温(約20℃)で行うことができるが、30℃から150℃の範囲、有利には40℃と100℃との間において選択された温度で操作することが好ましい。
【0107】
ある場合においては、有機相が揮発性を有することから、その蒸気をその沸点よりも低い温度に冷却することにより凝縮させるべきである。
【0108】
沈殿物、有機相及び両親媒性物質から生じる反応混合物は、加熱の全期間に渡って撹拌された状態に維持される。
【0109】
第1の代替手段(ステップの水性相)の最後で沈殿物が水性相から分離されない場合ステップa)においては、加熱が停止した際に2つの新規な相、即ち粒子の分散体を含む有機相と、残余の水性相とが存在することに留意されたい。有機相はその後、例えば傾斜法又は遠心分離等の従来の分離技術によって、粒子の分散体を含むものと残りの水性相とに分離される。
【0110】
本発明によれば、本方法の代替手段にかかわらず、上述の特徴を有する有機分散体がステップb)の最後で得られる。
【0111】
非晶質形態の鉄化合物の粒子を更に含む分散体は、有機相中で、非晶質形態の鉄化合物の粒子の第1の分散体を結晶化状態の鉄化合物の粒子の第2の分散体と混合することによって得ることができ、この第2の分散体は本発明の第1の実施の形態に係る種類のものである。
【0112】
非晶質形態の鉄化合物の粒子の第1の分散体としては、国際公開WO2003/053560に記載されたものを例えば使用することができる。有機相が同じ分散体が好適に用いられる。
【0113】
第四級アンモニウム塩をベースとする洗浄剤
本発明の組成物は、第四級アンモニウム塩を含有する洗浄剤組成物を含む。
第四級アンモニウム塩は以下の反応生成物であり得る:
(i)以下を含む少なくとも1種の化合物:
(a)炭化水素置換基を有するアシル化剤と、該アシル化剤と縮合可能な酸素又は窒素元素を含む化合物の縮合生成物であって、少なくとも1個の第三級アミン官能基を有する縮合生成物;
(b)少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むポリアルケン置換基を有するアミン;及び
(c)少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むマンニッヒ反応生成物であって、炭化水素置換基を有するフェニル及びアルデヒド及びアミンから誘導される該マンニッヒ反応生成物;及び
(ii)化合物(i)の第三級アミン官能基を第四級窒素に転化するための好適な第四級化剤。
【0114】
第四級化剤は、硫酸ジアルキル、ハロゲン化ベンジル、炭化水素置換基を有するカーボネート;酸と組み合わされた炭化水素置換基を有するエポキシド又はそれらの混合物を含むことができる。
【0115】
成分(i)(a)、成分(i)(b)及び成分(i)(c)の化合物は、以下により詳細に示されるが、少なくとも1個の第三級アミン官能基を含み、アルキル化工程の後に少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むようにアルキル化可能な化合物を含む。
【0116】
第四級アンモニウム塩の実施例及びその製造方法は、米国特許第4253980号、第3778371号、第4171959号、第4326973号、第4338206号及び第5254138号の明細書に記載されている。
【0117】
第四級アンモニウム塩は、溶媒の存在下で調整することができる。溶媒は一旦反応が完結したときに除去されてもされなくてもよい。好適な溶媒としては、限定されるものではないが、希釈油、石油ナフサ及び特定のアルコール類を挙げることができる。
【0118】
1の実施の形態においては、これらのアルコール類は、少なくとも2個の炭素原子を含み、他の実施の形態においては、少なくとも4個、少なくとも6個、又は少なくとも8個の炭素原子を含む。
【0119】
その他の実施の形態においては、本発明の溶媒は、2から20の炭素原子、4から16の炭素原子、6から12の炭素原子、8から10の炭素原子、又は8のみの炭素原子を含む。これらのアルコールは、通常はC1−C4−2−アルキル置換基、即ち、メチル、エチル、又はプロピル若しくはブチルの任意の異性体を有する。好適なアルコールの例としては、2−メチルヘプタノール、2−メチルデカノール、2−エチルペンタノール、2−エチルヘキサノール、2−エチルノナノール、2−プロピルヘプタノール、2−ブチルヘプタノール、2−ブチルオクタノール、イソオクタノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、2−メチルプロパン−1−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、ペンタノール及びその異性体、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0120】
1の実施の形態においては、本発明の溶媒は2−エチルヘキサノール、2−エチルノナノール、2−メチルヘプタノール又はこれらの組み合わせを含む。
【0121】
1の実施の形態においては、本発明の溶媒は2−エチルヘキサノールを含む。
【0122】
スクシンイミド第四級アンモニウム塩
1の実施の形態においては、第四級アンモニウム塩洗浄剤は以下の反応生成物を含む:
(i)(a)炭化水素置換基を有するアシル化剤と該アシル化剤と縮合可能な酸素又は窒素元素を含む化合物の縮合生成物であって、少なくとも1個の第三級アミン官能基を有する縮合生成物;及び
(ii)化合物(i)の第三級アミン官能基を第四級窒素に転化させるために好適な第四級化剤。
【0123】
本発明において炭化水素置換基を有する有用なアシル化剤には、長鎖炭化水素(一般的にはポリオレフィン)とモノ−不飽和カルボン酸(1−不飽和カルボン酸)又はその誘導体との反応生成物が含まれる。
【0124】
好適な1−不飽和カルボン酸又はその誘導体には以下を挙げることができる:
(i)α、β−1−不飽和C4−C10ジカルボン酸、例えばフマル酸、イタコン酸、マレイン酸;
(ii)(i)の誘導体、例えばC1−C5アルコールから誘導されるモノ−若しくはジエステル又は(i)の酸無水物;
(iii)α、β−1−不飽和C3−C10モノカルボン酸、例えばアクリル酸及びメタクリル酸;又は
(iv)(iii)の誘導体、例えばC1−C5アルコールから誘導される(iii)のエステル。
【0125】
炭化水素置換基を有するアシル化剤の調製に用いられる好適な長鎖炭化水素としては、以下の一般式(I)で表されるオレフィン結合を含む任意の化合物を挙げることができる:
【化1】
(I)
(ここで、R1、R2、R3、R4及びR5それぞれは、それぞれ独立して水素原子又は炭化水素基である。)
【0126】
ある実施の形態においては、R3、R4又はR5の少なくとも1種は、少なくとも20個の炭素原子を含む炭化水素基を表す。
【0127】
ポリオレフィン又はオレフィンポリマーとも記載可能なこれらの長鎖炭化水素と上記の1−不飽和カルボン酸及び誘導体と反応させることによって、本発明の窒素含有洗浄剤を調製するために用いられる炭化水素置換基を有するアシル化剤が生成される。
【0128】
好適なオレフィンポリマーとしては、C2−C20、又はC2−C5モノオレフィンを主要モル量で含むポリマーを挙げることができる。これらのオレフィンの中でも、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、オクテン−1又はスチレンを挙げることができる。ポリマーは、ポリイソブチレン等のホモポリマーであってもよいし、これら2種以上のオレフィンのコポリマーであってもよい。好適なコポリマーとしては、エチレン及びプロピレンのコポリマー、ブチレン及びイソブチレンのコポリマー、プロピレン及びイソブチレンのコポリマーを挙げることができる。他の好適なコポリマーとしては、コポリマーの小モル量のモノマー(例えば1〜10モル%)がC4−C18ジオレフィンであるものを挙げることができる。これらのポリマーの中でも、イソブチレンとブタジエンのコポリマー、及びエチレン、プロピレンと、1,4−ヘキサジエンのコポリマーを挙げることができる。
【0129】
1の実施の形態においては、上述の式(I)中の−R基の少なくとも1種は、ポリブテンから誘導される。即ち、C4オレフィンのポリマー、特に1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレンのポリマーから誘導される。C4ポリマーとしては、ポリイソブチレンを挙げることができる。
【0130】
その他の実施の形態においては、式(I)中の−R基の少なくとも1種は、エチレンとアルファ−オレフィンのポリマー、特にエチレン−プロピレン−ジエンポリマーから誘導される。エチレン及びアルファ−オレフィン及びエチレン−(低級オレフィン)−ジエンターポリマーのコポリマーについて記載した文献の例としては、米国特許第3598738号、第4026809号、第4032700号、第4137185号、第4156061号、第4320019号、第4357250号、第4658078号、第4668834号、第4937299号及び第5324800号を挙げることができる。
【0131】
その他の実施の形態においては、式(I)のオレフィン結合は、以下の式(II)で表されるように、主としてビニリデン基である:
【化2】
(II)
ここで各Rは炭化水素基であり、ある実施の形態においては以下である:
【化3】
(III)
ここでRは炭化水素基を表す。
【0132】
1の実施の形態においては、式(I)のビニリデン含有量は、少なくとも30モル%のビニリデン基、少なくとも50モル%のビニリデン基、又は少なくとも70モル%のビニリデン基を占めることができる。そのような生成物と調製方法は、米国特許第5071919号、第5137978号、第5137980号、第5286823号、第5408018号、第6562913号、第6683138号、第7037999号、及び米国特許公開公報US2004/0176552A1号、2005/0137363号及び2006/0079652A1に記載されている。そのような生成物は、BASF社からGLISSOPAL(商標)というブランド名で、Texas PetroChemical LP社から、TPC1105(商標)及びTPC595(商標)という商品名で市販されている
【0133】
炭化水素置換基を有するアシル化剤を1−不飽和カルボン酸系の反応成分と式(I)の化合物の反応成分との反応により生成する方法は当業者によく知られており、これらは米国特許第3361673号、第3401118号、第3087436号、第3172892号、第3272746号、第3215707号、第3231587号、第3912764号、第4110349号、第4234435号、第6077909号及び第6165235号に記載されている。
【0134】
その他の実施の形態においては、炭化水素置換基を有するアシル化剤は、式(I)によって表される化合物と、以下の式(IV)及び(V)で表される少なくとも1種のカルボキシル基含有反応成分の反応によって生成される:
【化4】
(IV)
及び
【化5】
(V)
ここで、R6、R8およびR9のそれぞれは独立してH又は炭化水素基を表し、R7は、二価の炭化水素基を表し、nは0又は1である。そのような化合物及びその製造方法は米国特許第5739356号、第5777142号、第5786490号、第5856524号、第6020500号及び第6114547号に記載されている。
【0135】
更に別の実施の形態においては、炭化水素置換基を有するアシル化剤は、式(I)で表される任意の化合物と、式(IV)又は式(V)で表される任意の化合物との反応によって生成することができ、該反応は、少なくとも1種のアルデヒド又は少なくとも1種のケトンの存在下で行われる。好適なアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタアルデヒド、オクタナール、ベンズアルデヒド、及びより高級のアルデヒドを挙げることができる。一般的には、モノアルデヒドが好ましいが、他のアルデヒド、例えばジアルデヒド、最も具体的にはグリオキサールも利用可能である。1の実施の形態においては、アルデヒドはホルムアルデヒドであり、これはしばしばホルマリンと称される水溶液状で供給することができるが、パラホルムアルデヒドと称されるポリマー状で用いることの方がもっと多い。パラホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒドとの反応性同等物であるか、及び/又はホルムアルデヒド源と考えられている。他の反応性同等物のようなものとしては、水和物又は環状三量体を挙げることができる。好適なケトンとしては、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン並びにその他のケトンを挙げることができる。ある実施の形態においては、ケトンの2つの炭化水素基のうちの1つがメチル基である。2以上のアルデヒド及び/又はケトンもまた有益である。そのような炭化水素置換基を有するアシル化剤及びその製造方法は、米国特許第5840920号、第6147036号及び第6207839号に記載されている。
【0136】
その他の実施の形態においては、炭化水素置換基を有するアシル化剤は、メチレン−ビスフェノールアルカン酸化合物を含むことができる。そのような化合物は、以下の縮合生成物:
(i)式(VI)の芳香族化合物:
【化6】
(VI)
及び
(ii)少なくとも1種のカルボキシル基含有試薬、例えば上述の式(IV)及び(V)の化合物、
ここで式(VI)において:
−各Rは独立して炭化水素基を表し;
−mは0又は1から6までの整数を表し、但し、mは置換のために利用可能な対応するAr基の原子価数を超えないものとし
−Arは5から30個の炭素原子基と、随意として0から3個の置換基(例えばアミノ、アミノヒドロキシ、ヒドロキシ又はアルキルポリオキシアルキル、ニトロ、アミノアルキル及びカルボキシ基又はこの随意としての置換基2種以上の組み合わせを有する芳香族基又は部分であり;
−Zは、独立して−OH、−O、低級アルコキシ基又は−(OR10bOR11基を表し、ここでR10は独立して二価のヒドロカルビル基を表し、bは1から30の整数であり、R11は−H又はヒドロカルビル基を表し;
−cは1〜3の整数である。
【0137】
1の実施の形態においては、芳香族部分上の少なくとも1種の炭化水素基はポリブテンから誘導される。
【0138】
1の実施の形態においては、上述の炭化水素基の供給源は三塩化アルミニウム又は三フッ化ホウ素のようなルイス酸触媒の存在下でのイソブチレンの重合により得られたポリブテンに由来する。そのような化合物及びその製造方法は米国特許第3954808号、第5336278号、第5458793号、第5620949号、第5827805号及び第6001781号に記載されている。
【0139】
その他の実施の形態においては、(i)と(ii)との反応は、随意には有機スルホン酸、ヘテロポリ酸及び鉱酸等の酸触媒の存在下で、少なくとも1種のアルデヒド又は少なくとも1種のケトンの存在下で行われることができる。この実施の形態で使用されるアルデヒド又はケトン反応成分は上述したものと同様である。そのような化合物とその製造方法は米国特許第5620949号に記載されている。
【0140】
炭化水素置換基を有するアシル化剤を製造する他の好適な方法は、米国特許第5912213号、第5851966号及び第5885944号から見いだすことができる。
【0141】
スクシンイミド第四級アンモニウム塩系の洗浄剤は、上述の炭化水素置換基を有するアシル化剤とアシル化剤と縮合可能な酸素又は窒素元素を含む化合物との反応により得られる。1の実施の形態においては、好適な化合物には少なくとも1個の第三級アミン官能基を含む。
【0142】
1の実施の形態においては、この化合物は以下の式(VII)又は(VIII)で表される:
【化7】
(VII)

及び
【化8】
(VIII)
ここで、式(VII)及び(VIII)の両者に対し、各Xは独立して1から4の炭素原子を含むアルキレン基であり、各Rは独立して炭化水素基を表す。
【0143】
好適な化合物としては、制限されるものではないが、以下:1−アミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、1−メチル−(4−メチル−アミノ)ピペリジン、1−アミノ−2,6−ジメチルピペリジン、4−(1−ピロリジニル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、2−(2−アミノ−エチル)−1−メチルピロリジン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N,N−トリメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−N−メチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、3−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラエチルジエチレントリアミン、3,3’−ジアミノ−N−エチルジプロピルアミン、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、ジブチレン−トリアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチェンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンテトラアミン、及びビス(ヘキサメチレン)トリアミン又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0144】
ある実施の形態においては、アミンは、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノ−プロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、N,N−ジメチルエチレンジアミン又はそれらの組み合わせが使用される。
【0145】
他の好適な化合物としては、アミノアルキル置換基を有するヘテロ環式化合物、例えば1−(3−アミノプロピル)イミダゾール及び4−(3−アミノプロピル)モルホリン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、3,3−ジアミノ−N−メチル−ジプロピルアミン、3’,3−アミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)が挙げられる。後者は前述の記載により言及されている。
【0146】
アシル化剤と縮合可能な窒素又は酸素原子を含み、且つ第三級アミン官能基を有する他の化合物としては、アルカノールアミン、特に制限されるものではないが、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、N,N−ジメチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノブタノール、N,N,N−トリス(ヒドロキシエチル)アミン及びN,N,N−トリス(ヒドロキシル−メチル)アミンを挙げることができる。
【0147】
本発明のスクシンイミド第四級アンモニウム塩系の洗浄剤は、上述の反応生成物(炭化水素置換基を有するアシル化剤と該アシル化剤と縮合可能な酸素又は窒素元素を含む化合物と更に少なくとも1個の第三級アミン官能基の反応生成物)と第三級アミン官能基を第四級窒素に転化するために好適な第四級化剤の組み合わせによって生成される。好適な第四級化剤は以下に詳細に示す。
【0148】
ある実施の形態においては、これらの調整は、溶媒の存在無しに或いは上述の溶媒の存在下で行われることができる。非制限的な例として、スクシンイミド第四級アンモニウム塩の調整を以下に示す。
【0149】
実施例Q−1
コハク酸系ポリイソブチレン酸無水物(100重量部)を、数平均分子量が1000の高ビニリデン含有ポリイソブチレンと無水マレイン酸との反応により調整し、80℃に加熱して、撹拌機、冷却管、サブ添加管(反応混合物の表面下の添加)に取り付けられた供給ポンプ、窒素供給口及び熱電対/温度制御システムを備えたジャケット付き反応器内に装入する。反応器を100℃に加熱する。ジメチルアミノプロピルアミン(10.9重量部)を反応器内に充填して、バッチ温度を120℃以下に8時間以内で維持する。その後反応混合物を150℃に加熱してこの温度で4時間維持し、第四級化されていないスクシンイミド洗浄剤を得る。
【0150】
その後、第四級化されていないスクシンイミド洗浄剤(100重量部)の一部を同様の反応器内に充填する。酢酸(5.8重量部)と2−エチルヘキサノール(38.4重量部)を容器内へ入れ、混合物を撹拌して75℃に加熱する。酸化プロピレン(8.5重量部)を反応器内に入れて4時間、反応温度を75℃に維持する。バッチをこの温度で4時間保持する。得られた生成物は第四級化されたコハク酸イミド洗浄剤を含んでいた。
【0151】
実施例Q−2
第四級化されていないコハク酸イミド洗浄剤を、上述したコハク酸系ポリイソブチレン酸無水物混合物(100重量部)と希釈油−Pilot900(17.6重量部)とから調製し、窒素雰囲気下で撹拌しながら110℃に加熱する。バッチの温度を115℃以下に維持しながら、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA、10.8重量部)を45分間ゆっくり加える。反応温度を150℃とし、この値を更に3時間保持する。得られた化合物は、第四級化されていないコハク酸イミド洗浄剤DMAPAであった。
【0152】
この第四級化されていないコハク酸イミド洗浄剤(100重量部)の一部を撹拌しながら90℃に加熱した。硫酸ジメチル(6.8重量部)を反応器に充填し、300回転/分で窒素シールの下、撹拌を再開した。生じた発熱反応によりバッチの温度が約100℃にまで上昇した。その反応を、冷却してデカンテーションする前に3時間維持した。得られた生成物は、硫酸ジメチル第四級アンモニウム塩を含んでいた。
【0153】
ポリアルケン置換基を有する第四級アンモニウム塩
1の実施の形態においては、第四級アンモニウム塩は以下の反応生成物を含む:
(i)(b)少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むポリアルケン置換基を有するアミン、及び
(ii)化合物(i)の第三級アミン官能基を第四級窒素に転化するために好適な第四級化剤。
【0154】
ポリアルケン置換基を有する好適なアミンは、オレフィンポリマーと、アンモニア、モノアミン、ポリアミン又はこれらのアミンの混合物のようなアミンとから誘導することができる。これらはあらゆる種類の方法によって準備することができる。ポリアルケン置換基を有する好適なアミン又はそれが誘導されるアミンは、第三級アミン官能基を含むか、そうでなければ第四級化剤と反応させたときにポリアルケン置換基を有するアミンが、第四級化剤と反応させたときに少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むまでアルキル化することができる。
【0155】
ポリアルケン置換基を有するアミンを調製するための方法は、米国特許第3275554号、第3438757号、第3454555号、第3565804号、第3755433号及び第3822289号に記載されるように、ハロゲン化オレフィンポリマーをアミンと反応させることからなる。
【0156】
ポリアルケン置換基を有するアミンを調製するための他の方法は、米国特許第5567845号及び第5496383号に記載されるように、ヒドロホルミル化したオレフィンとポリアミンと反応させて反応生成物を水素化することからなる。
【0157】
ポリアルケン置換基を有するアミンを調製するため他の方法は、米国特許第5350429号に記載されるように、ポリアルケンを従来のエポキシ化試薬を用いて、触媒あり又は触媒なしで、対応するエポキシドに転化させ、このエポキシドを、還元アミノ化条件でアンモニア又はアミンと反応させることによって、ポリアルケン置換基を有するを転化させることからなる。
【0158】
ポリアルケン置換基を有するアミンを調製するため別の方法は、米国特許第5492641号に記載されるように、アミンをニトリルと反応させることによって調製されたβ−アミノニトリルを水素化することからなる。
【0159】
ポリアルケン置換基を有するアミンを調製するため更に別の方法は、米国特許第第4832702号、第5496383号及び第5567845号に記載されるように、高圧及び高温で、CO、H2、及びNH3の存在下で、ロジウム又はコバルトなどの触媒を用いて、ポリブテン又はポリイソブチレンをヒロドホルミル化することからなる。
【0160】
ポリアルケン置換基を有するアミンを調製するための上述の方法は、単なる例示であり、完全な記載であることを意図するものではない。本発明のポリアルケン置換基を有するアミンの範囲は、上述したこれらの調製方法に制限されるものではない。
【0161】
ポリアルケン置換基を有するアミンは、オレフィンのポリマーから誘導することができる。本発明のポリアルケン置換基を有するアミンを調製するために好適なオレフィンのポリマーは上述のものと同様である。
【0162】
ポリアルケン置換基を有するアミンは、アンモニア、モノアミン、ポリアミン、又はそれらの混合物、特に異なるモノアミンの混合物、異なるポリアミンの混合物及びモノアミンとポリアミン(ジアミンを含む)の混合物から誘導されることができる。好適なアミンには、脂肪族、芳香族、ヘテル環式及び炭素環式のアミンを挙げることができる。
【0163】
1の実施の形態においては、アミンは以下の式の特徴を有することができる:
【化9】
(IX)
(ここで、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素、アミノ置換基を有する炭化水素、ヒロドロキシル置換基を有する炭化水素、アルコキシ置換基又はアシルイミドイル基を有する炭化水素を表し、R12及びR13は1以上の水素原子を表す。
【0164】
アミンは、少なくとも1種の一級(H2N−)又は二級(H−N<)アミノ基の存在下で特徴づけられる。調製に用いられるポリアルケン置換基を有するアミン又はこれらのアミンは、少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むことを確実にするために必要に応じてアルキル化され得る。好適なモノアミンの実施例は、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、ジブチルアミン、アリルアミン、イソブチルアミン、ココアミン、ステアリルアミン、ラウリルアミン、メチルラウリルアミン、オレイルアミン、N−メチル−オクチルアミン、ドデシルアミン、ジエタノールアミン、モルホリン及びオクタデシルアミンを挙げることができる。
【0165】
洗浄剤が誘導されるポリアミンには、主としてアルキレンアミンを挙げることができ、それらの大部分は以下の式を満たす:
【化10】
(X)
ここで、nは10未満の整数であり、R14のそれぞれは独立して水素原子又は典型的には30個までの炭素原子を含む炭化水素基を表し、アルキレン基は典型的には8個未満の炭素原子を含むアルキレン基である。
【0166】
アルキレンアミンには、エチレンアミン、ヘキシレンアミン、ヘプチレンアミン、オクチレンアミン、他のポリメチレンアミンを主として挙げることができる。それらの特定の例は以下である:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチレン−ジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、アミノプロピルモルホリン及びジメチルアミノプロピルアミン。上述の2種類以上のアルキレンアミンを縮合させることによって得られるもののようなもっと高級な類似体も同様に有用である。テトラエチレンペンタミンが特に有用である。
【0167】
ポリエチレンポリアミンとも称されるエチレンアミンは特に有用である。これらは、「Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk and Othmer, Vol.5, pp.898-905, IntersciencePublishers, NewYork (1950)」に「Ethylen Amins」の見出しで詳細に記載されている。
【0168】
上記のポリアルケン置換基を有するアミン又はそれらが誘導されるアミン(第2アミン若しくは第1アミン)は、アルキル化剤を用いてアルキル化して第3アミンにした後に、第四級化剤と反応させて本発明の第四級アンモニウム塩の添加剤を生成させることができる。好適なアルキル化剤には、下記に論じる第四級化剤を挙げることができる。
【0169】
本発明のポリアルケン置換基を有するアミンの第四級アンモニウム塩は、上述の反応生成物(少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むポリアルケン置換基を有するアミン)と好適な第四級化剤を、第三級アミン官能基を第四級窒素に転化させるために組み合わせることによって生成される。好適な第四級化剤は下記に詳細に記載する。非制限的な例としてポリアルケン置換アミンの第四級アンモニウム塩の調製を以下に示す。
【0170】
実施例Q−3
塩素及び塩化水素ガスを取り扱うのに適した装置(ガラス反応器、ガラス撹拌機、PTFE製ガスケット、熱電対用ガラスサーモウェル)を水酸化ナトリウムスクラバーに連結する。ガラス容器に低含有量のビニリデン1000Mn(PIB、100g)を装入し、110〜120℃に加熱する。この反応器に塩素(70g)を7時間かけて吹き込む。次いでこの反応混合物を110〜120℃において一晩窒素でスパージして、HClを除去する。
【0171】
得られたPIBクロリドをオートクレーブに移し、このオートクレーブを密封する。各PIBクロリド1モル(〜1030g)に対して気体状ジメチルアミン(DMA)1モル(45g)を加え、反応を160〜170℃に加熱して8時間、又は圧力が低下しなくなるまで、保つ。反応を室温まで冷まし、圧力を解放する。充分なSolvesso(商標)150溶媒を加えて70重量%活性溶液を作り、反応を均質になるまで撹拌する。得られたポリイソブテン−ジメチルアミン(PIB−DMA)溶液を分液漏斗に移し、2M水酸化ナトリウム溶液で2回洗浄してHCl及びNaClを取り除く。分離後に、生成物をMgSO4で乾燥させ、Celite(商標)パッドを通して濾過する。
【0172】
得られたPIB−DMA溶液(70%活性溶液41g)をガラス反応容器に装入し、室温において撹拌する。硫酸ジメチル(3.3g)を1分かけて滴下して第四級アンモニウム塩を得る。この混合物を窒素シール下で室温において1時間撹拌し、サンプル採取してブロモクレゾールグリーン指示薬に対して滴定する。得られた化合物は、ポリアルケン置換基を有するアミンの第四級アンモニウム塩洗浄剤であった。
【0173】
マンニッヒ第四級アンモニウム塩
1の実施の形態においては、第四級アンモニウム塩は以下の反応生成物である:
(i)(c)マンニッヒ反応生成物と、
(ii)化合物(i)の第三級アミン官能基を第四級窒素に転化するための好適な第四級化剤。
【0174】
好適なマンニッヒ反応生成物は、第3アミノ基を少なくとも1個有し、炭化水素置換基を有するフェノール、アルデヒド及びアミンの反応から調製される。
【0175】
炭化水素置換基を有するフェノールの炭化水素置換基は、10〜400個の炭素原子を有し、別の例では30〜180個の炭素原子を有し、さらなる例では10又は40〜110個の炭素原子を有する。この炭化水素置換基は、オレフィン又はポリオレフィンから誘導することができる。有用なオレフィンには、商品として入手できるα−オレフィン、例えば1−デセンが包含される。好適なポリオレフィンには、上の項で記載したものが包含される。炭化水素置換基を有するフェノールは、よく知られたアルキル化方法を用いてフェノールをこれらの好適なオレフィン又はポリオレフィンの内の1つ、例えばポリイソブチレン又はポリプロピレンによってアルキル化することによって、調製することができる。
【0176】
マンニッヒ洗浄剤を生成させるために用いられるアルデヒドは、1〜10個の炭素原子を有することができ、一般的にホルムアルデヒド又はその反応性同等物、例えばホルマリン又はパラホルムアルデヒドである。
【0177】
マンニッヒ洗浄剤を生成させるために用いられるアミンは、モノアミン又はポリアミンであることができる。本発明のマンニッヒ反応生成物を調製するのに好適なアミンは、前の項で記載したものと同じである。
【0178】
1の実施の形態においては、マンニッヒ洗浄剤は、米国特許第5697988号明細書に記載されたように、炭化水素置換基を有するフェノール、アルデヒド及びアミンを反応させることによって調製される。
【0179】
1の実施の形態においては、マンニッヒ反応生成物は、ポリイソブチレンから誘導されたアルキルフェノール;ホルムアルデヒド;及び第1モノアミン、第2モノアミン又はアルキレンジアミンから、調製される。
【0180】
特定のこれらの実施の形態においては、アミンはエチレンジアミン又はジメチルアミンである。好適なマンニッヒ反応生成物を調製するための別の方法は、米国特許第5876468号及び同第5876468号の各明細書に見出すことができる。
【0181】
上述のように、アミンの内のいくつかについては、第三級アミン官能基を得るために、マンニッヒ反応生成物とエポキシド若しくはカーボネート又はその他のアルキル化剤とをさらに反応させることが必要な場合がある。
【0182】
本発明のマンニッヒ第四級アンモニウム塩は、上述の反応生成物(少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むマンニッヒ反応生成物)と、第三級アミン官能基を第四級窒素に転化するための好適な第四級化剤とを組み合わせることによって生成される。好適な第四級化剤は以下に詳細に記載する。非制限的な例として、マンニッヒ第四級アンモニウム塩の調製を以下に示す。
【0183】
例Q−4
1000Mnポリイソブチレンから調製されたアルキル化フェノール(800g)及びSO−44希釈剤オイル(240g)を上記の記載に適合する反応容器に装入する。この容器を窒素シールし、混合物を100rpmにおいて撹拌する。この混合物にホルマリン(55.9g)を50分かけて加える(滴下)。その後に、ジメチルアミン(DMA、73.3g)をさらに50分かけて加える(滴下)。この混合物を68℃に加熱して1時間保つ。この混合物を次いで106℃に加熱してさらに2時間保つ。次いで混合物の温度を130℃に上昇させて30分保ち、その後に混合物を室温にまで冷ます。この混合物を真空蒸留(130℃、−0.9バール)によって精製して残留水を除去して、DMAマンニッヒを得た。
【0184】
このDMAマンニッヒ(1700g)を反応容器に加える。この容器にスチレンオキシド(263g)、酢酸(66g)及びメタノール(4564g)を加え、この混合物を窒素シール下で撹拌しながら6.5時間加熱還流する(〜75℃)。反応を真空蒸留(30℃、−0.8バール)する。得られた化合物はマンニッヒ第四級アンモニウム塩の洗浄剤である。
【0185】
第四級化剤
上述の第四級アンモニウム塩系の任意の洗浄剤を調製するために好適な第四級化剤としては、硫酸ジアルキル、ハロゲン化ベンジル、炭化水素置換基を有するカーボネート、酸と組み合わされた炭化水素置換基を有するエポキシド又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0186】
1の実施の形態においては、第四級化剤は、例えばクロリド、ヨージド又はブロミド等のハライド、ヒドロキシド、スルホネート、硫酸ジメチル等のアルキルサルフェート、スルトン、ホスフェート、C1−C12アルキルホスフェート、ジーC1−C12アルキルホスフェート、ボレート、C1−C12アルキルボレート、亜硝酸塩、硝酸塩、カーボネート、ジカーボネート、アルカノエート、O,O−ジ−(C1−C12)アルキルジオホスフェート又はそれらの混合物を含むことができる。
【0187】
1の実施の形態においては、第四級化剤は、硫酸ジメチル等の硫酸ジアルキル、N−オキシド、プロパン若しくはブタンスルトン等のスルトン、塩化、臭化若しくはヨウ化メチル及びエチルや塩化ベンジル等のハロゲン化アルキル、アシル若しくはアラルキル、ヒドロカルビル(若しくはアルキル)置換カーボネート又はそれらの組合せ物であることができる。ハロゲン化アラルキルが塩化ベンジルである場合、芳香環はさらにアルキル又はアルケニル基で随意に置換されていてよい。
【0188】
炭化水素置換基を有するカーボネートの炭化水素(又はアルキル)基は、基1個当たり1〜50個、2〜20個、1〜10個又は1〜5個の炭素原子を有することができる。
【0189】
1の実施の形態においては、炭化水素置換基を有するカーボネートは、2個の同一又は異なる炭化水素基を含む。炭化水素置換基を有するカーボネートの好適な例には、ジメチル又はジエチルカーボネートを挙げることができる。
【0190】
その他の実施の形態においては、第四級化剤は、炭化水素置換基を有するエポキシドであることができ、以下の式:
【化11】
(IX)
ここで、R15、R16、R17及びR18は独立してH又はC1〜C50炭化水素基であることができる。炭化水素置換基を有するエポキシドの好適な実施例には、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチルベンオキシド、C2〜C50エポキシド、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0191】
上述の全ての第四級化剤は、それがどのようなものであっても、特に炭化水素置換基を有するエポキシドは、酸と組み合わせて用いることができる。好適な酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸を挙げることができる。
【0192】
好ましくは、炭化水素置換基を有するアシル化剤は、ポリイソブチレン無水コハク酸と該アシル化剤と縮合可能な酸素又は窒素元素を含む化合物であり、ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレン−トリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ヘキサメチレンテトラアミン及びビス(ヘキサメチレン)トリアミンの中から選択される。
【0193】
酸素化洗浄剤
ある実施の形態においては、本発明の組成物は、酸素化洗浄剤添加剤を更に含む。酸素化洗浄剤添加剤は、酸の形態を有する少なくとも2個の置換基を有する炭化水素化合物又は酸無水物の形態の少なくとも1個のカルボキシ官能基を含むことができる。
【0194】
ある実施の形態においては、酸素化洗浄剤添加剤は、酸又は酸無水物の形態の少なくとも2個のカルボキシ官能基で置換された炭化水素化合物である。
【0195】
他の実施の形態においては、酸素化洗浄剤添加剤は、炭化水素置換基を有するコハク酸アシル化剤である。
【0196】
他の実施の形態においては、酸素化洗浄剤添加剤は、炭化水素置換基を有する二量体酸化合物である。
【0197】
更に別の実施の形態においては、本発明の炭化水素置換基を有する酸素化洗浄剤添加剤は、この項に記載した2種以上の酸素化洗浄剤の組み合わせを含む。
【0198】
好適な炭化水素置換基を有する酸素化洗浄剤添加剤としては、二量体酸を挙げることができる。二量体酸は、脂肪酸及び/又は酸官能基を含むポリオレフィン(特に本明細書に記載したポリアルケンを含む)から誘導されるタイプのジ酸ポリマーである。
【0199】
ある実施の形態においては、本発明で用いられる二量体酸は、C10〜C20、C12〜C18及び/又はC16〜C18ポリオレフィンから誘導される。
【0200】
これらの炭化水素置換基を有する酸素化洗浄剤添加剤には、酸、ハライド、コハク酸無水物、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0201】
ある実施の形態においては、この添加剤は酸又は酸無水物であり、他の実施の形態においては、添加剤は酸無水物であり、更に他の実施の形態においては、添加剤は加水分解した酸無水物である。置換炭化水素添加剤の炭化水素化合物及び/又は炭化水素置換コハク酸アシル化剤の第一級炭化水素基は一般的に平均して少なくとも8個又は30個、又は35個であって350個まで、又は200個まで、又は100個までの炭素原子を有する。
【0202】
1の実施の形態においては、炭化水素基は、ポリアルケンから誘導される。
【0203】
好適なポリアルケンには、2〜16個又は2〜6個又は2〜4個の炭素原子を有する重合性オレフィンモノマーのホモポリマー及びインターポリマーが包含される。好適なオレフィン及びポリオレフィンには、上の項に記載した任意のものが包含される。
【0204】
ある実施の形態においては、オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン及び1−オクテン等のモノオレフィン、又はジオレフィン性モノマー等のポリオレフィン性モノマー、例えば1,3−ブタジエン及びイソプレンである。
【0205】
1の実施の形態においては、インターポリマーはホモポリマーである。ポリマーの例には、ポリブテンがある。ある場合においては、ポリブテンの50%がイソブチレンから誘導される。ポリアルケンは、慣用の手順で調製される。
【0206】
1の実施の形態においては、炭化水素基は、少なくとも1300又は1500又は1600であって5000まで又は3000まで又は2500まで又は2000まで又は1800までのMn値を有するポリアルケンから誘導され、Mw/Mn比は1.5又は1.8又は2又は2.5〜3.6又は3.2までである。
【0207】
ある実施の形態においては、ポリアルケンは、分子量800〜1200のポリイソブチレンである。
【0208】
その他の実施の形態においては、炭化水素置換基を有するアシル化剤及び/又は置換コハク酸アシル化剤は、上述のポリアルケンと過剰量の無水マレイン酸とを反応させて、置換基1当量についてのコハク酸基の数が少なくとも1.3又は1.5又は1.7又は1.8である置換コハク酸アシル化剤を得ることによって調製される。この最大数は一般的に4.5を超えず、又は2.5まで、又は2.1まで、又は2.0までである。ここでのポリアルケンは、上記のもののいずれかであり得る。
【0209】
その他の実施の形態において、炭化水素及び/又は炭化水素基は、平均して8個、又は10個、又は12個〜40個まで、又は30個まで、又は24個まで、又は20個までの炭素原子を有する。
【0210】
1の実施の形態においては、炭化水素基は、平均して16〜18個の炭素原子を有する。
【0211】
オレフィン、オレフィンオリゴマー又はポリアルケンは、オレフィン、オレフィンオリゴマー又はポリアルケン1モル当たり少なくとも1モルのカルボキシル基含有試薬が存在するようにしてカルボキシル基含有試薬と反応させることができる。
【0212】
有用なアシル化剤を調製するための様々な手順を記載した特許文献の例には、米国特許第3172892号、第3215707号、第3219666号、第3231587号、第3912764号、第4110349号及び第4234435号の各明細書が包含される。
【0213】
ある実施の形態においては、炭化水素置換基を有する酸素化洗浄剤及び/又は炭化水素置換基を有するコハク酸アシル化剤は、ジ酸官能基を含む。
【0214】
ある実施の形態においては、コハク酸炭化水素置換基を有するアシル化剤の炭化水素基は、ポリイソブチレンから誘導され、前記アシル化剤のジ酸官能基は、炭化水素置換基を有するコハク酸等のカルボン酸基から誘導される。
【0215】
ある実施の形態においては、炭化水素置換基を有するアシル化剤は、炭化水素置換基を有するコハク酸無水物基を1個以上含む。
【0216】
ある実施の形態においては、炭化水素置換基を有するアシル化剤は、炭化水素置換基を有する1以上の加水分解されたコハク酸無水物基を含む。
【0217】
ある実施の形態においては、酸素化洗浄剤は、コハク酸無水物又はコハク酸ヘッド基を有するポリイソブチレン化合物である。
【0218】
酸素化洗浄剤は、ポリイソブチレンコハク酸無水物及び/又はその加水分解生成物であることができる。好適な酸素含有洗剤の調製は、国際公開WO2006/063161A2号に記載されている。
【0219】
非限定的な例として、2種の酸素化洗浄剤の調製を以下に示す。
【0220】
実施例O−1
Glissopal(商品名)1000(18.18kg)を100℃において密閉タンク中に装填し、撹拌する。この容器を167℃に加熱し、真空にする。次いでこの容器を窒素雰囲気で加圧(1バール)しながら175℃に加熱する。175℃に達したら、無水マレイン酸(2.32kg)を加熱ジャケット付きシリンジポンプ(ISCOポンプ)によって約9時間以内で加える。無水マレイン酸供給期間全体の間に、反応温度を175℃から装填終了時に225℃になるようにゆっくり上昇させる。次いで反応を225℃においてさらに10時間維持する。得られたコハク酸系ポリイソブチレン酸無水物(PIBSA)は、570cStの100℃動粘度及び127mgKOH/gの総酸価(TAN)を有していた。
【0221】
実施例O−2
例O−1のPIBSA(340g)を反応器に装填し、Pilot(商品名)900(60g)と混合する。容器の内容物を400回転/分において1時間撹拌し、次いで90℃に加熱する。この容器に次いで窒素を装填して不活性雰囲気にする。この混合物に10分以内で水(5.9g)を加える。次いでこの混合物を2時間撹拌する。得られた加水分解されたPIBSAは、163mg/KOHの総酸価及び500mm/s(cSt)の100℃動粘度を有していた。得られた生成物は、85重量%の加水分解生成物及び15重量%のPilot(登録商標)900を含有していた。カルボニル/水の比は0.5/1だった。
【0222】
本発明の洗浄剤組成物が第四級アンモニウム塩タイプの洗浄剤と酸素化洗浄剤との両方を含有する場合、第四級アンモニウム塩タイプの洗浄剤対酸素化洗浄剤の重量比は、1/10〜10/1、1/8〜8/1、1/1〜8/1又は3/1〜7/1であることができる(すべての重量比は溶剤なしを基準に計算される)。別の実施形態において、重量比は2/1〜4/1であることができる。
【0223】
ここで理解されるように、用語「炭化水素置換基」又は「炭化水素基」とは、当業者によく知られたその通常の意味で用いられる。より特定的には、これは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を含み、主として炭化水素性状を有する基を指す。炭化水素基の例としては、次のものを挙げることができる:炭化水素置換基、即ち脂肪族置換基(例えばアルキル若しくはアルケニル)、脂環式置換基(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)並びに芳香族、脂肪族及び脂環式置換基を持つ芳香族置換基、並びに環が分子の別の部分によって完了された環状置換基(例えば2個の置換基が一緒になって環を形成する);置換炭化水素置換基、即ち、本発明において置換基の主として炭化水素性状を変性しない非炭化水素基(例えばハロゲノ(より特定的にはクロロ及びフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ及びスルホ基)を含有する置換基;ヘテロ置換基、即ち主として本発明における炭化水素性状を持ちながら、それ以外は炭素から成る環又は鎖中に炭素以外の何かを含有する置換基。
ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、窒素を挙げることができ、これはピリジル、フリル、チエニル及びイミダゾリルのような置換基をカバーする。一般的には、炭化水素基中に10個の炭素原子のグループ当たりに2個以下、好ましくは1個以下の非炭化水素置換基が存在し、典型的には炭化水素基中に非炭化水素置換基は何ら存在しない。
【0224】
本発明はまた、本発明に係る組成物を調整するための方法に関し、該方法は、洗浄剤と本発明に係る分散体とを接触させて混合させるステップを含み、これにより組成物が得られる。
【0225】
本発明の組成物、即ち、結晶化状態の鉄化合物の粒子の分散体の形態のPF再生補助用添加剤と洗浄剤を含む組成物は、洗浄剤組成物と分散体とを混合可能な任意の従来手段により得ることができ、この混合は、一般的には室温に近い温度(15から30℃)で撹拌することによって得られる。
【0226】
分散体と洗浄剤組成物との重量比は、異なるパラメータ、例えば、エンジンやその設備の特徴(特に燃料噴射装置)、その汚染排出物(特に排出される煤の量)、排気及び汚染除去ラインの構造(特にPF又は触媒を含む触媒フィルターの使用)及びそのエンジンのマニホールドへの近接性、再生を開始させるために温度上昇をもたらす手段又は更には車両が循環する地理的領域であって車両が使用する燃料の品質を定義するもの等によって大きく変化する。
【0227】
分散体と洗浄剤組成物とのこの重量比は、典型的には、10/90と90/10の間で変化し、ある場合においては20/80と80/20との間で変化し、ある更に特定的な場合では30/70と70/30との間で変化する。その比は、有利には、50/50を超えて選択される。即ち、洗浄剤よりも分散体の方が大きな割合を有して選択される。
【0228】
本発明の組成物においては、鉄含有量は、0.05%から25%、より特定的には2%から15%含有することができ、この濃度は組成物の全重量に基づく鉄金属の重量%で示される。
【0229】
本発明に係る有機分散体は、一旦それらが燃料に加えられると、特に燃料がそれほど安定していない留分、植物油のメチルエステル等のようなバイオ燃料の画留分を含む場合であっても燃料の安定性をそれほど低下させることもないという特殊性を有する。燃料の安定性は、酸化に対する耐性(耐酸化性)を通して測定することができる。
【0230】
これについては、複数の種類の試験が専門家に知られている。試験としては、空気バブリングによる加熱された燃料の酸化からなるNF規格EN15751(自動車用燃料−脂肪酸メチルエステル(FAME)とガス油を有する混合物−促進酸化法による酸化の安定性の決定)に基づく試験を挙げることができる。酸化プロセス中に生成された蒸気は水中で凝縮させる。この水の電気伝導率(導電率)の上昇は、燃料の酸化プロセス中に形成された揮発性酸化合物の可溶化を示し、ゆえにその酸化を示すものである。これは誘導時間といわれ、電気伝導率の急速上昇の発生に必要な加熱の継続を表す時間である。この誘導時間が大きいほど、燃料の耐酸化性が高くなる。この試験はランシマット(RANCIMAT)試験とも呼ばれる。
【0231】
他の形式の試験としては、化学薬量(例えばISO 6619標準)により、酸素バブリングによる加熱された燃料の酸性度の上昇を定量することからなる(老化試験、EN ISO 12205(石油製品−中質石油蒸留物の酸化の安定性の決定(1966))。酸性度の時間依存変化は、老化燃料と非老化燃料との間の酸性度の差又はΔTAN(△酸価)により示される。ΔTANが大きいほど燃料はより酸化される。
【0232】
本発明はまた、燃料と本発明に係る組成物を含む添加剤入り燃料に関する。
【0233】
本発明はまた、本発明に係る添加剤入り燃料を調整するための方法に関し、燃料と本発明に係る組成物とを接触させて混合させるステップを含み、これにより添加剤入り燃料が得られる。
【0234】
本発明に係る組成物は、内燃エンジン用の燃料添加剤として用いることができ、より特定的にはディーゼルエンジンのガス油のための添加剤又は他のエンジンに用いることができ、例えば、煤又は炭素質粒子を排出する特定のガソリンエンジンや、バイオ燃料の添加剤等に用いることができる。
【0235】
それらはより一般的には、内燃エンジン(火花点火式エンジン)、発電装置、オイルバーナー又はジェット推進エンジン等のエネルギー発生機の液体燃料又は可燃性材料中の燃焼助剤として使用することができる。
【0236】
本発明に係る燃料添加剤は、触媒を全く含まないPF、或いはCSF等のような触媒を含むPFと組み合わせて使用することができる。
【0237】
CSFを構成する触媒の性状はどのような種類でもよく、特にアルミナ等の異なる支持材料又は結合材料に付随した、白金又はパラジウム等の貴金属をベースとする材料を用いることができる。材料としては、例えば酸化セリウム等の希土類をベースとする酸化物やマンガンをベースとする酸化物などの還元性材料を組み合わせることもできる。
【0238】
本発明に係る組成物又は燃料添加触媒(FBC)は、双方とも車両に取り付けられたベクトル化装置によって当業者に既知の任意の手段によって燃料へ添加することができるが、それが車両へ導入される前に燃料に直接添加されてもよい。後者の場合は、PFを備えた車両を多数保持しており、燃料を補充するための自己の給油所を有する場合に有利に用いられる。
【0239】
車両に取り付けられた装置としては、特に、車両の燃料タンク中へ規定量の組成物を注入する定量ポンプ等のような、組成物を燃料に対してベクトル化するための手段と、このベクトル化手段を駆動するためのツールに加え、本発明に係る組成物の多くを直接搭載し得る可能性を有し、ある範囲をカバーし得る可能性を有するタンクを含む装置であり得る。
【0240】
エンジンには、FBCを含む燃料添加剤が連続的に供給され、濃度は時間に対して可変であってもよいし安定的であってもよい。エンジンにはまた、添加剤入り燃料及び添加剤無し燃料が選択的に供給されてもよい。燃料に添加されるFBCの量は、異なるパラメータ、例えば、エンジンやその設備の特徴(特に燃料噴射装置)、その汚染排出物(特に排出される煤の量)、排気及び汚染除去ラインの構造(特にPF又は触媒を含むCSFの使用)及びそのエンジンのマニホールドへの近接性、再生を引き起こすための温度上昇をもたらす手段又は更には車両が循環する地理的領域であって車両が使用する燃料の品質を定義するもの等によって大きく変化する。
【0241】
FBCは、好ましくは粒子の最終分散体を煤の床(層)へ入れることが可能な手段を用いて、PFから排気ライン上流へ注入することもできる。この場合は、この燃料がPFから酸化触媒上流で燃焼するものであるか、或いはバーナー又は任意の他の手段によるものであっても、PFの再生がPFから排気ライン上流への燃料の直接噴射によって達成される場合に特に適している。
【0242】
好ましくは、添加剤入り燃料に含まれる燃料は、ガス油及びバイオ燃料からなる群の中から選択される。
【0243】
本発明に従う添加剤入り燃料を調製するために好適な燃料は、特に市販の燃料を含み、ある実施の形態においては、商品として入手可能なすべてのガス油燃料及び/又はバイオ燃料である。
【0244】
ガス油燃料はディーゼル燃料とも呼ぶことができる。バイオ添加剤をベースとした燃料はバイオ燃料とも呼ばれる。本発明を適用するために好適な燃料はそれほど制限されるものではなく、一般的には室温(例えば20から30℃)で液体状である。
【0245】
液体燃料は、炭化水素系の燃料であってもよく、炭化水素系以外の燃料でもよく、それらの混合物であってもよい。
【0246】
炭化水素系の燃料は石油留分であってもよく、特に、ASTM D4814 標準で与えられる定義に従うガソリン又はASTM D975 標準又はヨーロッパ標準EN590+A1で与えられる定義に従うガス油燃料であってもよい。
【0247】
1の実施の形態においては、液体燃料はガソリンであり、その他の実施の形態においては、液体燃料は無鉛ガソリンである。
【0248】
その他の実施の形態においては、液体燃料は、ガス油燃料である。
【0249】
炭化水素系の燃料は、例えばフィッシャー・トロプシュ法等のプロセスによって調製された炭化水素を含めるために、気体を液体に変化させるための方法によって調整された炭化水素であり得る。
【0250】
ある実施の形態においては、本発明に適用された燃料はガス油燃料、ガス油バイオ燃料またはこれらの組み合わせである。
【0251】
炭化水素系以外の燃料は、酸素原子を含有する化合物(これは酸素か物質と称されることもある)であることができ、これはアルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸エステル、ニトロアルカン又はそれらの混合物を含む。炭化水素系以外の燃料は、例えばメタノール、エタノール、メチル−t−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、菜種油メチルエステル及び大豆油メチルエステル等の植物又は動物性であってエステル交換した油及び/又は脂肪、並びにニトロメタンを含むことができる。
【0252】
炭化水素系の燃料の混合物及び炭化水素系以外の燃料の混合物には、例えばガソリンとメタノール及び/又はエタノール、ガス油燃料とエタノール、及びガス油燃料と菜種メチルエステルのようなエステル交換植物油及びバイオ誘導燃料を含むことができる。
【0253】
1の実施の形態においては、液体燃料は、炭化水素系の燃料中、炭化水素系以外の燃料中、又はこれらの混合物中の水エマルションである。
【0254】
この発明の複数の実施の形態においては、液体燃料は、重量基準で5000ppm以下、1000ppm以下、又は300ppm以下、200ppm以下、30ppm以下、又は10ppm以下の硫黄含有量を有することができる。
【0255】
本発明の液体燃料は、本発明に係る添加剤入り燃料中に主要量で存在しており、即ち、一般的には95重量%よりも多く、他の実施の形態においては、97重量%を超え、99.5重量%を超え、或いは99.9重量%を超える量である。
【0256】
本発明に適用するために好適な燃料は、随意には1又は複数の追加的な性能添加剤、溶剤又は希釈剤を含むことができる。これらの性能添加剤は、任意のタイプのものとすることができ、例えばエンジン中の燃料の分布(配分)を改良することができるものか、及び/又はエンジンの動作性能を改良できるものか、及び/又はエンジンの動作安定性を改良できるものとすることができる。
【0257】
例としては、制限されるものではないが、立体障害フェノール等の酸化防止剤、洗浄剤及び/若しくは分散剤、例えば窒素含有洗浄剤若しくはスクシンイミド、又は低温流れ改善剤、例えば無水マレイン酸とスチレンとのエステル化コポリマーを挙げることができる。
【0258】
本発明の組成物は、1又は複数の追加的な性能添加剤、溶剤又は希釈剤を更に含むことができる。
【0259】
追加的な性能添加剤には、立体障害フェノール若しくはその誘導体及び/又はジアリールアミン若しくはその誘導体;腐食防止剤;及び/又は本発明の燃料用の添加剤以外の洗浄剤/分散剤、例えばポリエーテルアミン若しくは窒素含有洗浄剤、特に(しかし非限定的に)PIBアミン洗浄剤/分散剤及びスクシンイミド洗浄剤/分散剤:を含むことができる。
【0260】
追加の性能添加剤はまた、以下のものを含むこともできる:低温流れ改善剤、例えば無水マレイン酸とスチレンとのエステル化コポリマー及び/若しくはエチレンと酢酸ビニルとのコポリマー;発泡防止剤及び/若しくは消泡剤、例えばシリコーン油;乳化解消剤、例えばポリアルコキシル化アルコール;カルボキシル基含有脂肪酸等の滑剤;金属奪活剤、例えば芳香族トリアゾール若しくはその誘導体、特に(しかし非限定的に)ベンゾトリアゾール;並びに/又はバルブシート減退防止剤、例えばアルカリ金属スルホスクシネート塩。
【0261】
付加的な性能添加剤化合物の総混合量は、溶剤/油の無い場合を基準として、0又は0.01重量%から65、50、或いは25重量%、又は0.01重量%から20重量%であるか、又は組成物の0.01重量%から20重量%である。1又は複数の他の性能添加剤が存在する場合においても、他の性能添加剤が相対的にお互いに異なる量で存在することは一般的なことである。
【0262】
本発明はまた、内燃エンジンに適用するための方法に関し、該エンジンに燃料と本発明に係る組成物を供給するためのステップを含む。
【0263】
1の実施の形態においては、本発明の組成物は、直接添加により燃料と混合され、添加剤入り燃料(添加された燃料)が、PF又はCSFを備える排気システムを装備するエンジンを運転するために用いられる。
【0264】
本発明の組成物を含む添加剤入り燃料は、燃料タンク中に収容され、燃焼時にエンジンに伝達され、酸化鉄粒子がPFに収集された煤の酸化温度を低減させる。
【0265】
その他の実施の形態においては、上記の操作態様を用いるが、しかし本発明の組成物を、エンジン駆動装置(例えば自動車、バス、トラック等)に、燃料とは別のタンク中に保って搭載する。これらの実施形態において、該組成物は、エンジン運転の際に燃料と一緒にされ又は混合される。他の技術と同様に、本発明の組成物を燃料に及び/又は燃料タンクに加えることも可能であり、また、モーター駆動車両のタンクに充填する前に燃料貯蔵所において加えることも可能である他の技術と同様に、本発明の組成物を、燃料及び/又は燃料タンク或いはモーター駆動の車両のタンクを充填する前の燃料付着物に追加することもまた可能である。
【0266】
本発明の組成物は、添加剤入り燃料中の鉄の質量含有率が、燃料の全質量を基準とした鉄金属において1ppmから50ppm、より特定的には2ppmから20ppm含有するように、燃料中に添加されることができる。
【0267】
本発明が、内燃エンジンのための液体燃料組成物として用いられる場合、好適な内燃エンジンは、以下を包含する、即ち、火花点火エンジン及び圧縮点火エンジン;2サイクル又は4サイクル;直接噴射、間接噴射、ノズル及びキャブレタによる噴射により得られる液体燃料;レールインジェクタ及びポンプインジェクタを有する現在のシステム;軽量車(例えば乗用車)及び大型車両(例えば商用トラック)用のエンジン;及び炭化水素系の燃料と炭化水素系以外の燃料の混合物とこれらの混合物で動作するエンジン、を含有する。エンジンは、EGRシステム(即ち、三元触媒、酸化触媒、NOx吸収器及びNOx触媒、触媒又は非触媒粒子トラップ;可変分配;及び噴射と流量の構成の同期を含む後処理)のような要素を含む一体化(統合)排出システムの一部であり得る。
【0268】
上記の物質の内のいくつかは、最終配合物中で相互作用して、最終配合物の構成成分が最初に添加したものとは異なるものになることがあることが知られている。従って、想定される使用において本発明の組成物を用いて形成される物質は容易には説明することができないであろう。このような次第ではあるが、本発明の範囲に入る全てのこれらの代替物及び全てのこれらの反応生成物について、本発明は上述した成分を混合することによって調整される組成物を包含するものである。
【実施例】
【0269】
実施例1:分散体の調製
分散体1A
鉄前駆体溶液の調製
1リットルの溶液を以下の方法により調製する;576gのFe(NO3)3と99.4gのFeCl2・4H2Oとを混合する。この混合物に蒸留水を1リットルの溶液が得られるように加える。この鉄前駆体溶液の最終濃度は、Fe1.5モル/リットルであった。
【0270】
ソーダ溶液の調製
6mol/LのNaOH溶液を以下の方法により調製する:240gのソーダ錠を蒸留水中に1リットルの溶液が得られるように希釈する。
【0271】
撹拌システムを備えた1リットルの反応器において、3mol・L-1の硝酸ナトリウム(NaNO3)溶液400mLからなるタンクボトム物質を導入する。6mol/Lのナトリウムを数滴滴下することにより、溶液のpHを11に調節する。前に調製した鉄前駆体の溶液とソーダ溶液とを同時に添加することにより、沈殿を形成させる。これらの2つの溶液の導入流量は、pHが一定に(室温で11に)維持されるように調製される。
【0272】
沈殿により得られた823.8gの溶液(即ち、21.75gのFe23当量又は0.27モルのFe)を前もって中和し、24.1gのイソステアリン酸(クローダ社により提供されるPrisorine 3501)と106.4gのIsopar Lを含む溶液中に再分散させる。この懸濁液を、恒温槽を備え、撹拌器を有するジャケット付き反応器に導入する。反応混合は90℃で4時間行う。
【0273】
冷却後、混合物を試験管に移す。脱混合が観察され、500mLの水性相と100mLの有機相が収集された。
【0274】
この有機分散体は、収集された分散体の全質量を基準とした鉄金属で示した場合に、10%の鉄の質量含有率を有していた。鉄含有量は、分散体のX線蛍光分析によって直接決定した。鉄含有量をモニタするために、これと同様な技術が以下の実施例で使用される。
【0275】
分散体1B
鉄前駆体溶液の調製
1リットルの溶液を以下の方法により調製する;576gのFe(NO3)3と99.4gのFeCl2・4H2Oとを混合する。この混合物に蒸留水を1リットルの溶液が得られるように加える。この鉄前駆体溶液の最終濃度は、Fe1.5モル/リットルであった。
【0276】
ソーダ溶液の調製
6mol/LのNaOH溶液を以下の方法により調製する:240gのソーダ錠を蒸留水中に1リットルの溶液が得られるように希釈する。
【0277】
撹拌システムを備えた1リットルの反応器において、3mol・L-1の硝酸ナトリウム(NaNO3)溶液400mLからなるタンクボトム物質を導入する。6mol/Lのナトリウムを数滴滴下することにより、溶液のpHを13に調節する。前に調製した鉄前駆体の溶液とソーダ溶液とを同時に添加することにより、沈殿を形成させる。これらの2つの溶液の導入流量は、pHが一定に(室温で13に)維持されるように調製される。
【0278】
沈殿により得られた823.8gの溶液(即ち、21.75gのFe23当量又は0.27モルのFe)を前もって中和し、24.1gのイソステアリン酸(クローダ社により提供されるPrisorine 3501 留分)と106.4gのIsopar Lを含む溶液中に再分散させる。この懸濁液を、恒温槽を備え、撹拌器を有するジャケット付き反応器に導入する。反応混合は90℃で4時間行う。
【0279】
冷却後、混合物は試験管に移す。脱混合が観察され、500mLの水性相と100mLの有機相が収集された。
【0280】
この有機分散体は、収集された分散体の全質量を基準とした鉄金属で示した場合に、10%の鉄の質量含有率を有していた。
【0281】
X線回折(XRD)による特性評価
実施例1の分散体のXRD分析を本説明の記載に従って行った。分散体1A及び分散体1Bのディフラクトグラムのピークが、結晶化したマグネタイト及び/又はマグヘマイト相(シートICCD01−088−0315)の特性XRD回折ピークに実際に対応することが分かる。先に示した方法に従う結晶子径の計算によると、結晶子径はそれぞれ、分散体1Aが9nm、分散体1Bが4nmであった。
【0282】
透過電子顕微鏡法(TEM)による特性評価
TEM分析を本発明の記載に従って行った。このTEM集計から生じた特徴:Φ50が7nmよりも小さい粒子の割合、本記述で定義したような多分散指数Pnを表1に報告する。
【0283】
【表1】
【0284】
動的光散乱(DLS)による特性評価
DLS分析を本発明の記載に従って行った。平均流体力学直径Dh強度を表2に示す。
【0285】
【表2】
【0286】
実施例2:洗浄剤組成物の調製
実施例2A
ジメチルアミノプロピルアミンコハク酸イミド、2−エチルヘキシルアルコール及び酢酸から誘導されるスクシンイミド第四級アンモニウム塩からなる洗浄剤組成物を調製し、それを酸化プロピレンを用いて四級化し、更にそれを上述の実施例Q−1で説明したものと本質的に同様な方法で調製した。
【0287】
実施例2B
実施例2Aのスクシンイミド第四級アンモニウム塩50重量部と酸素化洗浄剤18重量部と混合させ(重量部は全て溶剤無しを基本として計算)ることにより洗浄剤組成物を調製した。成分の混合は室温で実施した。酸素化洗浄剤は、高いビニリデン含有率を有する数平均分子量1000のポリイソブチレンと無水マレイン酸とから誘導されたコハク酸系ポリイソブチル酸無水物であり、例Q−1の方法と本質的に同様な方法に従って調製した。
【0288】
実施例2C
スクシンイミド第四級アンモニウム塩35重量部を酸素化洗浄剤9重量部と混合させ(重量部は全て溶剤無しを基本として計算)る以外は、実施例2Bの操作手順に従って洗浄剤組成物を調製する。
【0289】
実施例2D
実施例O−2で説明したものと本質的に同様な方法で調製されたコハク酸ポリイソブチレン酸を生成するために、酸素化洗浄剤を水との反応により加水分解した以外は、実施例2Bの操作手順に従って洗浄剤組成物を調製した。
【0290】
実施例2E
スクシンイミド第四級アンモニウム塩を、ジメチルアミノプロピルアミンコハク酸イミド及び硫酸ジメチルから誘導させた以外は実施例1Aの操作手順に従って調製し、石油ナフサ溶媒中に活性物質濃度が65重量%の混合物を得るためにより多くの溶剤を存在させた以外は実施例Q−2で説明したものと本質的に同様な方法で洗浄剤組成物を調製した。
【0291】
実施例2F
実施例O−2で説明したものと本質的には同様な方法で調製したコハク酸ポリイソブチレン酸を生成するために、酸素化洗浄剤を水との反応により加水分解する以外は、実施例2Cの操作手順に従って洗浄剤組成物を調製した。
【0292】
実施例3:燃料添加剤組成物の調製
実施例1の分散体1A又は1Bと実施例2A又は2Fの洗浄剤との混合物からなる8つの燃料添加剤組成物(3Aから3I)を、室温において各液体の比率を制御して室温で混合することにより調製した。
【0293】
即ち42.78gの分散体1Aを32.08gの実施例2Fの洗浄剤とISOPARと2−エチルヘキサノールの混合物である溶媒25.13gと混合した。混合物を120rpmで撹拌して維持した。混合物の拡散を30分間維持し、混合物の質を、得られた液体の上部及び底部の鉄含有量を測定することによってモニタリングした。
【0294】
30分の撹拌の終了時においては液体中の上部及び底部の鉄含有量が同等であった。この添加剤組成物、以下において組成物3Bと呼ばれる組成物は、鉄金属を4.3重量%を含んでいた。
【0295】
他の組成物は、分散体1A又は1B、実施例2A又は2Fの洗浄剤及び随意的な溶剤の量を調整することにより同様の方法で調製した。表3には、異なる組成物に関し各成分量と鉄含有量を示す。
【0296】
【表3】
【0297】
実施例4:ガス油燃料中の組成物の安定性
燃料を含む本発明に係る組成物の安定性を測定するため、添加剤入り燃料を調製した。このため、特定量の組成物を燃料中へ点火して、燃料中の鉄濃度の質量濃度を7ppmに到達させた。その後添加剤入り燃料を70℃に加熱し、添加剤入り組成物の安定性の持続時間を定量化した。
【0298】
添加剤入り組成物は、燃料中の鉄含有量が10%よりも多く低減していない場合には安定的であると考察された。ここで使用される燃料は、バイオ燃料(脂肪酸メチルエステル又はFAME)を約11%含む燃料である(表4)。
【0299】
【表4】
【0300】
燃料中に7ppmの鉄金属と随意に添加剤入り組成物中に1又は複数の洗浄剤分子を存在させるために、添加剤組成物の特定量を、均質化の後に250mlの燃料中に添加した:
*組成物3A:14.8mg
*組成物3B:25.9mg
*組成物3C:22.0mg
*組成物3D:19.3mg
*組成物3E:25.9mg
*組成物3F:22.0mg
*組成物3G:19.2mg
*組成物3H:23.1mg
*組成物3I:20.2mg。
【0301】
燃料上部にある燃料の容積20mlを定期的にサンプリングすることにより、燃料中の鉄含有量の経時変化を定量化した。この容量物は0.2μmフィルタでろ過した後、鉄含有量を決定するために蛍光X線により分析した。
【0302】
【表5】
【0303】
添加剤入り燃料を70℃で50日間加熱した後においても鉄含有量には何ら減少が見られない(表5)ことから、本発明に係る組成物3Bから3Iは、洗浄剤を有しない組成物3Aと比べて明らかに安定性を有することが分かる。よって、本発明による組成物の安定性は、70℃で50日よりも長いことが分かる。
【0304】
実施例5:燃料と添加剤組成物の適合性
実施例4のB10タイプの燃料の適合性を実施例3(3A、3B、3C、3D、3E、3F、及び3G)の添加剤組成物を添加して測定した。
【0305】
このため、実施例4で説明した手順と同様の手順に従って、燃料中の鉄濃度の質量濃度を7ppmに到達させるために、特定量の組成物を燃料へ添加した。
【0306】
燃料の適合性は、NF EN 15751標準(自動車用燃料−脂肪酸メチルエステル(FAME)とガス油を有する混合物−促進酸化法による酸化の安定性の決定)を用いて評価した。
【0307】
この試験に対しては、110℃に加熱された7.5gの燃料中で乾燥空気流(10L/h)の泡を発生させた。酸化プロセス中に生成された蒸気は、空気によって脱塩水及び水の導電率を測定するための電極を含むセルへ運び去った。この電極は測定及び記録システムに接続されている。このシステムは、水の伝導率が急速に増加するときに誘導(導入)期間の終了を示す。この伝導率の急速な増加は燃料の酸化プロセス中に形成される揮発性カルボン酸の水中への可溶化によって引き起こされるものである。
【0308】
表6は、少なくとも1種の第四級アンモニウム塩を含む(組成物3Bから3I)洗浄剤を含む組成物の存在下で、添加剤入り燃料の誘導時間が、組成物3A単独の添加剤入り燃料(第四級アンモニウム系洗浄剤を一切含まない)よりも大きくなる(長くなる)ことを示しており、これは燃料の酸化が少ないことを示し、ゆえに良好な適合性を示すものである。
【0309】
【表6】
【0310】
実施例6:粒子フィルタの再生のためのエンジン試験
粒子フィルタ(PF)を再生するための前述の実施例に記載された分散体の効率を、PFを再生するためのエンジン試験により測定した。このため、フォルクスワーゲン(登録商標)グループ(4気筒、2リッター、空冷式ターボコンプレッサー、81kW)により提供されたディーゼルエンジンをエンジン試験ベンチで用いた。
【0311】
下流に取り付けられた排気ラインは、白金及びアルミニウムをベースとするウォッシュコートを含む酸化触媒に続いて炭化ケイ素のPF(PF:全容積2.52L、直径5.66インチ、長さ5.87インチ)からなる市販のラインである。
【0312】
使用される燃料はEN590 DIN 51628標準に合致する市販の燃料であり、硫黄含有率10ppm未満とFAME含有率、7体積%のものである。
【0313】
これらの試験に対し、燃料に実施例3の異なる組成物3B及び3Eに添加した。添加された組成物の含有量は、燃料の全質量を基準とした鉄金属の形式で表される鉄を重量(質量)で7ppm(組成物3B)又は重量で5ppm(組成物3E)に対応する組成物量が燃料中に添加されるように調整した。比較として同様の燃料ではあるが組成物を添加しない第3の試験を実施した。
【0314】
試験は2つの連続する工程で行った。即ち、PFロード(充填)ステップと、その後のPF再生ステップである。これらのステップの双方の条件は、使用燃料(添加剤あり又は無し)以外は、3つの試験に対して厳密に同じとした。
【0315】
ロード段階は、45Nmのトルクを用いて速度3000回転/分(rpm)の速度で約6時間エンジンを稼働させることにより実施した。このロード段階は、PFに12gの粒子相が充填されたときに停止させた。この段階の間、PFから上流のガスの温度は230から235℃であった。この条件下において、粒子の排出は約2g/時間であった。
【0316】
このロード段階の後、この段階で充填された粒子の質量を確認するために、PFを取り外して計量した(表7に示す充填後のPFの粒子相の量)。
【0317】
その後、PFをベンチ上で再び組み立て、ロードの際の操作状態下(3000rpm/45Nm)で30分間戻したエンジンを用いて再加熱した。
【0318】
その後、エンジンを変え(トルク80Nm/2000rpm)、PFから上流の温度を450℃へ上昇させPFの再生を開始させることを可能とするエンジンの電気制御設備(ECU)からポスト噴射を要求させた。これらの条件は、35分間(2100秒)維持され、この時間はポスト噴射の開始からカウントした。
【0319】
PF再生効率は、以下の2つのパラメータから測定する:
−燃焼した煤(燃焼煤煙)の割合(圧力降下ΔP(t)の減少に応じた各時点tで計算された煤の燃焼速度に対応)
【数3】
100%の燃焼煤煙は、いかなる煤煙も含有しないPFによりこれらの条件で観察された最も低いレベルへの圧力降下の安定化に相当する。添加剤入り燃料で実施された試験の場合は、圧力降下は再生試験の終了前に安定するが、これがこの基準を計算するための可能性を与えている。添加剤入り燃焼無しでの試験の場合は、圧力降下は高いままであり安定せず、この基準では計算することができない。
−再生中の燃焼粒子の質量であって、ロード前、ロード後及び再生終了時のPFの秤量操作から計算される。
【0320】
一般的には、これらのパラメータが高い程、再生がより効率的である。表7に結果を分類する。
【0321】
【表7】
【0322】
添加剤が無い場合はたった18%の煤が燃焼しているのに対し、96から97%の煤が450℃、35分間で燃焼していることから、燃料中の添加剤の存在が、450℃でのPFの再生の可能性を示していることが分かる。圧力降下がPF上で観察される場合も同様であり、添加剤の存在下ではより大幅に低減される。即ち、双方の場合において約83〜86mbarから約30mbarに低下するが、添加剤無しでは、450℃、35分後の圧力降下は不完全な再生を示す65mbarよりも大きいままである。
【0323】
組成物3B及び3Eを比較すると、圧力降下の経時変化が450℃での再生の燃焼した煤の異なる時間(5、10、20、又は35分間)で観察される場合、双方の組成物は密接に関連する燃焼動力学に結びつくことが理解される。しかしながら、より小さい径(ここでは4nmの組成物3E)を有するマグネタイト及び/又はマグヘマイトタイプの結晶子を含む分散体から調整される添加剤に対して添加剤の量が少ない(ここでは5ppmの鉄金属)ものに対して得られるものである。結晶子の寸法が9nm(組成物3B)である場合、導入される量は鉄金属の含有量で7重量ppmに相当する。
【0324】
本発明の実施例は、小さな径(典型的には4nm)を有するマグネタイト及び/又はマグヘマイトタイプの結晶子を含む組成物が、低添加量で、特に燃料を劣化させることなくきわめて有効であることを示している。