特許第5959532号(P5959532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959532液体気質の消費を取り扱う手段を有するエアロゾル生成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959532
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】液体気質の消費を取り扱う手段を有するエアロゾル生成システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   A24F47/00
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-545409(P2013-545409)
(86)(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公表番号】特表2014-501107(P2014-501107A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】EP2011073795
(87)【国際公開番号】WO2012085207
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】10252234.9
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】フリック ジャン−マルク
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/015918(WO,A1)
【文献】 特開2000−041654(JP,A)
【文献】 特開2008−306089(JP,A)
【文献】 米国特許第05666977(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基質を受け入れるための電気作動式エアロゾル生成システムであって、
液体エアロゾル形成基質を貯蔵するための液体貯蔵部と、
前記液体エアロゾル形成基質を加熱するための少なくとも1つの加熱要素を含む電気ヒータと、
前記電気ヒータの作動をモニタし、該モニタした作動に基づいて、前記液体貯蔵部内に残っている液体エアロゾル形成質の量を推定するための電気回路と、
を備えることを特徴とする電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項2】
前記電気回路は、液体エアロゾル形成質の消費量を推定し、該消費量を既知の初期量から減算して、前記液体貯蔵部内に残っている液体エアロゾル形成質を推定するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項3】
前記電気回路は、前記加熱要素の温度又は抵抗を経時的にモニタすることにより前記電気ヒータの作動をモニタして、エアロゾル形成質の消費量を推定するように構成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項4】
前記電気回路は、加熱要素の温度又は抵抗の第1の閾値に至るまでの温度又は抵抗と液体エアロゾル形成質の消費量とを関連付ける第1の方程式と、加熱要素の温度又は抵抗の前記第1の閾値を上回る温度又は抵抗と液体エアロゾル形成質の消費量とを関連付ける第2の方程式とに基づいて、エアロゾルの消費量を推定するように構成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項5】
前記第2の方程式は、前記加熱要素に印加される電力に依存する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項6】
前記第1の方程式は、前記加熱要素に印加される電力とは無関係である、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項7】
前記第1の閾値は、前記液体エアロゾル形成質の沸点である、
ことを特徴とする請求項4、5又は6に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項8】
前記第1及び第2の方程式は、前記電気回路に記憶される、
ことを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項9】
前記電気回路に、液体エアロゾル形成質の異なる組成とともに使用できるとともに異なる電力レベルで使用できるように複数の異なる第1及び第2の方程式が記憶される、
ことを特徴とする請求項8に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項10】
前記電気回路は、前記少なくとも1つの加熱要素の電気抵抗を測定し、該測定した電気抵抗から前記加熱要素の前記温度を解明するように構成される、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項11】
前記液体エアロゾル形成基質を前記液体貯蔵部から前記電気ヒータに運ぶための毛細管芯をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の電気作動式エアロゾル生成システム。
【請求項12】
液体エアロゾル形成基質を貯蔵するための液体貯蔵部と、前記液体エアロゾル形成基質を加熱するための少なくとも1つの加熱要素を含む電気ヒータとを備えた電気作動式エアロゾル生成システムを準備するステップと、
前記電気ヒータの作動をモニタし、該モニタした作動に基づいて、前記液体貯蔵部内に残っている液体エアロゾル形成質の量を推定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
液体エアロゾル形成基質を貯蔵するための液体貯蔵部と、前記液体エアロゾル形成基質を加熱するための少なくとも1つの加熱要素を含む電気ヒータとを備えた電気作動式エアロゾル生成システムにおいて、
電気作動式エアロゾル生成システムのためのプログラム可能な電気回路上で実行された時に、前記電気ヒータの作動をモニタし、該モニタした作動に基づいて、前記液体貯蔵部内に残っている液体エアロゾル形成基質の量を推定することを前記プログラム可能な電気回路に含まれるプロセッサに実行させる、
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記憶する、
ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気作動式エアロゾル生成システムに関する。具体的には、本発明は、エアロゾル形成基質が液体であり液体貯蔵部内に収容されている電気作動式エアロゾル生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2007/078273号には、電気式喫煙システムが開示されている。バッテリ電源で駆動するヒータ式気化器と一連の小開口部を通じて連通する容器内に液体が貯蔵される。ヒータは、電気絶縁支持体上に取り付けられた螺旋状に巻かれた電気ヒータの形をとる。使用時には、ユーザの口でバッテリ電源のスイッチが入ることによりヒータが作動する。ユーザがマウスピースを吸引すると、複数の孔を通じて容器内に空気が吸い込まれ、ヒータ式気化器を越えてマウスピースに入り込み、その後ユーザの口に入る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/078273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の喫煙システムを含む先行技術の電気作動式エアロゾル生成システムには確かに多くの利点があるが、特に容器内に貯蔵された液体エアロゾル形成気質の取り扱いに関する設計には依然として改善の機会がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、エアロゾル形成気質を受け入れるための電気作動式エアロゾル生成システムが提供され、このシステムは、液体エアロゾル形成気質を貯蔵するための液体貯蔵部と、液体エアロゾル形成気質を加熱するための少なくとも1つの加熱要素を備える電気ヒータと、電気ヒータの作動をモニタし、このモニタした作動に基づいて、液体貯蔵部に残っている液体エアロゾル形成気質の量を推定するように構成された電気回路とを備える。
【0006】
エアロゾル生成システムは、エアロゾル形成気質を気化させてエアロゾルを形成するように構成される。当業者には周知のように、エアロゾルは、空気などの気体中の固体粒子又は液滴の懸濁液である。
【0007】
電気ヒータの作動は、例えば経時的な加熱要素の温度、経時的な加熱要素の抵抗、又は経時的にヒータに印加される電力、或いはこれらのパラメータの2つ又はそれ以上の組み合わせをモニタすることなどによるいくつかの方法でモニタすることができる。
【0008】
電気回路は、液体エアロゾル形成気質の消費量を推定し、この消費量を既知の初期量から減算して、液体貯蔵部内に残っている液体エアロゾル形成気質推定するように構成されることが好ましい。
【0009】
電気回路は、加熱要素の温度又は抵抗を経時的にモニタすることにより電気ヒータの作動をモニタして、エアロゾル形成気質の消費量を推定するように構成されることが好ましい。電気回路は、加熱要素の温度又は抵抗の第1の閾値に至るまでの温度又は抵抗と液体エアロゾル形成気質の消費量とを関連付ける第1の方程式と、加熱要素の温度又は抵抗の第1の閾値を上回る温度又は抵抗と液体エアロゾル形成気質の消費量とを関連付ける第2の方程式とに基づいて、エアロゾルの消費量を推定するように構成されることが好ましい。
【0010】
第2の方程式は、線形方程式であることが好ましい。第2の方程式は、加熱要素に印加される電力に依存することが好ましい。第2の方程式は、エアロゾル形成気質及びこれを保持するあらゆる要素を通じた熱拡散を考慮することが好ましい。
【0011】
第1の方程式は、非線形方程式であることが好ましい。第1の方程式は、加熱要素に印加される電力とは無関係であることが好ましい。第1の方程式は、液体エアロゾル形成気質の気化のエンタルピを考慮することが好ましい。
【0012】
第1の閾値の値は、液体エアロゾル形成気質の組成に依存する。第1の閾値は、液体エアロゾル形成気質の沸点であることが好ましく、液体エアロゾル形成気質の大気圧における沸点であることがより好ましい。
【0013】
第1の方程式及び第2の方程式は、液体エアロゾル形成気質の組成のみならず、寸法及び材料特性などのシステムの特異性、並びにヒータに印加される電力にも依存する。従って、第1の方程式及び第2の方程式は、実験的に導出されて電気回路に記憶されることが好ましい。電気回路には、液体エアロゾル形成気質の異なる組成とともに使用できるとともに異なる電力レベルで使用できるように、複数の異なる方程式を記憶することができる。
【0014】
当然ながら、温度又は抵抗と気質の消費量との関係をモデル化するための2つの方程式の代案として、実験的に導出された気質の消費量についてのデータとの相関関係により導出される単一のより複雑な方程式を使用することもできる。或いは、適切な場合には、3又はそれ以上の方程式を使用することもできる。しかしながら、本発明者らは、液体気質の消費量を正確に計算するには、加熱要素の温度発展、並びに液体気質の沸点の上下の異なる気化挙動を考慮しなければならない点を十分に理解している。ヒータに印加する異なる電力レベルに対応する異なるモデルを提供することも望ましい。
【0015】
液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量を判定するための電気回路を設けることは、いくつかの理由により有利である。例えば、液体貯蔵部が空又はほぼ空の場合には、電気ヒータに供給される液体エアロゾル形成基質が不十分な場合がある。つまり、生成されるエアロゾルが、例えばエアロゾルの粒子サイズなどの所望の特性を有していないことがあり得る。この結果、ユーザの体験が不十分となる場合がある。また、液体貯蔵部がいつ空又はほぼ空になるかを判定できれば、ユーザに通知することが可能になる。ユーザは、これを受けて、貯蔵部の交換又は補充準備を進めることができる。
【0016】
液体エアロゾル形成基質に関しては、例えば基質の蒸気圧又は粘度などの特定の物理特性が、エアロゾル生成システムでの使用に適するように選択される。この液体は、揮発性タバコ香味化合物を含むタバコ含有材料を含み、加熱時にはこの材料が液体から放出されることが好ましい。これとは別に又はこれに加えて、液体は、非タバコ材料を含むこともできる。液体は、水、エタノール、又はその他の溶媒、植物抽出物、ニコチン溶液、及び天然又は合成香味料を含むことができる。液体は、エアロゾルフォーマをさらに含むことが好ましい。好適なエアロゾルフォーマの例に、グリセリン及びプロピレングリコールがある。
【0017】
液体貯蔵部を設ける利点は、液体貯蔵部内の液体が外気から保護される点である。いくつかの実施形態では、液体貯蔵部内に周囲光も入り込むことができず、これにより液体の劣化のリスクが回避されるようになる。さらに、高レベルの衛生状態を維持することもできる。液体貯蔵部が補充可能でなく、液体貯蔵部内の液体を使い切った場合又は所定の閾値に減少した場合、ユーザが液体貯蔵部を交換する必要がある。このような交換中には、ユーザが液体で汚れるのを防ぐ必要がある。或いは、液体貯蔵部を補充可能とすることもできる。この場合、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量が所定の閾値に減少した時に、液体貯蔵部を補充することができる。液体貯蔵部は、所定の吸煙回数又は加熱サイクル数に対応する液体を保持するように構成されることが好ましい。
【0018】
電気ヒータは、単一の加熱要素を含むことができる。或いは、電気ヒータは、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上などの、複数の加熱要素を含むこともできる。これらの1又は複数の加熱要素を、液体エアロゾル形成基質を最も効果的に加熱するように適切に配置することができる。
【0019】
少なくとも1つの電気式加熱要素は、電気抵抗材料を含むことが好ましい。好適な電気抵抗材料としては、以下に限定されるわけではないが、ドープセラミックスなどの半導体、(例えば、ケイ化モリブデンなどの)「導電性」セラミックス、炭素、黒鉛、金属、金属合金、及びセラミック材料と金属材料で作られた複合材料が挙げられる。このような複合材料は、ドープセラミックス又は非ドープセラミックスを含むことができる。好適なドープセラミックスの例には、ドープ炭化ケイ素がある。好適な金属の例には、チタン、ジルコニウム、タンタル、及び白金族から得た金属がある。好適な金属合金の例としては、ステンレス鋼、コンスタンタン、ニッケル含有合金、コバルト含有合金、クロム含有合金、アルミニウム−チタン−ジルコニウム含有合金、ハフニウム含有合金、ニオブ含有合金、モリブデン含有合金、タンタル含有合金、タングステン含有合金、スズ含有合金、ガリウム含有合金、マンガン含有合金、及び鉄含有合金、並びにニッケル基超合金、鉄基超合金、コバルト基超合金、ステンレス鋼基超合金、Timetal(登録商標)、鉄−アルミニウム基合金、及び鉄−マンガン−アルミニウム基合金が挙げられる。Timetal(登録商標)は、Titanium Metals社の登録商標である。複合材料では、エネルギー移動の動態及び必要な外部物理化学的特性に応じて、任意に絶縁材料に電気抵抗材料を埋め込み、或いは電気抵抗材料を絶縁材料でカプセル化又はコーティングすることができ、逆もまた同様である。加熱要素は、2つの不活性材料層の間で絶縁された金属エッチング箔を含むことができる。この場合、不活性材料は、Kapton(登録商標)、全ポリイミド箔又は雲母箔を含むことができる。Kapton(登録商標)は、デュポン社(E.I. du Pont de Nemours and Company)の登録商標である。
【0020】
少なくとも1つの電気加熱要素は、あらゆる好適な形をとることができる。例えば、少なくとも1つの電気加熱要素は、加熱ブレードの形をとることができる。或いは、少なくとも1つの電気加熱要素は、異なる導電性部分を有するケーシング又は基板、或いは電気抵抗金属チューブの形をとることもできる。液体貯蔵部は、使い捨て加熱要素を組み込むことができる。或いは、液体エアロゾル形成基質を貫通する1又はそれ以上の加熱針又は加熱ロッドも適することができる。或いは、少なくとも1つの電気加熱要素は、可撓性シート材料を含むことができる。その他の選択肢としては、例えば、Ni−Cr(ニッケル−クロム)ワイヤ、白金ワイヤ、タングステンワイヤ又は合金ワイヤなどの加熱ワイヤ又はフィラメント、又は加熱プレートが挙げられる。任意に、この加熱要素を、硬質担体材料内に又はその上に堆積させることができる。
【0021】
少なくとも1つの電気式加熱要素は、熱を吸収して蓄えた後にこの熱を徐々に放出してエアロゾル形成基質を加熱できる材料を含むヒートシンク又はヒートリザーバを含むことができる。ヒートシンクは、好適な金属材料又はセラミック材料などのあらゆる好適な材料で形成することができる。この材料は、高熱容量(妥当な蓄熱材料)を有し、又は高温相変化などの可逆過程を通じて熱を吸収した後に放出できる材料であることが好ましい。好適で妥当な蓄熱材料としては、シリカゲル、アルミナ、炭素、グラスマット、ガラス繊維、鉱物、アルミニウム、銀又は鉛などの金属又は合金、及び紙などのセルロース材料が挙げられる。可逆的相変化を通じて熱を放出するその他の好適な材料としては、パラフィン、酢酸ナトリウム、ナフタリン、ワックス、ポリエチレンオキシド、金属、金属塩、共晶塩の混合物、又は合金が挙げられる。
【0022】
ヒートシンク又はヒートリザーバは、液体エアロゾル形成基質と直接接触して、蓄えられた熱を基質に直接伝達できるように配置することができる。或いは、ヒートシンク又はヒートリザーバ内に蓄えられた熱を、金属チューブなどの熱導体によってエアロゾル形成基質に伝達することもできる。
【0023】
少なくとも1つの加熱要素は、伝導を通じて液体エアロゾル形成基質を加熱することができる。加熱要素は、基質と少なくとも部分的に接触することができる。或いは、熱伝導要素によって加熱要素からの熱を基質に伝導することもできる。
【0024】
或いは、使用時に電気作動式エアロゾル生成システムを通じて吸い込まれる流入外気に少なくとも1つの加熱要素が熱を伝達し、この外気がエアロゾル形成基質を加熱するようにしてもよい。外気は、エアロゾル形成基質を通過する前に加熱することができる。或いは、最初に液体基質を通じて外気を吸い込み、その後に加熱してもよい。
【0025】
電気作動式エアロゾル生成システムは、液体エアロゾル形成基質を液体貯蔵部から電気ヒータに運ぶための毛細管芯をさらに含むことが好ましい。
【0026】
毛細管芯は、液体貯蔵部内の液体と接触するように配置されることが好ましい。毛細管芯は、液体貯蔵部内に延びることが好ましい。この場合、使用時には、毛細管芯内の毛細管作用により、液体が液体貯蔵部から電気ヒータに移動する。1つの実施形態では、毛細管芯が第1の端部及び第2の端部を有し、第1の端部が液体貯蔵部内に延びて内部の液体に接触し、電気ヒータが、第2の端部内の液体を加熱するように配置される。ヒータが作動すると、ヒータの少なくとも1つの加熱要素により、毛細管芯の第2の端部の液体が気化して過飽和蒸気を形成する。この過飽和蒸気が空気流と混ざり、この空気流に含まれて運ばれる。流れている間に蒸気が凝縮してエアロゾルを形成し、このエアロゾルがユーザの口の方に運ばれる。液体エアロゾル形成基質は、液体が毛細管作用により毛細管芯を通じて運ばれるようにする物理特性(粘度及び表面張力を含む)を有する。
【0027】
毛細管芯は、繊維状又は海綿状の構造を有することができる。毛細管芯は、毛細管の束を含むことが好ましい。例えば、毛細管芯は、複数の繊維又は糸、或いはその他の微細チューブを含むことができる。これらの繊維又は糸を、エアロゾル生成システムの長手方向に大まかに整列させることができる。或いは、毛細管芯は、ロッド形状に形成された海綿様又は泡状材料を含むこともできる。このロッド形状は、エアロゾル生成システムの長手方向に沿って延びることができる。芯の構造は、複数の小さなボア又はチューブを形成し、これを通じて毛細管作用により液体を運ぶことができる。毛細管芯は、あらゆる好適な材料又は材料の組み合わせを含むことができる。好適な材料の例としては、例えば、海綿又は発泡材料、繊維又は焼結粉体の形のセラミック又は黒鉛系材料、発泡金属又は発泡プラスチック材料、例えば、酢酸セルロース、ポリエステル、又は結合ポリオレフィン、ポリエチレン、テリレン又はポリプロピレン繊維、ナイロン繊維又はセラミックなどの、紡績又は押し出し繊維で作られた繊維性材料などの毛細管材料が挙げられる。この毛細管芯は、異なる液体物理特性で使用されるように、あらゆる好適な毛細管現象及び多孔率を有することができる。液体は、以下に限定されるわけではないが、毛細管作用により毛細管装置を通じて運ばれるような粘度、表面張力、濃度、熱伝導率、沸点及び蒸気圧を含む物理特性を有する。
【0028】
少なくとも1つの加熱要素は、毛細管芯を取り巻いて任意にこれを支持する加熱ワイヤ又はフィラメントの形であることが好ましい。芯の毛細管特性を液体の特性と組み合わせることで、通常の使用時には、加熱領域において常に芯が湿っていることが確実になる。芯が乾燥した場合、過熱が生じる恐れがある。従って、毛細管芯を設けると、この過熱を測定することができ、これにより液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量がいつ所定の閾値に減少したかをさらに判定できるので有利である。
【0029】
毛細管芯及びヒータ、そして任意に液体貯蔵部は、エアロゾル生成システムから単一の構成部品として取り外すことができる。
【0030】
1つの事例では、電気回路が、ユーザが吸煙していることを示す空気流を検出するためのセンサを備える。この場合、電気回路は、ユーザが吸煙していることをセンサが感知した場合、電気ヒータに所定の電力の電流パルスを供給するように構成されることが好ましい。この電流パルスの期間は、気化することが望まれる液体の量に応じて予め設定することができる。電気回路は、この目的のためにプログラム可能であることが好ましい。この実施形態では、電気回路を、電流パルスの期間の合計時間をモニタし、このモニタした合計時間から、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量がいつ所定の閾値に減少するかを予測するように構成することができる。
【0031】
電気作動式エアロゾル生成システムは、少なくとも1つの加熱要素の温度を測定するための温度センサをさらに備えることができ、電気回路は、この温度センサにより感知される少なくとも1つの加熱要素の温度をモニタするように構成される。
【0032】
別の実施形態では、電気回路が、少なくとも1つの加熱要素の電気抵抗を測定し、この測定した電気抵抗から加熱要素の温度を解明するように構成される。
【0033】
この実施形態では、電気回路を、少なくとも1つの加熱要素を流れる電流及び少なくとも1つの加熱要素に加わる電圧を測定し、この測定した電流及び電圧から少なくとも1つの加熱要素の電気抵抗を求めることにより、少なくとも1つの加熱要素の電気抵抗を測定するように構成することができる。この場合、電気回路は、既知の抵抗を有する抵抗器を少なくとも1つの加熱要素と直列に含むことができ、この電気回路を、既知の抵抗に加わる電圧を測定し、この測定した電圧及び既知の抵抗から少なくとも1つの加熱要素を流れる電流を求めることにより、少なくとも1つの加熱要素を流れる電流を測定するように構成することができる。
【0034】
別の事例では、電気回路が、ユーザが吸煙を開始するための手動操作式スイッチを備える。電気回路は、ユーザが吸煙を開始した時に、電気ヒータに電流パルスを供給するように構成される。この電流パルスの期間は、気化することが望まれる液体の量に応じて予め設定されることが好ましい。電気回路は、この目的のためにプログラム可能であることが好ましい。この実施形態では、電気回路を、手動操作式スイッチが作動される合計時間をモニタし、このモニタした合計時間から、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量を推定するように構成することができる。
【0035】
電気回路は、液体貯蔵部の存在を検出するためのセンサを備えることができる。このセンサは、ある液体貯蔵部を別の液体貯蔵部と区別することができ、従って満杯時に液体貯蔵部内に液体エアロゾル形成気質がどれほど収容されているかを解明できることが好ましい。このセンサは、液体貯蔵部上の表示、或いは液体貯蔵部の形状又はサイズに基づいて、液体貯蔵部内の液体の組成を特定することもできる。電気回路は、これとモニタした作動とを組み合わせることにより、使用中に液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量を予測することができる。
【0036】
好ましい実施形態では、電気回路が、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量が所定の閾値に減少した場合、電気ヒータを停止するように構成される。
【0037】
液体エアロゾル形成基質が不十分になると、ユーザがそれ以上エアロゾル生成システムを使用できなくなるので、このことは有利である。これにより、所望の特性を有していないエアロゾルの生成が避けられるようになる。これにより、ユーザの不十分な体験が避けられるようになる。
【0038】
電気回路は、電気ヒータと電力供給装置の間の電気ヒューズを飛ばすことにより電気ヒータを停止するように構成することができる。電気回路は、電気ヒータと電力供給装置の間のスイッチを切ることにより電気ヒータを停止するように構成することができる。当業者には、電気ヒータを停止する別の方法が明らかであろう。
【0039】
好ましい実施形態では、電気回路が、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量が所定の閾値に減少した場合に、これをユーザに指示するように構成される。この指示によりユーザが液体貯蔵部を補充又は交換できるので、このことは有利である。
【0040】
電気作動式エアロゾル生成システムは、ユーザディスプレイを含むことができる。この場合、指示は、ユーザディスプレイ上の指示を含むことができる。或いは、この指示は、可聴指示、又はユーザにとって好適な他のあらゆる種類の指示を含むこともできる。
【0041】
エアロゾル生成システムは、電力供給装置をさらに備えることができる。エアロゾル生成システムは、ハウジングを含むことが好ましい。ハウジングは、細長いことが好ましい。エアロゾル生成が毛細管芯を含む場合、毛細管芯の長手方向軸とハウジングの長手方向軸が実質的に平行になることができる。ハウジングは、シェル及びマウスピースを含むことができる。この場合、全ての構成部品をシェル又はマウスピース内に収容することができる。1つの実施形態では、ハウジングが、液体貯蔵部、毛細管芯及びヒータを含む取り外し可能な挿入体を含む。この実施形態では、エアロゾル生成システムのこれらの部品を単一の構成部品としてハウジングから取り外すことができる。このことは、例えば液体貯蔵部を補充又は交換するのに有用であると考えられる。
【0042】
ハウジングは、あらゆる好適な材料又は材料の組み合わせを含むことができる。好適な材料の例としては、金属、合金、プラスチック、或いはこれらの材料の1つ又はそれ以上を含む複合材料、或いは、例えばポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリエチレンなどの、食品又は製薬用途に適した熱可塑性物質が挙げられる。この材料は、軽量かつ非脆性であることが好ましい。
【0043】
エアロゾル生成システムは、持ち運び可能であることが好ましい。エアロゾル生成システムは、喫煙システムとすることができ、従来のシガー又はシガレットに相当するサイズを有することができる。この喫煙システムは、約30mm〜約150mmの全長を有することができる。この喫煙システムは、約5mm〜約30mmの外径を有することができる。
【0044】
電気作動式エアロゾル生成システムは、電気加熱式喫煙システムであることが好ましい。
【0045】
本発明の第2の態様によれば、液体エアロゾル形成気質を貯蔵するための液体貯蔵部と、液体エアロゾル形成気質を加熱するための少なくとも1つの加熱要素を含む電気ヒータとを備えた電気作動式エアロゾル生成システムを準備するステップと、電気ヒータの作動をモニタし、このモニタした作動に基づいて、液体貯蔵部内に残っている液体エアロゾル形成気質の量を推定するステップとを含む方法が提供される。
【0046】
電気ヒータの作動をモニタするステップは、加熱要素の温度又は抵抗を経時的にモニタして、エアロゾル形成気質の消費量を推定するステップを含むことが好ましい。エアロゾルの消費量の推定は、加熱要素の温度又は抵抗の第1の閾値に至るまでの温度又は抵抗と液体エアロゾル形成気質の消費量とを関連付ける第1の方程式と、加熱要素の温度又は抵抗の第1の閾値を上回る温度又は抵抗と液体エアロゾル形成気質の消費量とを関連付ける第2の方程式とに基づくことが好ましい。
【0047】
第2の方程式は、線形方程式であることが好ましい。第2の方程式は、エアロゾル形成気質及びこれを保持する要素を通じた熱拡散を考慮することが好ましい。
【0048】
第1の方程式は、非線形方程式であることが好ましい。第1の方程式は、液体エアロゾル形成気質の気化のエンタルピを考慮することが好ましい。
【0049】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様の方法を実行するように構成された電気作動式エアロゾル生成システムのための電気回路が提供される。
【0050】
本発明の第4の態様によれば、電気作動式エアロゾル生成システムのためのプログラム可能な電気回路上で実行された時に、このプログラム可能な電気回路に本発明の第2の態様の方法を実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【0051】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第4の態様によるコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0052】
本発明のエアロゾル生成システムに関連して説明した特徴は、本発明の方法にも適用することができる。また、本発明の方法に関連して説明した特徴は、本発明のエアロゾル生成システムにも適用することができる。
【0053】
添付図面を参照しながら、本発明をほんの一例としてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】液体貯蔵部を有する電気作動式エアロゾル生成システムの一例を示す図である。
図2図1に示す種類の装置における、2つの異なる液体エアロゾル形成気質組成の印加電力対総粒子質量のプロットである。
図3】液体組成の沸点に至るまでの気化率対温度のプロット、及びプロットした点に相関する曲線を示す図である。
図4図1に示す種類の装置における、2つの異なる電力レベルでの液体組成の気化率対温度を示すプロットである。
図5】吸煙中における加熱要素の温度発展を示すプロットを、液体エアロゾル形成気質の異なる消費段階に対応する異なるプロットとともに示す図である。
図6】吸煙中における液体気化率と、加熱要素の対応する温度とを示すプロットである。
図7】吸煙の累計気化質量を示すプロットである。
図8】y軸上に加熱要素の抵抗を示し、x軸上に電気作動式エアロゾル生成システムの電気ヒータの加熱要素の温度を示すプロットである。
図9】本発明の1つの実施形態による、加熱要素の抵抗の測定を可能にする概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1に、液体貯蔵部を有する電気作動式エアロゾル生成システムの一例を示す。図1では、このシステムが喫煙システムである。図1の喫煙システム100は、マウスピース側端部103と本体側端部105とを有するハウジング101を含む。本体側端部には、バッテリ107の形の電力供給装置及び電気回路109が備わる。電気回路109と協働する吸煙検出システム111も備わる。マウスピース側端部には、液体115を収容するカートリッジ113の形の液体貯蔵部、毛細管芯117及びヒータ119が備わる。なお、図1では、ヒータを概略的にしか示していない。図1に示す例示的な実施形態では、毛細管芯117の一端がカートリッジ113内に延び、毛細管芯117の他端がヒータ119に取り巻かれる。ヒータは、カートリッジ113の外側に沿って通過できる(図1には図示せず)接続部121を介して電気回路に接続される。ハウジング101は、空気入口123、マウスピース側端部の空気出口125、及びエアロゾル形成チャンバ127も含む。
【0056】
使用時の動作は以下の通りである。液体115が、カートリッジ113からの毛細管作用により、カートリッジ内に延びる芯117の一端からヒータ119に取り巻かれた芯の他端に運ばれる。ユーザが、エアロゾル生成システムの空気出口125を吸引すると、空気入口123を通じて外気が吸い込まれる。図1に示す構成では、吸煙検出システム111が吸煙を感知してヒータ119を作動させる。バッテリ107がヒータ119に電気エネルギーを供給してヒータに取り巻かれた芯117の端部を加熱する。ヒータ119により、この芯117の端部内の液体が気化して過飽和蒸気が発生する。同時に、気化した液体が、毛細管作用により芯117に沿って移動してきた別の液体に置き換わる。(この作用は「ポンプ作用」と呼ばれることもある。)発生した過飽和蒸気が空気入口123からの空気流と混ざり、この空気流に含まれて運ばれる。エアロゾル形成チャンバ127内では、蒸気が凝縮して吸入可能なエアロゾルを形成し、これが出口125の方に運ばれてユーザの口に入る。
【0057】
図1に示す実施形態では、電気回路109及び吸煙検出システム111がプログラム可能であることが好ましい。電気回路109及び吸煙検出システム111を使用して、エアロゾル生成システムの動作を管理することができる。これにより、エアロゾル中の粒子サイズの制御が支援される。
【0058】
図1は、本発明による電気作動式エアロゾル生成システムの一例を示すものである。しかしながら、他の多くの例も可能である。また、図1は事実上概略的なものである。具体的には、図示の構成部品は、個別にも又は相対的にも縮尺通りではない。電気作動式エアロゾル生成システムは、液体貯蔵部に収容された液体エアロゾル形成基質を含み又は受け入れる必要がある。電気作動式エアロゾル生成システムは、液体エアロゾル形成基質を加熱するための少なくとも1つの加熱要素を有する何らかの種類の電気ヒータを必要とする。最後に、電気作動式エアロゾル生成システムは、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量を判定するための電気回路を必要とする。以下、図2図9を参照しながらこれについて説明する。このシステムは、喫煙システムでなくてもよく、また吸煙検出システムを設けなくてもよいことを強調しておく。代わりに、このシステムは、例えばユーザが吸引の際にスイッチを操作することなどの手動作動によって動作することもできる。例えば、ハウジングの全体的な形状及びサイズを変更することもできる。さらに、このシステムは、毛細管芯を含まなくてもよい。この場合、システムは、気化される液体を送達するための別の機構を含むことができる。
【0059】
しかしながら、好ましい実施形態では、システムが、液体貯蔵部から少なくとも1つの加熱要素に液体を運ぶための毛細管芯を含む。毛細管芯は、様々な多孔質材料又は毛管材料から作製することができ、既知の所定の毛細管現象を有することが好ましい。いくつかの例として、繊維又は焼結粉体の形のセラミック又は黒鉛系材料が挙げられる。多孔率の異なる芯を使用して、濃度、粘度、表面張力及び蒸気圧などの様々な液体物理特性に対応することができる。芯は、必要量の液体をヒータに送達できるように適していなければならない。ヒータは、毛細管芯の周りに延びる少なくとも1つの加熱ワイヤ又はフィラメントを含むことが好ましい。
【0060】
上述したように、本発明によれば、電気作動式エアロゾル生成システムが、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量を判定するための電気回路を含む。以下、図2図9を参照しながら本発明の実施形態を説明する。これらの実施形態は、図1に示す例に基づくものであるが、電気作動式エアロゾル生成システムの他の実施形態にも適用可能である。
【0061】
図2は、2つの異なるエアロゾル形成気質の、図1に示す装置におけるユーザの吸煙で生成されたエアロゾルの総粒子質量(TPM)のプロットである。プロット点を大きな四角形で示すプロット200は液体1の結果を示し、プロット点を小さな四角形で示すプロット210は液体2の結果を示す。これらのプロットは、ヒータへの電力を高めたことによるエアロゾル生成への影響を示すものである。ヒータへの電力を高めると、概してエアロゾル生成が増すことが分かる。非常に高い電力ではエアロゾルの質量が減少しているが、これは、気化した質量が液滴を形成するのではなく気相内に残っていることにより説明することができる。
【0062】
図2では、生成されたエアロゾルの質量が液体エアロゾル形成気質の組成に依存することも示される。例えば、組成が異なれば沸点も異なり、粘度も異なる。従って、液体エアロゾル形成気質の消費を正確に推定するための全てのモデルは、液体組成及びヒータに印加される電力を考慮しなければならない。
【0063】
エアロゾルの生成には、液体に十分なエネルギーを供給して気化させることが必要である。この必要なエネルギーは、気化のエンタルピと呼ばれる。供給されるエネルギーの量は、1又は複数の加熱要素の温度に依存する。温度が高ければ高いほど、より多くのエネルギーが液体に供給される。従って、液体の沸点に至るまでは、加熱要素の温度と気化率の間に関連性がある。この関連性は、ヒータに供給される電力とは無関係である。図3は、沸点に至るまでの、液体エアロゾル形成気質の気化率対温度を示すプロットである。実験データを菱形220としてプロットしている。実験データ220に適する曲線230も四角形の点で示している。曲線230は、気化する質量の割合をm、較正定数をA及びB、加熱要素の温度をTとした場合、m=AeBTの形をとる。定数A及びBは、液体組成に依存する。
【0064】
加熱要素の温度が液体の沸点に達すると、気化率は、それ以上同様には上昇しなくなる。この時点で、加熱要素からのさらなるエネルギーにより液体の温度が上昇することはない。しかしながら、加熱要素の温度が沸点を越えて上昇するにつれ、液体気質を通じた、より具体的にはこの気質を保持するあらゆる媒体、この実施形態では毛細管芯を通じた熱拡散が重要な因子となる。加熱要素の温度が上昇するにつれ、熱拡散率が大きくなり、従ってより多くの液体気質が気化する。
【0065】
図4に、図1に示す芯システムを用いた2つの異なる気化率曲線のプロットを温度の関数として示す。2つの曲線240及び曲線250は、吸煙中に加熱要素に供給される2つの異なる電力量に対応する。これらの両曲線240及び曲線250では、液体の沸点よりも低い第1の部分が、図3に示す曲線230に対応する。沸点よりも上では、2つの曲線が分岐する。曲線240は、曲線250よりも低い電力に対応する。両曲線は、温度とともに気化率が直線的に上昇することを示すが、この上昇率は明らかに電力に依存する。曲線240及び250の液体気質の沸点よりも高い部分は、気化率をm、較正定数をC及びD、温度をTとした場合に、m=CT+Dの形をとる。定数C及びDは、液体組成、ヒータに印加される電力、並びに芯の組成及び寸法、ヒータの構成などの装置の物理的特性に依存する。
【0066】
図4の曲線は、加熱要素の温度及び加熱要素に印加される電力が既知の場合、液体気質の気化率を計算するために使用できるモデルを提供する。エアロゾル生成システムの各設計では、定数A、B、C及びDを実験的に導出する必要があり、定数C及びDは、システムが動作できる異なる電力レベルに関して導出しなければならない。
【0067】
加熱要素の温度は、各吸煙の過程で変化し、液体貯蔵部内の液体の量が減少するにつれて変化する。図5は、吸煙中における5つの平均温度プロファイルを示すプロットである。y軸上には、加熱要素の温度Tを示し、x軸上には、吸煙時間tを示す。曲線501は、1回目の一連の吸煙の中央値であり、各吸煙の持続時間は2秒間である。同様に、曲線503は、2回目の一連の吸煙の中央値であり、曲線505は、3回目の一連の吸煙の中央値であり、曲線507は、4回目の一連の吸煙の中央値であり、曲線509は、5回目の一連の吸煙の中央値である。各曲線内には、これらの吸煙の中央値付近の標準偏差を(例えば209に示す)垂直バーによって示している。従って、液体貯蔵部の寿命にわたる測定温度の漸進的変化が示されている。この挙動を、全ての気化した液剤及び全ての使用した電力レベルに関して観察し確認した。
【0068】
図5から分かるように、加熱要素の温度応答は、曲線501、503及び505については適度に安定している。すなわち、最初の3回の一連の吸煙の場合の中央値付近の標準偏差は適度に小さい。図4に示すモデルは、温度応答が安定している期間中に最も正確になる。この期間中には、常に十分なエアロゾル形成気質が芯を通じてヒータに送達される。芯が乾燥し始めると、異なる挙動が観察される。
【0069】
図6は、(一連の吸煙にわたって平均化した)吸煙中における加熱要素の温度プロファイルを曲線600として示し、図4を参照しながら図示及び説明したモデルを使用して計算した対応する気化率を曲線610として示す図である。
【0070】
吸煙中に気化した液体エアロゾル形成気質の総質量は、気化率曲線610下で積分することにより計算することができる。電気回路は、例えば台形法を用いてこの積分を行うことができる。この積分の結果を図7に示す。図7には、やはり吸煙中における加熱要素の温度プロファイル600を示しているが、吸煙にわたる累積的な気化質量も曲線700として示している。
【0071】
消費された液体エアロゾル形成気質の総量は、各吸煙について計算した合計を足し合わせることにより計算することができる。この総消費質量を、液体貯蔵部内の液体の既知の初期質量から減算して、残っている液体エアロゾル形成気質の量を推定することができる。この残っている量を、残り推定吸煙回数又は百分率値などの有意な量としてユーザに指示することができる。
【0072】
液体貯蔵部が空又はほぼ空の場合、ヒータに供給される液体エアロゾル形成基質が不十分なことがあるので、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量を判定することは有利である。つまり、生成されユーザにより吸入されるエアロゾルが、例えばエアロゾルの粒子サイズなどの所望の特性を有していないことがあり得る。この結果、ユーザの体験が不十分となる場合がある。また、液体貯蔵部が空又はほぼ空であることをユーザに通知できる機構を提供することも有利である。ユーザは、これを受けて、貯蔵部の交換又は補充準備を進めることができる。
【0073】
電気回路は、液体貯蔵部の存在を検出できるとともに、例えば液体貯蔵部内に液体エアロゾル形成気質がどれほど収容されているか、及び液体エアロゾル形成気質の組成などの液体貯蔵部の特徴を判別できるセンサを含むことができる。本出願人の係属中の国際出願第2009/007969号に記載されるように、この判別は、液体貯蔵部に与えられた識別情報に基づくことができる。電気回路は、この情報、及びヒータの作動をモニタすることにより導出される情報により、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量を予測できるようになる。或いは、電気回路は、センサを含まなくてもよい。例えば、各液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量を、単純に1種類及び1組の標準的な量とすることもできる。
【0074】
本発明は、数多くの変形が可能である。例えば、エアロゾル生成システムは、吸煙検出システムを含まなくてもよい。代わりに、このシステムは、例えばユーザが吸引の際にスイッチを操作することなどの手動作動によって動作することもできる。
【0075】
本発明の第1の実施形態によれば、エアロゾル生成システム内の加熱要素の近くに温度センサが設けられる。上述したように、電気回路は、温度センサにより測定される温度をモニタし、従って液体貯蔵部内の液体の量を判定することができる。この実施形態の利点は、温度センサが加熱要素の近くの温度を直接測定するので、計算又は導出が不要な点である。
【0076】
本発明の第2の実施形態によれば、液体貯蔵部内の液体の量が、電気式加熱要素の抵抗を測定することにより判定される。加熱要素が適切な抵抗温度係数特性を有している場合(例えば、以下の式(5)を参照)、この抵抗が、電気式加熱要素の温度の測定をもたらすことができる。
【0077】
図8は、y軸上に電気ヒータの加熱要素の抵抗Rを示し、x軸上に加熱要素の温度Tを示すプロットである。図8で分かるように、加熱要素の温度Tが上昇するにつれ、抵抗Rも上昇している。選択範囲内(図8の温度T1とT2、及び抵抗R1とR2の間)では、温度Tと抵抗Rが互いに比例することができる。
【0078】
本発明の第1の実施形態に関連して上述したように、液体貯蔵部が空又はほぼ空の場合、ヒータに供給される液体エアロゾル形成基質が不十分になる。つまり、あらゆる毛細管芯が乾燥し、加熱要素の温度が上昇する。図8は、温度が上昇するにつれて測定される抵抗も上昇するので、加熱要素の抵抗を測定することによりこのような温度上昇を判定できることを示している。
【0079】
図9は、本発明の第2の実施形態による、加熱要素の抵抗をいかにして測定できるかを示す概略電気回路図である。図9では、ヒータ901が、電圧V2を供給するバッテリ903に接続される。特定の温度で測定するヒータ抵抗をRheaterとする。既知の抵抗rを有する追加の抵抗器905が、ヒータ901と直列に挿入されて電圧V1に接続される。電圧V1は、接地と電圧V2の中間値を有する。マイクロプロセッサ907は、ヒータ901の抵抗Rheaterを測定するために、ヒータ901を流れる電流とヒータ901に加わる電圧の両方を求めることができる。そこで、以下の周知の式を用いて抵抗を求めることができる。
(1)
【0080】
図9では、ヒータに加わる電圧はV2−V1であり、ヒータを流れる電流はIである。従って以下のようになる。
(2)
【0081】
既知の抵抗rを有する追加の抵抗器905を使用して、再び上記の式(1)を用いて電流Iを求める。抵抗器905を流れる電流はIであり、抵抗器905に加わる電圧はV1である。従って以下のようになる。
(3)
【0082】
従って、(2)と(3)を組み合わせると以下の式が得られる。
(4)
【0083】
従って、マイクロプロセッサ907は、エアロゾル生成システムの使用時にV2及びV1を測定することができ、rの値が分かっているので、特定の温度におけるヒータの抵抗Rheaterを求めることができる。
【0084】
次に、次式を用いて、温度Tにおいて測定した抵抗Rheaterから温度Tを求めることができる。
(5)
式中、αは加熱要素材料の熱伝導抵抗係数であり、R0は室温T0における加熱要素の抵抗である。
【0085】
この実施形態の利点は、大きくて高価な場合がある温度センサが不要な点である。
【0086】
このようにして、加熱要素の温度測定値を導出することができる。これを使用して、液体貯蔵部内の液体の量がいつ閾値に減少したかを判定し、液体貯蔵部内に残っているエアロゾル形成基質の絶対量を推定することができる。
【0087】
上述した実施形態では、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量がいつ閾値に減少したかが判定された時点で1又はそれ以上の対策を講じることができる。電気ヒータを停止することができる。例えば、液体貯蔵部を使用不能にするようにシステムをトリガすることができる。例えば、電気回路は、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量が閾値に減少したと判定した時に、電気ヒータの少なくとも1つの加熱要素と電力供給装置の間の電気ヒューズを飛ばすことができる。電気ヒューズは、液体貯蔵部を含む取り外し可能な構成部品の一部として設けることができる。或いは、電気回路は、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量が閾値に減少したと判定した時に、電気ヒータの少なくとも1つの加熱要素と電力供給装置の間のスイッチを切ることができる。当然ながら、電気ヒータを停止する別の方法も可能である。電気ヒータを停止する利点は、これを受けてエアロゾル生成システムを使用できなくなる点である。これにより、ユーザが所望の特性を有していないエアロゾルを吸入することが不可能になる。
【0088】
液体貯蔵部内の液体の量がいつ閾値に減少したかが判定された時点で、ユーザに通知を行うことができる。例えば、電気回路は、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量が閾値に減少したと判定した時に、このことをユーザに示すことができる。例えば、エアロゾル生成システムがユーザディスプレイを含む場合、このユーザディスプレイを介して、液体貯蔵部が空又はほぼ空であることをユーザに示すことができる。これとは別に又はこれに加えて、液体貯蔵部が空又はほぼ空であることを可聴音によってユーザに知らせることもできる。当然ながら、液体貯蔵部が空又はほぼ空であることをユーザに示す別の方法も可能である。ユーザに通知を行う利点は、ユーザがこれを受けて液体貯蔵部の交換又は補充準備を進めることができる点である。
【0089】
従って、本発明によれば、電気作動式エアロゾル生成システムが、液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成基質の量がいつ所定の閾値に減少したかを判定するための電気回路を含む。1つの実施形態に関連して説明した特徴は、別の実施形態にも適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
100 喫煙システム
101 ハウジング
103 マウスピース側端部
105 本体側端部
107 バッテリ
109 電気回路
111 吸煙検出システム
113 カートリッジ
115 液体
117 毛細管芯
119 ヒータ
121 接続部
123 空気入口
125 空気出口
127 エアロゾル形成チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9