特許第5959540号(P5959540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959540高ダイナミクスの力生成のための、サブモジュールと駆動制御保護モジュールとを備えたフォースモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959540
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】高ダイナミクスの力生成のための、サブモジュールと駆動制御保護モジュールとを備えたフォースモジュール
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20160719BHJP
   H02N 2/06 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H02N2/04
   H02N2/06
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-554895(P2013-554895)
(86)(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公表番号】特表2014-506777(P2014-506777A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2012053077
(87)【国際公開番号】WO2012113869
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年2月17日
(31)【優先権主張番号】102011004690.9
(32)【優先日】2011年2月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アルフォンス ケルンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ユルゲン シュライナー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ビンディヒ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ブラント
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−145977(JP,A)
【文献】 特開2010−200484(JP,A)
【文献】 特開平08−182351(JP,A)
【文献】 特開2007−146799(JP,A)
【文献】 特開平07−211952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/00−2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの電圧源に接続される複数の圧電アクチュエータ(1)を組み合わせることにより、高ダイナミクスの力生成を行うフォースモジュール(20)において、
前記フォースモジュール(20)は、
少なくとも2つの圧電アクチュエータ(1)と、当該圧電アクチュエータ(1)の電気的コンタクト部材とをそれぞれ有する少なくとも2つのサブモジュール(21)と、
前記少なくとも2つのサブモジュール(21)内の圧電アクチュエータ(1)に対する1つの駆動制御保護モジュール(16)と
から構成され、
前記少なくとも2つのサブモジュール(21)のすべての電気的コンタクト部材は、前記駆動制御保護モジュール(16)内に引き込まれ
前記各サブモジュール(21)がそれぞれ筐体に収容されており、
前記各サブモジュール(21)は、前記圧電アクチュエータ(1)を外部影響から保護するために、底板(6)および蓋部(8)を有する筐体部品(7)を有し、
前記電気的コンタクト部材のみが、前記筐体内から封止された状態で引き出されている、
ことを特徴とするフォースモジュール(20)。
【請求項2】
1つの電圧源に接続される複数の圧電アクチュエータ(1)を組み合わせることにより、高ダイナミクスの力生成を行うフォースモジュール(20)において、
前記フォースモジュール(20)は、
少なくとも2つの圧電アクチュエータ(1)と、当該圧電アクチュエータ(1)の電気的コンタクト部材とをそれぞれ有する少なくとも2つのサブモジュール(21)と、
前記少なくとも2つのサブモジュール(21)内の圧電アクチュエータ(1)に対する1つの駆動制御保護モジュール(16)と、
から構成され、
前記少なくとも2つのサブモジュール(21)のすべての電気的コンタクト部材は、前記駆動制御保護モジュール(16)内に引き込まれ、
前記フォースモジュール(20)は、底板(10)および蓋板(12)を有するフォースモジュール筐体部品(11)を有し、すべての部品が鋼により構成される、
ことを特徴とするフォースモジュール(20)。
【請求項3】
前記フォースモジュール(20)は、すべての部品が硬鋼により構成される、
請求項2記載のフォースモジュール。
【請求項4】
前記底板(10)および蓋板(12)を有するフォースモジュール筐体部品(11)内において拡張ボルト(24)を介して前記サブモジュール(21)は付勢されている、
請求項2または3記載のフォースモジュール。
【請求項5】
前記電気的コンタクト部材により、前記サブモジュール(21)内の圧電アクチュエータ(1)ごとに2つの電気的導体路(2b)が形成されることにより、前記サブモジュール(21)内において各圧電アクチュエータ(1)が個別に駆動制御可能に構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のフォースモジュール。
【請求項6】
前記電気的コンタクト部材は、複数の導体路(2b)を有するフレックス基板(2)であり、
前記圧電アクチュエータ(1)の外部電極(1b)は前記導体路(2b)に電気的に接続されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のフォースモジュール。
【請求項7】
各フレックス基板(2)の端部側に接続プラグ(9)が設けられている、
請求項6記載のフォースモジュール。
【請求項8】
前記サブモジュール(21)において前記圧電アクチュエータ(1)相互間にセラミック材料(22)が挿入されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載のフォースモジュール。
【請求項9】
すべての前記サブモジュール(21)が同一に構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載のフォースモジュール。
【請求項10】
前記サブモジュール(21)内には電子部品が設置されておらず、もっぱら前記駆動制御保護モジュール(16)内にのみ電子部品が設置されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載のフォースモジュール。
【請求項11】
前記駆動制御保護モジュール(16)内にパワーアンプ(23)が前記圧電アクチュエータ(1)ごとに設けられている、
請求項1から10までのいずれか1項記載のフォースモジュール。
【請求項12】
前記フォースモジュール(20)に接続ケーブル(19)が固定されており、当該接続ケーブル(19)の導体は前記駆動制御保護モジュール(16)内部に引き込まれている、
請求項1から11までのいずれか1項記載のフォースモジュール。
【請求項13】
自動車工業において機械的な変形加工を行う際に局所的な挟み込みによって流動プロセスを制御するために使用される、
請求項1から12までのいずれか1項記載のフォースモジュール(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの電圧源に接続される複数の圧電アクチュエータを組み合わせて成る、高ダイナミクスの力生成のためのフォースモジュールと、その使用とに関する。
【0002】
従来の高ダイナミクス力生成技術は、多層構造の圧電アクチュエータとして構成された、圧電式の低電圧アクチュエータである。その動作性能、ひいては力生成量は、基本的に圧電アクチュエータの容量によって決定され、この容量は、製造に起因して制限される。典型的に生成可能な力は、数kNのオーダのみに留まる。
【0003】
公知の高電圧アクチュエータは、複数の個別の圧電ディスクを組み合わせることにより、圧電式の低電圧アクチュエータより格段に大型に構成でき、このような高電圧アクチュエータを用いると、実現される力をより大きくすることができるが、位置分解能を実現することはできなくなる。また、高い動作電圧をもってしても、機械工学の過酷な環境において使用することはできない。
【0004】
圧電アクチュエータは、感度が比較的高いセラミック電子材料であるから、本発明の適用領域では、さらに構造的な対応手段を追加しないと、この圧電アクチュエータを用いることはできない。多数の圧電アクチュエータを1つの電圧源にまとめて接続すると、制御不能な電気的状態に陥ってしまう(ホットスポット、ドミノ作用による大量不具合、等)。
【0005】
流体圧方式または電気力学方式の別のシステムでは、必要な高いダイナミクスを実現できないか、または必要な位置分解能を実現できないか、または、力を保持するのに必要なエネルギーが高くなってしまう。特に流体圧シリンダは、組付サイズが過度に大きいので、これは既に選択肢から排除される。
【0006】
本発明の基礎となる課題は、数百kNの領域の機械的力を高ダイナミクスかつ高位置分解能で生成できるフォースモジュールを実現すること、少なくともミリ秒領域の応答時間を実現すること、少なくとも平方センチメータ領域の位置分解能を実現することである。
【0007】
さらに、数十〜数百kNの外力とりわけ衝撃力に持続的にさらされて耐えなければならない、特に要求が厳しい製造現場においても、フォースモジュールを使用できるようにしなければならない。
【0008】
長寿命を保証するためには、さらに外部影響から、とりわけ湿度または化学的作用から、フォースモジュールを高信頼性で保護しなければならない。
【0009】
前記課題の本発明の解決手段は、フォースモジュールが、少なくとも2つの圧電アクチュエータと当該圧電アクチュエータの電気的コンタクト部材とをそれぞれ有する少なくとも2つのサブモジュールと、前記サブモジュール内の圧電アクチュエータに対する1つの駆動制御保護モジュールとから構成され、前記少なくとも2つのサブモジュールのすべての電気的コンタクト部材が前記駆動制御保護モジュール内まで引き込まれている構成である。このような構成により、各圧電アクチュエータの力生成量が増大し、全体的に、本発明の課題である高い力を実現することができる。
【0010】
有利な実施形態では、各サブモジュール内において、各圧電アクチュエータの電気的コンタクト部材により2つの電気的導体路が実現され、これにより、各サブモジュール内の各圧電アクチュエータを、他の圧電アクチュエータに依存せずに個別に駆動制御可能であるように構成される。
【0011】
有利には、前記電気的コンタクト部材は、複数の導体路を有するフレックス基板であり、各圧電アクチュエータの外部電極はこのフレックス基板の導体路に電気的に接続されている。フレックス基板は非常に薄いので、このフレックス基板に必要なスペースは小さい。さらに、フレックス基板は筐体内から簡単に、かつ封止した状態で引き出すことが可能である。フレックス基板とは、可撓性の薄い電気絶縁性のフラットな支持体に、導体路を敷設して構成されたものを指す。
【0012】
有利には、各フレックス基板の端部側に接続プラグが設けられる。このような構成により、複数の前記サブモジュールを前記1つの駆動制御保護モジュールに電気的に結合するのが容易になる。
【0013】
有利な実施形態では、各1つのサブモジュールをそれぞれ筐体に収容し、各1つのサブモジュールが、圧電アクチュエータを外部影響から保護するための底板と蓋部とを有する1つの筐体部品を備え、前記電気的コンタクト部材のみが筐体から引き出されている。このようにして、サブモジュールは高信頼性で外部影響から保護される。
【0014】
有利な実施形態では、サブモジュール内において各圧電アクチュエータ間にセラミック材料が挿入されている。このような構成により、各圧電アクチュエータ相互間の電気的絶縁が改善される。
【0015】
有利には、すべてのサブモジュールが同一に構成されている。このことにより、製造が簡略化される。
【0016】
有利には、前記サブモジュール内には電子部品は設置されず、電子部品はもっぱら駆動制御保護モジュール内にのみ設置される。このような構成により、サブモジュールを小型かつコンパクトに構成することができる。
【0017】
1つの実施形態では、前記駆動制御保護モジュール内にパワーアンプが圧電アクチュエータごとに設置されている。したがって、保護部の他にさらにパワーアンプが圧電アクチュエータごとに設けられ、各パワーアンプにおいて、各圧電アクチュエータを駆動制御するのに必要な電力/電流がトランジスタにより制御される。圧電アクチュエータごとに個別に印加することが可能であることにより、フォースモジュールは、ほぼ任意のダイナミックな力配分を実現することができる。
【0018】
装置の監視および制御は、制御ユニットによって生成されデータバスを介して前記駆動制御保護モジュールへ伝送される、容易に取り扱い可能な制御信号を用いて行われる。このことは大きな利点である。前記制御ユニットはたとえばコンピュータである。
【0019】
有利には、前記フォースモジュールは、底板と蓋板とを有するフォースモジュール筐体部品を備えており、すべての部分が鋼から、とりわけ硬鋼から成る。このことにより、高感度の圧電アクチュエータと電子部品とに高い機械的負荷がかかるのが持続的に防止される。
【0020】
有利には、底板および蓋板を有する前記フォースモジュール筐体部品内のサブモジュールを拡張ボルトによって付勢することにより、圧電アクチュエータに引張力がかからないようにする。
【0021】
有利には、前記フォースモジュールに接続ケーブルが固定され、この接続ケーブルの電気的導体は前記駆動制御保護モジュール内に引き込まれている。有利には、バス線路も前記駆動制御保護モジュール内に引き込まれている。
【0022】
有利には本発明のフォースモジュールは、自動車工業において機械的な変形加工を行う際に局所的な挟み込みによって流動プロセスを制御するために使用される。
【0023】
本発明の特徴は、所定数の複数の圧電アクチュエータ、とりわけ多層圧電アクチュエータがサブモジュールにまとめられ、複数のこのようなサブモジュールが1つのフォースモジュールにまとめられて所定のように配置されることである。このような構成により、各圧電アクチュエータの力生成量が加算されて全体的に高い力を実現することができる。
【0024】
前記サブモジュール内の各圧電アクチュエータは、相互に依存せずに個別に高いダイナミクスで駆動制御することができると同時に、高い位置分解能を実現することができる。
【0025】
前記サブモジュールの構造は、各圧電アクチュエータの電気的絶縁を保証し、外部影響から高信頼性で保護されるのを保証するように構成される。
【0026】
前記フォースモジュールは複数のサブモジュールの他にさらに、前記複数のサブモジュールの圧電アクチュエータを個別に電気的に駆動制御し、かつ保護するための1つの駆動制御保護モジュールを有し、このことにより、制御かつ調整された電気的状態を実現することができる。
【0027】
前記フォースモジュールは、動作中にサブモジュールおよび駆動制御保護モジュールにたとえば高い衝撃負荷が確実にかからないよう、機械的な保護を実現するように構成される。
【0028】
本発明の1つの可能な実施形態では、前記サブモジュールは10個の多層圧電アクチュエータを含み、これらの多層圧電アクチュエータは1列に配列され、個別に駆動制御可能にされる。もちろん、個別圧電アクチュエータの数を異なる数とした異なる配置とすることも可能であり、たとえば3×3ないしはN×N個のマトリクス配列も可能である。
【0029】
上記実施形態では、圧電アクチュエータは標準的なアクチュエータであり、たとえば、コモンレールディーゼルインジェクタ等において使用されるアクチュエータである。
【0030】
各圧電アクチュエータのコンタクトはフレックス基板の導体路を介して、すなわち、導体路が敷設されたフレックス基板を介して行われるか、または、コンタクトおよび取付にかかる手間を格段に削減できると同時に前記フレックス基板と同等の省スペースである手法を用いて行われる。このことは、たとえば複数の個別の接続撚り線を用いた従来のコンタクト手法と比較して、決定的に有利である。
【0031】
1つのフォースモジュール内にまとめられた複数のサブモジュールを用いることは、統計的のみの観点では、比較的高い歩留まりと、不具合の確率が小さくなることとが保証されるという、決定的な利点を有する。フォースモジュール内に組み付ける前にサブモジュールごとに検査が行われる。
【0032】
たとえば、各圧電アクチュエータ単体の歩留まりないしは生き残り確率が99%である場合、N個の圧電アクチュエータが1つのシステムにまとめられたときの歩留まりないしは生き残り確率は0.99%となる。つまり、たとえばN=100である場合には、1システムにまとめられたときの歩留まりないしは生き残り確率は37%のみになってしまう。M個のサブモジュールを組み合わせたシステムでは、歩留まりないしは生き残り確率は0.99%となり、M=10の場合には90%と格段に高くなる。
【0033】
さらに、サブモジュール内の各圧電アクチュエータを電気的に分離することにより、各圧電アクチュエータを単独かつ個別に駆動制御することができるという効果が奏される。またこのことにより、ドミノ作用による大量不具合が防止される。
【0034】
また、たとえば取付中または動作中に、圧電アクチュエータごとに検査が可能であることが保証される。このことにより、サブモジュール内において不具合が生じた圧電アクチュエータを特定することができ、少なくとも部分的に補償することができる。すなわち、これに応じて他の圧電アクチュエータを制御することにより、サブモジュールの機能性を維持することができる。
【0035】
圧電アクチュエータの検査は従来の手法を用いて、たとえばインピーダンス解析または荷電状態解析を用いて行うことができる。
【0036】
複数の前記圧電アクチュエータは、サブモジュールの底板上に1列に配置され、適切な工具を用いてこれに向けられるように位置決めされる。このようにして、各圧電アクチュエータの位置決め誤差が生じる可能性を排除することができる。前記底板は、たとえば硬鋼から成る。
【0037】
圧電アクチュエータをさらに覆うためには、前記底板上に、前記1列の圧電アクチュエータを包囲する筐体部品が設置される。この筐体部品はたとえば板金曲げ加工品から成り、フレックス基板導体路に対するスルーホールを有する。この筐体部品には蓋部が載せられており、これにより、全体的に圧電アクチュエータをコンパクトに収容ないしは封止できることが保証される。
【0038】
サブモジュール内において各圧電アクチュエータの相互間の電気的絶縁をより改善するためには、各圧電アクチュエータ間に電気絶縁部品または電気絶縁物質が挿入される。この電気絶縁部品や電気絶縁物質は、たとえばセラミック材料から成る。有利な実施形態では、この電気絶縁部品や電気絶縁物質は、酸化アルミニウムから成る薄板である。また、他のセラミック材料としたり、注型材料中に埋め込まれたセラミック粒子としたり、または、絶縁破壊耐性が高い材料から成るセパレータ膜とすることも可能である。1つの圧電アクチュエータにフラッシュオーバが生じた場合、上述の構成は、この1つの圧電アクチュエータの損傷が、隣接する圧電アクチュエータにも影響を及ぼすことがなく、サブモジュールは機能可能な状態に、すなわち不具合の無い状態に留まるという利点を奏する。
【0039】
サブモジュール内の圧電アクチュエータを外部影響から保護するため、たとえば化学的物質または湿度から保護するためには、圧電アクチュエータをパッケージ封止する。このパッケージ封止には、たとえばシリコーン、ポリウレタンまたはエポキシ樹脂等から成る封止材料が適している。このような封止材料は、底板と圧電アクチュエータと筐体部材と蓋部とを固定する。
【0040】
上述のような構成のサブモジュールは、たとえば、接続プラグと一体化されたフレックス導体路を介して、駆動制御保護モジュールと電気的に接続される。サブモジュールを駆動制御保護モジュールから分離することにより、サブモジュールを非常にコンパクトに構成できるという決定的な利点が奏される。というのも、追加的な電子部品を、たとえば電気的保護部(たとえばミニヒューズ、PTC素子、ツェナーダイオード、または他の保護素子)を、圧電アクチュエータに取り付けなくてもよくなるからである。これにより、1つの圧電アクチュエータに不具合が生じた場合にサブモジュール全体が不具合になるのを防止するために必要な、複数の圧電アクチュエータを保護する1つの保護部が、1つの別体のモジュールユニットに実装されることになる。
【0041】
1つの実施形態では、前記駆動制御保護モジュールは保護部の他にさらに、前記圧電アクチュエータごとにパワーアンプも有し、このパワーアンプにおいて、各圧電アクチュエータの駆動制御に必要な電力/電流がトランジスタを介して制御される。各圧電アクチュエータには個別に印加することができ、よって本発明のフォースモジュールは、ほぼ任意のダイナミックな力配分を実現できるようになる。
【0042】
前記フォースモジュールの監視および制御は、制御ユニットによって生成されデータバスを介して前記駆動制御保護モジュールへ供給される、容易に取り扱い可能な制御信号を用いて行われる。このことは大きな利点である。前記制御ユニットはたとえばコンピュータである。
【0043】
上記構成に対応する回路技術は、パワーアンプ技術の公知の原理に基づくものである。
【0044】
より簡単な実施形態では、各1つのサブモジュールがそれぞれパワーアンプによって駆動制御される。このことにより、構成が簡略化される。
【0045】
さらに簡単な実施形態では、前記駆動制御保護モジュールは保護部およびサージ電圧アレスタのみを含む。この構成において、フォースモジュール全体を1つのユニットとして駆動制御する場合、または、各サブモジュールを個別に駆動制御する場合には、各駆動制御線路を外部へ引き出して外部のパワーアンプに接続することができる。しかしその場合には、各圧電アクチュエータに個別に印加することができなくなる。
【0046】
本発明では、複数の前記サブモジュールと1つの駆動制御保護モジュールとが1つのフォースモジュールにまとめられる。
【0047】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】サブモジュール21の内部構造を示す。
図2】サブモジュール21の外観を示す。
図3】本発明のフォースモジュール20の、図4の線A‐Aに沿った断面を示す。
図4】本発明のフォースモジュール20の、図3の線B‐Bに沿った断面を示す。
【0049】
図1および2にサブモジュール21を示しており、図1には内部構造を示し、図2には外観を示している。図中の実施形態では、サブモジュール21内部において5つの圧電アクチュエータ1が1列に配置されている。各圧電アクチュエータの各極性の内部電極(図示していない)は、外部電極1bを介して並列接続されている。上記圧電アクチュエータ1はすべて多層アクチュエータである。
【0050】
各極の外部電極1bに、導体路2bを有するフレックス基板2がはんだ付けされている。ここでは、各圧電アクチュエータ1の各外部電極1bに対して、フレックス基板2上の1つの導体路2bが設置されている。外部電極1bと導体路2bとを電気的に接続するためのはんだ接続部(スルーコンタクトを有するビア)は符号3によって示されており、符号5は、外部電極1bとフレックス基板2とを機械的に結合するためのはんだ結合部(スルーコンタクトを有するビア)を、すなわち、圧電アクチュエータ‐フレックス基板構成体の固定部分を示している。
【0051】
フレックス基板2上には、導体路2bの他に接地端子4も設けられている。各フレックス基板2の端部側に接続プラグ9(ここでは概略的にのみ示されている)が配置されている。
【0052】
図2は、サブモジュール21を外部から見た図である。各サブモジュール21がそれぞれ筐体に収容されており、筐体部品7と底板6と蓋部8とから成る。導体路2bを有するフレックス基板2のみが前記筐体内から、しかも封止された状態で引き出されていることにより、筐体内に外部影響が達することはない。
【0053】
図3および4に、本発明のフォースモジュール20を示す。図3は、図4に示した線A‐Aの断面図であり、図4は、図3に示した線B‐Bの断面図である。
【0054】
フォースモジュール20は、当該フォースモジュール20の筐体内にスライド挿入または嵌め込まれた6つのサブモジュール21から構成されており、ここでは、サブモジュール21は3つずつ並べられて配置されている。このようにして、全体的に6つの圧電アクチュエータ1を含む1つのフォースモジュール20が実現される。これら全ての各サブモジュール21が、1つの駆動制御保護モジュール16に電気的にコンタクトしている。もちろん、サブモジュール21の数を増減して任意に、フォースモジュール20にまとめることも可能である。
【0055】
フォースモジュール20は、感度の高い圧電アクチュエータ1と駆動制御保護モジュール16内の電子部品とに高い機械的負荷がかからないように持続的に保護する役割を有し、この実施例ではフォースモジュール20は、鋼から成る中実の基板10および蓋板12と、同様に中実のフォースモジュール筐体部品11とから成る。前記鋼はたとえば硬鋼である。
【0056】
前記蓋板12の構造は、組み立てられるときに当該蓋板12がフォースモジュール筐体部品11に通されるように構成されている。このことはここでは、周縁に設けられた段部によって実現される。この段部にはさらに封止部材が、ここではOリング15が設けられ、これにより、フォースモジュール筐体部品11が外部影響から保護される。
【0057】
蓋板12とフォースモジュール11と底板10とに孔13が設けられており、これらの孔13はそれぞれねじ部14を有し、フォースモジュール20の周縁全体にわたって規則的に配置されている。この実施例では、10個の孔13で十分である。これらの孔13は、フォースモジュール20内のサブモジュール21に付勢するための拡張ボルト24を受入するように構成されており、これらの拡張ボルト24により、筐体の3つの部品10,11,12が相互に固定的に結合される。
【0058】
拡張ボルト24はサブモジュール21に一定の力をかけてサブモジュール21に付勢し、この拡張ボルト24により、圧電アクチュエータ1に引張力がかかるのが防止される。剛性および位置に関連する拡張ボルト24の寸法は、圧電アクチュエータ1が十分に伸長するように調整しなければならない。
【0059】
各圧電アクチュエータ1の高さは製造に起因して僅かに異なる場合があるので、フォースモジュール20の組立時にはこれらの圧電アクチュエータ1を押さえつけなければならない。その際には、圧電アクチュエータ1自体を傾けてはならず、組立工程の終了時にはこれら全ての圧電アクチュエータ1がフォースモジュール20の蓋板12に固定的にコンタクトしていなければならない。というのも、そうしないとフォースモジュール20の機能性を保証できないからである。
【0060】
有利には蓋板12の取付は、第1のステップにおいて適切なプレス装置を用いて当該蓋板12を慎重に当接部まで移動させることにより行われる。すなわち、蓋板12はフォースモジュール筐体部品11に直接載せられる。その後、フォースモジュールの周縁全体にわたって挿入された、所定の剛性の拡張ボルト24を、所定のトルクで締め付けた後、プレス装置を緩める。圧電アクチュエータは数mmの領域で復元し、蓋板12とフォースモジュール筐体部品11との間に空隙が生じる。
【0061】
このようにして有利には、高い機械的負荷がかかったときに、たとえば、変形加工時に生じる典型的な衝撃負荷がかかったときに、フォースモジュール20は理想的に保護される。極端なケースでは、蓋板12はフォースモジュール筐体部品11に当接して空隙が閉じられ、これにより圧電アクチュエータ1が押しつぶされるのが制限されて、圧電アクチュエータ1の損傷が防止される。
【0062】
フォースモジュール20の組立工程についての監視、とりわけ、すべての圧電アクチュエータが蓋板12と摩擦接続されたか否かについての監視は、既に述べたインピーダンス監視法または充電監視法を用いて行うことができる。
【0063】
符号17は、駆動制御保護モジュール16内の電気的配線を示しており、符号18は、接続ケーブル19をフォースモジュール20に媒質密にねじ留めするねじ留め部を示す。1実施形態では、駆動制御保護モジュール16内にパワーアンプ23を圧電アクチュエータ1ごとに設置することもできる(ここではパワーアンプ23を簡単にまとめて示している)。
図1
図2
図3
図4