特許第5959544号(P5959544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959544
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】時計用外部部品の研磨システム
(51)【国際特許分類】
   B24B 13/04 20060101AFI20160719BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20160719BHJP
   B24B 47/04 20060101ALI20160719BHJP
   G04B 39/00 20060101ALI20160719BHJP
   G04D 3/06 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B24B13/04 C
   B24B13/04 K
   B24B41/06 Z
   B24B47/04
   G04B39/00 K
   G04D3/06
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-558350(P2013-558350)
(86)(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公表番号】特表2014-512975(P2014-512975A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】EP2012052743
(87)【国際公開番号】WO2012123215
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2013年9月13日
【審判番号】不服2015-5880(P2015-5880/J1)
【審判請求日】2015年3月31日
(31)【優先権主張番号】11158458.7
(32)【優先日】2011年3月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】タセッティ,ジャン−ポール
(72)【発明者】
【氏名】デリエ,ジル
(72)【発明者】
【氏名】デュモン,パトリス
【合議体】
【審判長】 栗田 雅弘
【審判官】 刈間 宏信
【審判官】 西村 泰英
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−100750(JP,A)
【文献】 米国特許第2747339(US,A)
【文献】 特開2006−334767(JP,A)
【文献】 特表2001−503139(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1645919(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 13/00 G04B 39/00 G04D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用外部部品(3)の凹面を研磨するシステム(21)であって、一つの前記外部部品を保持する支持体(31)を含む固定装置(25)と、円盤によって形成される研削手段(33)を含む研削装置(27)とを備え、前記研削手段(33)は第1の固定された軸(A3)上に回転可能に取り付けられ、これによって前記外部部品を、移動しない前記第1の固定された軸(A3)と前記研削手段(33)の接触領域との間の半径によって作られる第1の湾曲(C1)に沿って研磨し、前記固定装置(25)は前記支持体(31)の移動手段(35)をさらに含み、これによって前記支持体(31)は前記外部部品が前記研削手段の接触面に追従するための、第2の軸(A4)に沿って前後に揺動する回転運動(B)を伝達し、前記円盤の周辺壁上に形成される前記研削手段(33)の接触面は湾曲(C2し、前記外部部品を前記第1の湾曲に加えて第2の湾曲(C2)に沿って研磨し、
前記移動手段(35)は、回転アクチュエータ(32)が駆動するクランクアーム(34)によって形成され、前記クランクアーム(34)は前記前後に揺動する回転運動を形成し、前記第2の軸と一体である接続ロッド(36)と前記回転アクチュエータ(32)の回転中心からずらして接続されていることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記移動手段(35)は、前記外部部品(3)が前記研削手段(33)に対して接触する力を及ぼすように、選択的に長手方向(C)、横方向(D)および垂直方向(E)に移動可能な搬送台セット(41)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム(21)。
【請求項3】
前記第1の軸(A3)と前記第2の軸(A4)とは、互いに直交していることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム(21)。
【請求項4】
前記研削手段(33)は、砥石車によって形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のシステム(21)。
【請求項5】
前記第1の湾曲(C1)は、単一の曲率半径で形成されるものであることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のシステム(21)。
【請求項6】
前記第2の湾曲(C2)は、単一の曲率を有する湾曲であることを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のシステム(21)。
【請求項7】
前記時計用外部部品(3)は、結晶化アルミナをベースとする素材からなることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(21)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計用外部部品の研磨システムに関し、具体的にはこの種類の部品の凹面を研磨するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
きわめて傷がつきにくいサファイアウォッチクリスタルを形成することはよく知られていることである。これらのクリスタルは一般に、回転する砥石車を複数のクリスタルを保持するドラム表面に接触するように配置することによって製造される。結果として生じる研削作用によって、円筒形または球形のクリスタルが形成可能となる。ただし、たとえば時計ケースに対して中央に位置していない時計表示部に装着するためには非対称のクリスタルを形成することが必要となるが、現在の一連の技術を用いて形成することは不可能である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、未加工品を傷つけず、複雑な凹面を高度に研磨し、非常に低い不良率が可能となる、部品ごとの研磨システムを提案することによって、上記欠点のすべてまたは一部を克服することである。
【0004】
したがって、本発明は時計用外部部品の凹面を研磨するシステムに関する。本システムは、外部部品を保持する支持体を含む固定装置と、第1の軸に回転可能に取り付けられて、外部部品を第1の湾曲に沿って研磨することを目的とする研削手段を含む研削装置とを備える。固定装置は支持体を移動する手段をさらに含み、それによって支持体は第2の軸に沿って前後運動を伝達し、研削手段の接触面は、外部部品を第1の湾曲に加えて第2の湾曲に沿って研磨するために湾曲することを特徴とする。
【0005】
したがって、研削手段に対して部品が接触することによって、部品ごとに研磨が実行されることは明らかである。支持体の前後運動によって、このように、部品は研削手段の湾曲した接触面に従う。このように、部品が1つずつ、固定軸に沿って回転可能に取り付けられる研削手段に対して移動することによって研磨は実行される。これによって、研磨前の粗凹面に損傷を与えないため、不良率が非常に低くなる。
【0006】
本発明の別の有利な特徴によれば、
−移動手段は回転するアクチュエータが駆動するクランクアームによって形成され、クランクアームは前後運動を形成するために、第2の軸と一体である接続ロッドと中心からずらして接続し、
−移動手段は選択的に移動可能な運搬台セットに取り付けられ、それによって研削手段に対して研磨対象の部品に力を及ぼすようにし、
−第1の軸および第2の軸は互いに直交する軸線であり、
−研削手段は砥石車によって形成され、
−外部部品は結晶化アルミナから形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
別の特徴および有利点は、添付した図を参照して非限定的な方法で提示される以下の説明から明らかになるであろう。
【0008】
図1図1は本発明による未加工品の加工システムを説明するための斜視図である。
図2図2は本発明による研磨システムの概略図である。
図3図3は2つの異なる製造段階における未加工品の斜視図である。
図4図4は2つの異なる製造段階における未加工品の斜視図である。
図5図5は本発明による固定装置の移動手段の概略斜視図である。
図6図6は運動の様々な段階における固定装置の移動手段の上面図である。
図7図7は運動の様々な段階における固定装置の移動手段の上面図である。
図8図8は運動の様々な段階における固定装置の移動手段の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、サファイア、コランダムまたはルビーなどの結晶化アルミナをベースとする素材からなるクリスタル、ケースまたはダイヤルなどの時計用外部部品に関する。本発明は、未加工品を製造し、その後複雑な形状の部品を研磨するための新しい製造システムに関する。本来、本発明は時計学の分野において開発されたが、それに限定されない。光学、食器類または電子製品などのその他の適用も考えてもよい。
【0010】
図1に例示するように、製造システム1は、湾曲C1、C2が凹型である表面を備える外部部品3を製造するために開発されてきた。製造システム1は固定装置5および加工装置7を含む。
【0011】
固定装置5は、第1の軸A1に沿って回転可能に取り付けられ、将来の外部部品3の少なくとも1つの未加工品3’を保持するドラム11を含む。好ましくは、図1から判るように、ドラム11はカットされた内壁、つまり連続面Pxを備えるリングである。図1に例示するように、各連続面Pxは、たとえば、接着剤による接着によって固定してもよい未加工品3’を受容する。
【0012】
加工装置7は、第2の軸A2上に回転可能に取り付けられ、各未加工品3’を加工することを目的とする研削手段13を含む。好ましくは、研削手段13はリング状のドラム11の中空内で移動する。図1に示す研削手段13は従来の砥石車によって形成され、その接触区域は特定の形状をとらない。もちろん、研削手段13は異なっていてもよく、たとえば、湾曲した板または円錐状の板の形状であってもよい。
【0013】
有利には、本発明によれば、加工装置7は第2の軸A2を移動する手段15を含む。それによって、加工装置は湾曲した準線に沿って移動可能に取り付けられ、選択的に第2の湾曲C2を各未加工品3’に形成する。このように、製造システム1が第1および第2の凹型の湾曲C1、C2を形成できることは明らかである。
【0014】
本発明によれば、移動手段15は、第2の湾曲C2に対応する固定カムの側面に対して前後に移動するアクチュエータによって、または、たとえば、第2の湾曲C2に沿って移動するようにプログラムされる自動装置によって形成されてもよいが、これらに限定されない。
【0015】
このように、研削手段13と各未加工品3’との間の接触区域と軸A1との間に延在する半径によって、第1の湾曲C1は軸A1に対して垂直に生成される。ドラム11は軸A1に沿って回転して移動するため、各未加工品3’は、第1の凹型の湾曲C1を形成する単一の半径に沿って横向きに研削される。
【0016】
さらに、選択的に第2の軸A2を移動することによって、第2の湾曲C2が直接得られる。このように、第1の湾曲C1を生成している間に、研削手段13と各未加工品3’との間の接触区域は次第にリング状のドラム11の厚さに対して移動する。この結果として、各未加工品3’は、第2の凹型の湾曲C2を形成する湾曲した準線に沿って長手方向に研削される。
【0017】
したがって、移動手段15の湾曲した準線は、1または複数の半径上に第2の湾曲C2を形成するために、対称であっても、非対称であってもよいことは即座に明らかである。
一例として、図3に示す上面12および底面14を備える未加工品3”から開始することが可能である。製造システム1による加工後に、結果として生じる未加工品3’は、湾曲C1を備える横方向の凹面と、湾曲C2を備える長手方向の凹面とを備える面12、14のうち1つを含んでいてもよい。
【0018】
最後に、好ましくは、本発明によれば、第1の軸A1および第2の軸A2は互いに直交する加工線である。この特徴によって、有利には、外部部品3のその後の研磨が容易になる。
【0019】
湾曲C1およびC2から形成されるような凹面を研磨することを、製造システム1のシステムに類似する道具を用いて、つまり主に、研削手段の種類を取り換えることによって試みた。しかし、この試行は満足な結果が得られなかった。この種類の研磨によって湾曲C1、C2が変形し、具体的には研磨対象の未加工品3’の端部が変形し、結果として非常に高い不良率が生じたためである。
【0020】
その結果として、製造システム21を図4に例示する種類の部品3’、すなわち、湾曲C1、C2が凹型である表面を備える部品のために開発した。図2に例示するように、製造システム21は固定装置25および研削装置27を含む。
【0021】
研削装置27は、軸A3上に回転可能に取り付けられ、各部品3’を第1の湾曲C1に沿って研磨するように設計された研削手段33を含む。好ましくは、本発明によれば、研削手段33の接触面は、部品3’を第1の湾曲C1に加えて第2の湾曲C2に沿って研磨するための湾曲面を含む。図2に示す研削手段33は、好ましくは、たとえば規則的に液体研磨剤で被膜され、その研削面が凸面を含む金属製の円盤によって形成されている。
【0022】
固定装置25は、研磨対象の部品3’を保持する支持体31を含む。好ましくは、本発明によれば、固定装置25は、支持体31の移動手段35をさらに含み、軸A4に沿って前後の揺動運動を伝達する。図2では、軸A4が研削手段33の回転軸A3に対して直交していることに留意されたい。
【0023】
このように、移動手段35によって、研削手段33が各未加工品3’を摩擦するように、部品3の未加工品3’は押されかつ移動することができる。これによって、部品を選択的に第2の湾曲C2に沿って研磨する。このように、研磨システム21が第1および第2の凹型の湾曲C1、C2を研磨できることは明らかである。
【0024】
本発明によれば、移動手段35によって、部品3の未加工品3’は研削手段33に対して押されて移動することができる。移動手段35は、図5から図8を参照するとよりよく理解することができるであろう。
【0025】
好ましくは、本発明によれば、移動手段35は略円盤状のクランクアーム34を駆動する回転アクチュエータ32によって形成されている。クランクアーム34は軸A4と一体である接続ロッド36と中心からずらして接続し、所望する前後運動Bを形成する。
【0026】
図5から図8に例示する例の接続ロッド36は、2つの棒37と38とを含む。棒37は、このように、アクチュエータ32の軸に対して中心からずれたクランクアーム34のクランクピン39を、棒38に接続している。棒38は、枢動可能に軸A4上に取り付けられ、棒37と支持体31とを接続している。運動Bの形態を図6から図8に示す。
【0027】
図6は運動Bの端の位置の1つにおける移動手段35を示す。この第1の端の位置では、接続ロッド36の2つの棒37、38はお互いに鋭角を形成する。したがって、図6に例示するように、クランクアーム34が後方回転を伝達するときは、軸A4に対して棒38と、付随して支持体31の回転が生じることは明らかである。
【0028】
図7は運動Bの略中央の位置における移動手段35を示す。この位置では、接続ロッド36の2つの棒37、38はお互いに略直角を形成する。したがって、図7に例示するように、クランクアーム34が後方回転を継続する場合は、軸A4に対して棒38と、付随して支持体31の回転がここでも生じることは明らかである。
【0029】
図8は運動Bの第2の端の位置における移動手段35を示す。この第2の端の位置では、接続ロッド36の2つの棒37、38はお互いに鈍角を形成する。したがって、図8に例示するように、クランクアーム34が後方回転を伝達する場合は、同一の略中央の位置を通過して第1の端の位置に戻るまで、軸A4に対して棒38と、付随して支持体31の後方回転が生じることは明らかである。
【0030】
結果として、アクチュエータ32の回転運動は、クランクアーム34と接続ロッド36の組立体によって、支持体31の前後運動に変換される。
【0031】
好ましくは、本発明によれば、移動手段35は、選択的に長手方向C、横方向D、および垂直方向Eに移動可能な搬送台セット41にも取り付けられる。これによって、支持体31が研削手段33に対して正確に配置されるだけではなく、所望する押圧作用を提供することができる。実際に、支持体31を介して、研磨対象の部品が研削手段33に対して力を及ぼすようにするために、長手方向の搬送台を部品3の研磨対象の未加工品3’と研削手段33との間の空間より大きい運動Cにおいて制御する。
【0032】
このように、未加工品3’を研削手段33に対して押圧し、支持体31の前後運動によって未加工品3’を研削手段33の湾曲する接触面に従わせることによって、研磨が部品ごとに実行される。このように、未加工品3’を部品ごとに固定軸A3上に回転可能に取り付けられる研削手段33に対して移動することによって研磨を実行し、それによって非常に低い不良率を実現する。
【0033】
未加工品3’を研磨システム21によって加工して得られる部品3は、湾曲C1を備える幅方向の凹面と、湾曲C2を備える長手方向の凹面とを備える面12、14のうち1つを含む。これらの湾曲は完全に研磨されている。部品3は最後に化学的な超研磨ステップを受けて、さらに外観に磨きをかけてもよい。
【0034】
もちろん、本発明は例示する例に限定されず、当事者には明らかであろう様々な変形および修正が可能である。具体的には、研削手段33は異なっていてもよく、たとえば、湾曲する板または円錐状の板の形状をとってもよい。
【0035】
移動手段35は、同じ種類の押圧動作および前後運動Bを得るために異なる性質であってもよいことも理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8