特許第5959575号(P5959575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959575
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】面状照明装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20160719BHJP
   F21V 3/04 20060101ALI20160719BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20160719BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20160719BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20160719BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160719BHJP
【FI】
   F21S2/00 436
   F21S2/00 433
   F21S2/00 435
   F21V3/04 500
   G02F1/13357
   G02B6/00 331
   G02B6/42
   F21Y115:10
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-134881(P2014-134881)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-12540(P2016-12540A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2015年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】高草木 健太
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−096522(JP,A)
【文献】 特開2010−211010(JP,A)
【文献】 特開2003−258310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 8/00
G02F 1/13357
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光を発光する光源と、該光源が配置される端面である入光面、および、該入光面から入射した光を一方の主面である出射面から面状に出射させる出射部を有する導光板と、を備える面状照明装置において、
前記導光板は、前記入光面と前記出射部との間に、傾斜面を含み前記入光面側から前方に向かって厚さが漸減する入光楔部を有し、前記出射面側または前記出射面の反対面側の少なくともいずれか一方前記入光楔部の近傍の所定の領域に、レイリー散乱により主として青色光を散乱させる青色光拡散部が前記導光板と一体に設けられていることを特徴とする面状照明装置。
【請求項2】
前記青色光拡散部が、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸を含むことを特徴とする請求項1に記載の面状照明装置。
【請求項3】
前記微細な凹凸の最大高さが、青色光の波長よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の面状照明装置。
【請求項4】
前記青色光拡散部が、上面視して、有効出射領域の前記入光面側の端部に沿って設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の面状照明装置。
【請求項5】
前記微細な凹凸が形成されている部分の面積密度が、前記入光面から離れるにしたがって漸減する遷移領域が設けられていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の面状照明装置。
【請求項6】
前記光源は、発光素子と、該発光素子が発光する光を受けて発光する蛍光体と、を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の面状照明装置。
【請求項7】
前記発光素子が、青色光を発光する青色発光ダイオードであり、前記蛍光体が、黄色光を発光する黄色蛍光体であることを特徴とする請求項に記載の面状照明装置。
【請求項8】
前記蛍光体が、前記発光素子を覆う封止体に分散されていることを特徴とする請求項またはに記載の面状照明装置。
【請求項9】
前記導光板の出射面側には、前記出射部の前記入光面側から該入光面に対向する端面側に向かって延びる複数のプリズムが設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の面状照明装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の面状照明装置を製造する方法であって、
前記導光板を成形するための金型の前記青色光拡散部に対応する領域の少なくとも一部にレーザ光を照射して、前記領域の少なくとも一部を粗面化する工程と、
前記領域の少なくとも一部が粗面化された金型を用いて前記導光板を成形する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
発光ダイオードおよび蛍光体を含み白色光を発光する光源と、該光源が配置される端面である入光面、および、該入光面から入射した光を一方の主面である出射面から面状に出射させる出射部を有する導光板と、を備える面状照明装置において、
前記導光板は、前記入光面と前記出射部との間に、傾斜面を含み前記入光面側から前方に向かって厚さが漸減する入光楔部を有し、前記出射面側または前記出射面の反対面側の少なくともいずれか一方前記入光楔部の近傍の所定の領域に、前記蛍光体が発光する光よりも前記発光ダイオードが発光する光を主として散乱させる光拡散部が前記導光板と一体に設けられていることを特徴とする面状照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入光端面に光源を配置して出射部から面状の照明光を出射する導光板を備えたサイドライト方式の面状照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの照明手段として、白色光を発光する光源を導光板の側端面に沿って配置してなるサイドライト方式の面状照明装置(バックライト)が広く採用されている。このような面状照明装置には、これまで薄型化、高輝度化、及び輝度の均一性等が要求されてきたが、近時、液晶表示パネルの高精細化にともない、出射光の色調の均一性の向上に対する要求も増大している。従来、色調の均一性に関しては、導光板の出射面全体にわたって発生する色むらへの対策が専ら検討されてきた(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−347010号公報
【特許文献2】特開2012−94283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近時の導光板の薄型化にともない、導光板上で部分的に生じる色むらが新たな問題となってきている。特に、昨今、携帯電話等の小型携帯情報機器の分野を中心に、光源が配置された側端面(以下、入光面ともいう)から離れるほど厚さが漸減する楔部を入光面と出射部との間に形成し、これによってLEDの厚さによらず導光板の出射部を薄くした導光板が広く使用されているが、このような導光板において、出射部の入光楔部寄りの領域から出射する光が黄色みを帯びることにより視認される色むらが生じることが分かった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、導光板の入光面側に部分的に生じる色むらを抑制し、出射光の色調の均一性に優れた面状照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)白色光を発光する光源と、該光源が配置される端面である入光面、および、該入光面から入射した光を一方の主面である出射面から面状に出射させる出射部を有する導光板と、を備える面状照明装置において、前記導光板は、前記入光面と前記出射部との間に、傾斜面を含み前記入光面側から前方に向かって厚さが漸減する入光楔部を有し、前記出射面側または前記出射面の反対面側の少なくともいずれか一方前記入光楔部の近傍の所定の領域に、レイリー散乱により主として青色光を散乱させる青色光拡散部が前記導光板と一体に設けられていることを特徴とする面状照明装置(請求項1)。
【0008】
本項に記載の面状照明装置によれば、入光楔部の近傍の、出射面側または出射面側の反対面側の少なくともいずれか一方に、レイリー散乱により主として青色光を散乱させる青色光拡散部を設けることによって、出射部の入光楔部寄りの領域から出射する光に対して、青色光拡散部で散乱されて出射する青色光が補充されることになる。これによって、出射部の入光楔部寄りの領域が黄色みを帯びることにより視認される色むらを抑制し、ひいては、導光板からの出射光の色調の均一性を向上させることが可能となる。
【0009】
(2)(1)項に記載の面状照明装置において、前記青色光拡散部が、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸を含むことを特徴とする面状照明装置(請求項2)。
【0010】
本項に記載の面状照明装置によれば、青色光拡散部が、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸を含んでいるため、この微細な凹凸でレイリー散乱を効果的に生じさせることにより、青色光を、青色光よりも長波長の光に対して強い散乱強度で散乱させることが可能となる。
【0011】
(3)(2)項に記載の面状照明装置において、前記微細な凹凸の最大高さが、青色光の波長よりも小さいことを特徴とする面状照明装置(請求項3)。
【0012】
本項に記載の面状照明装置によれば、微細な凹凸の最大高さが、青色光の波長よりも小さいため、微細な凹凸でより確実にレイリー散乱が生じることにより、青色光拡散部で散乱される青色光の光量を、さらに増大させることが可能となる。
【0013】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載の面状照明装置において、前記青色光拡散部が、上面視して、有効出射領域の前記入光面側の端部に沿って設けられていることを特徴とする面状照明装置(請求項4)。
【0014】
本項に記載の面状照明装置によれば、青色光拡散部が、上面視して、有効出射領域の入光面側の端部に沿って設けられていることにより、照明光の品質として重要な有効出射領域からの出射光の色調の均一性を効果的に向上させることが可能となる。
【0015】
(5)(2)から(4)のいずれか1項に記載の面状照明装置において、前記微細な凹凸が形成されている部分の面積密度が、前記入光面から離れるにしたがって漸減する遷移領域が設けられていることを特徴とする面状照明装置(請求項5)。
【0016】
本項に記載の面状照明装置によれば、微細な凹凸が形成されている部分の面積密度が、入光面から離れるにしたがって漸減する遷移領域が設けられていることにより、出射部の、青色光拡散部が設けられている領域と設けられていない領域との境界近傍において、出射面からの出射光の色度が急激に変化することが抑制され、これによって、出射光の色調の均一性をさらに向上させることが可能となる。
【0019】
)(1)から()のいずれか1項に記載の面状照明装置において、前記光源は、発光素子と、該発光素子が発光する光を受けて発光する蛍光体と、を含むことを特徴とする面状照明装置(請求項)。
【0020】
本項に記載の面状照明装置によれば、入光楔部の近傍の、出射面側または出射面の反対面側の少なくともいずれか一方に設けられた青色光拡散部により、出射部の入光楔部寄りの領域の色むらを抑制しつつ、発光素子と蛍光体とから擬似白色光を生成する安価な白色光源を使用することが可能となる。
【0021】
(7)(6)項に記載の面状照明装置において、前記発光素子が、青色光を発光する青色発光ダイオードであり、前記蛍光体が、黄色光を発光する黄色蛍光体であることを特徴とする面状照明装置(請求項7)。
【0022】
本項に記載の面状照明装置によれば、入光楔部の近傍の、出射面側または出射面の反対面側の少なくともいずれか一方に設けられた青色光拡散部により、出射部の入光楔部寄りの領域の色むらを抑制しつつ、青色発光ダイオードと黄色蛍光体とから擬似白色光を生成する安価な白色LEDを使用することが可能となる。
【0023】
)()または()項に記載の面状照明装置において、前記蛍光体が、前記発光素子を覆う封止体に分散されていることを特徴とする面状照明装置(請求項)。
【0024】
本項に記載の面状照明装置によれば、入光楔部の近傍の、出射面側または出射面の反対面側の少なくともいずれか一方に設けられた青色光拡散部により、出射部の入光楔部寄りの領域の色むらを抑制しつつ、発光素子を覆う封止体に蛍光体が分散されている安価な白色光源を使用することが可能となる。
【0025】
)(1)から()のいずれか1項に記載の面状照明装置において、前記導光板の出射面側には、前記出射部の前記入光面側から該入光面に対向する端面側に向かって延びる複数のプリズムが設けられていることを特徴とする面状照明装置(請求項)。
【0026】
一般に、導光板の出射面側に、出射部の入光面側から該入光面に対向する端面側に向かって延びる複数のプリズム(以下、縦プリズムともいう)が設けられている面状照明装置では、光源に点状光源を使用した場合であっても、輝線の発生が抑制され、輝度の均一性を向上させることができる一方、出射部の入光楔部寄りの領域からの出射光の黄色味がより強くなる傾向がある。しかるに、本願に係る面状照明装置によれば、レイリー散乱により主として青色光を散乱させる青色光拡散部を備えていることにより、強い黄色味を効果的に抑制し、出射光の色調の均一性を向上させつつ輝度の均一性を向上させることが可能となる。
【0027】
(10)(1)から(9)のいずれか1項に記載の面状照明装置を製造する方法であって、前記導光板を成形するための金型の前記青色光拡散部に対応する領域の少なくとも一部にレーザ光を照射して、前記領域の少なくとも一部を粗面化する工程と、前記領域の少なくとも一部が粗面化された金型を用いて前記導光板を成形する工程と、を含むことを特徴とする方法(請求項10)。
本項に記載の方法によれば、導光板を成形するための金型の青色光拡散部に対応する領域にレーザ光を照射して、その領域の少なくとも一部を粗面化することにより、照射するレーザ光のパワー、照射時間、及び照射領域を制御することによって、要求される色度に対応して所望の散乱特性を備えた青色光拡散部を容易に形成することが可能となる。
(11)発光ダイオードおよび蛍光体を含み白色光を発光する光源と、該光源が配置される端面である入光面、および、該入光面から入射した光を一方の主面である出射面から面状に出射させる出射部を有する導光板と、を備える面状照明装置において、前記導光板は、前記入光面と前記出射部との間に、傾斜面を含み前記入光面側から前方に向かって厚さが漸減する入光楔部を有し、前記出射面側または前記出射面の反対面側の少なくともいずれか一方前記入光楔部の近傍の所定の領域に、前記蛍光体が発光する光よりも前記発光ダイオードが発光する光を主として散乱させる光拡散部が前記導光板と一体に設けられていることを特徴とする面状照明装置(請求項11)。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、以上のような構成により、導光板の入光面側に部分的に生じる色むらを抑制し、出射光の色調の均一性に優れた面状照明装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態における面状照明装置の要部を模式的に示す側面図である。
図2図1に示す面状照明装置のA−A断面図である。
図3】本発明の一実施形態における面状照明装置において、青色光拡散部の形成方法の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態における面状照明装置において、青色光拡散部の遷移領域の一例を示す図であり、(a)は、粗面部の面積密度を、青色光拡散部の最も入光面側の位置からの導光方向の距離に対して示したグラフ、(b)は、遷移領域の態様の一例を模式的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態における面状照明装置において、青色光拡散部の一部を拡大して示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る面状照明装置と比較例に係る面状照明装置について、導光板上の有効出射領域の最も入光面側の測定点における出射光の色を、CIE表色系のxy色度図上の座標(x,y)として示したグラフである。
図7】本発明の一実施形態に係る面状照明装置と比較例に係る面状照明装置について、導光板上の有効出射領域にわたる出射光の、基準点の色度に対する色度差を、有効出射領域の最も入光面側の位置からの導光方向の距離に対して示したグラフである。
図8】本発明の参考例に係る面状照明装置を用いて導光板上の複数の測定点における出射光の色を測定した結果を示す図であり、(a)は、測定に用いた面状照明装置の要部構成を示す斜視図、(b)は、CIE表色系のxy色度図上のx座標値を、有効出射領域の最も入光面側の位置からの導光方向の距離に対して示したグラフ、(c)は、CIE表色系のxy色度図上のy座標値を、有効出射領域の最も入光面側の位置からの導光方向の距離に対して示したグラフである。
図9】本発明の参考例に係る面状照明装置において、導光板の楔率と入光色度差及び漏れ光率との関係を示すグラフである。
図10】本発明の参考例に係る面状照明装置及び本発明の一実施形態における面状照明装置の光源であるLEDの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る面状照明装置について図面を参照して説明する。なお、以下に示す各図において、各構成要素の形状、寸法等は、本発明の理解を容易にするため適宜誇張して示されている。また、添付の各図面において、二つの構成要素が空間を介して隣接するように図示されている場合、その空間は、本発明の理解を容易にするために挿入されるか、または誇張して示されたものであり、本発明の構成は、隣接する構成要素間の空間の有無、または、存在する場合には、その寸法によるものではない。
【0031】
まず、本発明に係る面状照明装置の理解に供するため、発明に至るまでの本発明者による研究の過程について説明する。本発明の課題である導光板上で部分的に生じる色むらの発生メカニズムについて、図8図10を参照して詳述すれば、次の通りである。ここで、図8には、本発明の参考例に係る面状照明装置100を用いて導光板121上の複数の測定点における出射光の色を、色彩輝度計を用いて測定した結果が示されている。図8(a)に示すように、面状照明装置100が備える導光板121には、LED11が配置される入光面122と、出射面125を有する出射部128との間に、傾斜面127aを有する入光楔部127が設けられている。また、図示は省略するが、LED11は、FPC(Flexible Printed Circuit Board;フレキシブルプリント回路基板)上に実装されており、FPCのLEDの前方部分(傾斜面127a及び出射面125の傾斜面127a寄りの領域を覆う範囲)は、黒塗りされている。また、出射面125には、有効出射領域Eが定義されており、導光板121の出射面125側のうち、有効出射領域Eの範囲外の領域には遮光手段が施されている。出射光の色の測定は、この有効出射領域Eの範囲内で実施した。
【0032】
ここで、図8(b)に示すグラフは、縦軸が、CIE表色系のxy色度図上のx座標値(以下、色度xともいう)、横軸が、導光板121の有効出射領域Eの最も入光面122側の位置を原点とする導光方向(入光面122から対向端面123に向かう方向)の距離X〔mm〕である。また、図8(c)に示すグラフは、縦軸が、CIE表色系のxy色度図上のy座標値(以下、色度yともいう)、横軸が、導光板121の有効出射領域Eの最も入光面122側の位置を原点とする導光方向の距離X〔mm〕である。図8(b)、(c)について、横軸に示された範囲は、導光板121の有効出射領域Eのほぼ全長に相当する。また、各測定点は、導光板121の幅方向については、略中央に位置している。
【0033】
図8(b)、(c)から分かるように、色度x及び色度yは、いずれの色度についても、Xが30mmの付近から原点に近づくにしたがって急激に増大しており、このように色度x及び色度yの両方が増大することは、出射光の黄色みが増大することを意味する。これによって、面状照明装置100では、導光板121の有効出射領域Eからの出射光について、入光面122側が黄色いという色むらが視認される(以下、このような色むらを入光色むらともいう)。
【0034】
さらに、本発明者(本出願人)の調査・研究により、入光色むらと導光板121の形状との関係について、次のようなことが分かった。図9は、導光板121の楔率と、入光色度差及び漏れ光率との関係を示すグラフである。ここで、導光板121の楔率は、入光楔部127の最大厚さ(入光面122の厚さに相当)T1に対する、入光楔部127の最小厚さ(出射部128の厚さに相当)T2の比(T2/T1)である。この定義によれば、入光楔部127の導光方向の長さが一定の場合、楔率が小さいほど、入光楔部127の傾斜面127aの傾斜角度は大きい。
【0035】
また、入光色度差は、入光色むらを評価するために、次のように定義した指標である。すなわち、入光色度差は、最も入光面122側の測定点における色度と他の測定点における色度との、xy色度図上の距離の最大値として定義される。具体的には、最も入光面122側の測定点(以下、P0という)における色度のxy色度図上の座標を(x0,y0)、P0以外の測定点における色度のxy色度図上の座標を(xi,yi)としたとき、P0以外の測定点ごとに
Δxyi=√((x0−xi)2+(y0−yi)2
で算出されるxy色度図上の距離Δxyiのうちの最大値である。このように定義された入光色度差が大きいほど、入光色むらが大きいといえる。
【0036】
また、漏れ光率は、導光板121への入射光量Iに対する、入光楔部127からの漏れ光量Lの比(L/I)である。
【0037】
図9には、種々の楔率において測定された入光色度差が、黒塗り四角形でプロットされ、楔率と漏れ光率との関係は、実線で描画されている。また、測定は、楔率がそれぞれ異なり、但し入光楔部127の導光方向の長さは一定とした導光板121を用いて実施した。
【0038】
図9から、導光板121の楔率と入光色度差には強い相関があり、特に、楔率が85%を下回ると、楔率が小さくなるほど入光色度差が大きくなることが分かる。言い換えれば、入光楔部127の傾斜面127aの傾斜角度が、楔率85%に相当する所定値を超えて大きくなると、傾斜面127aの傾斜角度が大きくなるほど入光色むらが顕著に現れる。また、図9から、楔率と入光色度差との相関は、楔率と漏れ光率との関係に類似していることも分かる。尚、図8(b)、(c)に結果を示す測定は、楔率73%の導光板121を用いて行われ、その入光色度差は、0.015である。
【0039】
本発明者(本出願人)は、鋭意研究により、入光色むらの発生メカニズムについて、次のような知見を得た。一般に、導光板121の有効出射領域Eからの出射光のうち、その入光面122側の領域からの出射光は、LED11から出射されて入光面122から導光板121に入射した後、入光楔部127内及び出射部128の入光楔部127寄りの領域内を導光される間に、その出射面125側と裏面124側との間で1回以上反射されつつ導光される結果として、出射面125の有効出射領域Eの入光面122側で、臨界角よりも小さい入射角で出射面125に入射することにより、その位置から出射されるものである。
【0040】
しかるに、面状照明装置100で光源として使用されているLED11は、図10に示すように、青色発光ダイオード41を黄色蛍光体が分散された透明樹脂42で封止した構成を備えており、青色発光ダイオード41が発光する青色光と、その青色光を吸収した黄色蛍光体が発光する黄色光との混色により、白色に見える発光スペクトル(擬似白色)を実現するものである。
【0041】
その際、LED11から、その光軸となす角度が大きい方向に出射される光L1は、光軸となす角度が小さい方向に出射される光L2、L3と比較して透明樹脂42内を通過する距離が長いため、光L2、L3よりも黄色味の強い白色光となる。そして、光軸となす角度が大きい方向に出射される黄色味の強い光L1は、入光楔部127の傾斜面127aに対して、直接に、または、裏面124で1度反射された後、小さい入射角で入射するため、その後、出射部128内へと直接導光されることなく、上述したような光路をたどって、出射面125の有効出射領域Eの入光面122側から出射されることになる。一方、光軸となす角度が小さい方向に出射される光L2、L3(光L1よりも青味の強い光)は、出射面125の有効出射領域Eの入光面122側では、臨界角よりも大きい入射角で出射面125に入射する結果、出射部128内を対向端面123に向けてさらに導光された後に、出射面125から出射される。これが、入光色むらの発生の1つのメカニズムと考えられる。
【0042】
例えば、導光板121の楔率が小さくなって入光楔部127の傾斜面127aの傾斜角度が大きくなると、傾斜面127aで反射する際の角度変化が大きくなるため、上記メカニズムによる入光色むらも大きくなることが予想され、このことは、図9に示す楔率と入光色度差との相関にも示されている。
【0043】
図10に示すような構成を備えたLED11は、産業用及び一般照明用として広く用いられるものであるため、このようなLED11の使用に伴う入光色むらの発生を抑制することは、重要な課題である。但し、入光色むらは、他の構成を備えた光源でも発生すると考えられる。例えば、青色発光ダイオードを封止する透明樹脂に、青色光よりも長波長の、黄色とは異なる色(例えば、赤色及び緑色)の蛍光体を分散させてなるLEDでは、LED11と同様のメカニズムによって入光色むらが発生するものと考えられる。
【0044】
さらに、入光色むらは、導光板121を構成する光学用の樹脂材料の屈折率の波長分散性によっても、助長されるものと考えられる。すなわち、樹脂材料の屈折率は、光の波長が長いほど小さくなるという波長分散性を有しており、それに伴って、臨界角は、波長が長くなるほど大きくなる。したがって、出射面125の有効出射領域Eの入光面122側に、特定の入射角で入射した光のうち、その青色光成分よりも長波長の光成分は、青色光成分よりも、その位置から出射し易いといえる。すなわち、上記特定の入射角が、青色光に対する臨界角よりも大きいが、青色光よりも長波長の光に対する臨界角よりも小さい角度であった場合、青色光成分は全反射されて導光板121内を対向端面123に向けてさらに導光されるが、青色光よりも長波長の光成分(例えば、黄色光を含む、赤色光から緑色光の範囲の光成分)は、その位置から出射されることになる。入光色むらの発生要因には、このようなメカニズムも考えられる。
【0045】
そして、樹脂材料の屈折率の波長分散性を要因とする入光色むらは、例えば、赤色光、緑色光、及び青色光等の発光素子(例えば、ダイオード)の組み合わせからなる光源を含む、ほぼ全ての白色光源で起こり得るものである。
【0046】
尚、図8及び図9に結果を示す測定に用いた面状照明装置100では、FPCのLED11の前方部分は、傾斜面127a及び出射面125の傾斜面127a寄りの領域からの漏れ光を吸収するために、黒塗りされているものである。但し、一般に、面状照明装置において、FPCのLED11の前方部分を白塗りし、傾斜面127a及び出射面125の傾斜面127a寄りの領域からの漏れ光を反射して、導光板121に戻す構成も可能である。測定に用いられた面状照明装置100において、LED11の前方部分が黒塗りされたFPCを採用したのは、次のような理由による。
【0047】
すなわち、LED11の前方部分を白塗りしたFPCを使用する場合、この白塗り部分によって反射されて導光板121に戻された光の多くは、上述した光路をたどって出射面125の有効出射領域Eの入光面122側から出射する光となるため、傾斜面127a及び出射面125の傾斜面127a寄りの領域からの漏れ光が比較的多い場合にこの構成を使用すると、有効出射領域Eの入光面122側に、いわゆるホットスポットが発生し、良好な輝度分布が得らなくなる。また、漏れ光には黄色みの強い光も含まれているため、傾斜面127aからの漏れ光をFPCの白塗り部分によって、波長依存性なく導光板121に戻すことは、入光色むらを悪化させる要因になるおそれもある。
【0048】
近時、導光板の薄型化に対する強い要求の下で、楔率を小さくすることにより出射部128を薄型化することが広く行われ、例えば、楔率は80%よりも小さくなる傾向にある。このような状況の下で、入光色むらの問題は、解決すべき新たな課題としてその重要性を増してきている。
【0049】
本発明者は上述したような鋭意研究の結果、本発明に至ったものであり、以下、本発明の一実施形態における面状照明装置10について説明する。面状照明装置10は、図1に示すように、白色を発光する光源としてのLED11と、LED11が発光した光を面状に出射させるための導光板21とを備えている。また、図示は省略するが、通常、LED11は、FPC(Flexible Printed Circuit Board;フレキシブルプリント回路基板)上に実装されている。
【0050】
本実施形態において、LED11は、全体として直方体状に形成され一側面に発光面12を有する所謂サイドビュー型のLEDである。すなわち、LED11は、FPCに実装される面(例えば、面13。以下、底面ともいう)と発光面12とが略直交している。そして、LED11は、図10に示すように、発光素子である青色発光ダイオード41を、黄色蛍光体が分散された透明樹脂(封止体)42で封止した構成を備えており、青色発光ダイオード41が発光する青色光と、その青色光を吸収した黄色蛍光体が発光する(青色光よりも長波長の)黄色光との混色により、白色に見える発光スペクトル(いわゆる擬似白色)を実現するものである。
本実施形態では、複数のLED11が、その発光面12を導光板21の後述する入光面22に向けた状態で、互いに所定の間隔を置きながら入光面22の長手方向(図1において、紙面に直交する方向)に沿って配置されている。
【0051】
導光板21は、透明材料(例えば、ポリカーボネート樹脂)を用いて上面視矩形状に形成されており、その外表面に、LED11が配置される端面である入光面22を有している。また、導光板21において、入光面22の長手方向の二端辺22c、22dのうちの一方22cに連接する面には、出射面25と、後述する傾斜面27aとが含まれている。以下、導光板21の出射面25を含む方の面を表面61、表面61とは反対側の面を裏面62ともいう。
【0052】
ここで、本発明において、入光面22から、入光面22と対向する端面(図示は省略する)に向かう方向(図1の紙面右方向)を「前方」(その反対方向を「後方」)という。このように定義された「前方」は、入光面22から導光板21に入光した光が、全体として、導光板21内を導光される方向でもあり、この意味で、上記定義による前後方向を、「導光方向」ともいう。
【0053】
また、裏面62が表面61を向く方向(図1の紙面上方向)を「上方」(その反対方向を「下方」)と定義し、この定義による上下方向を、「厚み方向」ともいう。さらに、前後方向及び上下方向と直交する方向(図1の紙面に直交する方向)を(必要な場合、前方に向かって「右方」及び「左方」を定義して)左右方向ともいう。左右方向は、言い換えれば、入光面22の長手方向である。また、特に明示して断らない限り、「長さ」、「厚さ(厚み)」もしくは「高さ」、及び「幅」は、それぞれ前後方向、上下方向、及び左右方向の寸法をいう。
【0054】
導光板21は、入光面22から前方に形成されたフラット部26と、フラット部26に連接して形成され、傾斜面27aを含む入光楔部27と、入光楔部27に連接してその前方に形成され、入光楔部27を通って導光されたLED11からの光を出射面25から面状に出射させる出射部28とを有する。そして、導光板21の裏面62は、フラット部26、入光楔部27、及び出射部28を通じて一つの平坦面となるように形成され、一方、入光楔部27の傾斜面27aは、入光面22側から前方に向かって下方に傾斜するように形成されており、これによって、入光楔部27は、入光面22側から前方(すなわち、出射面25側)に向かうほど厚さが漸減するように設けられる。
【0055】
フラット部26は、厚さが一定で、表面61側の面である上面26aが入光面22と略直交するように形成されている。出射部28は、厚さが一定の矩形平板状に形成され、入光面22に略直交する平坦面である出射面25と裏面62とは、平板形状の両主面として略平行に対向する。出射面25は、傾斜面27aの前方の端辺63と連接して形成されている。
【0056】
また、導光板21の表面61側には、少なくともLED11及び導光板21の入光面22側の領域(フラット部26、入光楔部27、及び出射部28の入光楔部27寄りの領域を含む)を覆うように、遮光シート(図示は省略する)が配置されており、面状照明装置10では、出射部28のうち、遮光シートによって覆われていない領域を有効出射領域Eとして、出射面25からの出射光のうち、この有効出射領域Eから外方に出射される光が照明光として利用されるものである。
【0057】
さらに、面状照明装置10において、導光板21の出射面25には、出射部28の入光面22側から入光面22に対向する端面側に向かって延びる複数のプリズム67が設けられている。本実施形態において、それぞれのプリズム67は、図2に示すように、断面円弧状の凸部をなし、このようなプリズム67が、所定の距離を隔てて入光面22の長手方向に沿って繰り返し形成されている。それぞれのプリズム67の断面形状は、例えば、半径が0.05mm、高さが0.017mm、幅が0.06mmであり、複数のプリズム67の配列ピッチは、例えば、0.10mmである。
【0058】
但し、本実施形態における面状照明装置10において、プリズム67の断面形状は、円弧状に限定されず、例えば、任意の多角形状であってもよい。また、プリズム67の高さ、幅、配列ピッチは、後述する複数のプリズム67の拡散機能の設定等に応じて任意の適切な寸法とすることができる。また、複数のプリズム67は、出射面25の少なくとも有効出射領域Eを含む範囲に形成されていることが望ましいが、複数のプリズム67の形成範囲についても、後述する複数のプリズム67の拡散機能の設定等に応じて任意の適切な範囲とすることができる
【0059】
ここで、面状照明装置10において、入光面22に略直交し、裏面62と略平行に対向する平坦面である出射面25は、複数のプリズム67の凸形状の基底面となる平面、言い換えれば、隣り合うプリズム67間の平坦面とプリズム67の仮想的な底面とを含む平面に相当する。但し、本発明において、出射光については、プリズム67間の平坦面からの出射光と複数のプリズム67の表面からの出射光とを合わせて、単に出射面25からの出射光というものとする。
【0060】
さらに、面状照明装置10は、図1に示す構成部材に加えて、図示は省略する他の構成部材を備えるものであってもよい。例えば、面状照明装置10において、導光板21の裏面62側には、裏面62から漏れた光を再度導光板21に戻すために反射シートが配置されているものであってもよい。また、出射部28の出射面25側には、出射面25から出射する光の指向性を制御するための拡散シート及び1対のプリズムシートが順次積層して配置されているものであってもよい。さらに、面状照明装置10は、各構成部材を収納するフレームを備えるものであってもよい。
【0061】
また、面状照明装置10において、LED11は、LED11が実装されるFPCのLED11の実装部分よりも前方の部分を、導光板21に固着させることによって、導光板21の入光面22に対して配置・固定されるものであってもよい。その際、入光楔部27の表面61側に傾斜面27aが形成されており、かつ、FPCを導光板21の表面側に固着させる場合には、入光楔部27の表面61側に、FPCを固着させるための台座を設けるものであってもよい。
【0062】
次に、面状照明装置10が備える青色光拡散部65について説明する。面状照明装置10において、導光板21の裏面62の、入光楔部27の近傍の所定の領域には、レイリー散乱により主として青色光を散乱させる青色光拡散部65が設けられている。本実施形態において、青色光拡散部65は、上面視して、有効出射領域Eの入光面22側の端部に沿って設けられており、その設置領域は、長さ方向には、有効出射領域Eの入光面22側の端部から所定の距離Lの範囲、幅方向には、導光板21の全幅にわたる範囲を備える帯状の領域である。距離Lは、例えば、全長が120mmの導光板21の場合、10mmとすることができる。
【0063】
但し、青色光拡散部65を設ける領域は、図示の例に限定されるものではなく、例えば、有効出射領域Eの入光面22側の端部よりもさらに入光面22側の領域(有効出射領域Eの範囲外の領域)が含まれるものであってもよい。
【0064】
面状照明装置10において、青色光拡散部65は、青色光の波長(例えば、白色光を生成するために用いられる青色発光ダイオードの典型的なピーク波長である430〜490nm)よりも小さい微細な凹凸を含んでいる。好ましくは、青色光拡散部65に含まれる微細な凹凸の最大高さは、青色光の波長よりも小さいものである。
【0065】
このような微細な凹凸を含む青色光拡散部65は、図3に示すように、導光板21を成形するための金型71の青色光拡散部65に対応する領域66の少なくとも一部に対してレーザ光75を照射することによって、領域66中のレーザ光75が照射された部分を粗面化し、この金型71(及び、必要な他の金型72、73)を用いて導光板21を成形することによって、導光板21と一体に設けることができる。
【0066】
但し、青色光拡散部65は、金型71の粗面化された部分が成形により転写された領域(以下、粗面部という)に、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成されている部分が含まれるものであればよく、必ずしも粗面部の全体が上記微細な凹凸により構成されていなくともよい。例えば、粗面部には、青色光の波長よりも大きい凹凸構造が含まれていてもよい。また、青色光拡散部65には、粗面部ではない領域、言い換えれば、金型71のレーザ光75照射による追加工が施されていない部分が転写された領域(以下、未追加工部という)が含まれていてもよい。
【0067】
面状照明装置10において、青色光拡散部65には、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成されている部分の面積密度が、入光面22から離れるにしたがって漸減する遷移領域が設けられている。具体的には、面状照明装置10において、青色光拡散部65は、青色光拡散部65の入光面22側の端部から前方に向かって距離L/2の位置までは、図4(a)に示すように、全面が粗面部として形成されており(粗面部の面積密度100%)、距離L/2から青色光拡散部65の入光面22から遠い側の端部の位置である距離Lまでは、粗面部と未追加工部が混在するとともに、粗面部の面積密度(すなわち、青色光拡散部65の一定範囲の面積に対する粗面部の面積の割合)が、距離が増大するに従って漸減し、距離Lにおいて0%となるように形成されている。
【0068】
このような距離L/2から距離Lの範囲における粗面部の面積密度の変化は、図4(b)に示すように、同一面積のドット状に形成された複数の粗面部80を、距離が増大するに従って、隣り合う粗面部80間の間隔が増大するように配置することによって実現されている(尚、図4(b)において、各粗面部80間の領域82は、未追加工部82に相当する)。
【0069】
そして、面状照明装置10において、ドット状に形成された各粗面部80は、同一条件で形成されており、ドット状に形成された各粗面部80に含まれる青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成された部分の面積は、ほぼ同一である。したがって、距離L/2から距離Lの範囲において、複数の粗面部80の面積密度が、図4(a)のグラフに示すように距離の増大に従って漸減することにより、上記微細な凹凸が形成された部分の面積密度も、距離の増大に従って漸減することになる。この意味で、青色光拡散部65のうち、距離L/2から距離Lの範囲は、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成されている部分の面積密度が、入光面22から離れるにしたがって漸減する遷移領域となっている。勿論、各粗面部80の全体が青色光の波長よりも小さい微細な凹凸で構成されている場合には、図4(a)に示すグラフ自体が、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成されている部分の面積密度を示すグラフとなっている。
【0070】
尚、図4(b)に示す態様は、青色光拡散部65の遷移領域の態様の一例に過ぎず、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成されている部分の面積密度が、入光面22から離れるにしたがって漸減するものである限り、遷移領域における粗面部80の形状、サイズ、及び配置パターン等は、任意の適切な態様とすることができる。
【0071】
さらに、例えば、青色光拡散部65を設ける領域に、有効出射領域Eの入光面22側の端部よりもさらに入光面22側の領域が含まれる場合には、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成されている部分の面積密度が、有効出射領域Eの入光面22側の端部から入光面22に近づくに従って漸減する遷移領域を設けるものであってもよい。
また、本発明に係る面状照明装置は、青色光拡散部65に遷移領域を設けず、青色光拡散部65の全体にわたって青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成されている部分の面積密度を一定とするものであってもよい。
【0072】
次に、図5を参照して、図3に示す方法により、青色光拡散部65中に青色光の波長よりも小さい微細な凹凸を形成した例について説明する。図5は、図3に示すような金型71を用いて成形された導光板21の青色光拡散部65の一部を拡大して示す写真である。図5のうち、上側の領域R2は、金型71のレーザ光75の照射により粗面化された部分が転写された領域(粗面部80に相当する)であり、下側の領域R1は、金型71のレーザ光75が照射されていない部分が転写された領域(未追加工部82に相当する)である。
【0073】
図4に示す領域R2の一定の範囲Mについて、レーザ顕微鏡により測定した表面粗さのパラメータを下表に示す。表中、Rpは粗さ曲線の最大山高さ、Rvは粗さ曲線の最大谷深さ、Rzは最大高さ粗さ(Rz=Rp+Rv)、Raは算術平均粗さ、Rqは二乗平均平方根粗さである。粗さ曲線は、範囲Mの長手方向に沿って約200μmにわたって取得したものを使用した。下表には、このような粗さ曲線を範囲M内で複数取得して求められたパラメータの平均値が記載されている。また、比較のため、同様の測定を領域R1についても実施し、その表面粗さのパラメータも求めた。
【0074】
【表1】
【0075】
上表に示すように、領域R2の表面粗さの各パラメータは、いずれのパラメータについても領域R1の表面粗さのパラメータよりも増大しており、領域R2は、領域R1よりも粗い表面となっている。加えて、領域R2の表面粗さの各パラメータは、いずれのパラメータについても、青色光の波長(例えば、430〜490nm)よりも小さくなっており、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が実現されている。特に、領域R2の最大高さ粗さRzは、0.268μm(268nm)と、青色光の波長よりも十分小さいことから、青色光拡散部65に含まれる微細な凹凸では、最大高さ粗さRzの定義(Rp+Rv)に従う最大高さについて、青色光の波長よりも小さいという条件が満たされているものである。
【0076】
このような青色光拡散部65において、青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成されている部分に入射した光については、散乱係数が波長の4乗に反比例するレイリー散乱により、青色光(例えば、図1に模式的に光路を示す光B)が、黄色光等の青色光よりも長波長の光(例えば、図1に模式的に光路を示す光Y)に対して強い散乱強度で散乱することになる。この際、青色光よりも長波長の光の大部分は、散乱されずに微細な凹凸がない場合の光路(すなわち、裏面62による全反射)と同様の光路をたどって導光板21の前方へと先送りされる。また、青色光拡散部65において、未追加工部82及び、存在する場合には、粗面部80のうち青色光の波長よりも小さい微細な凹凸が形成されていない部分に入射した光の散乱及び反射の特性について、顕著な波長依存性はない。したがって、青色光拡散部65は、全体として、主として青色光を散乱させる散乱特性を備えるものである。
【0077】
以上のように構成された面状照明装置10の作用効果について説明すれば、次の通りである。
まず、面状照明装置10では、入光楔部27の近傍に、散乱係数が波長の4乗に反比例するレイリー散乱により黄色光(蛍光体が発光する光)よりも波長の短い青色光(発光ダイオード41が発光する光)を主として散乱させる青色光拡散部(光拡散部)65が設けられていることにより、出射部28の入光楔部27寄りの領域から出射する光に対して、青色光拡散部65で散乱されて出射する青色光が補充されることになるため、出射部の28の入光楔部27寄りの領域が黄色みを帯びることにより視認される色むらを抑制し、ひいては、導光板からの出射光の色調の均一性を向上させることが可能となる。
【0078】
特に、面状照明装置10では、青色光拡散部65が、上面視して、有効出射領域Eの入光面22側の端部に沿って設けられていることにより、照明光の品質として重要な有効出射領域Eからの出射光の色調の均一性を効果的に向上させることが可能となる。
【0079】
また、面状照明装置10において、青色光拡散部65は、(未追加工部82より表面粗さが大きくかつ)青色光の波長よりも小さい微細な凹凸を含んでいるため、この微細な凹凸でレイリー散乱を効果的に生じさせることにより、青色光を、青色光よりも長波長の光に対して強い散乱強度で散乱させることが可能となる。さらに、青色光拡散部65に含まれる微細な凹凸は、その最大高さが、(未追加工部82のそれよりも大きいが)青色光の波長よりも小さいため、この微細な凹凸でより確実に青色光のレイリー散乱が生じることにより、青色光拡散部で散乱される青色光の光量を、さらに増大させることが可能となる。
【0080】
さらに、面状照明装置10において、青色光拡散部65は、微細な凹凸が形成されている部分の面積密度が、入光面から離れるにしたがって漸減する遷移領域が設けられていることにより、出射部28の、青色光拡散部65が設けられている領域と設けられていない領域との境界(言い換えれば、青色光拡散部65の入光面22側とは反対側の端部)近傍において、出射面25からの出射光の色度が急激に変化することが抑制され、これによって、出射光の色調の均一性をさらに向上させることが可能となる。
【0081】
また、面状照明装置10において、青色光拡散部65が、青色光拡散部65に対応する領域66にレーザ光が照射された金型71を用いて導光板21を成形することにより形成されていることは、金型加工時に照射するレーザ光75のパワー、照射時間、及び照射領域を制御することによって、要求される色度に対応して所望の散乱特性を備えた青色光拡散部(光拡散部)65を容易に形成できる点で有利である。
【0082】
ここで、面状照明装置10で使用されているLED11から、その光軸となす角度が大きい方向に出射される黄色味の強い光L1(図10参照)は、入光楔部27の傾斜面27aに対して、直接に、または、裏面61で1度反射された後、小さい入射角で入射するため、その後、出射部28内へと直接導光されることなく、表面61側と裏面62側との間で1回以上反射されつつ導光されて、出射面25の有効出射領域Eの入光面22側で、臨界角よりも小さい入射角で出射面25に入射し、その位置から出射される。
したがって、LED11のように、青色発光ダイオード41を黄色蛍光体を分散した透明樹脂42で封止した構成を備えたLED11を使用した場合には、青色光拡散部65による青色光の補充による黄色味の抑制の効果が、顕著に発揮されるものである。
【0083】
また、面状照明装置10のように、導光板21の出射面25側に、出射部28の入光面22側から入光面22に対向する端面側に向かって延びる複数のプリズム67が設けられている構成を備える場合には、光源としてLED11のような点状光源を使用した場合であっても、輝線の発生が抑制され、輝度の均一性を向上させることができる一方、出射部28の入光楔部27寄りの領域からの出射光の黄色味がより強くなる傾向がある。これは、面状照明装置10を出射面25側から見た場合に、LED11から出射する光のうち、入光面22の長手方向に沿う方向に(光軸となす角度が大きい方向に)出射される光は、図10に示す光L1と同様に黄色みが強い光であるとともに、出射部28の入光楔部27寄りの領域において、プリズム67の側面に対して臨界角よりも小さい入射角で入射しやすいためであると考えられる。
【0084】
したがって、LED11のように、青色発光ダイオード41を黄色蛍光体を分散した透明樹脂42で封止した構成を備えたLED11を使用し、かつ、出射部28の入光面22側から入光面22に対向する端面側に向かって延びる複数のプリズム67が設けられている構成を備えた面状照明装置10において、青色光拡散部65による青色光の補充による黄色味の抑制の効果は、特に顕著に発揮されるものである。
【0085】
但し、本発明に係る面状照明装置が備える白色光源は、LED11に限定されるものではない。例えば、本発明に係る面状照明装置が備える光源は、青色発光ダイオード41を、青色光よりも長波長の、黄色とは異なる光に変換する蛍光体(例えば、緑色蛍光体、及び、赤色蛍光体)を分散させた透明樹脂で封止した構成を備えるLEDとするものであってもよく、この場合には、LED11を備えた面状照明装置10と同様に顕著な効果を奏するものである。
【0086】
また、どのような光源であっても、白色光を発光するものである限り、その発光スペクトルには、青色光の波長範囲に含まれる光成分と、青色光よりも長波長の波長範囲に含まれる光成分とが含まれるものであるため、本発明に係る面状照明装置の、青色光拡散部65を備えた構成は、入光色むらを抑制するために一定の効果を奏するものである。
【0087】
例えば、本発明に係る面状照明装置が備える光源は、異なる複数種類の発光素子(典型的には、青色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、及び赤色発光ダイオード)を備えるLEDであってもよい。また、単色光の発光素子と波長変換材料とで構成された光源において、波長変換材料は、量子ドットであってもよい。
【0088】
次に、図6及び図7を参照して、面状照明装置10の出射光の色度を実測した結果を、比較例とともに説明すれば、次の通りである。ここで、図6は、面状照明装置10と比較例に係る面状照明装置について、導光板21上の有効出射領域Eの最も入光面22側の測定点における出射光の色を、CIE表色系のxy色度図上の座標(x,y)として示したグラフである。比較例に係る面状照明装置は、青色光拡散部65を有しない点を除いて、面状照明装置10と同一の構成を備えるものである。また、測定点の位置は、有効出射領域Eの入光面22側の端部から前方に向かって約2mmの距離の位置である。
図6には、面状照明装置10に相当する4つの検体の測定値が黒塗りの菱型で、比較例に係る面状照明装置に相当する4つの検体の測定値が白丸で、それぞれ示されている。
【0089】
図6から分かるように、面状照明装置10に相当する4つの検体の測定値は、いずれの検体についても、比較例に係る面状照明に相当する4つの検体のいずれの測定値よりも、色度x及び色度yの両方が小さくなっている。このように色度x及び色度yの両方が減少することは、出射光の黄色みが減少し、青味が増大したことを意味する。この結果は、青色光拡散部65を備える面状照明装置10では、有効出射領域Eの入光面22側からの出射光に対して青色光が補充された結果、黄色みによる色むらが抑制されたことを示すものである。
【0090】
また、図7は、面状照明装置10と比較例に係る面状照明装置について、導光板21上の有効出射領域Eにわたる出射光の、基準点の色度に対する色度差Δxyを、有効出射領域Eの最も入光面22側の位置を原点とした導光方向の距離に対して示したグラフである。比較例に係る面状照明装置は、青色光拡散部65を有しない点を除いて、面状照明装置10と同一の構成を備えている。また、基準点は、出射光の色度に最も青味が強い測定点とした(図示の例の場合、有効出射領域Eの導光方向の中央付近の測定点)。また、各測定点の色度差Δxyは、基準点における色度のxy色度図上の座標を(x0,y0)、各測定点における色度のxy色度図上の座標を(x,y)としたとき、測定点ごとに
Δxy=√((x0−x)2+(y0−y)2
で算出した。
図7には、面状照明装置10に相当する複数の検体の測定値が実線で、比較例に係る面状照明装置に相当する複数の検体の測定値が破線で、それぞれ示されている。
【0091】
図7から分かるように、面状照明装置10に相当する複数の検体における色度差Δxyは、距離30mmの付近から原点に近づくにしたがって増大しているものの、その増大の度合いは、面状照明装置10に相当するいずれの検体についても、比較例に係る面状照明に相当するいずれの検体よりも小さくなっている。例えば、有効出射領域Eの最も入光面22側の測定点における色度差Δxyは、面状照明装置10に相当する検体の方が、比較例に係る面状照明装置に相当する検体よりも0.03〜0.05だけ低下している。一方、基準点よりも距離が増大する側では、面状照明装置10と比較例との間で色度差Δxyに顕著な相違は生じていない。この結果は、青色光拡散部65を備える面状照明装置10では、有効出射領域Eの入光面22側からの出射光に対して青色光が補充された結果、有効出射領域Eの全長にわたって、色調の均一性が向上していることを示すものである。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、実施の形態については上記に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更および組み合わせが可能である。
【0093】
例えば、入光楔部27の傾斜面27aは、表面61側(出射面25側)ではなく、裏面62側に設けるものであってもよい。あるいは、傾斜面27aは、表面61側と裏面62側の両方に設けるものであってもよい。傾斜面27aを、表面61側のみに設けた場合、裏面62側のみに設けた場合、または、表面61側と裏面62側の両方に設けた場合の、いずれの場合についても、傾斜面27aの形状は、一定の勾配で傾斜する平坦面でなくともよく、例えば、曲面を含むものであっても、または、異なる勾配を有する複数の平坦面を含むものであってもよい。
【0094】
また、面状照明装置10は、複数の青色光拡散部65を備えるものであってもよい。さらに、青色光拡散部65は、導光板の表面61側に設けるものであってもよく、表面61側と裏面62側の両方に設けるものであってもよい。また、少なくとも1つの青色光拡散部65を、入光楔部27の傾斜面27a上に設けることも、または、出射部28に複数のプリズム67が設けられている場合には、プリズム67の表面上に設けることも可能である。
【0095】
また、面状照明装置10において、導光板21を成形するための金型は、青色光拡散部65に対応する領域66に、レーザ光の照射以外の方法(例えば、サンドブラスト法または各種のエッチング法)によって粗面を形成するものであってもよい。さらに、青色光拡散部65は、成形用の金型から転写するのではなく、導光板21を直接加工することによって設けるものであってもよい。
【0096】
また、青色光拡散部65は、導光板21の全幅にわたって帯状に設けるのではなく、導光板21の幅方向に沿って間隔をおいて配置された複数の小部分からなるものであってもよい。これらの少部分は、それぞれのLED11の前方に配置されるものであってもよく、または、それぞれのLED11の側方(例えば、隣り合うLED11の間の前方)に配置されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0097】
10:面状照明装置、11:光源(LED)、12:発光面、21:導光板、22:入光面、25:出射面、27:入光楔部、27a:傾斜面、28:出射部、65:青色光拡散部、67:プリズム
図1
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図5