【実施例】
【0109】
この発明を例示として、以下に示す実施例がある。かかる実施例はこの発明の範囲を限定することを企図したものでは一切ない。
【0110】
実施例1
(食作用活性によりスクリーニングされた提供者から抽出したRNAを使用した、scFvファージディスプレイライブラリーの構築)
25〜55歳の間の、グラム陽性細菌による感染が報告された提供者及び健康な成人から血液サンプルを採取した。末梢血白血球は遠心分離によって分離され、血清は80℃にて保存及び凍結した。提供者の血清を、FACSに基づくファゴサイトーシスアッセイ法(非特許文献4)を用いて、食作用活性によりスクリーニングし、それを通常の健康な提供者の一連の血清と比較した。ファージディスプレイライブラリーの作製に使用するため、通常の結成と比較して、高い食作用活性を示す提供者からの血清を選択した。全RNAは、有機相分離と、それに次ぐエタノール沈殿により提供者の末梢血白血球から準備された。得られたRNAを、RNaseフリーの水に溶解し、その濃度をOD260nm測定により判定した。その後、RNAは100ng/μlの濃度となるよう希釈された。次いで、1μlのRNAが、以下の方法によりcDNAに変換された。10μlの全RNA、13μlのDEPC処理された超純水及び1μlのランダムヘキサマー(500ng/μl)を混合し、得られた混合液を65℃にて5分加熱し、氷上にて急冷した。それから、8μlの5Xファーストストランドバッファ、2μlのdNTP(それぞれ10mM)、2μlのDTT(0.1M)、2μlのRNase阻害剤(40U/μl)及び2μlのSuperscript(登録商標)III MMLV逆転写酵素(200U/μl)を混合液に添加し、室温にて5分間インキュベートし、50℃にて1時間インキュベートした。反応は、熱失活させる、すなわち、混合液を75℃にて15分インキュベートすることにより止められた。得られたcDNA産物は、DEPC処理された超純水に最終量が200μlとなるよう希釈された。得られたcDNA産物を50回希釈した(10mMのTrisバッファー)水溶液は、cDNAの濃度を判定するために使用された。各提供者に対し、5〜10μlの希釈されたcDNA産物が、特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用した免疫グロブリンのガンマ重鎖ファミリー及びカッパ又はラムダ軽鎖配列のPCR増幅のテンプレートして使用された(表1〜7参照)。また、一人の提供者の免疫グロブリンのミュー重鎖ファミリー及びカッパ又はラムダ軽鎖配列のPCR増幅を実施した。PCR反応混合液は、希釈されたcDNA産物以外に、20mMのトリス塩酸(pH8.4)、50mMのKCl、1.5mMのMgCl2、250mMのdNTPs及び1.25ユニットのTaqポリメラーゼの終量50μlの液中に、25pmolのセンスプライマー及び25pmolのアンチセンスプライマーを有する。96℃に蓋が加熱されたサーマルサイクラーにおいて、得られた混合液を2分間急速に溶解し、次いで、96℃で30秒、55℃又は60℃で30秒及び72℃で60秒、を30サイクル繰り返す。最後に、試料を72℃にて10分間インキュベートし、使用するまで4℃に冷蔵する。
【0111】
第一の増幅では、18種の軽鎖可変領域センスプライマー(12種はラムダ軽鎖用(表1参照:HuVL9-Back及びHuVLlO-Backセンスプライマーと同様、HuVLlA-Back、HuVL IB-Back及びHuVLIC-Backセンスプライマーは使用前に同モル数となるよう混合される)であり、6種はカッパ軽鎖用である(表2参照))は、HuCK-FOR 5'-ACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCTT-S'(配列ID番号:37)であるC-カッパ定常領域、及び、HuCL2-FOR 5'-TGAACATTCTGTAGGGGCCACTG-S'(配列ID番号:38)又はHuCL7-FOR 5'-AGAGCATTCTGCAGGGGCCACTG-3'(配列ID番号:39)であるC-ラムダ定常領域を認識するアンチセンスプライマー(HuCL2-FOR及びHuCL7-FORセンスプライマーは使用前に同モル数となるよう混合される)と組み合わせられ、約650塩基対の15個の産物が得られる。これらの産物は、アガロースゲルにより精製され、Qiagen社のゲル抽出カラムを使用して、かかるゲルから分離される。分離された産物の1/10が、18種のセンスプライマーを使用して、上述したものと同一のPCR反応に供され、夫々のラムダ軽鎖センスプライマーは、3種のJラムダ領域特異的アンチセンスプライマーのうちの1種と、夫々のカッパ軽鎖センスプライマーは、5種のJカッパ領域特異的アンチセンスプライマーのうちの1種と、組み合わせられる(表3参照:HuVL9-Back-SAL及びHuVLlO-Back-SALセンスプライマーと同様、HuVLlA-Back-SAL、HuVLlB-Back-SAL及びHuVLlC-Back-SALセンスプライマーは使用前に同モル数となるよう混合される)。第二の増幅時に使用されるセンスプライマーは、第一の増幅時に使用されるセンスプライマーと同一のプライマーであるが、ファージディスプレイベクターPDV-C06(配列ID番号:40)に直接クローニングできるように、それに制限酵素部位が延長(表3参照)したものである。その結果、表4に集めて示されるように、約400塩基対の57産物が得られ、ライブラリー内の異なるJセグメント及び軽鎖ファミリーの自然分布が維持され、特定のファミリーを少なく又は多く表示することは無い。一連の産物は、Qiagen社のPCR精製カラムを用いて精製された。次のステップでは、3μgの一連の産物及び100μgのPDV-C06ベクターがSalI及びNotIにより消化され、ゲルから精製される。その後、ライゲーション処理を16℃にて一晩実施した。50mMトリス塩酸(pH7.5)、10mMのMgCl2、10mMのDTT、1mMのATP、25μg/mlのBSA及び2.5μlのT4 DNAリガーゼ(400U/μl)を含む全量50μlのライゲーションミックスに、500ngのPDV-C06ベクターに対し、35、70又は140ngの一連の産物が加えられた。ライゲーションミックスは、当業者には周知の方法である、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出、エタノール沈殿の順で処理することにより精製された。得られたDNAは、50μlの10mMトリス塩酸(pH8.5)に溶解され、1又は2μlのライゲーションミックスが、製造元であるStratagene社のプロトコルに従い、40μlのTG1コンピテントE.coliにエレクトロポレーションされた。形質転換体は、50μg/mlアンピシリン及び4.5%グルコースを添加した2TYアガー上にて37℃で一晩培養された。最適なベクターインサート比を判定するために、コロニー数が数えられた。最適比にあるライゲーションミックの1又は2μlの分液を上記の如くエレクトロポレーションし、形質転換体を37℃で一晩培養すると、一般に、〜10
7個のコロニーが得られる。可変軽鎖領域の(サブ)ライブラリーは、アガープレートから形質転換体をかきとることにより得られる。(サブ)ライブラリーは、Qiagen(登録商標)社のQIAFilter MAXI prep kitを使用して、プラスミドDNA準備のために直接的に使用される。
【0112】
重鎖免疫グロブリン配列は、表5及び6に記載のプライマーが使用して、軽鎖領域について上述したものと同一の反応パラメータにより同一のcDNAから、類似した2回のPCR手順により増幅される。第一の増幅は、8種のセンスプライマー(表5参照:HuVHlB/7A-Back及びHuVHIC-Backセンスプライマーは使用前に同モル数となるよう混合される)を夫々、HuCIgG 5'-GTC CAC CTT GGT GTT GCT GGG CTT-3(配列ID番号:41)のIgG特異的定常領域案センスプライマーと組み合わせて用いることで実施され、約650塩基対の7産物が得られる。一人の提供者について、HuCIgGプライマーの代わりに、HuCIgM 5'-TGG AAG AGG CAC GTT CTT TTC TTT-3(配列ID番号:42)であるIgM特異的定常領域アンチセンスプライマーが使用される。産物は、アガロースゲルにより精製され、Qiagen社のゲル抽出カラムを使用して、かかるゲルから分離される。分離された産物の1/10が、8種のセンスプライマーを使用して、上述したものと同一のPCR反応に供され、夫々の重鎖センスプライマーは、4種のJH領域特異的領域特異的アンチセンスプライマーのうちの1種と組み合わせられる(表6参照:HuVHlB/7A-Back-Sfi及びHuVHIC-Back-Sfiセンスプライマーは使用前に同モル数となるよう混合される)。第二の増幅時に使用されるセンスプライマーは、第一の増幅時に使用されるセンスプライマーと同一のプライマーであるが、軽鎖(サブ)ライブラリーベクターに直接クローニングできるように、それに制限酵素部位が延長(表6参照)したものである。その結果、表7にまとめて示されるように、約400塩基対の28産物が得られ、ライブラリー内の異なるJセグメント及び重鎖ファミリーの自然分布が維持され、特定のファミリーを少なく又は多く表示することは無い。一連の産物は、Qiagen社のPCR精製カラムを用いて精製された。次のステップでは、3μgの一連の産物がSfiI及びXhoIにより消化され、同一の制限酵素により切断された軽鎖(サブ)ライブラリーベクターと、軽鎖(サブ)ファミリーにおいて上述したものと同一の手順及び分量によりライゲーション処理される。最終的にライブラリーが得られる、ライゲーションミックスの精製及びそれに次ぐ形質転換は、軽鎖(サブ)ファミリーにて実施した上述の方法にて実施した。一般的な〜10
7個の、全ての細菌は、50μg/mlアンピシリン及び4.5%グルコースを添加した2TY培養液に、15%グリセロール(v/v)に混合され、1.5mlの分量にて-80℃で凍結される。夫々のライブラリーのレスキュー及び選択は、以下に示すように行なった。多様なライブラリーは、GPB-05-M01、GPB-05-G01、GPB-05-G02、GPB-05-G03、GPB-05-G04及びGPB-05-G05と命名された。他の2つのライブラリー、RAB-03-G01及びRAB-04-G01は、特許文献9に記載され、上述と類似した方法により構築された。
【0113】
実施例2
(記憶B細胞から抽出したRNAを使用した、scFvファージディスプレイライブラリーの構築)
末梢血は、一般の健康な提供者、回復期にある提供者、又は、EDTA抗凝血試料管を使用して静脈パンクション(venapunction)によりワクチンを摂取した提供者から集められた。血液試料(45ml)は、PBSにて2倍に希釈され、その30ml分量が10mlのFicoll-Hypaque(ファルマシア社)に入れられ、室温にて、20分、900xgで遠心分離される。上澄みは、リンパ球及び血小板フラクションを含む白層のちょうど上部まで慎重に取り除かれる。次いで、この層(〜10ml)は慎重に取り除かれ、新しい50mlのチューブに移され、40mlのPBSにより3回洗浄され、室温で400xgにて10分遠心して、血小板を取り除く。得られたリンパ球を含むペレットは、2%のFBSを含んでいるRPM1培地に再度懸濁され、細胞数は細胞を数えることにより測定された。凡そ1×10
8のリンパ球が、切り替えられた及びIgGの記憶B細胞を分離するマーカーとして、CD24、CD27及び表層IgMを使用して蛍光細胞ソーティングにより染色された。Yield ModeでセットされたBecton Dickinson社のDigital Vantage機器は、物理記憶B細胞のソーティング及び分離に使用された。リンパ球は、FSC/SSCウインドウからの小さな小型集団でゲート制御されている。次いで、記憶B細胞(CD24+/CD27+)は、単純なB細胞(CD24+/CD27-)及び記憶T細胞(CD24-/CD27+)から分離された。次のステップでは、IgG記憶B細胞(IgG+)は、IgM発現を使用してスイッチ記憶B細胞(IgM-)から分離される。このステップでは、IgM記憶B細胞及びスイッチ記憶B細胞は、分離試料管にて選別される。夫々の集団の1×10
5〜1×10
6個の細胞は、DMEM/50%FBSに集められ、ソートが完了した後には、夫々を400xgにて10分間遠心する。ソートされたIgG記憶B細胞は、実施例1にて採用した方法に従い、重鎖免疫グロブリン配列の第1回の増幅にHuClgMプライマーを使用して、ライブラリー構築のための開始材料として使用される。得られた多様なライブラリーは、MEM-05-M01、MEM-05-M02、MEM-05-M03、MEM-05-M04、MEM-05-M05、MEM-05-M06、MEM-05-M07、MEM-05-M08、MEM-05-M09及びMEM-05-M10と命名した。
【0114】
実施例3
(ブドウ球菌に特異的に結合する単鎖Fv断片を有するファージの選抜)
抗体断片は、特許文献6及び10に本質的に記載されている(ともにこの発明に援用する)、抗原ファージディスプレイライブラリー、一般的なファージディスプレイ技術及びMabstract(登録商標)技術を使用して選抜される。使用される抗体ファージライブラリーは、実施例1で説明した方法で作製されたスクリーニングされた提供者のライブラリー、実施例2で説明した方法で作製されたIgG記憶ライブラリー、及び、非特許文献8に記載の方法で作製された半合成的scFvファージライブラリー(JK1994)である。(この発明に援用する)特許文献11に記載の方法及びヘルパーファージが、この発明で使用された。懸濁液中の生きた細菌を使用してファージ選抜実験を行なうことにより、ブドウ球菌を認識するファージ抗体を同定した。選抜及びスクリーニングに使用された臨床分離株は、表8に記載されている。分離株は、RFLPの種類により異なる。
【0115】
細菌は、血液アガープレート上にて37℃で一晩培養され、1mg/mlのウサギIgG及び1%BSAを含むRPMIバッファー中に、細菌濃度5×10
9個/mlにてかきとり入れられ、60分間室温にて培養される。(CTヘルパーファージ(特許文献11を参照)により増幅された、約10
13cfuの)ファージライブラリーの分量は、(PBS中に2%ELKを含む)ブロッキングバッファー内で、室温で1〜2時間ブロッキングされる。ブロッキングされたファージライブラリーは、全量が1.5mlとなるようブロッキングされた細菌懸濁液に添加され、室温にて2時間、繰り返しローター(end-over-end rotor)(5rpm)により培養される。懸濁液は、室温で、6800xgにて3分間遠心分離され、その上澄みが捨てられる。細菌は1%BSA及び0.05%Tween-20を含むRPMIバッファーにより5回洗浄し、次いで、1%BSAを含むRPMIバッファーにより5回洗浄し、結合していないファージが取り除かれる。結合したファージは、1mlの0.1Mトリエチルアミンにより、室温にて10分間、繰り返しローター(end-over-end rotor)(5rpm)で培養することにより、抗原から溶出される。チューブの全内容物は、次いで、0.5mlの1Mのトリス塩酸pH7.5と混合され、pHが中和されることとなる。この混合物は、OD600nmが約0.3となるまで37℃で培養された5mlのXL1-Blue E.coli培養物に感染するために使用される。ファージをXL1-Blue細菌に37℃にて30分間感染する。次いで、混合物を室温で3200
*gにて10分間遠心し、細菌ペレットを0.5mlの2trypton酵母抽出(2TY)培地に再懸濁する。得られた細菌懸濁液は、テトラサイクリン、アンピシリン及びグルコースを含む2枚の2TYアガープレートに分けられる。かかるプレートを37℃で一晩培養した後、非特許文献7及び特許文献11に本質的に記載されているように、コロニーをプレート上からかきとり、濃縮したファージライブラリーの準備に使用される。素早くかきとられた細菌は、アンピシリン、テトラサイクリン及びグルコースを含む2TY培地上に植菌され、OD600nmが0.3となるまで37℃で培養される。培地を、アンピシリン、テトラサイクリン及びカナマイシンを含む2TY培地に移した後に、CTヘルパーファージが添加され、細菌に感染させられる。その後、30℃にて一晩培養した。そして、次の日に、ポリエチレングリコール(PEG)6000/NaClを用いて培地中のファージを沈殿させた後に、細菌を2TY培地から遠心分離により取り除いた。最後に、ファージを、1%のウシ血清アルブミン(BSA)を有する2mlのPBSに溶解し、そして、ろ過滅菌し、次回の選抜に使用する。
【0116】
一般に、夫々のファージ抗体を分離する前に、2回の選抜が実施される。選抜は、同一の細菌の菌株又は連続的に異なる菌株に対し2回実施される(選抜株については表8を参照せよ)。第2回の選抜後、夫々のE.coliコロニーは、モノクローナルファージ抗体の作製に使用される。基本的には、夫々のコロニーは、対数増殖期になるまで96ウェルプレート型内にて培養され、ファージ抗体生産が一晩なされた後に、CTヘルパーファージにより感染される。生産されたファージ抗体は、PEG/NaCl沈殿され、そして、ろ過滅菌され、ELISA及び/又はFACSにより上述の如く準備されたStaphylococcusに対し試験された。
【0117】
実施例4
(ブドウ球菌特異的な単鎖ファージ抗体の検証)
上述したスクリーニングにより選抜された単鎖ファージ抗体は、特異的なブドウ球菌結合活性、すなわち、上述の如く準備され、FACSに基づき腸球菌結合活性を測定したEnterococcusに結合しない、1つ以上のブドウ球菌株への結合についてFACSにより検証された。ファージ抗体はFACSバッファー(20mM HEPESバッファーpH7.5、100mM NaCl、1%BSA)により氷上にて20分間ブロッキングされる。各染色のため、血液アガープレートからかきとられ、FACSバッファーにより洗浄された1×10
9個の細菌細胞は、夫々エッペンドルフチューブに入れられた。細菌は15%ヒト血清(Biowhittaker)を含むFACSバッファーにより室温にて30分ブロッキングされる。細菌は、4℃にて1700xgで3分間遠心することによりペレットとなり、それをブロッキングされたファージ抗体に再懸濁し、氷上にて1.5時間培養する。次いで、細菌はFACSバッファーにより洗浄され、連続して、ネズミのビオチン化された抗M13抗体(RDI)、そして、strepavidin-PEとともに培養される。細胞は、バッファー化した4%ホルムアルデヒドにより固定され、FACSキャリバにより分析された。(ともに、懸濁液中のCowan株上のRAB-03-G01から選抜された)SC05-132及びSC05-133は、試験された全ての臨床分離物を染色し、全ブドウ球菌対象を認識した。(懸濁液中のCowan株上のJK1994から選抜された)SC02-430はブドウ球菌のCowan株に対し特異的な結合を示した(表9を参照せよ)。更なる選抜から、SC06-166、SC06-171、SC06-176、SC06-187、SC06-193、SC06-249、SC06-273、SC06-389、SC06-403、SC06-406、SC06-410、SC06-446、SC06-450、SC06-452、SC06-453、SC06-464、SC06-471、SC06-516、SC06-517、SC06-526、SC06-528、SC06-531、SC06-533、SC06-536、SC06-537、SC06-538、SC06-540、SC06-544、SC06-566及びSC06-625を呼ばれる単鎖ファージ抗体が得られた。これら抗体は、少なくとも1つの試験された臨床分離物に結合する(表9を参照せよ)。SC06-166、SC06-171、SC06-176及びSC06-187は免疫ライブラリーから選抜され、その他のファージ抗体はIgM記憶B細胞ライブラリーから選抜される。
【0118】
非細菌性抗原に対する非特異的な反応活性を試験するために、ELISAアッセイが実施した。複合抗原5%FBS、2%ELK及び1%BSAは、Maxisorp(登録商標)ELISAプレートにて一晩被覆される。ブロッキングされたファージ抗体を得るために、複合抗原5%FBS、2%ELK及び1%BSAは、等容積の1%BSAを含んだPBSとともに15分間培養された。プレートを空にし、ブロッキングされた単鎖ファージ抗体がウェルに添加された。その後、室温にて2時間インキュベートされ、プレートは0.1% v/v Tween-20を含んだPBSにより洗浄され、そして、ペルオキシダーゼと複合化した抗M13抗体を使用して、OD492nm測定により結合したファージ抗体が検出される。コントロールとして、単鎖ファージ抗体無しに、ネガティブコントロールとして、西ナイルウィルスの封入体タンパク質に対する単鎖ファージ抗体(SC04-374)を用いて、手順を同時に実施する。表10に示すように、SC02-430、SC05-132及びSC05-133と呼ばれる選抜されたファージ抗体は、ネガティブコントロール抗原のFBS、ELK及びBSAに対し検出可能な結合を示さなかった。
【0119】
実施例5
(ブドウ球菌特異的なscFvsの特性評価)
選抜された特異的な単鎖ファージ抗体(scFv)クローンから、プラスミドDNAが得られ、標準的な技術により核酸配列が特定された。(クローニングのための制限酵素部位を含む)ScFvの核酸配列であるSC02-430、SC05-132及びSC05-133は、夫々に配列ID番号20、ID番号22及びID番号24に示されている。
【0120】
VH及びVL遺伝子の同一性(非特許文献16を参照せよ)、及び、ブドウ球菌に特異的に結合するscFvのCDR配列を夫々表11及び12に示す。
【0121】
上記に開示した単鎖ファージ抗体に類似して、核酸及びアミノ酸配列、VL及びVH遺伝子の同一性、並びに、SC06-166、SC06-171、SC06-176、SC06-187、SC06-193、SC06-249、SC06-273、SC06-389、SC06-403、SC06-406、SC06-410、SC06-446、SC06-450、SC06-452、SC06-453、SC06-464、SC06-471、SC06-516、SC06-517、SC06-526、SC06-528、SC06-531、SC06-533、SC06-536、SC06-537、SC06-538、SC06-540、SC06-544、SC06-566及びSC06-625と呼ばれる単鎖ファージ抗体のCDR配列が特定された(データは示さず)。
【0122】
実施例6
(選抜された抗ブドウ球菌単鎖Fvsを用いた完全なヒト免疫グロブリン分子(ヒトモノクローナル抗ブドウ球菌抗体)のコンストラクト)
IgG発現ベクターpSyn-C03-HCγ1(配列ID番号:43)及びpSyn-C04-Cλ(配列ID番号:44)にて発現させるために、SC02-430の重鎖及び軽鎖可変領域について、オリゴヌクレオチドを用いて制限酵素部位及び/又は配列を付加するPCR増幅を行なった。SC02-430の重鎖可変領域は、ベクターpSyn-C03-HCγlにクローニングされ、SC02-430の軽鎖可変領域は、ベクターpSyn-C04-Cλにクローニングされた。VLλ遺伝子は、以下のヌクレオチドセット:5L-B(配列ID番号:45)及びsy3L-A(配列ID番号:46)を用いて増幅され、そのPCR産物は、ベクターpSyn-C04-Cλにクローニングされた。コンストラクトの核酸配列は、当業者に公知の技術に従い検証された。VH遺伝子は、以下のヌクレオチドセット:5H-F(配列ID番号:47)及びsy3H-A(配列ID番号:48)を用いて増幅された。その後、PCR産物はベクターpSyn-C03-HCγlにクローニングされ、そのヌクレオチド配列は従来から当業者にとって公知の標準的な技術に従って検証された。
【0123】
SC05-132、SC05-133、SC06-166、SC06-171、SC06-176、SC06-187、SC06-193、SC06-249、SC06-273、SC06-389、SC06-403、SC06-406、SC06-410、SC06-446、SC06-450、SC06-452、SC06-453、SC06-464、SC06-471、SC06-516、SC06-517、SC06-526、SC06-528、SC06-531、SC06-533、SC06-536、SC06-537、SC06-538、SC06-540、SC06-544、SC06-566、SC06-625と呼ばれるscFvの重鎖及び軽鎖可変領域は、IgG発現ベクターpIg-C911-HCgammal(配列ID番号:49)及びpIg-C909-Ckappa(配列ID番号:50)又はpIg-C910-Cλ(配列ID番号:115)における発現ために、制限酵素消化により直接的にクローニングされる。SC05-132、SC05-133、SC06-166、SC06-171、SC06-176、SC06-187、SC06-193、SC06-249、SC06-273、SC06-389、SC06-403、SC06-406、SC06-410、SC06-446、SC06-450、SC06-452、SC06-453、SC06-464、SC06-471、SC06-516、SC06-517、SC06-526、SC06-528、SC06-531、SC06-533、SC06-536、SC06-537、SC06-538、SC06-540、SC06-544、SC06-566、SC06-625と呼ばれるscFvの重鎖可変領域は、酵素SfiI及びXhoIを用いた制限酵素消化によりベクターpIg-C911-HCγ1にクローニングされ、SC05-132、SC05-133、SC06-166、SC06-171、SC06-176、SC06-187、SC06-193、SC06-249、SC06-273、SC06-389、SC06-403、SC06-406、SC06-410、SC06-446、SC06-450、SC06-452、SC06-453、SC06-464、SC06-471、SC06-516、SC06-517、SC06-526、SC06-528、SC06-531、SC06-533、SC06-536、SC06-537、SC06-538、SC06-540、SC06-544、SC06-566、SC06-625と呼ばれるscFvの軽鎖可変領域は、酵素SalI及びNotIを用いた制限酵素消化によりベクターpIg-C909-Cκ又はpIg-C910-Cλにクローニングされる。その後、ヌクレオチド配列は従来から当業者にとって公知の標準的な技術に従って検証された。
【0124】
結果として生じる、抗ブドウ球菌ヒトIgG1重鎖をコードする発現プラスミドpgG102-430C03、pgG105-132C911、pgG105-133C911、pgG106-166C911、pgG106-171C911、pgG106-176C911、pgG106-187C911、pgG106-193C911、pgG106-249C911、pgG106-273C911、pgG106-389C911、pgG106-403C911、pgG106-406C911、pgG106-410C911、pgG106-446C911、pgG106-450C911、pgG106-452C911、pgG106-453C911、pgG106-464C911、pgG106-471C911、pgG106-516C911、pgG106-517C911、pgG106-526C911、pgG106-528C911、pgG106-531C911、pgG106-533C911、pgG106-536C911、pgG106-537C911、pgG106-538C911、pgG106-540C911、pgG106-544C911、pgG106-566C911及びpgG106-625C911、並びに、抗ブドウ球菌ヒトIg軽鎖をコードする発現プラスミドpSyn-C04-V12、pgG105-132C909、pgG105-133C909、pgG106-166C910、pgG106-171C910、pgG106-176C909、pgG106-187C909、pgG106-193C910、pgG106-249C910、pgG106-273C910、pgG106-389C910、pgG106-403C910、pgG106-406C910、pgG106-410C910、pgG106-446C910、pgG106-450C910、pgG106-452C909、pgG106-453C909、pgG106-464C910、pgG106-471C910、pgG106-516C909、pgG106-517C910、pgG106-526C910、pgG106-528C910、pgG106-531C910、pgG106-533C909、pgG106-536C909、pgG106-537C910、pgG106-538C910、pgG106-540C910、pgG106-544C910、pgG106-566C910及びpgG106-625C910は、293T細胞との組み合わせにより一過的に発現し、ヒトIgG1抗体を含む上澄みが得られる。CR2430、CR5132、CR5133、CR6166、CR6171、CR6176、CR6187、CR6193、CR6249、CR6273、CR6389、CR6403、CR6406、CR6410、CR6446、CR6450、CR6452、CR6453、CR6464、CR6471、CR6516、CR6517、CR6526、CR6528、CR6531、CR6533、CR6536、CR6537、CR6538、CR6540、CR6544、CR6566及びCR6625と呼ばれる抗体の重鎖の核酸配列は、夫々、配列ID番号:25配列ID番号:27、配列ID番号:29、配列ID番号:116、配列ID番号:118、配列ID番号:120、配列ID番号:122、配列ID番号:124、配列ID番号:126、配列ID番号:128、配列ID番号:130、配列ID番号:132、配列ID番号:134、配列ID番号:136、配列ID番号:138、配列ID番号:140、配列ID番号:142、配列ID番号:144、配列ID番号:146、配列ID番号:148、配列ID番号:150、配列ID番号:152、配列ID番号:154、配列ID番号:156、配列ID番号:158、配列ID番号:160、配列ID番号:162、配列ID番号:164、配列ID番号:166、配列ID番号:168、配列ID番号:170、配列ID番号:172及び配列ID番号:174に示される。CR2430、CR5132、CR5133、CR6166、CR6171、CR6176、CR6187、CR6193、CR6249、CR6273、CR6389、CR6403、CR6406、CR6410、CR6446、CR6450、CR6452、CR6453、CR6464、CR6471、CR6516、CR6517、CR6526、CR6528、CR6531、CR6533、CR6536、CR6537、CR6538、CR6540、CR6544、CR6566及びCR6625と呼ばれる抗体の重鎖のアミノ酸配列は、夫々、配列ID番号:26、配列ID番号:28、配列ID番号:30、配列ID番号:117、配列ID番号:119、配列ID番号:121、配列ID番号:123、配列ID番号:125、配列ID番号:127、配列ID番号:129、配列ID番号:131、配列ID番号:133、配列ID番号:135、配列ID番号:137、配列ID番号:139、配列ID番号:141、配列ID番号:143、配列ID番号:145、配列ID番号:147、配列ID番号:149、配列ID番号:151、配列ID番号:153、配列ID番号:155、配列ID番号:157、配列ID番号:159、配列ID番号:161、配列ID番号:163、配列ID番号:165、配列ID番号:167、配列ID番号:169、配列ID番号:171、配列ID番号:173及び配列ID番号:175に示される。CR2430、CR5132、CR5133、CR6166、CR6171、CR6176、CR6187、CR6193、CR6249、CR6273、CR6389、CR6403、CR6406、CR6410、CR6446、CR6450、CR6452、CR6453、CR6464、CR6471、CR6516、CR6517、CR6526、CR6528、CR6531、CR6533、CR6536、CR6537、CR6538、CR6540、CR6544、CR6566及びCR6625と呼ばれる抗体の軽鎖の核酸配列は、夫々、配列ID番号:31、配列ID番号:33、配列ID番号:35、配列ID番号:176、配列ID番号:178、配列ID番号:180、配列ID番号:182、配列ID番号:184、配列ID番号:186、配列ID番号:188、配列ID番号:190、配列ID番号:192、配列ID番号:194、配列ID番号:196、配列ID番号:198、配列ID番号:200、配列ID番号:202、配列ID番号:204、配列ID番号:206、配列ID番号:208、配列ID番号:210、配列ID番号:212、配列ID番号:214、配列ID番号:216、配列ID番号:218、配列ID番号:220、配列ID番号:222、配列ID番号:224、配列ID番号:226、配列ID番号:228、配列ID番号:230、配列ID番号:232及び配列番号:234に示される。CR2430、CR5132、CR5133 CR6166、CR6171、CR6176、CR6187、CR6193、CR6249、CR6273、CR6389、CR6403、CR6406、CR6410、CR6446、CR6450、CR6452、CR6453、CR6464、CR6471、CR6516、CR6517、CR6526、CR6528、CR6531、CR6533、CR6536、CR6537、CR6538、CR6540、CR6544、CR6566及びCR6625と呼ばれる抗体の軽鎖のアミノ酸配列は、夫々、配列ID番号:32、配列ID番号:34、配列ID番号:36、配列ID番号:177、配列ID番号:179、配列ID番号:181、配列ID番号:183、配列ID番号:185、配列ID番号:187、配列ID番号:189、配列ID番号:191、配列ID番号:193、配列ID番号:195、配列ID番号:197、配列ID番号:199、配列ID番号:201、配列ID番号:203、配列ID番号:205、配列ID番号:207、配列ID番号:209、配列ID番号:211、配列ID番号:213、配列ID番号:215、配列ID番号:217、配列ID番号:219、配列ID番号:221、配列ID番号:223、配列ID番号:225、配列ID番号:227、配列ID番号:229、配列ID番号:231、配列ID番号:233及び配列番号:235に示される。当業者であれば非特許文献17により、上述の抗体及び単鎖ファージ抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を判定することができる。当業者であれば非特許文献17、非特許文献5又はそれらの組み合わせにより、上述の抗体及び単鎖ファージ抗体の重鎖及び軽鎖のCDR領域を判定することができる。あるいは、可変及びCDR領域は、当業者には公知の抗体のデータベースであるVBASEデータベースを用いて判定することができる。この発明の抗体の配列を、VBASEデータベース(非特許文献16(MRC Centre for Protein Engineering :http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk))にある免疫グロブリン配列と比較して、それに基づき、可変領域及びCDR領域が判定される。いくつかの抗体の可変領域を表13に示す。ヒトの抗ブドウ球菌IgG1抗体は、scFvsにて具体的に説明したFACSにより、ブドウ球菌への結合性能について検証された(表14を参照せよ)。ネガティブコントロールは、抗西ナイルウィルス抗体(CR4374)である。あるいは、1mgを超える夫々の抗体のバッチを生産し、標準的な手法を用いて精製された。
【0125】
実施例7
(FACSにより測定されたin vitroでのブドウ球菌特異的な食作用食細胞活性)
抗ブドウ球菌IgGsの食作用活性は、新たに分化したHL-60細胞を用いた食作用食細胞(opsonophagocytotic(OPA))アッセイにより測定された。OPAアッセイの際には、蛍光細菌が分化したHL-60細胞及び連続的に希釈されたIgGに混合される。細菌は、ラベリングする前に、定常期又は対数増殖(log)期まで育てられる。細菌を定常期まで生育するために、異なるブドウ球菌分離株がヒツジ血液アガープレート上にて37℃で一晩培養される。細菌は、5mlの重炭酸塩バッファー(0.1M NaHCO
3、pH8.0)中に再懸濁され、室温にて10分間、800xg遠心分離することにより集められ、そして、2.9x10
9細菌/mlの濃度まで希釈された。対数増殖期まで生育した細菌は、まず、LB培地にて37℃で一晩培養され、そして、培養物を10回希釈してLB培地にて37℃で更に3時間培養した。細菌は、800xgで10分遠心分離することにより集められ、重炭酸塩バッファー中に再懸濁され、2.9x10
9細菌/mlの濃度となるまで洗浄される。50μlの5,6-カルボキシフルオレセイン、スクシンイミジルエステル溶液((FAM-SE;Molecular Probes社、ユージン、オレゴン);10mg/mlのジメチルスルホキシド(Fisher Scientific社、Fair Lawn、NJ)が、1mlで2.9xlO
9個の細菌に添加され、その混合物は振盪せずに、37℃で1時間培養された。ラベルされた細菌は、上澄みにフリーな染色液が観察されなくなるまで、20mlの食作用食細胞バッファー(Ca
2+、Mg
2+及び0.2%ウシ血清アルブミンを有するハンクス均衡塩類溶液)により3回洗浄される。FAM-SEラベルされた細菌は、8mlのOPAバッファーに再懸濁され、それを500μlの分液として、無光条件にて−20℃で保存される。
【0126】
HL-60細胞(ヒト骨髄球白血病細胞; ECACC NO 98070106)は、10%の熱失活された胎児牛血清(HyClone Laboratories社、ローガン、ユタ)及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加した2mMのL-グルタミンを含むRPMI1640培地で、1〜9×10
9細胞/mlの細胞濃度にて生育される。6〜35回継代した細胞が分化に供される。細胞は、5×10
-7M全トランスレチン酸(シグマ)、6×10
-12MビタミンD3(シグマ)及び30ng/mlヒト組換えG-CSF(R&D)を添加した培地にて培養することにより、顆粒白血球に分化させられる。HL-60細胞は、10分間160xgにて遠心分離することにより集められ、15mlの洗浄バッファー(Ca
2+及びMg
2+を有さないが、0.2%ウシ血清アルブミンを有するハンクス均衡塩類溶液)で2回洗浄される。細胞は食作用食細胞バッファーにより1回洗浄され、4mlの食作用食細胞バッファーに再懸濁され、細胞数は血球計算版により数えられた。細胞濃度は、5×10
6細胞/mlに調節された。
【0127】
抗ブドウ球菌IgGs及びコントロールIgG(CR4374)は、全量を20μlとして食作用食細胞バッファーに連続的に希釈し、IgG濃度が、2.50μg/ml、1.20μg/ml、0.60μg/ml、0.30μg/ml、0.15μg/ml、0.075μg/ml、0.00375μg/ml及び0.0019μg/mlとなった希釈液を得た。希釈液の食作用活性が、1%BSAのPBSでブロッキングされた、円形の底を有するプレートにてOPAアッセイにより測定された。コントロールでは、IgG無しでアッセイが実施された。5.4×10
6個の細胞を有する15μl分量の細胞懸濁液は、プレート上の各ウェルに添加された。S.aureusのCowan株又はS.epidermidisの細胞懸濁液が使用される場合には、まず、IgG/細胞懸濁液を、37℃にて、Heidolph titramax 1000を用いてプレートを(1300rpmにて)水平に振盪しつつ、30分培養する。次いで、15μlの分化したHL-60細胞(全細胞数:75×10
3個)をプレートの各ウェルに添加し、プレートを浸透しつつ37℃にて30〜45分培養する。ウェルの最終量は50μlである。反応は、4% v/v ホルムアルデヒドを含む洗浄バッファーを50μl添加することにより止められる。各ウェル内の内容物は再懸濁され、フローサイトメータ分析のために、ポリスチレンディスポーザブルチューブ内に移される。試料は分析に供されるまで、4℃の暗所にて保存される。チューブは、フローサイトメータ内でサンプリングされる前に、3秒間ボルテックスされる。HL-60細胞の分化を制御するために、補体レセプターCD11bの発現が測定される。分化した又は未分化の細胞におけるFcレセプターは、まず、ウサギのIgGにより氷上で15分間ブロッキングされ、次いで、細胞はCD11bAPC(BD)により氷上で15分間ラベルされる。平均蛍光強度(MFI)が分化細胞のそれと比較して、10〜100倍強い場合には、細胞は適当に分化したものとして考えられる。試料は、FACSキャリバ免疫サイトメトリシステム(Becton Dickinson and Co., Paramus, NJ)によりアッセイされ、CELLQuest software(version 1.2 for Apple system 7.1; Becton Dickinson社)により分析された。ゲートされた7000のHL-60顆粒白血球は、チューブごとに分析された。FAM-SEは、周波数488nmにて励起され、ゲートした生存可能なHL-60細胞のFAM-SE蛍光シグナルが夫々の抗体希釈液について測定される。食作用アッセイにおいて、濃度依存的な食作用(ファゴサイトーシス)が、コントロールIgGのそれよりも大きい又は2倍である場合に、IgGがポジティブであるとして定義される。IgGのCR2430、CR5132及びCR5133は、対数増殖期(
図1を参照)及び定常期(
図2を参照)の双方において、S.aureusのCowan株に対して食作用活性を示した。3種のIgGは、生育過程の対数増殖期にてより効果的に食作用活性を向上させる。IgGのCR5132及びCR51330は、ナガティブコントロールの抗体に比べ、S.aureusのSA125株の食作用(ファゴサイトーシス)を向上させ(
図3参照)、抗体CR5133は、ナガティブコントロールの抗体に比べ、分化したHL60細胞のS.epidermidisのSE131株に対する食作用活性を顕著に向上させる(
図4参照)。
【0128】
実施例8
(ブドウ球菌特異的IgG1結合活性の範囲)
選抜されたヒトの抗ブドウ球菌IgG1抗体のターゲットがどの程度、ブドウ球菌及びその他のグラム陽性細菌に保存されているかを判定するため、scFvについて具体的に上記したように、臨床細菌分離物の拡張された一団に対し、FACSアッセイを実施した(表15参照)。かかるアッセイの結果から、CR5132及びCR5133は、試験に供された全菌株に対し結合するものと推定される。実際に、CR5410は、S. hominis KV111、S. warneri KV112、S. warneri KV114、S. epidermidis KV115、S. haemolyticus KV117、S. warneri vd65、S. warneri vd66、S. warneri vd732、S. hominis vd136、S. hominis vd139及びS. hominis K136以外の試験された全ての菌株に結合した。また、CR6171は、S. epidermidis KV110、S. hominis KV111、S. warneri KV112、S. saprophytocis KV113、S. warneri KV114、S. haemolyticus KV117、S. hominis KV118、S. haemolyticus K119、S. warneri vd65、S. warneri vd66、S. warneri vd732、S. hominis vd136、S. hominis vd139及びS. hominis K136以外の試験された全ての菌株に結合した。更に、CR6453は、S. hominis vdl36及びS. hominis K136以外の試験された全ての菌株に結合した。
【0129】
また、同様のFACSに基づくアプローチにより、一連の抗体は、その他のグラム陽性細菌に結合することが示された。抗体のCR5132及びCR6453は、Listeria monocytogenes、Bacillus cereus及びStreptococcus group Aに結合することが示され、更に、CR5132はPropionibacterium sppにも結合することが示された。抗体のCR5133及びCR5140は、Streptococcus group Aに結合することが示され、更に、CR5132はEnterococcus faecalisにも結合することが示された(データは示さず)。
【0130】
実施例9
(食作用食細胞殺活性アッセイ(OPKA)により測定されたin vitroでのブドウ球菌特異的な食作用食細胞活性)
一連の抗体の機能的な活性をより好適に判定するために、食作用食細胞アッセイが実施され、抗ブドウ球菌ヒトIgG1のStaphylococcus aureusの502株、Mn8株及びNewman株、並びに、Staphylococcus epidermidisのM187株に対する殺活性を定量した。採血したてのヒトの血液(10〜30ml)がそれと等量のデキストランヘパリンバッファー(4.5gのデキストラン、Sigma Chemical、セントルイス; 500mlの蒸留水に溶解した28.4mgのヘパリンナトリウム)に混合され、かかる混合液が37℃にて1時間インキュベートされる。白血球を含んでいる上層は遠心分離によって集められ、残留する赤血球の低張溶解は、細胞ペレットの1%(w/v)NH
4CIによる懸濁により達成された。その後、白血球の集団は、15%(v/v)胎児牛血清を有するRPMIにより洗浄された。トリパンブルー染色及び血球計により計測により、生きている白血球の濃度を決定し、白血球濃度を最終的に2x10
7細胞/mlに調整した。ファゴサイトーシスアッセイは、(分光測定法により濃度を2x10
7/mlに調整し、生菌計測により確かめられた)100μlの細菌、RPM1に希釈した100μlの抗ブドウ球菌ヒトIgG1及び100μlの乳児ウサギ補体に、白血球懸濁液を添加したもの及び添加していないものについて、2回実施された。反応混合液は、37℃のローターラックにて90分間インキュベートされ、試料は0分及び90分後に採られ、1%のプロテオースペプトン(Difco Laboratories, Detroit, Mich.)に希釈され、トリプシン性大豆アガープレート上にプレーティングされる。抗体の殺活性(%)は、白血球を含む試料内のCFU生存数の平均値から白血球を含まない試料内のCFU生存数の平均値を差し引き、それを後者で除算し、100を乗算することにより測定される。抗ブドウ球菌ヒトIgG1の殺活性は、1250及び12.5ng/mlの2つの濃度にて試験された(表16参照)。
【0131】
その結果、CR5132、CR5133、CR6446、CR6453及びCR6566は、低濃度の12.5ng/mlにおいてもS.epidermidisのMl87株に対して20%の殺活性を示した。
【0132】
実施例10
(IgG1競合アッセイ)
一連の抗体が、同一のターゲットへの結合に競合しているか否かを確認するために、競合ELISAを実施した。S.epidermidisのSE132株は血液アガープレート上にストリークされ、37℃にて一晩インキュベートした。5mlの50mM炭酸塩バッファー(8容量の0.2M Na
2CO
3、17容量の0.2M NaHCO
3及び75容量の蒸留水)を使用して、プレートからコロニーがかきとられ、4000rpmにて3分間遠心分離された。得られたペレットは、500μlの炭酸塩バッファーに再懸濁され、再度遠心分離され、ペレットは500μlの炭酸塩バッファーに再懸濁された。細胞濃度はOD600にて細菌の希釈シリーズを測定することにより判定された。S.epidermidis株は、5×10
9細胞/ml濃度に希釈され、ウェルごとに100μl(5×10
8細胞)が、Nunc-Immuno Maxisorp F96プレート上で4℃にて一晩被覆された。インキュベーション後に、ウェルはPBSにて3回洗浄され、300μlの2%(v/v)ELKを含むPBSにより室温にて1時間ブロッキングされる。夫々の分離したチューブに対し、25μlの(上述のように製造した)scFvファージmaxiprepを混合して(上述のELISAにより判定された)低飽和水準まで希釈され、25μlのブロッキングバッファー(4%(v/v)ELK/PBS)及び50μlのPBS中にて20μg/mlに希釈されたIgG1上澄みに混合され、氷上にて20分間インキュベートした。ブロッキング溶液を除去した後には、100μlのブロッキングされたファージ及びIgG1の混合物が夫々のウェルに添加され、室温にて1時間インキュベートされた。ウェルはPBS/0.01%(v/v)Tweenにより3回、そして、PBSにより1回洗浄される。洗浄後、(0.01%(v/v)ELKを含むPBS中にて1:5000となる)100μlの抗M13 HRPが各ウェルに添加され、室温にて60分間インキュベートされる。ウェルは再度洗浄され、100μlのOPD溶液を各ウェルに添加することにより染色が可視化される。5〜10分後に、各ウェルに50μlの1M H
2SO
4を添加することにより、反応は止められ、そしてOD492nmが測定された。一連の全抗体及びコントロールのIgG1 CR4374について実験は2回繰り返された。その結果、抗体は5つの異なるグループに分けられた。グループAは、CR5132、CR5133、CR6187及びCR6453からなり、グループBは、CR5140及びCR6171からなり、グループCは、CR6176からなり、グループDは、CR6526からなり、Group Eは、残りの一団である、CR6166、CR6193、CR6249、CR6273、CR6403、CR6406、CR6410、CR6446、CR6450、CR6452、CR6464、CR6471、CR6516、CR6517、CR6528、CR6531、CR6533、CR6536、CR6537、CR6538、CR6540、CR6544、CR6566及びCR6625からなる。抗体の結合活性及び機能活性は分けられたグループと整合していた。
【0133】
実施例11
(グループAのIgG1のターゲットの特定)
一連の抗体の結合ターゲットを判定するために、上述したように決定した各グループの典型例(各グループにおいて、食作用活性について最も強力な抗体を選択した)を、固相ELISA内にて、S.aureusから抽出したLTAとともにインキュベートした(表17参照)。1μg/mlのリポテイコ酸(シグマ)を含むPBSの溶液は、室温にて一晩被覆される。プレートはPBSにより1回洗浄され、、400μl 2%(v/v) ELKを含むPBSによりブロッキングされる。各抗ブドウ球菌IgG1上澄み、ネガティブコントロール上澄みCR4374、及びポジティブコントロール抗LTAマウスmAb12248(Abcam)の連続希釈液は、室温にて1時間、ウェル毎にインキュベートされる。ウェルはPBSにより5回洗浄され、PBSに溶解した100μlの抗ヒトHRP(1/2000)又は抗マウスHRP(1/2000)が添加され、室温にて1時間インキュベートされる。上述の如く、ウェルは可視化され、読み込まれる。その結果から、グループAからのCR5133は、LTAに協力に結合することが明示された。ポジティブコントロールのネズミモノクローナル12448は、同様の結果を示した。それに対し、その他のグループからの抗体及びネガティブコントロールはいずれも、LTAとの顕著な反応を示さなかった。グループAからの抗体CR5132及びCR6453は、定常的にLTAに結合することを示したが、CR6187はLTAへの結合活性を示さなかった(データは示さず)。このことは、CR6187の親和性が、グループ内のその他の抗体のそれと比べて低いためであると思われる。
【0134】
実施例12
(食作用食細胞殺活性アッセイ(OPKA)により測定された、ブドウ球菌特異的IgGsの、異なる培養条件にて生育されたStaphylococcus Epidermidis及びStaphylococcus aureusに対するin vitroでの食作用活性)
上述の同定された食作用食細胞抗ブドウ球菌IgG1抗体の最も強力で競合的な抗菌活性が、細菌の生育条件の違いにより影響されるかを判定するために、異なる培地及び生育条件にあるStaphylococcus aureusのNewman株及びStaphylococcus epidermidisのRP62A株に対し、上述の食作用食細胞アッセイが実施される。LBAは、感染した患者からとられら免疫血清であり、ポジティブコントロールとして使用される。抗ブドウ球菌ヒトIgG1の殺活性は、中間対数増殖期(
図5A、B)又は定常期(
図5G、H)、或いは、培地に1%グルコースを含む(
図5C、D)又は100ヒト血漿を含む(
図5E、F)にある両ブドウ球菌株に対し、10000、300、10、0.3、0.01 ng/ml又は-5、-6.5、-8、-9.5、-11 log(g/ml)の5つの濃度で試験された。
【0135】
その結果から、抗体CR5133、CR6166、CR6171、CR6176及びCR6526が、試験された任意の生育条件下において2種のブドウ球菌株に対して強力な食作用食細胞活性を有することが示された。重要なことに、それらは、活性を殆ど又は全く示さないネガティブコントロールの抗体CR3009とは顕著に異なる。このことは、一連の抗体のターゲットが、細菌の多様な生育条件下において安定して発現しており、治療的な用途に大変に重要な因子が、ターゲットの細菌が栄養が不足した条件下にも存在していることを示唆している。
【0136】
実施例13
(ブドウ球菌チャレンジモデルにおける、ブドウ球菌特異的なIgGsのin vivo保護活性)
マウスにおける細菌滴定実験は、80%-100%の致死をもたらす最適接種投与量を決定するために実施される。動物は、S.aureusのMn8株の投与量を5×10
9及び5×10
8にて、腹腔内接種を受ける。動物は5日間観察され、生存したものは終結したものとして用いられる。5日後に0%生存となる投与量は、更なる実験のためのチャレンジ投与量として選択される。
【0137】
上述の全ての細菌接種についての投与量決定により、in vitroでの食作用食細胞活性を示した、mAbに結合しているブドウ球菌の一団(CR5133、CR6166、CR6171、CR6176及びCR6526)における保護活性を評価するために、一群のチャレンジ実験が実施される。夫々の実験において、精製したmAb(1つのイソタイプコントロールIgGl及び5つの試験IgGl)が、投与量15mg/kgにて(PBSに含まれている0.5〜1.0mlを)、腹腔内注射される。
【0138】
24時間後に動物は、上述にて決定した摂取量にて、S.aureusの菌株を腹腔内接種される。接種の直前には、少量の血液(〜50〜100ml)が(テールカット法により)集められ、循環している抗体水準が測定される。血液は、血液が凝固するよう室温にて30分から2時間維持され、そして、4℃にて5分間遠心分離した。血清が取り除かれ、-20℃にて保存される。IgG1 ELISAは、接種前、又は殺した後に、全ての血液サンプルに対し実施される。接種前に、血液内で測定可能な抗体値を示さない動物は、更なる分析対象から除外される。
【0139】
マウスは、5日間毎日観察され、激しい苦痛を示したときに殺した。5日間経過後に、夫々のグループにおいて生き残ったものが数えられた。夫々の実験を検証するためには、ネガティブコントロールUgG1グループにて20%以上が生き残る必要がある。上述したモデルにおいて、抗体が、10mg/kgからの半分のログ投与量にて滴定して、in vivoでの保護効果を判定する、更なる実験が実施された。
【0140】
表1には、ヒトのラムダ鎖可変領域の(センス鎖の)プライマーを示す。
【0141】
【表1】
【0142】
表2には、ヒトのカッパ鎖可変領域の(センス鎖の)プライマーを示す。
【0143】
【表2】
【0144】
表3には、(センス鎖の)SalI制限酵素配列を付加して延ばしたヒトのカッパ鎖可変領域プライマー、(アンチセンス鎖の)NotI制限酵素配列を付加して延ばしたヒトのカッパ鎖J領域プライマー、(センス鎖の)SalI制限酵素配列を付加して延ばしたヒトのラムダ鎖可変領域プライマー、(アンチセンス鎖の)NotI制限酵素配列を付加して延ばしたヒトのラムダ鎖J領域プライマーを示す。
【0145】
【表3】
【0146】
表4は、アガロースゲル分析により測定される濃度に基づく、最終混合物における異なる軽鎖生成物の比率を示す。
【0147】
【表4-1】
【表4-2】
【0148】
表5は、ヒトのIgG鎖可変領域の(センス鎖の)プライマーを示す。
【0149】
【表5】
【0150】
表6には、(センス鎖の)SfiI/NcoI制限酵素配列を付加して延ばしたヒトのIgG重鎖可変領域プライマー、及び、(アンチセンス鎖の)XhoI/BstEII制限酵素配列を付加して延ばしたヒトのIgG重鎖J領域プライマーを示す。
【0151】
【表6】
【0152】
表7は、最終混合物における異なる重鎖産物の比率を示す。
【0153】
【表7】
【0154】
表8は、アンチブドウ球菌単鎖(scFv)ファージ抗体の選抜及びスクリーニングに使用したブドウ球菌の臨床分離株を示す。
【0155】
【表8-1】
【表8-2】
【0156】
表9は、FACSにより測定された単鎖(scFv)ファージ抗体のブドウ球菌特異的な結合活性を示す。
【0157】
【表9】
【0158】
表10は、492nmにてELISAにより測定された、ブドウ球菌反応性単鎖(scFv)ファージ抗体の非特異的な結合活性を示す。
【0159】
【表10】
【0160】
表11は、Staphylococcus特異的な単鎖Fvsのデータを示す。
【0161】
【表11】
*括弧内に、アミノ酸が重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を形成していることを示す。
【0162】
表12は、Staphylococcus特異的な単鎖FvsのCDR領域のデータを示す。
【0163】
【表12】
【0164】
表13は、Staphylococcus特異的なIgGsのデータを示す。
【0165】
【表13】
*括弧内に、アミノ酸が重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を形成していることを示す。
【0166】
表14は、FACSにより測定された、IgG1分子のブドウ球菌特異的な結合活性を示す。
【0167】
【表14】
ND:測定不可
【0168】
表15は、FACSにより測定された、IgG1抗体のブドウ球菌特異的な結合活性を示す。
【0169】
【表15-1】
【表15-2】
【0170】
表16は、OPKAにより測定された、IgG1抗体のブドウ球菌殺活性を示す。
【0171】
【表16】
【0172】
表17は、ELISAより測定された、IgG1抗体のLTA結合活性を示す。
【0173】
【表17】