特許第5959580号(P5959580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959580改良された特性を有する多層光学フィルム構造体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959580
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】改良された特性を有する多層光学フィルム構造体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20160719BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20160719BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20160719BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G02B5/02 B
   G02B5/04 A
   G02B1/04
   C08J5/18CER
   C08J5/18CEZ
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-146746(P2014-146746)
(22)【出願日】2014年7月17日
(62)【分割の表示】特願2009-139863(P2009-139863)の分割
【原出願日】2009年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-240965(P2014-240965A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2014年8月15日
(31)【優先権主張番号】08010562.0
(32)【優先日】2008年6月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ・プートライナー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ニッケル
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ブラウン
【審査官】 吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−215174(JP,A)
【文献】 特開昭60−139751(JP,A)
【文献】 特表2008−509447(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/022905(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/039131(WO,A1)
【文献】 特表2009−510237(JP,A)
【文献】 特開2003−313445(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/045380(WO,A1)
【文献】 特表2009−512747(JP,A)
【文献】 特開平02−163155(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0151230(US,A1)
【文献】 特表2009−506143(JP,A)
【文献】 特表2009−506145(JP,A)
【文献】 特開平11−005241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプリズムフィルムおよびディフューザーフィルムおよび多層光学フィルムを備えるフィルム構造体であって、前記多層光学フィルムが前記少なくとも一つのプリズムフィルムおよび/またはディフューザーフィルムに向けられた外層を有する少なくとも一つのトップフィルムを備え、前記外層が透明熱可塑性樹脂および滑剤としての少なくとも一種類のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩を含有するプラスチック組成物からなり
前記少なくとも一つのプリズムフィルムが前記多層光学フィルムを向くプリズム構造を有し、
前記多層光学フィルムの前記外層が5μmより大きいISO 4288によって測定される粗さR3zで、ASTM D 1894−06によって測定される前記少なくとも一つのプリズムフィルムの前記プリズム構造に対して平行に0.25以下の滑り摩擦係数、および前記少なくとも一つのプリズムフィルムの前記プリズム構造に対して横向きの0.30以下の滑り摩擦係数を有する、フィルム構造体。
【請求項2】
前記外層が、ISO4288によって測定される、5μmより大きく、8.7μm以下の粗さR3zを有する請求項1記載のフィルム構造体。
【請求項3】
前記多層光学フィルムが、ナフタレンジカルボン酸および/またはテレフタル酸ポリエステルからなる多層膜を備える光学ベースフィルムを備える、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項4】
多層光学フィルムが外層を有する二つのトップフィルムを備え、前記二つのトップフィルムは光学ベースフィルムの両側にラミネートされる請求項3記載のフィルム構造体。
【請求項5】
前記プラスチック組成物が、透明熱可塑性樹脂96〜99.89重量%を含む、請求項1記載のフィルム構造体。
【請求項6】
前記透明熱可塑性樹脂が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、シクロオレフィンコポリマー、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド、ポリカーボネート/ポリシクロヘキシルメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート、およびポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項7】
前記滑剤として使用される少なくとも一種類のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩の一種類以上が式(I)
R−SONR’R’’R’’’R’’’’ (I)
(式中、
R は、炭素原子を1〜30個有するペルフルオロ環状または直鎖、分枝もしくは非分枝炭素鎖であり、
R’ は、炭素原子を1〜30個有する非置換またはハロゲン−、ヒドロキシ−、シクロアルキル−、もしくはアルキル−置換、環状または直鎖、分枝もしくは非分枝炭素鎖であり、
かつ
R’’、R’’’、およびR’’’’ は、互いに独立して、炭素原子を1〜30個有し、任意にハロゲン、ヒドロキシ、シクロアルキル、もしくはアルキルで置換されていてもよい環状または直鎖、分枝もしくは非分枝炭素鎖である。)
のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩である、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項8】
前記少なくとも一種類のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩が、ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジイソプロピルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩、N−メチルトリプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、N−エチルトリプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、テトラプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、ジメチルジイソプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、N−メチルトリブチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネート、シクロヘキシルジエチルメチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネート、およびシクロヘキシルトリメチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネートからなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項9】
前記少なくとも一種類のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩がジイソプロピルジメチルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネートである、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項10】
前記多層光学フィルムの厚さが50μm〜1000μmである、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項11】
前記多層光学フィルムの前記外層の厚さが1μm〜150μmである、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項12】
請求項1に記載のフィルム構造体を備える液晶スクリーン用バックライトユニット。
【請求項13】
請求項1に記載のフィルム構造体を備えるフラットスクリーン用光学フィルムセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年6月11日提出の欧州特許出願第08010562.0号(これは有用な目的のために参照することによって本明細書中に完全に組み込まれる。)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、改良された特性を有する多層光学フィルム構造体およびその液晶ディスプレイ(LCD)における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多層フィルムコンポジット、特に多層光学フィルム、は、多くの商業的応用のためにますます重要になっている。応用の一つの分野は、液晶スクリーンである。これらは実質的に、二つの構成部分:光を生じ種々の光学層によって変更するバックライトユニットおよびLCD(液晶ディスプレイ)を含む。これは、赤色、緑色および青色のフィルターおよび液晶を含み、これらは細かい電流パルスによって交互に活性化され、光が通過することを可能にする。
【0004】
原則として、LCDにおける直接光システムを備えるバックライトユニット(BLU)は、以下に示される構造を有する。一般的に、バックライトユニットは、サイズに依存してさまざまな数の蛍光灯(CCFL(冷陰極蛍光ランプ)として知られている。)が中に配置されているハウジングからなる。ハウジングの内側は光反射面を有する。厚さ1〜3mm、好ましくは厚さ2mmのディフューザーシートがこの照明システムの上部に位置する。このディフューザーシートの上部には一組のプラスチックフィルムがあり、これが生じる光を最適化する。ディフューザーフィルムはディフューザーシートと同様に光を均一に散乱するので、蛍光灯の縞模様がぼやける。均質な照明がこのようにして達成されうる。次にプリズムフィルムまたは輝度上昇フィルム(BEF)がある。さまざまな角度から入る入射光が直接LCDの方向に向くようにその表面をテクスチャ加工する。プリズムフィルムの上部に、通常、デュアル輝度上昇フィルム(dual brightness enhancing film,DBEF)として知られている別の光学フィルムがある。DBEFは、正確に直線偏光した光であって、LCD中の結晶に利用されうる光のみを通過させる。別の方向性を有する光はDBEFにおいてハウジングの内側の反射面に反射され、ここからもう一度DBEFの方向に反射される。このようにしてDBEFは正確に偏光された光の収率を増加させ、従って、BLUの効率を上げる。直線偏光フィルムは、トップのLCディスプレイの真下に位置する。
【0005】
フラットスクリーンにおけるディフューザーシートおよびディフューザーフィルムに使用される光散乱プラスチック組成物は、例えばWO 2007/039130 A1(特許文献1)およびWO 2007/039131 A1(特許文献2)に記述されている。
【0006】
反射偏光子(DBEF)は先行技術で知られている。WO 1996/19347(特許文献3)において、例えば、多層光学フィルムが反射偏光子として記述されている。
【0007】
この特許およびUS 5,783,283(特許文献4)およびWO 1997/32726(特許文献5)において、更に、特に、ポリエチレンナフタレート(PEN)とポリエチレンテレフタレート(PET)との交互層を有するコンポジットが、PETまたはPENのいずれかからつくられる一体フィルムよりも高い延伸比を有することがいわれている。更に、表面粗度、曇り度および摩擦係数が制御可能であり、更なる滑剤がなくても、フィルム層として半結晶熱可塑性樹脂を使用することによって調節されうることが開示されている。フィルムの機械的特性および加工性は、このようにして改良されうる。
【0008】
本願の分野は、光学フィルムの加工性および別の特性に高い要求を突きつけている。例えば、DBEFの表面における望ましくない引掻きまたはプリズムフィルムもしくはディフューザーフィルムへのダメージが、バックライトユニットのアッセンブリにおけるフィルムの重ね合わせ中または輸送中に生じうる。
【0009】
BLU中の常套のフィルム構造体においてDBEFがプリズムフィルムのピークに置かれるので、引掻き中につくられるすり減らされたものがプリズムフィルムの光学性能を低下させる。なぜなら、すり減らされたものがリブ付きプリズム構造の溝にたまるからである。加えて、プリズムフィルムの光の方向を定める機能は、ピークの形状に大いに影響される。プリズムフィルム上のDBEFフィルムの摩擦は、ピークをすり減らし、従って、次に、プリズムフィルムの品質および性能を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2007/039130号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/039131号パンフレット
【特許文献3】国際公開第1996/19347号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5,783,283号明細書
【特許文献5】国際公開第1997/32726号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、上記問題を解消し、改良された特性を有する光学フィルム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、少なくとも一つのプリズムフィルムおよび/またはディフューザーフィルムおよび多層光学フィルムを備えるフィルム構造体であって、前記多層光学フィルムが前記少なくとも一つのプリズムフィルムおよび/またはディフューザーフィルムに向けられた外層を有する少なくとも一つのトップフィルムを備え、かつ、透明熱可塑性樹脂および滑剤としての少なくとも一種類のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩を含有するプラスチック組成物から製造される、前記外層が5μmより大きいISO 4288に従って測定される粗さR3zで前記少なくとも一つのプリズムフィルムおよび/またはディフューザーフィルムに対して0.30未満の少なくとも一つの滑り摩擦係数(ASTM D 1894−06に従って測定される。)を有する、フィルム構造体である。
【0013】
本発明の別の態様は、前記少なくとも一つのプリズムフィルムが前記多層光学フィルムの方向を向くプリズム構造を有し、前記多層光学フィルムの外層が5μmより大きい粗さR3z(ISO 4288によるR3z。)で前記少なくとも一つのプリズムフィルムの前記プリズム構造に対して平行に0.25以下の滑り摩擦係数および前記少なくとも一つのプリズムフィルムの前記プリズム構造に対して横向きの0.30以下の滑り摩擦係数(いずれもASTM D 1894−06に従って測定される。)を有する、上記フィルム構造体である。
【0014】
本発明の別の態様は、前記多層光学フィルムがナフタレンジカルボン酸および/またはテレフタル酸ポリエステルからなる多層膜を備える光学ベースフィルムを備える、上記フィルム構造体である。
【0015】
本発明の別の態様は、前記プラスチック組成物が透明熱可塑性樹脂96〜99.89重量%および滑剤としてのペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩0.001〜4.0重量%を含み、これらの成分の総重量%が100重量%である、上記フィルム構造体である。
【0016】
本発明の別の態様は、前記透明熱可塑性樹脂が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、シクロオレフィンコポリマー、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド、ポリカーボネート/ポリシクロヘキシルメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート、およびポリカーボネート/PBTからなる群から選択される、上記フィルム構造体である。
【0017】
本発明の別の態様は、前記滑剤として使用される少なくとも一種類のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩の一種類以上が式(I)
R−SONR’R’’R’’’R’’’’ (I)
(式中、
R は、炭素原子を1〜30個有するペルフルオロ環状または直鎖、分枝もしくは非分枝炭素鎖であり、
R’ は、炭素原子を1〜30個有する非置換またはハロゲン−、ヒドロキシ−、シクロアルキル−、もしくはアルキル−置換、環状または直鎖、分枝もしくは非分枝炭素鎖であり、
かつ
R’’、R’’’、およびR’’’’ は、互いに独立して、炭素原子を1〜30個有し、任意にハロゲン、ヒドロキシ、シクロアルキル、もしくはアルキルで置換されていてもよい環状または直鎖、分枝もしくは非分枝炭素鎖である。)
のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩である、上記フィルム構造体である。
【0018】
本発明の別の態様は、前記少なくとも一種類のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩が、ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジイソプロピルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロブタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩、N−メチルトリプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、N−エチルトリプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、テトラプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、ジメチルジイソプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、N−メチルトリブチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネート、シクロヘキシルジエチルメチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネート、およびシクロヘキシルトリメチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネートからなる群から選択される、上記フィルム構造体である。
【0019】
本発明の別の態様は、前記少なくとも一種類のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩がジイソプロピルジメチルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネートである、上記フィルム構造体である。
【0020】
本発明の別の態様は、前記多層光学フィルムの厚さが50μm〜1000μmである、上記フィルム構造体である。
【0021】
本発明の別の態様は、前記多層光学フィルムの前記外層の厚さが1μm〜150μmである、上記フィルム構造体である。
【0022】
本発明の別の態様は、前記トップフィルムが前記外層に加えて少なくとも一つの同時押出層を備える、上記フィルム構造体である。
【0023】
本発明の別の態様は、前記同時押出層の厚さが10μm〜100μmである、上記フィルム構造体である。
【0024】
本発明の更なる別の態様は、上記フィルム構造体を備える液晶スクリーン用バックライトユニットである。
【0025】
本発明の更なる別の態様は、上記フィルム構造体を備えるフラットスクリーン用光学フィルムセットである。
【0026】
発明の詳細な説明
この目的は、少なくとも一つのプリズムフィルムおよび/またはディフューザーフィルム並びに多層光学フィルムを備える請求項1に記載のフィルム構造体であって、多層光学フィルムがプリズムフィルムおよび/またはディフューザーフィルムに向けられた少なくとも一つのトップフィルムであって、透明熱可塑性樹脂および滑剤としてのペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩を含むプラスチック組成物からつくられた外層を有するトップフィルムを有し、外層が5μmより大きい粗さR3z(ISO 4288によるR3z。)でASTM D 1894−06によって測定されるプリズムフィルムおよび/またはディフューザーフィルムに対して0.30未満の少なくとも一つの滑り摩擦係数を有する外層を有する、フィルム構造体による本発明によって達成される。
【0027】
本発明によるそのようなフィルム構造体は、引掻きおよびダメージに対する優れた耐性と共に特に良好な生産性および加工性を有する。このようにして、欠陥のある製品の数が著しく減少し、その耐久性が大きくなる。特に、フィルム構造体の光学性能および品質が改良されうる。
【0028】
好ましい態様において、プリズムフィルムは多層光学フィルムの外層を向くプリズム構造を有し、多層光学フィルムの外層は5μmより大きい粗さR3z(ISO 4288によるR3z。)でプリズムフィルムのプリズム構造に対して平行に0.25以下の滑り摩擦係数およびプリズムフィルムのプリズム構造に対して横向きに0.30以下の滑り摩擦係数(いずれもASTM D 1894−06に従って測定される。)を有する。
【0029】
意外なことに、本発明によるフィルム構造のこの態様で特性が更に改良されることがわかった。プリズムフィルムのプリズム構造の配向性が多層光学フィルムの滑り摩擦係数の調節において考慮されるフィルム構造体は、更に改良された加工性およびフィルムコンポジットにおける引掻きまたはダメージに対する耐性を示す。本発明によるフィルム構造体におけるプリズムフィルムの光の方向を定める機能が有利に特に良好であり、すり減らされたものが減少するために品質および光学性能が先行技術のフィルム構造体よりも非常に長く保持される。
【0030】
本発明によると、さまざまな方向から入る入射光の向きをテクスチャ加工された表面による特定の方向に定められ、かつ、LCDにおける輝度上昇フィルム(BEF)として好適であるあらゆるフィルムがプリズムフィルムとして使用される。プリズムフィルムの表面は、溝とピークとを交互に備える構造を有する。
【0031】
本発明による多層光学フィルムは、好ましくは、多層押出品であって、例えば特許明細書US 5,783,28または公開特許出願WO 97/32726もしくはWO 96/19347によって製造されうる多層押出品を光学部品として備える。光学部品は、好ましくは、ナフタレンジカルボン酸ポリエステルとテレフタル酸ポリエステルとからなる多層膜である。この発明によると、この光学部品は、更にベースフィルムまたはベース層としても記述されている。この発明によると少なくとも一つの熱可塑性フィルムがトップフィルムとしてベースフィルムにラミネートされる。この発明によると、テクスチャ加工された熱可塑性フィルムは、好ましくはサンドイッチタイプの構造が形成されるようにベースフィルムの両側にトップフィルムとしてラミネートされる。
【0032】
本発明による多層光学フィルムは、特に有利には例えば液晶ディスプレイ(LCD)において反射型偏光フィルムとして使用される(デュアル輝度上昇フィルム(DBEF)として知られている。)。
【0033】
本発明によると熱可塑性トップフィルムは、単層構造を有していても多層構造を有していてもよい。トップフィルムが単層構造を有する場合、本発明によるトップフィルムは、外層に対応する。トップフィルムが、例えば同時押出によって、多層構造を有する場合、プリズムフィルムおよび/またはディフューザーフィルムを向く最も外側のフィルム層が外層として記述される。プリズムフィルムを向く外層は、5μmより大きい粗さR3z(ISO 4288によるR3z。)でプリズムフィルムのプリズム構造に平行に0.25以下の滑り摩擦係数およびプリズムフィルムのプリズム構造に横向きの0.30以下の滑り摩擦係数(それぞれASTM D 1894−06によって測定。)を有する。
【0034】
本発明によると「プリズム構造に対して横向きの」は、プリズムフィルムのプリズムリブによって形成される溝およびピークに対して向きが垂直、すなわち90°、であることを意味すると理解される。本発明によると「プリズム構造に対して平行に」は向きがプリズムリブの溝およびピークに対して平行であることを意味すると理解される。
【0035】
好ましい態様において、外層は、透明熱可塑性樹脂96〜99.89wt.%および滑剤としてのペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩0.001〜4.0wt.%(上記成分はそれぞれ足して100wt.%である。)を含むプラスチック組成物からなる。滑剤としてのペルフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム塩は、好ましくは0.01〜4wt.%、好ましくは0.05〜2wt.%、最も特に好ましくは0.1〜0.5wt.%の量で添加される。
【0036】
全ての透明熱可塑性樹脂が多層光学フィルムの外層用プラスチックとして好適である。例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリスルホン(PSU)、ポリスチレン(PS)、ポリ−α−メチルスチレン(MS)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートコポリマー(PETG)またはポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド(PC/PET)、ポリカーボネート/ポリシクロヘキシルメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート(PCCD)、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート(PBT)が使用されうる。
【0037】
ポリカーボネートが、好ましくは外層の製造に使用される。本発明では全ての既知のポリカーボネートが使用されうる。これらは、例えば、ホモポリカーボネート、コポリカーボネートおよび熱可塑性ポリエステルカーボネートである。
【0038】
好ましくはポリカーボネートの重量平均分子量Mは、18,000〜40,000、好ましくは26,000〜36,000、特に好ましくは28,000〜35,000である(Ubbelohde粘度計においてジクロロメタンまたはフェノール/o−ジクロロベンゼンの等重量混合物中25℃において相対溶液粘度を測定し、光散乱によって較正することによって決定される。)。
【0039】
ポリカーボネートは既知の方法、例えば界面重縮合法または溶融エステル交換法、によって製造されうる。
【0040】
界面重縮合法によるポリカーボネートの製造は、文献にさまざまに記述されている。一例として、H.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Polymer Reviews,第9巻,Interscience Publishers,ニューヨーク1964年33頁以降、Polymer Reviews,第10巻,“Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods”,Paul W.Morgan,Interscience Publishers,ニューヨーク1965年,第Vm章,325頁、Drs U.Grigo,K.Kircher and P.R.Mueller“Polycarbonate”in Becker/Braun,Kunststoff−Handbuch,第3/1巻,Polycarbonate,Polyacetale,Polyester,Celluloseester,Carl Hanser Verlag ミュンヘン,ウィーン1992年,118〜145頁、および特許明細書EP 0517044 A参照。
【0041】
ポリカーボネートをジアリールカーボネートとジフェノールとから溶融物において既知のポリカーボネートプロセスによって製造すること(溶融エステル交換法として知られている。)も可能であり、これは例えばWO−A 01/05866およびWO−A 01/05867に記述されている。エステル交換法(アセテートプロセスおよびフェニルエステルプロセス)は、更に、例えばUS−A 3,494,885、US 4,386,186、US 4,661,580、US 4,680,371およびUS 4,680,372、およびEP−A 26120、EP−A 26121、EP−A 26684、EP−A 28030、EP−A 39845、EP−A 91602、EP−A 97970、EP−A 79075、EP−A 146887、EP−A 156103、EP−A 234913およびEP−A 240301およびDE−A 1495626にも記述されている。
【0042】
好適なジフェノールは、例えばUS−A−PS 2,999,835、3,148,172、2,991,273、3,271,367、4,982,014および2,999,846、ドイツ連邦共和国公開特許出願1570703、2063050、2036052、2211956および3832396、フランス共和国特許明細書1561518、モノグラフ“H.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Interscience Publishers,ニューヨーク1964年28頁以降、102頁以降”および“D.G.Legrand,J.T.Bendler,Handbook of Polycarbonate Science and Technology,Marcel Dekker New York 2000年,72頁以降”に記述されている。
【0043】
ホモポリカーボネートコポリカーボネートの両方が本発明によって使用されうる。コポリカーボネートの製造に関する一成分として、ヒドロキシ−アリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサン1〜25wt.%、好ましくは2.5〜25wt.%(使用されるジフェノールの総量に対する。)が更に本発明によって使用されうる。これらは、例えば米国特許明細書US 3,419,634で知られているかまたはこの文献で知られている方法によって製造されうる。ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの製造は、例えば、公開特許出願DE 3334782 Aに記述されている。
【0044】
ポリエステルカーボネートおよびブロックコポリエステルカーボネートは、更に、本発明によって熱可塑性樹脂としても使用され、特にWO−A 2000/26275に記述されているものである。芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0045】
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖であっても既知の方法(例えばDE 2940024 AおよびDE 3007934 Aに記述されている。)によって分枝されていてもよい。
【0046】
本発明によると、好ましくは、式(I)
R−SONR’R’’R’’’R’’’’ (I)
(式中、
R は、炭素原子を1〜30個、好ましくは4〜8個有し、環状基の場合は好ましくは炭素原子を5〜7個有する、ペルフルオロ環状または直鎖、分枝もしくは非分枝炭素鎖であり、
R’ は、炭素原子を1〜30個、好ましくは3〜10個有し、環状基の場合は好ましくは炭素原子を5〜7個有する非置換またはハロゲン−、ヒドロキシ−、シクロアルキル−もしくはアルキル−置換された、特にC〜Cアルキル−もしくはC〜Cシクロアルキル−置換された、環状または直鎖、分枝もしくは非分枝炭素鎖、特に好ましくはプロピル、1−ブチル、1−ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチルおよびシクロペンチルであり、
R’’、R’’’およびR’’’’ は、それぞれ互いに独立して、炭素原子を1〜30個、好ましくは1〜10個有し、環状基の場合は好ましくは炭素原子を5〜7個有する非置換またはハロゲン−、ヒドロキシ−、シクロアルキル−もしくはアルキル−置換、特にC〜Cアルキル−もしくはC〜Cシクロアルキル−置換、環状または直鎖、分枝もしくは非分枝炭素鎖、特に好ましくはメチル、エチル、プロピル、1−ブチル、1−ペンチル、ヘキシル、1−イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチルおよびシクロペンチルである。)
の一種類以上のペルフルオロアルキルスルホン酸の第四級アンモニウム塩が滑剤として使用されうる。Rが炭素原子を1〜30個、好ましくは4〜8個有するペルフルオロ直鎖または分枝炭素鎖であり;R’が炭素原子を1〜30個、好ましくは3〜10個有するハロゲン化または非ハロゲン化直鎖または分枝炭素鎖、特に好ましくはプロピル、1−ブチル、1−ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、イソヘキシルであり;R’’、R’’’およびR’’’’がそれぞれ互いに独立して炭素原子を1〜30個、好ましくは1〜10個有するハロゲン化または非ハロゲン化直鎖または分枝炭素鎖、特に好ましくはメチル、エチル、プロピル、1−ブチル、1−ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、イソヘキシルである;アンモニウム塩の選択が好ましい。
【0047】
本発明の意味の範囲内の滑剤として特に好ましい第四級アンモニウム塩は、
−ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、
−ペルフルオロブタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、
−ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、
−ペルフルオロブタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、
−ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、
−ペルフルオロブタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、
−ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、
−ペルフルオロブタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、
−ペルフルオロブタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩、
−ペルフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジイソプロピルアンモニウム塩、
−ペルフルオロオクタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩、
−ペルフルオロブタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩、
−ペルフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩、
−N−メチルトリプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、
−N−エチルトリプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、
−テトラプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、
−ジメチルジイソプロピルアンモニウムペルフルオロブチルスルホネート、
−N−メチルトリブチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネート、
−シクロヘキシルジエチルメチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネート、
−シクロヘキシルトリメチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネート
である。
【0048】
本発明によると、更に、上記第四級アンモニウム塩の一種類以上、すなわち混合物、を滑剤として使用してもよい。
【0049】
本発明による滑剤は、好ましくは、
ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、
ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、
ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、
ペルフルオロオクタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、
ペルフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジイソプロピルアンモニウム塩、および
シクロヘキシルトリメチルアンモニウムペルフルオロオクチルスルホネート、並びに
対応するペルフルオロブタンスルホン酸塩
からなる群から選択される。
【0050】
本発明の最も特に好ましい態様において、ペルフルオロブタンスルホン酸ジメチルジイソプロピルアンモニウム塩が滑剤として使用される。
【0051】
ペルフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム塩は既知であるかまたは既知の方法によって製造されうる。製造方法は、例えば、WO−A 01/85869、DE 1966931 AまたはNL 7802830に記述されている。
【0052】
別の常套のポリマー添加剤を任意に本発明によって本発明によるフィルム構造体のフィルムのプラスチック組成物中に含んでもよい。例えば、UV吸収剤および常套の加工助剤、特に離型剤および流れ調整剤、並びに例えばポリカーボネート用の既知の安定剤、例えば熱安定剤、帯電防止剤および/または蛍光増白剤が含まれうる。異なる添加剤または添加剤濃度がそれぞれのフィルムまたは層に存在してもよい。
【0053】
滑剤および/または別の上記添加剤の混合は、既知の方法によって行われうる。これは、例えば、ポリマーペレット(ポリカーボネート)と添加剤とを約200〜350℃の温度においてユニット、例えば密閉式ミキサー、単軸スクリュー押出機および二軸押出機、中で、例えば溶融配合または溶融押出による混合によって、または好適な有機溶媒、例えばCHCl、ハロアルカン、ハロ芳香族化合物、クロロベンゼンおよびキシレン、中のポリマーの溶液と添加剤の溶液との混合と次の既知の方法による溶媒の蒸発によって、行われうる。
【0054】
プラスチック組成物中の添加剤の割合は、幅広い範囲内で変更され、対応する望ましいフィルムの特性によって決定される。
【0055】
本発明の更に好ましい態様において、外層のプラスチック組成物は、ベンゾトリアゾール誘導体、二量体ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、二量体トリアジン誘導体、ジアリールシアノアクリレートのクラスから選択されるUV吸収剤を、プラスチック組成物の総量に対して0.01〜0.5wt.%含みうる。
【0056】
本発明によると、例えば、ホスフィン、ホスファイトまたはSi−含有安定剤およびEP−A 0500496に記述されている別の化合物が、安定剤として使用されうる。トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラキス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス−(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイトおよびトリアリールホスファイトが一例として挙げられる。トリフェニルホスフィンおよびトリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが安定剤として特に好ましく使用されうる。
【0057】
更に好ましい態様において、多層光学フィルムのトップフィルムは、外層に加えて同時押出層を含みうる。すなわち、トップフィルムは、単層または多層構造を有しうる。外層および同時押出層のプラスチック組成物は、同様に構成されても異なって構成されてもよい。本発明による変形によると、任意に存在してもよい同時押出層は、滑剤に加えて、UV吸収剤および/または離型剤を含みうる。同時押出層のプラスチック組成物は、代わりに更に滑剤がなくてもよい。
【0058】
トップフィルム中に少なくとも一つの同時押出層を有する好ましいフィルム構造体において、同時押出層の厚さは、好ましくは、10〜100μm、特に好ましくは20〜50μmである。
【0059】
本発明によるフィルムは、押出によって製造されるかまたは更に溶液からキャストされてキャストフィルムの形態にされうる。
【0060】
押出のために、ポリカーボネートペレットを押出機に供給し、押出機の可塑化システムにおいて溶融してもよい。このプラスチック溶融物は、次にスロットダイを通って押され、そのようにして成形されうる。ポリマーコンパウンドは仕上げカレンダーのニップにおいて望ましい最終形態に成形され、その形態は、仕上げロールと周囲空気とにおける交互冷却によって固定される。
【0061】
溶融粘度の高いポリカーボネートは、通常、溶融温度260〜320℃において処理される。可塑化シリンダーのシリンダー温度およびダイ温度をそれに応じて調節する。
【0062】
一以上の補助押出機(ancillary extruder)およびスロットダイの前の好適な溶融アダプターの使用によって、異なる組成のポリカーボネート溶融物が重ね合わせられて多層シートまたはフィルムがつくられうる(例えばEP−A 0110221およびEP−A 0110238に開示されている。)。
【0063】
本発明によるフィルム構造体における完全多層光学フィルムの厚さは、好ましくは50μm〜1000μm、特に好ましくは70μm〜800μm、最も特に好ましくは100μm〜700μmでありうる。
【0064】
滑剤を含む外層、すなわちプリズムフィルムおよび/または拡散フィルムに面する層、の厚さは、好ましくは1μm〜150μm、好ましくは5μm〜100μm、特に好ましくは10μm〜75μmである。
【0065】
好ましくは滑剤を含まない多層光学フィルムの光学部品の層の厚さは、好ましくは20μm〜600μmである。
【0066】
多層光学フィルムは、光学ベースフィルム、例えば、特許明細書US 5,783,28または公開特許出願WO 97/32726およびWO 96/19347による多層押出体、好ましくはナフタレンジカルボン酸ポリエステルとテレフタル酸ポリエステルとの多層膜、とのラミネートまたは押出ラミネートによって外層の熱可塑性フィルムから製造されうる。
【0067】
従って、これらの多層光学フィルムを、次に、プリズムフィルム、例えば既知の市販のBEF、の上に置き、本発明によるフィルム構造体を形成しうる。良好な光学特性に加えて、そのような本発明によるフィルム構造体は、更に、特に良好な品質および光学性能も示す。これらのフィルムは、更に、良好な加工性並びに引掻きおよびダメージに対する優れた耐性を特徴とする。
【0068】
本発明は、更に、上記のような本発明による多層光学フィルムおよびフィルム構造体を含む液晶スクリーン用バックライトユニットも提供する。
【0069】
本発明は、更に、液晶スクリーンとしての本発明による多層光学フィルムおよびフィルム構造体の使用も提供する。
【0070】
以下の実施例は、本発明の範囲を制限せずに説明することを意図している。
【0071】
上記全引用文献は、全ての有用な目的のために全体を参照することによって組み込まれる。
【0072】
本発明を具体化するある特定の構造を示し、記述しているが、種々の変形および部品の再配置が根本的な本発明の概念の精神および範囲から逸脱せずになされることおよび本明細書中に示され記述される特定の形態に限定されないことは当業者に明らかである。
【実施例】
【0073】
例1
ポリカーボネート滑剤マスターバッチの製造
滑剤コンパウンド(ペレット)を、常套の二軸スクリュー配合押出機を使用して常套のポリカーボネートの加工温度250〜330℃において製造した。
【0074】
以下の組成を有するマスターバッチを製造した。
・Bayer MaterialScience AG製のMakrolon 2600 000000ポリカーボネート、98wt.%
・無色のパウダーとしてジイソプロピルジメチルアンモニウムペルフルオロブタンスルホネート、2wt.%
【0075】
例2
外層フィルムの製造
フィルム押出:
フィルムの製造に使用されるユニットは以下のものを備える:
−直径(D)105mmかつ長さ41×Dのスクリューを有する主押出機;このスクリューはガス抜き部を有する;
−幅1500mmの押出スロットダイ;
−水平ロール配置を有する三本ロール艶出カレンダー、第三ロールは水平に対して+/−45°傾斜可能である;
−ローラーコンベア;
−保護フィルム両面適用デバイス;
−テイクオフユニット(take−off unit);
−巻き取りステーション(winding station)
【0076】
以下の処理パラメータを選択した。
【0077】
【表1】
【0078】
以下の組成を有するコンパウンド(ペレット)を混合した:
−Bayer MaterialScience AG製のMakrolon 3018 550115ポリカーボネート、80.0wt.%
−実施例1による滑剤マスターバッチ、20.0wt.%
【0079】
ポリマーペレットを押出機の供給ホッパーに供給した。材料の溶融および運搬を、押出機のシリンダー/スクリュー可塑化システムにおいて行った。材料溶融物を艶出カレンダーであって、ロールが表1に示される温度に加熱されている艶出カレンダーに供給した。フィルムの最終成形および冷却を、艶出カレンダー(三本のロールを備える。)において行った。テクスチャ加工されたゴムロールおよびスチールロールを使用してフィルムの表面をテクスチャ加工した。フィルム表面のテクスチャ加工に使用されるゴムロールは、Nauta Roll CorporationによるUS 4,368,240に開示されている。テクスチャ加工がフィルム表面の特定の粗さを生じる。次にこのフィルムをテイクオフユニットを通して運搬した。次にPE保護フィルムを両面に適用し、このフィルムを巻き取る。次に保護フィルムを片側から取り外し、ベースフィルムにラミネートする。
【0080】
テクスチャ加工されたスチールロールおよびテクスチャ加工されたゴムロールを艶出しユニットにおいて使用し、厚さが130μmであり、かつ、両面がテクスチャ加工された表面を有するポリカーボネートフィルムを製造した。
【0081】
例3
外層フィルムの製造
以下の組成を有するコンパウンドを混合した:
−Bayer MaterialScience AG製のMakrolon 3018 550115ポリカーボネート、80.0wt.%
−実施例1による滑剤マスターバッチ、20.0wt.%
【0082】
テクスチャ加工されたスチールロールおよびゴムロールを艶出ユニットにおいて使用し、厚さが130μmであり、かつ、両面にテクスチャ加工された表面を有するフィルムを製造した。
【0083】
従って、スチールエンボスロールおよびゴムエンボスロールをテクスチャ加工に使用して本発明によるフィルムにおいて第一面をゴムロールによってエンボスし、第二面をスチールロールによってエンボスし、第一面と第二面とが異なる粗さの値を有するようにする(表2参照。)。
【0084】
例4(本発明によらない):
例2および3との比較用のサンプルとして、滑剤を含まない以下の組成を有するコンパウンドを混合した:
−Bayer MaterialScience AG製のMakrolon 3108 550115ポリカーボネート、100.0wt.%
【0085】
テクスチャ加工されたスチールロールおよびテクスチャ加工されたゴムロールを艶出ユニットにおいて使用し、厚さが130μmであり、かつ、両面がテクスチャ加工された表面を有するフィルムを製造した。
【0086】
例5
多層光学フィルムの製造
例2の本発明による外層フィルムを、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸ポリエステルとからなる多層ベースフィルムの両面にラミネートした。
【0087】
使用されるプリズムフィルム:
プリズムフィルム1:
BEF III T 90/50:3M製のVikuiti(登録商標)製品範囲からの市販の輝度上昇フィルム
プリズムフィルム2:
BEF II T 90/50:3M製のVikuiti(登録商標)製品範囲からの市販の輝度上昇フィルム
【0088】
以下の先行技術のフィルムを、本発明による外層フィルムと多層光学フィルムに対する別の比較サンプルとして使用した:
比較サンプル1
DBEF D 400:3M製のVikuiti(登録商標)製品範囲からの市販のデュアル輝度上昇フィルム。このフィルムは、外側のテクスチャ加工されたポリカーボネートフィルムおよび中央の多層フィルムからなる。バックライトユニットの常套のフィルムセットにおいて、DBEF D400フィルムは、上記プリズムフィルム(BEF)1または2の上に配置される。
比較サンプル2
Makrofol DE 1−4,125μm:Bayer MaterialScience AG製の市販のポリカーボネートフィルム;第1面は平滑であり、第4面は細かくテクスチャ加工されている。
比較サンプル3
Makrofol DE 6−2,125μm:Bayer MaterialScience AG製の市販のポリカーボネートフィルム;第6面(第二スチールロール側)はマットにテクスチャ加工されており;第2面(第一ゴムロール側)は細かくテクスチャ加工されている。
【0089】
【表2】
【0090】
摩擦係数の決定:
滑り摩擦係数をASTM D 1894−06によって決定した。フィルムの第一面(上記表2参照。)の表面をそれぞれ使用した。
【0091】
条件:
測定温度:23℃
摩擦ブロック50mm
摩擦ブロックの重量202.2g
試験片 幅:60mm
長さ:200mm
【0092】



【0093】
要約すると、改良された特性を示し、液晶フラットスクリーンにおける使用に特に好適である光学フィルム構造体が、本発明によって製造される。