特許第5959595号(P5959595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959595
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ゲート化ボルタンメトリー
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/48 20060101AFI20160719BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20160719BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G01N27/48 311
   G01N27/416 338
   G01N27/327 353R
   G01N27/416 336B
   G01N27/416 336C
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2014-216798(P2014-216798)
(22)【出願日】2014年10月24日
(62)【分割の表示】特願2008-533391(P2008-533391)の分割
【原出願日】2006年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-52608(P2015-52608A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2014年11月12日
(31)【優先権主張番号】60/722,584
(32)【優先日】2005年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507021757
【氏名又は名称】バイエル・ヘルスケア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】ウー,フアン−ピン
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−198861(JP,A)
【文献】 特開昭55−144899(JP,A)
【文献】 特開2001−021525(JP,A)
【文献】 特開昭59−111051(JP,A)
【文献】 特開2000−180399(JP,A)
【文献】 特表2000−500571(JP,A)
【文献】 特表2001−511881(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/054840(WO,A1)
【文献】 米国特許第06413398(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.3〜0.2の励起/緩和時間比を有する少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを、サンプルに対して印加する工程であって、少なくとも2回の負荷サイクルのそれぞれは緩和を含み、少なくとも2回の負荷サイクルにおける緩和は、励起の最大値における電流の少なくとも1/2までの電流減少を含む、前記工程
少なくとも2回の負荷サイクルから得られた電流を測定する工程;および
得られた電流から、サンプル中の分析対象物の濃度を決定する工程;
を含む、サンプル中の分析対象物の濃度を決定するためのボルタンメトリーの方法。
【請求項2】
ボルタンメトリーの方法から決定された分析対象物の濃度が、パルスシークエンスの励起/緩和時間比が0.3よりも大きい方法から決定されるサンプル中の分析対象物の濃度よりも、より正確である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
決定する工程を、5秒未満で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パルスシークエンスが、90秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むか、または5秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2回の負荷サイクルのそれぞれには励起が含まれ、そして
励起が、少なくとも2 mV/secの速度で直線的に変化する電位を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
励起が、線形、サイクル状、非サイクル状、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2回の負荷サイクルのそれぞれには励起が含まれ、そして
励起が、非サイクル状で、そしてサンプル中の分析対象物の濃度に応じた測定可能な種の逆酸化ピークまたは逆還元ピークを実質的に排除する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2回の負荷サイクルのそれぞれには励起が含まれ、そして
励起が、非サイクル状で、そして逆電流ピークの開始前に終了するか、
励起が、非サイクル状で、そしてサンプル中の分析対象物の濃度に応じた測定可能な種の正および逆の酸化および還元のピークを実質的に排除するか、または
励起が、非サイクル状で、そして実質的に酸化還元対の拡散限界電流領域(diffusion limited current region)中のものである、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
[001] 本出願は、“Gated Voltammetry”との名称で2005年9月30日に出願されたU.S.仮出願No. 60/722,584の利益を主張し、その内容を本明細書中に参考文献として援用する。
【背景技術】
【0002】
[002] 生物学的液体中の分析対象物の定量的決定は、生理学的異常の診断および治療において有用である。たとえば、生物学的液体中、たとえば血液中のグルコースレベルを決定することは、その血中グルコースレベルを頻繁にチェックして、その食事および/または投薬を制御しなければならない糖尿病個体にとって重要である。
【0003】
[003] 電気化学的システムが、このタイプの分析のために使用されてきた。分析の間に、分析対象物は酵素または同様の種による酸化還元反応を受けて、電流を生じ、その電流を測定してそして分析対象物の濃度と相関させることができる。所望される正確性と精密性を提供しつつ、分析のために必要とされる時間を減少させることにより、実質的な利益をユーザーに対して提供することができる。
【0004】
[004] 生物学的液体中の分析対象物を解析するための電気化学的センサシステムの一例には、測定装置およびセンサストリップが含まれる。センサストリップには、分析対象物と反応させ、分析中にその分析対象物から電子を輸送する試薬、および電子を伝導体を通じて装置へと通過させるための電極、が含まれる。測定装置には、ストリップからの電子を受容するための接点および接点間に電圧を印加する能力が含まれる。装置は、センサを介して流れる電流を記録し、そして電流値をサンプルの分析対象物内容物の測定値に変換することができる。これらのセンサシステムは、一滴の全血(WB)、たとえば1〜15マイクロリットル(μL)の容量の全血を解析することができる。
【0005】
[005] 卓上測定装置の例には、BAS Instruments(West Lafayette, Indiana)から入手できるBAS 100B Analyzer;CH Instruments(Austin, Texas)から入手できるCH Instrument Analyzer;Cypress Systems(Lawrence, Kansas)から入手できるCypress Electrochemical Workstation;およびPrinceton Research Instruments(Princeton, New Jersey)から入手できるEG&G Electrochemical Instrumentが含まれる。ポータブル測定装置の例には、Bayer CorporationのAscensia Breeze(登録商標)測定装置およびElite(登録商標)測定装置が含まれる。
【0006】
[006] センサストリップには、分析対象物が電気化学的反応を受ける作用電極、および反対の電気化学的反応が生じるカウンタ電極が含まれ、それにより電流が電極間を流れることができる。したがって、酸化が作用電極で生じる場合、還元がカウンタ電極で生じる(たとえば、Fundamentals Of Analytical Chemistry, 4th Edition, D.A. Skoog and D.M. West;Philadelphia: Saunders College Publishing (1982), pp 304-341を参照)。
【0007】
[007] センサストリップはまた、測定装置に対して非-変動性(non-variant)の参照電位を提供するための真の参照電極を含んでいてもよい。複数の参照電極材料が既知である一方、銀(Ag)および塩化銀(AgCl)の混合物が分析溶液の水性環境中へ不溶性であるため、その混合物が典型的である。参照電極は、カウンタ電極として使用することもできる。そのような参照電極-カウンタ電極の組み合わせを使用するセンサストリップは、U.S. Pat. No. 5,820,551中に記載される。
【0008】
[008] センサストリップは、複数の技術、たとえばU.S. Pat. Nos. 6,531,040;5,798,031;および5,120,420などに記載される様な技術を使用して、絶縁性基質上に電極をプリンティングすることにより形成することができる。1またはそれ以上の試薬層を、作用電極および/またはカウンタ電極などの1またはそれ以上の電極をコーティングすることにより形成することができる。一側面において、作用電極とカウンタ電極が、同一組成物によりコーティングされている場合など、1より多い電極が、同一の試薬層によりコーティングされていてもよい。別の側面において、異なる組成物を有する試薬層が、2003年10月24日に出願されたU.S. 仮特許出願、Serial No. 60/513,817中に記載される方法を使用して、作用電極およびカウンタ電極上にプリンティングされるかまたはマイクロ蒸着されていてもよい。したがって、作用電極上の試薬層は、酵素、メディエータ、および結合剤を含有することができ、一方カウンタ電極上の試薬層は、メディエータと同一であっても異なっていてもよい可溶性酸化還元種、および結合剤を含有する。
【0009】
[009] 試薬層には、分析対象物の酸化または還元を促進するためのイオン化剤、およびいずれかのメディエータ、または分析対象物と伝導体との間で電子を運搬する補助をするその他の基質が含まれていてもよい。イオン化剤は、WBサンプル中のグルコースの酸化を触媒するための、グルコースオキシダーゼまたはグルコースデヒドロゲナーゼなどの分析対象物特異的な酵素であってもよい。試薬層にはまた、酵素およびメディエータを一緒に保持する結合剤が含まれてもよい。以下の表Iは、特異的な分析対象物とともに使用するための、酵素とメディエータの従来からの組み合わせを提供する。
【0010】
【表1】
【0011】
[0011] 結合剤には、CMC(カルボキシメチルセルロース)および/またはPEO(ポリエチレンオキシド)などの、様々なタイプのそして様々な分子量のポリマーが含まれていてもよい。試薬を一緒に結合することに加えて、結合剤は、赤血球が電極表面をコーティングすることを防止しながら、赤血球を濾過する際の補助をすることができる。
【0012】
[0012] 生物学的液体中の分析対象物を解析するための従来からの電気化学的センサシステムの例には、Abbott(Abbott Park, Illinois)から入手可能なPrecision(登録商標)バイオセンサ;Roche(Indianapolis, Indiana)から入手可能なAccucheck(登録商標)バイオセンサ;およびLifescan(Milpitas, California)から入手可能なOneTouch Ultra(登録商標)バイオセンサが含まれる。
【0013】
[0013] 生物学的液体中の分析対象物を定量するために使用されてきた一つの電気化学的方法は、クーロメトリーである。たとえば、Hellerらは、WBグルコース測定のためのクーロメトリー法をU.S. Pat. No. 6,120,676において記載した。クーロメトリーにおいては、少量中で分析対象物を完全に酸化し、そして酸化時間にわたり電流を積分して、分析対象物濃度を示す電荷を生成することにより、分析対象物濃度を定量する。したがって、クーロメトリーは、センサストリップ中に存在する分析対象物の全量を捕捉する。
【0014】
[0014] クーロメトリーの重要な側面は、電荷vs.時間の積分曲線の末端に向かって、時間の経過とともに生じる電流変化が、実質的に一定になり、定常状態を得る、ということである。クーロメトリーの曲線のこの定常状態の部分は、比較的平坦なプラトー領域を形成し、したがって、対応する電流の決定が可能になる。しかしながら、クーロメトリー法では、定常状態に達するためには、分析対象物の全量の完全な変換が必要である。結果的に、この方法は、時間がかかるものであり、そしてグルコース-モニタリング製品などの電気化学的装置のユーザーが要求する様な迅速な結果を提供しない。クーロメトリーによる別の問題は、少量のセンサセルが、正確な結果を提供するために調節されなければならない、という点であり、これは、大量生産された装置では困難である可能性がある。
【0015】
[0015] 生物学的液体中の分析対象物を定量するために使用されてきた別の電気化学的方法は、電流測定法である。電流測定法においては、定電位(ボルト)がセンサストリップの作用電極およびカウンタ電極を介して印加されるため、電流を読みとりパルスのあいだ測定する。測定電流を使用して、サンプル中の分析対象物を定量する。電流測定法は、分析対象物などの電気化学的に活性な種が、作用電極の近傍で酸化または還元される速度を測定する。バイオセンサのための電流測定法の多数の変法が、たとえば、U.S. Pat. Nos. 5,620,579;5,653,863;6,153,069;および6,413,411において記載された。
【0016】
[0016] 従来型の電流測定法の欠点は、電位を印加したのちの電流の非-定常状態的特性である。時間に関する電流変化の速度は、最初は非常に速く、そして潜在する拡散のプロセスの特性変化のため、分析が進行するにつれて遅くなる。電極表面での還元されたメディエータの消費速度が拡散速度と同等になるまで、定常状態電流を得ることができない。従って、従来型の電流測定法に関しては、定常状態に到達する前の、過渡的な期間の間の電流を測定することは、定常状態期間の間に行われた測定よりも、より不正確性に関連している可能性がある。
【0017】
[0017] “ヘマトクリット効果”は、WBサンプル中のグルコース濃度を正確に解析することに対する障害をもたらす。WBサンプルは、赤血球(RB細胞)および血漿を含有する。血漿はほぼ水であるが、いくつかのタンパク質およびグルコースを含有する。ヘマトクリットは、WBサンプルの全量に対する赤血球構成成分の容量であり、そしてしばしば百分率で表される。全血サンプルは一般的に、20%〜60%の範囲のヘマトクリット%を有し、平均すると約40%である。
【0018】
[0018] 従来型のセンサストリップにおいて、グルコースは、酵素により酸化され、その後酵素は電子をメディエータへと輸送することができる。次いで、この還元されたメディエータは、作用電極へと運ばれ、そこで電気化学的に酸化される。酸化されるメディエータの量は、センサストリップの作用電極とカウンタ電極との間で流れる電流に対して相関することができる。定量的には、作用電極で測定された電流は、メディエータの拡散係数に直接的に比例する。ヘマトクリット効果は、赤血球がメディエータの作用電極への拡散を妨害するため、このプロセスを妨害する。引き続いて、ヘマトクリット効果は、サンプル中のグルコース量とは何ら関係なく、作用電極で測定された電流量に影響を与える。
【0019】
[0019] 様々な濃度の赤血球を有するWBサンプルは、赤血球が作用電極への拡散を妨害する場合にセンサがより低いメディエータ濃度とより高いメディエータ濃度とを識別することができないため、測定値の不正確性を引き起こす可能性がある。たとえば、同一グルコースレベルを含有するが20、40、および60%のヘマトクリットを有するWBサンプルを解析する場合、3種類の異なるグルコース読みとり値が、1つの較正定数セット(例えば、傾きおよび切片)に基づく従来型のセンサシステムによって報告されることだろう。グルコース濃度が同一であっても、赤血球がメディエータの作用電極への拡散を妨害するため、このシステムは20%ヘマトクリットサンプルが60%ヘマトクリットサンプルよりも多いグルコースを含有すると報告するだろう。
【0020】
[0020] ヒトの場合の正常なヘマトクリット範囲(RBC 濃度)は20%〜60%であり、40%付近にその中心がある。ヘマトクリットバイアスとは、参照装置(例えば、YSI Inc.,(Yellow Springs, Ohio)から入手可能なYSI 2300 STAT PLUSTM)により得られる参照グルコース濃度と、様々なヘマトクリットレベルを含有するサンプルについて、携帯型センサシステムから得られる実験的グルコース読みとり値との間の差異として表される。参照読みとり値と実験的読みとり値との間の差異は、具体的なWBサンプル間の様々なヘマトクリットレベルの結果生じる。
【0021】
[0021] ヘマトクリット効果に加えて、測定値の不正確性はまた、測定可能種の濃度が分析対象物濃度と相関しない場合にも生じる可能性がある。たとえば、センサシステムが分析対象物の酸化に応じて生成される還元されたメディエータの濃度を決定する場合、分析対象物の酸化により生成されないいずれかの還元されたメディエータが、メディエータバックグラウンドのために、正しい濃度よりも多くの分析対象物がサンプル中に存在すると示すセンサシステムを導くだろう。
【0022】
[0022] ヘマトクリット効果とメディエータバックグラウンド効果に加えて、その他の因子もまた、従来型の電気化学的センサシステムがサンプル中の分析対象物の濃度を決定する能力における不正確性を引き起こす可能性がある。一側面において、サンプルを含有するセンサストリップの一部がストリップごとに容量が様々である可能性があるために、これらの不正確性が導入される可能性がある。不正確性はまた、十分なサンプルがキャップ-ギャップの容量を完全に充たすように提供されているわけではない場合にも、導入される可能性がある。この状態を充填量不足(under-fill)という。別の側面において、不正確性はまた、無作為な“ノイズ”により、そしてセンサシステムがサンプルにおける温度変化を正確に決定する能力を持っていない場合に、測定値に対して導入される可能性がある。
【0023】
[0023] 1またはそれ以上のこれらの欠点を解消する試みにおいて、従来型のセンサシステムは、センサストリップの機構的なデザインや試薬選択に関してだけではなく、測定装置が電位をストリップに対して印加する様式に関しても、複数の技術を試してきた。たとえば、電流測定センサに対するヘマトクリット効果を減少する従来型の方法には、フィルターを使用すること(U.S. Pat. Nos. 5,708,247および5,951,836中に開示される);印加する電流の極性を反転すること(WO 01/57510中に開示される);およびサンプルの固有の抵抗を最大にする方法(U.S. Pat. No. 5,628,890中に開示される);が含まれる。
【0024】
[0024] ストリップに対して電位を印加する複数の方法(一般的にパルス法、パルスシークエンス、またはパルスサイクルと呼ばれる)を使用して、決定された分析対象物濃度における不正確性に対処してきた。たとえば、U.S. Pat. No. 4,897,162においては、パルス法には、上昇電位および下降電位の連続的な印加が含まれ、これらは混合されて三角形波(triangular-shaped wave)をもたらす。更に、WO 2004/053476およびU.S. 公開公報2003/0178322および2003/0113933は、極性も変化させる上昇電位および下降電位の連続的な印加を含むパルス法を記載する。
【0025】
[0025] その他の従来型の方法は、特異的な電極構造をその構造に適合させたパルスシークエンスと組み合わせる。たとえば、U.S. Pat. No. 5,942,102は、薄層セルにより提供される特異的な電極構造を、連続的パルスと組み合わせ、それによりカウンタ電極からの反応生成物が作用電極に到達するようにする。この組み合わせを使用して、時間に対する電流変化が一定になるまで反応を行い、その結果、電圧段階のあいだに作用電極とカウンタ電極とのあいだで移動するメディエータに関して、真の定常状態に到達する。これらの方法のそれぞれが様々な利点および欠点でバランスを取っている一方、一つとして理想的なものはない。
【0026】
[0026] 上述の記載からもわかるように、電気化学的センサシステムを改良するための必要性、特により短い時間で分析対象物濃度の決定をますます正確にもたらすことができるような改良の必要性、は現在も存在する。本発明のシステム、装置、および方法は、従来型のシステムに関連する欠点の少なくとも一つを解消する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】U.S. Pat. No. 6,531,040
【特許文献2】U.S. Pat. No. 5,798,031
【特許文献3】U.S. Pat. No. 5,120,420
【特許文献4】U.S. Pat. No. 6,120,676
【特許文献5】U.S. Pat. No. 5,620,579
【特許文献6】U.S. Pat. No. 5,653,863
【特許文献7】U.S. Pat. No. 6,153,069
【特許文献8】U.S. Pat. No. 6,413,411
【特許文献9】U.S. Pat. No. 5,708,247
【特許文献10】U.S. Pat. No. 5,951,836
【特許文献11】WO 01/57510
【特許文献12】U.S. Pat. No. 5,628,890
【特許文献13】U.S. Pat. No. 4,897,162
【特許文献14】WO 2004/053476
【特許文献15】U.S. 公開公報2003/0178322
【特許文献16】U.S. 公開公報2003/0113933
【特許文献17】U.S. Pat. No. 5,942,102
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Fundamentals Of Analytical Chemistry, 4th Edition, D.A. Skoog and D.M. West;Philadelphia: Saunders College Publishing (1982), pp 304-341
【発明の概要】
【0029】
[0027] 少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスをサンプルに印加し、そして結果として生じる電流を測定する工程を含む、サンプル中の分析対象物の濃度を決定するボルタンメトリー法が提供される。少なくとも2回の負荷サイクルに加えて、パルスシークエンスには、終端読みとりパルスおよび/または初期時間遅延が含まれていてもよく、そしてパルスシークエンスを、作用電極上の拡散バリア層を含むセンサストリップに対して印加することができる。この方法には、別の方法または少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを行わないボルタンメトリー法により決定された分析対象物の濃度と比較して、メディエータバックグラウンドに起因するバイアスがより少なく含まれる可能性がある。サンプルは、生物学的液体を含む液体であってもよく、そして分析対象物はグルコースであってもよい。
【0030】
[0028] 負荷サイクルには、時間とともに変化する電位または時間とともに線形に変化する電位を含む励起(例えば、線形、サイクル状、非サイクル状、またはこれらの励起タイプの組み合わせ)が含まれていてもよい。電流値は各励起のあいだに記録されてもよく、そしてパルスシークエンスには、終端読みとりパルスが含まれていてもよい。負荷サイクルには、逆酸化ピークまたは逆還元ピークを実質的に排除した非サイクル状の励起が含まれていてもよく、そして負荷サイクルがサイクル状の励起を含む場合の方法に対しては分析対象物に反応性ではないサンプル中のメディエータの濃度を減少させてもよい。負荷サイクルには、逆電流ピークの開始前に終了する非サイクル状の励起、正および逆の酸化および還元のピークを実質的に排除した非サイクル状の励起、または酸化還元対の拡散限界電流領域の実質的に内側での非サイクル状の励起が含まれていてもよい。
【0031】
[0029] この方法には、少なくとも1つの輪郭特性の決定が含まれていてもよく、そして少なくとも1つのデータ処理(例えば、半積分、半微分、または微分)を得られた電流に対して適用する工程が含まれていてもよい。この方法には、電流から複数の較正セットを決定する工程、そして複数の較正セットから負荷サイクル数を決定する工程が含まれていてもよい。分析対象物濃度の決定には、複数の較正セットから得られた複数の濃度値を平均化する工程が含まれていてもよい。
【0032】
[0030] この方法には、サンプルを含有するセンサストリップがサンプルで充填量不足かどうかを決定する工程が含まれていてもよい。この決定には、少なくとも1つの電流値を、あらかじめ選択された値と比較する工程が含まれていてもよい。この方法には、センサストリップの活性イオン化剤含量を決定する工程が含まれていてもよく、ここで決定値は、正および逆のスキャン電流値から比率を決定する工程により得ることができる。一側面において、この比率は、活性イオン化剤の既知量に対してあらかじめ相関させたものであった。別の側面において、較正の傾きは、センサストリップの活性イオン化剤含量に応じて変更されてもよい。別の側面において、負荷サイクルの励起/緩和時間比は、0.3〜0.2であってもよい。
【0033】
[0031]サンプル中の分析対象物の濃度を決定するための、手持ち型の分析対象物測定装置が提供される。装置には、センサストリップを受容する様に適合されたゲート化ボルタンメトリーの測定装置が含まれる。ゲート化電流測定装置には、電気回路を介してディスプレイと電気的に連絡している少なくとも2つの装置接点が含まれる。センサストリップには、少なくとも第一および第二のセンサストリップ接点が含まれる。第一のセンサストリップ接点は、作用電極と電気的に連絡しており、そして第二のセンサストリップ接点は、伝導体を介してカウンタ電極と電気的に連絡している。第一の試薬層は、少なくとも1つの電極上にあり、そしてそれには酸化還元酵素および少なくとも1つの酸化還元対種が含まれる。電極は、同一の基材上にあってもまたは別の基材上にあってもよい。
【0034】
[0032]サンプル中の分析対象物の濃度を決定するための、センサストリップを受容する様に適合された手持ち型の測定装置が提供される。装置には、接点、少なくとも1つのディスプレイ、および接点とディスプレイとのあいだでの電気的な連絡を確立する電気回路が含まれる。電気回路には、充電器およびプロセッサが含まれ、このプロセッサはコンピュータ読みとり可能な保存媒体と電気的に連絡している。この媒体には、コンピュータ読みとり可能ソフトウェアコードが含まれ、これはプロセッサにより実行される場合に、充電器が少なくとも2回の負荷サイクルを含むゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスを実行することができるようにする。
【0035】
[0033] 少なくとも2回の負荷サイクルを含むゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスを印加する工程が含まれる、メディエータバックグラウンドに起因する、サンプル中の分析対象物の決定された濃度中のバイアスを減少させる方法が提供される。
【0036】
[0034]サンプル中の分析対象物の濃度を決定するための、少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスの期間を決定する方法であって、少なくとも2回の負荷サイクルのあいだに記録された電流から決定された複数の較正定数セットを決定する工程、そしてサンプル中の分析対象物の決定濃度に応じてパルスシークエンスの期間を決定する工程、が含まれる前記方法が提供される。パルスシークエンスは、ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスであってもよい。
【0037】
[0035] 少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスから記録された少なくとも1つの電流値を、あらかじめ選択された値と比較することにより、センサストリップが充填量不足であるかどうかを決定する工程、そしてストリップが充填量不足である場合にセンサストリップに対して追加的なサンプルを添加する様にユーザーに対してシグナルを送る工程、が含まれる、センサストリップに対して追加的なサンプルを添加する様にユーザーにシグナルを送る方法が提供される。パルスシークエンスは、ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスであってもよい。センサストリップには、2つの電極が含まれていてもよく、そして決定は、5秒未満で行われてもよい。
【0038】
[0036] 0.3〜0.2の励起/緩和時間比を有する少なくとも2回の負荷サイクルが含まれるパルスシークエンスをサンプルに対して印加する工程、そして得られた電流を測定する工程、が含まれる、サンプル中の分析対象物の濃度を測定するボルタンメトリー法が提供される。この方法は、パルスの励起/緩和時間比が0.3より大きい別の方法で決定された分析対象物の濃度よりも正確であってもよい。
【0039】
[0037] 少なくとも2回の負荷サイクルを含むゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスを、サンプルに対して印加する工程を含む改良が含まれる、サンプル中の分析対象物の濃度を決定するための電気化学的方法が提供される。
【0040】
[0038] 以下の定義は、本明細書および特許請求の範囲の明りょうで一貫した理解をもたらすために含められる。
[0039] 用語“分析対象物”は、サンプル中に存在する1またはそれ以上の物質として定義される。分析は、サンプル中に存在する分析対象物の存在および/または濃度を決定する。
【0041】
[0040] 用語“サンプル”は、未知量の分析対象物を含んでもよい組成物として定義される。通常、電気化学的分析のためのサンプルは液状であり、そして好ましくは、サンプルは水溶性混合物である。サンプルは、血液、尿、または唾液などの、生物学的サンプルであってもよい。サンプルはまた、抽出物、希釈液、ろ過物、または再構成された沈殿物などの、生物学的サンプルの誘導体であってもよい。
【0042】
[0041] 用語“ボルタンメトリー”は、サンプル中の分析対象物の濃度を、様々な電位で、分析対象物の酸化速度または還元速度を電気化学的に測定することにより決定する、分析方法として定義される。
【0043】
[0042] 用語“システム”または“センサシステム”は、その伝導体を通じて測定装置と電気的に連絡するセンサストリップとして定義され、測定装置はサンプル中の分析対象物の濃度を定量することが出来る。
【0044】
[0043] 用語“センサストリップ”は、分析のあいだサンプルを含有し、そしてサンプルと測定装置との間で電気的な連絡を提供する装置として定義される。サンプルを含有するセンサストリップ部はしばしば、「キャップ-ギャップ」と呼ばれる。
【0045】
[0044] 用語“伝導体”は、電気化学的分析のあいだ安定的なままで存在する、電気的に伝導性のある物質として定義される。
[0045] 用語“測定装置”は、センサストリップの伝導体に電位を印加し、そして生じた電流を測定することができる、1またはそれ以上の電気的装置として定義される。測定装置にはまた、記録された電流値に応じて、1またはそれ以上の分析対象物の存在および/または濃度を決定する処理能力が含まれていてもよい。
【0046】
[0046] 用語“正確性”は、センサストリップによって測定された分析対象物の量が、サンプル中の真の分析対象物の量にどれだけ近いかとして定義される。一側面において、正確性はバイアスという観点で表されてもよい。
【0047】
[0047] 用語“精密性”は、同一のサンプルに対する分析対象物の複数の測定値が、どれだけ近いかとして定義される。一側面において、精密性は、複数回の測定値間での広がりまたは分散(variance)という用語で表されてもよい。
【0048】
[0048] 用語“酸化還元反応”は、少なくとも1つの電子が第一の種から第二の種へと移動することを含む、2つの種の間での化学反応として定義される。したがって、酸化還元反応には酸化および還元が含まれる。反応の酸化半電池は、第一の種による少なくとも1つの電子の損失を含み、一方、還元半電池は、第二の種への少なくとも1つの電子の添加を含む。酸化された種のイオン電荷は、除去された電子数と等しい量だけ、より正になる。同様に、還元された種のイオン電荷は、得た電子数と等しい量だけ、より正ではなくなる。
【0049】
[0049] 用語“メディエータ”は、酸化または還元されていてもよく、また1つ以上の電子を移動することができる物質として定義される。メディエータは、電気化学的分析での試薬であり、また関心の対象となる分析対象物ではないが、分析対象物の間接的な測定を提供する。単純化したシステムにおいては、メディエータは、分析対象物の酸化または還元に応じた酸化還元反応を受ける。酸化または還元されたメディエータはその後、センサストリップの作用電極で逆の反応を受け、そして最初の酸化数へと再生される。
【0050】
[0050] 用語“結合剤”は、試薬との化学的適合性を持ちながら、試薬への物理的な支持および封じ込めを提供する物質として定義される。
[0051] 用語“メディエータバックグラウンド”は、内在の分析対象物の濃度に応答しない測定可能種に起因する、測定された分析対象物の濃度中に導入されたバイアスとして定義される。
【0051】
[0052] 用語“測定可能種”は、適切な電位において、電気化学的センサストリップの作用電極で酸化または還元されうる、電気化学的に活性な種として定義される。測定可能種の例には、分析対象物、酸化還元酵素およびメディエータが含まれる。
【0052】
[0053] 用語“充填量不足”は、正確な分析を得るには不十分なサンプルがセンサストリップに導入された場合として定義される。
[0054] 用語“酸化還元対”は、異なる酸化数を持つ化学物質の2つの共役種として定義される。より高い酸化数を持つ種の還元は、より低い酸化数を持つ種を生じる。逆に、より低い酸化数を持つ種の酸化は、より高い酸化数を持つ種を生じる。
【0053】
[0055] 用語“酸化数”は、原子のような化学種の形式イオン電荷として定義される。(III)などのより高い酸化数はより強い正の電荷を帯びており、(II)などの低い酸化数は弱い正の電荷を帯びる。
【0054】
[0056] 用語“可逆的酸化還元対”は、半積分の正および逆のスキャンのあいだでの分離が、siss遷移の半分の高さで、高々30 mVでのものである場合の、一対の酸化還元種として定義される。たとえば、図10Aにおいて、siss遷移高に加えて、フェリシアン化物/フェロシアン化物酸化還元対に対する正および逆の半積分スキャンが示される。半分の高さのsiss遷移線が正および逆のスキャン線と交差する線において、線のあいだの分離は29 mVであり、示されたスキャン速度でのフェリシアン化物/フェロシアン化物酸化還元対の可逆性を証明する。
【0055】
[0057] 用語“準-可逆性酸化還元対”は、半積分の正および逆のスキャンのあいだの分離が、酸化還元対についてのsiss遷移の半分の高さで、30 mVよりも大きい場合の酸化還元対として定義される。
【0056】
[0058] 用語“可溶性酸化還元種”は、酸化または還元されうる物質であって、1リットルあたり少なくとも1.0グラムのレベルで水(pH 7、25℃)に可溶性の物質として定義される。可溶性酸化還元種には、電気活性の(electro-active)有機分子、有機遷移金属錯体および遷移金属配位錯体が含まれる。用語“可溶性酸化還元種”からは、金属元素および単独の金属イオンが除かれ、特に水に不溶性またはわずかにしか溶けないものが除かれる。
【0057】
[0059] 用語“酸化還元酵素”は、分析対象物の酸化または還元を促進する何らかの酵素として定義される。酸化還元酵素は試薬である。用語“酸化還元酵素”には、酸素分子が電子受容体である場合の酸化反応を促進する“オキシダーゼ”;分析対象物が還元されそして酸素分子が分析対象物ではない場合の還元反応を促進する“リダクターゼ”;および酸素分子が電子受容体ではない場合の酸化反応を促進する“デヒドロゲナーゼ”が含まれる。たとえば、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Revised Edition, A.D. Smith, Ed., New York: Oxford University Press (1997) pp. 161, 476, 477, および560を参照。
【0058】
[0060] 用語“電気活性の有機分子”(electro-active organic molecule)は、金属を持たない、酸化反応または還元反応を受けることができる有機分子として定義される。電気活性の有機分子はメディエータとして機能することができる。
【0059】
[0061] “OTM錯体”とも呼ばれる、用語“有機遷移金属錯体”(organotransition metal complex)は、遷移金属がシグマ結合(遷移金属にシグマ結合した炭素原子上の形式電荷は-1)またはパイ結合(遷移金属にパイ結合した炭素原子上の形式電荷は0)を通じて少なくとも1つの炭素原子と結合した錯体として定義される。例えば、フェロセンは、2つのシクロペンタジエニル(Cp)環を持つOTM錯体であり、それぞれは2ヶ所のパイ結合および1ヶ所のシグマ結合によって、5個の炭素原子を介して鉄中心に対して結合する。OTM錯体の他の例は、6個のシアノ配位子(6個の各配位子の形式電荷は-1)が、炭素原子を介して鉄中心にシグマ結合しているフェリシアン化物(III)およびその還元されたフェロシアン化物(II)である。
【0060】
[0062] 用語“配位錯体”は、正八面体型、または平面正方型のような、よく知られている配位形状を有する錯体として定義される。結合によって定義されているOTM錯体とは異なり、配位錯体は形状によって定義される。したがって、配位錯体はOTM錯体(前述したフェリシアン化物など)であってもよく、または窒素、硫黄、酸素およびリンを含むヘテロ原子のような、炭素以外の非金属原子が遷移金属中心に配位結合している錯体であってもよい。例えば、ルテニウムヘキサアミンは、6個のNH3配位子(6個の各配位子の形式電荷は0)がルテニウム中心に配位結合している、よく知られた正八面体形状を有する配位錯体である。有機遷移金属錯体、配位錯体および遷移金属結合についてのより完全な考察は、Collman et al., Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry (1987)およびMiessler & Tarr, Inorganic Chemistry (1991)で見いだすことができる。
【0061】
[0063] 用語“定常状態”は、独立した入力変数(電圧または時間)に関する電気化学的信号(電流)の変化が、±10または±5%以内のような、実質的に定常である場合として定義される。
【0062】
[0064] 用語“比較的一定”は、電流値または拡散速度の変化が±20、±10または±5%以内である場合として定義される。
[0065] 用語“反転-点”は、正のスキャンを停止し、逆のスキャンを開始するサイクル状スキャンまたは非サイクル状スキャン中の点として定義される。
【0063】
[0066] 用語“線形励起”は、電圧が、-0.5 V〜+0.5 Vなどの固定化された速度で単一の“正”の方向で変化され、1.0 Vの励起範囲をもたらす場合の励起として定義される。励起範囲は、酸化還元対の還元された状態または酸化された状態をカバーしていてもよく、それにより1つの状態から別の状態への遷移が生じる。線形励起は、一連の増大する電位変化により近似させることができる。増大が時間的に非常に近接して生じる場合、増大が連続的な線形励起に対応する。従って、線形変化に近似される電位変化を印加することは、線形励起であると考えることができる。
【0064】
[0067] 用語“サイクル状励起”は、励起の範囲に、酸化還元対の酸化ピークおよび還元ピークが含まれる、線形の正の励起と線形の逆の励起の組み合わせとして定義される。たとえば、サイクル状に電位を-0.5 V〜+0.5 Vまで変化させそして-0.5 Vにまで戻すことは、酸化ピークおよび還元ピークの両方共が励起範囲に含まれるグルコースセンサにおいて使用する場合のフェリシアン化物/フェロシアン化物酸化還元対についてのサイクル状励起の例である。
【0065】
[0068] 用語“非サイクル状励起”は、一側面において、ある正または逆の電流ピークをもう一方の電流ピークよりも多く含む励起として定義される。たとえば、正の励起が逆励起が終了する電圧とは異なる電圧で開始される場合の正および逆の線形励起を含む励起、例えば、-0.5 V〜+0.5 Vそして+0.25 Vに戻る励起、は、非サイクル状の励起の例である。別の例においては、非サイクル状の励起は、酸化還元対の形式電位E°’から高々±20、±10、または±5 mV離れた電位で励起が開始される場合、実質的に同一の電圧で開始されそして終了されてもよい。別の側面において、非サイクル状の励起は、酸化還元対の酸化ピークおよび還元ピークを実質的に排除する、正および逆の線形励起を含む励起として定義される。たとえば、励起は、酸化還元対の拡散限界領域内で、開始され、逆転され、そして終了されてもよく、それによりこの対の酸化ピークおよび還元ピークを排除する。
【0066】
[0069] 用語“高速励起”、“高速励起速度”、“高速スキャン”、および“高速スキャン速度”は、電圧が少なくとも176 mV/secの速度で変化する場合の励起として定義される。好ましい高速励起速度は、200、500、1,000、または2,000 mV/secより大きい速度である。
【0067】
[0070] 用語“遅速励起”、“遅速励起速度”、“遅速スキャン”、および“遅速スキャン速度”は、電圧が高々175 mV/secの速度で変化する場合の励起として定義される。好ましい遅速励起速度は、150、100、50、または10 mV/secよりも遅い速度である。
【0068】
[0071] 用語“平均初期厚”は、液体サンプルを導入する前の層の平均厚についていう。平均という用語が用いられるのは、上部表面層が凸面と凹面を持ち、平坦ではないためである。
【0069】
[0072] 用語“酸化還元強度”(redox intensity;RI)は、パルスシークエンスのための総励起時間および総緩和時間遅延の合計によって割り算された総励起時間として定義される。
【0070】
[0073] 用語“手持ち型の装置”は、人間の手で持つことができる装置として定義され、携帯型である。手持ち型の装置の例は、Bayer HealthCare, LLC(Elkhart, IN)から入手可能なAscensia(登録商標)Elite Blood Glucose Monitoring Systemに付随した測定装置である。
【0071】
[0074] 用語“上”(on)は、“上方”(above)として定義され、そして記載された物質の配向に関連している。たとえば、もし第一エレメントが第二エレメントの少なくとも一部を覆って(over)沈着する場合、第一エレメントは第二エレメントの“上に沈着”した、と言われる。他の例では、もし第一エレメントが第二エレメントの少なくとも一部の上方に存在する場合、第一エレメントは第二エレメント“上”にある、と言われる。用語“上”(on)の使用は、記載される上部エレメントと下部エレメントとの間に物質が存在することを除外しない。例えば、第一エレメントは上部表面の上にコーティングを有してもよいが、第一エレメントの少なくとも一部の上の第二エレメントおよびその上部表面コーティングは、第一エレメントの“上”(on)として記載されてもよい。したがって、用語“上”(on)の使用は関連づけられる2つのエレメントが物理的に接触していることを意味してもよく、または意味しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
[0075] 本発明は、以下の図面および記載を参照して、よりよく理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも同一縮尺ではなく、場合によっては本発明の原理を説明する際に強調される場合がある。さらに、図面中では、同様に参照された数字は、異なる図面を通じて、対応するパーツを示す。
図1】[0076] 図1Aは、組み立てられたセンサストリップの斜視図である。[0077] 図1Bは、蓋を取り除いた状態でのセンサストリップの上面図である。
図2】[0078] 図2は、図1Bのセンサストリップの端面図を示す。
図3】[0079] 図3Aおよび図3Bは、長時間および短時間の読みとりパルスの印加のあいだの、表面伝導体およびDBLを有する作用電極を示す。
図4】[0080] 図4Aおよび図4Bは、DBLを短時間の励起と組み合わせた場合の、測定正確性の改良を示すグラフである。
図5】[0081] 図5は、サンプル中の分析対象物の存在および濃度を決定する電気化学的解析方法を示す。
図6-1】[0082] 図6A図6Fは、サンプルの導入後に、複数の負荷サイクルをセンサストリップに対して印加するパルスシークエンスの6種の例を示す。
図6-2】[0082] 図6A図6Fは、サンプルの導入後に、複数の負荷サイクルをセンサストリップに対して印加するパルスシークエンスの6種の例を示す。
図6-3】[0082] 図6A図6Fは、サンプルの導入後に、複数の負荷サイクルをセンサストリップに対して印加するパルスシークエンスの6種の例を示す。
図7-1】[0083] 図7Aは、センサシステムからのサイクル状ボルタモグラムを示すグラフである。[0084] 図7Bは、サイクル状のスキャンを非サイクル状のスキャンと比較する。この場合、非サイクル状のスキャンの正の励起が、酸化還元対に関して、形式電位E°’近傍で開始された。
図7-2】[0085] 図7Cは、逆スキャンが逆電流ピークを終了させる場合の非サイクル状のスキャンを示す。[0086] 図7Dは、DLC領域に重ねられた、非サイクル状のスキャンを伴うサイクル状のスキャンを示す。
図8-1】[0087] 図8A図8Dは、50、100、および400 mg/dLグルコースを含有する40%ヘマトクリットWBサンプルについて、図6Cに示されるパルスシークエンス由来のボルタモグラムとしてプロットされる出力電流を示す。
図8-2】[0087] 図8A図8Dは、50、100、および400 mg/dLグルコースを含有する40%ヘマトクリットWBサンプルについて、図6Cに示されるパルスシークエンス由来のボルタモグラムとしてプロットされる出力電流を示す。
図9-1】[0088] 図9A図9Cは、図8A図8Cのボルタモグラム の輪郭特性を示す。
図9-2】[0088] 図9A図9Cは、図8A図8Cのボルタモグラム の輪郭特性を示す。
図10-1】[0089] 図10Aは、図7Aのサイクル状のボルタモグラムに対応する半積分のグラフである。[0090] 図10Bは、図7Cの非サイクル状ボルタモグラムに対応する非サイクル状データの半積分を示す。
図10-2】[0091] 図10Cは、図7Bのサイクル状の励起および非サイクル状の励起の半積分を示す。 [0092] 図10Dは、図7Dの非サイクル状励起についての、半積分および記録された電流値を示す。
図11】[0093] 図11は、様々な量のグルコースを含有するWBサンプルに対して、7回の励起パルスシークエンスからのボルタモグラムを半積分することにより調製された輪郭特性を示す。
図12-1】[0094] 図12Aは、20%ヘマトクリットWBサンプル中の16 mM フェロシアン化物のサイクル状のボルタモグラム、半積分、および半微分を示す。
図12-2】[0095] 図12Bは、図12Aの半微分曲線の拡大図である。
図13-1】[0096] 図13A図13Cは、サイクル状ボルタモグラムの微分を示す。
図13-2】[0096] 図13A図13Cは、サイクル状ボルタモグラムの微分を示す。
図14】[0097] 図14は、図11の輪郭特性に対する時間の関数として記録された半積分電流をプロットする。
図15】[0098] 図15は、充填量不足のセンサストリップから得られるサイクル状のボルタモグラムを示す。
図16-1】[0099] 図16Aは、WB中100 mg/dL グルコースおよび40%ヘマトクリットを含むサンプルについて、1 V/secスキャン速度を用いて5つのセンサストリップから得たサイクル状ボルタモグラムの半積分プロットを示す。[00100] 図16Bは、酵素濃度の関数として、0.15の電位で採取された正および逆のスキャン電流値の比をプロットする。
図16-2】[00101] 図16Cは、GO含量(%-乾燥重量)の関数として、センサストリップの線形応答較正の傾きの典型的な応答を示す。
図17】[00102] 図17は、測定装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
[00103] 電気化学的解析システムは、全血のグルコース濃度など、サンプル中の分析対象物の濃度を決定する。このシステムには、複数の負荷サイクルを含むゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスをサンプルに対して印加する、少なくとも1つの装置が含まれる。各負荷サイクルには、線形励起、サイクル状の励起、または非サイクル状の励起が含まれ、その間に、電流(アンペア)をセンサストリップから測定する一方、ストリップに対して印加される電位(ボルト)を時間とともに線形に変化させる。各負荷サイクルにはまた、開回路により提供することができる緩和が含まれる。このシステムは、得られる電流データを比較して、非-分析対象物反応性因子における分散値に対して結果を補正しつつ、サンプル中の分析対象物の濃度を決定することができる。このシステムはまた、半-積分、微分、および半微分に基づくデータ処理を含む1またはそれ以上のデータ処理を適用して、ボルタンメトリーデータを解析することができる。
【0074】
[00104] ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスは、分析の完了時間を短縮しつつ、分析に対する正確性と精密性の改良をもたらすことができる。ヘマトクリット効果により導入される正確性誤差およびキャップ-ギャップ容量が変動することにより導入される精密性誤差を、拡散バリア層をゲート化パルスシークエンスと組み合わせることを通じて、減少させることができる。本発明でなければ起こる、非-定常状態センサ条件および/またはメディエータバックグラウンドから生じる誤差もまた、減少させることができる。追加的な遅延およびパルス(試薬再水和をもたらすための“インキュベート”遅延、電極を更新するための“バーンオフ”パルス、およびメディエータの酸化状態を更新するためのメディエータ再生パルスなど)についての必要性を排除することにより、分析に必要とされる時間を減少させることができる。ゲート化パルスシークエンスはまた、動的電流(dynamic current)、そして複数の較正点、充填量不足検出、および分析に対して温度補正を適用する能力をもたらす輪郭特性、を決定することができる。ゲート化パルスシークエンスが、有用なデータを迅速に生成することができるため、従来型のクーロメトリーの長時間の待ち時間および従来型の電流測定法における非-定常状態測定の非正確性を、回避することができる。
【0075】
[00105] 図1A図1Bは、本発明のセンサシステムにおいて使用することができるセンサストリップ100を示す。図1Aは、組み立てられたセンサストリップ100の斜視図であり、これは、センサ基板110を含み、これは少なくとも部分的に蓋120により覆われており、そこには孔130、凹面領域140、および入力端部開口部150が含まれる。部分的に封入された容量160(キャップ-ギャップ)が、基板110と蓋120とのあいだに形成される。本発明と適合性のその他のセンサストリップのデザイン(U.S. Pat. Nos. 5,120,420および5,798,031に記載される様なものなど)もまた、使用することができる。
【0076】
[00106]分析用の液体サンプルを、液体を開口部150に導入することにより、キャップ-ギャップ160中に輸送することができる。液体は、キャップ-ギャップ160を充たしつつ、一方で、事前に含有されていた空気を孔130を介して排出する。キャップ-ギャップ160は、液体サンプルがキャップ-ギャップ中に残存することを補助する組成物(示されず)を含有していてもよい。そのような組成物の例には、水-膨潤性ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびポリエチレングリコール);および多孔性ポリマーマトリクス(例えば、デキストランおよびポリアクリルアミド)が含まれる。
【0077】
[00107] 図1Bは、蓋120を取り除いた状態のセンサストリップ100の上面図を示す。伝導体170および180は、誘電層190の下を、開口部150から作用電極175までおよびカウンタ電極185まで、それぞれ走行することができる。一側面において、作用電極175、およびカウンタ電極185は、図面中に示すように、実質的に同一平面に存在してもよい。別の側面において、電極175、185は、U.S. Pat. App. 2004/0054267に記載されるものなどのように、対向していてもよい。
【0078】
[00108] 作用電極175、およびカウンタ電極185がより近接していてもよいが、一側面において、電極175、185は、200または250μmよりも離れていてもよい。同様に、少なくとも1つの電極175、185がより近接していてもよいが、一側面において、少なくとも1つの電極は、蓋120の上部から少なくとも100μm離れていてもよい。一側面において、作用電極175、およびカウンタ電極185は、それぞれ、およそ1 mm2および1.2 mm2の表面積を有していてもよい。誘電層190は、電極175、185を部分的に覆っていてもよく、そして何らかの適切な誘電性物質(例えば、絶縁ポリマー)から形成されていてもよい。
【0079】
[00109] カウンタ電極185は、センサストリップ100の作用電極175で、電位を平衡化する。一側面において、この電位は、カウンタ電極185を酸化還元対(例えば、Ag/AgCl)から形成して、組み合わせ参照電極-カウンタ電極を提供することにより得られた参照電位であってもよい。別の側面において、カウンタ電極185 を不活性物質(例えば、炭素)から形成し、そして可溶性酸化還元種(例えば、フェリシアン化物)をキャップ-ギャップ160中に含ませることにより、センサシステムに対して電位を提供することができる。
【0080】
[00110] あるいは、センサストリップ100は、第三の伝導体および電極(示さず)を備えつけられ、参照電位をセンサシステムに対して提供することができる。この第三の電極を、真の参照電極として、または可溶性酸化還元種に依存して、参照電位を提供する不活性物質として、構成することができる。第三の電極はまた、測定装置が、センサストリップの挿入を決定することができ、および/またはキャップ-ギャップ160がサンプルで充足されているかどうかを決定することができる。追加の伝導体および/または電極もまた、ストリップ100上に備えつけられ、これらのそしてその他の機能を提供することができる。
【0081】
[00111] 図2は、図1B中に示されるセンサストリップの端面図を示し、作用電極175およびカウンタ電極185の層状構造を示す。伝導体170および180は、基板110上に直接位置していてもよい。表面伝導体層270および280は、それぞれ伝導体170および180上に沈着されていてもよい。表面伝導体層270、280は、同一の物質から作製されていても、または異なる物質から作製されていてもよい。
【0082】
[00112] 伝導体170、180および表面伝導体層270、280を形成するために使用される1または複数の物質には、いずれの電気的伝導体が含まれていてもよい。好ましい電気的伝導体は、非-イオン化のものであり、その結果この物質は、サンプルの分析のあいだに正味酸化または正味還元を受けない。好ましくは、伝導体170、180には、金属ペーストまたは金属(例えば、金、銀、プラチナ、銅、またはタングステン)の薄層が含まれる。好ましくは、表面伝導体層270、280には、炭素、金、プラチナ、パラジウム、またはそれらの組み合わせが含まれる。表面伝導体層が伝導体上に存在しない場合、伝導体は好ましくは、非-イオン化物質から形成される。
【0083】
[00113] 表面伝導体物質は、ホイル沈着、化学的蒸着、スラリー沈着、金属化などを含む、センサストリップの操作に適合性のいずれかの従来型の手段により、伝導体170、180上に沈着されていてもよい。スラリー沈着の場合、U.S. Pat. No. 5,798,031に記載されるように、混合物を、伝導体170、180に対してインクとして適用することができる。
【0084】
[00114] 試薬層275および285を、伝導体170および180上にそれぞれ沈着させることができ、それらには、試薬が含まれ、そして場合により結合剤が含まれていてもよい。結合剤物質は、好ましくは、少なくとも部分的に水溶性であるポリマー性物質である。結合剤として使用するための、適切な部分的に水溶性のポリマー性物質には、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシエチレンセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリリジンなどのポリアミノ酸、ポリスチレンスルホネート、ゼラチン、アクリル酸、メタクリル酸、スターチ、無水マレイン酸、それらの塩、それらの誘導体、およびこれらの組み合わせ、が含まれていてもよい。上述の結合剤物質の中でも、PEO、PVA、CMC、およびPVAが好ましく、CMCおよびPEOが現在の所より好ましい。
【0085】
[00115] 結合剤に加えて、試薬層275および285には、同一の試薬または別の試薬が含まれていてもよい。一側面において、第一層275中に存在する試薬を作用電極175により使用するために選択することができ、一方、第二層285中に存在する試薬をカウンタ電極185により使用するために選択することができる。たとえば、層285中の試薬は、サンプルと伝導体180とのあいだの電子の自由な流れを促進することができる。同様に、層275中の試薬は、分析対象物の反応を促進することができる。
【0086】
[00116] 試薬層275には、センサシステムの分析対象物に対する特異性、特に複合的な生物学的サンプル中における分析対象物に対する特異性、を高めつつ、分析対象物の反応を促進することができる、分析対象物に特異的な酸化還元酵素が含まれていてもよい。いくつかの特異的な酸化還元酵素および対応する分析対象物の例は、以下の表II中に記載する。
【0087】
【表2】
【0088】
現在のところ、グルコース分析のために特に好ましい酸化還元酵素には、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせ、が含まれる。
【0089】
[00117] 試薬層275には、分析対象物反応の結果を、表面伝導体270および/または伝導体170に対してより効果的に連絡するためのメディエータも含まれていてもよい。メディエータの例には、OTM錯体、配位錯体、および電気活性な有機分子が含まれる。具体的な例には、フェロセン化合物、フェロシアン化物、フェリシアン化物、置換または未置換のピロロキノリンキノン(PQQ)のコエンザイム、置換または未置換の3-フェニルイミノ-3H-フェノチアジン類(PIPT)、3-フェニルイミノ-3H-フェノキザジン(PIPO)、置換または未置換のベンゾキノン類、置換または未置換のナフトキノン類、Nオキシド類、ニトロソ化合物、ヒドロキシルアミン類、オキシン類、フラビン類、フェナジン類、フェナジン誘導体、フェノチアジン類、インドフェノール類、およびインダミン類が含まれる。これらのメディエータそして試薬層中に含まれていてもよいその他のメディエータは、U.S. Pat. Nos. 5,653,863;5,520,786;4,746,607;3,791,988;およびEP Pat. Nos. 0 354 441および0 330 517中に見いだすことができる。
【0090】
[00118] 現在のところ、グルコース分析のために特に好ましいメディエータには、フェリシアン化物、ルテニウムヘキサアミン、PIPT、PIPO、またはこれらの組み合わせが含まれる。生物学的酸化還元システム用の有用な電気化学的メディエータの概説は、Analytica Clinica Acta. 140 (1982), pages 1-18中に見いだすことができる。
【0091】
[00119] 試薬層275、285は、プリンティング、液体沈着、またはインクジェット沈着などの、いずれかの都合のよい手段により沈着されてもよい。一側面において、これらの層は、プリンティングにより沈着される。他の要因と同じ程度に、プリンティングブレードの角度は、試薬層の厚さに逆の影響を与える可能性がある。たとえば、ブレードが基板110に対して約82°の角度で移動される場合、層は、約10μmの厚さを有する可能性がある。同様に、基板110に対して約62°のブレード角を使用する場合、より厚い30μmの層を作製することができる。従って、より低いブレード角により、より厚い試薬層をもたらすことができる。ブレード角に加えて、例えば適用される物質の粘度並びにスクリーンサイズとエマルジョンの組み合わせなどのその他の要因が、試薬層275、285の得られる厚さに影響を与える可能性がある。
【0092】
[00120] 作用電極175には、試薬層275に必須の拡散バリア層(DBL)、または図2に示されるもののような別個の層290である拡散バリア層(DBL)が含まれていてもよい。従って、DBLを、伝導体上の試薬/DBLの組み合わせとして、伝導体上の別個の層として、または試薬層上の別個の層として、形成することができる。作用電極175に別個のDBL 290が含まれる場合、試薬層275は、DBL 290上に存在してもよくまたは存在しなくてもよい。DBL 290上に存在しない代わりに、試薬層275を、センサストリップ100のいずれかの部分の上に存在させて、試薬をサンプル中に溶解することができるようにしてもよい。たとえば、試薬層175は、基板110の上、または蓋120の上に存在してもよい。
【0093】
[00121] DBLは、測定可能種が存在することができる内部容量を有する多孔性空間を提供する。物理的により大型のサンプル構成成分(たとえば赤血球)を実質的に排除しつつ、測定可能種がDBL中に拡散することができる様に、DBLの孔を選択することができる。従来型のセンサストリップが、様々な物質を使用して赤血球を作用電極の表面から濾過したが、DBLは、サンプル由来の測定可能種の一部を含有しそして分離する様に、内部容量を提供する。
【0094】
[00122] 試薬層275に水溶性の結合剤が含まれる場合、励起の印加の前にサンプル中に溶解しない結合剤のいずれかの部分は、必須のDBLとして機能することができる。DBL/試薬層の組み合わせの平均初期厚は、好ましくは30または23マイクロメーター(μm)未満であり、そしてより好ましくは16μm未満である。現在のところ、DBL/試薬層の組み合わせの特に好ましい平均初期厚は、1〜30μm、または3〜12μmである。DBLから伝導体表面(たとえば、図2由来の伝導体170の表面または表面伝導体270の表面)への測定可能種の拡散速度が比較的一定になる場合に基づいて、DBL/試薬層の組み合わせの所望の平均初期厚を、特異的な励起の長さについて選択することができる。
【0095】
[00123] さらに、DBLから伝導体表面への測定可能種の拡散速度が比較的一定になる場合、短時間の励起の長さとともに非常に厚いDBLを使用することにより、遅延することができる。たとえば、0.5秒の緩和により分離される連続的な1秒の励起を含む負荷サイクルを、30μmの平均初期厚を有するDBL/試薬層の組み合わせを使用して作用電極に対して印加する場合、少なくとも6回の負荷サイクルを印加するまでは、好ましい測定可能種のDBLから伝導体表面への拡散速度には、到達することができない(>約10秒)。逆に、同一の負荷サイクルを11μmの平均初期厚を有するDBL/試薬層の組み合わせを使用する作用電極に対して印加する場合、2回目の励起の後に、比較的一定の拡散速度に到達することができる(約2.5秒)。したがって、所定の負荷サイクルのためのDBLの好ましい平均初期厚についての上限が存在する。DBL厚、励起の長さ、そして比較的一定の拡散速度に到達するまでの時間の間の相関性をより徹底的に処理することは、2005年10月12日に“Concentration Determination in a Diffusion Barrier Layer”との発明の名称で出願されたWO 2006/042304中に見いだすことができる。
【0096】
[00124] 別個のDBL290には、サンプル中で部分的に可溶性であるかまたはゆっくりと可溶性でありつつ、所望の多孔性空間を提供するいずれかの物質が含まれていてもよい。一側面において、別個のDBL 290には、試薬を含まない試薬結合剤物質が含まれていてもよい。別個のDBL 290は、少なくとも1μm、好ましくは5〜25μm、そしてより好ましくは8〜15μmの平均初期厚を有していてもよい。
【0097】
[00125] 図3Aおよび図3Bは、長時間および短時間の読みとりパルスの印加のあいだの、表面伝導体330および別個のDBL 305を有する作用電極300 を示す。WBサンプルを作用電極300に適用する場合、赤血球320は、DBL 305を覆う。サンプル中に存在する分析対象物は、DBL 305の外側の外部測定可能種310を形成する。外部測定可能種310の一部は、別個のDBL 305に拡散し、内部測定可能種315をもたらす。
【0098】
[00126] 図3Aに示されるように、連続10秒間の読みとりパルスを作用電極300に印加する場合、外部測定可能種310および内部測定可能種315は両方とも、酸化状態の変化により、表面伝導体330で励起される。長時間の読みとりパルスのあいだ、外部測定可能種310は、赤血球320が存在するサンプル領域を通って、そしてDBL 305を通って、表面伝導体330に拡散する。読みとりパルスのあいだの赤血球320を通じた外部測定可能種310の拡散は、分析に対してヘマトクリット効果を導入する。表面伝導体330で励起される測定可能種のかなりの部分が、DBL 320の外側から生じるものであるため、DBLを有するセンサストリップに対して印加される長時間の読みとりパルスは、DBLを有さないストリップに対して印加される短時間の読みとりパルスに対するヘマトクリット効果に関して、同様に作用することができる。
【0099】
[00127] 逆に、図3Bは、DBL 305の外部の励起測定可能種310を実質的に排除しつつ、短時間の励起がDBLを備えたセンサストリップ300に対して印加され、内部測定可能種315を励起する状況を示す。短時間の励起のあいだ、測定可能種310は、DBL 305に対して外部に残存するか、または実質的には表面伝導体330に到達するようにDBLを通じて拡散しないかのいずれかである。この様に、短時間の励起により、ヘマトクリット効果の分析に対する影響の実質的な減少をもたらすことができる。ヘマトクリット効果を減少させることにより、赤血球を含むサンプル構成成分により導入された分析誤差(バイアス)を、減少することができる。
【0100】
[00128] 短時間の励起を用いてDBLの内部での測定可能種を選択的に解析することの別の利点は、様々なキャップ-ギャップ容量を有するセンサストリップに由来する測定値非精密性を減少させることである。従来型の測定装置のエレクトロニクスは、各分析について同一の電位を印加し、そして同一の計算を行うため、センサストリップ間でのキャップ-ギャップ容量の分散(variance)は、非精密性を引き起こす可能性がある。読みとりパルスがキャップ-ギャップ中に存在する実質的にすべての測定可能種を解析する時間を超えて継続される場合、分析は、サンプル中の測定可能種の濃度をもはや示さず、代わりにキャップ-ギャップ中の測定可能種の量を示す;すなわち、非常に異なる測定値となる。従って、より大きなキャップ-ギャップ容量を有するセンサストリップは、サンプルの分析対象物濃度とは関係なく、より小さなキャップ-ギャップ容量を有するセンサストリップと比較して、より高い分析対象物濃度を示すだろう。分析をDBL中に存在する測定可能種に実質的に限定することにより、本発明以外ではセンサストリップ間の製造の多様性を生み出すことにより導入される不精密性を減少させることができる。
【0101】
[00129] 図4Aおよび図4Bは、DBLを短時間の励起と組み合わせた場合の、測定値の正確性における改良を示すグラフである。図4Aは、1秒の励起の後に、DBLを含まないセンサストリップから得られる、16%および48%較正線のあいだの差異(全ヘマトクリットバイアススパン)として示される大きな不正確性を示す。逆に、図4Bは、DBLを1秒の励起と組み合わせた場合のより正確な結果を示す較正線間のより小さな差異を示す。短時間の励起と組み合わせたDBLについての総バイアスヘマトクリットスパンは、DBLなしの総バイアススパンと比較して、ほぼ2/3少なかった(ほぼ1/3であった)。
【0102】
[00130] 上述したように、そしてWO 2006/042304においてさらに詳細に記載するように、短時間の読みとりパルスまたは励起は、分析の正確性および/または精密性における改善をもたらすことができる。しかしながら、単一の短時間の励起を分析のために使用する場合、DBLから伝導体表面への測定可能種の比較的一定の拡散速度には、分析の間には到達しない可能性がある。この条件はまた、結果として測定値の不正確性を生じる可能性がある。というのも、DBL中の測定可能種の濃度が、サンプル中の濃度を正確には示さないためである。さらに、単一の励起は、メディエータからのバックグラウンドシグナルを効果的に減少しない可能性がある。
【0103】
[00131] 図5は、サンプル512中の分析対象物522の存在および場合によってはその濃度を決定するための電気化学的分析500を示し、これが短時間の励起と関連する欠点を解消する可能性がある。一側面において、分析500は、DBLの有無に関わらずより短時間の分析時間をもたらしつつ、メディエータバックグラウンドからのバイアスを減少させることができる。好ましい側面において、分析500を、3分未満または1分未満で完了することができる。より好ましい側面において、分析500を、2〜50秒、または4〜32秒で完了させることができる。
【0104】
[00132] 510において、サンプル512を、センサストリップ514(図1A図1Bおよび図2に示すセンサストリップなど)に対して導入する。試薬層(図2由来の275および/または285など)は、サンプル512中に溶解し始め、そして反応を行わせる。分析におけるこの時点で、初期時間遅延または“インキュベーション期間”を、サンプル512と反応するための試薬に対して供給してもよく、またしなくてもよい。好ましくは、前記の時間遅延は、1〜10秒であってもよい。初期時間遅延のより徹底的な処理は、U.S. Pat. Nos. 5,620,579および5,653,863において見いだすことができる。一側面において、分析500は、インキュベーション期間についての必要性を低下させることができる。
【0105】
[00133] 反応のあいだ、サンプル512中に存在する分析対象物522の一部は、酸化還元酵素によるなどして、520において、化学的にまたは生化学的に酸化されまたは還元される。酸化または還元に際して、電子が、530における分析対象物522とメディエータ532とのあいだで輸送されてもよい。
【0106】
[00134] 540において、測定可能種542(520に由来する荷電された分析対象物522または530に由来する荷電されたメディエータ532であってもよい)は、電気化学的に励起される(酸化されまたは還元される)。たとえば、サンプル512が、520におけるグルコースオキシダーゼにより酸化されたグルコースを含有し、そして電子を輸送して、530においてフェリシアン化物(III)メディエータをフェロシアン化物(II)へと還元する全血である場合、540の励起は、作用電極で、フェロシアン化物(II)をフェリシアン化物(III)へと酸化する。このように、電子は、グルコース分析対象物からセンサストリップの作用電極へと選択的に輸送され、そこでそれを測定装置により検出することができる(データを示さず)。
【0107】
[00135] 励起540には、ボルタンメトリーのスキャニングが含まれ、そこでは様々な電位または“スキャン”が、センサストリップ514の電極を通じて、実質的に固定された速度(V/sec)で印加される。スキャン速度は、ゆっくりであっても早くであってもよい;しかしながら、ゲート化パルスシークエンスの性質のため、高速スキャンが好ましい。一側面において、電位がスキャンされる速度は、少なくとも2 mV/sec、好ましくは20〜5000 mV/sec、より好ましくは200〜2000 mV/secである。現在のところ、特に好ましいスキャン速度は、500〜1500 mV/secである。
【0108】
[00136] 励起540の期間は、せいぜい4または5秒であり、そして好ましくは3、2、1.5、または1秒未満である。別の側面において、励起540の期間は、0.1〜3秒、0.1〜2秒、または0.1〜1.5秒である。より好ましくは、励起540の期間は、0.4〜1.2秒である。
【0109】
[00137] 550において、スキャニング励起540の結果として生じる電流をモニターして、そして印加電位(電圧)の関数として記録することができる。このことは、電流を時間の関数として測定しながら定電圧を印加する従来型の電流測定法およびクーロメトリーと対比される。一側面において、電流は、励起540のあいだモニターされそして記録される。別の側面において、電流を、緩和560のあいだ、または少なくとも緩和560の一部のあいだ、モニタリングしない。別の側面において、作用電極での電流および電位を、少なくとも緩和560の一部のあいだモニタリングすることができるが、しかしその値は、分析対象物522の濃度を決定する際に使用しない。
【0110】
[00138] 560において、サンプルは、緩和を受け、その場合、測定装置は、センサストリップ514を通じて回路を開放し、その結果このシステムを緩和させることができる。緩和560のあいだ、励起540のあいだに印加される電流は、少なくとも1/2、好ましくは1桁分、そしてより好ましくはゼロまで、実質的に減少される。好ましくは、ゼロ電流状態が、開回路により提供される。一側面において、緩和560は、少なくとも10、5、3、2、1.5、1、または0.5秒間の期間である。別の側面において、緩和560は、0.1〜3秒間の期間、0.1〜2秒間の期間、または0.1〜1.5秒間の期間である。より好ましくは、緩和560は、0.2〜1.5秒間の期間であり、開回路により提供される。
【0111】
[00139] 緩和560のあいだ、イオン化剤は、分析対象物と反応して、電位の作用なしに、追加の測定可能種を生成することができる。従って、グルコースオキシダーゼおよびフェリシアン化物メディエータを試薬として含むグルコースセンサシステムについて、サンプルの分析対象物濃度に応じた追加のフェロシアン化物(還元されたメディエータ)を、緩和560のあいだ、電位からの妨害なしに生成することができる。
【0112】
[00140] 励起540、記録550、および緩和560は、単一の負荷サイクルを構成する。570において、負荷サイクルは、全部で少なくとも2回の負荷サイクルのあいだに少なくとも1回繰り返される。一側面において、負荷サイクルは、180秒間、90秒間またはそれ未満のあいだに、全部で少なくとも3回の負荷サイクルのあいだ少なくとも2回繰り返される。別の側面において、分析500のパルスシークエンスには、独立して選択された120、90、60、30、15、10、または5秒間の期間のあいだに印加される少なくとも4、6、8、10、14、18、または22回の負荷サイクルが含まれる。別の側面において、負荷サイクルは、5〜60秒間の期間のあいだ印加される。別の側面において、3〜18回または3〜10回の負荷サイクルを、30秒間またはそれ未満のあいだに印加することができる。別の側面において、4〜8回の負荷サイクルを3〜16秒間のあいだに印加することができる。
【0113】
[00141] 分析500の負荷サイクルの反復的な“on”および“off”の性質は、読みとりパルスの期間のあいだ5〜10秒間、電圧が連続的にセンサストリップに対して印加され、そして、電流がセンサストリップから連続的に流出する従来型の方法と直接的に対比される。これらの従来型の方法に対して、印加された電圧は、固定された電位を有してもよく、または参照電位に対して、正電位から負電位まで、または正電位または負電位からゼロ電位まで、掃引される電位を有していてもよい。ゼロ相対電位であっても、これらの方法は、読みとりパルスのあいだセンサストリップから電流を連続的に取り出し、それにより電気化学的反応を読みとりパルスのあいだずっと継続させることができる。したがって、これらの従来型の方法において、分析対象物濃度に応じた測定可能種を生成する反応、および作用電極に対する測定可能種の拡散は、両方とも、従来型の読みとりパルスのゼロ電位部分のあいだの電流により影響を受ける。分析500のパルスシークエンスは、複数の緩和560があるため、複数の測定値を伴う単一の長期間パルスを使用する従来型の方法(U.S. Pat. No. 5,243,516に開示される方法など)とは、顕著に異なる。
【0114】
[00142] 580において、記録された電流および電圧値は、1またはそれ以上のデータ処理により、変換することができる。変換された値を使用して、サンプル512中の分析対象物522の存在および/または濃度を決定することができる。変換された値を使用して、以下に概説する、サンプルのヘマトクリット濃度、複数の較正セット、充填量不足、およびセンサストリップの活性イオン化剤含量、を含む、分析500のその他の特徴を決定することもできる。
【0115】
[00143] 図6A図6Fは、方法500とともに使用することができるゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスの6種の例を示す。各パルスシークエンスにおいて、サンプルの導入後に、複数の負荷サイクルを、センサストリップに対して印加した。各負荷サイクルのボルタンメトリーの励起部分を、線形(図6A)、サイクル状(図6B)、または非サイクル状(図6C図6F)に印加することができる。これらの例において、傾斜波(線形)の励起パルスまたは三角形波(サイクル状または非サイクル状)の励起パルスを使用した;しかしながら、センサシステムおよびサンプルに適合性のその他の波形も使用することができる。
【0116】
[00144] 図6Aは、電位(ボルト)が時間とともに線形に最終点まで増加するような、複数の傾斜波型の励起を示す。図6Bは、フェリシアン化物メディエータの完全な電位範囲が含まれるサイクル状のデータをもたらす複数の三角形波励起を示す。図6Cは、実質的に同一電位(ボルト)で開始しそして終了する、非サイクル状のデータをもたらす6回の三角形波励起を含む、6回の負荷サイクルを示す。図6Cの最後の励起において、終端読みとりパルス640が、緩和を行わないため、ちょうど6回の負荷サイクルが示される。図6Dは、非サイクル状のデータをもたらす7回の三角形波励起を含む7回の負荷サイクルを示す。最初の負荷サイクルの前に、最初のインキュベーション期間を置く。図6Eは、異なる電位(ボルト)で開始されそして終了される非サイクル状のデータをもたらす複数の三角形波励起を示す。図6Fは、フェリシアン化物/フェロシアン化物酸化還元対の酸化ピークおよび還元ピークを実質的に排除する非サイクル状のデータを結果的に生じる、複数の三角形波励起を示す。
【0117】
[00145] 終端読みとりパルス640は、図6Cに示されるように先行する負荷サイクルの励起と同一の期間およびスキャン速度を有してもよく、または終端読みとりパルス640は、異なる期間または速度を有してもよい。一側面において、終端読みとりパルス640は、先行する負荷サイクルの励起に関して、より長い期間および上昇した電位(ボルト)であってもよい。電位(ボルト)の上昇は、より高い酸化電位を有する種、例えば対照溶液、を検出する能力をもたらすことができる。終端読みとりパルスに関するより完全な検討は、2005年4月8日に出願された、“Oxidizable Species as an Internal Reference in Control Solutions for Biosensors.”という発明の名称のU.S.仮出願No. 60/669,729中に見いだすことができる。
【0118】
[00146] 既知量のグルコースを含有する対照溶液を使用して、分析システムが適切に作動しているかどうかを検証することができる。対照溶液のための特異的な製剤を、U.S. Pat. Nos. 3,920,580;4,572,899;4,729,959;5,028,542;5,605,837;およびPCT国際公開WO 93/21928;WO 95/13535;およびWO 95/13536中に見いだすことができる。測定装置が対照溶液由来のシグナルとサンプル由来のシグナルとを区別することができない場合、対照溶液読みとり値を分析対象物の値として保存する可能性がある。従って、たとえば、患者のグルコース読みとり値の履歴は、糖尿病状態に関して不正確である可能性がある。
【0119】
[00147] 対照溶液を同定することができず、そしてそれらの応答が試験測定器により血液サンプルの応答とは分離されている場合、対照溶液のグルコース読みとり値は、グルコース測定値の履歴に含まれ、患者の糖尿病症状の解釈を誤った方向に導く可能性がある。
【0120】
[00148] 図6A図6Fに示されたパルスシークエンスのための各負荷サイクルは、引き続いておこる開回路緩和時間よりも短い期間の励起時間をもたらす;しかしながら、これは必要なものではない。図6Cにおいて、励起の期間は1 V/secの速度では0.8秒間であるが、一方各緩和の期間は約3.2秒間である。従って、各負荷サイクルは、約4秒間の期間を有し、そしてパルスシークエンスは終端読みとりパルスを含め約24.8秒間持続し、0.226の酸化還元強度(RI)(5.6/24.8)をもたらす。図6Dのパルスシークエンスは、0.2のより低いRIをもたらし(5.6/28)、それは最初の負荷サイクルの前のインキュベーション期間に起因する。
【0121】
[00149] パルスシークエンスのためのRIが高いほど、メディエータによる分析へ導入される正確性におけるバックグラウンドがより少なくなる。図6A図6Fで表されるパルスシークエンスは、測定可能種である還元されたメディエータを励起する(すなわち酸化する)ように設計された、酸化的パルスである。したがって、所定の期間内にセンサストリップに印加された酸化電流が大きくなるほど、分析目的物の酸化以外の経路によって還元されるメディエータが、記録される電流値に寄与する機会が少なくなる。合わせると、ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスの複数の励起は、メディエータの酸化状態を回復するための初期パルスの必要性を除去することができる。フェリシアン化物については、少なくとも0.01、0.3、0.6、または1のRI値を有するパルスシークエンスが好ましく、0.1〜0.8のRI値、0.2〜0.7のRI値、または0.4〜0.6のRI値を有するパルスシークエンスが現在のところより好ましい。
【0122】
[00150] 図6Aに示される正の(forward)励起610などの線形励起のあいだ、作用電極での電流が測定され、同時に作用電極での電位が、一定速度で、時間の経過とともに線形に変化する。励起範囲、例えば-0.5 V〜+0.5 V、が、酸化還元対の還元状態および酸化状態をカバーすることができ、それにより第1の状態から第2の状態への遷移が生じる。作用電極で測定された電流は、3種の成分を有するものであると考えることができる:平衡電流、拡散電流、そして表面電流である。表面電流は、電極上に吸着されたどのような種からも生じうるが、通常は小さい。平衡電流および拡散電流は、結果的に得られるボルタモグラムにおいて示される主要な成分である。
【0123】
[00151] 線形のボルタモグラム(電流vs電位のプロット)は、励起のあいだに、初期電流で開始され、ピーク電流に達し、そして、より低い拡散限界電流(DLC)レベルにまで減衰するプロットにより特徴づけることができる。初期電流は、印加された電位に実質的に依存するが、一方DLCは依存しない。スキャンが十分に遅い場合、DLCを、ボルタモグラムにおけるプラトー領域として見ることができる。
【0124】
[00152] DLC領域は、伝導体表面での測定可能種の酸化または還元が実質的に拡散により限定される最大の速度に到達する状態を示す。拡散を、測定可能種がサンプルから伝導体表面へと輸送される速度により限定することができる。あるいは、センサストリップの作用電極にDBLが含まれる場合、測定可能種がDBLから伝導体表面へと輸送される速度により拡散を限定することができる。
【0125】
[00153] 試薬層の再水和の後、比較的一定の拡散速度で記録されたDLC値は、本発明以外では試薬の再水和および拡散速度の多様性によって導入される可能性のある不正確性を最小にすることができる。従って、いったん比較的一定の拡散速度に到達すると、記録されたDLC値を、測定可能種の濃度、そして従って分析対象物の濃度に、より正確に対応させることができる。
【0126】
[00154] 図6Bおよび図6Cにそれぞれ示される様なサイクル状または非サイクル状の励起について、正の励起610が完了した後、逆向き電位の線形励起620を印加する。励起620の逆向き電位線形スキャンを、正のスキャン610と実質的に同一の速度で印加することができる。従って、励起範囲は、第一のより低い値からより高い値へ、そして第二のより低い値に戻るまでスキャンされ、その場合第一のより低い値と第二のより低い値は、サイクル状のスキャンまたは非サイクル状のスキャンについて、それぞれ同一であってもよく、または同一ではなくてもよい。サイクル状の励起、そしていくつかの事例においては非サイクル状の励起、は、印加された電位に関して、または伝導体表面に対する酸化還元種の拡散速度に関して、還元された状態から酸化された状態(そしてその逆も)の酸化還元種の遷移を調べることができる。
【0127】
[00155] 線形励起に関して、サイクル状のおよび非サイクル状の励起は、励起のDLC領域のよりよい説明を提供することができる。サイクル状の励起および非サイクル状の励起の利点は、高速スキャン速度で準-可逆性酸化還元対からDLCを定量するために特に好都合である可能性がある。線形のおよびサイクル状のスキャンボルタンメトリーの追加的な情報を、“Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications”by A.J. Bard and L.R. Faulkner, 1980中に見いだすことができる。
【0128】
[00156] 図7Aは、サイクル状ボルタモグラムとして、フェリシアン化物/フェロシアン化物酸化還元対の25 mV/secのサイクル状の励起から得られるデータを示す。ボルタモグラムは、フェロシアン化物の酸化を示す-0.3 V〜+0.6 Vのスキャンの正の部分のあいだの正の電流ピーク、およびフェリシアン化物の還元を示す+0.6 Vから-0.3 Vまで戻る逆の電位スキャンのあいだの逆電流ピーク、により特徴づけられる。正および逆の電流ピークは、カウンタ電極を参照した場合、フェロシアン化物/フェリシアン化物酸化還元対の形式電位E0’付近を中心とする。この側面において、カウンタ電極の電位は、カウンタ電極上に存在する主要な酸化還元種であるフェリシアン化物の還元電位により実質的に決定される。
【0129】
[00157] 正および逆のスキャンが始まる電位(励起範囲)を酸化還元対の還元された状態および酸化された状態を含むように選択することができる一方、分析時間を短くするように励起範囲を減少させることができる。しかしながら、励起範囲には、好ましくは、酸化還元対に対するDLC領域が含まれる。たとえば、25 mV/secのスキャン速度では、フェロシアン化物/フェリシアン化物可逆性酸化還元対の還元された種の濃度[Red]および酸化された種の濃度[Ox]、および結果として生じる電極電位が、以下のネルンストの式により記述される。
【0130】
【数1】
【0131】
[00158] ネルンストの式において、Rは8.314 Joul/(mole*K)の気体定数であり、Fは96,5000 Coul./equiv.のファラデー定数であり、nはモルあたりの等量の数であり、そしてTはKelvinでの温度である。作用電極での電位がそれ自体の酸化還元電位を参照する場合、形式電位E0’は実質的にゼロになり、そしてその式は以下の式に変形される:
【0132】
【数2】
【0133】
式(2)から、酸化されたメディエータの還元されたメディエータに対する比率が10変化する場合、作用電極での電位は約60 mV変化する。逆もまた真である。したがって、フェリシアン化物濃度[Ox]のフェロシアン化物濃度[Red]に対する比率が10:1、100:1、1000:1および10,000:1である場合に、作用電極での電位はそれぞれゼロ電位から約60、120、180、および240 mV離れるであろう。
【0134】
[00159] したがって、フェリシアン化物のフェロシアン化物に対する比率が約1000:1である場合、-180 mV〜+180 mVのスキャン範囲は、作用電極における還元された種の実質的に完全な酸化をもたらしうる。180 mVでは、酸化速度が還元型のメディエータがどの程度速く伝導体表面に対して拡散することができるかにより限定され、そしてこの電位から、DLC領域が存在する。したがって、反転点をゼロ電位から約400 mVに設定する場合、約200 mVのDLC領域を提供することができる。
【0135】
[00160] 可逆性システムについて、400〜600 mVの励起範囲を提供し、それにより酸化還元対の形式電位E0’の各側の200〜300 mVにて励起することが好ましい。準-可逆性システムについて、600〜1000 mVの励起範囲を提供し、それにより酸化還元対の形式電位E0’の各側の300〜500 mVにて励起することが好ましい。
【0136】
[00161] DLC領域がより小さい可能性があるため、準-可逆性システムについてはより大きな励起範囲が好ましい。もともと準-可逆性である酸化還元対に加えて、高速スキャン励起により、遅速励起速度で可逆性である酸化還元対が、準-可逆性の振る舞いを示すようにする可能性がある。従って、高速励起速度での可逆性酸化還元対のためには、より大きな準-可逆性励起範囲を提供することが好ましい。
【0137】
[00162] 好ましくは、少なくとも25、50、100、150、または300 mVのDLC領域が、選択された励起範囲によりもたらされる。別の側面において、サイクル状の励起または非サイクル状の励起の反転点を選択し、それにより25〜400 mV、50〜350 mV、100〜300 mV、または175〜225 mVのDLC領域を提供する。可逆性システムについて、サイクル状の励起または非サイクル状の励起についての反転点を選択し、それにより180〜260 mVまたは200〜240 mVのDLC領域を提供することができる。準-可逆性システムについて、サイクル状の励起または非サイクル状の励起についての反転点を選択し、それにより180〜400 mVまたは200〜260 mVのDLC領域を提供することができる。
【0138】
[00163] いったん反転点を選択して所望のDLC領域を提供すると、逆のスキャンの期間を非サイクル状のスキャンに関して選択することができる。図7Bにおいて見ることができるように、約-0.025 mVで正のスキャンを開始しそして逆のスキャンを終了する結果、逆電流ピークよりも正の電流ピークが多く含まれる非サイクル状のスキャンが生じた。図7Bの対比から、サイクル状のスキャンについて得られたピーク電流(a)および非サイクル状のスキャンについて得られたピーク電流(b)は異なる一方、これらのスキャンのDLC領域はほぼ同一であり、特に逆のスキャンに関してほぼ同一である。
【0139】
[00164] 別の側面において、図7Cに示されるように、逆電流ピークが到達する前に、逆励起を終了させることができる。正の励起を、酸化還元対の電位範囲の中間、例えば図7Cにおいては-0.05 mVに対して、図7Cにおける-0.3 mVなどの十分に負の電位で開始した場合、正の励起には、酸化還元対の酸化還元電位の全範囲が含まれた。従って、たとえば、反転点から50〜500 mV、150〜450、または300〜400 mVだけ負の電位で逆励起を終了させることにより、逆電流ピークをフェリシアン化物/フェロシアン化物酸化還元対について排除することができる。
【0140】
[00165] 同様に、逆励起電流がDLC由来の値において偏位する場合に励起を終了することにより、逆電流ピークに到達する前に、逆励起を終了させることもできる。少なくとも2%、5%、10%、または25%の逆励起電流の変化を使用して、逆励起電流ピークの開始を示すことができる。
【0141】
[00166] 図7Dは、酸化還元対の正および逆の酸化ピークを含む1 V/secのサイクル状のボルタモグラムを、酸化還元対の正および逆の酸化ピークを排除する1 V/secの非サイクル状のボルタモグラムと比較する。非サイクル状の励起は、200 mVの開始点および終了点を有し、そして300 mVの反転点を有した。フェリシアン化物/フェロシアン化物酸化還元対のDLC領域内での非サイクル状の励起についての好ましい励起範囲は、正および逆の酸化および還元のピークを排除するものであるが、10〜200 mV、より好ましくは50〜100 mVである。完全なスキャン範囲を含むサイクル状のボルタモグラムは、電流ピークに達した後顕著に減衰したが、一方、非サイクル状のボルタモグラムは、スキャン範囲にわたり、実質的に平坦な電流領域をもたらした。この電流領域を、サンプルの分析対象物濃度と直接的に相関させることができる。
【0142】
[00167] 図7Dにおいて見られるように、非サイクル状の励起について記録された電流値は、サイクル状の励起の電流値よりも数値的には小さく、一方バックグラウンド電流は、非サイクル状の励起についてより低い。バックグラウンド電流におけるこの有益な減少は、サイクル状の励起の還元ピーク部分において、非サイクル状の励起を開始する必要なく、予期せず得られた。従って、酸化還元対のDLC領域内の高速で短時間の非サイクル状の励起により、シグナル-対-バックグラウンド比率の増加をもたらし得るバックグラウンド電流の減少のため、分析対象物決定の正確性を増加させることができる。
【0143】
[00168] サイクル状の励起および非サイクル状の励起は、線形励起と比較して複数の利益を提供することができる。一側面において、反転点から逆電流ピークが開始する点までの逆のスキャンの一部は、正のスキャンのDLC領域よりも、真のDLC値をよりよく提示することができる。逆励起のDLC領域は、正の励起が明らかなDLC領域を示すことができないため、準-可逆性酸化還元システムについてのまたは高速励起速度での分析対象物濃度のより正確な説明であってもよい。
【0144】
[00169] 非サイクル状の励起は、より短時間の励起時間および電気化学的に測定可能状態に変換される実質的なメディエータの量の減少を含め、サイクル状の励起を超える複数の利点を有することができる。従って、メディエータが、分析対象物に応じて還元され、そして測定のあいだに電気化学的に酸化される場合、酸化メディエータが電気化学的に還元される前に逆励起を終了させることは、分析対象物に対応しないサンプル中の還元されたメディエータの量を減少させる。同様に、測定可能種を還元する電位よりも高い電位で正の励起を開始することは、分析対象物に対応しないサンプル中の還元されたメディエータの量を減少させることもできる。非サイクル状の励起は両方とも、より短時間の分析時間を可能にすることができ、これはユーザーにとっては顕著な利益である。
【0145】
[00170] 図8A図8Dは、40%ヘマトクリットおよび0、50、100、および400 mg/dLのグルコースを含有するWBサンプルに対して、7回の三角波形励起を使用して、図6Cのパルスシークエンスに由来する電位の関数としてプロットされた出力動的電流を示す。スキャン速度は、1 V/secであった。従来型の長時間持続時間の読みとりパルスが、測定可能種の十分な酸化を生じる代わりに、各三角励起の次に緩和が行われ、電流特性の中断をもたらした。各連続的励起から得られた電流を異なる“rep”線としてプロットし、それにより各図についてrep1〜rep7をもたらした。
【0146】
[00171] 図8A図8Dのボルタモグラムにおいて複数の励起のそれぞれから得られた電流値(各rep)を、単一のデータ点に変換し、そしてつないで図9A図9Cの輪郭特性を得た。図9Aおよび図9Bに関して、各連続的励起のDLC領域における同一の電位、例えば300 mV、での電流値を選択することにより、変換が行われた。図9Aにおいて、図8A図8Dに由来する電流値を、パルスシークエンスの終点から、時間の関数として直接的にプロットした。図9Bにおいて、半積分データ処理を、プロッティングの前に電流値に対して適用した。図9Cに関して、各repのピーク電流値を選択し、そして半微分データ処理を使用することにより、複数の励起を単一データ点に変換した。このように、輪郭特性のX-軸は、時間の観点から表され、従って定常状態で従来型のシステムから得られたデータを模倣するが、その場合、時間とともに生じる電流変化は、実質的に一定である。記録されたボルタモグラム電流を複数の方法で処理して、有用な情報を抽出することができる一方、半積分、半微分、および微分データ処理が現在のところ好ましい。
【0147】
[00172] ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスから得られた動的電流特性は、単一の読みとりパルスを使用する従来型の分析から得られた電流特性とは基本的に異なる。単一読みとりパルスから記録された電流が、単一の緩和/拡散を引き起こす一方、動的電流の輪郭特性における各時間点は、独立した緩和/拡散プロセスの後の励起に由来する。さらに、励起の長さが長くなればなるほど、電流と分析対象物濃度との相関性は、しばしばヘマトクリット効果のため、低下することがある。従って、複数の励起を組み合わせた持続時間を有するより長時間の読みとりパルスを使用する分析と比較して、複数の短時間の励起を用いた分析の正確性は、上昇しうる。
【0148】
[00173] これらのデータ処理をグルコース分析に対して適用することは、以下に記載される。しかしながら、電気化学的電流および関連するデジタル実現を変換するためのデータ処理についてのより徹底的な検討は、以下のものに見いだすことができる(Bard, A.J., Faulkner, L.R., “Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications,”1980;Oldham, K.B.;“A Signal-Independent Electroanalytical Method,”Anal. Chem. 1972, 44, 196;Goto, M., Oldham, K.B., “Semi-integral Electroanalysis: Shapes of Neopolarograms,”Anal. Chem. 1973, 45, 2043;Dalrymple-Alford, P., Goto, M., Oldham, K.B., “Peak Shapes in Semi-differential Electroanalysis”Anal. Chem. 1977, 49, 1390;Oldham, K.B., “Convolution: A General Electrochemical Procedure Implemented by a Universal Algorithm,”Anal. Chem. 1986, 58, 2296;Pedrosa, J.M., Martin, M.T., Ruiz, J.J., Camacho, L., “Application of the Cyclic Semi-Integral Voltammetry and Cyclic Semi-Differential Voltammetry to the Determination of the Reduction Mechanism of a Ni-Porphyrin,”J. Electroanal. Chem. 2002, 523, 160;Klicka, R, “Adsorption in Semi-Differential Voltammetry,”J. Electroanal. Chem. 1998, 455, 253)。
【0149】
[00174] ヘマトクリットに影響を受けた平衡si電流およびヘマトクリットについて、別のシグナルを観察することができるため、ボルタモグラムの半積分は、DLCをヘマトクリットに影響を受けた平衡電流(初期ピーク)から分離することができる。このことは、遅速スキャン速度で特に正しい。実験的に得られたボルタンメトリーの電流i(t)の半積分は、以下の数式を有する:
【0150】
【数3】
【0151】
ここで、i(t)はスキャンのあいだに得られたボルタンメトリーの電流の時間関数である;
I(t)は、i(t)の変換および半積分である;
uは、変換パラメータである;そして
d-1/2/dt-1/2は、半積分作用素である。
【0152】
[00175] 十分に高い酸化電位では、定常状態の半積分電流が以下の式により得られる:
【0153】
【数4】
【0154】
ここで、Ilimは、酸化可能種の表面濃度がゼロであるという条件の下でのDLCである。半積分電流の単位は、coul/sec1/2であり、これは電流を表すための伝統的な単位、coul/secではない点に注意すべきである。
【0155】
[00176] 単純にするため、Ilimは、coul/sec1/2の単位を伴う半積分DLC(SI)と呼ばれる。このSI電流(coul/sec1/2)は、電流(coul/sec)からの半行程積分(half-step integration)でしかない。半行程積分は、全積分(full integral)をi-t曲線に対して適用し、電極を通り抜ける全電荷を提供するクーロメトリーとは、基本的に異なる。
【0156】
[00177] 式(3)が半積分の理論的定義を与えるが、デジタルプロセシングに関しては、i-tデータは、t = 0とt = NΔtとのあいだのN個の均等にあけられた時間間隔に分割することができる。そのようなデジタルプロセシングアルゴリズムの一つは、式(5)により提供され、ここでt = kΔtおよびu = jΔtであり、そしてiは各間隔の中間点で決定される。
【0157】
【数5】
【0158】
デジタルプロセシングのための好ましいアルゴリズムは、以下により提供される:
【0159】
【数6】
【0160】
ここで、Γ(x)は、xのガンマ関数であり、ここでΓ(1/2)= π1/2、Γ(3/2)= 1/2π1/2、そしてΓ(5/2)= 3/2*1/2π1/2、などである。
[00178] 式(4)から、SI電流は、従来型の電流測定方法の時間-依存性因子を有さないと見ることができる。従って、SI電流反応は、従来型の電流測定法から得られる連続的に変化する電流測定電流ではなく、一連のプラトー電流と考えることができる。半積分により、DLCの定量が可能になるため、ピーク電流が定量される場合と比較して、より高速スキャン速度を使用することができる。従って、半積分と組み合わせた、線形の、サイクル状の、または非サイクル状のボルタンメトリーは、グルコース濃度に応じて、DLCを迅速に生成することができる。このように、クーロメトリーの長時間の待ち時間や、従来型の電流測定法における電流の非-定常状態特性といった欠点を、減少することができる。
【0161】
[00179] 式(4)は、可逆性または準-可逆性酸化還元対を半-積分とともに使用するために好ましいこともまた、示す。このことは、可逆性または準-可逆性酸化還元対に由来する半積分が、還元された状態から酸化された状態(そしてその逆もまた)への急激な遷移、および幅広いDLC領域を示し、従って遷移を決定しやすくすることができるためである。フェリシアン化物/フェロシアン化物およびルテニウムヘキサアミンの+3の状態および+2の状態は、好ましい可逆的ふるまい(遅速スキャン)または準-可逆的ふるまい(高速スキャン)を示す酸化還元対の例である。
【0162】
[00180] あまり活性化されていない電極は、可逆性または準-可逆性酸化還元対をもってしても、許容可能なDLC状態を提供することができない。従って、U.S. Pat. No. 5,429,735に記載されるものなどの、電極活性化手順を使用して、好ましい電極活性を達成することができる。
【0163】
[00181] 半積分に加えて、ボルタモグラムの半微分を使用して、半微分のピークを測定することにより、分析対象物を定量することもできる。実験的に得られたボルタンメトリーの電流i(t)の半微分は、以下の数式を有する:
【0164】
【数7】
【0165】
【数8】
【0166】
ここで、I(t)は、時間関数i(t)の半積分である。以下に記載される半積分、半微分、および微分データ処理のために使用された式は、CH Instruments Electrochemical Workstation, model CHI 660Aに付属するElectrochemical Workstationソフトウェアパッケージ、version 4.07(2004年4月26日に改訂)を用いて実行された。
【0167】
[00182] 図10Aは、図7Aに由来するサイクル状のボルタモグラムの半積分プロットを提示する。同様に、図10Bは、図7Cに由来する非サイクル状のボルタモグラムの半積分プロットを提示し、ここで、逆励起は、逆電流ピークの開始前に終了された。図10Cは、図7Bのサイクル状の励起および非サイクル状の励起の半積分をプロットした場合に、逆スキャンのDLC領域が容易に確立され、それにより反転点からわずか50 mVでの正確な電流読みとり値を可能にすることを立証する。さらに、半積分プロットのピーク部分は、サンプルのヘマトクリット含量に応答性であり、そしてピークの大きさを、ヘマトクリットレベルに対して定量的に関連づけることができる。
【0168】
[00183] 図10Dは、図7Dのサイクル状の励起および200〜300 mVの非サイクル状の励起に対する半積分を示す。短時間の非サイクル状の励起に由来するsiボルタモグラムの形状は、酸化-還元遷移の領域が非サイクル状の励起からは失われているため、サイクル状の励起のボルタモグラムとは異なる。DLC領域において非サイクル状の励起を開始することにより、バックグラウンドsi電流は、サイクル状のボルタモグラムについて観察された電流と比較してより速い速度で減少し、従って非サイクル状の励起についてのシグナル-対-バックグラウンド比を改善することができた。さらに、非サイクル状の励起に由来する逆si電流は、正si電流の場合よりもサンプルの分析対象物濃度をより正確に記述するプラトーを示す。このように、DLC領域の非サイクル状のスキャンは、サイクル状の励起と比較した場合に、分析についての正確性の上昇を提供した。
【0169】
[00184] 図11は、0、56、111、221.75、455.25、および712.5 mg/dLの血漿グルコースを含有するWBサンプルについて、7回の励起パルスシークエンスを行ったことに由来するボルタモグラムを半-積分することにより調製された輪郭特性を示す。グルコース濃度のそれぞれについて、DBL再水和に関する平衡は、各グルコース濃度についての輪郭特性における最大の電流値で達せられた。従って、読みとり値1110(最高値)および1120(それよりも低い値)は、DBL再水和に関して、455 mg/dLグルコース濃度について、約4秒間で平衡に達したことを立証する。
【0170】
[00185] 比較的一定の拡散速度で記録された電流値は、本発明以外では試薬の再水和速度および拡散速度における多様性により導入されるであろう不正確性を、最小化することができる。従って、いったん比較的一定の拡散速度に到達すると、記録された電流値は、測定可能種の濃度に対してより正確に対応させることができ、そして従って分析対象物に対してより正確に対応させることができる。さらに、図11に関して、いったん輪郭特性の最高値の電流値1110が知られれば、その値を分析対象物濃度と直接的に相関させることができるため、完全な分析を、わずか7秒間で完了することができる。RIに関して前述したように、追加のデータ点を得ることで、メディエータに起因するバックグラウンド誤差を減少させることができる。
【0171】
[00186] 輪郭特性を作成するために使用することができるその他の形式のデータ処理は、半微分(semi-derivatization)である。半微分の1回の実行は、式(8)に関して上述したように、半積分の全行程(full step)微分を行うことである。半積分プロットにおけるボルタンメトリーのスキャンを示すプラトー領域とは異なり、半微分プロットは、ボルタンメトリーのスキャンデータを、酸化還元対の遷移を中心としたピークに変換する。
【0172】
[00187] 図12Aは、20%ヘマトクリットWBサンプルにおける16 mMフェロシアン化物の、サイクル状のボルタモグラム(a)、半積分(b)、および半微分(c)を示す。この事例において、センサストリップの作用電極は、酵素を欠損し、そしてメディエータを酸化した。図12Bは、正のスキャンについてのピーク高を示す図12Aの半微分曲線の拡大図である。正または逆のスキャンピーク高の値は、サンプルの分析対象物濃度と相関させることができる。さらに、半微分データ処理は、グルコース決定についてのヘマトクリット補正、特に40%未満のヘマトクリットを含むサンプルについてのヘマトクリット補正を、元々は提供することができる。半微分データ処理をグルコース分析に対して適用することのより詳細な記載は、2005年5月16日に出願された、“Voltammetiric Systems for Assaying Biological Analytes”という発明の名称のWO 2005/114164中に見いだすことができる。
【0173】
[00188] 半積分および半微分データ処理に加えて、微分データ処理を使用して、輪郭特性を生成し、そしてそれによりサンプル中の分析対象物の濃度を決定することもできる。図13A図13Cは、20、40、および60%ヘマトクリットを有するサンプルについてのサイクル状のボルタモグラムの微分を示す。これらの微分プロットは、電位(ボルト)が上昇するにつれて電流が最初は上昇し、それに引き続いて減少し、そして最終的にはDLC領域にまで減少することを示す。ヘマトクリット効果を、図12A図12Cにおいて約0.1ボルトに位置する負のピーク中に見いだすことができ、より高い赤血球濃度がより大きな負のピーク値として反映された。
【0174】
[00189] 図13Bの微分プロットにおいて示されたものなど、正および負の微分ピークの値は、濃度依存的である一方、正のピークに対する負のピークの比は、濃度依存性をうち消し、そして従ってヘマトクリット依存的である。この比率(HI-DER)が濃度非依存的でありそしてヘマトクリット依存的であるため、この比率はサンプルにおける%ヘマトクリットを示す。従って、微分ピークのこの比率を使用して、分析対象物決定のためのヘマトクリット補正式を決定することができる。微分データ処理をグルコース分析に対して適用することについてのより詳細な記載を、WO 2005/114164中に見いだすことができる。
【0175】
[00190] ゲート化パルスシークエンスがヘマトクリット効果に由来する不正確性およびメディエータバックグラウンドシグナルに由来する不正確性を減少させる能力に加えて、各励起の動的電流特性とその結果として得られる輪郭特性との組み合わせを使用して、複数のセットの較正定数をセンサシステムに対して提供することができ、それにより分析の正確性を増加させることができる。得られた較正定数の各セットを使用して、特異的な電流読みとり値を、サンプル中の測定可能種の特異的な濃度に対して相関させることができる。従って、一側面において、正確性の増加は、複数のセットの較正定数を使用して得られたグルコース値を平均化させることにより得ることができる。
【0176】
[00191] 従来型の電気化学的センサシステムは一般的に、1セットの較正定数(例えば、傾きと切片)を使用して、電流読みとり値を、対応するサンプル中の分析対象物の濃度に変換する。しかしながら、無作為のノイズが測定値中に含まれるため、1セットの較正定数は、結果として記録された電流値から決定された分析対象物濃度の不正確性をもたらす可能性がある。
【0177】
[00192] 電流値またはゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスの各負荷サイクル中の固定時間でのデータ処理後の変換された電流値を取ることにより、複数のセットの較正定数を確立することができる。図14は、図11の輪郭特性に関して、7.4、10.65、13.9、および17.15秒で記録された、半積分電流をプロットする。これらの4つの較正線のそれぞれは、その他のものとは独立しており、そして少なくとも2つの方法において使用することができる。
【0178】
[00193] 第一に、複数のセットの較正定数を使用して、所望の正確性と精密性を得るために、パルスシークエンスのあいだに印加されるべき負荷サイクル数を決定することができる。たとえば、最初の3回の励起から得られた電流値が高いグルコース濃度、例えば>150または200 mg/dLを示す場合、センサシステムは、図11に示される4回目の励起の後など、初期に分析を終了させることができる。このように、分析のために必要とされる時間を、実質的に短くすることができる。高グルコース濃度での不精密性はより低いグルコース濃度での不精密性よりも概して少ないため、そのような短時間化が可能になる。逆に、最初の3回の励起から得られた電流値が低いグルコース濃度、例えば≦150または100 mg/dLを示す場合、センサシステムは、5回または7回の励起より多い回数まで分析を延長することができる。従って、分析の正確性および/または精密性を、5回またはそれ以上の回数の負荷サイクルを含むことにより、増加させることができる。
【0179】
[00194] 第二に、較正定数の複数のセット を使用して、平均化により、分析の正確性および/または精密性を上昇させることができる。たとえば、標的グルコース測定時間が17.15秒である場合、10.65、13.9、および17.15秒での電流を使用して、対応する較正線に由来する傾きおよび切片を使用して、グルコース濃度を算出することができる;従って、G10.65=(i10.65 -切片10.65)/傾き10.65、G13.9 =(i13.9-切片13.9)/傾き13.9、およびG17.15 =(i17.15 -切片17.15)/傾き17.15である。理論的には、これら3つのグルコース値は同等であるべきであり、無作為の分散によってのみ異なる。従って、グルコース値G10.65、G13.9、およびG17.15を平均化することができ、そして(G10.65+ G13.9 + G17.15)/3の最終のグルコース値を算出することができる。較正線に由来する値を平均化することは、1/√3の比率で、ノイズの減少をもたらすことができる。
【0180】
[00195] 比較的短時間の励起および比較的に長時間の緩和を含むゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスの予期せぬ利点、例えば図6Cにおいて示されるもの、は、較正を単純化する能力である。動的特性および輪郭特性から得ることができる較正定数の複数のセットが、分析の正確性に対して利点をもたらすことができる一方、図6Cに示されるものなどのパルスシークエンスは、1セットの較正定数に由来する複数のセットの較正定数を使用して得られる場合と同様の正確性をもたらす可能性がある。この作用を、図11の輪郭特性、そして図14における結果として得られる較正線において観察することができる。
【0181】
[00196] この予期せぬ正確性の増加は、短時間の緩和と比較して、相対的に長期間の緩和時間に起因する可能性がある。一側面において、0.3〜0.2の励起/緩和時間(ERT)比が好ましく、0.27〜0.22のERT比がより好ましい。たとえば、0.25のERT比(0.8秒間/3.2秒間)を有するゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンス、例えば図6Cに示されるものなど、が、0.56のERT比(1.4秒間/2.5秒間)を有する図6Bのパルスシークエンスなど、0.3よりも大きなERT比を有するパルスに対しては好ましい可能性がある。何ら特定の理論により束縛されることを意図するものではないが、相対的に長時間の緩和時間により、励起のあいだの測定可能種の平均消費速度がDBL中に拡散する測定可能種の供給速度により平衡化される状態を提供することができる。このように、較正定数の複数のセットを1セットへと分解することができ、そして記録されたデータの分析対象物濃度への変換を、分析対象物濃度を決定する前に、記録された電流データに対する平均化プロセスを実行することにより、単純化することができる。
【0182】
[00197] 複数の負荷サイクルにより提供される動的電流特性を使用して、センサストリップがサンプルで充填量不足であり、その結果ユーザーが追加的なサンプルをセンサストリップに対して添加することができるかどうかを決定することができる。作用電極およびカウンタ電極に加えて、従来型のセンサシステムは、第三の電極または電極対を使用することを通じて、充填量不足条件を決定することができる;しかしながら、第三の電極または電極対は、センサシステムに対して複雑性とコストを付加するものである。
【0183】
[00198] 従来型の2電極システムは、分析が“悪い”ことを認識することができるが、分析の失敗の原因が充填量不足により生じたものであるか、またはセンサストリップの欠陥によるものであるかを決定することができない。充填量不足が分析の失敗を引き起こしたかどうかを決定する能力は、追加的なサンプルを同一のセンサストリップに対して添加し、そして分析を繰り返し、その結果良好なストリップを廃棄しないようにすることにより、補正することができるため、有益である。
【0184】
[00199] 図15は、充填量不足のセンサストリップから得られたサイクル状のボルタモグラムを示すが、一方、図8Aは、正常に充填されたセンサストリップからゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスを用いて得られた、一連の7回のサイクル状のボルタモグラムを示す。両方の事例とも、スキャン速度は1 V/secであった。図8サンプルがグルコースを含まず、そして図15について使用されたサンプルが400 mg/dLのグルコースを含んだにもかかわらず、400 mg/dLのグルコース濃度を有する充填量不足のストリップから得られた電流値は、グルコースを何も有さない正常に充填されたストリップから得られた電流値よりも遙かに低かった。従って、得られた電流が以前に選択された値よりも低く、そしてセンサストリップが充填量不足であることを、パルスシークエンスの2回目の負荷サイクルにより決定することができる。たとえば、図15のこのシステムについて、0未満の初期電流値は、センサストリップが充填量不足であることを意味する。
【0185】
[00200] このように、本発明のゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスは、従来型のセンサシステム用の第三の電極を一般的に必要とする機能である、2-電極センサストリップにおける充填量不足検出を可能にするものであった。さらに、充填量不足の決定は、5秒未満のあいだに行うことができ、発光素子またはディスプレイに対して、シグナルを送信することにより、ストリップに対してより多くのサンプルを添加するように測定装置がユーザーに対してシグナルを送るための時間を提供することができる。
【0186】
[00201] ストリップに基づく分析方法の正確性についての共通の問題点は、試薬、特に酵素、が、時間とともに分解する点である。酵素分解の影響の一つは、較正値における変化であり、そして従って、分析の精密性および/または正確性の変化である。
【0187】
[00202] 本発明の複数の負荷サイクルにより提供される動的電流特性を使用して、イオン化種が分解した可能性がある時間の経ったセンサストリップの活性イオン化剤含量を決定することができる。分析対象物と反応することができるイオン化剤の量を知ることにより、センサストリップの欠陥を特定することができ、そして分析対象物濃度値を補正して、分析に対する所望の正確性と精密性を提供することができる。このように、製造における多様性または試薬の分解を原因として、様々な量の活性イオン化剤を有するセンサストリップから得られた分析の正確性および/または精密性を、得ることができる。
【0188】
[00203] 図16Aは、WB中に100 mg/dLのグルコースおよび40%ヘマトクリットを含むサンプルについての、1 V/secのスキャン速度を有する5つのセンサストリップから得られる、サイクル状のボルタモグラムの半積分プロットを示す。図16Aが非サイクル状のボルタモグラムを提示する一方、この方法をサイクル状のスキャンに適用することもできる。センサストリップについて試薬層中で使用されるイオン化剤は、グルコースオキシダーゼ(GO)酵素であった。各センサストリップは、試薬層を形成する物質の総乾燥重量に対して、1.7、3.5、5.3、7、または10%(重量/重量)のGOの乾燥重量%を含んだ。図面中に見いだされるように、正のスキャンについての電流値は、イオン化剤の%が増加するにつれて、逆のスキャンについての電流値と比較して増加する。従って、正および逆のスキャン電流値のあいだの差異を使用して、センサストリップの試薬層中に存在する活性イオン化剤の%を決定することができる。
【0189】
[00204] 図16Bは、%GOの関数として0.15の電位で測定された、正および逆のスキャンsi電流値の比をプロットする。いったん正および逆の電流比のあいだの相関および%活性GOが決定されたら、試薬層中に存在する活性GOの量を、ストリップについて測定された電流値から決定することができる。正および逆のスキャンの比を、パルスシークエンスの分析対象物分析部分の前またはそのあいだに決定することができ、その結果ユーザーに対してストリップが欠陥であるかどうかを通知することができる。
【0190】
[00205] 次いで、ストリップの実際の活性イオン化剤含量を使用して、図16Cにおいて示されるものなどの関連性を通じて、較正の傾きを変化させることができる。図16Cは、センサストリップの線形応答較正の傾きの典型的な応答を、GO含量(%乾燥重量)の関数として示す。このプロットは、GO含量が増加するにつれて、較正の傾きが減少することを示す。従って、試薬層の実際のGO含量が図16Bから算出される場合、GO-に基づくセンサストリップの影響を受ける傾きを、GO含量を入力として使用して、図16Cの二次多項式から算出することができる。次いで、出力した傾きを使用して、センサストリップの試薬層中に存在する様々な濃度の量の活性イオン化剤に応じて、グルコース濃度値を補正することができる。このように、本発明以外では酵素分解から生じうる不正確性および/または非精密性を、減少させることができる。
【0191】
[00206] 図17は、電気回路1710およびディスプレイ1730と電気的に連絡している接点1720を含む測定装置1700の概略図である。一側面において、測定装置1700は、携帯型であり、そして手持ち型であるように、そして図1Aに由来するストリップ100などのセンサストリップを受容するように適合される。別の側面において、測定装置1700は、センサストリップを受容し、そしてゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスを実行する様に適合された手持ち型の測定装置である。
【0192】
[00207] 接点1720は、電気回路1710およびセンサストリップの接点、例えば、図1Bに示されるセンサストリップ100の接点170および接点180、との電気的な連絡を提供するように適合される。電気回路1710には、充電器1750、プロセッサ1740、およびコンピュータ読みとり可能な保存媒体1745が含まれていてもよい。充電器1750は、ポテンシオスタット、シグナル発生器などであってもよい。従って、充電器1750は、得られる電流を記録して充電器-記録装置(charger-recorder)として機能するとともに、接点1720に対して電圧を印加してもよい。
【0193】
[00208] プロセッサ1740は、充電器1750、コンピュータ読みとり可能な保存媒体1745、およびディスプレイ1730と電気的に連絡していてもよい。充電器が電流を記録するように適合化されていない場合、プロセッサ1740は、接点1720での電流を記録するように適合化されていない可能性がある。
【0194】
[00209] コンピュータ読みとり可能な保存媒体1745は、例えば、磁気的メモリ、光学的メモリ、半伝導体メモリ、などのどのような保存媒体であってもよい。コンピュータ読みとり可能な保存媒体1745は、固定されたメモリ装置であっても、取り外し可能なメモリ装置、例えば取り外し可能なメモリカードなど、であってもよい。ディスプレイ1730は、アナログのものであってもデジタルのもの(一側面においては、数値読みとり値を表示するように適合化されたLCDディスプレイ)であってもよい。
【0195】
[00210] サンプルを含有するセンサストリップの接点が接点1720と電気的に連絡している場合、プロセッサ1740は、充電器1750に対して、ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスをサンプルに印加するよう命令し、従って分析を開始することができる。プロセッサ1740は、例えば、センサストリップの挿入に応じて、以前に挿入されたセンサストリップに対するサンプルの適用に応じて、またはユーザーの入力に応じて、分析を開始することができる。
【0196】
[00211] ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスを実行することに関する指示を、コンピュータ読みとり可能な保存媒体1745中に保存されたコンピュータ読みとり可能ソフトウェアコードにより提供することができる。このコードは、本出願において記載された機能を記述しまたは調節する、オブジェクトコードまたはいずれかその他のコードであってもよい。ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスから得られるデータは、減衰速度の決定、K定数の決定、傾きの決定、切片の決定、および/またはプロセッサ1740におけるサンプル温度の決定、および補正された分析対象物濃度などの結果、ディスプレイ1730の出力を含む、1またはそれ以上のデータ処理を受けてもよい。パルスシークエンスに関する指示と同様に、データ処理を、コンピュータ読みとり可能な保存媒体1745中に保存されたコンピュータ読みとり可能ソフトウェアコードからプロセッサ1740により実行することができる。
【実施例】
【0197】
[00212] 実施例1:ボルタンメトリーデータの回収
[00213] 図7Aのサイクル状のボルタモグラムを、センサストリップの作用電極とカウンタ電極とのあいだに1 V/secで線形に変化された電位を印加することにより、0.025 V/secのスキャン速度でCH Electrochemical Work Stationから得た。電位の印加のあいだに作用電極で生成された電流を記録し、そして印加された電位の関数としてプロットした。最初の0.8秒の励起の後、ポテンシオスタットが回路を開放し、3.2秒の緩和をもたらした。図6Cのパルスシークエンスを使用して、6回の追加の励起をストリップに対して印加した。このように、それぞれ図8A図8Dにおいて示されるように、0、50、100、および400 mg/dLのグルコース濃度に関して、7回の非サイクル状のボルタモグラムが得られた。
【0198】
[00214] 実施例2:複数のデータ処理についての輪郭プロットの確立
[00215] 図9A図9B、および図9Cは、それぞれ未処理のボルタンメトリーの電流、半積分、および半微分データ処理、に由来する輪郭プロットである。図9Aにおいて、0.3 Vでの未処理の電流値を、それぞれの正のスキャンから得て、7つのデータ点を提供した。各負荷サイクルには、0.8秒の励起の後、3.2秒の緩和が含まれたため、得られた輪郭プロットは、未処理の電流値を時間の関数として提示する。
【0199】
[00216] 図9Bは、式(3)に従う半積分データプロセシングにより変換され、そして式(5)および式(6)により実行された同一のボルタンメトリーのデータの輪郭プロットを提示する。実行された半積分データプロセシングは、CH Instruments Electrochemical Workstation、model CHI 660Aに付属するCH Electrochemical Work Station ソフトウェアパッケージ、version 4.07(2004年4月26日に改訂)中で提示されるものであった。半積分プロセシングの後、0.3 Vでの半積分電流を、各スキャンの逆部分から取得し、そして図9Aに関して上述したように、時間の関数としてプロットした。
【0200】
[00217] 図9Cは、式(8)に従う半微分データプロセシングにより変換された同一のボルタンメトリーのデータの輪郭プロットを提示する。使用された半微分データプロセシングは、CH Instruments Electrochemical Workstation、model CHI 660Aに付属するCH Electrochemical Work Stationソフトウェアパッケージ、version 4.07(2004年4月26日に改訂)中で提示されるものであった。半微分プロセシングののち、ピーク電流値を各スキャンから得て、そして図9Aおよび図9Bに関して上述したように、時間の関数としてプロットした。従って、図9CのY-軸は、半微分電流について、μCoul/sec3/2の単位を有する。
【0201】
[00218] 実施例3:較正プロットの構築および分析対象物濃度の決定
[00219] 図14に示されるように、半積分データプロセシング方法のための較正プロットを、図9Bに由来する、4つの異なるグルコース濃度から、8.8、12.8、16.8、および20.8秒で半積分電流を得ることにより、そして電流をYSI血漿グルコース濃度の関数としてプロットすることにより、形成した。グルコースサンプル濃度を、較正線の傾きおよび切片中に、特定の時点でのサンプル測定に由来する半積分で処理した電流を入力することにより、較正プロットから決定した。
【0202】
[00220] 未処理のデータおよび半微分処理したデータについての較正プロットを、同様にして生成した。次いで、較正プロットを使用して、特定の時点で得られた未処理測定電流値および半微分処理した測定電流値から、グルコースサンプル濃度を決定した。
【0203】
[00221] 実施例4:複数の較正セットに由来する分析対象物濃度の決定
[00222] 図4は、20.8秒までのあいだの少なくとも4本の較正線を示す。16.8秒の分析時間に対して、8.8および12.8秒での較正点を使用して、グルコース値を較正した。8.8、12.8および16.8秒の較正点から算出した3つのグルコース値は、8.8、12.8および16.8秒の励起の前の緩和時間により分割された独立した酸化の結果であった。同一のサンプルグルコース濃度を提示する一方、濃度値は、実験的ノイズによって異なる。従って、これらの値を平均化し、G =(G8.8 + G12.8 + G16.8)/3することにより、最終グルコース濃度値のシグナル-対-ノイズ比が増加した。
【0204】
[00223] 本発明の様々な態様を記載したが、その他の態様および実施が、本発明の範
囲内で可能であることは、当業者にとって明らかなことであろう。

本発明は以下の態様を包含する。
[1]
少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを、サンプルに対して印加する工程;
結果として生じる電流を測定する工程;および
サンプル中の分析対象物の濃度を決定する工程;
を含む、サンプル中の分析対象物の濃度を決定するためのボルタンメトリーの方法。
[2]
各負荷サイクルが、0.1〜1.5秒の励起を含む、[1]に記載の方法。
[3]
各負荷サイクルが、少なくとも1秒の緩和を含む、[1]に記載の方法。
[4]
パルスシークエンスが、90秒以下の間に少なくとも3回の負荷サイクルを含む、[1]に記載の方法。
[5]
パルスシークエンスが、5秒以下の間に少なくとも3回の負荷サイクルを含む、[1]に記載の方法。
[6]
パルスシークエンスが、終端読みとりパルスを含む、[1]に記載の方法。
[7]
パルスシークエンスが、作用電極上に拡散バリア層を含むセンサストリップに対して印加される、[1]に記載の方法。
[8]
この方法により決定される分析対象物の濃度に、少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを有さない他の方法により決定された分析対象物の濃度と比較して、メディエータバックグラウンドに起因するバイアスがより少なく含まれる、[1]に記載の方法。
[9]
この方法により決定される分析対象物の濃度に、少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを有さないボルタンメトリーの方法により決定された分析対象物の濃度と比較して、メディエータバックグラウンドに起因するバイアスがより少なく含まれる、[1]に記載の方法。
[10]
サンプルが、生物学的液体を含む液体である、[1]に記載の方法。
[11]
分析対象物がグルコースである、[1]に記載の方法。
[12]
負荷サイクルが、時間とともに変化する電位を含む励起を含む、[1]に記載の方法。
[13]
各負荷サイクルが、時間とともに線形に変化する電位を含む励起を含む、[1]に記載の方法。
[14]
負荷サイクルが、線形、サイクル状、非サイクル状、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される緩和および励起を含む、[13]に記載の方法。
[15]
電流値が、各励起の間に記録される、[13]に記載の方法。
[16]
負荷サイクルが、逆酸化ピークまたは逆還元ピークを実質的に排除する非サイクル状の励起を含む、[1]に記載の方法。
[17]
負荷サイクルがサイクル状の励起を含む方法と比較して、分析対象物に対して非応答性のメディエータのサンプル濃度が低下する、[16]に記載の方法。
[18]
負荷サイクルが、逆電流ピークの開始前に終了する非サイクル状の励起を含む、[1]に記載の方法。
[19]
負荷サイクルが、正および逆の酸化および還元のピークを実質的に排除する非サイクル状の励起を含む、[1]に記載の方法。
[20]
負荷サイクルが、実質的に酸化還元対の拡散限界電流領域(diffusion limited current region)中の非サイクル状の励起を含む、[1]に記載の方法。
[21]
少なくとも1つの輪郭特性を決定することを含む、[1]に記載の方法。
[22]
得られた電流に対して、半積分、半微分、および微分からなる群から選択される少なくとも1つのデータ処理を適用することを含む、[1]に記載の方法。
[23]
電流から、複数の較正セットを決定することをさらに含む、[1]に記載の方法。
[24]
負荷サイクル数を、複数の較正セットから決定する、[23]に記載の方法。
[25]
分析対象物の濃度の決定が、複数の較正セットから得られる複数の濃度値を平均化することを含む、[23]に記載の方法。
[26]
サンプルを含有するセンサストリップが、サンプルで充填量不足であるかどうかを決定する工程をさらに含む、[1]に記載の方法。
[27]
サンプルを含有するセンサストリップが充填量不足かどうかを決定する工程が、少なくとも1つの電流値をあらかじめ選択された値と比較する工程を含む、[26]に記載の方法。
[28]
センサストリップの活性イオン化剤含量を決定する工程をさらに含む、[1]に記載の方法。
[29]
センサストリップの活性イオン化剤含量を決定する工程が、正および逆のスキャン電流値由来の比を決定する工程を含む、[28]に記載の方法。
[30]
前記比が、既知量の活性イオン化剤と事前に相関させたものである、[29]に記載の方法。
[31]
較正の傾きを、センサストリップの活性イオン化剤含量に応じて変化させる、[29]に記載の方法。
[32]
負荷サイクルの励起/緩和の時間比が、0.3〜0.2である、[1]に記載の方法。
[33]
センサストリップを受容する様に適合させたゲート化ボルタンメトリーの測定装置を含む、サンプル中の分析対象物の濃度を決定するための手持ち型の分析対象物測定装置であって、
ここで、ゲート化ボルタンメトリーの測定装置が、電気回路を介してディスプレイと電気的に連絡している少なくとも2つの装置接点を含み、そして
センサストリップが、少なくとも、伝導体を介して作用電極と電気的に連絡している第一のセンサストリップ接点、および伝導体を介してカウンタ電極と電気的に連絡している第二のセンサストリップ接点を含み、
ここで、前記センサストリップにおいて、第一の試薬層が少なくとも1つの電極上にあり、第一の試薬層は酸化還元酵素と少なくとも1つの酸化還元対の種とを含む、
前記手持ち型の分析対象物測定装置。
[34]
電極が同一基材上に存在する、[33]に記載の装置。
[35]
電極が別の基材上に存在する、[33]に記載の装置。
[36]
サンプル中の分析対象物の濃度を決定するための手持ち型の測定装置であって、
ここで、装置がセンサストリップを受容する様に適合され、そして装置が:
少なくとも2つの接点;
少なくとも1つのディスプレイ;および
少なくとも2つの接点と少なくとも1つのディスプレイとの間での電気的な連絡を確立する電気回路であって、充電器およびコンピュータ読みとり可能な保存媒体と電気的に連絡しているプロセッサを含む前記電気回路、
を含み、
前記プロセッサは、充電器から少なくとも2つの接点へ向けた少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを実行する様に機能可能であり、
前記プロセッサは、少なくとも2つの接点で、少なくとも1つの電流特性を測定する様に機能可能であり、そして
前記プロセッサは、少なくとも1つの電流特性に応じてサンプル中の分析対象物を決定する様に機能可能である、
前記手持ち型の測定装置。
[37]
各負荷サイクルが、励起および緩和を含む、[36]に記載の装置。
[38]
プロセッサが、電流特性に対して半積分、半微分、および微分からなる群から選択される少なくとも1つのデータ処理を適用して、サンプル中の分析対象物を決定する様に機能可能である、[36]に記載の装置。
[39]
少なくとも2回の負荷サイクルを含むゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスを、サンプルに対して印加する工程を含む、サンプル中の分析対象物の決定濃度におけるメディエータバックグラウンドに起因するバイアスを減少させる方法。
[40]
少なくとも2回の負荷サイクルのあいだ記録された電流から決定された複数の較正セットを決定する工程;および
サンプル中の分析対象物の決定濃度に応じて、パルスシークエンスの持続時間を決定する工程;
を含む、サンプル中の分析対象物の濃度を決定するための、少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスの持続時間を決定する方法。
[41]
パルスシークエンスが、ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスである、[40]に記載の方法。
[42]
少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスから記録された少なくとも1つの電流値を、あらかじめ選択された値と比較することにより、センサストリップが充填量不足であるかどうかを決定する工程;および
ストリップが充填量不足である場合に、センサストリップに対して追加的なサンプルを添加する様に、ユーザーに対してシグナルを送る工程;
を含む、追加的なサンプルをセンサストリップに添加する様にユーザーにシグナルを送る方法。
[43]
パルスシークエンスが、ゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスである、[42]に記載の方法。
[44]
センサストリップが、2つの電極を含む、[42]に記載の方法。
[45]
決定する工程を5秒間未満で行う、[42]に記載の方法。
[46]
0.3〜0.2の励起/緩和時間比を有する少なくとも2回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを、サンプルに対して印加する工程;
得られた電流を測定する工程;および
サンプル中の分析対象物の濃度を決定する工程;
を含む、サンプル中の分析対象物の濃度を決定するためのボルタンメトリー法。
[47]
この方法により決定された分析対象物の濃度が、パルスの励起/緩和時間比が0.3より大きい別の方法により決定された分析対象物の濃度よりもより正確である、[46]に記載の方法。
[48]
少なくとも2回の負荷サイクルを含むゲート化ボルタンメトリーのパルスシークエンスを、サンプルに対して印加する工程を含む、サンプル中の分析対象物の濃度を決定するための電気化学的方法における、改良。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17