(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レーザービームを平面ガラス基板の上面に集束できるレーザービーム伝送システムを提供するステップが、選択的に分散焦点レンズ集束装置を通じて前記レーザーパルスをレーザー源から渡すステップを含み、
前記レーザービームを平面ガラス基板の上面に対して相対的に集束して前記平面ガラス基板の上面の外部にビームウエストを形成する前記ステップが、前記分散焦点レンズ集束装置の前記レーザー源に対する相対的な距離および/または角度を調節して前記レーザーパルスを分散焦点構成で集束し、主焦点ウエストと少なくとも1つの副焦点ウエストとを作成するステップと、前記主焦点ウエストまたは平面ガラス基板を、切断されている前記平面ガラス基板の表面上または内部に前記主焦点ウエストが位置しないように調節するステップとを含む、
請求項1記載の磁気媒体で被覆された基板からレーザー加工を使用してガラス製ハードディスクドライブプラッタを作成する方法。
前記レーザービームを平面ガラス基板の上面に対して相対的に集束して前記平面ガラス基板の上面の外部にビームウエストを形成する前記ステップが、前記平面ガラス基板の上面または前記底面のレーザーフルエンスのスポットが、前記主焦点ウエストの下または上に位置し前記平面ガラス基板に形成されるフィラメンテーションの直径よりも常に大きい直径を有するように前記集束を調節するステップと、前記副焦点ウエストのフルエンスレベルを、それらが前記平面ガラス基板の所望の内部に光音響圧縮加工を確実に伝搬させるのに十分な強度および数となるように調節するステップとをさらに含み、
レーザーパルスのバーストを含むレーザービームを提供する前記ステップが、適切な波長、適切なバーストパルス繰り返し率、および適切なバーストパルスエネルギーを有するレーザーパルスの少なくとも1つのバーストを前記レーザー源から前記平面ガラス基板に適用するステップであって、前記レーザーパルスが平面ガラス基板に接触するスポットにおいて前記平面ガラス基板に適用されるパルスエネルギーまたはフルエンスの総量が光音響圧縮加工を開始および伝搬するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きいがアブレーション加工を開始するために必要なしきい値臨界エネルギーレベルよりも低いステップと、前記切断が完了したときにレーザーパルスの前記バーストを停止するステップとをさらに含む、
請求項2記載の磁気媒体で被覆された基板からレーザー加工を使用してガラス製ハードディスクドライブプラッタを作成する方法。
前記レーザービームを平面ガラス基板に集束できるレーザービーム伝送システムを提供する前記ステップが、選択的に分散焦点レンズ集束装置を通じて前記レーザーパルスをレーザー源から渡すステップを含み、
前記レーザービームを平面ガラス基板に対して相対的に集束して前記平面ガラス基板の外部にビームウエストを形成するステップが、前記分散焦点レンズ集束装置の前記レーザー源に対する相対的な距離および/または角度を調節して前記レーザーパルスを分散焦点構成で集束し、主焦点ウエストと少なくとも1つの副焦点ウエストを作成するステップと、前記主焦点ウエストまたは前記平面ガラス基板を、切断されている前記平面ガラス基板の表面上または内部に前記主焦点ウエストが位置しないように調節するステップとを含む、
請求項4記載のレーザー加工を使用してガラス製ハードディスクドライブプラッタを作成する方法。
前記レーザービームを平面ガラス基板に対して相対的に集束して前記平面ガラス基板の外部にビームウエストを形成するステップが、前記平面ガラス基板の上面または底面のレーザーフルエンスのスポットが、前記主焦点ウエストの下または上に位置し前記平面ガラス基板に形成されるフィラメンテーションの直径よりも常に大きい直径を有するように、前記集束を調節するステップと、前記副焦点ウエストのフルエンスレベルを、それらが前記平面ガラス基板の所望の内部に光音響圧縮加工を確実に伝搬させるのに十分な強度および数となるように調節するステップとをさらに含み、
レーザーパルスのバーストを含むレーザービームを提供する前記ステップが、適切な波長、適切なバーストパルス繰り返し率、および適切なバーストパルスエネルギーを有するレーザーパルスの少なくとも1つのバーストを前記レーザー源から前記平面ガラス基板に適用するステップであって、前記レーザーパルスが平面ガラス基板に接触するスポットにおいて前記平面ガラス基板に適用されるパルスエネルギーまたはフルエンスの総量が光音響圧縮加工を開始および伝搬するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きいがアブレーション加工を開始するために必要なしきい値臨界エネルギーレベルよりも低いステップと、前記切断が完了したときにレーザーパルスのバーストを停止するステップとをさらに含む、
請求項5記載のレーザー加工を使用してガラス製ハードディスクドライブプラッタ作成する方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
現在、先行技術のHDDプラッタ製作システムは、ダイヤモンドソーを使用して、粗加工状態のガラスプラッタブランクを作成する。
ダイヤモンド切削工程では、ダイヤモンド切削を実行した後、機械的なローラーで応力を適用して、試料を割裂させる亀裂を伝搬させる。
この工程により、端部が低品質となり、微小亀裂が生じ、カーフ幅が広くなり、相当量のデブリと称する廃棄物が生じる。
これらは、製品の寿命、効率、品質、および信頼性における大きな欠点である。さらに、追加的な清浄および研磨のステップが必要となる。
ダイヤモンドスクライバを稼働させる脱イオン水のコストは、スクライバを所有するコストを上回り、また、水が汚染されるとともに精製を必要とし、それ自体に更にコストがかかることから、環境にやさしくない技術である。
この最初の粗加工ステップでは、プラッタの周縁部および平面部を研削および研磨する必要性が生じ、その後で被覆を適用できるようにするための仕上げ加工段階に進まなければならない。
アブレーション加工や高速レーザースクライビングなど、現在技術のレーザー照射加工は、ガラスプラッタブランクの切断には有用でない。
なぜなら、これらの加工により形成されたプラッタは、依然として粗加工段階にあるからである。
これらの各加工では、ブランクの周縁部が粗くなり、隣接する領域に粗い領域または噴出土手が形成される。
その後、仕上げ加工としてブランクの縁部を縁部研削し、研磨し、洗浄する。
これらは、高価で時間のかかるステップであり、各ステップにより、粗加工のあらゆる工程で放出されるアブレーション粒子によってプラッタが粒子汚染される可能性が高まる。
すべての先行技術システムは、スループット時間が低い、ガラスに亀裂が伝搬する、プラッタの周縁部および周囲面に許容できない表面粗さ(または噴出部)が残る、HDDプラッタの早期故障につながる付帯的熱損傷の領域(すなわち、熱影響部)が広く残る等の欠点を有する。
【0018】
本発明は、超高速レーザーパルスのバーストによるフィラメンテーションを使用してHDDガラスプラッタを作成する2つの関連方法を開示する。
これらの方法では、レーザーパラメータの特別な調節と、複数の異なる焦点を作成する分散焦点レンズ装置とを組み合わせる。
主焦点ウエストは、対象物の内部または表面に位置せず、それによって積層したプラッタ基板の任意またはそれぞれの基板に切れ目を入れるフィラメントを材料内に作り出す。
本開示では、ガラス基板から円形ディスクを切断(加工)することに主として着目するが、本明細書で説明されるシステムおよび方法は、サファイア等の他の透明な対象物の切断およびスクライビングの平滑縁部加工工程にも同様に適用可能であることが理解される。
本明細書では、HDDプラッタの切断に利用される装置および方法を、レーザー加工技術、レーザー加工システム、および、HDDプラッタ切断方法として説明する。
【0019】
ここまでは、以降の詳細な説明をよりよく理解し、技術分野への貢献をよりよく認識できるよう、本発明の重要な特徴について大まかに説明してきた。
もちろん、本発明には、以下に説明し、本発明の請求項を形成するその他の特徴もある。
【0020】
本開示のさまざまな実施形態および態様について、以下に詳細に説明する。
以下の説明および図面は、本開示を例示するものであり、本開示を限定するものとは解釈されない。
本開示のさまざまな実施形態を詳しく理解できるよう、多数の具体的な詳細について説明する。
ただし、場合によっては、本開示の実施形態を簡潔に説明するために、既知または従来の詳細事項については説明しない。
【0021】
この点に関し、本発明の少なくとも1つの実施形態について詳しく説明する前に、本発明はその用途において以下の説明に記載され若しくは図面に示された構造の詳細または構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。
本発明は、他の実施形態に対応し、さまざまな方法で実践および実施できる。
また、本明細書で使用される表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定と捉えられるべきものではないことを理解されたい。
【0022】
レーザー加工技術
主として透明材料であるがこれに限定されない積層したウエハ、プレート、または基板の任意の1つまたは集合の任意の深さから、有底または貫通のオリフィスを、当該オリフィスおよび周囲材料の構造的特性が先行技術の構造的特性を上回るように穴あけすることができる。
対象基板に対して相対的にレーザービームを移動することで、基板(対象)のスライスまたは切断の形式で加工を行うことができる。
これは、超高速レーザーパルスのバーストの干渉を使用する新規な方法により、積層した材料群のいずれかまたはそれぞれの材料で実現できる。
レーザー光および集束のパラメータは、オリフィスを作成するか、または透明基板の指定した深さまで切断することができるフィラメントを材料の内部に作成するように調節されている。
【0023】
別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、当業者に共通して理解されるものと同一の意味を持つものとして意図される。
コンテキスト等により別途指示しない限り、本明細書で使用される以下の用語は、以下の意味を持つものとして意図される。
【0024】
本明細書で使用される「アブレーション穴あけ/切断」という用語は、レーザービームを放射することにより対象物の表面を(通常は材料の除去により基板を切断または穴あけすることにより)加工する方法を示す。
低いレーザー流束では、吸収されたレーザーエネルギーによって材料が加熱され、蒸発または昇華する。
高いレーザー流束では、材料が典型的にはプラズマに変換される。
通常、レーザーアブレーション加工とは、パルスレーザーで材料を除去することを示すが、レーザー密度が十分に高ければ、連続波レーザービームで材料をアブレートすることが可能である。
アブレーション穴あけまたは切断の加工には、廃棄物領域(debris field)が形成され、材料除去工程中の特定時点に液体/溶解段階が存在し、形状の入口および/または出口に噴出土手が形成されるという特徴がある。
【0025】
本明細書で使用される「光音響切断加工」(photo acoustic cutting)という用語は、一般に、アブレーション穴あけまたは切断で使用される低パルスエネルギー光ビームを放射することで個体から基板を切断または穴あけすることにより対象物を加工する方法を示す。
光吸収の工程とそれに続く熱弾性膨張により、放射された材料内に広帯域音響波が生成されて、ビーム伝搬軸(オリフィスの軸と共通)を中心に圧縮された材料の通路が材料内に形成される。
この方法には、オリフィスの壁が滑らかになり、噴出物が最小化または除去され、材料における極小亀裂の形成が最小化されるという特徴がある。
この工程は、「光音響圧縮加工」とも呼ばれる。
【0026】
本明細書で使用される「光学効率」という用語は、主焦点ウエストにおけるフルエンス(fluence)の集束要素または装置の開口部における総入射フルエンスに対する比率に関する。
【0027】
本明細書で使用される「透明」という用語は、入射光ビームに対して少なくとも部分的に透明な材料を意味する。
より好ましくは、透明基板は、本明細書に記載された実施形態に基づく入射ビームによる内部フィラメント改質アレイの生成を支援できる十分な大きさの吸収深度によって特徴付けられる。
言い換えると、透明材料は、入射ビームの少なくとも一部が線形吸収領域で伝達されるような吸収スペクトルおよび厚さを有する。
【0028】
本明細書で使用される「フィラメント改質領域」(filament modified zone)という用語は、基板内のフィラメント領域であって、光ビーム経路により画定される圧縮領域により特徴付けられる領域を示す。
【0029】
本明細書で使用される「バースト」、「バーストモード」、または「バーストパルス」という用語は、レーザーの繰り返し周期よりも実質的に小さい相対時間間隔を有するレーザーパルス群を示す。
バースト内のパルス間の時間間隔は一定または可変であること、および、バースト内のパルスの増幅は、たとえば、対象材料の内部に最適化または事前に決定されたフィラメント改質領域を作成することを目的に、可変であることを理解されたい。
一部の実施形態では、パルスのバーストは、そのバーストを形成するパルスの強度またはエネルギーを変えて形成される。
【0030】
本明細書で使用される「幾何学的焦点」(geometric focus)という表現は、レンズの曲線に基づいて光が通過する通常の光学経路であって、ビームウエストが光学に共通する単純なレンズ方程式に応じて位置する光学経路を示す。
この表現は、レンズの位置とその相互関係とによって作り出される光学焦点と、対象材料の熱変形によって 作り出され、結果的に最大約15mmの疑似レイリー長を提供する狭窄事象とを区別するために使用される。
後者は特に珍しく、本研究の発明的な特性に関連している。
【0031】
本明細書で使用される「基板」という用語は、ガラスまたは半導体を意味し、透明セラミック、ポリマー、透明導電体、バンドギャップの大きいガラス、結晶、結晶水晶、ダイヤモンド、サファイア、希土類元素製剤、ディスプレイ用金属酸化物、およびコーティング有りまたはコーティング無しの研磨状態または非研磨状態のアモルファス酸化物からなるグループより選択され、プレートやウエハを含むがこれらに限定されない任意の幾何学的構成を網羅するように意図されている。
基板は、2つ以上の層を含み、それら2つ以上の層の少なくとも1つの中にフィラメントアレイを生成するように集束レーザービームのビーム焦点の位置が選択される。
複数層の基板は、液晶ディスプレイ(LCD)、HDDガラスプラッタ基板、フラットパネルディスプレイ(FPD)、有機発光ディスプレイ(OLED)等の複数層フラットパネルディスプレイガラスを含む。
また、基板は、自動車用ガラス、チューブ、窓、バイオチップ、光学センサ、平面光波回路、光ファイバ、飲料用ガラス製品、アートグラス、シリコン、111−V半導体、超小型電子チップ、メモリチップ、センサチップ、電気工学レンズ、フラットディスプレイ、強固なカバー材料を必要とするハンドヘルドコンピューティングデバイス、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、および垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)からなるグループから選択される。
対象物または対象材料は、通常は、基板から選択される。
【0032】
本明細書で使用される「主焦点ウエスト」(principal focal waist)という用語は、最終集束後(光が対象物に入射する前の最後の光学要素装置を通過した後)のレーザービームが最も密に集束され、最も焦点強度が大きい部分を示す。
また、この用語は、「主焦点」という用語と同じ意味で使用される。
「副焦点ウエスト」(secondary focal waist)という用語は、分散ビームの主焦点ウエストよりも強度が小さい他のすべての焦点を示す。
この用語は、「副焦点」という用語と同じ意味で使用される。
【0033】
本明細書で使用される「フィラメント」(filament)という用語は、媒体を通過し、カー効果が観測または測定され得る任意の光ビームを示す。
【0034】
本明細書で使用される「レーザーフィラメンテーション」(laser filamentation)とは、レーザーを使用して材料内にフィラメントを作成する行為である。
【0035】
本明細書で使用される「犠牲層」(sacrificial layer)という用語は、対象材料に除去可能に適用される材料を示す。
【0036】
本明細書で使用される「加工」または「改質」という用語は、対象物または基板の表面または内部のオリフィス穴あけ、切断、スクライビング、またはダイシングの工程を包含する。
【0037】
本明細書で使用される「焦点分散」(focal distribution)という用語は、全体として正レンズであるレンズ装置を通過する入射光線の時空的分散を示す。
一般に、本明細書では、集束レンズの中心からの距離に応じた有用な強度のスポットの収束について説明する。
【0038】
本明細書で使用される、「臨界エネルギーレベル」(critical energy level)、「しきい値エネルギーレベル」(threshold energy level)、および「最小エネルギーレベル」(minimum energy level)という用語は、いずれもアブレーション加工、光音響圧縮加工、カー効果等を含むがこれらに限定されない過渡的な工程を対象材料に発生させるために対象物に与える必要がある最小限のエネルギー量を示す。
【0039】
本明細書で使用される「収差レンズ」(aberrative lens)という用語は、レンズを通過する入射光に対して分散した焦点パターンを作り出すために、x面のレンズ曲線がy面のレンズ曲線と等価ではない不完全なレンズである集束レンズを示す。
正収差レンズは、収束レンズであり、負収差レンズは発散レンズである。
【0040】
本明細書では、「含む」および「含んでいる」という用語は、包括的かつ非限定的であると解釈されるものであり、排他的とは解釈されない。
詳細には、明細書およびクレームで使用された場合、「含む」および「含んでいる」という用語ならびにそれらの変形は、特定の特徴、ステップ、または構成要素が含まれることを意味する。
これらの用語は、他の特徴、ステップ、または構成要素の存在を排除するものとは解釈されない。
【0041】
本明細書で使用される「例示的な」という用語は、「例、事例、または実例としての役割を果たす」ことを意味するものであり、本明細書で開示される他の構成よりも好適または有利であると解釈すべきではない。
【0042】
本明細書で使用される「約」という用語は、特性、パラメータ、寸法の変量など、値範囲の上限および下限の間に存在し得る変量を網羅することを意味する。
【0043】
以下の方法では、超高速レーザーパルスのバーストによるフィラメンテーションによって単一または複数の積層した対象材料の下方または上方に発生させることができるオリフィス(有底/盲のオリフィスまたは貫通のオリフィス)を対象材料に発生させる、高速で信頼性が高く経済的な非アブレーションレーザー加工を提供する。
レーザービームを対象材料に対して相対的に動かすことで、フィラメントを方向付けて対象物を切断またはスライスする。
超短パルスレーザーは、多光子、トンネルイオン化、および電子雪崩の各工程を積極的に駆動することにより表面をきれいに微小加工、改質、および処理するための高い強度を提供する。
当面の問題は、対象の透明材料に、アブレーション穴あけ加工で使用されるエネルギーよりも少なく、かつ光音響圧縮加工を開始および維持するための臨界エネルギーレベルよりも大きいエネルギーをどのように与えて、対象材料内の焦点における屈折率を修正し、(先行技術のアブレーション穴あけシステムで直面する)光学破壊に直面しないフィラメントを作成して、対象材料内でのレーザービームの継続的な再集束を長距離にわたって継続し、複数の積層した基板でも先細りを抑えてオリフィスの壁を比較的滑らかにしつつ対象材料の上方、下方、または内部から同時に穴あけできるようにするかである。
製作ユニットの方向付け/ステアリングにより形成されたフィラメントは、オリフィスの穴あけ、対象物の表面もしくは内部の切断、スクライビング、またはダイシングに使用できる。
【0044】
一般に、先行技術では、対象材料の上方、内部、または表面の単一の主焦点に集束する高エネルギーのパルスレーザービームを利用するレーザーアブレーション加工が、透明材料の加工に使用されてきた。
図1に示すように、入射レーザー光ビーム2は、集束要素装置を通り、最後の集束レンズ4を通過して、対象物10の表面に主焦点ウエスト8が位置する非分散光ビーム6を集束させる。
図3からわかるように、オプションで、主焦点ウエスト8が対象物10の内部に位置するように非分散光ビーム6を集束させることができる。
通常、これらの加工では、
図9に示すように、完全な球面集束レンズ12、すなわち、X面の曲率とY面の曲率とが等価である(Cx=Cy)非収差レンズを使用するか、または、単一の焦点14を持つ非分散ビーム6を生成する集束要素装置を用いる。
これにより、
図1に示すように対象物の基板材料10の表面上に伝達され、または
図3に示すように対象物の基板材料10の内部に伝達される狭いビームスポットが作成される。
図2は、
図1の加工で切断された加工済みスロット16の形状を示し、
図4は、
図3の加工で作成された楕円形のオリフィス18を示す。
【0045】
さまざまな光学媒体での強力な超高速のレーザーパルスの伝搬が広く研究されている。
基板材料の非線形屈曲率は、レーザー強度に依存する。
パルスの中心部が尾部よりもはるかに強力なガウス分布の強力なレーザーパルスを使用すると、レーザービームパルスを受ける側の基板材料の中心領域と周辺領域とで屈折率が変わる。
結果として、そのようなレーザーパルスの伝搬時に、パルスが自動的につぶれる。
この非線形現象は、業界で自己集束と呼ばれている。
自己集束は、ビーム経路でレンズを使用して促進することもできる。
焦点領域で、レーザービームの強度は、多重イオン化、トンネルイオン化、および、雪崩イオン化を引き起こすのに十分な値に達し、それによって材料にプラズマが作成される。
プラズマにより、レーザービームは、集束解除し、再び集束して次のプラズマボリュームを形成する。
非分散光ビームの単一焦点に固有の問題は、レーザーパルスがすべてのエネルギーを失うと工程が終了し、上述のように再集束できないことである。
【0046】
このアブレーション方法は、基板材料10の光学破壊しきい値を超えて光学破壊(OB)16が発生するまで、基板材料10内に最大で長さ30ミクロンのフィラメントを発展させる。
図9を参照されたい。
OBの時点で、最大しきい値フルエンス(単位面積当たりで伝達されるエネルギー。単位は、J/m
2)に到達し、オリフィス直径が狭くなってアブレーション加工または穴あけがそれ以上深く進まなくなる。
これは、先行技術の方法を使用することの明らかな欠点である。
なぜなら、これらの方法では、穴あけできるオリフィス22のサイズが制限され、オリフィス22の壁が粗くなり、対象物10の上面と底面とで直径が異なる先細りのオリフィス22ができあがるからである。
図5を参照されたい。
こうしたことが起こるのは、アブレーション加工では、レーザービームの中心焦点8(主焦点ウエストともいう)が対象物10の表面に位置し、加熱および熱膨張が局所化して、対象物の基板材料10の表面がその沸点まで加熱されキーホールが生成されるからである。
キーホールは、光学吸収率の唐突な増加につながり、オリフィス22を急速に深くする。
オリフィス22が深くなり、対象物の基板材料10が沸騰するにつれ、生成された蒸気が融解した壁を侵食し、噴出物20を吹き飛ばし、オリフィス22をさらに大きくする。
このとき、被アブレーション材料は、拡張しながら下方の表面に高圧のパルスを適用する。
この効果は、表面をハンマーで叩くことに似ており、脆弱な基板材料は、簡単に割れる。
さらに、脆弱な基板材料は、熱破壊に特に敏感である。
熱破壊は、熱応力割(thermal stress cracking)で利用される特徴だが、オリフィスの穴あけでは望ましくない)。
通常、OBに到達するのは、デブリと称する廃棄物が噴出しないか、オリフィス22で気泡が形成されるか、またはオリフィス22の領域に対象物10を亀裂させる強烈なアブレーションが存在するときである。
これらの効果のいずれかまたは組み合わせにより、レーザービームは、このポイントから散乱するか、または完全に吸収され、対象物の基板材料10をさらに穴あけするだけの十分なビーム力(フルエンス)が失われる。
さらに、これにより、アブレーション噴出土手20と呼ばれる歪みまたは粗さが、対象基板10の表面の起点の周囲に形成される。
図5を参照されたい。
【0047】
レーザーアブレーション加工のもう1つの問題は、レーザービームのフィラメンテーションの直径が距離に応じて変化するため、穴あけするオリフィス22の直径が一定でないということである。
これは、レイリー範囲として説明される。
レイリー範囲は、焦点ウエストから断面積が2倍になる場所までのレーザービームの伝搬方向に沿った距離である。
これにより、
図2および
図5に示すような先細りのオリフィス22ができあがる。
【0048】
本発明は、光学破壊の問題を解決し、オリフィス22の粗さとアブレーション噴出土手とを最小限に抑え、直径が先細りしたオリフィス22をなくす。
【0049】
本開示は、レーザーにより誘起される光音響圧縮加工によって透明材料にオリフィス22を加工する装置、システム、および方法を提供する。
既知のレーザー材料加工方法と異なり、本発明の実施形態では、入射レーザービーム2を長手方向のビーム軸に沿って分散させる光学配置を利用する。
これにより、主焦点ウエスト8と副焦点ウエスト24とを直線的に並べて(オリフィスの直線軸に一致するが、主焦点ウエスト8または焦点ウエストから垂直方向にずれている)、入射レーザービーム2が対象物の基板材料10を通過するときに連続して再集束できるようにし、それによって対象物の基板材料10内のビーム経路に沿った屈折率を修正し、かつ(初歩的なフィラメンテーションを使用するものと使用しないものとを含む従来技術のアブレーション穴あけシステムに見られるような)光学破壊に直面しないフィラメントの作成を可能にし、対象材料10におけるレーザービーム2の継続的な再集束を長距離にわたって継続できるようにする。
図6を参照されたい。
【0050】
この分散集束方法では、分散焦点レンズ集束装置からなる分散集束要素装置26により副焦点ウエスト24を作成し、主焦点ウエスト8を対象物の基板材料10の上方、内部、または外部に位置させることにより、主焦点ウエスト8に存在する入射レーザービーム2の不要なエネルギーを「ダンピング」または低減することができる。
このように、ビームフルエンスのダンピングと主焦点ウエスト8および副焦点ウエスト24の線形配列とを組み合わせることで、これまで既知の方法を使用して可能だった距離を大幅に上回る(および1mmを大幅に上回る)距離にわたりフィラメントを形成しつつ、フィラメント領域の全長にわたり実際の改質および圧縮を行うための十分なレーザー強度(フルエンスμJ/cm
2)を維持することができる。
この分散集束方法は、1ミリメートルを優に超える長さのフィラメントの形成をサポートし、かつ、エネルギー密度を材料の光学破壊しきい値よりも低く維持する。
これにより、複数の積層基板でも異種の材料(対象材料の層の間の空気またはポリマーの間隙など)にわたって同時に穴あけできるだけの十分な強度を保ち、穴あけ距離全体での先細りをごくわずかにし(
図7)、比較的滑らかな壁のオリフィス22を対象材料の上方、下方、または内部から形成できるようにする。
オリフィス22の加工中に対象物10を相対的に移動することで、壁が先細りしていないスリット23を対象物の基板材料10内に形成できる。
【0051】
レーザーパルスの光学密度により、自己集束現象が起こり、フィラメントの内部/近傍/周囲の領域で非アブレーション初期の光音響圧縮加工を行うのに十分な強度のフィラメントが生成される。
これにより、フィラメントに一致する実質的に一定の直径の線形対称空洞が作成され、またレーザーパルスの連続的な自己集束および集束解除と分散レーザービームの副焦点ウエスト24によるエネルギー入力との組み合わせによって、対象材料10の指定された領域を横断または貫通するオリフィスの形成を指示/案内するフィラメントが形成される。
このオリフィスは、対象物10から材料を除去するのではなく、形成されるオリフィスの周囲の対象材料10を光音響圧縮加工することによって形成できる。
【0052】
対象物10の表面でのフルエンスレベルは、入射レーザービーム2の強度と特定の分散焦点レンズ集束装置からなる分散集束要素装置26とに依存することがわかっており、特定の対象材料、対象物10の厚さ、所望の加工速度、オリフィス全体の深さ、およびオリフィスの直径に応じて調節される。
また、穴あけされるオリフィスの深さは、レーザーエネルギーが吸収される深さに依存する。
したがって、単一のレーザーパルスによって除去される材料の量は、材料の光学特性と、レーザーの波長およびパルス長とに依存する。
このため、本明細書では、使用するシステムおよび材料で最適な結果を得るために経験的な判断を必要とする各基板および対応する用途ごとに、幅広い加工パラメータを示す。
そのため、表面でのフルエンスレベルが一時的かつ局所的なアブレーション(蒸発)加工を開始するのに十分な高さである場合、対象物10の入口点で最小限のアブレーション噴出土手20が形成されることがある。
ただし、このプラズマ作成は必須ではない。
状況によっては、過渡的かつ一時的なアブレーション穴あけを作成するのに十分な強度のフルエンスレベルを対象物10の表面で利用して幅広の傾斜した入口を作成しつつ、オリフィス22の残りの部分は同一の直径とするのが望ましい場合がある。
このようなオリフィス22は、一時的なアブレーション加工とそれに続く継続的な光音響圧縮加工とを許容するエネルギーレベルを使用した分散焦点混合型穴あけ方法により作成される。
図8を参照されたい。
これは、本発明により、アブレーション加工に必要なフルエンスレベルが傾斜部(または他の形状構成)の所望の深さで消耗するように材料におけるレーザービームの線形吸収と非線形吸収とをバランスさせたフルエンスレベルを対象物10の表面で選択することにより実現できる。
この分散焦点混合型穴あけ加工では、小さなアブレーション噴出土手20ができるが、対象物10の表面に犠牲層30を適用することで除去できる。
一般的な犠牲層30は、PVA、メタクリル樹脂、PEG等を含むがこれらに限定されない樹脂またはポリマーであり、通常必要な厚さはわずか1〜300ミクロンである(ただし、透明材料の加工では、10〜30ミクロンの範囲が利用され得る)。
犠牲層30は、一般的には、対象材料10の表面に噴霧することにより適用される。
犠牲層30は、技術分野でよく知られているように、溶融したデブリと称する廃棄物が表面に付着するのを防ぎ、代わりに、除去可能な犠牲材料に付着させることにより、対象材料10にアブレーション噴出土手20が形成されるのを防ぐ。
【0053】
光音響圧縮加工を実現するには、以下のシステムが必要である。
・バーストパルスエンベロープ内に2〜50のサブパルスを含むプログラミング可能なパルス列を含むレーザービームを生成できるバーストパルスレーザーシステム。
このレーザーシステムは、さらに、利用する対象材料10に応じて、1〜200ワットの平均出力を生成できる必要がある。
通常、この範囲は、ホウケイ酸ガラスの場合で50〜100ワットである。
・対象材料10での入射フルエンスがカー効果の自己集束および伝搬を引き起こすのに十分である弱収束の多焦点空間ビーム像を生成できる分散焦点レンズ集束装置からなる分散集束要素装置26(正レンズおよび負レンズを含み得るが、全体として正集束効果を有する)。
・対象物にレーザービームを伝えることができる光学伝送システム。
【0054】
商業運転では、光学系に対して材料(またはレーザービーム)を移動する(または、その逆で移動する)機能、またはシステム制御コンピュータにより駆動される協調/複合動作が必要である。
【0055】
このレーザーシステムを使用して光音響圧縮加工によってオリフィスを穴あけするには、特定の対象物10に対して、分散焦点要素装置26の特性、バーストパルスレーザービームの特性、および主焦点ウエストの位置を調節する必要がある。
【0056】
分散焦点レンズ集束装置からなる分散焦点要素装置26は、非球面プレート、テレセントリックレンズ、非テレセントリックレンズ、非球面レンズ、環状ファセットレンズ(annularly faceted lenses)、カスタム研磨収差(非完全)レンズ、正レンズと負レンズとの組み合わせまたは一連の補正プレート(位相シフトマスキング)、入射レーザービーム2に対して傾斜した任意の光学要素、レーザービームの伝搬を操作できる能動補正光学要素など、技術分野で一般的に採用されている多様な既知の集束要素でよい。
上述した光学要素装置候補の主焦点ウエスト8は、通常は、主焦点ウエスト8における入射レーザービーム2のフルエンスが90%を超えず、また50%を下回らない。
ただし、事例によっては、分散焦点要素装置26の光学効率が99%に近くなることがある。
【0057】
図10は、上述した工程で使用される非球面の収差レンズ34を示す。
分散焦点レンズ集束装置からなる分散焦点要素装置26の実際の光学効率は、個別の用途ごとに微調節する必要がある。
利用者は、各透明材料、対象物10の物理構成および特性、ならびに特定のレーザーパラメータに応じた一群の経験的テーブルを作成する。
炭化ケイ素、ガリウムリン、サファイア、強化ガラス等はそれぞれ独自の値を持つ。
このテーブルは、材料内にフィラメントを作成し(レーザー出力、繰り返し率、焦点位置、およびレンズ特性のパラメータを上述したように調節する)、亀裂の面または光音響圧縮加工の軸を誘起してオリフィスを作成するのに十分なフルエンスが存在することを確認することにより決定される。
ホウケイ酸塩でできた厚さ2mmの単一平面の対象物10に、周波数(繰り返し率)が1MHz域である10μJのエネルギーのバーストパルスを出力する1micronの50ワットレーザーで、直径5ミクロンの貫通オリフィス(
図11に図示)を穴あけするためのサンプル光学効率は、レーザービームの主焦点ウエスト8が所望の起点から1mm離れたところに位置する状態で65%である。
【0058】
この光音響圧縮穴あけ加工で満たす必要がある一群の物理パラメータが存在することに注目されたい。
図11および
図12を参照すると、ビームスポット直径38>フィラメント直径40>オリフィス直径42の関係であることがわかる。
さらに、分散レーザービームの主焦点ウエスト8は、フィラメントが作成される対象材料10の内部または表面上に位置していない。
【0059】
主焦点ウエスト8の位置は、一般に、所望の起点から500ミクロン〜300mm離れた範囲内である。
これは、
図6にも示すように、エネルギーダンプ距離32と呼ばれる。
また、各透明材料に応じた経験的テーブルの作成により、対象物10の物理構成および特徴と、レーザービームのパラメータとが判断される。
これは、上述した方法により作成されたテーブルより推測される。
【0060】
レーザービームエネルギーの特性は、次のとおりである。
すなわち、レーザービームのパルスエネルギーは、0.5μJ〜1000μJであり、繰り返し率は、1Hz〜2MHz(繰り返し率は、試料移動(sample movement)の速度および隣接フィラメント間の間隔を定義)である。
フィラメントの直径および長さは、各バーストエンベロープ内に存在する一時的エネルギー分散を変更することにより調節できる。
図17乃至
図19は、バーストパルスレーザー信号の3つの異なる一時的エネルギー分散例を示している。
図19の上昇および下降するバーストエンベロープ形状は、誘電材料から薄い金属層を除去するのに非常に適した工程制御の特に有益な手段を表している。
【0061】
図13乃至
図16を参照すると、本発明の機構が最もよく示される。
ここでは、バーストピコ秒パルス光を使用している。
これは、対象材料10に堆積するエネルギーの総量が低く、光音響圧縮加工が対象材料10を亀裂させずに進行できるからである。
また、対象材料10で生成される熱が少ないため、効率的な小単位のエネルギーが対象材料10に堆積し、よって、フィラメントの周囲で対象材料10の完全性を損なうことなく対象材料10を基底状態から最大励起状態に漸進的に高めることができるからである。
【0062】
実際の物理工程は、本明細書で説明するように発生する。
パルスバーストレーザーの入射光レーザービームの主焦点ウエスト8が、分散集束要素装置を通じて、フィラメントが作成される対象材料10の上方または下方(内部となることはない)の空間の点に提供される。
これにより、対象物10の表面にスポットが作成されるとともに、白色光が生成される。
対象物10の表面のスポットの直径は、フィラメントの直径および所望の形状(オリフィス、スロット等)の直径を上回る。
したがって、表面のスポットに入射するエネルギーの量は、二次電気光学効果(カー効果―材料の屈折率の変化は、適用される電場に比例する)を生成するための臨界エネルギーよりも大きいが、切断工程を誘起するために必要な臨界エネルギーよりは低く、より明確には、対象材料10の光学破壊のしきい値を下回る。
この関係を満たす臨界出力よりも上で自己集束が発生する。
このとき、出力は、対象材料10の実屈折率と複素屈折率との積に反比例する。
自己集束条件と光学破壊条件との間のバランスを維持できるように対象材料10で必要な出力を時間的尺度にわたり維持した結果として、光音響圧縮加工が進行する。
この光音響圧縮加工は、均一で高出力なフィラメント形成および伝搬工程の結果である。
このとき、対象材料10は、アブレーション工程を介した除去に有利になるように再配置される。
したがって、きわめて長いフィラメントの形成が、分散集束要素装置によって作成される空間拡張された副焦点ウエストによって誘発され、光学破壊に到達することなく自己集束効果が維持される。
この分散集束要素装置では、多数の周辺光線および近軸光線が、主焦点ウエストに対して相対的な異なる空間位置で収束する。
これらの副焦点ウエストは、無限空間に延在するが、対象物10の厚さに経験的に対応する限られた範囲のみで有用な強度を持つ。
これは、副焦点ウエストのエネルギーを、基板表面よりも低いレベルであるが、フィラメント事象の能動的な底面であるレベルに集束させることにより行われる。
これにより、レーザーエネルギーがプラズマによる吸収とデブリと称する廃棄物による散乱とを回避しながら、対象材料の10大半にアクセスすることが可能となる。
【0063】
分散焦点要素装置は、不均等に分散しているように見える入射レーザービームの焦点を、主焦点ウエスト8と一連の直線的に配置された副焦点ウエスト(焦点)とを含む分散焦点ビーム経路に発展させるために、入射レーザービームの経路に配置された単一の収差焦点レンズである。
これらの焦点の配列は、オリフィス42の直線軸と共線的である。
なお、主焦点ウエスト8は、対象材料10の表面上または内部に位置することはない。
図13では、主焦点ウエスト8が対象材料10の上方にあり、
図14では、主焦点ウエスト8が対象材料10の下方にある。
これは、焦点ビームの対称的かつ非直線的な特性により、オリフィス42が主焦点ウエスト8の上方または下方から開始されるからである。
したがって、ビームスポット52(約10μm離れている)が対象物10の表面に存在し、弱い副焦点ウエスト50が対象物10内に共線的に存在する。
これは、レーザービームの電場が対象物10の屈折率を変化させるため、対象材料10が最後の光学要素として機能して、これらの焦点を作成するからである。
この分散焦点により、
図15に示すように、レーザーエネルギーを対象材料10に堆積させて、フィラメントラインまたはフィラメント領域60を形成することができる。
複数の焦点を直線状に配置し、対象材料を最後のレンズとして機能させることにより、対象材料10は、超高速バーストパルスレーザービームを照射されたときに、多数の連続する局所的な加熱を被る。
これにより、直線状に配列された焦点の経路に沿って、対象材料10の局所的な屈折率(詳細には複素屈折率)の変化が熱的に誘起される。
これにより、長くて先細りのないフィラメント60が対象物10に発展し、それに続いて音響圧縮波が対象材料の所望の領域を環状に圧縮して、フィラメンテーション経路の周辺に空洞および圧縮された対象材料10のリングが作成される。
次に、レーザービームが再集束し、再集束したレーザービームと副焦点ウエスト50のエネルギーとの組み合わせによって臨界エネルギーレベルが維持され、この一連の事象が自動的に繰り返されて、縦横比(オリフィスの長さ/オリフィスの直径)が1500:1で、先細りがほとんどなく、オリフィスの入口サイズと出口サイズが事実上同じ直径であるオリフィスが穴あけされる。
これは、エネルギーを対象材料10の上面または内部に集束させ、結果としてフィラメンテーション距離が光学破壊に到達してフィラメンテーションが劣化または停止するまでの短いものとなる先行技術と異なる。
【0064】
図16は、空隙を挟んだ3枚の積層構成のプレート状の対象物10のうちの下の2枚へのオリフィスの穴あけを示している。
ここで、主焦点ウエスト8は、最後の対象物10の下方に位置している。
穴あけは、複数層の構成の上方、下方、または中間から行うことができるが、同じレンズセットおよび曲率を使用した場合は、穴あけ事象は、常に、主焦点ウエスト8から同じ距離で発生する。
主焦点ウエスト8は、常に、対象材料10の外部にあり、対象基板の表面に達することはない。
【0065】
光音響圧縮加工を通じてオリフィスを穴あけする方法は、以下の連続するステップにより実現される。
1.レーザー源から、選択的に分散焦点レンズ集束装置を通じてレーザーエネルギーを渡す。
2.レーザー源に対する分散焦点レンズ集束装置の相対的な距離および/または角度を、レーザーエネルギーを分散焦点構成で集束して主焦点ウエスト8と少なくとも1つの副焦点ウエストとを作成するように調節する。
3.主焦点ウエスト8が工作される対象物10の表面上または内部に位置しないように、主焦点ウエスト8または対象物10を調節する。
4.主焦点ウエスト8の下方または上方に位置する対象物10の表面上のレーザーフルエンスのスポットが、対象物10に形成されるフィラメンテーションの直径よりも常に大きな直径を有するように、焦点を調節する。
5.光音響圧縮加工が対象物10の所望の内部に確実に伝搬するように、副焦点ウエストのフルエンスレベルを十分な強度および数に調節する。
6.適切な波長、適切なバーストパルス繰り返し率、および適切なバーストパルスエネルギーを有するレーザーパルスの少なくとも1つのバーストを、選択的に分散焦点レンズ集束装置を通じて、レーザー源から対象物10に適用する。
ここで、レーザーパルスが対象物10の加工の起点に接触するスポットで対象物10に適用されるパルスエネルギーまたはフルエンスの総量は、光音響圧縮加工を開始および伝搬するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きいが、アブレーション加工を開始するために必要なしきい値臨界エネルギーレベルよりも低い。
7.所望の加工が完了したら、レーザーパルスのバーストを停止する。
【0066】
既に述べたように、オリフィスの入口が先細りした特殊なオリフィス構成が望ましい場合がある。
これは、所望の距離だけアブレーション加工ができるレーザーフルエンスレベルでオリフィスを開始し、アブレーション加工の臨界レベルよりも低くかつ材料の所望の深さまで光音響圧縮加工を行うための臨界レベルよりも高いレーザーフルエンスレベルで穴あけを完了することにより実現される。
このようなオリフィス形成では、対象物の表面への除去可能な犠牲層の適用も利用できる。
これにより、噴出土手を犠牲層の上に形成し、後で噴出土手を犠牲層と共に除去することができる。
【0067】
このようなアブレーション加工と光音響圧縮加工との混合型加工方法によるオリフィスの穴あけは、以下のステップにより実行できる。
なお、ここでは、犠牲層の適用を利用しているが、利用する場合は最初に実行しなくてもよい。
1.対象物の少なくとも1つの表面に犠牲層を適用する。
2.レーザー源から、選択的に分散焦点レンズ集束装置を通じてレーザーエネルギーを渡す。
3.レーザー源に対する分散焦点レンズ集束装置の相対的な距離および/または角度を、レーザーエネルギーを分散焦点構成で集束して主焦点ウエストと少なくとも1つの副焦点ウエストとを作成するように調節する。
4.主焦点ウエストが加工される対象物の表面上または内部に位置しないように、主焦点ウエストまたは対象物を調節する。
5.対象物の表面上のレーザーフルエンスのスポットが、主焦点ウエストの下方または上方に位置するように、焦点を調節する。
6.対象物の表面上のレーザーフルエンスのスポットを、対象物に形成されるフィラメンテーションの直径よりも常に大きな直径を有するように調節する。
7.副焦点ウエストのフルエンスレベルが、対象物の所望の内部に光音響圧縮加工を確実に伝搬できる強度および数であることを確認する。
8.適切な波長、適切なバーストパルス繰り返し率、および適切なバーストパルスエネルギーを有するレーザーパルスの少なくとも1つのバーストを、選択的に分散焦点レンズ集束装置を通じて、レーザー源から対象物に適用する。
ここで、レーザーパルスが対象物の加工の起点に接触するスポットで対象物に適用されるパルスエネルギーまたはフルエンスの総量は、アブレーション加工を所望の深さまで開始するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きく、その後、アブレーション加工により穴あけされたオリフィスの底部におけるフルエンスエネルギーは、フィラメンテーションおよび光音響圧縮加工を開始および伝搬するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きいが、アブレーション加工を開始するために必要なしきい値臨界エネルギーレベルよりも低い。
9.所望の加工が完了したら、レーザーパルスのバーストとフィラメンテーションとを停止する。
【0068】
レーザー特性のさまざまなパラメータ、主焦点ウエストの位置、および最終的な集束レンズの配置と作成されるオリフィスの特徴とを次の表に示す。
これらは、対象材料の種類、対象材料の厚さ、ならびに所望のオリフィスのサイズおよび位置によって値が大きく異なるため、範囲で表されていることに注意されたい。
次の表は、多様な透明材料のいずれかに均一なオリフィスを穴あけするために使用される、さまざまなシステム変数の範囲を詳細に示している。
【0069】
<レーザー特性>
波長 → 5ミクロン以下
パルス幅 → 10ナノ秒以下
周波数(レーザーパルス繰り返し率)→ 1Hz〜2MegaHz
平均出力 → 200〜1ワット
バーストごとのサブパルス数 → 1〜50
サブパルス間隔 → 0.1フェムト秒〜10マイクロ秒
パルスエネルギー → 0.5μJ〜10マイクロジュール(μJ)(平均出力/繰り返し率)ワット/1/秒
<オリフィス特性>
最小オリフィス直径 → 0.5ミクロン
最大オリフィス直径 → 5mm
最大オリフィス深さ → ホウケイ酸ガラスで10mm
典型的な縦横比 → 1500:1
最大縦横比 → 2500:1
収差レンズ比率 → レンズのCx:Cy比率が−5〜4,000
オリフィス側壁の円滑性(材料非依存) → 5ミクロン以下の平均粗さ(Si、SiC、SiN、GaAs、GaN、InGaP等)
オリフィス側壁の先細り(材料非依存) → 深さ10,000ミクロンで無視できる程度
<最終的な光学装置>
レンズ焦点距離の比率 → +300〜−300
レンズ光学効率 → 50〜99%
<ビーム特性>
焦点分散 → −5〜4,000
M
2 → 1.00〜5.00
【0070】
既に述べたように、上記パラメータは、対象物によって異なる。
操作の例として、透明基板に3ミクロンの穴を深さ2mmで穴あけするには、装置およびパラメータとして、波長1064ナノメートルのレーザー、65ワットの平均出力、10μJのパルスエネルギー、バーストごとに15個のサブパルス、および1MHzの繰り返し率を使用する。
これを、2mmの空間(フィラメント活性領域が長さ2mm)にわたって焦点を分散させる収差レンズで、材料に応じて上面より.5ミクロン〜100mm上方で集束させる。
【0071】
<レーザー加工システム>
複数の種類のレーザー加工システムが現時点で利用可能であることが技術分野でよく知られている。
すべてのレーザー加工システムは、少なくとも2つの共通点を持つ。
すなわち、ワーク上の入射レーザービームの位置を変えることと、レーザーの集束、出力、および伝送のさまざまなパラメータを調節できることである。
これらのレーザー加工システムは、レーザービームに対してワークを動かすか(たとえば、X−Y面で移動可能なテーブルを使用)、ワークに対してレーザービームを動かすか(たとえば、ステアリングミラーを使用)、または、両加工の組み合わせを利用することができる。
図20は、HDDプラッタまたはシートのガラス基板にフィラメントを形成できるレーザー加工システム70の例を表す。
このレーザー加工システム70は、好ましくは、100ピコ秒未満のパルス幅で連続的なバーストモードパルスを供給できる、適切なビームステアリング光学系を備えた超高速レーザー72を含む。
これにより、XY面の回転ステージ(シータ、θ)、3D XYZ移動ステージ、およびビームまたは部品をY軸に対して傾斜させる軸(ガンマ、γ)を協調制御構造で含む多軸回転移動ステージにレーザービームを伝送できる。
図示された実施形態では、レーザービームは、調節光学系74(たとえば、追加で調節または操作され得る弱集束スポットを提供できる正レンズ、負レンズ、またはレンズの組み合わせ)、ビームサンプリングミラー76、電力計78、X−Yスキャナ80、最終集束レンズ82、およびワーク86(HDDプラッタ基板)を位置決めするサーボ制御ステージ84により操作される。
以下で詳細に説明する制御処理ユニット88は、本明細書で開示されるレーザーフィラメンテーションおよび切断システムの実施形態70を制御するために利用される。
フィラメントの位置および深さは、一定の作動距離を維持するオートフォーカス構成(たとえば、位置検知装置を使用)により制御される。
【0072】
図21は、制御処理ユニット88の例示的な実装を示す。
この制御処理ユニット88は、1または複数のプロセッサ90(たとえば、CPU/マイクロプロセッサ)と、バス92と、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読み取り専用メモリ(ROM)を含むメモリ94と、1または複数のオプションの内部ストレージ装置96(たとえば、ハードディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、または内部フラッシュメモリ)と、電源98と、1または複数のオプションの通信インターフェイス100と、オプションの外部ストレージ102と、オプションのディスプレイ104と、さまざまなオプションの入力/出力装置および/またはインターフェイス106(たとえば、受信機、送信機、スピーカ、デジタル静止画像カメラやデジタルビデオカメラで使用されている画像センサ、出力ポート、ならびにキーボード、キーパッド、マウス、位置追跡スタイラス、位置追跡プローブ、フットスイッチ、および/または音声命令をキャプチャするためのマイク等のユーザー入力装置)とを含む。
制御処理ユニット88は、1または複数のレーザーシステム72、レーザー走査/位置決めシステム80、サーボ制御ステージ84(ワークであるHDDプラッタ基板の位置決めシステム)、および測定センサまたは撮像装置等の1または複数の測定装置またはシステム108とやり取りする。
【0073】
図21では、各コンポーネントが1つだけ示されているが、制御処理ユニット88には、各コンポーネントを任意の数だけ含めることができる。
たとえば、コンピュータは、通常、複数の異なるデータストレージメディアを含む。
さらに、バス92は、すべての構成要素間の単一の接続として描かれているが、2つ以上の構成要素を結び付ける1または複数の回路、装置、または通信チャネルを表すことが理解される。
たとえば、パーソナルコンピュータでは、バス92は、しばしばマザーボードを含むか、またはマザーボードである。
【0074】
一実施形態では、制御処理ユニット88は、汎用コンピュータまたは任意の他のハードウェア等価物であり、または、それらを含む。
また、制御処理ユニット88は、1または複数の通信チャネルまたはインターフェイスを通じてプロセッサ90に連結された1または複数の物理装置として実装される。
たとえば、制御処理ユニット88は、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して実装される。
代替で、制御処理ユニット88は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実装される。このソフトウェアは、メモリから、またはネットワーク接続を介して、プロセッサに読み込まれる。
【0075】
制御処理ユニット88は、プロセッサ90で実行されたときに本開示に記載された1または複数の方法をシステムに実行させる一連の命令を使用してプログラムすることができる。
制御処理ユニット88に含まれる構成要素は、図示されているよりもはるかに多くても、少なくてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態について完全に機能するコンピュータまたはコンピュータシステムの文脈で説明したが、当業者は、さまざまな実施形態をさまざまな形式のプログラム製品として分散させることができること、また、実際に分散を実現するために使用されるマシンまたはコンピュータ読み取り可能媒体の種類に関係なく適用することができることを理解する。
【0077】
コンピュータ読み取り可能媒体は、データ処理システムによって実行されたときにさまざまな方法をシステムに実行させるソフトウェアおよびデータを格納するために使用することができる。
実行可能なソフトウェアおよびデータは、ROM、揮発性RAM、不揮発性メモリ、キャッシュ等を含むさまざまな場所に格納することができる。
このソフトウェアおよび/またはデータの一部分を、これらのストレージ装置のいずれかに格納することができる。
一般に、マシン読み取り可能命令は、マシン(たとえば、コンピュータ、ネットワーク装置、個人用デジタル補助装置、製造ツール、1または複数のプロセッサを備えた任意の装置)によりアクセス可能な形式で情報を提供する(すなわち、格納および/または送信する)任意の機構を含む。
【0078】
コンピュータ読み取り可能媒体の例として、揮発性および不揮発性のメモリ装置、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ装置、フロッピー(登録商標)およびその他のリムーバブルディスク、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)等)等の記録可能および記録不可能なタイプの媒体があるが、これらに限定されない。
搬送波、赤外線信号、デジタル信号等の電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号のためのデジタルおよびアナログの通信リンクに、命令を埋め込むことができる。
【0079】
本開示の一部の側面は、少なくとも部分的に、ソフトウェアで実装することができる。
つまり、コンピュータシステムまたは他のデータ処理システムで、ROM、揮発性RAM、不揮発性メモリ、キャッシュ、磁気ディスク、光学ディスク、リモートストレージ装置等のメモリに含まれた命令のシーケンスを実行するマイクロプロセッサ等のプロセッサに応じて、加工を実行することができる。
さらに、命令は、データネットワークを介してコンパイル版またはリンク版としてコンピューティング装置にダウンロードすることができる。
代替で、上述した工程を実行するロジックを、大規模集積回路(LSI)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)やフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのファームウェアのような追加のコンピュータおよび/またはマシン読み取り可能媒体等の個別のハードウェア構成要素に実装することもできる。
【0080】
図22および
図23は、非テレセントリックレンズ110(
図22)およびテレセントリックレンズ112(
図23)を使用して、X−Yスキャナ80の制御を通じて複数の軸を制御する機能を示す実施形態を示している。
非テレセントリックレンズ110の場合、非視野補正レンズに存在する自然な歪みにより、角度のついたフィラメントパスを作成することができる。
X(γ、ガンマ)軸を中心とした回転を実行して、ワーク86の内部に、垂直入射光を使用して傾斜したフィラメント改質領域(114、116)を提供することができる。
他の光学構成を使用できることを理解されたい。
【0081】
図24は、ワーク86を支持するサーボ制御のステージ84(図示せず)が回転してワーク材料86の表面に対して傾斜したフィラメントを生成する、代替の実施形態を示している。
この実施形態は、走査レンズを利用する装置の実施形態と同様の結果を作り出すために、ビーム入射角に対して傾斜した試料を提供するように構成されている。
【0082】
図25は、部品のシンギュレーション(singulation)に適したレーザーシステムのレイアウトを示している。
レーザービーム72は、たとえば、約1μJ〜50mJのエネルギーを含むバーストパルスを最大約2.5MHzの繰り返し率で提供できるレーザーシステムである。
【0083】
花崗岩ライザ118は、業界で一般に使用されているように、機械的な振動を緩衝する反応物質として設計されている。
これは、ステージの上方の光学系がステージに対してXまたはYの1つの軸に沿って、ステージと協調して移動することができるブリッジである。
花崗岩ベース120は、レーザーシステムの任意またはすべての構成要素を支持する反応物質を提供する。
一部の実施形態では、操作装置122は、安定性の理由により、レーザーシステムから振動的に分離されている。
【0084】
Z軸モニタ駆動装置124は、光学系(調節、集束、および必要に応じて走査を行う光学系)をサーボ制御のX−Yステージ84に対してZ軸方向で移動するために設けられている。
この動きは、XYステージ84、オーバーヘッド花崗岩ブリッジのX動作またはY動作、および加工する試料材料を保持する花崗岩ベース120上のステージのXY動作と協調させることができる。
【0085】
ステージ84は、たとえば、傾斜軸ガンマ(「ヨー」)を備えたXYステージ84およびシータステージを含む。
ステージ84の動きは、大きなマザーシートから所望の部品形状を作成するために、たとえば、制御コンピューティングシステムによって調節される。
測定装置108は、たとえば、切断後の縁部品質のマッピング、サイズ設定、および/または確認のために、工程後または工程前(または両方)の測定を提供する。
【0086】
図25Aは、レーザー加工を使用してガラス製ハードディスクドライブプラッタ180を切断するレーザーシステムの平面図である。
レーザーヘッド177のX−Y動作が、
図25Aに示されている。
ここで、レーザーヘッド177は、ガラス基板170の上方に概略的に図示されている。
ガラス基板170は、花崗岩(またはその他の寸法安定性のある)ベース120の上の梁171、172により支持されている。
レール175、176は、
図25Aに示すように、レール175、176に沿ってX方向で可動する可動アーム178を支持する。
可動アーム178は、モーターと、可動アーム178をX方向で正確に位置決めするコントローラとによって駆動される。
同様に、レーザーヘッド177は、モーターとコントローラとによって駆動され、
図25Aおよび
図25Bに示すように、可動アーム178に沿ってY方向で正確に移動および位置決めされる。
図25Bは、
図25Aに示すガラス製ハードディスクドライブプラッタを切断する例示的なレーザーシステムの側面図である。
【0087】
可動アーム178は、レール手段を含み、レーザーヘッド177は、モーター177Mまたは、レーザーヘッド177をY方向で位置決めする他の手段を含む。
さらに、レーザーヘッド177は、ビームウエストを必要に応じて調節するためにZ方向で可動する。
垂直レール177Vにより、レーザーヘッド177が垂直方向(Z方向)で移動することができる。
さらに、選択的分散焦点レンズを、レーザーヘッド177での使用に適合させることが理解される。
ガラス製ハードディスクドライブプラッタ180が、
図25Aおよび
図28に示されている。
【0088】
図28は、
図25Aおよび
図25Bに示すようにガラス製ハードディスクドライブプラッタ180が切断されるガラス基板170を示す。
外側スクライブ環状線181Eが示され、内側スクライブ環状線118Iが示されている。
【0089】
図26(a)乃至
図26(d)は、縁部が傾斜した内部形状を作成するための傾斜切り欠きアプローチを示している。
このアプローチは、所望の角度付き結果を実現するためのシンギュレーション後の加工を必要としない。
【0090】
図26(a)乃至
図26(c)で、ビームトラックは、シータ軸126を中心とする回転を通じて実現される。
レーザービーム127の入射角は、固定され、最終的な部品の縁部128で望まれる傾斜と等価である。
この非限定の実施形態は、フィラメントアレイによる複雑な切り欠きの作成をサポートする装置として、傾斜のついた切断と、回転ステージの移動とを可能にする。
【0091】
図26(d)は、異なる角度の複数のフィラメント形成レーザービーム132による面取り縁部130の形成の実施形態を示している。
レーザービームおよびフィラメントパスを制御して、さまざまな角度の面取り縁部または傾斜した縁部を形成することができることを理解されたい。
協調した(並列)形成の場合、光学系を通じてレーザービーム132を分割および誘導して、垂直とは違う角度で対象物に到達する複数のビームパスを垂直の入射レーザービームと共に実現して、3面縁部または面取りを作成することができる。
【0092】
面取りは、たとえば、工程によって許容される分離の程度に基づいて、2つ以上の面で作成できることが理解される。
いくつかの例示的な構成を
図26(e)に示す。
【0093】
一部の実施形態では、以下に説明するように、1つのレーザー(およびビーム分離光学系)で両方のスクライビングステップを同時に実行できるようにレーザー加工システムを構成することができる。
このとき、レーザーが十分な出力を備えていることが条件となる。
たとえば、平均出力が約75Wのレーザーは、すべての加工ステップを同時に実行するのに十分である。
【0094】
多軸回転移動制御を備え、バースト超高速レーザーパルスによるフィラメンテーションを利用して光音響圧縮加工を実現する上述した装置は、(磁気媒体で被覆されたガラス基板から)閉じた形状を切り出してガラス製HDDプラッタ等の製品を作成するために、さまざまな焦点位置、非垂直の入射角、および可変のレシピ制御位置でレーザービームをワーク86に与えてフィラメントアレイの曲線部分を作成する目的で利用できる。
これを現在利用されているレーザーアブレーション加工で行うことは不可能である。
当業者は、これらすべての軸がすべての用途に必要なわけではないこと、および、一部の用途では簡素なシステム構成のほうが恩恵があることを理解する。
さらに、示された装置は、本開示の実施形態の1つに過ぎないこと、およびかかる実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな基板、用途、および部品提供スキームのために装置製造業者によって変更、改良、または組み合わせられることが理解される。
【0095】
<HDDプラッタ切断方法>
好ましい実施形態の方法は、用意されたHDDPプラッタガラス基板のシートから始まる。
ディスクの製造では、ほとんどの場合は、マグネトロンスパッタリングと呼ばれる真空蒸着工程により、ガラス基板の両側に薄い被覆を置く。
この被覆は、さまざまな金属(ほとんどの場合は非磁性)合金を下層として含む複雑な積層構造を備える。
これらの下層は、その上の実際の磁気媒体層、すなわち、情報のビットを格納するフィルムの結晶方位および粒径の制御に最適化されている。
この磁気材料の浅い層は、通常は、深さ10〜20nmである。
その上に、カーボンベースの保護膜が同じスパッタリング工程で置かれる。
後処理で、ディスクを溶媒溶液に浸すことで、スパッタリングされた構造の上に薄さ1ナノメートルのポリマー潤滑層が置かれる。
その後、ディスクをさまざまな工程によりバフがけして小さな傷を取り除き、浮動ヘッド上の特殊センサにより残留不純物またはその他の傷がないことを確認する。
ここで、ガラスプラッタを被覆する工程は、被覆が縁部研磨された切断済みのガラスプラッタではなく、ガラス基板シートに適用されるという点で若干異なる。
被覆されたガラス基板シートは、幾何学的に最も効率的なパターンで(縁部研磨が不要な)プラッタに切断される。
その後、プラッタを上述したようにバフがけおよび確認できる。
代替で、被覆された基板シートをバフがけおよび確認により完全に処理してから、プラッタを切断することもできる。
上述した工程のどのステップ(磁気媒体のさまざまな積層被覆をガラス基板に置く前または後)でプラッタを切断するかに関係なく、プラッタの切断方法は、同様である。
【0096】
円形のHDDプラッタのレーザー加工は、ガラス基板のシート、またはHDDを動作させるために必要な多様な被覆層(下塗り層、磁気媒体、保護層等)が適用されたガラス基板のシートから始まる。
これらのシートは、許容可能かつ動作可能な程度まで清浄および研磨されている。
ベア基板または被覆基板のいずれの場合も、プラッタの周囲にレーザーパルスのバーストを円形に1回通過させるだけで、プラッタを基板シートから切断することができる。
基板が被覆されている場合、バーストの最初の数パルスで表面をアブレートし、バーストの残りのパルスを基板の内部に浸透させてフィラメンテーション工程のためのフィラメントを形成するためのクリーンなパスを開く。
この加工の利点および新規性により、表面のアブレーションおよび内部のフィラメンテーションという2つの異なる工程を単一パスで実行することができる。
【0097】
十分な薄さ(すなわち、10ミクロン以下)の不透明な被覆がいずれかの面に適用された任意の透明基板を、ここで説明している方法で切断することができる。
レーザービームが上面に入射すると、アブレーションが発生する。
これは、フィラメントを形成するための十分な非線形吸収が被覆で生じないからである。
このアブレーションは、少数のレーザーパルスですばやく発生する。
その後、レーザービームが透明ガラス基板に到達し、表面を加熱し、自己集束効果を開始する。
これにより、光音響圧縮加工によってガラス基板を切断するフィラメントを形成する。
レーザービームを再集束したり、レーザービームのパラメータを調節したりする必要はない。
ガラス基板と、シートの下部の薄い被覆とが接する部分で、自由電子の熱雲(thermal cloud)が形成され、それによって薄い被覆がガラス基板の表面からきれいに「分離(pop off)」または蒸発する。
基板の表面には、数ナノメートルを超えるサイズの噴出材料またはデブリは、事実上残らない。
ガラスプラッタと底面の被覆とが接する部分でのレーザーフルエンスの量によっては、蒸発ではなく、アブレーション加工が、ここでも発生する可能性がある。
これによって、HDDプラッタの追加的な表面研磨が必要になることはない。
なぜなら、HDDの浮遊高度は、ナノメートル単位で設定されており、作成される噴出物の高さよりもプラッタ表面からはるかに離れているからである。
同じ加工を使用して、プラッタの中心のノックアウト孔が切断される。
【0098】
レーザー加工を使用してガラス製ハードディスクドライブプラッタを基板から作成する方法は、
磁気媒体被覆の成層系を備えた平面ガラス基板または被覆されていない基板を提供するステップと、
レーザーパルスのバーストを含むレーザービームを提供するステップと、
レーザービームを平面ガラス基板に集束でき、レーザービームと平面ガラス基板との間の相対的な移動を可能にするレーザービーム伝送システムを提供するステップと、
レーザービームを平面ガラス基板に対して相対的に集束して平面ガラス基板の外部にビームウエストを形成するステップであって、平面ガラス基板を通過する連続的なレーザーフィラメントを光学破壊なしで形成するのに十分なエネルギー密度が平面ガラス基板の内部に維持されるようにレーザーパルスを集束するステップと、
平面ガラス基板の上面の磁気媒体被覆をレーザーアブレートした後、ガラス基板を光音響圧縮により完全に切断するレーザーフィラメントを作成し、平面ガラス基板の底面の磁気媒体被覆をレーザーアブレートまたは蒸発させるステップと、
集束されたレーザービームと平面ガラス基板との間の相対的な移動を可能にし、それによって平面ガラス基板に作成されたレーザーフィラメントをレーザービーム伝送システムによりガラス基板の平坦な上面に対して円形幾何学的パターンで移動して、平面ガラス基板から円形パターンを切断するステップと
を実行する。
【0099】
場合によっては、レーザービームの品質ならびにレーザービーム伝送システムの精度および正確性に応じて、プラッタを追加的にバフがけし、研磨し、プラッタの表面の滑らかさを確認することが必要となる。
【0100】
本明細書で説明されているように、円形パターンは、ガラス基板の平坦な上面または底面に対して90度の角度で切断しなければならないわけではない。
レーザービームとガラス基板との間の関係を操作することにより、円形パターンを傾斜して切断することができるからである。
【0101】
被覆されていない基板は、劈開され、清浄され、被覆されてプラッタを形成する。
ディスクは、ハードディスク以外の用途で使用することも可能である。
その場合、ディスクは異なる被覆を備える。
例として、一部の製作用途では、可変ホイールフィルタ(variable wheel filter)がディスクに被覆され、一部の他の生物学的用途では、回転用の平面プラッタが必要である。
さらに、生物学的用途の後続の処理ステップで平面プラッタを追加的に特徴付けることが可能である。
この追加の特徴付けは、生物学的用途用に平面プラッタの表面に特徴を追加することを含む。
【0102】
図27を参照すると、対象材料で単一の円を切断するようになされたレーザー加工システムのビームステアリング機器の機械構成を最もよく確認できる。
レーザー加工システムは、受信レーザービーム148を生成する。
この受信レーザービーム148は、第1のミラー150により、受信レーザービーム148の軸に対して直角に方向付け/ステアリングされ、第2のミラー152に向かう。
第2のミラー152は、受信レーザービーム148を受信レーザービーム148の軸と並行にステアリングし、鏡筒154等のレンズ集束装置を通過させる。
受信レーザービーム148は、基板に投射される入射レーザービーム156としてレンズ集束装置から(平行または鋭角で)退出する。
見てわかるように、回転中心は、第1のミラー150に当たる前の入射レーザービーム148の軸を延長した部分にあたる軸を有する。
ミラーおよび鏡筒は、回転中心で回転して、平面基板に円をスクライブする。
スクライブされる円の直径を変更するには、第2のミラー152および鏡筒154を位置変更する必要がある。
【0103】
本発明は、以上の説明または図面に示された構成要素の配置に用途が限定されるわけではないことを理解されたい。
本発明は、他の実施形態に対応し、さまざまな異なる順序のステップでも実現および実行することができる。
また、本明細書で採用されている表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定とみなされるべきものではないことに注意されたい。
よって、当業者は、本開示の基盤となる概念が、本発明の複数の目的を実行するための他の構造、方法、およびシステムを設計するための基盤として容易に利用することができることを理解する。
したがって、特許請求の範囲については、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、等価の構造物を含んでいるとみなすことが重要である。