特許第5959603号(P5959603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959603
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】加工材料および把持機構
(51)【国際特許分類】
   B23B 1/00 20060101AFI20160719BHJP
   B23B 13/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B23B1/00 Z
   B23B13/02 Z
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-227349(P2014-227349)
(22)【出願日】2014年11月7日
(62)【分割の表示】特願2011-521926(P2011-521926)の分割
【原出願日】2010年7月6日
(65)【公開番号】特開2015-24495(P2015-24495A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2009-162709(P2009-162709)
(32)【優先日】2009年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-67961(P2010-67961)
(32)【優先日】2010年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111372
【弁理士】
【氏名又は名称】津野 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100186495
【弁理士】
【氏名又は名称】平林 岳治
(72)【発明者】
【氏名】中谷 尊一
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 浩史
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−188629(JP,A)
【文献】 特開昭53−024183(JP,A)
【文献】 特開平11−262805(JP,A)
【文献】 特開昭58−177217(JP,A)
【文献】 特許第5681107(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00
B23B 13/02
B23B 31/02
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料除去部分を材料除去加工によって加工して複数の製品を得るための加工材料において、
該加工材料が、前記製品形状に相似した材料除去部分を外周に備えるとともに前記材料除去部分を製品ごとに材料除去加工した状態で切り離して1つの製品に加工される未加工状態の素形材複数一体的に成形した形状を有し、
前記素形材が、前記材料除去加工の際に把持される被把持部を前記素形材ごとに備えていることを特徴とする加工材料。
【請求項2】
それぞれの素形材の間に切離し代を設けて、前記各素形材が、1列に整列するように一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加工材料。
【請求項3】
前記各素形材が、貫通孔を有し該貫通孔を貫通する棒材に固定することで一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加工材料。
【請求項4】
前記材料除去加工が、切離し加工を含めて各素形材に対して連続的に順次行われる切削加工であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の加工材料。
【請求項5】
前記各素形材が、異なる形状の製品を得るものを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の加工材料。
【請求項6】
前記複数の素形材の各々に対応して、各素形材の軸方向の把持位置を規定する被把持部がそれぞれ一体的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の加工材料。
【請求項7】
前記被把持部が、各素形材からなることを特徴とする請求項6に記載の加工材料。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の加工材料を把持する把持部が主軸に設けられた把持機構であって、
前記主軸と加工材料とを、軸線方向に相対的に自由移動させる自由移動手段を備え、
前記加工材料と前記主軸との相対位置を予め定められた軸線方向の所定位置に位置決めする位置決め手段を備え、
該位置決め手段が、加工材料の把持に際して、前記主軸と加工材料とを前記自由移動手段によって相対的に自由移動させ、前記主軸と加工材料とが位置決めされた状態で加工材料を把持部に把持させるように構成されていることを特徴とする把持機構。
【請求項9】
前記位置決め手段が、前記主軸または加工材料の一方の固定状態で、他方を軸線方向に自由移動させるものであることを特徴とする請求項8記載の把持機構。
【請求項10】
前記主軸を軸線方向に加工送りする送り移動手段を備え、
該送り移動手段が、把持部の把持動作の際に駆動および固定を解除されることで前記自由移動手段を兼ねることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の把持機構。
【請求項11】
前記位置決め手段が、前記把持部および加工材料の被把持部の少なくとも一方に設けられたテーパ面で構成されていることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の把持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工材料および把持機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工材料を把持機構によって把持し、材料除去部分から材料除去加工によって製品を得ることは広く慣用された技術であり、把持する際の位置決めを容易にしたり、加工に関わる所要時間を短縮するための様々な技術が知られている。
【0003】
例えば、図3に示すような部品を製品550として得る場合、図16に示すような製品550を複数得ることのできる長尺の丸棒を加工材料500とし、自動旋盤の主軸に設けられた把持機構によって把持して切削加工(材料除去加工)および切離し加工を行い、加工材料500を順次送り出して位置決めすることを繰り返し行うことで、加工材料500を1回セットすることで連続的に複数の製品550を得ることが知られている。
加工材料の位置決めは、一つの加工が完了するごとに材料を繰り出して、端部を位置決め用のストッパに当接させ、その位置で材料を把持することによって行われる(例えば特許文献1等参照)。
【0004】
また、加工材料を、図17図18に示すよう外形が製品550の外形より僅かに大きく相似した形状の素形材501に予め形成し、個別に順次自動旋盤の主軸に設けられた把持機構によって把持して切削加工(材料除去加工)を繰り返すことにより、材料除去加工によって製品550を得ることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3954965号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者のように、長尺の丸棒を加工材料500とし、自動旋盤によって切削加工(材料除去加工)および切離し加工を順次送り出して繰り返し行う場合、図16に示すように、切削による材料除去部分509が多く、材料の無駄が多くなり排出される切粉処理の負担も大きくなるという問題があった。
さらに、切削による材料除去部分509が多いことで1個当たりの加工時間が長くなり、加工工具や加工装置にかかる負荷も大きく、消費動力も大きくなるとともに、工具や装置の寿命も低下するという問題があった。
【0007】
また、後者のように、外形が製品550の外形より僅かに大きく相似した形状の素形材501に予め形成して切削加工を行う場合、前者の問題はある程度解決されるものの、加工装置への着脱を1個ごとに行う必要があり、複数の製品550を得る場合の全体としての所要時間が長くなるという問題があり、場合によっては、前者より長くなってしまうこともあった。
【0008】
これらの問題を解決するために、加工材料を、材料除去加工によって製品となる素形材を複数一体的に成形された形状とすることで、各素形材からの材料除去部分を少なくして材料の無駄を少なくし、排出される切粉処理の負担も軽くするとともに、1個当たりの加工時間を短縮し、また、切削工具や自動旋盤にかかる負荷も少なくして、消費動力が少なく工具や装置の寿命を向上することを見いだした。
【0009】
このような加工材料を加工する場合、外形が製品の外形より僅かに大きく相似した形状の素形材を1個ごとに着脱する場合や材料除去加工によって製品となる素形材を複数一体的に成形された形状の加工材料を使用する場合ともに、形状誤差等の問題で長尺の丸棒と同様に、先端をストッパに当接させても正確な位置決めができない場合があるという問題が新たに発生する。
【0010】
特に材料除去加工によって製品となる素形材を複数一体的に成形された形状の加工材料の場合は、加工材料の作成時の誤差や熱変形等による軸方向の寸法誤差によって、順次繰り出すにつれて素形材の形状と加工すべき部分の軸方向の位置ずれが蓄積することとなる。
【0011】
したがって、上記のような材料除去加工によって製品となる素形材が複数一体的に成形された形状の加工材料の場合、例えば前記位置ずれによる誤差を考慮して軸方向の加工代を余分に残す等の対応が必要となり、材料除去部分を少なくして材料の無駄を少なくし、排出される切粉処理の負担も軽くするという効果が限定的となる場合があるとともに、誤差が大きい場合には、加工代がなくなってしまい、加工不能となる場合がありえるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本請求項1に係る発明は、材料除去部分を材料除去加工によって加工して複数の製品を得るための加工材料において、該加工材料が、前記製品形状に相似した材料除去部分を外周に備えるとともに前記材料除去部分を製品ごとに材料除去加工した状態で切り離して1つの製品に加工される未加工状態の素形材複数一体的に成形した形状を有し、前記素形材が、前記材料除去加工の際に把持される被把持部を前記素形材ごとに備えていることにより、前記課題を解決するものである。
【0013】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された加工材料の構成に加えて、前記各素形材が、それぞれの素形材の間に切離し代を有して1列に整列するように一体に形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0014】
本請求項3に係る発明は、請求項1に記載された加工材料の構成に加えて、各素形材が、貫通孔を有し該貫通孔を貫通する棒材に固定することで一体に形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0015】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された加工材料の構成に加えて、前記材料除去加工が、切離し加工を含めて各素形材に対して連続的に順次行われる切削加工であることにより、前記課題を解決するものである。
【0016】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された加工材料の構成に加えて、前記各素形材が、異なる形状の製品を得るものを含むことにより、前記課題を解決するものである。
【0017】
本請求項6に係る発明は、前記複数の素形材の各々に対応して軸方向の把持位置を規定する被把持部が複数一体的に形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0018】
本請求項7に係る発明は、請求項6に記載された加工材料の構成に加えて、前記被把持部が、各素形材であることにより、前記課題を解決するものである。
【0019】
本請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の加工材料を把持する把持部が主軸に設けられた把持機構であって、前記主軸と加工材料とを、軸線方向に相対的に自由移動させる自由移動手段を備え、前記加工材料と前記主軸との相対位置を予め定められた軸線方向の所定位置に位置決めする位置決め手段を備え、該位置決め手段が、加工材料の把持に際して、前記主軸と加工材料とを前記自由移動手段によって相対的に自由移動させ、前記主軸と加工材料とが位置決めされた状態で加工材料を把持部に把持させるように構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0020】
本請求項9に係る発明は、請求項8に記載された把持機構の構成に加えて、前記位置決め手段が、主軸または加工材料の一方の固定状態で、他方を軸線方向に自由移動させるものであることにより、前記課題を解決するものである。
【0021】
本請求項10に係る発明は、請求項8または請求項9に記載された把持機構の構成に加えて、前記主軸を軸線方向に加工送りする送り移動手段を備え、該送り移動手段が、把持部の把持動作の際に駆動および固定を解除されることで前記自由移動手段を兼ねることにより、前記課題を解決するものである。
【0022】
本請求項11に係る発明は、請求項8乃至請求項10のいずれかに記載された把持機構の構成に加えて、前記位置決め手段が、把持部および加工材料の被把持部の少なくとも一方に設けられたテーパ面で構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0023】
本請求項1に係る発明の加工材料は、加工材料が、製品形状に相似した材料除去部分を外周に備えるとともに材料除去部分を製品ごとに材料除去加工した状態で切り離して1つの製品に加工される未加工状態の素形材複数一体的に成形した形状を有し、素形材が、材料除去加工の際に把持される被把持部を素形材ごとに備えていることにより、材料除去部分を少なくすることができるため、材料の無駄が少なく、排出される切粉処理の負担も軽くすることができるとともに1個当たりの加工時間が短縮され、また、加工工具や加工装置にかかる負荷も少なくなり、消費動力が少なく工具や装置の寿命も向上する。
【0024】
また、一般的な丸棒等の棒材と同様に、材料除去加工および切離し加工を順次送り出して繰り返し行うことが可能となるため、加工に関与しないハンドリング時間を短縮し、複数の製品を得る際の全体としての所要時間を短縮することができる。
【0025】
本請求項2に係る発明の加工材料によれば、加工材料自体の製造が容易であり、複数の製品を得る際の全体としての所要時間をさらに短縮することができる。
本請求項3に係る発明の加工材料によれば、各素形材が棒材に固定されて一体に形成されていることにより、素形材の材質に無関係に加工材料を剛体の棒材化することができ、種々の材質からなる素形材により、本加工材料を容易に製造することができる。
【0026】
本請求項4に係る発明の加工材料によれば、自動旋盤等の切削加工においてさらなる効果を発揮する。
本請求項5に係る発明の加工材料によれば、製品の形状が異なるものが存在しても、全体の所要時間を延ばすことなく連続的に加工を行うことができる。
【0027】
本請求項6に係る発明の加工材料によれば、複数の素形材に対応して各素形材の軸方向の把持位置を規定する被把持部がそれぞれ一体的に形成されていることにより、一つの素形材の材料除去加工および切離し後に順次繰り出される加工材料を、一つの素形材を繰り出すごとに誤差を吸収して主軸に対して位置決めされて、被把持部が主軸の把持部に把持されるため、加工材料の作成時の誤差や熱変形等によって生じる軸方向の寸法誤差が蓄積されることがなく、材料除去部分をさらに少なくすることが可能となり、材料の無駄を少なくし、排出される切粉処理の負担も軽くなるとともに、寸法誤差の蓄積による加工不能部分の発生等を防止できる。
【0028】
本請求項7に係る発明の加工材料によれば、被把持部を簡単に構成することができる。
【0029】
本請求項8に係る発明の把持機構は、把持部の把持動作の際に、位置決め手段が、主軸と加工材料とを自由移動手段により相対的に自由に移動させ、主軸と加工材料とが位置決めされた状態で、把持部が加工材料の予め定められた軸線方向の所定位置の把持を行うため、形状誤差等の問題があっても自由移動手段により誤差を吸収して主軸と加工材料とを位置決めして把持することができる。
【0030】
また、複数素形材を一体とした棒状の加工材料を順次繰り出して加工する場合においても、一つの素形材を繰り出すごとに誤差を吸収して位置決めできるため、誤差や熱変形等によって生じる軸方向の寸法誤差が蓄積されることがない。
このことで、材料除去部分を少なくすることが可能となり、材料の無駄を少なくし、排出される切粉処理の負担も軽くなるとともに、寸法誤差の蓄積による加工不能部分の発生を防止でき、複数の製品を得る際の全体としての所要時間を短縮することができる。
【0031】
本請求項9乃至請求項10に係る発明の把持機構によれば、簡単な構造で自由移動手段を構成することができる。
本請求項11に係る発明の把持機構によれば、把持部と位置決め部を簡単な構造で一体的に構成でき、把持動作を行いながら位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施例である加工材料の側面図。
図2図1の先端部の拡大説明図。
図3】製品の斜視図。
図4】本発明の第2実施例である加工材料の拡大側面図。
図5】本発明の第3実施例である加工材料および把持機構の説明図。
図6】本発明の第4実施例である加工材料および把持機構の説明図。
図7図1の第1実施例である加工材料の外形加工時の説明図。
図8図1の第1実施例である加工材料の外形加工後の説明図。
図9図1の第1実施例である加工材料の切離し加工後の説明図。
図10図1の第1実施例である加工材料の材料繰り出し後の説明図。
図11】本発明の一実施例である把持機構の把持前の状態の側面図。
図12図11の把持機構の把持後で位置決め前の状態の側面図。
図13図11の把持機構の位置決め後の状態の側面図。
図14A】本発明の把持機構の動作シーケンス説明図。
図14B図14Aの把持機構の動作シーケンス説明図。
図14C図14Bの続きの動作シーケンス説明図。
図14D図14Cの続きの動作シーケンス説明図。
図14E図14Dの続きの動作シーケンス説明図。
図14F図14Eの続きの動作シーケンス説明図。
図15】本発明の把持機構の他の例の動作説明図。
図16】従来の加工材料の先端部の拡大説明図。
図17】従来の素形材の斜視図。
図18図17の側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
まず、本発明の加工材料の第1実施例である加工材料100について説明する。
加工材料100は、図1図2に示すように、複数の素形材101が、それぞれの間に切離し代108を設けて1列に整列されて単一の材料で一体に形成されて構成されている。
【0034】
それぞれの素形材101は、切削加工等の材料除去加工によって1つの製品となるように、必要とする材料除去部分109を外周に有し、図3に示す製品150の外形に相似した形状を呈している。
なお該製品は、加工が完全に完了した完成品の他、他に2次加工等の必要がある半完成品であっても良い。
【0035】
加工材料100は、材質が、金属材料であれば、鋳造や鍛造によって一体的に成形されたもの、あるいはプレス加工等の塑性加工により成形されたものでも良い。
また、複数の金属材料を接合する等、素形材の形成時に他の加工処理を同時に行っても良い。
また、樹脂材料、セラミックや焼結金属などであれば、金型などによるモールド成形、射出成形、プレス成形によって一体に成形されても良い。
個々の素形材同士を溶着、接着、圧入、カシメ、圧接、圧着などの各種作業により一体化成形したものでも良い。
【0036】
また、上記の例では、すべての素形材101を同一形状として同一の製品150を得るものを示しているが、異なる形状の製品を得るために異なる形状の素形材を、切離し代を設けて1列に整列させたものであっても良い。
【0037】
本発明の加工材料の第2実施例である加工材料200は、図4に示すように、貫通孔202を有する複数の素形材201がそれぞれの間に切離し代208を設けて1列に整列され、貫通棒203に嵌着固定されることで一体に形成されて構成されている。
それぞれの素形材201の外形は、前記の第1実施例と同様に、必要とする材料除去部分209を外周に有し、図3に示す製品250の外形に相似した形状を呈している。
【0038】
貫通棒203は、材料除去加工時の精度が維持できる程度の剛性を有する剛体であれば、素形材201と同一材料であっても異なる材料であっても良い。
特に素形材が樹脂等の剛性の低い材料で形成されている場合、貫通棒203の剛性によって加工材料200全体としての剛性を高くすることができ、材料除去加工時の精度が向上するとともにハンドリングも容易となる。
【0039】
また、貫通孔202と貫通棒203は、貫通棒203を貫通孔202に圧入嵌合、植込み接合などによる固定をしたり、溶着や接着によって固定しても良く、材料除去加工時に支障が出ないように固定されれば如何なる方法で固定しても良い。
なお、前記貫通棒203は、製品の一部として心金としたり、または材料除去加工の完了後に貫通棒203を貫通孔202から除去する工程を設けて抜き取っても良い。
【0040】
さらに、貫通孔202を有する複数の素形材201がそれぞれ密着して1列に整列され、貫通棒203に嵌着固定されることで一体に形成されて構成されても良い。
この場合、切離し加工が行えず、加工材料200のすべての素形材201の材料除去加工が完了した後にも複数の製品250が一体になった状態でハンドリングする必要はあるものの、切離し加工を省略することで加工時間が短縮されるとともに、貫通棒203を一度に貫通孔202から除去することができ、個々の製品250から個別に切り離された貫通棒203を除去するよりも時間が短縮される。
【0041】
本発明の加工材料の第3実施例である加工材料300は、図5に示すように、複数の素形材301が、それぞれの間に切離し代308を設けて1列に整列されて単一の材料で一体に形成されて構成されている。
【0042】
それぞれの素形材301は、切削加工等の材料除去加工によって1つの製品350となるように、必要とする材料除去部分309を外周に有しており、その外形は、軸方向前後にテーパ面を有する断面凸形状に形成されている。
このことで、それぞれの素形材301は、テーパ面が把持面315を形成して被把持部を構成し、主軸111の前面に設けられた把持部112(共に詳細は後述)に把持される。
【0043】
本発明の加工材料の第4実施例である加工材料400は、図6に示すように、複数の素形材401が、それぞれの間に切離し代408および把持用ボス404を設けて1列に整列されて単一の材料で一体に形成されて構成されている。
【0044】
それぞれの素形材401は、切削加工等の材料除去加工によって1つの製品450となるように、必要とする材料除去部分409を外周に有している。
前記把持用ボス404は、それぞれの素形材401に隣接して切離し代408に一体的に設けられている。
把持用ボス404の外形は、軸方向前後にテーパ面を有する断面凹形状に形成されている。
このことで、それぞれの把持用ボス404は、被把持部を構成し、前記把持部112に把持される。
なお、図6では、把持用ボス404がテーパ状の溝で説明しているが、この形状に限らず突起状のボスであっても良い。
【0045】
次に、本発明の加工材料を一般的な自動旋盤によって加工する場合の動作について、前記加工材料100を例に説明する。
まず、図7に示すように、加工材料100が自動旋盤の主軸111に図面右方向から挿入され、先端部の素形材101aが前記主軸111側に設けられた把持部112より前方(図面左方向)の加工位置に突出した状態で、その後方(図面右方向)位置で前記把持部112により把持固定される。
【0046】
そして、主軸111が把持部112とともに回転して加工材料100が軸中心に回転し、前記自動旋盤の切削工具113によって素形材101aの材料除去部分109aが切削加工され、図8に示すように、切離し代108aを残して製品150aとなる。
【0047】
次に、図9に示すように、切離し工具114(突っ切りバイト)が切離し代108aを加工して、製品150aが加工材料100から切り離されて加工完了するとともに、切離し工具114(突っ切りバイト)が退避し把持部112が開放された後、加工材料100が前方に繰り出される。
【0048】
そして、図10に示すように、次に加工される素形材101bが把持部112より前方の加工位置に突出した状態で、その後方位置で加工材料100が把持部112により把持固定され、素形材101bの加工が開始される。
【0049】
これらの工程が繰り返されることにより、自動旋盤への1回の加工材料100の供給で複数の素形材101が連続的に加工され、複数の製品150を得ることができ、加工に関与しないハンドリング時間を短縮し全体としての所要時間を短縮することができる。
【0050】
また、材料の無駄が少なく排出される切粉処理の負担も軽くすることができるとともに1個当たりの加工時間が短縮され、また、切削工具や自動旋盤にかかる負荷も少なくなり、消費動力が少なく工具や装置の寿命も向上する。
【0051】
なお、上記説明では加工材料100を自動旋盤によって加工する動作について説明したが、加工材料に対して材料除去加工および切離し加工を順次送り出して繰り返し行うことが可能な加工機械であれば、プレス加工機、レーザー加工機、研削盤等、いかなる加工機械に使用されても良い。
【0052】
また、加工材料を構成する複数の素形材の形状も、加工材料が順次繰り出されて連続的に加工される形態に形成可能なものであれば、上記の例のような回転体形状以外の形状であっても良い。
【0053】
図11は、本発明の把持機構の一実施例を適用した工作機械の主軸部分であり、本発明の第3実施例である加工材料300を把持する例である。
工作機械の基台140には、ボールねじ軸132が設けられている。
該ボールねじ軸132は、基台140に設けられたモータ131によって回転駆動される。前記ボールねじ軸132には、ボールナット133が装着されている。
該ボールナット133は、ボールねじ軸132の回転駆動によって往復駆動される。
【0054】
前記ボールナット133には、スライドテーブル121が固定されている。
該スライドテーブル121は、前記ボールナット133の往復駆動によって前記ボールねじ軸132に沿って往復移動する。
スライドテーブル121の位置は図示しない制御手段により制御される。
前記スライドテーブル121の上面には、ボールねじ軸132の軸線方向と同一方向に延出するレール125が取り付けられている。
【0055】
該レール125に、主軸台116が自由移動自在に支持されている。
該主軸台116に、主軸111が回転駆動自在に支持されている。
該主軸111は、軸線方向がボールねじ軸132および前記レール125の延出方向に一致するように支持されている。
前記スライドテーブル121側には、前記レール125の一端側に、主軸台116の一端側と当接可能なストッパ122が取り付けられ、前記レール125の他端側に、シリンダ123が取り付けられている。
該シリンダ123には、主軸台116に当接可能なピストン124が設けられている。
【0056】
該ピストン124を突出させることによって、前記主軸台116を、前記ストッパ122側に押圧し、前記ストッパ122と前記ピストン124とによって挟持する。
該主軸台116の挟持によって、前記主軸台116がスライドテーブル121に対して所定の位置に固定的に位置決めされる。
前記ピストン124を縮作動させ、前記ピストン124による前記主軸台116のストッパ122への押圧を解除することによって、主軸台116は、ピストン124とストッパ122との間を、自由にスライド移動することができる。
【0057】
前記スライドテーブル121、レール125、ピストン124、ストッパ122によって、主軸111を軸線方向に沿って自由移動可能に支持する自由移動手段120が構成され、モータ131、ボールねじ軸132、ボールナット133によって主軸111を軸線方向に沿って加工送りする送り移動手段130が構成されている。
前記自由移動手段120は、ピストン124の伸縮作動により、前記主軸111の前記スライドテーブル121に対する位置決め固定と自由移動とを切り換えることができる。
【0058】
前記主軸111の先端側には、前記加工材料300を把持する把持部112が設けられている。
該把持部112は、主軸111と軸方向が固定され径方向に進退移動する複数の把持爪から構成されている。
該把持爪の先端は、凹部117を形成している。
該凹部117の軸線方向前後は、テーパ面からなる把持面115が形成されている。
該把持面115は、素形材301側の把持面315と、互いに当接して係合するように設定されている。
【0059】
図12に示されるように、前記主軸111は、前記加工材料300を、被把持部(所定の素形材301)を各把持部112の凹部117が挟持することによって把持する。
そして前記主軸111に加工材料300が把持された状態で、図13に示すように、主軸台116(主軸111)をスライドテーブル121に対して位置決め固定し、前記送り移動手段130によって加工送りすることにより、主軸111に把持された加工材料300を加工することができる。
【0060】
次に、前述した本自動旋盤による加工材料300の加工動作について詳細に説明する。
まず、図14Aに示すように、加工材料300の先端をストッパに当接させる等によって位置決めし、先端部の素形材301aが把持部112より前方(図面左方向)の加工位置に突出するように、加工材料300が自動旋盤の主軸111に図面右方向から挿入される。
これにより、その後方(図面右方向)に隣接する素形材301bと前記把持部112とが概ね対向して加工材料300が位置決め固定される。
なお本実施例において前記ストッパは、切離し工具(突っ切りバイト)114を兼用して使用している。
【0061】
そして主軸台116がスライドテーブル121に対して自由移動する状態で、把持爪を互いに近づくように移動させることによって、図14Bに示されるように、素形材301bと前記凹部117とが係合し、加工材料300が把持される。
ただし該素形材301と凹部117との係合過程で、両把持面115、315が当接することによって、把持部112側の把持面115が、加工材料300側の把持面315に倣うように、主軸111(主軸台116)が軸線方向にgだけ僅かに自由移動する。
【0062】
両把持面(テーパ面)115、315同士が倣うように主軸台116が軸方向に移動することで、素形材301と主軸111との軸方向相対位置が規定される。
本実施例の場合、把持面115、315によって、把持部112による加工材料300の把持に際して、加工材料300を主軸111に対して所定の位置に位置決めする位置決め手段が構成され、該位置決め手段が把持部112および加工材料300に一体的に設けられている。
【0063】
このことで、把持部112が加工材料300の把持を行うことで、加工材料300の誤差や熱変形等によって生じる軸方向の寸法誤差が吸収され、主軸111と加工材料300の相対的な位置決めが把持動作に伴って完了する。
【0064】
図14Bの状態から主軸台116をスライドテーブル121に対して位置決め固定し、主軸111が把持部112とともに回転して加工材料300が軸中心に回転し、図14Cに示されるように、切削工具113によって素形材301aの材料除去加工が終了すると、図14Dに示すように、切離し工具114により、製品350aが加工材料300から切り離されて加工完了し、続けて、図14Eに示すように把持部112が開放されて素形材301bの把持を解除する。
【0065】
この状態で、送り移動手段130によって、図14Fに示すように、主軸111が素形材301の1ピッチP分後退して、自由移動手段120による主軸台116の固定を解除することによって、図14Bと同様に、把持部112が次に加工する素形材301bに隣接する素形材301cを把持し、次の素形材301bを加工することができる。
【0066】
上記の工程を繰り返して順次素形材301を加工することで、素形材301のピッチの誤差分は、図14Aに示す位置から、図14Bに示す位置までの主軸の移動で一つの素形材301の加工ごとに吸収され、加工される素形材301は、被把持部(隣接する把持される素形材301)とのピッチと形状の寸法誤差の範囲で、主軸111に対して位置決めされて寸法誤差が蓄積されることがないため、材料除去部分を少なくすることが可能となり、材料の無駄を少なくし、排出される切粉処理の負担も軽くなるとともに、寸法誤差の蓄積による加工不能部分の発生を防止できる。
【0067】
なお加工材料300を軸方向に自由移動させて加工材料300を主軸111(把持部112)によって把持するように構成しても良い。
【0068】
この場合把持部112が次に加工する素形材301bに隣接する素形材301cを把持する際、主軸台116をスライドテーブル121に対して位置決め固定し、加工材料300を供給する給材機の押し棒を主軸111の軸心方向に自由移動可能とすること等によって、加工材料300を自由移動可能とすると、図15に示すように、両把持面115,315が倣うように、加工材料300が自由に移動し、素形材301cと把持部112の位置の誤差を吸収して、素形材301cと把持部112の相対位置が規定されて加工材料300が主軸111に把持される。
【0069】
なお、加工材料300を、常に主軸311側に引き込まれて把持部112に把持されるように位置決めすることで、加工材料300の把持に際して加工材料300とストッパ(突っ切りバイト)との衝突を防止することができる。
ただし加工材料300をストッパによって位置決めした後、ストッパを退避させることによって、加工材料300が主軸111から突出する方向に移動して把持されても加工材料300とストッパとが衝突することはない。
【0070】
なお、上記いずれの実施例の場合も、位置決め手段を構成する素形材と把持面の係合形状は、上記実施例とは逆に、素形材が断面凹形状で把持面が断面凸形状のもの等、素形材と主軸との軸方向相対位置が規定されるものであればいかなる形状であっても良く、また、軸方向相対位置を規定するために上記実施例のように両者の軸方向両側にテーパ面を有しても良く、素形材または把持面のいずれかのみ、あるいは、軸方向両側の一方のみがテーパ面を有しても良い。
【0071】
例えば、第1実施例である加工材料100、第2実施例である加工材料200を把持する場合、把持面が加工材料100、200の素形材101、201の凸部に近似した形状で軸方向両側をテーパ面とした断面凹形状とすることで、把持動作によって軸方向相対位置を規定することができる。
また、把持面を間隙の少ない凹凸嵌合形状とするなど、テーパ面以外の形状で軸方向相対位置を規定しても良い。
【0072】
なお上記実施形態では、主軸111を移動させることによって、加工する素形材301を順次主軸111から突出させ、加工する素形材301bに隣接する素形材301cを把持する例(主軸移動型の工作機械)について説明したが、主軸固定型の工作機械の場合、従来の棒材と同様に、加工材料300を移動させて、加工する素形材301を順次主軸から突出させることもできる。
この場合も加工する素形材301bに隣接する素形材301cの把持に際して、主軸または加工材料300の少なくとも一方を主軸の軸心方向に自由移動可能とすることによって、上記同様に主軸と加工材料300とを位置決めして、加工材料300を把持することができる。
【0073】
また、本第4実施例の加工材料400を把持機構で把持する場合は、図6に示すように、把持面115が把持用ボス404のテーパ面415と係合するテーパ面を軸方向前後に有する断面凸形状に形成されることで、把持部112の把持面115の把持動作により隣接する素形材401と主軸111との軸方向相対位置が規定される。
なお、位置決め手段を構成する把持用ボス404と把持面115の係合形状は、上記実施例1と同様に隣接する素形材と主軸との軸方向相対位置が規定されるものであればいかなる形状であっても良い。
【0074】
また、本第4実施例の加工材料400によれば、異なった形状の加工材料や、一つの加工材料で異なる素形材が組み合わされていても、把持用ボスの形状を統一することで把持部を変更することなく加工を行うことができるため、加工に関与しないハンドリング時間を短縮し、複数の製品を得る際の全体としての所要時間を短縮することができる。
【0075】
なお、前述した把持機構の実施形態は、加工材料が複数素形材を一体とした棒状の加工材料である第3実施例の加工材料を把持する例で説明しているが、個別の素形材が何らかのハンドリング手段によって供給されても良い。
また、送り移動手段130に、例えばリニアモータタイプのスライド移動機構等の駆動・固定・自由運動が自在で位置制御可能な直線駆動手段を採用して直接主軸台116を駆動し、該送り移動手段を自由運動状態とすることで自由移動手段を兼ねても良い。
【符号の説明】
【0076】
100、200、300、400、500・・・加工材料
101、201、301、401、501・・・素形材
202・・・貫通孔
203・・・貫通棒
404・・・把持用ボス
108、208、308、408・・・切離し代
109、209、309、409、509・・・材料除去部分
110・・・把持機構
111・・・主軸
112・・・把持部
113・・・切削工具
114・・・切離し工具
115・・・把持面
116・・・主軸台
117・・・凹部
120・・・自由移動手段
121・・・スライドテーブル
122・・・ストッパ
123・・・シリンダ
124・・・ピストン
125・・・レール
130・・・送り移動手段
131・・・モータ
132・・・ボールねじ軸
133・・・ボールナット
140・・・基台
150、250、350、450、550・・・製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
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図17
図18