特許第5959605号(P5959605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アフトン・ケミカル・コーポレーションの特許一覧

特許5959605潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法
<>
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000003
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000004
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000005
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000006
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000007
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000008
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000009
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000010
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000011
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000012
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000013
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000014
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000015
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000016
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000017
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000018
  • 特許5959605-潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959605
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】潤滑剤廃棄間隔を定めるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20160719BHJP
   F01M 11/10 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G01M17/00 H
   F01M11/10 B
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-246752(P2014-246752)
(22)【出願日】2014年12月5日
(62)【分割の表示】特願2013-3764(P2013-3764)の分割
【原出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2015-72282(P2015-72282A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2014年12月5日
(31)【優先権主張番号】13/363,433
(32)【優先日】2012年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トツド・エム・ドボラク
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・テイ・デイツトマイアー
(72)【発明者】
【氏名】デユーイ・ピー・ツエメニエイ
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−100712(JP,A)
【文献】 特開平06−187137(JP,A)
【文献】 特開平03−260785(JP,A)
【文献】 特開平07−114524(JP,A)
【文献】 特表2007−502411(JP,A)
【文献】 特開2011−154044(JP,A)
【文献】 特開2010−065637(JP,A)
【文献】 特開2000−227018(JP,A)
【文献】 特開平11−81967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
F01M 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定期間にわたって、エンジンから採取された使用済みのエンジン潤滑剤の複数の試料中で計測される複数の分析パラメータ値に基づいて、前記エンジン内の潤滑剤を排出する間隔を予想するプロセッサ基盤型システムであって、
複数の分析パラメータ値と、使用済み潤滑剤の1つ又は複数の特徴を示すエンジンに関する複数の履歴分析パラメータ値とを受信し、プロセッサのメモリ内に該複数の分析パラメータ値と履歴分析パラメータ値とを保存する第1入力と、
サービス間隔の終わりに使用済み潤滑剤に関する分析パラメータ閾値を受信し、前記プロセッサのメモリ内に該分析パラメータ閾値を保存する第2入力と、
潤滑剤排出間隔を定めるための将来の分析パラメータ値を決定する決定装置において、該複数の分析パラメータ値と履歴分析パラメータ値のモデル構築を実行しサービス間隔の終わりに将来の分析パラメータ値が分析パラメータ閾値を超えるか否かを決定するために将来の分析パラメータ値を分析パラメータ閾値と比較し、エンジン内で潤滑剤排出間隔(LDI)を示す出力を提供する装置であって、該決定装置によって実行されたモデル構築は偏最小二乗回帰モデルを有し、前記分析パラメータ値と前記履歴分析パラメータ値が3つ又はそれ以上の使用済み潤滑剤分析パラメータから選択される、該決定装置と、を含む、該システム。
【請求項2】
前記決定装置が、エンジンの潤滑剤排出間隔を作成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記決定装置が、潤滑剤排出間隔を予測するコンピュータを備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記エンジンの潤滑剤が、クランクケースのエンジンオイルを有する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記使用済み潤滑剤の分析パラメータが、前記エンジン潤滑剤試料中の鉄、鉛、錫、銅、アルミニウム、硼素、酸化物、窒化物、カリウム、シリコン、ナトリウム、煤、TBN、水、燃料、沈殿物、及び不溶物から成る3つ又はそれ以上の分析パラメータの群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記使用済み潤滑剤の分析パラメータが、亜鉛、硼素、酸化物、窒化物、カリウム、シリコン、ナトリウム、煤、水、燃料汚染物、燃料副産物、沈殿物、鉛、及び不溶物から成る3つ又はそれ以上の分析パラメータの群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
エンジンから採取された使用済みのエンジン潤滑剤の試料中で計測される複数の分析パラメータ値に基づいて、前記エンジン内の潤滑剤を排出する間隔を予測するためのプロセッサ基盤型の方法であって、
プロセッサの第1入力において、複数の分析パラメータ値と使用済み潤滑剤の1つ又は複数の特徴を示すエンジンの複数の履歴分析パラメータ値とを受信し、該複数の分析パラメータ値と履歴分析パラメータ値をプロセッサのメモリ内に保存する工程と、
プロセッサの第2入力において、サービス間隔の終わりに使用済み潤滑剤に関する分析パラメータ閾値を受信し、前記プロセッサのメモリ内に該分析パラメータ閾値を保存する工程と、
前記プロセッサを使用する工程であって、(a)該複数の分析パラメータ値と該履歴分析パラメータ値のモデル構築を実行することによって使用済み潤滑剤の将来の分析パラメータ値を決定し、(b)サービス間隔の終わりに将来の分析パラメータ値が分析パラメータ閾値を超えるかどうか決定するために、将来の分析パラメータ値と分析パラメータ閾値を比較し、(c)潤滑剤排出間隔(LDI)を示す出力を提供するために、該プロセッサを使用する工程であって、該プロセッサによって実行された該モデル構築が偏最小二乗回帰モデルを有し、前記分析パラメータ値と前記履歴分析パラメータ値が3つ又はそれ以上の使用済み潤滑剤の分析パラメータから選択される、該工程と、
を含む、該方法。
【請求項8】
前記エンジンが、トラクタ、機関車、バス、自動車、バイク、スクータ、水上バイク、航空機、トラック、風力タービン、又は発電機のうちの1つ以上の中に提供される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記使用済み潤滑剤の分析パラメータが、エンジン潤滑剤試料中の鉄、鉛、亜鉛、錫、銅、アルミニウム、硼素、酸化物、窒化物、カリウム、シリコン、ナトリウム、煤、TBN、水、燃料汚染物、燃料副産物、沈殿物、及び不溶物から成る3つ又はそれ以上の群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
一定期間にわたって、エンジンから採取された使用済みのエンジン潤滑剤の複数の試料中で計測される複数の分析パラメータ値に基づいて、エンジン内の潤滑剤を排出する間隔を予測するためのプロセッサ基盤型のシステムであって、
複数の分析パラメータ値と使用済み潤滑剤の1つ又は複数の特徴を示すエンジンの複数の履歴分析パラメータ値とを受信し、該複数の分析パラメータ値と履歴分析パラメータ値をプロセッサのメモリ内に保存する第1入力と、
サービス間隔の終わりに使用済み潤滑剤に関する分析パラメータ閾値を受信し、前記プロセッサのメモリ内に該分析パラメータ閾値を保存する第2入力と、
潤滑剤排出間隔を定めるための将来の分析パラメータ値を決定する決定装置において、該複数の分析パラメータ値と履歴分析パラメータ値のモデル構築を実行しサービス間隔の終わりに将来の分析パラメータ値が分析パラメータ閾値を超えるか否かを決定するために将来の分析パラメータ値を分析パラメータ閾値と比較し、エンジン内で潤滑剤排出間隔(LDI)を示す出力を提供する装置であって、該決定装置によって実行されたモデル構築は神経回路網モデルを有し、前記分析パラメータ値と前記履歴分析パラメータ値が3つ又はそれ以上の使用済み潤滑剤分析パラメータから選択される、該決定装置と、を含む、該システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑剤の有用性と、例えば、エンジン、力伝達装置、タービン、発電機、モータ等内の潤滑剤を交換するべき時とを定めるシステム、方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(またはモータ)は、(例えば、燃料燃焼、電気、核反応等のような)エネルギーの一形態を、例えば、機械運動等の機械的エネルギーに変換するように設計されている。例えば、燃焼エンジンは、燃料燃焼エネルギーを運動エネルギーに変換する。これらのエンジンは、通常、燃料(例えば、化石燃料)の燃焼を含み、閉じ込める、1つ以上の燃焼チャンバを含み、その結果、温度及び圧力ガスが高くなり、膨張し、例えば、ピストン、タービン、ブレード等のような機械部品を駆動させることができる。
【0003】
内燃エンジンは、通常、例えば、バイク、スクータ、自動車、ボート、トラック、機関車、水上バイク、航空機、船舶、ガスタービン、発電機、重機等を含む乗り物で利用される。例えば、1つ以上のピストンを含む内燃エンジンを操作している間、ピストンは、チャンバ内の燃料の燃焼から生じる膨張ガスにより駆動され、ピストンが、既定の経路に沿って、チャンバ長に沿った既定の距離にわたり移動し得る。ピストンは、接続ロットを通じてクランクシャフトに接続され、ピストンの動きをクランクシャフトの回転に変換し得る。エンジンは、吸入弁又は吸入口と、排気弁又は排気口とを更に含み得る。エンジンは、ロッドとチャンバとを接続する任意の数の組のピストンを含み得る。エンジンの様々な移動部品では摩擦が生じ、それにより、移動部品が消耗し、エンジンの力出力が減少する。
【0004】
エンジン内の大抵の移動部品は、金属で作製されている。動作中、移動部品の金属対金属間の接触により、移動部品の消耗が生じる。移動部品の消耗を最小限にするために、従って、エンジンの耐久性及び持続性を最大限にするために、潤滑剤(例えば、エンジンオイル)を利用して、エンジン内の移動部品を滑らかにする。潤滑材は、洗浄の働きをし、腐食を抑制し、気密性を向上させ、移動部品から熱を排出させることによりエンジンを冷却し得る。潤滑剤で、例えば、隣接する移動部品の表面の間に分離膜を作り出し、それらの表面の間の直接接触を最小限にすることにより、摩擦が減少し、摩擦により生じる熱を減少させ、摩耗を低減する。
【0005】
大抵の潤滑剤は、原油由来の石油系炭化水素から作製されている。代わりに(又は、加えて)、潤滑剤は、例えば、合成エステル、ポリアルファオレフィン等のような合成材料から作製され得る。ある特性を向上させるために、潤滑剤に添加剤を加える。添加剤として、例えば、洗浄剤、分散剤、腐食抑制剤、アルカリ添加剤等が挙げられ得る。潤滑剤の最も重要な特性のうちの1つは、エンジンの移動部品の間に潤滑膜を保つことである。潤滑剤の別の重要な特性は、酸を中和させる能力である。
【0006】
エンジン内では、潤滑剤は、例えば、炭素質粒子、金属粒子等を含む、内部燃焼の副産物に曝される。エンジンの動作中に、潤滑剤は、熱劣化と機械劣化の両方と、潤滑剤の機能を弱める汚染とを被る。最終的に、その効率損失は、使用した潤滑剤を取り除き、新たな潤滑剤に交換する必要があるほど重大になる。従って、時間的(例えば、92日、184日、276日、6ヶ月毎等)及び/又は距離的(例えば、三千マイル毎、五千マイル毎等)潤滑剤排出間隔(LDI)が、エンジン内の潤滑剤を交換する時を定めるのに、通常、用いられる。
【0007】
鉄道産業では、エンジンオイル試料は、通常、約2〜3週間毎に、機関車エンジンから採取される。次に、これらの試料を分析して、例えば、冷却剤漏れ、燃料希薄化、金属消耗、オイルの劣化、不適切な使用オイル等のような問題を特定する。鉄道は、例えば、取引先の設備製造者(OEM)の推奨値、動作履歴等に基づいて、オイル交換区間を計画する。現在、排出区間についての産業界の常識では、約184日毎である。しかしながら、この排出区間は、例えば、苛酷な条件下で動作するエンジン、又は、効率についての問題に直面するエンジン、又は、まさに使用されて、試運転の消耗を被っている新型エンジン等の幾つかのエンジンに対して、あまりにも長い場合がある。更に、排出間隔の間の時間は、例えば、理想的に最適な条件下で動作するエンジン等の幾つかのエンジンに最適な時間よりも、短い場合がある。
【0008】
トラック産業では、例えば、トラック隊は、全車両に対する排出区間を設定するために、オイル分析を用いていることが多い。しかしながら、オイル排出区間は、個別のエンジンではなく、車両群に基づいている。再び、設定されたオイル排出区間は、あるエンジンに対してあまりにも長い場合があり、他方では、他のエンジンに必要な区間よりも短い場合がある。
【0009】
潤滑剤排出区間は、通常は、稼働時間又は車両の移動距離に基づいて設定されるが、実際の動作条件及びエンジンの動作時間は、所与の稼働時間又は車両の移動距離に対して劇的に変化し得る。そのように、時間/距離的潤滑剤廃棄(又は、排出)区間を固定することで、消耗されたエンジン潤滑剤を続けて使用し、エンジンが苛酷な条件下で動作する、又は、エンジンが適切に動作しないことになり得る。その結果、燃料効率が劣り、保守に費用がかかり、エンジンの故障が早まることになり得る。時間/距離的潤滑剤廃棄区間を固定することで、その廃棄区間で消耗し切っていないエンジン潤滑剤を早期に、従って、非効率に廃棄することにもなり、処分されるべき廃棄副産物の量、並びに、エンジン潤滑剤の交換に関連する費用(例えば、潤滑剤の費用、潤滑剤を交換する労働費、処分費、エンジン休止時間等を含む)が増し得る。
【0010】
エンジン潤滑剤は、例えば、エンジン潤滑剤がエンジン部品を適切に滑らかにし、腐食を抑制しなくなる等の点よりも、エンジン潤滑剤の特性が低下している時に、消耗されたものと見なされ得る。
【0011】
各々の設備部品からの使用済みオイルの条件を分析し、その分析が、有用な寿命の終わりを示す時のみにオイルを交換することは、理想的であるようであるが、最も費用効果のあるオイル交換時間を定める際に考慮するべき他の費用がある。エンジンは、使用中、収益生産に寄与し、費用面で保守点検外にされる。結果として、設備への多くの保守点検作業は、計画された設備の停止中に、又は、停止時間を最小限にするように作業の多くが実行され得る時に、これらの作業が実行可能になるように、事前に計画され、共に束ねられる。設備操作員は、通常、全費用を最適化するように保守を計画する。これは、生産を最大限にするために、個別の保守点検作業が、実際に必要とされる前に実行され得ることを意味する。
【0012】
ある保守点検作業は、他の保守点検作業よりも頻繁に実行される必要がある。事前に計画された保守点検は、一組の計画に基づくことが多い。例えば、トラックの一隊は、30日毎にA計画を、60日毎にB計画を、120日毎にC計画を有し得る。30日後に第1の保守点検に入ってくるトラックで実行される全てのサービスは、計画Aで必要とされることになる。30日後、サービスA及びBが実行されることになる。その30日(累積で、90日)後に、計画Aのサービスのみを必要とすることになる。サービスの120日では、計画A、B及びCの全ての手続を必要とすることになる。次に、この周期が繰り返さ
れることになる。
【0013】
車両隊のオイル排出区間が30日で計画され、45日のオイル交換区間が安全であり得ると定められた場合、オイルを交換するために、45日のみでこれらのトラックを稼働外にすることが費用効果のある試みであり得るとは、全く考えられない。車両隊を60日のオイル交換に移動させることは、それが安全排出区間として定められる場合、現実的な試みであり得る。なぜなら、それは、オイル交換を、計画Aの機能から計画Bの機能へ変換し、交換費用を半分に削減することになり、いずれの新たな稼働外費用が生じないからである。オイル交換が、偶然、保守計画A内の項目のみである場合、これにより、生産性が向上することになる。なぜなら、この設備は、頻繁に稼働外にされることにならないからである。
【0014】
使用されるオイルがどの程度有用であり続けるのかを予想することは、難しいことが多いので、オイル交換区間は、事業ユニット内の同類の設備部品にわたり、頻繁に標準化される。オイル交換区間の選択は、特定の設備、稼働の苛酷度、設備製造者の推奨値、使用済みオイルの分析等を伴う、事業ユニットの保守履歴を含む、多くの異なる因子に基づき得る。オイル交換区間は、通常、保守費用、修理費用、及び停止時間との間の折り合いで、事業ユニットが最低の全費用と考えているものにより選択される。2つのユニットは、同一ではない、又は、同一の稼働状態で用いられないので、オイル交換区間は、通常、最も苛酷な状況を受け入れるように選択される。これは、同類のエンジンの組では、幾つかのエンジンが、静寂である又は緩慢な稼働状態であり、長いオイル排出区間で、極めて効率的に動作することが可能であり得ることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
優れた実施例は、鉄道の機関車である。これらのエンジンは、92日毎に安全検査を必要とする。オイル交換は、以前は、保守点検時点外のこの安全検査に一致する92日毎に実行されていた。多くの機関車車両隊で見出している条件は、現在、184日毎にオイルを交換し得るようなものである。次の論理的なオイル交換区間の増加は、安全検査に一致する276日であり得る。幾つかの機関車、特に、ある動作条件下の幾つかのGE FDLユニットは、オイル交換せずに、276日にわたり安全に走ることはできない。このように、使用済みオイルを検査し、例えば、保守点検の150日で、使用済みオイルの分析に基づいて、どのユニットが、例えば、184日で交換されるべきかを、並びに、どのユニットが、オイル交換せずに、例えば、276日、安全に走行し続けることができるかを予想するシステム及び方法に対する要求が、満たされていない。
【0016】
本開示は、本明細書に記載される本方法論を利用して、使用済みオイルを検査し、例えば、保守点検の150日で、使用済みオイルの分析に基づいて、どのユニットが、例えば、184日で交換されるべきかを、並びに、どのユニットが、オイル交換せずに、例えば、276日、安全に走行し続けることができるかを予想するシステム、方法及びコンピュータプログラムを与える。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示は、エンジンオイル等の潤滑剤の有用性と、例えば、特定のエンジン内の潤滑剤を交換するべき時とを定めるシステム、方法、及びコンピュータプログラムを定める。本システム、方法及びコンピュータプログラムは、更に、例えば、会社の車両隊中の各々のエンジンに対する潤滑剤廃棄区間を作成するように構成されている。潤滑剤廃棄区間は、例えば、会社の車両隊中の各々のエンジンに対して1つ以上のモデル構築されたパラメータ値に基づいて策定される。本システム、方法及びコンピュータプログラムは、各々のエンジンに対して使用された潤滑剤の将来の予想分析に基づいて、会社の車両隊中の各々の
車両に対する潤滑剤廃棄区間計画を策定するように構成されている。
【0018】
本開示の態様によれば、エンジンから採取されたエンジン潤滑剤の試料中で計測された分析パラメータ値又は設定パラメータ値に基づいて、エンジン内の潤滑剤排出区間を予想するシステムが与えられる。本システムは、分析パラメータ値を受信する第1入力と、分析パラメータ閾値を受信する第2入力と、分析パラメータ値及び分析パラメータ閾値に基づいて、将来の分析パラメータ値を予想する決定装置とを含む。本システムは、潤滑剤排出区間を受信するコンピュータを更に含み得る。エンジン潤滑剤は、エンジンオイルを含み得る。コンピュータは、決定装置を含み得る。第1入力は、そのエンジンに対する履歴分析パラメータ値を受信し得る。
【0019】
決定装置は、そのエンジンに対する潤滑剤排出区間を作成するように構成され得る。決定装置は、将来の分析パラメータ値を定めるために、履歴分析パラメータ値及び前記分析パラメータ値についてモデル構築を実行し得る。モデル構築は、線形回帰、非線形回帰、論理回帰、神経回路網、判別分析、if−then論理、偏最小二乗回帰等を含み得る。決定装置は、将来の分析パラメータ値を、分析パラメータ閾値と比較し得る。決定装置は、将来の分析パラメータ値の分析パラメータ閾値との比較に基づいて、エンジンに対する潤滑剤排出区間を作成し得る。
【0020】
第1入力は、追加の分析パラメータ値を受信し得る。決定装置は、前記分析パラメータ値について線形回帰を、又は、追加の分析パラメータ値について非線形回帰を実行し得る。分析パラメータ値は、エンジン潤滑剤試料中の鉄濃度を含み得る。追加の分析パラメータ値は、例えば、エンジン潤滑剤試料中の鉛濃度を含み得る。分析パラメータ値及び追加の分析パラメータ値は、例えば、エンジン潤滑剤試料中の鉄、鉛、錫、銅、アルミニウム、硼素、酸化物、窒化物、カリウム、シリコン、ナトリウム、煤、TBN、水、燃料、沈殿物、不溶物から選択され得る。
【0021】
分析パラメータmは、例えば、鉄、鉛、錫、銅、アルミニウム、硼素、酸化物、窒化物、カリウム、シリコン、ナトリウム、煤、水、燃料、沈殿物、不溶物から成る分析パラメータ群から選択される。
【0022】
本開示の別の態様によれば、複数のエンジンの延長された潤滑剤排出区間を選択する方法が与えられ、本方法は、複数のエンジンに対する潤滑剤廃棄区間データを取り出すことと、潤滑剤廃棄データを、延長された潤滑剤廃棄区間の分類項と通常の潤滑剤廃棄区間の分類項とを含む少なくとも2つの分類項に分類することと、複数のエンジンに対する潤滑剤廃棄区間計画を策定することとを含む。延長された潤滑剤廃棄区間の分類項は、例えば、276日を含み得る。通常の潤滑剤廃棄区間の分類項は、184日を含む。
【0023】
本開示の更に別の態様によれば、エンジンから採取されたエンジン潤滑剤の試料中で計測された分析パラメータ値に基づいて、エンジン内の潤滑剤排出区間を予想する方法が与えられる。本方法は、第1入力で分析パラメータ値を受信することと、第2入力で分析パラメータ閾値を受信することと、分析パラメータ値及び分析パラメータ閾値に基づいて、将来の分析パラメータ値を予想することとを含む。本方法は、将来の分析パラメータ値が、分析パラメータ閾値を超えることになる時の確率を予想することを更に含み得る。
【0024】
本開示の更に別の態様によれば、本明細書に記載されるプロセスを実行するための、本明細書の以下に記載されるようなコンピュータプログラムを含むコンピュータ読出可能媒体が与えられ得る。
【0025】
本開示の追加の特徴、利点、及び実施形態は、詳細な記述及び図面を考慮することから
説明され得る、又は、明らかにされ得る。更に、本開示の上述の要約、以下の詳細な記述及び図面が、本開示の限定されない実施例を与え、それらの実施例が、請求されるような本開示の範囲を限定せずに、説明を与えるように意図されていることに留意する。
【0026】
本開示を更に理解するために含まれる付属の図面は、この明細書の一部に組み込まれ、その一部を構成し、本開示の実施形態を示し、詳細な記述は、本開示の原理を説明するのに用いられる。本開示と、本開示を実行し得る様々な方法とを基本的に理解するのに必要であり得るよりも詳しく、本開示の構造的な詳細を示す試みは行われない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】潤滑剤の有用性と、潤滑剤を交換するべき時を定めるシステムの実施例を示す。
図1B図1Aのシステムに含まれ得る決定装置モジュールの表記を示す。
図2】エンジン潤滑剤の試料を分析する潤滑剤分析プロセスの実施例を示す。
図3】エンジン潤滑剤の有用性を判定し、特定のエンジンのエンジン潤滑剤廃棄区間を設定するエンジン潤滑剤廃棄区間決定プロセスの実施例を示す。
図4】特定のエンジンの記憶装置から取り出され得る履歴データの実施例を示す。
図5】データが横軸に与えられ、分析パラメータ(Fe、鉄)が縦軸に与えられる、別のエンジンの履歴データの別の実施例の分散図を示す。
図6】ジェネラルエレクトリック(GE)社製機関車エンジンのGE社OEM推奨値の実例を示す。
図7】電動ジーゼル(EMD)社製機関車エンジンのEMD社OEM推奨値の実例を示す。
図8図1のシステムの実装の実施例を示す。
図9】機関車ユニットに対する鉄(Fe)対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。
図10】機関車ユニットに対する煤対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。
図11】機関車ユニットに対するTBN対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。
図12】機関車ユニットに対する煤対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。
図13】機関車ユニットに対する鉄(Fe)対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。
図14】機関車ユニットに対する煤対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。
図15】別の機関車ユニットに対する分散図行列の実例を示す。
図16】1つ以上のエンジンに対する保守計画を設定するプロセスの実例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、以下の詳細な記述で更に記載される。
【0029】
本開示、並びに、本開示の様々な特徴及び利点は、付属の図面で記載及び/又は図示され、以下の記述で詳述される、限定されない実施形態及び実施例を参照しながら、より完全に説明される。図面及び添付で示される特徴は、必ずしも縮尺通りに引かれておらず、当業者が認識し得るように、本明細書で明示的に述べられていなくても、一実施形態の特徴は、他の実施形態で用いられえることに留意する。周知の部品及び処理技術の記述は、本開示の実施形態を不必要に覆い隠さないように省略され得る。本明細書で利用される実施例は、単に、本開示が実施され得る方法を理解し易くし、当業者が、本開示の実施形態を実施することを更に可能にするように意図されている。従って、本明細書での実施例及び実施形態は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。更に、同じ参照番号は、図面の視点を通して、同じ部分を表すことに留意する。
【0030】
本開示で用いられるような「コンピュータ」は、1つ以上の命令に従ってデータ操作を可能にする、いずれかの機械、回路、部品、又はモジュール、若しくは、機械、装置、回路、部品、モジュール等のいずれかのシステムを意味し、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、中央処理ユニット、汎用コンピュータ、スーパーコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、パルムトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、クラウドコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ワークステーションコンピュータ、サーバ等、若しくは、プロセッサ、マイクロプロセッサ、中央処理ユニット、汎用コンピュータ、スーパーコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、パルムトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ワークステーションコンピュータ、サーバ等のアレイであるが、これらに限定されない。
【0031】
本開示で用いられるような「サーバ」は、顧客サーバ構成の一部として、接続された顧客用のサービスを実行するための、少なくとも1つのアプリケーション及び/又は少なくとも1つのコンピュータを含む、ソフトウェア及び/又はハードウェアのいずかの組み合わせを意味する。少なくとも1つのサーバアプリケーションとしては、例えば、顧客へ返答を送り返すことにより顧客からのサービス要求への接続を許容し得るアプリケーションプログラムが挙げられ得るが、これに限定されない。サーバは、多くの場合、重度の作業負荷の下で、無人で、最小人間指向で延長された期間にわたり、少なくとも1つのアプリケーションを実行するように構成され得る。サーバは、作業負荷に応じて、コンピュータの中で分割される少なくとも1つのアプリケーションで構成される複数のコンピュータを含み得る。例えば、軽い負荷下では、少なくとも1つのアプリケーションが、単一のコンピュータ上で実行され得る。しかしながら、重い負荷下では、複数のコンピュータが、少なくとも1つのアプリケーションを実行するのに要求され得る。サーバ、又は、いずれかの場合、そのコンピュータが、ワークステーションとしても利用され得る。
【0032】
本開示で用いられる「線形回帰」は、例えば、一組の要求を満たす一部類の問題に制約され得る多項表記等の一般線形モデル(GLM)を含む、当業者に知られている、いずれかの周知の線形回帰方法を意味する。これらの要求は、モデル誤差に属する。モデル誤差は、観測値と予想値との間の差である。モデル誤差の調査は、モデルの正確さを評価する主要な要因である。一般線形モデルに要求される仮定として、誤差がゼロ平均を有することと、誤差に相関がないことと、誤差が正規分布であることと、誤差が一定の分散を有することとが挙げられる。上述の仮定のいずれかが破られる場合は、ある種類の変換を適用すること、より多くの変数を加えて分散の全要因に対応すること、又は、非線形型モデル構築取り組み方法等の別の種類のモデル構築方法を適用することが一般に要求される。
【0033】
本開示で用いられる「線形回帰」として、「一般化線形モデル(GLZ)」が挙げられ得る。GLZは、それ自体をGLM方法と区別する2つの主要な特徴を有する。GLZは、連結と分配機能とを含む。この連結は、識別、冪乗、又は対数等の変換機能である。分配機能は、誤差成分に属する。GLMでは、誤差は、正規分布である。GLZを用いれば、誤差は、正規として、又は、指数分布族のうちの1つから特定され得る。幾つかの実例として、ポワソン、2項、ガンマ、逆ガウスが挙げられる。連結及び分布機能のために、この種類のモデル構築の取り組みは、「非線形」型モデル構築と呼ばれ得る。
【0034】
「ロジスティック回帰」は、二値又は二分型応答データに固有のモデル構築の取り組みである。ロジスティック回帰は、合/否{0、1}データを有する問題に適用され得る。ロジスティック回帰モデルの2つの固有の特徴として、回帰方程式の条件付きの平均が、0と1との間に束縛されるように形式化されなければならないことと、二項分布が誤差分布を記述することとが挙げられる。ロジスティック回帰モデルの予想値は、独立変数(x)の固有の組の条件に対する対数オッズ又は合/否の確率として表記され得る。
【0035】
使用済み潤滑剤(オイル)分析の事例では、ロジスティック回帰モデルを利用して、使用済み潤滑剤パラメータの限界閾値を超えることになる確率を予想し得る。限界潤滑剤寿命パラメータを超えることになる予想確率が高い場合、結論として、潤滑剤排出区間が延長されるべきではない。
【0036】
偏最小二乗及び主成分回帰等の他のモデル構築技術を用いて、一組の使用済み潤滑剤限界パラメータ(複数可)に対する値を予想/推測することもできる。代わりに、判別分析を用いて、使用済み潤滑剤データを2つの異なる群に分離する変数/属性を識別することもできる。判別分析の第1群及び第2群は、潤滑剤排出区間を拡張することになり得る条件、及び、そのようになり得ない条件に対応する。
【0037】
「神経回路網」は、有効な非線形及び自由仮定型のモデル構築の取り組みであり得る。神経回路網の2つの共通の構造として、例えば、多層パーセプトロン(MLP)と、動径基底関数(RBF)とが挙げられる。RBF網の出力は、通信網の加重、動径距離、及びシグマ幅パラメータの関数である。MLPの出力は、入力及び賦活関数の加重和に基づいている。シグモイド曲線は、一般型の賦活関数形式である。
【数1】
変数x1…xdは、予想因子変数であり、w1…wd(又ハdM)及びw11…wM1は、加重値であり、yは、出力である。
【0038】
応答パラメータ(y)データは、予想因子(x)変数に対して線形であっても、非線形であってもよい。機関車ユニット2248に対する図11のTBN線図に示されるように、予想因子とオイル寿命と応答パラメータ(y)TBNとの間の関連は、非線形減少傾向に対応する。この実例では、TBNとオイル寿命との間の基礎的な関連をより良く特徴付けるために、高次の多項表記、神経回路網(NN)、オイル寿命日の自然対数変換を用いることが有利であり得る。
【0039】
図9では、応答パラメータ(y)とオイル寿命との間の関連は、線形であり得る。機関車ユニット2248のFe(鉄)線図に示されるように、予想因子(x)とオイル寿命と応答パラメータ(y)Fe(鉄)との間の関連は、線形増加傾向を示す傾向にある。そのように、このデータは、線形多項関数で表記され得る。
【0040】
本開示で用いられるような「データベース」は、少なくとも1つのアプリケーション及び/又は少なくとも1つのコンピュータを含む、ソフトウェア及び/又はハードウェアのいずれかの組み合わせを意味する。データベースは、関連モデル、階層モデル、通信網モ
デル等のうちの少なくとも1つ等の、しかしこれらに限定されない、データベースモデルに従って組織化された記録又はデータを構造的に収集することを含み得る。データベースとしては、当該技術分野で周知のような、データベース管理システムアプリケーション(DBMS)が挙げられ得る。少なくとも1つのアプリケーションとしては、例えば、顧客へ返答を送り返すことにより顧客からのサービス要求への接続を許容し得るアプリケーションプログラムが挙げられ得るが、これに限定されない。データベースは、多くの場合、重度の作業負荷の下で、無人で、最小人間指向で延長された期間にわたり、少なくとも1つのアプリケーションを実行するように構成され得る。
【0041】
本開示で用いられるような「通信リンク」は、少なくとも2つの点の間でデータ又は情報を搬送する有線及び/又は無線媒体を意味する。有線又は無線媒体としては、例えば、金属配線リンク、無線周波数(RF)通信リンク、赤外線(IR)通信リンク、光通信リンク等が挙げられ得るが、これらに限定されない。RF通信リンクとしては、例えば、WiFi、WiMAX、IEEE802.11、DECT、第0世代、第1世代、第2世代、第3世代又は第4世代携帯電話規格、ブルートゥース等が挙げられ得る。
【0042】
本開示で用いられるような「通信網」は、例えば、局所域通信網(LAN)、広域通信網(WAN)、都市域通信網(MAN)、個人域通信網(PAN)、学内域通信網、企業内域通信網、広域通信網(GAN)、広帯域通信網(BAN)、携帯電話通信網、インターネット等のうちの少なくとも1つ、又は上記のもののいずれかの組み合わせを意味するが、これらに限定されず、これらのうちのいずれも、無線及び/又は有線通信媒体を介してデータを送るように構成され得る。これらの通信は、様々なプロトコルを実行するように構成されてもよく、TCP/IP、IRC又はHTTPに限定されない。
【0043】
本開示で用いられるような用語「含む」、「包含する」及びそれらの変異形は、特に指示のない限り、「含むが、これに限定されない」を意味し得る。
【0044】
本開示で用いられるような用語「a」、「an」、及び「the」は、特に指示のない限り、「1つ以上」を意味する。
【0045】
互いに通信状態である装置は、特に指示のない限り、「互いに連続的通信状態である必要はない。加えて、互いに通信状態である装置は、直接的に通信されてもよく、1つ以上の媒体を介して間接的に通信されてもよい。
【0046】
プロセス工程、方法工程、アルゴリスム等は、逐次順で記載され得るが、そのようなプロセス、方法、及びアルゴリスムは、代わりの順序で動作するように構成されてもよい。言い換えれば、記載され得る工程のいずれかの序列又は順序は、工程をその順序で実行する必要があることを必ずしも示していない。本明細書に記載されるプロセス、方法、又はアルゴリスムの工程は、いずれかの実用的な順序で実行され得る。更に、幾つかの工程は、同時に実行され得る。
【0047】
単一の装置又は物品が、本明細書で記載される場合、単一の装置又は物品の代わりに、1を超える装置又は物品が利用されてもよいことが容易に明らかになる。同様に、1を超える装置又は物品が、本明細書で記載される場所では、1を超える装置又は物品の代わりに、単一の装置又は物品が利用されてもよいことが容易に明らかになる。装置の機能性又は特徴は、代わりに、そのような機能性又は特徴を有するように明示的に記載されていない、1つ以上の他の装置により具現化され得る。
【0048】
本開示で用いられるような「コンピュータ読出可能媒体」は、コンピュータにより読み取られ得るデータを与えること(例えば、命令)に関与するいずれかの媒体を意味する。
そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝達媒体を含む、多くの形態を取り得る。非揮発性媒体としては、例えば、光ディスク又は磁気ディスク及び他の持続性メモリが含まれ得る。揮発性媒体としては、随時動作ランダムアクセスメモリ(DRAM)が含まれ得る。伝達媒体としては、プロセッサに結合されたシステムバスを含む配線を含む、同軸ケーブル、銅配線、及び光ファイバが含まれ得る。伝達媒体は、無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に生成されるもののような音響波、光波及び電磁放射を含み得る、又は、搬送し得る。コンピュータ読出可能媒体の共通形態としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他のいずれかの媒体、CD−ROM、DVD、他のいずれかの光媒体、パンチカード、紙テープ、穴パターンを備えた他のいずれかの物理的媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH−EPROM、他のいずれかのメモリチップ又はカートリッジ、本明細書の後に記載されるような搬送波、又は、コンピュータが読み出し得る元の他のいずれかの媒体が挙げられる。コンピュータ読出可能媒体としては、複数の(例えば、数千の)コンピュータ上の複数の(例えば、数千の)メモリキャッシュの間でファイルを分配することを含む「クラウド」が挙げられ得る。
【0049】
コンピュータ読出可能媒体の様々な形態は、コンピュータへの一連の命令を実行することに関わり得る。例えば、一連の命令は、(i)RAMからプロセッサへ配送され得る、(ii)無線伝送媒体上を搬送され得る、(iii)WiFi、WiMAX、IEEE802.11、DECT、第0世代、第1世代、第2世代、第3世代又は第4世代携帯電話規格、ブルートゥースを含む、数多くの形式、規格又はプロトコルに従って形式化され得る。
【0050】
図1Aは、潤滑剤の有用性と、例えば、エンジン内の潤滑剤を交換するべき時とを定めるシステム100の実施例を示す。システム100は、分析装置110、コンピュータ120、サーバ130、及びデータベース140を含み、これらの全ては、通信網150を通じて通信リンク160を介して、又は、直接、通信リンク160を介して連結され得る。分析装置110は、エンジン上に(又は、エンジン内に)、車両のエンジン区画内に、建築物等の中に位置し得る。コンピュータ120は、例えば、顧客店、顧客の建築物等のような、例えば、顧客側に位置し得る。サーバ130及び/又はデータベース140は、例えば、エンジン潤滑剤分配者又は供給者、エンジン潤滑剤小売人等のような、製品供給側に位置し得る。
【0051】
分析装置110としては、例えば、スペクトル分析装置、粘性分析装置、酸分析装置、固体分析装置、引火点分析装置、酸化分析装置、窒化分析装置等が挙げられ得る。分析装置110は、特定のエンジンから採取されたエンジン潤滑剤の試料を受け入れ、その試料を分析して、1つ以上の分析パラメータを識別及び計測するように構成される。例えば、スペクトル分析装置110は、潤滑剤試料のスペクトル分析を実行して、分析パラメータのレベル(百万分の1(ppm))を定め得る。分析パラメータ(AP)としては、例えば、潤滑剤中に存在し得る金属、汚染物、添加物等が挙げられ得る。分析パラメータとしては、潤滑剤中のエンジン冷却剤の指標及び濃度も挙げられ得る。スペクトル分析装置としては、例えば、ロットロード発光分光器、誘導結合プラズマ分光器等が挙げられ得る。識別及び計測され得る摩耗金属としては、例えば、アルミニウム、アンチモン、クロム、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、錫、チタン、亜鉛等が挙げられる。識別及び計測され得る添加物としては、例えば、アンチモン、硼素、カルシウム、銅、マグネシウム、モリブデン、燐、カリウム、シリコン、ナトリウム、亜鉛等が挙げられる。識別及び計測され得る汚染物としては、例えば、亜鉛、硼素、カリウム、シリコン、ナトリウム、煤、水、燃料、沈殿物、不溶物等が挙げられる。酸化及び窒化分析装置は、酸化物及び窒化物をそれぞれ計測することにより、潤滑剤の劣化に関わる情報を与え得る。
【0052】
粘性分析装置としては、例えば、粘性分析を実行して、潤滑剤の有効等級を定める粘性計測器が含まれ得る。粘性分析装置は、例えば、−35℃、−20℃、0℃、40℃、100℃の温度で、又は、当該技術分野で周知の他のいずれかの温度で潤滑剤を計測し得る。粘性分析装置は、例えば、潤滑剤が、一定温度に保たれる導管(例えば、ガラス管等)上に与えられる2つのセンサの間を流れるのにかかる時間を計測することにより、潤滑剤の有効粘度を計測し得る。代わりに(又は、加えて)、粘性分析装置は、例えば、高温、高剪断、経時変化、運動等を計測し得る。
【0053】
酸分析装置は、潤滑剤を希釈剤と混合し、潤滑剤中に存在する全てのアルカリ成分が中性化されるまで、その混合物を、例えば、アルコール・塩酸(HCL)溶液で滴定することにより、潤滑剤の全アルカリ価(TBN)を計測し得る。酸分析装置は、加えて(又は、代わりに)、潤滑剤の全酸価(TAN)を計測し得る。これに関して、酸分析装置は、例えば、エンジン潤滑剤を希釈剤と混合し、次に、エンジン潤滑剤中に存在する全ての酸が中性化されるまで、その混合物を、例えば、アルコール・水酸化カリウム(KOH)で滴定し得る。TAN又はTBN結果は、例えば、エンジン潤滑剤グラム当たりのKOH又はHCLのミリグラムで記録され得る。
【0054】
固体分析装置は、潤滑剤中の固体の分析を実行して、特定の固体と、潤滑剤中のその固体の濃度とを識別し得る。固体分析装置としては、例えば、潤滑剤の試料中の粒子の濃度を検出及び計測するレーザ式粒子計数器、赤外線分析装置等が挙げられ得る。
【0055】
引火点分析装置は、潤滑剤を分析して、潤滑剤からの蒸気が発火する温度を定め得る。例えば、引火点分析装置は、潤滑剤の試料を緩やかに加熱して、試料温度の正確な計測を保ち得る。気化したガスが発火する又は発火可能になる時に、試料の温度は、特定の潤滑剤試料の引火点温度として記録され得る。
【0056】
分析装置110としては、送信し、通信リンク160上でデータ及び命令を受信する構成される無線機(図示されず)が挙げられ得る。例えば、分析装置110は、車両のエンジン又はエンジン部品から顧客コンピュータ120及び/又はサーバ130又はデータベース140へ、データを送信するように構成され得る。分析装置110は、エンジン内のエンジン潤滑剤を直接抽出し、顧客コンピュータ120及び/又はサーバ130(又は、データベース140)に送信され得る分析データを実質的に実時間で与えるように構成され得る。
【0057】
代わりに、分析装置110は、遠隔の検査室に配置され得る。エンジン潤滑剤の試料(例えば、4oz、8oz等)は、伝令、メール等を介して検査室で受け取られ得る。分析の結果は、分析装置110により、通信リンク160を介して顧客コンピュータ120及び/又はサーバ130に送信され得る。例えば、エンジン潤滑剤の試料が分析装置110により分析された後、エンジン潤滑剤分析結果は、データベース140に送信され得る。それらの結果は、特定のエンジン、特定のエンジンの型、特定の車両、特定のエンジン製造者、特定の車両製造者、特定の企業体(例えば、個人、会社、団体等)等と関連するデータベース記録(又は、ファイル)と関連付けられ、そのデータベース記録内に保存され得る。データベース記録としては、関連するエンジン及び/又は車両に対する過去の潤滑剤分析結果を含む履歴情報が挙げられ得る。データベース140は、サーバ130内に配置され得ることに留意する。
【0058】
図1Bは、本開示の態様を実行するために、サーバ130内に含まれ得る決定モジュール170の表記を示す。決定装置170は、ソフトウェア及び/又はハードウェアを含み得る。決定装置170は、中央処理ユニット(CPU)とメモリとを含み得る。決定装置170は、計測された分析パラメータ値APを受信し、分析パラメータ閾値APTHと比較
するように構成される。決定装置170は、計測された分析パラメータ値APの分析パラメータ閾値APTHとの比較に基づいて、潤滑剤廃棄(又は排出)区間(LDI)を定める。決定装置170は、LDI区間が延長され得るか否かを、又は、LDI区間を短縮する必要があるのかを示す出力を与え得る。
【0059】
本開示の実施形態によれば、決定装置170は、複数の計測された分析パラメータ値AP1、…、APnの各々を受信し、特定のエンジン内の特定の分析パラメータに対して分析パラメータ閾値APTHと比較するように構成される。分析パラメータ値AP1、…、APnは、n個の異なるデータ上で取られた、エンジン潤滑剤のn個の試料の特定の分析パラメータAPの計測されたレベル又は濃度を含み、ここで、nは、1以上の正の整数である。決定装置170は、各々の分析パラメータに対して、複数の分析パラメータ値AP1、…、APnについて線形回帰、非線形回帰、ロジスティック回帰等を実行する、例えば、神経回路網、ファジー論理等の人工知能を含み得る。決定装置170は、将来のAP値を予想するために、例えば、「if−then」方法論を実装し得る。例えば、決定装置170は、150日でAP(煤)>45であるかを判定することにより、所与のエンジンに対するLDIを決定し、次に、決定装置170は、276日で、その煤限界値を超えることになることを予想し得る。または、150日でAP(VIS100C)>16.5且つAP(TAN)>3.8であれば、TANまたはVIS100Cに対する限界値を超えることになり、それにより、276日よりも早い時点で、例えば、184日でLDIを設定する必要がある。決定装置170は、分析パラメータのAP値(例えば、レベル、濃度等)が、例えば、線形回帰、非線形回帰、ロジスティック回帰等を用いることにより、関連する閾値APTHを超えそうになる時を監視し、予想するように構成される。
【0060】
決定装置170は、m個の異なる分析パラメータに対してそのプロセスを繰り返すように構成され、ここで、mは、1以上であり、mは、特定のエンジンから採取され、特定のエンジンに対して分析されるエンジン潤滑剤のn個の試料で識別及び計測される異なる分析パラメータの数に対応する。即ち、決定装置170は、例えば、値AP(1)1、…、AP(1)n、…、AP(m)1、…、AP(m)nの各々を、それぞれの閾値AP(1)TH、…、AP(m)THと比較しながら、値AP(1)1、…、AP(1)n、…、AP(m)1、…、AP(m)nの各々に対して線形回帰を実行する。先に留意したように、分析パラメータ値APは、エンジン潤滑剤の試料中の、例えば、消耗金属、添加物、汚染物等のレベル、量、濃度等を含み得る。決定装置170は、将来の分析パラメータ値APn+1が、関連する分析パラメータに対する関連閾値APTHを超える(又は、下回る)と予想される発生時(例えば、時間、日、日付等)を予想する。次に、決定装置170は、その予想された発生時に基づいて、LDIを設定し得る。例えば、決定装置170は、将来値APn+1が、関連する閾値APTHを超える(又は、下回る)と予想される十分に前の、又は、その直前のデータについてLDIを設定し得る。
【0061】
決定装置170は、異なる分析パラメータに対して異なる予想方法論を実行するように構成され得る。例えば、決定装置170は、直線外挿を実装して、鉄又は煤に対する将来値を予想し得るが、対数予想(非線形予想)を実装して、鉛に対する将来値を予想し得る。
【0062】
図2は、エンジン潤滑剤の試料を分析する潤滑剤分析プロセス200の実施例を示す。図1及び2を参照して、プロセス200は、エンジン潤滑剤の試料が、本源(工程210)から分析装置110で受け取られる時に開始される。その本源としては、例えば、エンジン、個人、会社(例えば、鉄道会社、トラック会社、船舶会社、レンタカー会社等)、施設(例えば、学校、病院等)、機関(例えば、政府機関等)等が挙げられ得る。分析装置110(図1Aに示される)が、エンジン上に(内に)、又は、エンジン付近のエンジン区画内に配置される事例では、本源は、エンジン自体であり、分析装置110が、例え
ば、エンジンと外部潤滑剤フィルタ(例えば、エンジンオイルフィルタ)又は外部潤滑剤冷却器(例えば、エンジンオイル冷却器)との間の、潤滑剤流路内に配置され得る。
【0063】
エンジン潤滑剤の試料が、特定のエンジンから受け取られた(工程210)後、潤滑剤試料は、分析装置110により分析されて、潤滑剤中に存在する消耗金属、添加物、汚染物等の種類及び濃度を識別及び計測し得る。分析装置110は、潤滑剤のTBN、TAN、粘性、引火点等を更に計測し得る。
【0064】
分析の結果は、エンジン潤滑剤の分析された試料の分析記録内で編集され、再生される(工程230)。次に、分析記録は、顧客コンピュータ120及び/又はサーバ130に送信され得る(工程240)。その記録は、データベース140に送信され得る。その記録は、特定のエンジンの記録と関連付けられ、その特定のエンジンの記録内に保存され得る。代わりに、分析記録は、例えば、車両の内蔵表示器(図示されず)上に直接表示され得る(工程240)。潤滑剤分析記録は、例えば、消耗金属、添加物、汚染物、TBN、TAN、粘性、引火点等を含む、識別及び計測された分析パラメータに対する、例えば、生データ、作表されたデータ等を含み得る。潤滑剤分析記録は、人により読出可能なように、人により読出可能な形態(例えば、印刷、表示、音響ファイル、画像ファイル、マルチメディアファイル等)で生成及び作成され得る。または、その記録は、機械により読出可能な形式で与えられ得るので、全く人が介在せずに、顧客コンピュータ120、サーバ130、及び/又はデータベース140により受信及び処理され得る。
【0065】
本開示の態様によれば、例えば、コンピュータ(図示されず)を含み得る分析装置110内で実行される場合、図2のプロセス200を実行させるコンピュータプログラムを含む、コンピュータ読出可能媒体が与えられる。コンピュータプログラムは、コンピュータ読出可能媒体中で実体的に具体化され得て、工程210〜240の各々に対する符号分節又は符号部分を含み得る。
【0066】
図3は、エンジン潤滑剤の有用性を判定し、特定のエンジンのエンジン潤滑剤廃棄区間を設定するエンジン潤滑剤廃棄区間決定プロセス300の実施例を示す。
【0067】
本開示の実施形態によれば、プロセス300は、顧客コンピュータ120又はサーバ130により実行され得る。プロセス300の結果は、データベース140内に保存され得る。代わりに、本開示の別の実施形態によれば、プロセス300は、分析装置110によりその全体で実行され得る。
【0068】
図3を参照して、最初に、エンジンデータ及び潤滑剤分析記録は、特定のエンジン又は特定の車両に対して、例えば、サーバ130(又は、顧客コンピュータ120)により受信される(工程310)。エンジンデータとしては、例えば、エンジンが製造された年、エンジンの種類、エンジン製造者、エンジンの排気量、エンジン製造場所、エンジン整理番号、エンジンが設置された車両の整理番号等が挙げられ得る。潤滑剤分析記録は、例えば、分析装置110(図2の工程240)から受信され得る。その記録は、分析パラメータ値AP(1)n、…、AP(m)nを含み得る。
【0069】
サーバ130は、内部データ記憶素子135(図8に示される)又はデータベース140に問い合わせ、受信されたエンジンデータ(工程320)により識別された特定のエンジンに対する記録が存在するかを判定する。特定のエンジンに対する記録が存在すると判定された場合(工程320で、はい)、識別された記録は、記憶素子135(又は、140)から取り出される(工程340)。取り出された記録は、計測された分析パラメータ、例えば、値AP(1)1、…、AP(1)n-1、…、AP(m)1、…、AP(m)n-1の各々に対する複数の履歴値を含み得る。
【0070】
特定のエンジンに対する記録が存在しないと判定された場合(工程320では、いいえ)、記録は、局所データ記憶素子135(図8)及び/又はデータベース140(図1A)内に作り出される(工程330)。作り出された記録は、例えば、顧客名(例えば、鉄道会社、トラック会社、船舶会社等)、顧客アドレス(例えば、電子メールアドレス、住所、電話番号、連絡先の名称等)、エンジンが製造された年、エンジンの種類、エンジン製造者、エンジン排気量、エンジン製造場所、エンジン整理番号、エンジンの最後の保守点検日、その最後の保守点検の詳細事項、エンジンが動作状態に置かれた日、エンジン稼働時間、エンジン稼働マイル、エンジンが設置された車両の整理番号等を含む、特定のエンジンの複数の領域を含み得る。記録領域には、エンジンデータ内で受信されたデータが備え付けられる(工程310)。作り出される記録としては、1つ以上の分析パラメータ、APTH(1)、…、APTH(m)に対する閾値を含み得る、OEM推奨値(例えば、図6、7にそれぞれ示される推奨600、700)、当業界推奨値、系列推奨値、標準化団体推奨値、個別の推奨値等が更に挙げられ得る。
【0071】
受信された潤滑剤試料データは、サーバ130(例えば、図1Bに示される決定装置170)により処理され得る。特定のエンジンAP(1)n、…、AP(m)nの分析パラメータ値は、履歴値AP(1)1、…、AP(1)n-1、…、AP(m)1、…、AP(m)n-1と共に、関連する分析パラメータ閾値APTH(1)、…、APTH(m)に対して比較され得る(工程350)。更に、潤滑剤廃棄区間LDIは、値AP(1)1、…、AP(1)n、…、AP(m)1、…、AP(m)nについて回帰分析を実行することにより定められ、将来の分析パラメータ値AP(1)n+1、…、AP(m)n+1の値が、関連する閾値APTH(1)、…、APTH(m)を超える(下回る)ことになる時を予想し得る。LDIは、例えば、時間、日、日数、日付、エンジン稼働日数等を含み得る。特定のエンジンの記録は、更新され、LDI情報及び受信された分析パラメータ値AP(1)n、…、AP(m)n、並びに、予想値AP(1)n+1、…、AP(m)n+1を含み得る(工程370)。生成されたLDIデータは、顧客コンピュータ120(又は、サーバ130)及び/又はデータベース140に送信され得る(工程380)。
【0072】
本開示の態様によれば、例えば、サーバ130(又は、コンピュータ120)内で実行される場合、図3のプロセス300を実行させるコンピュータプログラムを含む、コンピュータ読出可能媒体が与えられる。コンピュータプログラムは、コンピュータ読出可能媒体中で実体的に具体化され得て、工程310〜380の各々に対する符号分節又は符号部分を含み得る。
【0073】
図4は、特定のエンジン(例えば、機関車ユニット2248)に対するデータベース140から取り出され得る履歴データ400の実施例であり、n=25で、m=1である。この実施例では、履歴データは、潤滑剤試料がユニット2248から採取された日付を含むTAKEN縦列と、採取された潤滑剤試料が検査された各々の日付を含むTESTED縦列と、エンジン(例えば、ユニット2248)を識別するUNIT縦列と、特定分析パラメータ(Fe)、消耗金属の鉄を識別する分析パラメータ縦列とを含む、4つのデータ縦列を含む場合があり、最初の記録値AP(1)1=2(ppm)から、最後の記録値AP(1)25=4(ppm)までのn個の分析パラメータ値を含む。理解されるように、値AP(1)1…AP(1)25は、低い2(ppm)から高い18(ppm)の範囲である。
【0074】
図5は、別のエンジンのデータベース140から取り出され得る履歴データの別の実施例の分散図を示し、日付は、横軸に与えられ、分析パラメータ(Fe、鉄)は、縦軸に与えられる。
【0075】
図6は、データベース140から取り出され得る、ジェネラルエレクトリック(GE)社製機関車エンジンのGE社OEM推奨値600の実例を示す。理解されるように、推奨値600は、銅(Cu)からTBNまでの範囲の分析パラメータAPの一覧を含む。この事例では、m=24である。各々の分析パラメータAPは、関連する「限界」閾値APTH-Cと、関連する「異常」閾値APTH-Aと、関連する「最低」閾値APTH-Mとを有する。推奨値600は、特定の分析パラメータが、3つの識別される閾値のうちのいずれか1つを超える場合に、原因を示唆する「問題」縦列も含む。
【0076】
図7は、データベース140から取り出され得る、電動ジーゼル(EMD)社製機関車エンジンのEMD社OEM推奨値700の実例を示す。理解されるように、推奨値700は銀(Ag)からTBNまでの範囲の、図6の分析パラメータと同じ分析パラメータAPの一覧を含む。この事例では、m=25である。推奨値600に関して前に考察されたように、推奨値700中の各々の分析パラメータAPは、関連する「限界」閾値APTH-Cと、関連する「異常」閾値APTH-Aと、関連する「最低」閾値APTH-Mとを有する。推奨値600のように、推奨値700は、特定の分析パラメータが、3つの識別される閾値のうちのいずれか1つを超える場合に、原因を示唆する「問題」縦列も含む。
【0077】
推奨値600(又は、700)では、特定の分析パラメータが、推奨される「最低」閾値を上回る(それを超える又は未満である)が、「異常」閾値未満の値を有する場合、その推奨は、次の検査の間、ユニット(又はエンジン)を停止し、(「問題」縦列中で)示された問題を調査することを勧める。特定の分析パラメータが、推奨される「異常」閾値を上回る(それを超える又はそれ未満である)が、「限界」閾値を上回らない(それを超えない又はそれ未満ではない)場合、推奨は、特定のユニット(又はエンジン)を保守点検のために即座に工場に送り、「問題」縦列中の関連する問題を調査することを勧める。特定の分析パラメータが、推奨される「限界」閾値を上回る(それを超える又はそれ未満である)場合、推奨は、特定のユニット(又はエンジン)を即座に停止させ、そのユニットを点検し、「問題」縦列中で識別される関連問題の調査を始めることを勧める。
【0078】
図8は、システム100(図1に示される)の実装の実施例を示す。この実施例では、機関車ユニット2248は、その計画された184日の保守点検のために、工場内にあり得る。保守点検技術者は、コンピュータ120を用いて、ユニット2248にLDIを要求して、184日の時点でエンジン潤滑剤を交換する必要があるか否かを、又は、ユニット2248が、エンジン潤滑剤を交換せずに別の92日にわたり走り続けるかを判定する。これに関して、サーバ130は、ユニット2248の履歴データのための内部データ記憶素子135(または、サーバ130内に与えられる、データベース140)に問い合わせ得る。履歴データが、遠隔のデータベース140内に保存される場合、ユニット2248に関連する最新の更新情報を得るために、データベース140に周期的に問い合わせ得る。次に、決定装置170は、ユニット2248の履歴データ処理して、(1)煤、(2)鉛(Pb)、(3)粘性100C、(4)TAN、及び(5)TBNを含む、276日での設定分析パラメータの全ての5つに対する、予想された分析パラメータ値AP(1)、AP(2)、AP(3)、AP(4)、及びAP(5)を生成し得る。他の(追加の又は代わりの)分析パラメータが、本開示の範囲又は趣旨から逸脱せずに、当業者に認識されることになる1つとして設定され得ることに留意する。図8で理解されるように、粘性100Cに対する予想された分析パラメータ値AP(3)n+1は、276日で許容され得るレベルであり得るが、AP(3)n+1TANに対して予想された値は、許容され得ないレベルであり、それにより、276日前に、好ましくは、例えば、ユニット2248が工場内にある184日に、潤滑剤を交換する必要がある。
【0079】
図9は、機関車ユニット2248の鉄(Fe)対オイル寿命に対する、サーバ130により生成され得る8つの分散図の実例を示す。具体的には、分散図は、7つの過去の潤滑
剤廃棄区間(LDI)にわたり様々な時に計測された、エンジンオイル中の鉄濃度を示す7つの図(1〜7)と、現時点のLDI区間にわたる、鉄に対するAP(Fe)値を含む1つの図(8)とを含む。図で理解されるように、鉄レベルFe対オイル寿命は、線形である。そのように、オイル変化が識別されている場合、オイル寿命を算出することができる。
【0080】
図10は、機関車ユニット2248に対する煤対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。具体的には、分散図は、7つの過去の潤滑剤廃棄区間(LDI)にわたり様々な時に計測された、エンジンオイル中の煤濃度を示す7つの図(1〜7)と、現時点のLDI区間にわたる、煤値を含む1つの図(8)とを含む。図で理解されるように、煤濃度も、オイル寿命の指標であると考えられる。データは、オイル寿命と煤との間の線形関係を示す。
【0081】
図11は、機関車ユニット2248に対するTBN対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。具体的には、分散図は、6つの過去の潤滑剤廃棄区間(LDI)にわたり様々な時に計測された、エンジンオイル中のTBNレベルを示す6つの図(2〜7)と、履歴データが利用可能ではない1つの図(1)と、現時点の期間にわたる、TBNレベルを含む1つの図(8)とを含む。図で理解されるように、オイル寿命とTBNレベルとの間の関係は、線形であり得る、及び/又は、非線形であり得る。
【0082】
図12は、機関車ユニットに対する煤対オイル寿命の1つの分散図の実例を示し、7つ(1〜7)のオイル変化区間に対するデータは、現時点のオイル変化区間(8)中の煤濃度データと共に重ねられている。図で理解されるように、データ点1110は、外れ値又は普通ではない結果のデータであると考えられる。本開示の原理に従って、システム100(図1に示される)は、例えば、データ点1110のような外れ値を検出し、取り除くように構成される。
【0083】
図13は、機関車ユニット2248に対する鉄(Fe)対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。図13は、約140日〜約276日の期間中のエンジンオイル中のFe濃度を予想する予想線1210を更に含むことを除き、図9と同じである。予想線1210は、決定装置170により生成され得る。
【0084】
図14は、機関車ユニット2248に対する煤対オイル寿命の8つの分散図の実例を示す。図14は、約140日〜約276日の期間中のエンジンオイル中の煤濃度を予想する予想線1310を更に含むことを除き、図10と同じである。予想線1310は、決定装置170により生成され得る。
【0085】
図15は、別の機関車ユニット8866に対する分散図行列の実例を示す。図で理解されるように、Fe、Pb、Cu、V100C、OXI、NIT、SOOT、TAN、TBN、PIを含む10個の分析パラメータが、6つの異なるオイル変化、n=6に対して計測され、描かれる。
【0086】
図16は、1つ以上のエンジンに対する保守計画を設定するプロセス500の実例を示す。図1Aを参照して、特定の顧客に属する全ての(又は、ほぼ全ての)エンジンに対して、LDIデータを取り出すために、データベース140に問い合わせ得る(工程510)。次に、取り出されたデータ内で識別されたエンジンは、LDIデータに基づいて、1つ以上のLDI分類項に、例えば、92日毎に保守点検を必要とするエンジン、184日毎に保守点検を必要とするエンジン、276日毎に必要とするエンジン等に分類され得る(工程520)。保守点検計画は、識別されたエンジンの各々に対して作成(又は、更新)され得る(工程530)。保守点検計画は、延長された潤滑剤廃棄区間(例えば、LD
I=276日)にわたり選択されるエンジンを列挙することを含み得る。保守点検計測は、短縮された潤滑剤廃棄区間(例えば、LDI=92日)にわたり選択されるエンジンを列挙することを含み得る。保守点検計画は、識別されたエンジンの各々に対して計画されたLDI日付を識別する暦を含み得る。次に、作成された保守点検計画は、例えば、顧客コンピュータ120(工程540)に送信され得る。
【0087】
本開示の態様によれば、例えば、サーバ130(又は、コンピュータ120)内で実行される場合、図16のプロセス500を実行させるコンピュータプログラムを含む、コンピュータ読出可能媒体が与えられる。コンピュータプログラムは、コンピュータ読出可能媒体中で実体的に具体化され得て、工程510〜540の各々に対する符号分節又は符号部分を含み得る。
【0088】
本開示の別の態様によれば、標識が、潤滑剤に加えられ得る。その標識は、潤滑剤が消耗された後に、計測可能な変化を作り出し得る。その標識は、例えば、可視スペクトラム分析、赤外線分析、色変化等により計測可能であり得る。
【0089】
本開示は、模範的実施形態について開示されているが、当業者は、本開示が、付属の請求項の趣旨及び範囲内で変更して実施され得ることを認識することになる。これらの実施例は、単に、説明のためのものであり、本開示の全ての可能な設計、実施形態、用途又は変更の包括的な列挙であることを意味していない。
【0090】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
【0091】
1.エンジンから採取されたエンジン潤滑剤の試料中で計測される分析パラメータ値に基づいて、前記エンジン内の潤滑剤を排出する区間を予想するプロセッサ基盤型システムであって、
分析パラメータ値を受信し、プロセッサのメモリ内に前記分析パラメータ値を保存する第1入力と、
分析パラメータ閾値を受信し、前記プロセッサのメモリ内に前記分析パラメータ閾値を保存する第2入力と、
前記分析パラメータ値と前記分析パラメータ閾値とに基づいて、前記潤滑剤排出区間を定めるための将来の分析パラメータ値を予想する決定装置と
を含む、システム。
【0092】
2.前記決定装置が、前記エンジンの前記潤滑剤排出区間を作成するように構成されている、上記1に記載のシステム。
【0093】
3.前記エンジン潤滑剤が、クランクケースのエンジンオイルを含む、上記1に記載のシステム。
【0094】
4.前記潤滑剤排出区間を予想するコンピュータを更に含む、上記1に記載のシステム。
【0095】
5.前記コンピュータが、前記決定装置を含む、上記4に記載のシステム。
【0096】
6.前記第1入力が、前記エンジンの履歴分析パラメータ値を受信する、上記1に記載のシステム。
【0097】
7.前記決定装置が、将来の分析パラメータ値を定めるために、前記履歴分析パラメータ値及び前記分析パラメータ値についてモデル構築を実行し、前記モデル構築が、
線形回帰、
非線形回帰、
ロジスティック回帰、
神経回路網モデル取り組み方法(回帰ではない)、又は
if−then論理(and、or、not、elseを含む)、
偏最小二乗回帰、又は
判別分析
を含む、上記6に記載のシステム。
【0098】
8.前記決定装置が、前記将来の分析パラメータ値を前記分析パラメータ閾値と比較する、上記7に記載のシステム。
【0099】
9.前記決定装置が、前記将来の分析パラメータ値の前記分析パラメータ閾値との比較に基づいて、前記エンジンの前記潤滑剤排出区間を作成する、上記8に記載のシステム。
【0100】
10.前記第1入力が、追加の分析パラメータ値を受信し、前記決定装置が、前記分析パラメータ値について線形回帰を、若しくは、前記追加の分析パラメータ値について非線形回帰又はモデル構築取り組み方法のうちの1つを実行する、上記7に記載のシステム。
【0101】
11.前記分析パラメータ値及び前記追加の分析パラメータ値が、前記エンジン潤滑剤試料中の鉄、鉛、錫、銅、アルミニウム、硼素、酸化物、窒化物、カリウム、シリコン、ナトリウム、煤、TBN、水、燃料、沈殿物、及び不溶物から成る群から選択される、上記10に記載のシステム。
【0102】
12.前記分析パラメータ値が、亜鉛、硼素、酸化物、窒化物、カリウム、シリコン、ナトリウム、煤、水、燃料汚染物、燃料副産物、沈殿物、鉛、及び不溶物から成る分析パラメータの群から選択される、上記1に記載のシステム。
【0103】
13.複数のエンジンの延長された潤滑剤排出区間を選択するプロセッサ基盤型の方法であって、
複数のエンジンに対する潤滑剤廃棄区間データを取り出し、前記データをメモリ内に保存することと、
前記潤滑剤廃棄データを、延長された潤滑剤廃棄区間の分類項と通常の潤滑剤廃棄区間の分類項とを含む、少なくとも2つの分類項に分類することと、
前記複数のエンジンに対して、プロセッサを用いて潤滑剤廃棄区間計画を策定することと
を含む、方法。
【0104】
14.前記延長された潤滑剤廃棄区間分類項が、約200〜約300日を含み、通常の潤滑剤廃棄区間分類項が、約150〜約200日を含む、上記13に記載の方法。
【0105】
15.前記延長された潤滑剤廃棄区間分類項が、保守点検のために車両が取り除かれることによる損失時間を最小限にするように定められる、上記13に記載の方法。
【0106】
16.前記車両が、トラクタ、トラック、機関車、バス、自動車、バイク、スクータ、水上バイク、又は航空機を含む、上記15に記載の方法。
【0107】
17.前記複数のエンジンの各々が、トラクタ、機関車、バス、自動車、バイク、スクータ、水上バイク、航空機、トラック、風力タービン、又は発電機のうちの1つ以上の中に与えられる、上記13に記載の方法。
【0108】
18.エンジンから採取されたエンジン潤滑剤の試料中で計測される分析パラメータ値に基づいて、前記エンジン内の潤滑剤を排出する区間を予想するプロセッサ基盤型の方法であって、
第1入力で前記分析パラメータ値を受信し、前記分析パラメータ値をプロセッサのメモリ内に保存することと、
第2入力で分析パラメータ閾値を受信し、前記プロセッサのメモリ内に前記分析パラメータ閾値を保存することと、
前記分析パラメータ値及び前記分析パラメータ閾値に基づいて、将来の分析パラメータ値を予想するためにプロセッサを使用することと
を含む、方法。
【0109】
19.前記将来の分析パラメータ値が、前記分析パラメータ閾値を超えることになる時の確率を予想すること
を更に含む、上記18に記載の方法。
【0110】
20.前記将来の分析パラメータ値が、前記分析パラメータ閾値を超えることになる時を予想すること
を更に含む、上記18に記載の方法。
【0111】
21.エンジンから採取されたエンジン潤滑剤の試料中で計測される分析パラメータ値に基づいて、前記エンジン内の潤滑剤を排出する区間を予想する方法であって、
前記エンジン潤滑剤に標識を加えることと、
前記エンジン潤滑剤の状態を定めるために前記エンジン潤滑剤の試料を分析することとを含む、方法。
【0112】
22.前記試料を分析することが、
前記エンジン潤滑剤の試料についてスペクトル分析を実行することと、または
前記エンジン潤滑剤の試料の色変化を検出することと
を含み、
前記スペクトル分析が、可視スペクトル分析又は赤外線分析を含む、
上記21に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16