(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
ある実施形態では、物品が環境条件に曝されたかどうかを決定するためのセンサーには検出材料が含まれる。検出材料にはフォトクロミック材料またはフォトサーモクロミック材料が含まれる。検出材料は、閾値温度、可視光、および/または紫外光等の少なくとも1つの環境条件に曝された時に検出材料が検出可能な変化をするように構成される。
【0011】
ある実施形態はまた、そのようなセンサーの使用方法であって、物品が環境条件に曝されたレベルに相関し得る環境条件のレベルにセンサーが曝されるように、期間の最初にセンサーを物品に近接して配置する工程;センサーを読み取る工程;およびセンサーの読取りから、物品が特定の環境条件に曝されたかどうかを決定する工程、を含む方法も含む。ある実施形態はまた、そのようなセンサーの製造方法も含む。
【0012】
センサーのある実施形態で使用される検出材料は、フォトクロミズムまたはサーモクロミズムを示す少なくとも1つの化合物を含む。フォトクロミズムおよびサーモクロミズムは、それぞれ光(電磁照射)および熱(熱放射)に基づく刺激に曝されることによる分子の可逆的な呈色と定義される。典型的には、フォトクロミック分子は、光を照射された時または熱に曝された時に、構造的及び/または電子的な再配置が起こり、より共役の強い着色状態またはより共役の弱い無色状態へと変換される。
【0013】
純粋なフォトクロミック分子の場合、着色状態は通常、可視光を照射することで元の無色状態に戻すことができる。熱的双安定性を一般的に示すそのようなフォトクロミック分子の例としては、ジチエニルエテンおよびフルギドが挙げられる。
【0014】
フォトサーモクロミック分子の場合、照射によっても加熱によっても異性化が起こるものであってもよい。スピロピラン、アザベンゼン、シッフ塩基等は、サーモクロミックおよびフォトクロミックの両方に分類される分子の例である。
【0015】
フォトクロミック化合物は通常、光の非存在下で双安定性であるのに対し、フォトサーモクロミック化合物は光の非存在下で熱的プロセスにより熱力学的により安定な状態へと構造変化する。
【0016】
ある実施形態では、フォトクロミック材料やフォトサーモクロミック化合物は、可視光、UV光、熱、閾値温度、またはその組合せに物品が曝された履歴を検出するためのセンサーの作製に用いられ得る。
【0017】
「閾値温度」とは、物品の温度が超えるべきでない所定の最大温度を意味する。
【0018】
種々の実施形態で使用してもよいフォトクロミックおよび/またはフォトサーモクロミック材料の例としては、スピロピランおよびその関連化合物(例えばスピロオキサジンおよびチオスピロピラン等)、ベンゾおよびナフトピラン(クロメン)、スチルベン、アゾベンゼン、ビスイミダゾール、スピロジヒドロインドリジン、キニーネ、ペリミジンスピロシクロヘキサジエノン、ビオロゲン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、ヒドラジン、アニル、アリールジスルフィド、アリールチオスルホネート等が含まれる。
【0019】
例えば以下の化合物を使用してもよい:
【0021】
これらの構造中、種々のR基(すなわちR、R
1、R
2、R
3、R
4)は、独立して、任意の好適な基であってよい。その例としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:
水素;
メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル(シクロプロピル、シクロヘキシル等の環式アルキル基やビニル(H
2C=CH−)、アリル(H
2C=CH−CH
2−)、プロピニル(HC≡C−CH
2−)等の不飽和アルキル基も含む)。上記のそれぞれについてアルキル基は炭素数が例えば1〜約50であるが炭素数はそれより多くてもよい。炭素数は例えば1〜約30である;
フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン、およびこれらに置換を加えた基等の、炭素数約6〜約30(例えば炭素数約6〜約20)のアリール;
炭素数約7〜約50(例えば炭素数約7〜約30)のアリールアルキル;
シリル基;
ニトロ基;
シアノ基;
フルオライド、クロライド、ブロマイド、ヨージド、アスタタイド等のハライド原子;
第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等のアミン基;
ヒドロキシ基;
炭素数1〜約50(例えば炭素数1〜約30)のアルコキシ基等のアルコキシ基;
炭素数約6〜約30(例えば炭素数約6〜約20)のアリールオキシ基等のアリールオキシ基;
炭素数1〜約50(例えば炭素数1〜約30)のアルキルチオ基等のアルキルチオ基;
炭素数約6〜約30(例えば炭素数約6〜約20)のアリールチオ基等のアリールチオ基;
アルデヒド基;
ケトン基;
エステル基;
アミド基;
カルボン酸基;
スルホン酸基;等々。
アルキル、アリール、およびアリールアルキル基は例えば以下のような基で置換されていてもよい:シリル基;ニトロ基;シアノ基;フルオライド、クロライド、ブロマイド、ヨージド、アスタタイド等のハライド原子;第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等のアミン基;ヒドロキシ基;炭素数1〜約20(例えば炭素数1〜約10)のアルコキシ基等のアルコキシ基;炭素数約6〜約20(例えば炭素数約6〜約10)のアリールオキシ基等のアリールオキシ基;炭素数1〜約20(例えば炭素数1〜約10)のアルキルチオ基等のアルキルチオ基;炭素数約6〜約20(例えば炭素数約6〜約10)のアリールチオ基等のアリールチオ基;アルデヒド基;ケトン基;エステル基;アミド基;カルボン酸基;スルホン酸基、等々。Ar
1およびAr
2は、独立して、任意の好適なアリールまたはアリール含有基であり得、その例としては限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン、等々、ならびに、これらの基に対して、アルキル、アリール、およびアリールアルキル基に対する置換として上で述べた置換を施した基などが挙げられる。スピロピランの式中のXは、N、O、S等の適切なヘテロ原子である。Yは−N−または−CH−であり得る。ビオロゲンの式中のX
−は、例えばF
−、Cl
−、Br
−、I
−、BF
4−、PF
6−、B(C
6H
5)
4−等であり得る。アリールチオスルホネート中のX
−は、例えば−O−、S、−NH−等であり得る。
【0022】
フォトクロームおよびフォトサーモクロームは単独で用いてもよく、米国特許出願第12/206,136号および米国特許出願公開第2008/0311489(A1)号、同第2008/0311490(A1)号、同第2008/0311491(A1)号、同第2008/0311519(A1)号、同第2008/0311493(A1)号、同第2008/0311494(A1)号、同第2008/0311495(A1)号、および同第2008/0311521(A1)号に開示されているもの等の種々のその他の添加剤や物質と併用してもよい。着色または無色の異性体を安定化するため、センサーを所望の環境条件に合わせるため、またはセンサーにその他の所望の特性を付与するために、上記開示に記載されているように、例えばイオノマー、安定化剤、ポリマー、溶媒、および赤外線吸収剤を添加してよい。例えば、センサーが環境条件に曝されたことによる例えば着色状態から無色状態または無色状態から着色状態へのフォトクロミック材料またはフォトサーモクロミック材料の異性化変換を減速、停止、または加速するためにこれらの化合物を添加してもよい。
【0023】
上記のフォトクロームおよびフォトサーモクロームに加え、実施形態によっては光塩基発生剤および光酸発生剤を、別個に、または種々の光塩基発生剤および光酸発生剤ならびに上記のフォトクロームと組み合わせて用いてもよい。
【0024】
UV光等の活性化エネルギーに曝された時に、アミン等の塩基を発生する前駆物質であれば、任意の適切な光塩基発生剤を用いることができる。ある実施形態では、光塩基発生剤は、UV光に曝されたときに、pH>7の塩基性化合物であるアミンを発生する。
【0025】
光塩基発生剤の例として当該技術分野で公知であるものが挙げられ、本明細書の種々の実施形態中で使用することができる。光塩基発生剤の例としては、o−アシルオキシム、ベンゾイルオキシカルボニル誘導体、ベンジルカルバメートおよびベンゾインカルバメート等の光活性カルバメート、o−カルバモイルオキシム等のオキシムエステル化合物、第四級アンモニウムテトラフェニルボレート塩等のアンモニウム化合物、ベンゾイン化合物、ジメトキシベンジルウレタン化合物、オルトニトロベンジルウレタン化合物、芳香族スルホンアミド、アルファ−ラクタム、N−(2−アリールエテニル)アミド、ならびにこれらの混合物等が含まれる。これらの化合物は一般的に、UV光等の活性エネルギービームが照射されると塩基としてのアミンを発生する。しかし、光の作用でアンモニアイオンまたはヒドロキシイオンを発生する光塩基発生剤を用いてもよい。これらは、例えばN−置換4−(o−ニトロフェニル)ジヒドロキシピリジン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピペリジン、1,3−ビス[N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)−4−ピペリジル]プロパン、N,N’−ビス(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ジヘキシルアミン、およびO−ベンジルカルボニル−N−(1−フェニルエチリデン)ヒドロキシルアミンから選択されてもよい。
【0026】
光酸発生剤の例としては、UV光等の活性化エネルギーに曝された時に酸(有機酸でも無機酸でもよい)を発生する前駆物質である光酸発生剤を用いてもよい。ある実施形態では、光酸発生剤はUV光に曝された時に、pH<7の酸を発生する。
【0027】
光酸発生剤の例としては当該技術分野で公知であるものが挙げられ、本明細書の種々のある実施形態中で使用することができる。光酸発生剤の例としては、ハロゲン化トリアジン、アリールジアゾニウム塩およびジアリールハロニウム塩等のオニウム塩、トリアリールスルホン酸塩、スルホン化エステル、置換ヒドロキシイミド、置換ヒドロキシルイミン、アジド、ジアゾナフトキノン等のナフトキノン、ジアゾ化合物、およびこれらの組合せが含まれる。別のクラスの光酸発生剤材料は、ニトロベンジルエステル、スルホン、ホスフェート等の非イオン性光酸発生剤で表される。これらの化合物は通常、UV光等の活性エネルギービーム照射により酸を発生する。
【0028】
光酸発生剤および光塩基発生剤についての更なる概要は、例えばProg.Polym. Sci.vol.21,1―45,1996に記載されている。
【0029】
光塩基発生剤および光酸発生剤を酸/塩基指示薬またはカップリング剤と組み合わせて可視画像を生成または消去するようにしてもよい。センサー材料として用いられる光塩基発生剤および光酸発生剤は、刺激に曝されると永久画像を形成するものであってもよい。そのような永久画像は、容易に改変または元に戻すことができず、例えばUV光(フォトクロミック材料によっては着色状態はUV光によって逆転させることができる)に曝されても消える心配がなく容易に観察可能であるため、有益であり得る。
【0030】
酸塩基指示薬の例としては、光酸発生剤から発生した酸と反応して着色画像を形成する酸塩基指示薬も用いてよい。ある実施形態では、光酸発生剤から発生した酸と酸塩基指示薬の反応により、透明または無色の状態から着色状態へと、または第1の着色状態から第2の異なる着色状態へとセンサーの変化を引き起こし、ここで変化の程度および/または色は、反応する材料の種類および反応する材料の相対量に関連する。
【0031】
酸塩基指示薬の例としては当該技術分野で公知であり、一般的に容易に入手可能であり、世界中の分析研究室で酸塩基滴定に用いられているものが挙げられる。一般的に、プロトン化状態と脱プロトン化状態の間で変化した時に十分大きな色の変化を生み出す任意の酸塩基指示薬が好適である。酸塩基指示薬の例としては、米国特許出願公開第2008−0311517(A1)号および同第2008−0311518号に記載されてものが挙げられる。
【0032】
光塩基発生剤から発生する塩基と反応して拡張した共役を生成し着色画像を生成する、及び/又は同様に拡張した共役が光酸発生剤から発生した酸と反応して反応を逆転させて無色画像を形成し、着色画像を消去するような、適切なカップリング剤を用いても良い。
【0033】
ある実施形態では、カップリング剤と光塩基発生剤から発生した塩基との反応は、反応部位の画像形成層を透明または無色の状態から着色状態へと変化させ、その変化の程度および/または色は、反応する材料の種類および反応する材料の相対量に関連する。同様に、拡張した共役と光酸発生剤から発生した酸との反応は、反応部位の画像形成層を着色状態から透明または無色の状態へと変化させ、その変化の程度および/または色は、反応する材料の種類および反応する材料の相対量に関連する。
【0034】
カップリング剤の例としては当該技術分野で公知であるものが挙げられる。例えば、好適なカップリング剤は、光塩基発生剤から発生した無色の塩基と反応して有色の拡張共役またはシッフ塩基化合物を形成してもよいカップリング剤であって、得られた拡張共役またはシッフ塩基化合物が同様に光酸発生剤から発生した酸と反応して反応を逆転させて無色画像を形成することで着色画像を消去し得る、カップリング剤である。
【0035】
酸塩基指示薬および/またはカップリング剤を好適に選択することでセンサー上で任意の色を作ることができることが理解されよう。例えば、好適な酸塩基指示薬およびカップリング剤は、黄色〜赤〜青〜紫の色の範囲を提供するように選択することができる。更に、より広範囲の色を得るために2種以上の指示薬またはカップリング剤を組み合わせて使用してもよい。例えば、シアン、マゼンタ、およびイエローの色を形成するように酸塩基指示薬および/またはカップリング剤の組合せを選択することで、黒色またはフルカラーの画像を提供することができる。
【0036】
更に、光塩基発生剤または光酸発生剤の活性エネルギービームに対する感光波長域を拡大するために、光塩基発生剤および/または光酸発生剤と組み合わせて適切な光増感剤を必要に応じて用いてもよい。種々の光増感剤が当該技術分野で周知である。光増感剤の例としては、ベンゾフェノン等が挙げられる。しかし、ある実施形態では、活性エネルギービームに対する波長域を狭くし、画像形成材料が間違って活性化されるのを防止するのを助けるために、光増感剤を含めないことが望ましい。
【0037】
特定の環境条件に物品が曝された履歴を追跡または監視するために、センサーは、監視されている物品に少なくとも近接して配置されるべきである。「少なくとも近接して」とは、物品が環境条件に曝されたレベルに関連づけすることができる検出可能な変化が検出材料に生じるのに十分なレベルの環境条件にセンサーが曝されるような位置にセンサーが配置されることを意味する。これには、物品上、物品内、および物品上でも物品内でもない位置等の位置が含まれる。すなわち、センサーは、環境条件に曝されたことを監視するのに有用であるためには物品上に直接配置される必要がなくてもよい。例えば、1つのセンサーを用いて複数の物品の状態を監視してもよい。センサーの適切な位置は、監視される物品および環境条件に応じて変えてもよい。
【0038】
「検出可能な変化」とは、検出材料により示される検出可能なあらゆる色の変化を意味する。そのような変化としては、例えば、色の変化(裸眼で分かるものであっても分からないものであってもよい)を読み取るために設計された種々の機械で読み取られる可視色変化および/または光の吸収もしくは反射の変化が含まれる。
【0039】
ある実施形態では、センサーは物品に直接付与されるか物品に埋め込まれてもよい。ある実施形態では、センサーは監視される物品の表面または物品を保持する容器に直接印刷されるインクの形態である。
【0040】
別の実施形態では、センサーは、物品に接着された基体または物品を保持する容器に印刷されるインクの形態であるか、あるいは物品と一緒に収められるか、物品の容器中に収められるか、または物品もしくは容器を包む包装に収められる。ある実施形態では、センサーは出荷ラベルまたは製品ラベルの一部である。
【0041】
ある別の実施形態では、センサーは物品である。例えば、センサーは、出荷経路の状況を試験または監視するためにある場所に出荷され得る。同様に、センサーは、特定の期間にわたってある場所の環境条件を監視するために、その位置に配置され得る。
【0042】
前述のように、センサーは、物品または基体に印刷または直接付与され得るインクその他の物質の形態であってもよい。しかし、センサーは、カプセルに入れられた液体の形態、固体粒子の形態、ポリマー膜の形態、接着テープの形態、および物品が環境条件に曝されたかどうかを監視するために好適なその他種々の形態をとってもよい。環境条件に曝された時に検出可能な変化を呈することができるのに十分な検出材料があれば、センサーの大きさおよび形状は特に限定されない。
【0043】
センサーが基体を含むある実施形態では、基体は、1または複数のフォトクロミック化合物および/またはフォトサーモクロミック化合物ならびに前述の任意の追加材料を含む検出材料で少なくとも片側がコーティングまたは含浸されていてもよい。所望により、基体の片側のみまたは両側が、検出材料でコーティングまたは含浸され得る。検出材料が基体の両側にコーティングまたは含浸される場合、または検出材料における視認性の高い色変化が望まれる場合、支持基体と検出材料の間または検出材料がコーティングされた側とは反対側の支持基体面に不透明層を設けてもよい。
【0044】
任意の適切な支持基体が使用されてもよい。例えば、支持基体の好適な例としては、ガラス、セラミックス、木材、プラスチック、紙、ファブリック、織物製品、ポリマー膜、金属等の無機基体等が含まれるが、これらに限定されるものではない。プラスチックは、例えばポリエチレン膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどのプラスチック膜でもよい。紙は、例えばゼロックス(登録商標)4024紙等の普通紙、罫線付ノート用紙、ボンド紙、シャープ社(Sharp Company)製シリカコート紙等のシリカコート紙、十條紙(Jujo paper)等でもよい。基体は、単層でも多層でもよく、多層の場合は各層は同じ材料でも異なる材料であってもよい。ある実施形態では、基体の厚さは例えば約0.3〜約5mmの範囲であるが、所望により、これより薄くてもよく、厚くてもよい。
【0045】
センサー中に不透明層が用いられる場合、任意の適切な材料が用いられてもよい。例えば、白色紙様の見た目が望まれる場合、二酸化チタンまたはその他の適切な材料(例えば酸化亜鉛、無機炭酸塩等)の薄いコーティングからなる不透明層を形成してもよい。不透明層の厚さは、例えば約0.01〜約10mm、例えば約0.1〜約5mmであり得るが、これ以外の厚さとすることもできる。
【0046】
所望により、検出材料にオーバーコート層を塗布してもよい。この更なるオーバーコート層は、下層を基体上適切な位置で更に接着させ、耐摩耗性を付与し、外観および感触を向上させる等のために付与されてもよい。オーバーコート層は、基体材料と同じであっても異なっていてもよいが、ある実施形態では、色変化の可視化を可能とするために、オーバーコート層および基体層の少なくとも1つは透明且つ透過性である。オーバーコート層の厚さは、例えば約0.01〜約10mm、例えば約0.1〜約5mmであり得るが、これ以外の厚さであってもよい。
【0047】
センサーは、検出すべき所望の環境条件に基づいて構成されてもよい。この条件は、環境条件の既定の閾値レベルであってもよい。センサーは、環境条件に曝されると無色から着色状態へと変化する検出材料を用いて、環境条件に曝されたことを示すように構成されてもよい。例えば、環境条件に曝されると、予め印刷されている無色のインクが無色状態から着色状態へと変化し、予め印刷されているテキスト、記号、またはメッセージを示すようになる。例えば、テキストは「UV光に曝されました。使用しないで下さい!」というものであってもよい。
【0048】
あるいは、センサーは、着色状態から無色状態へと変化する材料を用いて、環境条件に曝されたことを示すように構成され得る。例えば、予め印刷されている「安全に使用できます」等の可視メッセージを物品上にまたは物品と一緒に含めてもよい。環境条件に曝されるとメッセージは消える。その場合、使用する前に、「安全に使用できます」というメッセージを探すように指示する使用者への永久的なメッセージをセンサーまたは物品に含めてよい。更に、条件に曝された長さまたは複数の環境条件を検知するために出現及び/又は消滅するメッセージの組み合わせを用いてもよい。
【0049】
ある実施形態では、センサーを所望の仕様に適合させてもよい。したがって、閾値条件を決定して監視してもよい。例えば、物品がX℃を超えて加熱されていない限り、物品を安全に使用できる場合、したがって、センサーは、X℃を超える加熱を示すように設計されてもよい。例えば、ポリマーマトリックスに組み込まれたセンサーフォトクロームは着色反応のために、強い活性化が必要なものであってもよい。UV光存在下の低温では、容易に環が開裂して着色形態になることはない。一方、ポリマーが(1)ポリマーのガラス転移温度(Tg)(ポリマー鎖が可動性になる温度)よりも高い温度に加熱され、(2)フォトクロームにUV光が照射される場合、可動性のポリマー鎖はもはや反応を妨げないため、フォトクローム環は開裂する。したがって、これらのインプットはそれぞれ単独ではセンサーの反応を開始させることができないため、この種のセンサーは熱およびUV光に同時に反応する。
【0050】
ある別の実施形態では、センサーは特定の期間にわたって環境条件を追跡するように設計または構成され得る。例えば、センサーは、物品が包装された時点から、出荷中、および包装が開けられる時点まで、物品を監視するのに適合するようにしてもよい。また、センサーは、特定の条件の1回の発生、特定の条件の複数回の発生、種々の条件の1回の発生、または種々の条件の複数回の発生を記録するのに適合するようにしてもよい。例えば、光学的に活性であり平面偏光光を回転させるキラルなスピロピランをセンサーとして用いる場合、サンプルがUV光に曝されると着色状態になるだろう。このサンプルがその後第2のインプット(熱)に曝されると、熱は、スピロピランを無色状態に戻すだろう。しかし、この無色状態はラセミ的(エナンチオマーの混合物)であろうため、もはや光学的に活性ではなく、偏光面を回転させないだろう。したがって、そのようなセンサーはUV光と熱への暴露の両方を探知する。
【0051】
センサーは、環境条件に曝された程度を監視するようにも構成されてもよい。例えば、センサーは、環境条件に曝されたことに反応して増強または低減する色変化を呈するように設計されてもよい。環境条件に曝された量の増加は、検出材料の色変化の程度を増加させる。したがって、色強度の変化を求めることができ、環境条件に曝された程度に関連付けることができる。曝された程度を決定し易いように色対応情報(color key)を提供してもよい。例えば、光酸発生剤と酸塩基指示薬染料の組合せは、酸の光化学的発生が着色の引き金となるだろう。ランバート−ベールの法則より、光学吸収は酸で活性化される指示薬の量に関連し、光学吸収がUV光に曝された程度に相関するため、線量を示す指標として光学吸収を用いることができる。
【0052】
更に、R基、特にNO
2基は、2つの状態(開環と閉環)の安定性と開環のキネティックスの両方が種々の官能基を変えることで変更可能となるように、変更や調整をすることができる。
【0053】
以下の表1に、種々のフォトクロミック材料およびフォトサーモクロミック材料の例としてインプット、材料、初期状態、および検出状態の例を示す。
【実施例】
【0055】
実施例1
スピロピラン/メロシアニンの例として、以下に示すものを調製した。この材料は0℃で着色状態をほぼ無期限に維持していた。しかし、80℃では、着色状態は無色状態へと数秒でシフトした。
【0056】
【化2】
【0057】
実施例2
スピロキシザンの例として以下に示すものを調製した。この材料は−20℃で着色状態を維持していた。しかし、室温では、着色状態は無色状態へと数秒でシフトした。
【0058】
【化3】
【0059】
実施例3
以下に示す例示材料を調製した。この材料は、室温および周囲のオフィス照明下で数週間、着色状態を維持していた。しかし、120〜140℃では、着色状態は無色状態へと数秒でシフトした。
【0060】
【化4】