特許第5959615号(P5959615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959615プーリングシステムおよびプーリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959615
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】プーリングシステムおよびプーリング方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20160719BHJP
【FI】
   G06Q40/02
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-260658(P2014-260658)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-122264(P2016-122264A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】397077955
【氏名又は名称】株式会社三井住友銀行
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】一関 敬之
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 宏州
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】長田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】大川 夏美
(72)【発明者】
【氏名】川森 康由
(72)【発明者】
【氏名】松葉屋 貴将
(72)【発明者】
【氏名】向井 友浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲
(72)【発明者】
【氏名】小川 東秀
(72)【発明者】
【氏名】西村 辰也
(72)【発明者】
【氏名】豊田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】南部 堅悟
【審査官】 山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−309739(JP,A)
【文献】 特開2000−48095(JP,A)
【文献】 特開2000−29970(JP,A)
【文献】 特開2002−230308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の要求に基づいて、複数の会社の口座間で資金移動を行うプーリングシステムであって、
前記顧客の情報を登録する顧客情報登録手段と、前記顧客情報登録手段に登録された情報に基づいて、前記顧客の口座間の資金集約と資金分配を指示するプーリングエンジンとを備え、
前記顧客情報登録手段は、複数の海外拠点におけるプーリングに参加する会社を登録する会社登録部と、前記会社のプーリングで取り扱う口座が登録される口座登録部と、前記口座登録部に登録された口座から成る複数の口座グループが登録される口座グループ登録部と、前記口座グループごとのプーリングルールを保持するプーリングルール保持部とを有し、
前記口座グループ登録部には、一つの前記口座グループの子口座を他の前記口座グループの親口座に設定することにより、前記複数の口座グループが前記海外拠点間を跨いで階層化され登録され、
前記プーリングルールは、前記海外拠点の業務時間、休業日、及び毎日の口座残高の変動量に基づいた起動条件を含み、
前記プーリングルール保持部は、前記プーリングエンジンに前記プーリングルールを送信し、前記口座グループのプーリングを前記起動条件に基づいて実行させることを特徴とするプーリングシステム。
【請求項2】
前記口座グループ登録部は、前記口座登録部に登録された口座から複数の口座グループを作成し、一つの前記口座グループにおいて一つの口座を親口座とし、他の口座を子口座として登録することを特徴とする請求項1に記載のプーリングシステム。
【請求項3】
前記プーリングルールは、前記口座グループに属する口座の少なくとも一部に優先順位を設定し、前記優先順位の高い口座から順番に、資金不足である口座へ資金を移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載のプーリングシステム。
【請求項4】
前記プーリングルールは、前記口座グループに属する口座の各口座残高に比例した資金を、資金不足である口座へ移動させることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のプーリングシステム。
【請求項5】
前記プーリングルールは、前記口座グループに属する口座の少なくとも一部に優先順位を設定し、前記優先順位の高い口座から順番に、資金不足である口座へ資金を移動させる第1のルールと、
前記第1のルールにより資金移動を行った結果資金不足である口座へ、前記口座グループに属する口座の前記第1のルールにより資金移動を行った後の各口座残高に比例した資金を移動させる第2のルールとからなることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のプーリングシステム。
【請求項6】
顧客の情報を登録する顧客情報登録手段と、前記顧客情報登録手段に登録された情報に基づいて、前記顧客の口座間の資金集約と資金分配を指示するプーリングエンジンとを備えたプーリングシステムによりプーリングを行う方法であって、
前記顧客情報登録手段に複数の海外拠点におけるプーリングに参加する会社が登録されるステップと、
前記顧客情報登録手段に前記会社のプーリングで取り扱う口座が登録されるステップと、
前記顧客情報登録手段が、登録された前記口座から成る複数の口座グループを作成して登録するステップと、前記口座グループごとのプーリングルールを保持するステップとを含み、
前記複数の口座グループを作成して登録するステップは、一つの前記口座グループの子口座を他の前記口座グループの親口座に設定することにより、前記複数の口座グループを前記海外拠点間を跨いで階層化して登録し、
前記プーリングルールは、前記海外拠点の業務時間、休業日、及び毎日の口座残高の変動量に基づいた起動条件を含み、
前記プーリングエンジンに前記プーリングルールを送信し、前記口座グループのプーリングを前記起動条件に基づいて実行させることを特徴とするプーリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業グループ内で親口座となる統括会社の口座に、企業グループの他の会社から資金を集中させて管理するプーリングシステムおよびプーリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、企業グループ内で資金を融通しあうプーリングシステムが知られている。プーリングシステムは、統括会社が金融機関に開設した親口座にグループ各社の資金繰りを集中させ、企業グループ内で資金を融通し合うことにより、企業グループ全体の資金を効率良く管理することを可能とするものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、参加企業の各口座の残高集計額を集計手段が集計し、振替指示手段による振替指示に基づき振替実効手段が、幹事企業Aの親口座から不足分振替指示である参加企業Bの子口座には不足分を振替え、余資分振替指示である参加企業Cの子口座から余資分を親口座に振替える。その結果として、幹事企業Aの親口座残高が赤残の場合は融資を要請し、逆に口座残高が黒残の場合は余資分を運用するように要請するプーリングシステムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、資金管理装置がネットワークを介してグループ企業の口座残高を取得し、資金管理装置が作成した資金移動データに従って、各銀行の口座管理サーバが資金を移動するプーリングシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−029970号公報
【特許文献2】特開2002−230308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2のプーリングシステムでは、統括会社の口座である親口座にプーリングに参加する全ての会社の口座が子口座として従属している。このためプーリングに参加する子口座の数が増えると、プーリングで一度に処理しなければならない口座情報が増加し、システムの負担が増加する。
【0007】
また、同じ企業グループに属する会社であっても、属する地域、事業内容、扱う資金量などは会社ごとに異なるため、プーリングに参加する会社ごとに、プーリング対象の口座間の資金移動のルールを定めるプーリングルールを調整することが好ましい場合がある。しかし、全ての子口座を一つの親口座で管理するシステムでは、子口座ごとに国や地域ごとの事情に合わせて細かな調整をしようとすると、複雑なプーリングルールを設定し運用しなければならない。
【0008】
このため、多くの会社が参加できるプーリングシステムでありながら、個々の会社の事情に応じたプーリングの処理を行うプーリングシステムが求められている。
【0009】
本発明は上記のような課題に鑑み、より柔軟にプーリングの処理を行うことができるプーリングシステムを構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のプーリングシステムは、顧客の要求に基づいて、複数の会社の口座間で資金移動を行うプーリングシステムであって、前記顧客の情報を登録する顧客情報登録手段と、前記顧客情報登録手段に登録された情報に基づいて、前記顧客の口座間の資金集約と資金分配を指示するプーリングエンジンとを備え、前記顧客情報登録手段は、複数の海外拠点におけるプーリングに参加する会社を登録する会社登録部と、前記会社のプーリングで取り扱う口座が登録される口座登録部と、前記口座登録部に登録された口座から成る複数の口座グループが登録される口座グループ登録部と、前記口座グループごとのプーリングルールを保持するプーリングルール保持部とを有し、前記口座グループ登録部には、一つの前記口座グループの子口座を他の前記口座グループの親口座に設定することにより、前記複数の口座グループが前記海外拠点間を跨いで階層化され登録され、前記プーリングルールは、前記海外拠点の業務時間、休業日、及び毎日の口座残高の変動量に基づいた起動条件を含み、前記プーリングルール保持部は、前記プーリングエンジンに前記プーリングルールを送信し、前記口座グループのプーリングを前記起動条件に基づいて実行させることを特徴とする。
【0011】
前記口座グループ登録部は、前記口座登録部に登録された口座から複数の口座グループを作成し、一つの前記口座グループにおいて一つの口座を親口座とし、他の口座を子口座として登録することを特徴とする。
【0013】
前記プーリングルールは、前記口座グループに属する口座の少なくとも一部に優先順位を設定し、前記優先順位の高い口座から順番に、資金不足である口座へ資金を移動させることを特徴とする。
【0014】
前記プーリングルールは、前記口座グループに属する口座の各口座残高に比例した資金を、資金不足である口座へ移動させることを特徴とする。
【0015】
前記プーリングルールは、前記口座グループに属する口座の少なくとも一部に優先順位を設定し、前記優先順位の高い口座から順番に、資金不足である口座へ資金を移動させる第1のルールと、前記第1のルールにより資金移動を行った結果資金不足である口座へ、前記口座グループに属する口座の前記第1のルールにより資金移動を行った後の各口座残高に比例した資金を移動させる第2のルールとからなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のプーリング方法は、顧客の情報を登録する顧客情報登録手段と、前記顧客情報登録手段に登録された情報に基づいて、前記顧客の口座間の資金集約と資金分配を指示するプーリングエンジンとを備えたプーリングシステムによりプーリングを行う方法であって、前記顧客情報登録手段に複数の海外拠点におけるプーリングに参加する会社が登録されるステップと、前記顧客情報登録手段に前記会社のプーリングで取り扱う口座が登録されるステップと、前記顧客情報登録手段が、登録された前記口座から成る複数の口座グループを作成して登録するステップと、前記口座グループごとのプーリングルールを保持するステップとを含み、前記複数の口座グループを作成して登録するステップは、一つの前記口座グループの子口座を他の前記口座グループの親口座に設定することにより、前記複数の口座グループを前記海外拠点間を跨いで階層化して登録し、前記プーリングルールは、前記海外拠点の業務時間、休業日、及び毎日の口座残高の変動量に基づいた起動条件を含み、前記プーリングエンジンに前記プーリングルールを送信し、前記口座グループのプーリングを前記起動条件に基づいて実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より柔軟にプーリングの処理を行うことができるプーリングシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るプーリングシステムの基本概念を示す図である。
図2】実施形態に係るプーリングシステムの機能構成を示す図である。
図3】口座登録部に登録される情報の具体例を示す図である。
図4】口座グループ登録部に登録される情報の具体例を示す図である。
図5】実施形態に係るプーリングエンジンの処理工程を示す図である。
図6】ゼロバランス方式のプーリングを示す図である。
図7】ターゲットバランス方式のプーリングを示す図である。
図8】ネット方式のプーリングを示す図である。
図9】優先方式と残高比例按分方式を示す図である。
図10】優先方式と残高比例按分方式の組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。また、機能構成の図において、機能ブロック間の矢印は、データの流れ方向、又は処理の流れ方向を表す。
【0020】
(基本概念)
図1は本発明の実施形態におけるプーリングシステムおよびプーリング方法の基本概念を示す図である。本実施形態では、A会社を統括会社とし、プーリングに参加する会社の口座は、顧客が指定する複数の口座グループに分けられている。
【0021】
それぞれの口座グループには、口座グループ内の子口座の資金の集約と分配を行う親口座が一つ設定されている。図1では統括会社であるA会社のa口座を親口座とし、複数の拠点にあるB〜E会社のb〜e口座を子口座とする第1口座グループと、A拠点(例えばシンガポール)内にあるB、F〜J会社の口座から成る第2〜第4口座グループが形成されている。なお、本発明において、どのような口座を口座グループとして纏めるか、また口座グループを幾つ作成するかは、金融機関とプーリング契約する顧客の要求に基づいて任意に設定できるものであり、図1に限定されるものではない。
【0022】
本発明のプーリングシステムでは、ある口座グループの親口座が他の口座グループの子口座として設定され登録される。例えば、図1に示す実施形態では、B会社のb口座は第2口座グループの親口座に設定されるとともに、第1口座グループの子口座に設定される。b口座が第1口座グループの子口座に設定されることにより、b口座を親口座とする第2口座グループは、第1口座グループに従属する口座グループとなり階層化されたものとなる。このようにして、図1に示すように階層化された第1〜第4口座グループの従属関係が決まる。
【0023】
本発明のプーリングシステムでは、プーリングの処理はそれぞれのグループ内で行われる。図1の第1口座グループのプーリングでは、統括会社であり第1口座グループの親口座であるa口座と第1口座グループの子口座であるb〜e口座との間で資金の移動が行われる。また、第2口座グループのプーリングにより、第2口座グループの親口座であるb口座と第2口座グループの子口座であるf、g口座との間で資金の移動が行われる。したがって、第1口座グループのプーリングと第2口座グループのプーリングが実施されることにより、b口座を介してa口座とf、g口座との間で資金の移動が行われることになる。
【0024】
このように、階層化された第1〜第4口座グループの各グループについてプーリングを実施することにより、a口座とb〜j口座との間で直接的または間接的に資金集約、資金分配が可能となる。
【0025】
一方、第1〜第4口座グループのプーリングは、口座グループごとに設定されたプーリングルールによって行われる。第1口座グループのプーリングは、第1口座グループに属するa〜e口座を対象とするので、f〜j口座の情報は特に必要としない。また、第1口座グループのプーリングルールは、a〜e口座に適用されるルールを考慮するだけでよい。同じように第2〜第4口座グループについても、その口座グループに属する口座の情報を扱うだけでプーリングの処理ができるので、プーリングルールを口座グループごとに調整することができる。
【0026】
このように、本発明の実施形態のプーリングシステムでは、プーリングに参加する会社の口座からなる口座グループは階層化され、それぞれの口座グループに同一または異なるプーリングルールが設定される。
【0027】
(システム構成)
本発明の実施形態におけるシステム構成を図2に示す。実施形態におけるプーリングシステムは、顧客情報登録手段1とプーリングエンジン2を備える。顧客情報登録手段1とプーリングエンジン2は、一つのサーバ内に構築しても、複数のサーバをネットワークなどによって接続して構築しても構わない。
【0028】
顧客情報登録手段1は、企業グループ登録部3、契約情報登録部4、プーリングルール保持部5、会社登録部6、口座登録部7、および口座グループ登録部8を備える。
【0029】
企業グループ登録部3には、顧客として金融機関とプーリングサービスの契約を結ぶ企業グループが登録される。登録される情報は企業グループ名、統括会社名など企業グループに関する情報である。
【0030】
契約情報登録部4には、企業グループ登録部3に登録された企業グループと金融機関との、プーリングのサービス契約の内容が登録される。登録される契約情報には、プーリングのサービス契約開始日と終了日、レポート配信方式、利息計算方式、適用する為替レートなどがある。
【0031】
プーリングルール保持部5には、プーリングエンジン2が資金移動を指図する際のプーリングルールが、口座グループごとに登録される。プーリングルールとしては、プーリングエンジン2の起動条件、起動時間、口座間の資金の移動方向(1Way/2Way)、プーリング方式などの条件が登録される。プーリングルール保持部5は、上記の条件をデータとして保持するだけでなく、プーリングルールを実行するロジック又はそのロジックを実行するプログラム自体を記憶するようにしてもよい。そのようにすることで、プーリングエンジンを修正することなく、プーリングルールの新設や変更に柔軟に対応することができる。
【0032】
会社登録部6には、プーリングに参加する会社の情報が登録される。口座登録部7には、会社登録部6で登録された会社のプーリングで取り扱う口座情報が登録される。口座情報には、図3に示すように口座名、口座種別、口座番号など勘定系システム12と連携させるために必要な情報と、プーリングシステムにおいて顧客が指定する口座グループ名、および口座グループにおける役割が親口座か子口座かについての情報が登録される。このとき、例えば図1のb口座のように、2つの口座グループに属することが指定される口座は、どちらかの口座グループの親口座に設定される。なお、図3の口座情報の構成はあくまでも一例であって、これ以外の構成であってもよい。
【0033】
口座グループ登録部8は、口座登録部7に登録されている各口座の、指定された口座グループ名と親口座か子口座かの役割についての情報に基づいて、口座グループに属する口座のリストを作成し、各口座グループの親口座と子口座を設定し登録する。このとき、顧客によって2つの口座グループに属することが指定されている口座は、一つの口座グループでは親口座、別の口座グループでは子口座として登録される。
【0034】
また、口座グループ登録部8は、作成した口座グループにプーリングルール保持部5に登録されたプーリングルールを割り付ける。口座グループ登録部8に登録される情報の具体例を図4に示す。なお、図4の口座グループ情報の構成はあくまでも一例であって、これ以外の構成であってもよい。
【0035】
プーリングエンジン2は、設定されたプーリングルールに従って、口座残高情報を取得し、子口座から親口座に移動する資金集約と親口座から子口座に移動する資金分配の額である資金移動額を計算し、資金移動指図を行う。図2に示す実施形態のプーリングエンジン2は、口座残高情報取得部9、資金移動額計算部10、資金移動指図部11を有している。プーリングエンジン2が行う処理の手順を図5に示す。
【0036】
顧客情報登録手段1は、プーリングルール保持部5に第1口座グループのプーリングルールとして登録されている起動条件から、第1口座グループのプーリングを実施するタイミングであると判断すると、プーリングエンジン2にプーリングの開始を指示し(図5のステップS1)、プーリングエンジン2は、プーリングルール保持部5および口座グループ登録部8に登録されている、第1プーリングルールおよび第1口座グループの情報を取得する(図5のステップS2)。
【0037】
プーリングエンジン2の口座残高情報取得部9は、入手した第1口座グループに属する口座の情報に基づいて、データ連携システム13を介して勘定系システム12から第1口座グループに属する口座の口座残高情報を取得する(図5のステップS3)。
【0038】
資金移動額計算部10は、取得した口座残高情報と第1プーリングルールに従って、第1口座グループの親口座と各子口座の間で移動する資金額を算出する(図5のステップS4)。算出された資金額は、資金移動指図部11から勘定系システム12に送信され(図5のステップS5)第1口座グループの各口座の資金移動が実行される。
【0039】
同様に、顧客情報登録手段1は、プーリングルール保持部5に登録された第2プーリングルールから、第2口座グループのプーリングを実施するタイミングであると判断すると、プーリングエンジン2にプーリングの開始を指示し、プーリングルール保持部5および口座グループ登録部8に登録されている、第2プーリングルールおよび第2口座グループの情報がプーリングエンジン2に送られる。
【0040】
プーリングエンジン2の口座残高情報取得部9は、入手した第2口座グループに属する口座の情報に基づいて、データ連携システム13を介して勘定系システム12から口座残高情報を取得し、資金移動額計算部10が口座残高情報と第2プーリングルールに従って、第2口座グループの親口座と各子口座の間で移動する資金額を算出する。算出された資金額は、資金移動指図部11から勘定系システム12に送信され資金移動が実行される。
【0041】
他の口座グループについてもプーリングを実施するタイミングになると、同じ手順で親口座と子口座の間で資金移動が行われる。プーリングエンジン2は、口座グループごとに口座残高情報を取得し、移動する資金を算出し、資金の移動を指図する。このため企業グループのプーリングに参加する全ての口座情報をプーリングエンジン2が同時に処理する必要はなく、多くの会社がプーリングに参加した場合のプーリングエンジン2の負荷を軽減することができる。また、口座グループごとに異なる様々なバリエーションのプーリングルールを設定することが可能なので、国、地域、顧客の事情に応じた多様な資金移動が実現でき、プーリングルールの変更にも柔軟に対応できる。
【0042】
プーリングを実施する順序は、プーリングルール保持部5に登録する起動条件によって決めることができるので、常に第1口座グループのプーリングから実施する必要はない。階層化している複数の口座グループに対して、所定の日にプーリングを実施する場合は、下位の階層の口座グループから順にプーリングを実施することが好ましい。親口座と子口座の口座残高はプーリングの実施前後で変わる。上位の階層の口座グループのプーリングを下位の階層の口座グループのプーリングが終了後に行えば、下位の階層の口座グループの資金状況をより正確に上位の階層と口座グループのプーリングに反映することができる。
【0043】
また、例えば企業グループの拠点ごとに口座グループを作成し、プーリングルールの起動条件を各拠点の金融機関業務時間の終了時と設定すれば、業務終了時間となった拠点から順にプーリングが実施され、拠点ごとの資金管理情報を得ることができる。
【0044】
さらに、拠点ごとに口座グループを作成すれば、拠点の休日または祝日などで金融機関または会社が休業日となる口座を一括して管理することができる。例えば、休業日となる口座のプーリングを実施しない場合、口座グループごとのプーリングルールに休業日を設定すれば、個々の口座に対して休業日を設定するより効率的である。
【0045】
他にも、例えば毎日の口座残高の変動量が、図1の第1、第2口座グループに対して第3、第4口座グループでは所定の割合より少ない場合、プーリングルール保持部5に登録する起動条件の設定によって、第1、第2口座グループのプーリングは毎日実施し、第3、第4口座グループのプーリングは週末に実施とすることもできる。
【0046】
(プーリング方式の設定)
本発明の実施形態においては、プーリングルールとしてプーリングエンジン2の起動条件の他に、プーリング方式を口座グループごとに設定することもできる。ここでプーリング方式とは、親口座と子口座の間の資金移動額の算出方式であり、ゼロバランス方式、ターゲットバランス方式、ネット方式などさまざまな方式が考えられる。
【0047】
ゼロバランス方式は、図6に示すようにプーリング実施前の子口座の残高である測定時残高を、全て親口座に集中させ親口座で資金を管理する方法である。子口座Cからはプラス残高の資金が親口座に移動し(資金集中)、測定時残高が資金不足である子口座Aには親口座から不足分の資金が移動する(資金配分)。プーリング実施後の子口座の残高である着地残高は、ゼロとなるように管理される。企業グループ全体の資金がマイナスの場合は、子口座の残高がゼロになるよう親口座から資金を移動する。結果、プーリング実施後は親口座の残高のみがマイナスとなり、企業グループ全体の不足資金の借り入れを親口座で一括管理する。
【0048】
ターゲットバランス方式は、図7に示すようにプーリング実施後、子口座の着地残高が設定したターゲット残高となるように、親口座と子口座の間で資金を移動するプーリング方式である。子口座に設定するターゲット残高は、子口座ごとに異なる残高を設定できる。
【0049】
ネット方式は、図8(a)に示すように測定時残高が資金不足となった子口座が発生した場合に、不足資金分に限りプーリングを実施する方式である。例えば2Wayのプーリングでは、Day1の測定時残高が資金不足である子口座Bに子口座Aの資金から不足額に相当する50が親口座を介して移動する。Day1に移動した資金50は、翌日(Day2)に子口座Bから親口座を介して子口座Aに返却される。ネット方式ではDay1とDay2に移動する資金はそれぞれ50である。
【0050】
一方、ゼロバランス方式で2Wayのプーリングを行うと、図8(b)に示すように子口座Bの不足資金が50でも、親口座と子口座Aの間ではDay1とDay2それぞれ100の資金が移動する。ネット方式は子口座の余剰資金を全て親口座に集中し管理することはできないが、プーリングによる移動資金額を不足資金分に限ることにより、資金移動に伴うコストを小さくできるという利点がある。
【0051】
ネット方式には、口座間の資金移動額の計算方法によって、優先度方式、残高比例按分方式、優先度方式と残高比例按分方式を組み合わせた方式が考えられる。
【0052】
優先度方式は少なくとも一部の口座に優先度を設定し、優先度の高い口座から順番に資金移動を行うネットプーリング方式である。優先度方式では図9(a)のように、測定時残高が資金不足である口座がなければ資金移動は行われない。
【0053】
測定時残高が資金不足である子口座Bがある場合、図9(b)に示すように優先度1に設定されている口座(親口座)から、不足分の資金が移動しプーリング後の子口座Bの資金不足は解消する。このとき、他の子口座と親口座の資金移動は行われない。図9(c)は、優先度1の口座(親口座)から測定時残高の全てが移動しても子口座Bの資金が足りない場合である。この場合、親口座の測定時残高の全てと優先度2に設定された子口座Aから不足額に相当する資金が子口座Bに移動し、子口座Bの資金不足を解消する。
【0054】
残高比例按分方式は、各口座残高に比例した資金の移動を行う。測定時残高が資金不足である口座がなければ資金移動を行わない点は優先度方式と同じである。図9(d)に示すようにプーリング実行前、子口座Bの測定時残高がマイナスであると、残高がプラスである口座の合計額(図9(d)では、親口座の残高と子口座Aの残高の合計額)に対して各口座残高が占める比率を算出し、子口座Bの資金不足額に算出した各口座の比率を掛けた額を移動額とし、子口座Bに移動するプーリング方式である。
【0055】
具体的に図9(d)の場合、プーリング実行前の親口座の残高は200、子口座Aの残高は50である。残高がプラスである親口座と子口座Aの残高の合計額250に対して、親口座の残高の比率は80%、子口座Aの比率は20%である。残高比例按分方式では、子口座Bの資金不足額100に比率80%を掛けた80が親口座からの資金移動額、子口座Bの資金不足額100に比率20%を掛けた20が子口座Aからの資金移動額となる。このように、プラスである口座の残高に比例した資金が、プーリングの実行後は親口座とA口座からB口座に移動し、子口座Bの資金不足は解消する。
【0056】
優先度方式と残高比例按分方式を組み合わせたプーリング方式とすることも可能である。例えば、第1のルールとして優先度方式でプーリングをおこなう。結果資金不足が解消していない子口座がある場合、第2のルールとして第1のルールでプーリング後の各口座の残高に対して、残高比例按分方式でプーリングを実施するようにプーリングルールを設定する。この場合、図10(a)のように、優先順位1の口座(親口座)からの資金移動により子口座Bの資金不足が解消する場合は、それ以外の資金移動は行われない。
【0057】
しかし、例えば図10(b)のように、プーリング実行前の子口座Bの資金不足額が、優先順位の設定された口座(親口座)の残高より大きい場合、まず第1のルールとして優先度方式により優先順位1の親口座の残高全額が子口座Bに移動する。しかし、他に優先順位の設定された口座がないため、子口座Bは資金不足のまま優先度方式のプーリングは終了する。
【0058】
そして、優先度方式のプーリングに続いて残高比例按分方式のプーリングで資金の移動が行われる。図10(b)の例では子口座A、Cには優先度が設定されていないため(優先度なし)、優先度方式の対象にはならない。優先度方式で親口座(優先度1)の資金を移動しても、子口座Bは100の資金不足であるため、第2のルールとして残高比例按分方式により、優先度方式でプーリング後の残高がプラスである子口座Aと子口座Cの合計額を計算し、合計額200に対して子口座Aと子口座Cの残高が占める比率を、それぞれ75%と25%と算出する。そして、子口座Bの資金不足額100の内、75%が子口座Aから、25%が子口座Cから子口座Bに移動し子口座Bの資金不足を解消する。
【0059】
本発明の実施形態では、口座グループごとにゼロバランス方式、ターゲットバランス方式、ネット方式などいずれの方式でもプーリングルールに採用することができるため、細かな資金運用の設定が可能である。また、プーリングルール保持部5に複数のプーリング方式を保持させておき、条件によって実施するプーリング方式を選択し切り替えるシステムとすることも可能である。例えば期初、期末などの時期、企業グループ全体の資金残高などを条件とし、条件ごとに実施するプーリング方式をプーリングルール保持部5に保持させて切り替えることもできる。
【0060】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0061】
1 顧客情報登録手段
2 プーリングエンジン
3 企業グループ登録部
4 契約情報登録部
5 プーリングルール保持部
6 会社登録部
7 口座登録部
8 口座グループ登録部
9 口座残高情報取得部
10 資金移動額計算部
11 資金移動指図部
12 勘定系システム
13 データ連携システム
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