(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手持ち式動力工具の分野では、多くのユーザが、異なるエネルギー出力を必要とする様々な動力工具の作業を最適に行うために、少なくとも2組の動力工具及びバッテリパックを必要としている。
【0007】
例えば、手持ち式動力工具を使用するいくつかの場面では、その動力工具による作業を実施するために、比較的に大量の電力/エネルギーが必要とされることがある。このような状況では、第1組の動力工具及びバッテリパックが使用される。第1組のバッテリパックは、通常、少なくとも600ワットといった、比較的に大電力(MWO)を出力することができる。第1組の動力工具、特に、その電気モータ及び/又は制御電子回路は、こうした大型電源を安全に利用し得る設計となっており、それによって、動力工具又はバッテリパックに損傷を与えることなく、高負荷(高出力)の作業を実施することができる。但し、第1組の動力工具及びバッテリパックは、比較的に重量があることから、動力工具を使用する作業時に、動力工具システムを負担のかかる位置で保持する必要があると、ユーザを短時間で疲労させてしまうことがある。
【0008】
それに対して、ユーザは、比較的に低負荷(低出力)である動力工具の作業を、長時間に亘って行う予定であれば、通常、全体の重量がずっと軽量である第2組の手持ち式動力工具及びバッテリパックを好適に使用することができる。低負荷、低出力の作業の多くは、約300ワット以上を出力し得るバッテリパックを用いれば、十分に実施することができる。必要とされる出力が低くなるほど、長時間の使用でも負担が軽くて疲れないような、より軽量の動力工具/バッテリパックシステムを実現することができる。
【0009】
背景技術において上述したように、第2状況(低出力)で使用されるような、380グラムの重量で300ワットの出力を有するバッテリパックが知られているが、例えば人間工学的な改良を含む、さらなる改良が望まれている。
【0010】
本教示の一つの目的は、改良されたバッテリパック及び/又は手持ち式動力工具システムを提供することであり、好ましくは、それによって従来技術の上述した問題のうちの一又は複数を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本教示の一態様において、少なくとも300ワットの公称出力と、275グラム未満、より好ましくは250グラム以下の重量とを有するバッテリパックが開示される。こうしたバッテリパックは、好ましくは、少なくとも1100ワット/キログラム、より好ましくは、少なくとも1200ワット/キログラムの公称出力/重量比を有するとよい。
【0012】
本教示のこの態様によるバッテリパックは、重量を大幅に低減し、従ってユーザの疲労を効果的に低減しつつ、多くの低負荷の動力工具の作業において十分な出力を提供することができる。
【0013】
好ましくは、バッテリパックはさらに、少なくとも20ボルト、好ましくは約21ボルト〜30ボルト、より好ましくは25ボルトから26ボルトの間の公称出力電圧又は定格出力電圧を有し、複数の、例えば8個以下のリチウム系バッテリセルを備えることができる。リチウムイオンバッテリセルが現時点では好ましい。
【0014】
加えて、又は代えて、バッテリパックは、少なくとも300ワットの公称出力と、少なくとも1100ワット/キログラムの公称出力/重量比とを有してもよい。加えて、又は代えて、バッテリパックは、少なくとも350ワットの公称出力と、少なくとも1170ワット/キログラムの公称出力/重量比とを有してもよい。加えて、又は代えて、バッテリパックは、少なくとも370ワットの公称出力と、少なくとも1230ワット/キログラムの公称出力/重量比とを有してもよい。
【0015】
加えて、又は代えて、バッテリパックは、少なくとも300ワットの公称出力と、250グラム未満の重量とを有してもよい。このようなバッテリパックは、少なくとも1200ワット/キログラムの公称出力/重量比を有する。
【0016】
加えて、又は代えて、バッテリパックは、少なくとも330ワットの公称出力と、少なくとも1320ワット/キログラムの公称出力/重量比とを有してもよい。加えて、又は代えて、バッテリパックは、少なくとも350ワットの公称出力と、少なくとも1400ワット/キログラムの公称出力/重量比とを有してもよい。加えて、又は代えて、バッテリパックは、少なくとも370ワットの公称出力と、少なくとも1500ワット/キログラムの公称出力/重量比とを有してもよい。
【0017】
加えて、又は代えて、バッテリパックは、235グラム未満の重量を有し、少なくとも1275ワット/キログラムの公称出力/重量比を有してもよい。加えて、又は代えて、バッテリパックは、220グラム未満の重量を有し、少なくとも1360ワット/キログラムの公称出力/重量比を有してもよい。
【0018】
加えて、又は代えて、バッテリパックは、6個、7個又は8個の直列に接続されたリチウム系(Li系)バッテリセルを備えることができる。各々のバッテリセルは、3.6V〜3.7Vの公称電圧と約20グラム以下の重量とを有するとよく、例えば、リチウム(Li)イオンバッテリセルであるとよい。このようなバッテリセルを選択することにより、それぞれ、21.6V/120g、25.2V/140g、28.8V/160gという出力電圧/重量の組み合わせを実現することができる。各セルの重量は、好ましくは、約18グラム、それ以下、又は17グラムとするとよく、それにより、電圧/重量比を増大させることができる。一般に、バッテリパックの残りの構成要素(例えば、プラスチック製の外殻、コネクタ、制御電子回路、パッキング、リード等)は、約100g〜200g、例えば150g〜190gとなり得るが、好ましくは、100g〜150g、例えば100〜120gまで低減するとよく、それにより、本教示の一態様によるバッテリパックが可能になる。こうしたバッテリセルは、好ましくは、全体的な寸法が比較的に小型であるとよく、例えば、約14mm以下の直径と、約50mm以下の長さを有するとよい。このように、本教示は、軽量バッテリパックの提供に加えて、小型バッテリパックの実現も可能とする。
【0019】
本明細書ではさらに、上述の又は後述する教示に係るバッテリパックと、少なくとも600ワット、例えば700ワット超え、又は800ワット超えの公称出力を有するバッテリパックが接続されたときに安全に動作するように構成された手持ち式バッテリ式動力工具とを備える、手持ち式動力工具システム又はキットについても開示される。
【0020】
手持ち式動力工具システム又はキットはまた、好ましくは、少なくとも600ワット、例えば700ワット超え、又は800ワットを超えの出力を有する第2バッテリパックを備えることも可能である。本教示のこの態様によると、ユーザには、単一の動力工具であって、第1軽量バッテリを使用すれば、疲労を効果的に最小限に留めながら、低出力で動作させることができ、より高出力である第2バッテリパックを使用すれば、より高出力で動作させることができる動力工具が提供され、それにより、ユーザは、単一の動力工具を用いて、広範囲の動力工具の作業を実施することが可能となる。
【0021】
本教示で記載されるすべての出力(ワット)値は、単に一時的であっても、公称出力値又は定格出力値を包含するものである。本教示のいくつかの実施形態では、バッテリパックの最大持続出力は、表示された公称値又は定格値を下回ることもある。
【0022】
例えば、本教示で使用する公称出力値又は定格出力値(Wnom)は、以下の式によって計算することができる。
Wnom={(Vmid−Vmin)/Rbatt}×Vmin
ここで、Wnom[W]は公称出力であり、Vmid[V]は50%の充電状態(SOC)でのバッテリ開放電圧(OCV)であり(Li−イオンバッテリの場合、通常、Vmidは約3.7V/セルとなる)、Vmin[V]は、通常動作中のバッテリセルの最低許容電圧又は最小許容電圧であり(Li−イオンバッテリの場合、通常、Vminは約3.0V/セルとなる)、Rbatt[オーム]はバッテリ温度が25℃のときのバッテリセルのインピーダンスである。
【0023】
一般に、残存バッテリ容量(すなわちバッテリ放電状態)がゼロに近づくと、バッテリセルの電圧は急速に降下又は低下する。
【0024】
Rbattの値を、以下の手順に従って測定することができる。
(1)10秒間、5Aの電流でバッテリセルを放電し、
(2)5Aの放電電流で1.0秒の間、バッテリ電圧(=V0)を測定し、
(3)放電電流を5.0秒間の間に15Aまで徐々に増大させ、
(4)15Aの放電電流で5.0秒の間、バッテリ電圧(=V1)を測定し、
(5)dV/dI=(V0−V1)/10アンペアの式で、Rbattを計算する。
【0025】
本発明のさらなる目的、利点、特徴、実施形態及び詳細は、添付の図面を考慮しながら、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を読むことにより、当業者によって容易に理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の代表的で非限定的な実施例について詳細に説明する。この詳細な説明は、単に、本教示の好ましい態様を実施するためのさらなる詳細を、当業者に教示するためのものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。さらに、以上及び以下に開示する付加的な特徴及び教示の各々を、個別に又は他の特徴及び教示と組み合わせて利用することで、改良されたバッテリパック、動力工具及び動力工具システム、並びにそれらの製造及び使用する方法が提供される。
【0036】
さらに、以下の詳細な説明に開示する特徴及びステップの組合せは、本発明を最も広い意味で実施するという観点では、必ずしも必要なものではなく、単に、本発明の代表的な実施例を詳細に説明するために教示されたものである。さらに、後述する代表的な例のさまざまな特徴は、後の様々な独立請求項及び従属請求項と同様に、具体的にかつ明示的に列挙されていない態様で組み合わせることが可能であり、それによって、本教示に係る有用な実施形態をさらに実現することができる。
【0037】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に開示されたすべての特徴は、請求項に記載の主題を限定するためだけでなく、実施形態及び/又は請求項における特徴の特定の組合せとは無関係に、本来の書面による開示を目的として、それぞれ個別に独立して開示されることを意図したものである。さらに、すべての数値範囲又は集合体の表示についても、請求項に記載の主題を限定するためだけでなく、本来の書面による開示の目的のために、すべての取り得る中間の値又は中間の実体を開示することを意図したものである。
【0038】
図1A及び
図1Bは、本教示による軽量バッテリパック30とともに代表的な手持ち式コードレスインパクトドライバ10を示す。インパクトドライバ10は、概して、ねじビット(図示せず)といった、回転式工具を保持する工具チャック12と、歯車伝達機構及びモータハウジング14と、ハウジング14内に配置された電気モータ(図示せず)を手動で作動させるトリガ又はスイッチ16と、ハンドグリップ18と、バッテリホルダ20とを備えている。電気モータは、減速歯車伝達機構(図示せず)を介して、回転式工具を駆動することができる。
【0039】
図1Bを参照すると、バッテリパック30は、概して、外殻又は外側ケーシング32と、バッテリホルダ20に設けられた対応するレール(図示せず)と摺動可能に係合するスライドレール34と、バッテリホルダ20とバッテリパック30とを係止及びその係止を解除するラッチ36とを備えている。本教示は、バッテリパック30及び/又はバッテリホルダ20の(着脱可能な)物理的な係合構造及び電気的な接続構造について、特定の幾何学的形状又は構成に限定されない。
【0040】
ここで、
図2A及び
図2Bを参照して、バッテリパック30をさらに詳細に説明する。外側ケーシング32は、概して、ねじ33によって上部シェル32Bに接合された下部シェル32Aを備えることができる。上部シェル32Bは、本技術分野において周知であるように、バッテリホルダ20又はバッテリ充電器(図示せず)を係合させるために、及び/又は、バッテリパック30の動作のために、さまざまな構造を有している。
【0041】
回路基板40には、複数のバッテリ端子38(1つのみ数字が付されている)が設けられている。回路基板40は、任意の付加的事項であるが、隔離板としても作用することができる。本技術分野において周知であるように、回路基板40には、さまざまな電気部品を設けることができるが、簡単化のために、こうした電気部品の図示は省略されている。
【0042】
バッテリ端子38は、バッテリホルダ20に配置された対応するバッテリ端子(図示せず)と接触するために、スライドレール34に画定された溝41内に配置されている。コントローラポート用の溝42を設けることにより、工具10に配置された少なくとも1つのマイクロプロセッサ及びメモリ/記憶装置を含む第1コントローラ又はCPU(図示せず)と、バッテリパック30に配置された少なくとも1つのマイクロプロセッサ及びメモリ/記憶装置を含む第2コントローラ又はCPU(図示せず)との間の通信を可能にすることができる。空気口44は、充電中及び/又は放電(例えば動力工具10の動作)中に、バッテリパック30の内部を冷却するために、バッテリパック30内へ空気を導入することができる。
【0043】
バッテリパック30は、複数の導体(金属リード)52を介して直列に接続された複数のバッテリパック50をさらに備えている。好ましくは、6個、7個又は8個のリチウムイオンバッテリセル(公称電圧:各々3.6V〜3.7V)が直列に接続されており、バッテリパック30の公称出力電圧が、それぞれ約21.6V〜22.2V、25.2V〜25.9V及び28.8V〜29.6Vであるとよい。
【0044】
リチウム金属酸化物セルの公称電圧は、概して、約3.6V〜3.7Vの範囲内で変化し得る。本明細書では簡単化のために総じて3.6Vの値を使用しているが、実際には3.6Vから小さく変動する可能性があり、それが本明細書における計算のいくつかに影響を与えることは、明らかである。リチウム系バッテリセルが利用されるか、又は別のバッテリ用化学材料が用いられるかにかかわらず、計算に用いられる実際の値は、バッテリセルの実際の電圧に基づくべきである。
【0045】
好適な出力/重量比を達成するために、比較的に細いバッテリセル50を使用することが好ましい。こうしたバッテリセル50は、好ましくは、直径が約14mm以下、長さが約50mm以下、単位重量が約20g以下であるとよい。簡単にするために、こうしたバッテリセルを「14500タイプ」のバッテリセルと呼ぶことがある。
【0046】
例えば、7個のこうしたバッテリセルが直列に接続される場合、バッテリパック30は、約15アンペアの公称最大電流出力と、約25.2V〜25.9Vの公称出力電圧と、300ワットを超える(実際には最大約375ワット)公称出力と、約0.6アンペア時の容量と、300グラム未満、より好ましくは280グラム未満、さらに好ましくは250グラム未満の重量とを有する。
【0047】
こうした比較的に細いバッテリセル50は、さらなる利点、即ち、高い表面積/体積比を提供することができる。これにより、一般に動力工具のバッテリパックに利用されるバッテリセル(18650型のバッテリセルなど)と比較して、充電及び放電(工具10の使用)中における熱放散が大きくなる。それによって、バッテリセル50がより低温に維持されることから、バッテリを冷却するための時間をほとんど又はまったく不要とすることができ、及び/又は、バッテリの過熱が回避されることで、バッテリの耐用寿命を長くすることができる。一般に、こうしたバッテリセル50は、使用中における温度が、充電前に冷却が必要となるような加熱温度に達しない。従って、バッテリパックが冷却するのを待つことなく、充電を頻繁にかつ迅速に行うことができる。
【0048】
特に、14mmの直径(φ)と、50mmの長さを有するバッテリセルは、表面積(2506mm
2)/体積(7693mm
3)比の値が、約0.33となる。概して、本教示で利用されるバッテリセルは、体積に対する表面積の比が、少なくとも0.30であることが好ましい。
【0049】
本教示の別の態様では、バッテリセル50は、好ましくは、50ミリオーム以下、より好ましくは45ミリオーム以下、さらにより好ましくは40ミリオーム以下、の内部抵抗(Rbatt)を有するとよい。
【0050】
ここで、
図3及び
図4を利用して、本教示の別の態様について説明する。
図3A及び
図3Bに示す動力工具システムにおいても、同じインパクトドライバ10が利用されている。従って、インパクトドライバ10についての説明は不要であるとする。
【0051】
しかしながら、
図3Aでは、大型・高出力のバッテリパック130が、インパクトドライバ10に取り付けられており、より高い公称電力、好ましくは、少なくとも600ワットを出力するように構成されている。大型のバッテリパック130のすべての構成要素は、概して、
図2Bに示すバッテリパック30の対応する構成要素に対応することから、同一の構成要素についてさらに説明する必要はない。代わりに、同一の又は対応する構成要素に係る説明は、本実施形態の説明にも組み込まれるものとする。
【0052】
図1及び
図2に示す軽量バッテリパック30と比較して、高出力バッテリパック130は、一つの重要な態様において相違し、即ち、
図4Bに示すように、大型のバッテリセル150が利用されている。この実施形態では、6個〜8個、好ましくは7個のバッテリセル150が直列に接続されており、約25.2V〜25.9Vの公称出力電圧と、30アンペア以上の公称最大(ピーク)出力電流を有している。18650型のバッテリセルは、例えば日本の大阪にある三洋電機株式会社、三洋電子部品株式会社又は他のさまざまなバッテリ製造業者から入手可能であり、高出力バッテリパック130に有効に採用することができ、こうしたバッテリセル150は、18mmの直径と65mmの長さとを有している。
【0053】
比較として、18650タイプのバッテリセルは、表面積(4183mm
2)/体積(16532mm
3)比が約0.25である。こうしたバッテリセルは、充電中におけるバッテリセルの損傷を回避するために、使用後及び充電前に冷却が必要となることがある。
【0054】
従って、本教示のさらなる態様として、動力工具10、第1軽量バッテリパック30及び第2高出力バッテリパック130を備えるキット又は動力工具システムが提供される。第1軽量バッテリパック30において直列に接続されたセルの数と、第2高出力バッテリパック130において直列に接続されたセルの数とが互いに同じであって、第1軽量バッテリパック30の公称電圧と、第2高出力バッテリパック130の公称電圧とが、互いに等しいことが好ましい。このキット又はシステムによると、ユーザは、基本的に同じタイプの動力工具の作業を一定の範囲で行うために、サイズ又は設計が異なる二つの動力工具を購入する必要がなく、有利である。さらに、ユーザは、比較的に低出力の作業を行うときは、動力工具10に軽量バッテリパック30を取り付けることで、自己の疲労を最小限にしながら、動力工具の作業を行うことができる。一方、ユーザは、高出力(高負荷)な動力工具の作業が必要であるときは、本教示に従って、同じ動力工具10をそのまま使用しながら、軽量バッテリパック30を高出力バッテリパック130と交換することができ、それによって作業コストを最小化することができる。
【0055】
本教示のさらなる好ましい態様では、二つのバッテリパック30、130が、公称出力(ワット数)が異なる一方で、例えば21V〜30Vの間において、同じ公称出力電圧を有することができる。この特徴によると、両バッテリパック30、130を充電するために、同じ充電器又は充電システムを使用することができ、さらに、工具10は、いずれのバッテリパック30、130によっても、概して同じ速度(例えば回転速度)で動作するとことができ、有利である。その一方で、高出力バッテリパック130は、より高い電流値を出力することができるので、高出力バッテリパック130を使用することによって、工具10をより高出力トルクで動作させることができる。
【0056】
こうしたキット又はシステムは、同じ公称電流を出力するためにサイズが異なるバッテリパックを必要とする米国特許出願公開第2003/0203669A1号に開示された既知のシステムと比較して、明確な利点をもたらす。なぜなら、低出力のバッテリパックを使用すると、工具の回転速度が低速になることから、動力工具の作業が想定外に遅くなってしまうためである。一般に、電気モータの回転速度は、電気モータに供給される電圧によって決まり、電気モータのトルクは、電気モータに供給される電流によって決まる。他の手法として、こうした既知の設計では、バッテリ電圧に関らず同じ回転速度を実現するために、追加の可変動力伝達機構を動力工具に組み込む必要があり、それにより、工具の重量が想定外に増大することがある。
【0057】
本教示の内容は、インパクトドライバ10に限定されず、様々な手持ち式のコードレスバッテリ式工具で有効に利用することができる。例えば、
図5A及び
図5Bは、手持ち式のコードレス(バッテリ式)サーキュラソー70を、上述した軽量バッテリパック30が取り付けられた状態及び取り外された状態でそれぞれ示す。サーキュラソー70は、概して、サーキュラソーブレード72と、歯車伝達機構及びモータハウジング74と、ハウジング74内に配置された電気モータ(図示せず)を手動で作動させるトリガ又はスイッチ76と、ハンドグリップ78と、バッテリホルダ80とを備えている。電気モータは、例えば、減速歯車伝達機構(図示せず)を介してサーキュラソー70を駆動する。
【0058】
図示しないが、サーキュラソー70はまた、高負荷な切断作業においては、高出力バッテリパック130を利用するように設計されている。
【0059】
同様に、
図6及び
図7は、上述したバッテリパック30、130の両方を利用することができる手持ち式のコードレス(バッテリ式)ドライバードリル又はスクリュウドライバ90を示す。より詳細には、
図6A及び
図6Bは、バッテリ式ドライバードリル90を、上述した軽量バッテリパック30が取り付けられた状態及び取り外された状態でそれぞれ示す。さらに、
図7A及び
図7Bは、バッテリ式ドライバードリル90を、上述した高出力バッテリパック130が取り付けられた状態及び取り外された状態でそれぞれ示す。
【0060】
図6Aを参照すると、ドライバードリル90は、概して、ドライバービット又はドリルビット(図示せず)等の回転式工具を保持するように構成された又は適合された工具チャック92と、歯車伝達機構及びモータハウジング94と、ハウジング94内に配置された電気モータ(図示せず)を手動で作動させるトリガ又はスイッチ96と、ハンドグリップ98と、バッテリホルダ100とを備えている。電気モータは、例えば減速歯車伝達機構(図示せず)を介して、回転式工具を駆動する。
【0061】
従って、上述した説明が示すように、本教示は、概して、上述した利点によって効果を得ることができる、あらゆるタイプの手持ち式、コードレス、バッテリ式工具に適用することができる。本教示のいくつかの態様による動力工具は、好ましくは、公称出力が少なくとも600ワットであるバッテリパック(例えばバッテリパック130)を用いて安全に動作するように構成され、適合され、及び/又は使用可能であるとよい。しかしながら、こうした動力工具はまた、本教示による軽量バッテリパック30を使用することによって、比較的に低出力の電力範囲で動作することも可能である。
【0062】
例えば、本教示のいくつかの態様では、一つの動力工具に対して軽量バッテリパックと高出力バッテリパックとを提供することにより、以下の利点のうちの一つ又は複数をもたらすことができる。
【0063】
高出力バッテリパックは、そのインピーダンスが低いことから、比較的大きい電流を供給することができる。従って、高出力バッテリパックに取り付けられたインパクトドライバは、大型のねじを適切な速度で駆動することができる。一方において、インパクトドライバは、本教示による軽量バッテリパックに取り付けられた場合でも、軽量バッテリパックが高出力バッテリパックと略同一の電圧を供給し得ることから、やはり略同一の速度で小型のねじを駆動することができる。
【0064】
同様に、高出力のパックに取り付けられたドライバードリルは、高出力バッテリパックがより大きい電流を出力することができるために、比較的に大型の穴をあけることができるが、この場合もまた、同一の(又は略同一の)公称出力電圧を供給する軽量バッテリパックが使用されるときは、小型の穴を適切にあけることができる。
【0065】
さらに、高出力バッテリパックに取り付けられたサーキュラソーは、高出力バッテリパックが大きい電流を出力することができることから、より厚い木片を切断することができる。それに対して、薄い木片に対しては、軽量バッテリパックがやはり適している。
【0066】
上記は単に例示であり、実際の工具性能は、実際に使用されるバッテリパック及び動力工具の特性によって決まる。
【0067】
本教示の任意の付加的な態様によれば、本教示による動力工具10、70、90は、動力工具10、70、90のモータ及び/又はバッテリセル50を流れる電流を検出し、例えば30アンペアを超えるような、閾値を超える電流値が検出された場合に、電流を遮断又は制限する電流制限回路又は放電保護回路をさらに含むことも有効である。こうした電流制限回路は、高電流値で安全に動作するように設計されていないモータ、歯車伝達機構、電子回路及び/又はバッテリパックを保護するために、閾値電流未満で動作するように設計された動力工具及び/又はバッテリパックにおいて有効である。こうした電流制限回路によると、公称ワット数が異なる一方で、公称出力電圧が同一である各種のバッテリパックを、動力工具及び/又はバッテリパックの内部構成要素が、過大な電流の発生によって損傷するという問題を避けながら、利用することができるという利点がもたらされる。
【0068】
本教示による動力工具システムには、さらなる任意の付加的な利点が得られるような設計を、さらに加えることができる。特に、軽量バッテリパック30が、T字形又はL字形の工具、例えばインパクトドライバ10又はドライバードリル90で利用される場合、工具の重心は、好ましくは、工具の上半分側に位置するとよい。例えば、重心は、好ましくは、トリガ16、96の垂直方向(即ち、概してハンドグリップ18、98をたどる方向であって、トリガ16、96のハウジング14、94及びバッテリホルダ20、100と交差する方向)の高さ範囲内に位置するとよい。この場合、多くの動力工具の作業に対して、最適な重量バランスがもたらされるので、動力工具10、90の取扱い又は操作が容易になる。
【0069】
現時点では、リチウム系バッテリセル、特にリチウムイオンバッテリセルが好ましいが、この点に関して本教示は特に限定されるものではなく、バッテリパックは、例えばリチウム金属酸化物、リチウムポリマー、リチウム金属リン酸塩、及びリチウム硫黄又はリチウム硫化物又はリチウム硫酸塩といった、他のあらゆる好適なバッテリ用の化学材料を用いて構成することができる。
【0070】
本教示のさらなる例示的な実施形態は、限定されるものではないが、以下を含む。
【0071】
1.手持ち式動力工具に取り付けられ、それを駆動するように構成された又は適合されたバッテリパックであって、
少なくとも300ワット、より好ましくは少なくとも330ワット、さらにより好ましくは350ワット以上の公称出力を有するように構成された又は適合された、直列に接続された複数のバッテリセルを備え、
300グラム未満、より好ましくは275グラム未満、より好ましくは250グラム未満、より好ましくは235グラム未満、さらにより好ましくは220グラム未満の重量を有するバッテリパック。
【0072】
2.少なくとも1000ワット/キログラム、好ましくは少なくとも1100ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1170ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1200ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1230ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1275ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1320ワット/キログラム、さらにより好ましくは少なくとも1350ワット/キログラム、さらにより好ましくは少なくとも1400ワット/キログラム、さらにより好ましくは少なくとも1500ワット/キログラムの公称出力/重量比をさらに有する、上記形態1によるバッテリパック。
【0073】
3.手持ち式動力工具に取り付けられ、それを駆動するように構成された又は適合されたバッテリパックであって、
少なくとも300ワット、より好ましくは少なくとも330ワット、さらにより好ましくは350ワット以上の公称出力を有するように構成された又は適合された、直列に接続された複数のバッテリセルを備え、
少なくとも1000ワット/キログラム、好ましくは少なくとも1100ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1170ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1200ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1230ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1275ワット/キログラム、より好ましくは少なくとも1320ワット/キログラム、さらにより好ましくは少なくとも1350ワット/キログラム、さらにより好ましくは少なくとも1400ワット/キログラム、さらにより好ましくは少なくとも1500ワット/キログラムの公称出力/重量比を有するバッテリパック。
【0074】
4.300グラム未満、好ましくは275グラム未満、より好ましくは250グラム未満、より好ましくは235グラム未満、さらにより好ましくは220グラム未満の重量をさらに有する、上記形態3によるバッテリパック。
【0075】
5.20ボルトを超える、例えば約21ボルトから30ボルトの間の公称出力電圧をさらに有する、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0076】
6.8個以下のリチウム系バッテリセル、例えば6個から8個のバッテリセル、例えばリチウムイオンバッテリセルを備える、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0077】
7.各々のバッテリセルが、約0.30以上、より好ましくは0.33以上の、体積に対する表面積の比を有する、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0078】
8.各々のバッテリセルが、円柱形状であって、約14mm以下の直径を有する、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0079】
9.各々のバッテリセルが、約55mm以下、より好ましくは50mm以下の長さを有する、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0080】
10.約18アンペア以下、より好ましくは15アンペア以下の公称出力電流を有する、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0081】
11.約1アンペア時以下、好ましくは約0.9アンペア時以下、より好ましくは約0.8アンペア時以下、さらにより好ましくは約0.5アンペア時〜0.7アンペア時の間の公称容量を有する、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0082】
12.直列に接続され、公称出力電圧が約25ボルトである、7個のリチウムイオンバッテリセルを備える、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0083】
13.手持ち式動力工具のバッテリ端子に電気的に接続されるように構成された又は適合された一つ又は複数のバッテリ端子、コントローラ通信ポート、スライドレールといった、バッテリパックを手持ち式動力工具のバッテリホルダに係合させる係合手段、及び/又は、ユーザが操作可能なラッチといった、バッテリパックを手持ち式動力工具に取外し可能に係止する係止手段をさらに備える、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0084】
14.バッテリセルを流れる電流量を制限するように構成され、例えばその電流閾値が18アンペア以下、より好ましくは15アンペア以下である電流制限回路をさらに備える、上記したいずれかの形態によるバッテリパック。
【0085】
15.動力工具システム又はキットであって、
600ワット以上、より好ましくは700ワット以上、さらにより好ましくは800ワット以上の公称出力を有するバッテリパックで動作するように構成された手持ち式バッテリ式工具と、
上記したいずれかの形態によるバッテリパックと、
を備える動力工具又はキット。
【0086】
16.手持ち式バッテリ式工具は、工具ハウジング、工具ハウジング内に配置された電気モータと動力伝達機構、及び/又は、動力伝達機構を駆動するように電気モータを作動させるように構成されたトリガを備える、上記形態15による動力工具システム又はキット。
【0087】
17.手持ち式バッテリ式工具が、少なくとも実質的に、全体としてL字形又はT字形であるとともに、垂直方向に関してモータハウジングとバッテリホルダとの間に配置されるトリガを備え、
バッテリパックがバッテリホルダに取り付けられたときに、全体の重心が、垂直方向においてトリガの高さ範囲内に位置する、上記形態15又は16による動力工具システム又はキット。
【0088】
18.少なくとも600ワット、より好ましくは少なくとも700ワット、さらにより好ましくは少なくとも800ワットの公称出力を有し、実施形態1〜14のバッテリパックと少なくとも実質的に同一の出力電圧を有する第2バッテリパックをさらに備え、
手持ち式バッテリ式工具が、両バッテリパックに取り付けられ、それらによって駆動されるように構成されている、上記形態15、16又は17による動力工具システム又はキット。
【0089】
19.手持ち式バッテリ式工具が、手持ち式バッテリ式工具の電子モータ及び/又はバッテリパックに流れる電流量を制限するように構成された電流制限回路をさらに備える、上記形態15〜18のいずれか一つによる動力工具システム又はキット。
【0090】
20.電流制限回路が、30アンペアの上限電流閾値を有する、上記形態19による動力工具システム又はキット。
【0091】
21.上記形態1〜14のバッテリパック及び上記形態18の第2バッテリパックを充電可能に構成された又は適合された充電器をさらに備え、
両者のバッテリパックは、例えば約21V〜30Vといった、同一又は略同一の公称出力電圧を有する、上記形態18〜20のいずれか一つによる動力工具システム又はキット。
【0092】
22.手持ち式バッテリ式工具が、インパクトドライバ、サーキュラソー又はドライバードリルである、上記形態15〜21のいずれか一つによる動力工具システム又はキット。
【0093】
23.手持ち式バッテリ式工具が、2キログラム未満、より好ましくは1.5キログラム未満、より好ましくは1.3キログラム未満、さらにより好ましくは1.0キログラム未満の重量を有する、上記形態15〜22のいずれか一つによる動力工具システム又はキット。
【0094】
24.バッテリセル50が、好ましくは50ミリオーム以下、より好ましくは45ミリオーム以下、さらにより好ましくは40ミリオーム以下の内部抵抗(Rbatt)を有する、上記したいずれかの形態による動力工具システム又はキット。
25.リチウムイオンセルを電源とし、電気モータによって工具を駆動する動力工具であって、
前記リチウムイオンセルは、14500タイプのバッテリセルを含むとともに、前記電気モータが工具を駆動するのに十分な出力を有し、
ユーザが前記動力工具に設けられたスイッチを操作することによって、前記リチウムイオンセルから前記電気モータへ電力が供給される、動力工具。
26.前記14500タイプのバッテリセルは、14ミリメートル以下の直径と50ミリメートル以下の長さを有する、項目25に記載の動力工具。
27.前記14500タイプのバッテリセルは、14ミリメートルの直径と50ミリメートルの長さを有する、項目25に記載の動力工具。
28.前記リチウムイオンセルは、直列に接続された複数の14500タイプのバッテリセルを含む、項目25から27のいずれか一項に記載の動力工具。
29.前記リチウムイオンセルから前記電気モータへ供給される電流を検出する電流検出手段が設けられており、
前記電流検出手段は、検出された電流値が所定の値を超えたときに、前記リチウムイオンセルから前記電気モータへ供給される電流を遮断又は制限する、項目25から28のいずれか一項に記載の動力工具。
30.リチウムイオンセルを電源とし、電気モータによって工具を駆動する動力工具であって、
前記リチウムイオンセルは14500タイプのバッテリセルを含むとともに、前記動力工具のハウジングに装着可能なバッテリパックに設けられており、
前記バッテリパックは、前記モータが前記工具を駆動するのに十分な出力を有し、
ユーザが前記動力工具に設けられたスイッチを操作することによって、前記リチウムイオンセルから前記電気モータへ電力が供給される、動力工具。
31.動力システムであって、
工具を駆動する電気モータを有する動力工具と、
前記動力工具に装着可能であり、前記電気モータへ電力を供給するリチウムイオンセルを有する第1バッテリパックと、
前記第1バッテリパックに代えて前記動力工具に装着可能であり、前記電気モータへ電力を供給するリチウムイオンセルを有する第2バッテリパックと、
を備え、
前記第1バッテリパックの公称電圧と前記第2バッテリパックの公称電圧は互いに等しく、
前記第1バッテリパックのリチウムイオンセルは、14500タイプのバッテリセルである、動力工具システム。
32.前記第1バッテリパックのリチウムイオンセルの体積に対する表面積の比は、前記第2バッテリパックのリチウムイオンセルの体積に対する表面積の比よりも大きい、項目31に記載の動力工具システム。
33.前記第2バッテリパックのリチウムイオンセルは、16500タイプのバッテリセルである、項目31又は32に記載の動力工具システム。