(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
様々な好ましい特徴および実施形態を、非限定的な説明によって以下に説明する。
【0012】
十分に配合された潤滑剤(トップトリートとして添加されてもよく、または製造者によって含有されてもよい成分を含む)は、1つの成分として潤滑粘性のある油を含み、基油とも称せられる。基油は、American Petroleum Institute (API) Base Oil Interchangeability GuidelinesのグループI〜Vにおける基油のうちのいずれかから選択され得る。すなわち、
基油カテゴリー 硫黄分(%) 飽和分(%) 粘度指数
グループI >0.03および/または <90 80〜120
グループII ≦0.03および ≧90 80〜120
グループIII ≦0.03および ≧90 >120
グループIV すべてのポリアルファオレフィン(PAO)
グループV グループI、グループII、グループIII、またはグループIVに含まれない他のすべて。
【0013】
グループI、グループII、およびグループIIIは鉱油ストックである。潤滑粘性のある油は、天然または合成油およびそれらの混合物を含み得る。鉱油および合成油の混合物、例えば、ポリアルファオレフィン油および/またはポリエステル油が使用され得る。
【0014】
天然油としては、動物油および植物油(例えば、植物酸エステル)、ならびにパラフィンタイプ、ナフテンタイプ、または混合パラフィン−ナフテンタイプの液状石油および溶媒処理または酸処理された鉱油系潤滑油などの鉱油系潤滑油が挙げられる。水素化処理油または水素化分解油は、潤滑粘性のある有用な油でもある。石炭または頁岩に由来する潤滑粘性のある油も有用である。
【0015】
合成油としては、ポリマー化オレフィンおよびインターポリマー化オレフィンならびにそれらの混合物、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィドならびにそれらの誘導体、それらのアナログおよびホモログなどの炭化水素油およびハロ置換炭化水素油が挙げられる。アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマー、およびそれらの誘導体、ならびに末端ヒドロキシル基が、例えば、エステル化またはエーテル化により修飾されたものは、他のクラスの合成潤滑油である。他の適切な合成潤滑油としては、ジカルボン酸のエステル、ならびにC5〜C12のモノカルボン酸、およびポリオールまたはポリオールエーテルからなるものが挙げられる。他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液状エステル、高分子テトラヒドロフラン、ポリ−アルキル−シロキサン油およびシリケート油、ポリアリール−シロキサン油およびシリケート油、ポリアルコキシ−シロキサン油およびシリケート油、またはポリアリールオキシ−シロキサン油およびシリケート油などのケイ素系油が挙げられる。さらに他の合成油としては、フィッシャー−トロプシュ反応によって製造されたもの、典型的な水素化異性化フィッシャー−トロプシュ炭化水素またはワックスが挙げられる。一実施形態では、油は、フィッシャー−トロプシュGTL(gas−to−liquid)合成手順、ならびに他のGTL油によって調製され得る。
【0016】
上に開示されたタイプの天然または合成(ならびにその混合物)のいずれかの、未精製、精製、および再精製の油が使用され得る。未精製油は、さらなる精製処理なしで天然源または合成源から直接得られるものである。精製油は、1つ以上の精製ステップでさらに処理されて1つ以上の特性を改善する以外は未精製油に類似する。再精製油は、既に使用されている精製油に適用される、精製油を得るために使用されるものに類似するプロセスによって得られる。再精製油は、多くの場合さらに加工されて、使用済みの添加剤および油分解生成物が取り除かれる。
【0017】
本発明の組成物はまた、1つ以上の清澄剤も含む。清澄剤は典型的に過塩基化物質であり、他に過塩基化塩または超塩基化塩と称せられ、それらは、金属および清澄剤アニオンの化学量論に従う中和のために存在する金属含有量を超えて金属含有量を有する通常の均質なニュートン系である。過剰金属の量は、金属比、すなわち、酸性有機化合物の当量に対する金属の合計当量の比によって一般に表される。過塩基化物質は、酸性物質(二酸化炭素など)を、酸性有機化合物、不活性反応媒体(例えば、鉱油)、化学量論的に過剰の金属塩基、およびフェノールまたはアルコールなどの促進物質と反応させることによって調製される。酸性有機物質は、通常、油溶性をもたらすために十分な数の炭素原子を有する。
【0018】
過塩基化清澄剤は、物質の塩基性の全てを中和するのに必要とされる強酸の量であって、mgKOH/試料のgで表される、総塩基数(Total Base Number)(TBN)によって特徴付けられ得る。過塩基化清澄剤が本明細書の目的で、希釈油を含む形態で一般にもたらされるので、TBNは油を含まない基準で再計算される。いくつかの有用な清澄剤は、100〜800、または150〜750、または400〜700のTBNを有し得る。特定の実施形態では、清澄剤は、70〜270、140〜250、または180〜220などの比較的より低いTBNを有し得る。
【0019】
塩基性金属塩を作製するのに有用な金属化合物は、通常第1属または第2属のいずれかの金属化合物(CAS版の元素周期表)である。例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、銅、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、およびカドミウムなどのアルカリ金属が挙げられる。一実施形態では、金属はナトリウム、マグネシウム、またはカルシウムである。塩のアニオン部分は、水酸化物、酸化物、カーボネート、ボレート、またはニトレートである。
【0020】
一実施形態では、潤滑剤は過塩基化スルホネート清澄剤を含むことができる。適切なスルホン酸としては、モノもしくはポリ核芳香族または脂環式化合物を含めて、スルホン酸およびチオスルホン酸が挙げられる。特定の油溶性スルホネートは、R
2−T−(SO
3−)
aまたはR
3−(SO
3−)
bによって表すことができ、式中、aおよびbはそれぞれ少なくとも1である;Tはベンゼンまたはトルエンなどの環状核である;R
2は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、またはアルコキシアルキルなどの脂肪族基である;(R
2)−Tは、典型的に合計少なくとも15個の炭素原子を含む;R
3は、典型的に少なくとも15個の炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。T、R
2、およびR
3基は他の無機または有機置換基を含むこともできる。一実施形態では、スルホネート清澄剤は、米国特許出願第2005065045号の段落[0026]〜[0037]に記載されているように少なくとも8の金属比を有する主として直鎖アルキルベンゼンスルホネート清澄剤であってもよい。いくつかの実施形態では、直鎖アルキル基は、アルキル基の直鎖に沿ってどの位置にでも、しかし多くの場合、直鎖の2、3、または4位に、いくつかの場合では主として2位でベンゼン環に結合され得る。
【0021】
他の過塩基化物質は過塩基化フェネート清澄剤である。フェネート清澄剤を作製するのに有用なフェノールは(R
1)
a−Ar−(OH)
bで表すことができ、式中、R
1は4〜400または6〜80または6〜30または8〜25または8〜15個の炭素原子の脂肪族ヒドロカルビル基である;Arはベンゼン、トルエン、またはナフタレンなどの芳香族基である;aおよびbはそれぞれ少なくとも1であり、aおよびbの和は1〜4または1〜2などのArの芳香族核上の置換可能な水素の数までの範囲である。それぞれのフェノール化合物についてR
1基によってもたらされる脂肪族炭素原子の平均は、典型的には少なくとも8個である。フェネート清澄剤も、時として硫黄架橋種として提供される。
【0022】
一実施形態では、過塩基化物質は過塩基化サリゲニン清澄剤である。過塩基化サリゲニン清澄剤は、サリゲニン誘導体に基づく一般の過塩基化マグネシウム塩である。そのようなサリゲニン誘導体の通常の例は、下記式:
【0023】
【化1】
によって表すことができ、式中、Xは−CHOまたは−CH
2OHであり、Yは−CH
2−または−CH
2OCH
2−であり、−CHO基は、典型的に少なくとも10モル%のXおよびY基を含む;Mは、水素、アンモニウム、または金属イオンの価数であり(すなわち、Mが多価の場合、価数の1つは説明される構造によって満たされ、他の価数はアニオンなどの他の種または同じ構造の別の場合によって満たされる)、R
1は1〜60個の炭素原子のヒドロカルビル基であり、mは0〜典型的に10であり、各pは独立して0、1、2、または3であるが、ただし少なくとも1つの芳香環がR
1置換基を含み、すべてのR
1基中の炭素原子の総数は少なくとも7である。mが1以上である場合、X基のうちの1つは水素であり得る。一実施形態では、Mは、Mgイオンの価数またはMgと水素の混合物である。サリゲニン清澄剤は、米国特許第6,310,009号により詳細に開示され、それらの合成方法(8欄および実施例1)、ならびにXおよびYの様々な種の好ましい量(6欄)を特別に参照されたい。
【0024】
サリキサレート清澄剤は、少なくとも下記式(I)または式(II):
【0025】
【化2】
の一単位を含む化合物によって表すことができる、過塩基化物質であり、化合物の各端部は下記式(III)または(IV):
【0026】
【化3】
の末端基を有し、そのような基は二価の架橋基Aによって連結されており、二価の架橋基Aは同一または異なっていてもよい。式(I)〜(IV)中、R
3は水素、ヒドロカルビル基、または金属イオンの価数である;R
2はヒドロキシル基またはヒドロカルビル基であり、jは0、1、または2である;R
6は、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基である;R
4はヒドロキシルであり、R
5およびR
7は独立して水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基であるか、あるいは、R
5およびR
7は両方ともヒドロキシであり、R
4は、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基である;ただしR
4、R
5、R
6、およびR
7の少なくとも1つが少なくとも8個の炭素原子を含むヒドロカルビルである;分子は、平均して、単位(I)または(III)の少なくとも1つ、および単位(II)または(IV)の少なくとも1つを含み、組成物中の(II)および(IV)の単位の総数に対する単位(I)および(III)の総数の比が0.1:1〜2:1である。二価の架橋基「A」は、各存在において同一または異なっていてもよく、−CH
2−および−CH
2OCH
2−が挙げられ、それらのどちらかはホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド同等物(例えば、パラホルム、ホルマリン)から誘導されてもよい。
【0027】
サリキサレート誘導体およびそれらの調製方法は、米国特許第6,200,936号および国際公開第01/56968号により詳細に説明されている。サリキサレート誘導体は大環状構造というより主として直鎖構造を有すると考えられているが、両方の構造は、用語「サリキサレート」によって包含されるように意図される。
【0028】
グリオキシレート清澄剤はアニオン基に基づく同様の過塩基化物質であり、一実施形態では、以下の構造:
【0029】
【化4】
を有し得、式中、各Rは独立して少なくとも4個または8個の炭素原子を含むアルキル基であるが、ただしすべてのそのようなR基中の炭素原子の総数は、少なくとも12個または16個または24個である。あるいは、各Rはオレフィンポリマー置換基であり得る。過塩基化グリオキシレート清澄剤が調製される酸性物質は、ヒドロキシ芳香族物質、例えば、ヒドロカルビル置換フェノールと、グリオキシル酸または他のオメガ−オキソアルカン酸などのカルボン酸反応物との縮合生成物である。過塩基化グリオキシル清澄剤およびそれらの調製方法は、米国特許第6,310,011号およびそこに引用された文献により詳細に説明されている。
【0030】
過塩基化清澄剤は、過塩基化サリチレート、例えば、置換サリチル酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩でもあり得る。サリチル酸はヒドロカルビル置換されてもよく、ここで、各置換基が一置換基当たり平均少なくとも8個の炭素原子および一分子当たり1〜3個の置換基を含む。置換基はポリアルケン置換基であり得る。一実施形態では、ヒドロカルビル置換基は7〜300個の炭素原子を含んでおり、150〜2000の分子量を有するアルキル基であり得る。過塩基化サリチレート清澄剤およびそれらの調製方法は、米国特許第4,719,023号および同第3,372,116号に開示されている。
【0031】
他の過塩基化清澄剤としては、米国特許第6,569,818号に開示されるように、マンニッヒ塩基構造を有する過塩基化清澄剤を挙げることができる。
【0032】
特定の実施形態では、上記清澄剤(例えば、フェネート、サリゲニン、サリキサレート、グリオキシレート、またはサリチレート)中のヒドロキシ置換芳香環上のヒドロカルビル置換基は、C
12脂肪族ヒドロカルビル基がないか、または実質的にない(例えば、置換基の1重量%未満、0.1重量%未満、または0.01重量%未満がC
12脂肪族ヒドロカルビル基である)。いくつかの実施形態では、そのようなヒドロカルビル置換基は、少なくとも14個または少なくとも18個の炭素原子を含む。
【0033】
過塩基化清澄剤の量は、本技術の配合物において、典型的に、油を含まない基準で少なくとも0.6重量%、または0.7〜5重量%、または1〜3重量%である。単一の清澄剤または複数の清澄剤のいずれかが存在することができる。
【0034】
本組成物中の他の成分は分散剤である。分散剤は潤滑剤の分野で周知であり、無灰分散剤および高分子分散剤として公知のものを主として含む。無灰分散剤は、供給されるときに金属を含まず、したがって潤滑剤に添加される場合に通常硫酸灰分に寄与しないので、そのように呼ばれる。しかし、もちろん、無灰分散剤が、一旦、金属含有種を含む潤滑剤に添加されれば、周囲の金属と相互に作用し得る。無灰分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合された極性基によって特徴付けられる。典型的な無灰分散剤としては、典型的に以下:
【0035】
【化5】
を含む様々な化学構造を有するN置換長鎖アルケニルスクシンイミドが挙げられ、式中、各R
1は独立してアルキル基であり、高い頻度で、ポリイソブチレン前駆体に基づく500〜5000の分子量(Mn)を有するポリイソブチレン基であり、R
2はアルキレン基、一般にエチレン(C
2H
4)基である。そのような分子は、一般にポリアミンとアルケニルアシル化剤の反応から誘導され、上記の単純イミド構造に加えて2つの部分(moiety)間の種々の連結が可能であり、これには、種々のアミドおよび第4級アンモニウム塩が含まれる。上記構造では、アミン部分はアルキレンポリアミンとして示されるが、他の脂肪族ならびに芳香族モノおよびポリアミンも使用され得る。また、様々な環状連結を含めて、イミド構造へのR
1基の様々な連結様式が可能である。アミンの窒素原子に対するアシル化剤のカルボニル基の比は1:0.5〜1:3であり得、他の場合、1:1〜1:2.75または1:1.5〜1:2.5であり得る。スクシンイミド分散剤は、米国特許第4,234,435号、同第3,172,892号、および欧州特許第0355895号により十分に記載されている。
【0036】
他のクラスの無灰分散剤は高分子量のエステルである。これらの物質は、ヒドロカルビルアシル化剤とグリセロール、ペンタエリスリトール、またはソルビトールなどの多価脂肪族アルコールの反応によって調製されたとして見られ得ることを除いて、上記スクシンイミドに類似している。そのような物質は、米国特許第3,381,022号により詳細に記載されている。
【0037】
他のクラスの無灰分散剤はマンニッヒ塩基である。これらは、より高い分子量のアルキル置換フェノールと、アルキレンポリアミンと、ホルムアルデヒドなどのアルデヒドとの縮合によって形成される物質である。そのような物質は下記一般構造:
【0038】
【化6】
を有していてもよく(様々な異性体などを含む)、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0039】
他の分散剤は高分子分散添加剤を含み、それらは、通常ポリマーに分散特性を付与するための極性官能性を含む炭化水素系ポリマーである。
【0040】
分散剤はまた、様々な化学物質(agent)のうちのいずれかとの反応によって後処理することもできる。これらは、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、およびリン化合物である。そのような処理を詳述する文献は、米国特許第4,654,403号に列挙されている。
【0041】
本技術の完全に配合された潤滑剤中の分散剤の量は、潤滑
剤組成物の少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.3重量%または0.5重量%または1重量%であり得、特定の実施形態では、最大で9重量%または8重量%または6重量%または4重量%または3重量%または2重量%であり得る。
【0042】
潤滑剤はリンの酸の金属塩も含む。下記式:
【0043】
【化7】
(式中、R
8およびR
9は、独立して3個から30個までまたは20個まで、16個まで、または14個までの炭素原子を含むヒドロカルビル基である)の金属塩は周知であり、五硫化リン(P
2S
5)とアルコールまたはフェノールとの反応によって、下記式:
【0044】
【化8】
に対応するO,O−ジヒドロカルビルホスホロジチオ酸を形成することによって容易に取得可能である。
【0045】
反応は、20℃〜200℃の温度で、4モルのアルコールまたはフェノールと、1モルの五硫化リンとを混合することを含む。この反応において硫化水素が遊離する。次いで、酸を塩基性金属化合物と反応させて塩を形成させる。価数nを有する金属Mは、通常アルミニウム、鉛、スズ、マグネシウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、または銅であり、最も好ましくは亜鉛である。したがって、塩基性金属化合物は、好ましくは、酸化亜鉛であり、得られる金属化合物は、下記式:
【0047】
R
8基およびR
9基は、独立してヒドロカルビル基であり、典型的には、アセチレン不飽和物を含まず、普通は、エチレン不飽和物を含まない。それらは典型的に、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、またはアルカリール(alkaryl)基であり、3個から16個、までまたは13個までの炭素原子、例えば、3〜12個の炭素原子などの3〜20個の炭素原子を有する。R
8基およびR
9基をもたらすよう反応するアルコールは、第2級アルコールと第1級アルコールとの混合物であり得、例えば、2−エチル−ヘキサノールと2−プロパノールとの混合物、あるいは2−プロパノールおよび4−メチル−2−ペンタノールなどの第2級アルコールの混合物であり得る。
【0048】
このような亜鉛塩は、多くの場合、ジアルキルジチオリン酸亜鉛または単にジチオリン酸亜鉛と称される。それらは周知であり、そして潤滑配合物の分野の当業者にとっては容易に入手可能である。特定の実施形態では、ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、潤滑剤からのリンの揮発度を低減するために、すなわち、潤滑剤中のリンの保持を増大させるために選択されたR
8基およびR
9基を有し得る。エンジン中の良好なリンの保持をもたらすための適切な配合物は、例えば、米国特許出願公開第2008−0015129号に開示されており、例えば、特許請求の範囲を参照されたい。
【0049】
完全に配合された潤滑剤中のリンの酸の金属塩の量は、存在する場合、典型的に0.1〜4重量%であり、いくつかの実施形態では、0.5〜2重量%または0.75〜1.25重量%である。濃縮物におけるその濃度は、例えば、5〜20重量%までそれに対応して増加する。
【0050】
本技術はまた、少なくとも約8個の炭素原子のヒドロカルビル置換基を有するヒドロキシアルキル置換イミダゾリンも含み、ヒドロキシアルキル置換基は2〜約8個の炭素原子を含む。このクラスの物質は、前述の成分を含む潤滑剤中の金属と金属の摩擦係数を低減するのに有効であり得る。
【0051】
置換イミダゾリンの量は、金属と金属の摩擦係数を適度に低減するのに適切な量になる。そのような量は、典型的に0.01〜5重量%、または0.025〜2.5重量%、または0.05〜2重量%、または0.1〜1重量%、または0.2〜0.7重量%であり得る。
【0052】
イミダゾリンは、通常、カルボン酸であるR(O)OH、またはその反応同等物とジアミンまたはポリアミンとの縮合などの公知の方法によって調製され得る。ヒドロキシアルキルイミダゾリンの場合には、対象とするアミンは、HO−CH
2CH
2NHCH
2CH
2NH
2などの構造であり得るが、ヒドロキシ基が結合された特定のアルキレン基を含んで、そのような構造にはかなりの変形があり得る。
【0053】
イミダゾリン化合物は1−(ヒドロキシアルキル)−2−(ヒドロカルビル)イミダゾリンを含み得、それは、より具体的には、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−(C8〜C24脂肪族ヒドロカルビル)イミダゾリンであってもよく、下記一般式:
【0054】
【化10】
によって表され得、式中、Rは8〜24個の炭素原子の分枝または非分枝の、飽和または不飽和脂肪族炭化水素基である。
【0055】
あるいは、特定の実施形態では、上記イミダゾリン環上に示されるR基は、1つ以上の酸素原子を有し得るヒドロカルビル基であり得る。例えば、ヒドロカルビル基は、例えば、ケトンまたはエステル連結(−OC(O)−または−C(O)O−)の一部として、エーテル連結、またはヒドロキシル置換基、またはカルボニル基を含み得る。一例としては、ヒドロキシステアリン酸、例えば、12−ヒドロキシ−ステアリン酸の縮合によって調製されるイミダゾリン化合物である。
【0056】
さらに、特定の実施形態では、下記のように任意に他の変形の他にイミダゾリン環上に1個より多いヒドロカルビル基があってもよい。そのような物質は、下記構造:
【0057】
【化11】
によって通常表され得、式中、Rは上記の通りであり、R
1は2〜8個の炭素原子のアルキレン基である。R
2およびR
3はそれぞれ独立して水素または1〜24個の炭素原子のヒドロカルビル基であり(いくつかの実施形態では、それらのうちの1つはメチル基であり得る)、またはR
2およびR
3はともに結合して環状構造を形成してもよい。あるいは、R、R
2、およびR
3は、示される炭素元素以外のイミダゾリン環上の他の炭素原子に結合されることで、異なる異性体を表し得る。R
4は、水素原子、または1、2、もしくは3個の酸素原子または窒素原子によって介在された2〜8個の炭素原子のヒドロカルビル基または2〜8個の炭素原子のヒドロカルビル基であり得る(例えば、エーテル含有基、ポリエーテル含有基、アミン含有基、ポリアミン含有基、またはエーテル−アミン含有基)。そのような物質は、カルボン酸を、適切に置換されたジアミンまたはポリアミンと縮合することによって調製され得る。
【0058】
したがって、一実施形態では、本技術は、(a)潤滑粘性のある油、(b)過塩基化清澄剤、(c)分散剤、(d)リンの酸の金属塩、および(e)少なくとも8個の炭素原子のヒドロカルビル置換基を有するアルコキシアルキル置換イミダゾリンであり、アルコキシアルキル置換基は3〜9個の炭素原子(例えば、そのアルキル部分の少なくとも2個の炭素原子およびそのアルコキシ部分の7個までの炭素原子)を含むアルコキシアルキル置換イミダゾリンを含む潤滑剤を提供する。
【0059】
一実施形態では、イミダゾリンは、推奨される命名法で示され、下記式:
【0060】
【化12】
1−(ヒドロキシエチル)−2−(ヘプタデセニル)イミダゾリン
1−(ヒドロキシエチル)−2−(8−ヘプタデセニル)イミダゾリン
1H−イミダゾール−1−エタノール,2−(8−ヘプタデセン−1−イル)−4,5−ジヒドロ−
によって表され得るが、市販の物質が様々な異性体の混合物であってもよく、特に、長いヒドロカルビル鎖が、示されたものからかなりの変形を含み得ることが理解される。特に、ヒドロカルビル鎖内の二重結合は、異なる位置にあってもよく、または完全になくてもよい;それはシスまたはトランスであってもよい;または、様々な位置に1つより多い二重結合があってもよい。炭素鎖は同様に分枝され得る。ヒドロカルビル鎖の詳細な性質は、イミダゾリンが調製され得る脂肪酸の構造を反映し得る。例えば、イミダゾリンがオレイン酸から調製される場合、二重結合は、典型的に、示されるようにヒドロカルビル鎖の8位の位置に、または近傍にある。ステアリン酸などの他の酸は、十分に飽和される。さらに、示されたイミダゾリン構造以外の他の成分が存在し得る。そのような物質は、アミド(非環式)、オキサゾリン、またはエステル縮合生成物を含んでいてもよい。
【0061】
潤滑剤は、典型的に、オートバイのエンジンの潤滑剤などのエンジンの潤滑剤で一般的に見られる任意のさらなる添加剤を含んでいてもよく、またはその代わりに除いてもよい。
【0062】
そのような1つの添加剤は粘度調整剤である。粘度調整剤(VM)および分散粘度調整剤(DVM)は周知である。VMおよびDVMの例としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリオレフィン、水素化ビニル芳香族ジエンコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン)、スチレン−マレイン酸エステルコポリマー、ならびにホモポリマー、コポリマー、およびグラフトコポリマーを含む同様の高分子物質が挙げられ得る。DVMは、窒素含有メタクリレートポリマー、例えば、メチルメタクリレートおよびジメチルアミノプロピルアミンから誘導された窒素含有メタクリレートポリマーを含み得る。
【0063】
市販のVM、DVM、およびそれらの化学品の種類の例としては、下記のものが挙げられ得る:ポリイソブチレン(BP AmocoからのIndopol(商標)またはExxon MobilからのParapol(商標)など);オレフィンコポリマー(LubrizolからのLubrizol(商標)7060、7065、および7067、ならびにMitsuiのLucant(商標)HC−2000LおよびHC−600など);水素化スチレン−ジエンコポリマー(ShellからのShellvis(商標)40および50、ならびにLubrizolのLZ(登録商標)7308および7318など);分散剤コポリマーであるスチレン/マレイン酸エステルコポリマー(LubrizolからのLZ(登録商標)3702および3715など);そのうちのいくつかは分散剤特性を有するポリメタクリレート(RohMaxからのViscoplex(商標)シリーズのもの、Aftonからの粘度指数向上剤のHitec(商標)シリーズ、LubrizolからのLZ(登録商標)7702、LZ(登録商標)7727、LZ(登録商標)7725、およびLZ(登録商標)7720Cなど);オレフィン−グラフト−ポリメタクリレートポリマー(RohMaxからのViscoplex(商標)2−500および2−600など);ならびに水素化ポリイソプレンスターポリマー(ShellからのShellvis(商標)200および260など)。使用され得る粘度調整剤は、米国特許第5,157,088号、同第5,256,752号、および同第5,395,539号に記載されている。VMおよび/またはDVMは、20重量%までの濃度で機能性流体において使用され得る。1〜12重量%または3重量%〜10重量%の濃度で使用され得る。
【0064】
本明細書で使用される場合に、「式によって表された」などの表現は、示された式が通常対象とする化学品の構造を表すことを示す。しかし、位置異性化などのわずかな変形が生じ得る。そのような変形が包含されることが意図される。
【0065】
他の成分は酸化防止剤であり得る。酸化防止剤はフェノール系酸化防止剤を包含し、それらはヒンダードフェノール系酸化防止剤であってもよく、フェノール環上のオルト位の一方または両方はt−ブチルなどの嵩高い基によって占められている。パラ位は、ヒドロカルビル基または2つの芳香環を架橋する基によって占められ得る。特定の実施形態では、パラ位は、例えば、下記式:
【0066】
【化13】
の酸化防止剤などのエステル含有基によって占められており、式中、R
3は、例えば、1〜18個または2〜12個または2〜8個または2〜6個の炭素原子を含むアルキル基などのヒドロカルビル基である;t−アルキルはt−ブチルであり得る。そのような酸化防止剤は、米国特許第6,559,105号により詳細に記載されている。
【0067】
酸化防止剤はまた、芳香族アミンも含む。一実施形態では、芳香族アミン酸化防止剤は、ノニル化ジフェニルアミンまたはジノニル化ジフェニルアミンとモノノニル化ジフェニルアミンとの混合物などのアルキル化ジフェニルアミンを含み得る。
【0068】
酸化防止剤はまた、モノスルフィドもしくはジスルフィドまたはそれらの混合物などの硫化オレフィンも含む。これらの物質は、通常、1〜10個の硫黄原子、例えば、1〜4個または1個または2個の硫化物連結を有する。本発明の硫化有機組成物を形成するために硫化され得る物質としては、油、脂肪酸およびエステル、オレフィンならびにそれらからなるポリオレフィン、テルペン、またはディールス・アルダー付加物が挙げられる。いくつかのそのような硫化物質を調製する方法の詳細は、米国特許第3,471,404号および同第4,191,659号に見いだされ得る。
【0069】
モリブデン化合物はまた、酸化防止剤として役立つこともでき、これらの物質は摩耗防止剤または摩擦調整剤などの様々な他の機能に役立つこともできる。米国特許第4,285,822号は、極性溶媒、酸性モリブデン化合物、および油溶塩基性窒素化合物を組み合わせてモリブデン含有複合体を形成し、該複合体を二硫化炭素と接触させてモリブデンおよび硫黄含有組成物を形成することによって調製された、モリブデンおよび硫黄含有組成物を含む潤滑油組成物を開示している。
【0070】
チタン化合物はまた、酸化防止剤でもあり得る。米国特許出願公開第2006−0217271号は、チタンアルコキシドおよびチタネート化分散剤を含めて、様々なチタン化合物を開示し、それら物質はまた、堆積制御および濾過性の向上も付与し得る。他のチタン化合物としては、ネオデカノエートなどのチタンカルボキシレートが挙げられる。
【0071】
酸化防止剤の典型的な量は、もちろん特定の酸化防止剤およびその個々の有効性に依存するが、実例となる合計量は、0.01〜5重量%または0.15〜4.5重量%または0.2〜4重量%であり得る。
【0072】
他の添加剤は摩耗防止剤であり、それは上記のリンの酸の金属塩に加えて使用され得る。摩耗防止剤の例としては、金属チオホスフェート、リン酸エステル、およびそれらの塩、リン含有カルボン酸、エステル、エーテル、およびアミド;ならびにホスファイトなどのリン含有摩耗防止/極圧剤が挙げられる。特定の実施形態では、リン摩耗防止剤は、0.01〜0.2または0.015〜0.15または0.02〜0.1または0.025〜0.08%のリンを送達する量で存在し得る。多くの場合、摩耗防止剤はジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDP)である。典型的なZDPについて、それは11%のP(油を含まない基準で計算される)を含んでいてもよく、適切な量としては0.09〜0.82%が挙げられ得る。非リン含有摩耗防止剤としては、ホウ酸エステル(ホウ素化エポキシド(borated epoxide)を含む)、ジチオカーバメート化合物、モリブデン含有化合物、および硫化オレフィンが挙げられる。
【0073】
他のタイプの摩耗防止剤は、通常、酒石酸エステル、酒石酸アミド、およびオレイル酒石酸イミドなどの酒石酸イミド、ならびにヒドロキシ−ポリカルボン酸のエステル、アミド、およびイミドが挙げられる。これらの物質は、摩耗防止性能以外に潤滑剤にさらなる機能性を付与し得る。これらの物質は、米国特許公開第2006−0079413号および国際公開第2010/077630号により詳細に説明されている。
【0074】
潤滑油において任意に使用され得る他の添加剤としては、流動点降下剤、極圧剤、摩耗防止剤、色安定剤、および消泡剤が挙げられる。
【0075】
本技術で使用され得る他の成分は、上に検討されたものの他に、補助的摩擦調整剤である。これらの摩擦調整剤は当業者に周知である。使用され得る摩擦調整剤のリストは、米国特許第4,792,410号、同第5,395,539号、同第5,484,543号、および同第6,660,695号に含まれている。米国特許第5,110,488号は、摩擦調整剤として有用な脂肪酸の金属塩、特に亜鉛塩を開示している。使用され得る補助的摩擦調整剤のリストとしては、次のものを含み得る:
脂肪ホスファイト ホウ素化アルコキシル化脂肪アミン
脂肪アミド 脂肪酸の金属塩
脂肪エポキシド 硫化オレフィン
ホウ素化脂肪エポキシド 脂肪イミダゾリン
脂肪アミン モリブデン化合物
グリセロールエステル アルキルサリチレートの金属塩
ホウ素化グリセロールエステル アルキルリン酸のアミン塩
アルコキシル化脂肪アミン エトキシル化アルコール
オキサゾリン ポリヒドロキシ第3級アミン
ヒドロキシアルキルアミド 酒石酸ジアルキル
カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物
およびその2つ以上の混合物。
【0076】
記載される各化学成分の量は、他に示されない限り、商業用物質中、すなわち活性化学的基準で習慣的に存在し得るいずれの溶媒または希釈油も除いて示している。しかし、他に示されない限り、本明細書で参照する各化学品または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および商業用グレード品中に存在すると通常理解されるような他のそのような物質を含む可能性のある商業用グレードの物質であると解釈されるべきである。
【0077】
本明細書で使用される場合に、「式によって表された」などの表現は、示された式が通常対象とする化学品の構造を表すことを示す。しかし、位置異性化などのわずかな変形が生じ得る。そのような変形が包含されることが意図される。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的に、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、炭化水素の特性を主に有する基をいう。ヒドロカルビル基の例としては、以下が挙げられる:
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族、脂肪族、および脂環式置換芳香族置換基、ならびに環が分子の他の部分を介して完成している環状置換基(例えば、2つの置換基が一緒になって環を形成する);
置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の状況で、置換基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ)の主に炭化水素的性質を変えない非炭化水素基を含む置換基;
ヘテロ置換基、すなわち、本発明の状況で、主に炭化水素の特性を有しているが、環または鎖の中に炭素以外のもの(その他は炭素原子からなる)を含み、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する置換基。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、および窒素が挙げられる。通常、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子毎に2つ以下または1つ以下の非炭化水素置換基が存在する;あるいは、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基が存在しなくてもよい。
【0079】
上記物質のいくつかは、最終配合物中で相互作用し得、その結果、最終配合物の成分が、最初に添加した成分と異なり得ることが知られている。例えば、金属イオン(例えば、清澄剤の)は、他の分子の他の酸性またはアニオン性部位に移動し得る。それによって形成される生成物は、その意図する用途において本発明の組成物を用いた場合に形成される生成物を含め、簡単に記載するのは困難であり得る。そうであるにも関わらず、全てのこのような改良および反応生成物は、本発明の範囲に含まれる;本発明は、上記成分を混合することによって調製される組成物を包含する。
【0080】
本明細書で説明されるような潤滑剤が、乾式クラッチを備えた(または別に潤滑される湿式クラッチを備えた)オートバイのエンジンでの使用に適しているが、それは他のエンジンでより一般に使用され得る。一実施形態では、内燃機関は、クランク室および少なくとも1つのギアまたは複数のギアに同じ潤滑
剤組成物を供給する共通の油レザバを有していてもよく、それはギアケース(トランスミッション)中にあってもよい。一実施形態では、内燃機関は、4−ストロークエンジンである。一実施形態では、内燃機関はまた、通常、小型エンジンとよばれる。小型エンジンは、一実施形態では、2.2〜19kW(3〜25馬力(hp))、別の実施形態では、3.0〜4.5kW(4〜6hp)の出力を有し得る。小型エンジンの例としては、家庭/庭園用具(例えば、芝刈り機、ヘッジトリマー、チェーンソー、除雪機、または回転耕運機(roto−tillers))が挙げられる。一実施形態では、内燃機関は、3500cm
3までの排気量、別の実施形態では、2500cm
3までの排気量、別の実施形態では、2000cm
3までの排気量、別の実施形態では、100〜200cm
3の排気量の能力を有する。2500cm
3までの排気量の能力を備える適切な内燃機関の例としては、オートバイ、スノーモービル、ジェットスキー、クアッドバイク(quad−bike)、および全地形対応車のエンジンが挙げられる。それは、ガソリン、アルコール、ガソリン−アルコール混合物、ディーゼル燃料、バイオディーゼル燃料、または水素によって燃料を供給されるエンジン、および火花点火エンジン、または圧縮点火エンジンで使用され得る。それはまた、自動車エンジン、ヘビーデューティディーゼルエンジン、マリンディーゼルエンジン、および固定ガスエンジンでも使用され得る。
【実施例】
【0081】
参照配合物Aを、PAO成分、粘度調整剤、および流動点降下剤を計量してS.A.E.40重量流体をもたらすことによって配合されたポリ−アルファ−オレフィン基油で調製する。さらに、分散抑制剤(「DI」)パッケージが次のさらなる成分を提供する:
3.9%スクシンイミド分散剤(47%希釈油を含む)
1.1%過塩基化カルシウムスルホネートおよびフェネート清澄剤(44%油)
1.2%ジアルキルジチオリン酸亜鉛(9%油)
1.0%アミンおよびヒンダードフェノールエステル酸化防止剤
100ppm商用消泡剤
0.14%追加希釈油。
【0082】
実施例1
1−ヒドロキシエチル−2−(ヘプタデセニル)イミダゾリン0.5%を添加することによってトップ処理された参照配合物A
実施例2
参照配合物Aに類似する別の配合物が調製される。しかし、それはグループIIの鉱油で調製される;DIパッケージは、3.9%スクシンイミド分散剤(50%油)、2.9%過塩基化CaおよびNaフェネートおよびスルホネート清澄剤(27〜42%油)、1.0%ジアルキルジチオリン酸亜鉛(9%油)、0.25%アミン酸化防止剤、140ppm商用消泡剤、ならびに少量の追加希釈油を含む。配合物は1−ヒドロキシエチル−2−(ヘプタデセニル)イミダゾリン0.5%を添加することによってトップ処理される。
【0083】
未処理の参照配合物Aおよび実施例1および2の処理物質が、試験スタンド上に設けられたホンダSH125iスクーターエンジンにおいて燃費に関して試験される。燃料は圧力制御された燃料容器によって供給され、消費はBronckhorst(商標)コリオリメータ(Coriolis meter)を使用して測定される。燃費試験サイクルは、初期無負荷段階、その後の5800〜8600r.p.m.のエンジンスピードおよび約2.8〜約10.3Nmに変化する負荷で10分の定常状態操作の13サイクルからなる。燃費は、安定化の目的のために実行される初期13段階のサイクル後の13段階試験サイクルを5回繰り返して測定される。
【0084】
燃費試験の結果より、参照配合物Aと比較して実施例1が1.33%の燃費利得を示し、実施例2が参照配合物Aと比較して同様に1.36%の燃費利得を示すことが分かる。1−ヒドロキシエチル−2−(ヘプタデセニル)イミダゾリンが存在することで、様々な異なる添加物パッケージ配合物と共に使用された場合に燃費が向上する。
【0085】
以下の成分を含む潤滑配合物(参照配合物C)を調製する:
鉱物基油−残部=100%
12.4% エチレン/プロピレンコポリマー粘度調整剤、87%油を含む
0.2% 流動点降下剤、ポリメタクリレート、25%油を含む
4.60% スクシンイミド分散剤、47%油を含む
0.98% 酸化防止剤(アミンおよびヒンダードフェノールエステル)
0.84% ジアルキルジチオリン酸亜鉛、9%油を含む
1.84% 過塩基化カルシウムフェネートおよびスルホネート清澄剤、41%の油を含む
0.01% 商用消泡剤。
【0086】
参照配合物Cを、以下の表に示される量で1−ヒドロキシエチル−2−(ヘプタデセニル)イミダゾリン(HHI)でトップ処理する。トップ処理された潤滑剤は、JASO T904によって特定されるように摩擦特性の測定のためのSAE♯2試験に供される。測定された特性は、動摩擦指数(DFI)、静摩擦指数(DFI)、および停止時間指数(STI)である。これらのそれぞれは、湿式クラッチのないオートバイのエンジンについて所望のJASO MB評価を達成するために、潤滑されたクラッチをシミュレートする試験で測定され、測定値の少なくとも1つは、示された範囲(乾式クラッチエンジンに望まれる通常のより低い摩擦を示す)内にあるべきである。DFIは、「クラッチの感触」および潤滑されたクラッチのスリップ条件下での進歩的な動力伝達の大きさである。SFIは、閉鎖クラッチトルク処理能力、すなわち、高トルク分離条件下での滑りに対する潤滑されたクラッチの抵抗の大きさである。STIは、潤滑されたクラッチがどれくらい速く噛み合うかの大きさである。
【0087】
【表1】
実施例3の配合物は、JASO MB規格の2つを満たし、このように、JASO MB基準下で適格である。実施例4の配合物は、JASO MB規格の1つを満たし、このように、JASO MB基準下で適格である。添加されたHHI摩擦調整剤がない状態で、DFI、SFI、およびSTI値は、それぞれ典型的にMB基準用の列挙された上限より大きい。
実施例5〜10
下記量のイミダゾリン物質を含む、参照配合物Cに類似する潤滑配合物を調製する:
【0088】
【表2】
配合物は低減された摩擦をもたらす。
【0089】
上記に参照した文献のそれぞれを参照により本明細書に組み込む。いずれの文献の言及も、そうした文献が従来技術と見なされるものではなく、また当業者の通常の知見を構成すると認めるものでもない。実施例、あるいは明白に示されている場合を除いて、物質量、反応条件、分子量、炭素原子数などを特定する本説明におけるすべての数量は、「約」という言葉で修飾されているものと理解すべきである。本明細書で示す量、範囲および比の上限および下限は、独立に組み合わせることができることを理解されたい。同様に、本発明の各要素についての範囲および量は、他の要素のいずれかについての範囲または量と一緒に用いられ得る。本明細書で用いる場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という表現は、考慮される組成物の基本的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない物質を含有することを許容するものである。