特許第5959629号(P5959629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ルブリゾル コーポレイションの特許一覧

特許5959629摩擦調整剤を含有する安定化されたブレンド
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959629
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】摩擦調整剤を含有する安定化されたブレンド
(51)【国際特許分類】
   C10M 141/10 20060101AFI20160719BHJP
   C10M 163/00 20060101ALI20160719BHJP
   C10M 137/00 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 133/04 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 135/08 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 129/84 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 129/66 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 133/56 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 129/54 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 133/06 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 133/46 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 159/16 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 137/04 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 137/02 20060101ALN20160719BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20160719BHJP
   C10N 20/06 20060101ALN20160719BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20160719BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20160719BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20160719BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20160719BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
   C10M141/10
   C10M163/00
   !C10M137/00
   !C10M133/04
   !C10M135/08
   !C10M129/84
   !C10M129/66
   !C10M133/16
   !C10M133/56
   !C10M129/54
   !C10M133/06
   !C10M133/46
   !C10M159/16
   !C10M137/04
   !C10M137/02
   !C10M137/10 Z
   C10N20:06 Z
   C10N30:06
   C10N40:04
   C10N40:08
   C10N40:25
   C10N50:10
【請求項の数】11
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2014-512875(P2014-512875)
(86)(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公表番号】特表2014-515421(P2014-515421A)
(43)【公表日】2014年6月30日
(86)【国際出願番号】US2012037920
(87)【国際公開番号】WO2012162027
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年4月27日
(31)【優先権主張番号】61/490,236
(32)【優先日】2011年5月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】バーリントン, ジェイムズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】デルブリッジ, イワン イー.
(72)【発明者】
【氏名】イバンチック, ダニエル エヌ.
【審査官】 馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2004/003118(JP,A1)
【文献】 特表平08−509016(JP,A)
【文献】 特表2010−513695(JP,A)
【文献】 特表2008−544043(JP,A)
【文献】 特開2001−172660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)溶媒、機能性流体、添加剤濃縮物またはこれらの組み合わせを含む媒体と;
(b)該媒体に完全に可溶性ではないリン含有化合物を含む摩擦調整剤成分と;
(c)(a)に可溶性であり、(b)と相互作用して、(a)への(b)の溶解度を高める安定化成分と
を含み、
成分(b)および成分(c)、または成分(b)のみは、平均直径が10ミクロン未満の分散した粒子の形態で成分(a)の中に存在しており、
該安定化成分が、少なくとも1つの水素供与基と、少なくとも1つの水素受容基と、少なくとも1つのヒドロカルビル基とを含む化合物を含み、該水素供与基と該水素受容基とが、8個を超える結合によって離されておらず、該結合が、共有結合およびイオン結合を含み、
ここで、該水素供与基が、−OH、−OR、−C(O)OH、−SH、−NRH、−NH、−NRH、−NRH、および−NHからなる群から独立して選択され、ここで、各Rは、独立してヒドロカルビル基であり、
ここで、該水素受容基が、=O、−C(O)OH、−C(O)OR、=S、−NRH、−NRR、−NHH、カルボン酸誘導体、またはホスフェートもしくはチオホスフェートからなる群から独立して選択され、ここで、各Rは、独立してヒドロカルビル基であり、そして
ここで、該安定化成分である成分(c)が、
(i)(a)三級アミノ基を含むヒドロカルビル置換された化合物と、(b)(a)の該三級アミノ基を四級窒素に変換するのに適切な四級化剤との反応生成物を含み、ここで、該四級化剤が、硫酸ジアルキル、ハロゲン化ベンジル、ヒドロカルビル置換されたカーボネート;酸と組み合わせたヒドロカルビルエポキシド、またはこれらの混合物からなる群から選択される、四級塩;
(ii)アルキルコハク酸無水物およびアルカノールアミンから誘導される低分子量アシル化窒素化合物;
(iii)サリチル酸の脂肪アミン塩;
またはこれらの任意の組み合わせ、
(iv)ポリエチレンポリアミンおよび脂肪酸の反応生成物を含むアルキルイミダゾリン;
またはこれらの組み合わせ
を含む
組成物。
【請求項2】
前記四級塩を調製するために使用される前記三級アミノ基を含むヒドロカルビル置換された化合物が、
(1)ヒドロカルビル置換されたアシル化剤と、該アシル化剤と縮合させることができる、酸素原子または窒素原子を含む化合物との縮合生成物であって、さらに三級アミノ基を含む、縮合生成物;
(2)少なくとも1つの三級アミノ基を含むポリアルケン置換されたアミン;
(3)三級アミノ基を含み、ヒドロカルビル置換されたフェノールと、アルデヒドと、アミンとの反応から調製された、Mannich反応生成物;
(4)三級アミノ基を含有するポリエステル;
またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
全組成物の濁度が、前記安定化成分である(c)を含有しない同じ組成物と比較して、JTU値および/またはNTU値がより低いことによって特定される場合、向上している、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記摩擦調整剤成分である(b)が、ホスフェート、ホスファイト、チオホスフェート、これらのいずれかの材料のアミン塩、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記摩擦調整剤成分である(b)が、以下の式によってあらわされるリン含有化合物
(X=)P(X−R)
またはその塩化したバージョンを含み、式中、各Xは、独立して、OまたはSであり、aは0または1であり、各Xは、独立してOまたはSであり、bは0または1であり、Rは、Hまたはヒドロカルビル基であり、但し、R基の少なくとも1つは、少なくとも1個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記摩擦調整剤が、(i)ヒドロカルビルリン酸または酸エステル;(ii)そのアミン塩;またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
全組成物中の成分(b)の量が、少なくとも0.5重量%である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
透明で安定な組成物を調製するプロセスであって、この組成物が、
(a)溶媒、機能性流体、添加剤濃縮物またはこれらの組み合わせを含む媒体と;
(b)該媒体に完全に可溶性ではないリン含有化合物を含む摩擦調整剤成分と;
(c)(a)に可溶性であり、(b)と相互作用して、(a)への(b)の溶解度を高める安定化成分と
を含み、
前記方法が、
I.成分(a)に成分(b)および(c)を加える工程であって、成分(b)が該全組成物中に0.15重量%以上の量で存在する、工程と;
II.成分(b)が成分(a)中で平均直径が10ミクロン未満の分散した粒子の形態で存在するように、該成分を混合する工程と
を含み、
該安定化成分が、少なくとも1つの水素供与基と、少なくとも1個の水素受容基と、少なくとも1つのヒドロカルビル基とを含む化合物を含み、該水素供与基と該水素受容基とが、8個を超える結合によって離されておらず、該結合が、共有結合およびイオン結合を含み、
ここで、該水素供与基が、−OH、−OR、−C(O)OH、−SH、−NRH、−NH、−NRH、−NRH、および−NHからなる群から独立して選択され、ここで、各Rは、独立してヒドロカルビル基であり、
ここで、該水素受容基が、=O、−C(O)OH、−C(O)OR、=S、−NRH、−NRR、−NHH、カルボン酸誘導体、またはホスフェートもしくはチオホスフェートからなる群から独立して選択され、ここで、各Rは、独立してヒドロカルビル基であり、そして
ここで、該安定化成分である成分(c)が、
(i)(a)三級アミノ基を含むヒドロカルビル置換された化合物と、(b)(a)の該三級アミノ基を四級窒素に変換するのに適切な四級化剤との反応生成物を含み、ここで、該四級化剤が、硫酸ジアルキル、ハロゲン化ベンジル、ヒドロカルビル置換されたカーボネート;酸と組み合わせたヒドロカルビルエポキシド、またはこれらの混合物からなる群から選択される、四級塩;
(ii)アルキルコハク酸無水物およびアルカノールアミンから誘導される低分子量アシル化窒素化合物;
(iii)サリチル酸の脂肪アミン塩;
またはこれらの任意の組み合わせ、
(iv)ポリエチレンポリアミンおよび脂肪酸の反応生成物を含むアルキルイミダゾリン;
またはこれらの組み合わせ
を含む
プロセス。
【請求項9】
得られた混合物の清澄性が、前記安定化成分である(c)を含有しない同じ組成物と比較して、JTU値および/またはNTU値がより低いことによって特定される場合、向上している、請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記摩擦調整剤成分である(b)が、以下の式によってあらわされるリン含有化合物:
(X=)P(X−R)
またはその塩化したバージョンを含み、式中、各Xは、独立して、OまたはSであり、aは0または1であり、各Xは、独立してOまたはSであり、bは0または1であり、Rは、Hまたはヒドロカルビル基であり、但し、R基の少なくとも1つは、少なくとも1個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である、請求項8または9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記摩擦調整剤成分である(b)が、(i)ヒドロカルビルリン酸または酸エステル;(ii)そのアミン塩;またはこれらの組み合わせを含む、請求項8または9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦調整剤を含有する機能性流体組成物に関し、特定的には、一緒に用いられる機能性流体への溶解度および/または相溶性が制限される摩擦調整剤を含有する安定な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦調整剤と、さまざまな種類の機能性流体に対する摩擦調整剤の重要性とが知られている。しかし、多くの摩擦調整剤は、使用する機能性流体との溶解度および/または相溶性に課題があるため、制限された様式でしか使用されないようである。多くの摩擦調整剤、特定的には、ヒドロキシ−カルボン酸から誘導される摩擦調整剤は、エンジン油およびギア油のような機能性流体への溶解度が制限されている。これらの摩擦調整剤は、その溶解度および/または相溶性の限界を超えた量で使用すると、時間経過にともなって機能性流体組成物から沈降してくるか、および/または組成物に濁りまたはくもりが見えることを引き起こすことがある。
【0003】
これらの問題は、上の流体を製造し、ブレンドするプロセスおよび当該技術分野において重大な問題である。例えば、機能性流体添加剤の製造業者は、パフォーマンスケミカルの均一な添加剤パッケージを販売し、その後、これを基油に加え、最終的な潤滑剤を得て、次いで、最終的に潤滑性を付与すべき装置へと潤滑剤を運ぶために、これをタンク、ドラム、缶およびプラスチック容器に入れて販売する。最終的な潤滑剤または任意の他の機能性流体の性能保証を維持するために、使用する装置内で、これらの工程の間、濃縮物および潤滑剤は均一なままでなければならない。言い換えると、存在するすべての添加剤は、添加剤パッケージから最終的な流体に対する濃縮物まで、接触するか、および/またはそれ自身に見出される種々のそれぞれの材料と相溶性でなければならない。この厳しい基準によって、本明細書に記載する摩擦調整剤を含め、多くの添加剤の選択およびその添加剤について利用可能な処理レベルが大きく制限される。これらの摩擦調整剤は、機能性流体に改良された性能を与え得るが、この添加剤が、上述の溶解度および/または相溶性の要求を満たさないため、広く使用されているわけではなく、および/または最適な量で使用されているわけでもない。
【0004】
当該分野において、時間経過にともなって1種類以上の成分が析出する(drop out)機能性流体組成物は、使用前に十分に混合しない限り、適切な性能を発揮しない場合があり、または、機能性流体を使用する装置に取り付けたフィルターによって除去されてしまう場合がある。機能性流体の濁りおよび/またはくもりは、流体の濁度として測定されてもよく、組成物が安定ではないこと、または、初期段階の分離および/または成分の析出の目安としてみられることが多い。このような状態は、性能および美観の両方に関連する理由で、機能性流体組成物として望ましいものではない。この現実は、例えば、有効な最大処理速度など、種々の摩擦調整剤の使用に制限を生じさせている。
【0005】
これらの摩擦調整剤を使用するときに、これらの溶解度および/または相溶性の制限がなければ、例えば、潤滑剤または潤滑化された装置部品(例えば、エンジン、自動変速機、およびギアアセンブリなど)の寿命が延びることを含め、より優れた性能および装置の保護が達成できるかもしれない。より優れた燃料の節約および粘度の安定性も達成できるかもしれない。有効性は高いものの、従来の様式で運ぶと相溶性または溶解度の観点から適していなかった化学物質を選択することによって、より少ない量、およびより多い量の化学物質を用いた場合であっても、より優れた性能が達成できるかもしれない。
【0006】
安定および/または透明なまま保持されつつ、より多量の摩擦調整剤を含有する機能性流体組成物が必要である。特に、上述のように、他の方法では組成物が不安定であるか、および/または濁りを引き起こす濃度での機能性流体組成物、例えば、ヒドロキシ−カルボン酸から誘導される摩擦調整剤を含有するエンジン油組成物が必要である。本発明の組成物および方法は、これらの制限事項を克服することによって、機能性流体組成物の安定性および/または清澄性を維持しつつ、これらの摩擦調整剤を、他の方法では不可能だった量で使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
多量の摩擦調整剤、特に、使用する機能性流体組成物との溶解度および/または相溶性が制限されている摩擦調整剤を含有してもよく、全組成物の安定性、清澄性および/または相溶性を維持しつつ、これらの機能性流体組成物中で、さらに多量の摩擦調整剤を使用することができる機能性流体組成物が開発された。
【0008】
本発明は、(a)溶媒、機能性流体、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい媒体と;(b)媒体に完全に可溶性ではないリン含有化合物を含む摩擦調整剤成分と;(c)(a)に可溶性であり、(b)と相互作用して、(a)への(b)の溶解度を高めるか、または、おそらくより正確には、(a)と(b)の組み合わせへの(b)の溶解度が、(a)への(b)の溶解度より高められる、安定化成分とを含み、安定化成分が、少なくとも1つの水素供与基と、少なくとも1つの水素受容基と、少なくとも1つのヒドロカルビル基とを含む化合物を含み、ここで水素供与基と水素受容基とが、8個を超える共有結合およびイオン結合によって離されていない、組成物を提供する。成分(b)および成分(c)は、平均直径が10ミクロン未満の分散した粒子の形態で成分(a)の中に存在していてもよい。
【0009】
本発明は、目視での清澄性のランク付け(例えば、以下の表1〜3に示す)によって定義されるような全組成物の濁度が改良されているか、または、安定化成分である(c)を含有しない同じ組成物と比較して、JTU値および/またはNTU値が低い、本明細書に記載の組成物を提供する。ある実施形態では、本発明の組成物は、JTU値および/またはNTU値が最大で100である。
【0010】
本発明は、さらに、本明細書に記載するように、透明で安定な組成物を調製するプロセスを提供し、この方法は、(I)成分(a)に成分(b)および成分(c)を加える工程と、(II)成分(b)および成分(c)の粒子、ある実施形態では、成分(b)のみの粒子が10ミクロン未満の平均粒径を有するように、他の実施形態では、さらに特定的にいうと、粒子の10重量%以下が0.5ミクロンを超える直径を有するように、成分を混合する工程とを含む。それに加え、成分(b)は、全組成物中に最低限の量、例えば、0.15重量%以上の量で存在していてもよい。
【0011】
本発明は、さらに、本明細書に記載する摩擦調整剤を含有する組成物の溶解度および/または相溶性および/または安定性を高めるための相溶化剤および組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
種々の好ましい特徴および実施形態を、非限定的な説明によって以下に記載する。
【0013】
本発明は、他の方法では使用することができないか、および/または本発明によって可能となった量で使用することができなかった機能性流体組成物中で、不安定で不透明で、および/または濁った組成物を得ることなく、特定の摩擦調整剤の使用を可能にする組成物および方法を提供する。
【0014】
本発明の組成物および方法において、および本発明の組成物および方法を使用可能な機能性流体の種類としては、ギア油、トランスミッション油、油圧用液、エンジン油、2サイクル油、金属作業液、燃料などが挙げられる。一実施形態では、機能性流体はエンジン油である。別の実施形態では、機能性流体は、ギア油である。別の実施形態では、機能性流体は、トランスミッション液である。別の実施形態では、機能性流体は、油圧用液である。別の実施形態では、機能性流体は、燃料である。別の実施形態では、機能性流体は、グリースである。
【0015】
ある実施形態では、本発明は、運搬デバイス、例えば、摩擦調整剤を含有するように作用し、添加された機能性流体と接触するデバイスの使用を含まない。ある実施形態では、本発明は、ゲル組成物または固体組成物のいずれかの使用を含まず、このような組成物は、機能性流体中の1つ以上の成分の放出を遅らせる。むしろ、本発明は、成分の組み合わせを使用することによって、摩擦調整剤を機能性流体に組み込むための手段を提供し、安定で透明であり、および/または濁りのない状態を維持しつつ、多量の摩擦調整剤を含む機能性流体を生じる。
【0016】
ある実施形態では、本発明は、1つ以上の成分を欠いている以外は同じである組成物よりも安定であり、透明であり、および/または濁りが少ない組成物を提供する。ある実施形態では、欠いている成分は、安定化成分である。他の実施形態では、本発明の組成物は、本発明の安定化成分を欠いている以外は同一である組成物と比較して、濁度が低い。これらの実施形態のいくつかにおいて、組成物の濁度は、表1〜3のような目視での清澄性のランク付けとして、またはJTU値および/またはNTU値としてあらわされる。他の実施形態では、本発明の組成物は、最大のJTU値および/またはNTU値が、100、90、または80である。
【0017】
JTU値およびNTU値は、US EPA方法180.1によって測定されてもよい。さらに、JTU値およびNTU値は、Monitek Model 151 Turbidimeterを用い、Jackson Turbidity Unit(JTU)において、さらに希釈することなく測定されてもよい。
【0018】
(媒体)
本発明の組成物は、媒体を含む。媒体は、溶媒および/または希釈剤、機能性流体、添加剤濃縮物、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
適切な溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、酸素含有組成物、またはこれらの混合物が挙げられる。酸素含有組成物としては、アルコール、ケトン、カルボン酸のエステル、グリコールおよび/またはポリグリコール、またはこれらの混合物を挙げることができる。また、適切な溶媒としては、潤滑粘度の油、ナフサ、トルエン、キシレン、またはこれらの組み合わせも挙げられる。潤滑粘度の油は、天然油、合成油、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。潤滑粘度の油は、API(American Petroleum Institute)のグループII、III、IV、Vの基油またはこれらの混合物であってもよい。市販の脂肪族炭化水素溶媒または希釈剤の例としては、潤滑粘度の油が挙げられ、Pilot(商標)140およびPilot(商標)299、およびPilot(商標)900(Petrochem Carlessから入手可能)、Petro−Canada(商標)100N、Nexbase(商標)、Yubase(商標)、および4〜6cStのポリ(アルファ−オレフィン)である。
【0020】
適切な機能性流体としては、上に列挙した任意の機能性流体が挙げられ、このような流体の混合物を含む。多くの実施形態では、機能性流体または媒体として用いられる他の材料は、以下の詳細に記載する成分(b)および成分(c)に加え、さらなる添加剤を含有する。これらのさらなる添加剤について、以下にきわめて詳細に記載する。
【0021】
本発明の一実施形態では、媒体および/または全組成物は、硫黄、リン、硫酸灰分、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの選択肢を実質的に含まないか、またはまったく含まず、他の実施形態では、燃料組成物は、20ppm未満、15ppm未満、10ppm未満、または1ppm未満の硫黄、リン、硫酸灰分、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの選択肢を含む。
【0022】
一実施形態では、媒体と安定化成分は、同じ材料であってもよい。つまり、1つの材料が、両方の成分の機能を発揮してもよい。例えば、本発明が濃縮物の形態である場合、存在する媒体は、安定化成分として作用してもよく、逆もまた同様である。次いで、トップ処理(top treat)および/または添加剤パッケージとして、この濃縮物を機能性流体に加え、安定化剤成分/媒体材料が存在しない状態では、他の方法だとくもりが出るか、または非相溶性であるような状態で、安定で均一な機能性流体を得てもよい。
【0023】
(摩擦調整剤)
本発明の組成物は、摩擦調整剤成分を含む。摩擦調整剤成分は、媒体および/または使用する機能性流体中で完全に可溶性ではなく、および/または相溶性でもない少なくとも1つの摩擦調整剤を含んでいてもよい。完全に可溶性ではなく、および/または相溶性でもないとは、加えるべき流体に対し、摩擦調整剤が溶解したままでもなく、および/または懸濁したままでもないことを意味し、流体は濁りおよび/またはくもりが出て、沈殿が出るか、またはこれらの任意の組み合わせが生じる。ある実施形態では、摩擦調整剤は、使用する流体に濁りのある外観を与えるか、または固体が析出(drop−out)し、またはNTU値および/もしくはJTU値が80、90より大きいか、または100でさえある。ある実施形態では、この流体は、完成した潤滑剤または添加剤濃縮物のような機能性流体組成物である。
【0024】
ある実施形態では、本発明の摩擦調整剤は、可溶性であり、低濃度で、ある流体と可溶性であり、および/または相溶性であるが、より高い濃度では可溶性でもなく、および/または相溶性でもなくなる。ある実施形態では、本発明で使用するのに適した摩擦調整剤は、上に定義したように、0.1、0.15、0.2、0.3、0.5、または1.0重量%以上の濃度で流体が存在するとき、完全に可溶性ではなく、および/または相溶性でもない。
【0025】
摩擦調整剤成分は、ヒドロカルビルホスフェート、ヒドロカルビルチオホスフェート、ヒドロカルビルジチオホスフェートのアミン塩、またはこれらの組み合わせのようなリン含有添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤は、一般的に、1種類以上のリンの酸(phos-phorus acid)、例えば、リン酸、チオリン酸(ジチオリン酸を含む)と不飽和アミド(例えば、アクリルアミド)とを反応させることによって調製され、リン酸またはチオリン酸の完全なエステルまたは部分エステルのアミン塩も含む。
【0026】
本発明の摩擦調整剤成分を調製するときに使用するのに適したリン含有酸としては、1種類以上のリンの酸または無水物(phosphorus acid or anhydride)とアルコールとを反応させることによって調製されるリンの酸エステル(phosphorus acid ester)が挙げられる。使用するアルコールは、約30個、24個、12個、または3個までの炭素原子を含んでいてもよい。リンの酸または無水物は、無機リン試薬、例えば、五酸化リン、三酸化リン、四酸化リン、リンの酸、ハロゲン化リン、低級リンエステル、または硫化リン(五硫化リンを含む)であってもよい。ある実施形態では、リンの酸または無水物は、五酸化リン、五硫化リン、三塩化リン、またはこれらの組み合わせである。リンの酸エステルは、リン酸のモノエステルもしくはジエステル、またはこれらの混合物であってもよい。
【0027】
市販のアルコールの例としては、Alfol 810(主に、8〜10個の炭素原子を含む主に直鎖の一級アルコールの混合物);Alfol 1218(12〜18個の炭素原子を含む合成一級直鎖アルコールの混合物);Alfol 20+アルコール(ほとんどがC20のC18〜C28一級アルコールの混合物);およびAlfol 22+アルコール(主にC22アルコールを含むC18〜C28一級アルコール)が挙げられる。
【0028】
別の実施形態では、リン含有酸は、チオリンの酸エステル(thiophosphorus acid ester)であり、モノチオリンの酸エステルまたはジチオリンの酸エステルであってもよい。チオリンの酸エステル(thiophosphorus acid ester)は、チオリン酸とも呼ばれる。チオリンの酸エステルは、硫化リン(例えば、上述のもの)と上述のいずれかのアルコールとを反応させることによって調製されてもよい。モノチオリン酸エステルまたはモノチオホスフェートは、硫黄源(例えば、元素硫黄)と、ジヒドロカルビルホスファイトとの反応によって調製されてもよい。硫黄源は、有機スルフィド、例えば、硫黄がカップリングしたオレフィンまたはジチオホスフェートであってもよい。モノチオホスフェートは、ジヒドロカルビルホスファイトを、硫黄源(例えば、硫化オレフィン)を含む潤滑組成物に加えることによって、潤滑剤ブレンドの状態で作られてもよい。
【0029】
ジチオリン酸またはホスホロジチオ酸を、エポキシドまたはグリコールと反応させ、さらに、リンの酸、無水物、または低級エステルと反応させてもよい。エポキシドは、脂肪族エポキシドまたはスチレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、およびスチレンオキシドであってもよい。一実施形態では、プロピレンオキシドを使用する。グリコールは、1個または2個〜12個、6個または3個の炭素原子を含む脂肪族グリコールであってもよい。これらの材料をPと反応させてもよい。次いで、得られた材料および本明細書に記載の他のものをアミンと反応させ、塩を作製してもよい。
【0030】
上述のように、上述の酸性リン酸エステルをアンモニアまたはアミン化合物と反応させ、アンモニウム塩を作製してもよい。塩は、別個に作られてもよく、次いで、リンの酸エステルの塩を潤滑組成物に加えてもよい。または、酸性のリンの酸エステルを他の成分とブレンドし、完全に配合した潤滑組成物を作製したときに、塩を系中で作製してもよい。
【0031】
適切なアミンとしては、上述のものを含め、モノアミンおよびポリアミンが挙げられる。アミンは、一級アミン、二級アミンまたは三級アミンであってもよい。有用なモノアミンは、1〜24個、14個または8個の炭素原子を含んでいてもよく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、エチルヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジブチルアミンなどが挙げられる。
【0032】
一実施形態では、アミンは、脂肪(C4〜30)アミンであってもよく、限定されないが、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。ある例は、市販の脂肪アミンであり、例えば、「Armeen」アミン(Armak Chemicals、シカゴ、イリノイから入手可能な製品)、例えば、ArmakのArmeen−C、Armeen−O、Armeen−OL、Armeen−T、Armeen−HT、Armeen S、およびArmeen SDがあり、文字符号は、脂肪基に関連があり、例えば、カカオ(cocoa)基、オレイル基、タロー基、または大豆(soya)基である。
【0033】
有用なアミンは、Rohm and HaasによってPrimene 81Rの商標名で供給されるC12〜14の分岐第三級アルキルの一級アミンである。一実施形態では、安定化成分は、リン酸およびエステルの混合物のアミン塩および/またはジチオリン酸およびエステルの混合物のアミン塩であり、この混合物は、Primene 81Rまたは同様のアミンまたはアミン混合物を用いて塩化されている。
【0034】
これらのリン含有添加剤の調製(上述の酸およびエステルのアミン塩を含む)は、米国特許第6617287号に非常に詳細に記載されている。
【0035】
ある実施形態では、成分(c)のリン含有添加剤は、ホスフェート、ホスファイト、チオホスフェート、これら任意の材料のアミン塩、またはこれらの任意の組み合わせを含む。ある実施形態では、成分(c)は、(i)ヒドロカルビルリン酸または酸エステル;(ii)そのアミン塩;またはこれらの組み合わせを含む。さらに他の実施形態では、成分(c)は、以下の式によってあらわされる化合物:
(X=)P(X−R)
またはそのバージョンを含み、式中、各Xは、独立して、OまたはSであり、aは0または1であり、各Xは、独立してOまたはSであり、bは0または1であり、Rは、Hまたはヒドロカルビル基であり、ある実施形態では、但し、R基の少なくとも1つは、少なくとも1個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。ある実施形態では、リン含有添加剤は、アミンで塩化されている。
【0036】
摩擦調整剤は、本発明の組成物中に、少なくとも0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.5、または1.0重量%の量で存在していてもよい。摩擦調整剤は、10、9、8、7.5、5、または4または3重量%まで、またはこれより少ない量で存在していてもよい。
【0037】
本発明の組成物(特定的には、摩擦調整剤成分)は、場合により、1種類以上のさらなる摩擦調整剤を含んでいてもよい。これらのさらなる摩擦調整剤は、上述の摩擦調整剤の溶解度および/または相溶性の問題をもっていてもよく、もっていなくてもよい。これらのさらなる摩擦調整剤としては、ポリオールエステル、例えば、グリセロールモノオレエート、およびそのホウ素化(borated)誘導体;脂肪ホスファイト;ホウ素化脂肪エポキシド;硫化オレフィン;ヒドロキシ−カルボン酸から誘導される化合物、例えば、オレイル酒石酸イミド、ステアリル酒石酸イミド、および2−エチルヘキシルタートレート;脂肪酸およびエチレンジアミン誘導体から誘導されるイミダゾリン、例えば、オレイン酸およびアミノエチルエタノールアミンから誘導されるイミダゾリン、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
ポリオールのエステルには、グリセロールの脂肪酸エステルが含まれる。これらは、当該技術分野で周知の種々の方法によって調製することができる。これらの多くのエステル(例えば、グリセロールモノオレエートおよびグリセロールモノタロエート)は、商業スケールで製造される。本発明で有用なエステルは、油溶性であり、好ましくは、例えば、天然の産物中にみられるC〜C22脂肪酸、またはこれらの混合物から調製される。脂肪酸は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。天然源由来の酸の中にみられる特定の化合物としては、1個のケト基を含むリカン酸を挙げることができる。有用なC〜C22脂肪酸は、Rがアルキルまたはアルケニルである式R−COOHの脂肪酸である。
【0039】
グリセロールの脂肪酸モノエステルが有用である。モノエステルとジエステルの混合物を使用してもよい。モノエステルとジエステルの混合物は、少なくとも約40%のモノエステルを含有していてもよい。約40重量%〜約60重量%のモノエステルを含有するグリセロールのモノエステルとジエステルの混合物を使用してもよい。例えば、45重量%〜55重量%のモノエステルと55重量%〜45重量%のジエステルの混合物を含有する市販のグリセロールモノオレエートを使用してもよい。
【0040】
これらの脂肪酸エスエルを製造するのに有用な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸、およびエレオステアリン酸、ならびにタロー油、パーム油、オリーブ油、ピーナッツ油のような天然産物由来の酸が挙げられる。
【0041】
脂肪酸アミドは、米国特許第4,280,916号に詳細に記載されている。適切なアミドは、C〜C24脂肪族モノカルボン酸アミドであり、周知のものである。脂肪酸ベース化合物とアンモニアとを反応させると脂肪アミドが生成する。脂肪酸および脂肪酸から誘導されるアミドは、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。重要な脂肪酸としては、ラウリン酸(C12)、パルミチン酸(C16)、およびステアリン酸(C18)が挙げられる。他の重要な不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸が挙げられ、これらはすべてC18である。一実施形態では、本発明の脂肪アミドは、C18不飽和脂肪酸から誘導されるアミドである。
【0042】
脂肪アミンおよびジエトキシ化長鎖アミン、例えば、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−タローアミン自体は、一般的に、本発明の成分として有用である。両方の種類のアミンが市販されている。脂肪アミンおよびエトキシ化脂肪アミンは、米国特許第4,741,848号に非常に詳細に記載されている。
【0043】
ヒドロキシ−カルボン酸から誘導される摩擦調整剤は、酸とアルコールおよび/またはアミンとの反応によって作られてもよい。適切なヒドロキシ−カルボン酸としては、以下の式によってあらわされるものが挙げられ、
【0044】
【化1】
式中、aおよびbは、独立して、1〜5、または1〜2の整数であってもよく;Xは、脂肪族基または脂環式基、または炭素鎖中に酸素原子を含む脂肪族もしくは脂環式基、または上の種類の置換された基であってもよく、この基は、6個までの炭素原子を含み、a+bの利用可能な結合点を含み;各Yは、独立して、−O−、>NH、または>NRであってもよく、または、2個のYが一緒になって、2個のカルボニル基の間に作られるイミド構造R−N<の窒素をあらわし;RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはヒドロカルビル基であってもよく、但し、少なくとも1つのR基およびR基は、ヒドロカルビル基であってもよく;各Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル基またはアシル基であってもよく、さらに、但し、少なくとも1つの−OR基が、−C(O)−Y−R基の少なくとも1つに対してαまたはβにあるXの中の炭素原子の上に位置している。
【0045】
一実施形態では、酸は、以下の式によってあらわされ、
【0046】
【化2】
式中、各Rは、独立して、Hまたはヒドロカルビル基であるか、またはR基が一緒になって環を形成する。一実施形態では、摩擦調整剤はホウ素化されている(borated)。別の実施形態では、摩擦調整剤は、ホウ素化されていない。
【0047】
上のいずれかの実施形態では、ヒドロキシ−カルボン酸は、酒石酸、クエン酸、またはこれらの組み合わせであってもよく、このような酸の反応性等価体であってもよい(エステル、酸ハロゲン化物または無水物を含む)。得られた摩擦調整剤は、酒石酸、クエン酸のイミド、ジ−エステル、ジ−アミド、またはエステル−アミド誘導体、またはこれらの混合物であってもよい。一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、酒石酸のイミド、ジ−エステル、ジ−アミド、またはエステル−アミド誘導体を含む。
【0048】
摩擦調整剤の調製で使用するアミンは、式RR’NHを有していてもよく、ここで、RおよびR’は、それぞれ独立して、H、1個または8個〜30個または150個の炭素原子(すなわち、1〜150個、または8〜30個、または1〜30個、または8〜150個の原子)の炭化水素系のラジカルをあらわす。また、下限が2、3、4、6、10、または12個の炭素原子であり、上限が120、80、48、24、20、18、または16個の炭素原子である炭素原子範囲を有するアミンを使用してもよい。一実施形態では、R基およびR’基は、それぞれ、8個または6個〜30個または12個の炭素原子を含む。一実施形態では、RおよびR’の炭素原子の合計は、少なくとも8である。RおよびR’は、直鎖であってもよく、分枝鎖であってもよい。一実施形態では、RおよびR’は、直鎖であり、少なくとも12個の炭素を含む。このような実施形態では、これらの基は、ある程度の不飽和部を含んでいてもよい。
【0049】
摩擦調整剤を調製するのに有用なアルコールは、同様に、1個または8個〜30個または150個の炭素原子を含む。また、下限が2、3、4、6、10、または12個の炭素原子であり、および上限が120、80、48、24、20、18、または16個の炭素原子である炭素原子範囲を有するアルコールを使用してもよい。特定の実施形態では、アルコールに由来する基の炭素原子の数は、8〜24個、10〜18個、12〜16個、または13個の炭素原子であってもよい。
【0050】
アルコールおよびアミンは、直鎖または分枝鎖であってもよく、分枝鎖である場合、鎖中の任意の点で分岐が起こってもよく、分岐は、任意の長さであってもよい。ある実施形態では、使用するアルコールおよび/またはアミンとしては、分岐した化合物が挙げられ、さらに他の実施形態では、使用するアルコールおよびアミンは、少なくとも50%、75%、またはさらには80%分岐している。
【0051】
ある実施形態では、使用するアルコールおよび/またはアミンとしては、分岐したC6〜18またはC8〜18のアルコール、分岐したC12〜16アルコール、2−エチルヘキサノール、イソトリデシルアルコール、直鎖のC6〜18またはC8〜18アルコール、直鎖のC12〜16アルコール、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
一実施形態では、ヒドロキシ−酸から誘導される摩擦調整剤は、以下の式の化合物によってあらわされてもよく、
【0053】
【化3】
式中、n’は、0〜10であり;pは、1〜5であり;YおよびY’は、独立して、−O−、>NH、>NR、または2個の>C=O基の間にR−N<基を生成する、Y基およびY’基の連結によって作られるイミド基であり;RおよびRは、独立して、典型的には、1、4または6個〜150、30または24個の炭素原子を含む、ヒドロカルビル基であり;mは、0または1であり、Xは、独立して、−CH−、>CHRまたは>CR、>CHOR10、または>C(CO10、−CH、−CHまたは−CHR、−CHOR10、または−CH(CO10、またはこれらの混合物であり、Rは、ヒドロカルビル基であり;RおよびRは、独立して、ケト含有基(例えば、アシル基)、エステル基またはヒドロカルビル基であり;R10は、独立して、水素、または、典型的には、1〜150個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。
【0054】
ある実施形態では、式IVによってあらわされる化合物は、ヒドロキシルを含有する少なくとも1つのXを含む(例えば、>CHOR10、R10は水素である)。Xがヒドロキシルを含有する場合、化合物は、ヒドロキシ−カルボン酸(例えば、酒石酸、クエン酸、またはこれらの混合物)から誘導されてもよい。一実施形態では、この化合物は、クエン酸から誘導され、RおよびRは、少なくとも6個または8個の炭素原子から150個まで、または6個もしくは8個〜30個もしくは24個の炭素原子を含む。一実施形態では、化合物は、酒石酸から誘導され、RおよびRは、4個または6個〜30個または24個の炭素原子を含む。Xがヒドロキシルを含有しない場合、化合物は、マロン酸、シュウ酸、クロロフェニルマロン酸、これらの反応性等価体(例えば、エステル)またはこれらの混合物から誘導されてもよい。
【0055】
ある実施形態では、本発明の組成物は、これらの任意選択の摩擦調整剤を含まず、他の実施形態では、本明細書に列挙する任意選択の1つ以上の摩擦調整剤は、本発明の組成物中に存在しない。
【0056】
他の実施形態では、さらなる摩擦調整剤が存在し、摩擦調整剤は、ヒドロキシ−酸から誘導される。他の実施形態では、さらなる摩擦調整剤は、オレイル酒石酸イミド、ステアリル酒石酸イミド、2−エチルヘキシル酒石酸イミド、またはこれらの組み合わせである。
【0057】
さらなる摩擦調整剤は、本発明の組成物中に、少なくとも0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.5、または1.0重量%の量で存在していてもよい。さらなる摩擦調整剤は、10、7.5、5、または4または3重量%未満の量で存在していてもよい。
【0058】
ある実施形態では、本発明の組成物は、ヒドロキシ−酸から誘導される摩擦調整剤(例えば、上述のもの)を含まない。ある実施形態では、本発明の組成物は、脂肪アミドの摩擦調整剤(例えば、上述のもの)を含まない。他の実施形態では、本発明の組成物は、任意の第2の摩擦調整剤を本質的に含まないか、または含まない。
【0059】
(安定化成分)
本発明の組成物は、安定化成分を含む。本発明の安定化成分は、媒体に可溶性であり、媒体および/または全組成物中の溶解度を高めるように摩擦調整剤と相互作用する。これは、安定化成分と摩擦調整剤の会合によって達成されてもよく、会合した分子の懸濁した粒子を生じ、摩擦調整剤単独によって得られるよりも大きな程度まで、媒体および/または全組成物に懸濁、分散、および/または溶解したままである。
【0060】
本発明の安定化成分は、添加剤であり、媒体中の摩擦調整剤と合わせたとき、安定化成分を含有しない同じ組成物と比較して、組成物の濁度を向上させる。安定化成分は、少なくとも1つの水素供与基と、少なくとも1つの水素受容基と、少なくとも1つのヒドロカルビル基とを含み、水素供与基と水素受容基とが、8個を超える共有結合およびイオン結合によって離されていないような化合物を含む。
【0061】
ある実施形態では、安定化成分は、(a)三級アミノ基を含むヒドロカルビル置換された化合物と、(b)(a)の三級アミノ基を四級窒素に変換するのに適切な四級化剤との反応生成物を含む四級塩を含み、四級化剤は、ジアルキルスルフェート、ハロゲン化ベンジル、ヒドロカルビル置換されたカーボネート;酸と組み合わせたヒドロカルビルエポキシド、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0062】
四級塩は、(i)(a)ヒドロカルビル置換されたアシル化剤と、このアシル化剤と縮合させることができる、酸素原子または窒素原子を含む化合物との縮合生成物であり、さらに三級アミノ基を含む、縮合生成物;(b)少なくとも1つの三級アミノ基を含むポリアルケン置換されたアミン;(c)三級アミノ基を含み、ヒドロカルビル置換されたフェノールと、アルデヒドと、アミンとの反応から調製された、Mannich反応生成物、からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、(ii)化合物(i)の三級アミノ基を四級窒素に変換するのに適切な四級化剤との反応生成物を含んでいてもよく、四級化剤は、ジアルキルスルフェート、ハロゲン化ベンジル、ヒドロカルビル置換されたカーボネート;酸と組み合わせたヒドロカルビルエポキシド、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0063】
一実施形態では、四級塩は、(i)少なくとも1つの三級アミノ基を含むポリアルケン置換されたアミンおよび/または三級アミノ基を含むMannich反応生成物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、(ii)四級化剤との反応生成物を含む。
【0064】
別の実施形態では、四級塩は、(i)無水コハク酸とアミンの反応生成物と、(ii)四級化剤との反応生成物を含む。このような実施形態では、無水コハク酸は、ポリイソブチレンおよび無水物から誘導されてもよく、ポリイソブチレンは、数平均分子量が約800〜約1600である。ある実施形態では、無水コハク酸は、塩素を含まない。
【0065】
ある実施形態では、上述の成分(i)(a)のヒドロカルビル置換されたアシル化剤は、長鎖炭化水素の反応生成物、一般的に、一不飽和カルボン酸反応剤、
例えば、(1)一不飽和C〜C10ジカルボン酸、例えば、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸;(2)(1)の誘導体、例えば、無水物またはC〜Cアルコールから誘導された(1)のモノエステルまたはジエステル;(3)一不飽和C〜C10モノカルボン酸、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸;または(iv4)(3)の誘導体、例えば、一般式
(R)(R)C=C(R)(CH(R)(R))
(式中、各Rは、独立して、水素またはヒドロカルビル基である)
によってあらわされるオレフィン性結合を含む任意の化合物との(3)のC〜Cアルコールから誘導されるエステル
で置換されたポリオレフィンである。
【0066】
一不飽和カルボン酸との反応のためのオレフィンポリマーとしては、主要なモル量のC〜C20、例えば、C〜Cモノオレフィンを含むポリマーを挙げることができる。このようなオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、オクテン−1、またはスチレンが挙げられる。ポリマーは、ホモポリマー、例えば、ポリイソブチレン、およびこのような2種類以上のオレフィンのコポリマー、例えば、エチレンとプロピレン;ブチレンとイソブチレン;プロピレンとイソブチレンのコポリマーが挙げられる。他のコポリマーとしては、少量のモル量のコポリマーモノマー(例えば、1〜10モル%が、C〜C18ジオレフィンである)、例えば、イソブチレンとブタジエンのコポリマー;またはエチレンと、プロピレンと、1,4−ヘキサジエンとのコポリマーが挙げられる。
【0067】
一実施形態では、上に与えられているオレフィン性結合を含む化合物を記述する式の少なくとも1つのRが、ポリブテンから誘導され、つまり、Cオレフィン(1−ブテン、2−ブテン、およびイソブチレンを含む)のポリマーである。Cポリマーは、ポリイソブチレンを含んでいてもよい。別の実施形態では、式の少なくとも1つのRは、エチレン−アルファオレフィンポリマーから誘導される(エチレン−プロピレン−ジエンポリマーを含む)。エチレン−アルファオレフィンコポリマーと、エチレン−低級オレフィン−ジエンターポリマーは、欧州特許公開第EP0279863号および以下の米国特許3,598,738号;第4,026,809号;第4,032,700号;第4,137,185号;第4,156,061号;第4,320,019号;第4,357,250号;第4,658,078号;第4,668,834号;第4,937,299号;第5,324,800を含め、多くの特許文献に記載されており、これらはそれぞれ、これらのエチレン系ポリマーの関連する開示内容について、本明細書に参考として組み込まれる。
【0068】
別の実施形態では、上述のオレフィン性結合を含む化合物のオレフィン性結合は、主に、以下の式によってあらわされるビニリデン基である。
−(H)C=C(R)(R
式中、Rは、ヒドロカルビル基であり、ある実施形態では、両方のR基がメチル基であり、
−(H)(R)C(C(CH)=CH2)
式中、Rは、ヒドロカルビル基である。
【0069】
一実施形態では、上述のオレフィン性結合を含む化合物のビニリデン含有量は、少なくとも約30モル%のビニリデン基、少なくとも約50モル%のビニリデン基、または少なくとも約70モル%のビニリデン基を含んでいてもよい。このような材料およびこの材料を調製する方法は、米国特許第5,071,919号;第5,137,978号;第5,137,980号;第5,286,823号;第5,408,018号;第6,562,913号;第6,683,138号;第7,037,999号、ならびに米国特許公開第20040176552A1号、第20050137363号、および第20060079652A1号に記載されており、本明細書に明らかに参考として組み込まれ、このような生成物は、BASFから商標名GLISSOPAL(登録商標)で市販されており、Texas Petrochemicals LPから商標名TPC 1105(商標)、およびTPC 595(商標)で市販されている。
【0070】
一不飽和カルボン酸反応剤と、上述のオレフィン性結合を含む化合物との反応から、ヒドロカルビル置換されたアシル化剤を製造する方法は、当該技術分野でよく知られており、以下の特許:米国特許第3,361,673号および第3,401,118号に開示されており、熱「エン」反応が起こることについて、米国特許第3,087,436号;第3,172,892号;第3,272,746号;第3,215,707号;第3,231,587号;第3,912,764号;第4,110,349号;第4,234,435号;第6,077,909号;第6,165,235号に開示されており、本明細書に参考として組み込まれる。
【0071】
別の実施形態では、ヒドロカルビル置換されたアシル化剤は、以下の式によってあらわされる少なくとも1つのカルボン酸反応剤:
(ROC(O)(RC(O))R
と、
【0072】
【化4】
(式中、各Rは、独立して、Hまたはヒドロカルビル基であり、各Rは、二価のヒドロカルビレン基であり、nは、0または1である)
と、上述の様なオレフィン結合を含む任意の化合物との反応から作られてもよい。この化合物と、これらの化合物を製造するプロセスは、米国特許第5,739,356号;第5,777,142号;第5,786,490号;第5,856,524号;第6,020,500号;第6,114,547号に開示され、本明細書に参考として組み込まれる。
【0073】
ヒドロカルビル置換されたアシル化剤を製造する他の方法は、以下の参考文献、米国特許第5,912,213号;第5,851,966号;第5,885,944号中に見つけることができ、本明細書に参考として組み込まれる。
【0074】
アシル化剤と縮合させることができ、三級アミノ基をさらに含む酸素原子または窒素原子を含む化合物は、以下の式によってあらわされてもよい。
【0075】
【化5】
式中、Xは、約1〜約4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、各Rは、独立して、ヒドロカルビル基であり、R6’は、水素またはヒドロカルビル基であってもよい。
【0076】
【化6】
式中、Xは、約1〜約4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、各Rは、独立して、ヒドロカルビル基である。
【0077】
アシル化剤と縮合させることができ、三級アミノ基をさらに含む、窒素または酸素を含む化合物の例としては、限定されないが、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、異性体のブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ヘキサメチレンテトラミン、およびビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ジアミノベンゼン、ジアミノピリジンまたはこれらの混合物が挙げられ得る。それに加え、アルキル化されて、三級アミノ基を含んでもよい窒素または酸素を含む化合物も使用してもよい。三級アミノ基を含むようにアルキル化した後に、アシル化剤と縮合させることができる窒素または酸素を含む化合物の例としては、限定されないが、ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチル−アミノプロピルアミン、N,N−ジエチル−アミノプロピルアミン、N,N−ジメチル−アミノエチルアミンまたはこれらの混合物が挙げられ得る。アシル化剤と縮合させることができ、三級アミノ基をさらに含む、窒素または酸素を含む化合物としては、さらにアミノアルキル置換ヘテロ環式化合物を挙げることができ、例えば、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールおよび4−(3−アミノプロピル)モルホリン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、3,3−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、3’3−アミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)が挙げられ得る。別の種類のアシル化剤と縮合させることができ、三級アミノ基を含む、窒素または酸素を含む化合物としては、アルカノールアミンが挙げられ、限定されないが、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノブタノール、N,N,N−トリス(ヒドロキシエチル)アミン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0078】
四級化剤とともに用いる酸は、一般式R−COOHであらわされ、Rがヒドロカルビル基である有機酸であってもよい。ある実施形態では、この酸のヒドロカルビル基は、1〜10個、1〜6個、または1〜4個の炭素原子を含む。ある実施形態では、酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、またはペンタン酸であってもよい。
【0079】
四級アンモニウム塩、およびこの四級アンモニウム塩を調製する方法の例は、US4,253,980号、US3,778,371号、US4,171,959号、US4,326,973号、US4,338,206号、US5,254,138号に記載されており、本明細書に参考として組み込まれる。
【0080】
本発明の四級塩はまた、三級アミノ基を含有するポリエステルと、三級アミノ基を四級窒素に変換するのに適した四級化剤との反応から誘導されてもよいポリエステル四級アンモニウム塩も含んでいてもよい。
【0081】
本発明の添加剤の調製で用いられる三級アミノ基を含有するポリエステルは、三級アミノ基を含有する四級化されていないポリエステルとして記述することもできる。
【0082】
ある実施形態では、ポリエステルは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む脂肪カルボン酸と、前記酸と縮合することができ、三級アミノ基をさらに含む、酸素原子または窒素原子を含む化合物との反応生成物である。上述のポリエステルの調製に使用可能な適切な脂肪カルボン酸は、以下の式であらわされてもよく、
【0083】
【化7】
式中、Rは、水素、または1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、Rは、1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビレン基である。ある実施形態では、Rは、1〜12個、2〜10個、4〜8個、または6個の炭素原子を含んでおり、Rは、2〜16個、6〜14個、8〜12個、または10個の炭素原子を含む。
【0084】
ある実施形態では、ポリエステルの調製に用いられる脂肪カルボン酸は、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシデカン酸、4−ヒドロキシデカン酸、10−ヒドロキシウンデカン酸、またはこれらの組み合わせである。
【0085】
前記酸と縮合することができ、三級アミノ基をさらに含む、酸素原子または窒素原子を含む化合物は、アシル化剤と縮合することができ、酸素原子または窒素原子を含む化合物として上に述べた任意の材料を含んでいてもよい。適切な材料は、以下の式によってあらわされてもよく、
【0086】
【化8】
式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;Rは、1〜10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;Rは、1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビレン基であり;Xは、OまたはNRであり、Rは、水素、または1〜10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。ある実施形態では、Rは、1〜6個、1〜2個、または1個の炭素原子を含み、Rは、1〜6個、1〜2個、または1個の炭素原子を含み、Rは、2〜12個、2〜8個、または3個の炭素原子を含み、Rは、1〜8個、または1〜4個の炭素原子を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、化合物は、以下のようになり、
【0087】
【化9】
上に提示した種々の定義をここでも適用する。
【0088】
ポリエステル剤と縮合させることができる、窒素または酸素を含有する化合物の例は、アシル化剤と縮合することができる材料の例として上に列挙したすべてのものを含む。
【0089】
四級化されたポリエステル塩は、四級化されたポリエステルアミド塩であってもよい。このような実施形態では、四級化されたポリエステル塩を調製するために用いられる三級アミノ基を含有するポリエステルは、三級アミノ基を含むポリエステルアミドである。これらの実施形態のいくつかにおいて、アミンまたはアミノアルコールをモノマーと反応させ、次いで、得られた材料をさらなるモノマーと重合させ、望ましいポリエステルアミドを得て、次いで、これを四級化してもよい。
【0090】
ある実施形態では、四級化されたポリエステル塩としては、以下の式によってあらわされるアニオンが挙げられ、
【0091】
【化10】
式中、Rは、水素、または1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、Rは、1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビレン基であり;Rは、1〜10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;Rは、1〜10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;Rは、1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビレン基であり;Rは、水素、または1〜10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;nは、1〜10の整数であり;Rは、水素、1〜22個の炭素原子を含むヒドロカルボニル基、または1〜22個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;Xは、四級化剤から誘導される基である。ある実施形態では、Rは水素である。
【0092】
上のように、ある実施形態では、Rは、1〜12個、2〜10個、4〜8個、または6個の炭素原子を含み、Rは、2〜16個、6〜14個、8〜12個、または10個の炭素原子を含み、Rは、1〜6個、1〜2個、または1個の炭素原子を含み、Rは、1〜6個、1〜2個、または1個の炭素原子を含み、Rは、2〜12個、2〜8個、または3個の炭素原子を含み、Rは、1〜8個、または1〜4個の炭素原子を含む。これらのいずれかの実施形態では、nは、2〜9、または3〜7であってもよく、Rは、6〜22個、または8〜20個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0093】
これらの実施形態では、四級化されたポリエステル塩は、C1〜22、またはC8〜20の脂肪酸で本質的にキャップ化されている。適切な酸の例としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、9,11−リノール酸、9,12−リノール酸、9,12,15−リノレン酸、アビエチン酸、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
本発明の四級化されたポリエステル塩の数平均分子量(Mn)は、500〜3000、または700〜2500であってもよい。
【0095】
本発明で有用なポリエステルは、1種類以上のヒドロキシカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸とカルボン酸の混合物を、場合によりエステル化触媒存在下で加熱することによって得ることができる。ヒドロキシカルボン酸は、式HO−X−COOHを有していてもよく、ここで、Xは、少なくとも8個の炭素原子を含み、ヒドロキシ基とカルボン酸基との間に少なくとも4個の炭素原子がある二価の飽和または不飽和の脂肪族基であるか、またはこのようなヒドロキシカルボン酸とヒドロキシ基を含まないカルボン酸との混合物から得られてもよい。この反応は、望ましい分子量が得られるまで、160℃〜200℃の範囲の温度で行われてもよい。一連のエステル化の後、生成物の酸価を測定することができ、望ましいポリエステルは、ある実施形態では、酸価が10〜100mg KOH/g、または20〜50mg KOH/gの範囲である。10〜100mg KOH/gというここに示した酸価範囲は、5600〜560の数平均分子量範囲と等価である。エステル化反応で生成する水を反応媒体から除去することができ、反応混合物の上に窒素蒸気を流すことによって、または、溶媒(例えば、トルエンまたはキシレン)存在下で反応を行い、生成した水を留去することによって簡便に行うことができる。
【0096】
次いで、得られたポリエステルを従来の様式で単離することができるが、その後の適用で存在が有害ではないと思われる有機溶媒存在下で反応を行うときは、得られたポリエステル溶液を使用してもよい。
【0097】
このヒドロキシカルボン酸において、Xによってあらわされるラジカルは、12〜20個の炭素原子を含んでいてもよく、場合により、カルボン酸とヒドロキシ基との間に8〜14個の炭素原子が存在している。ある実施形態では、ヒドロキシ基は、二級ヒドロキシ基である。
【0098】
このようなヒドロキシカルボン酸の具体的な例としては、リシノール酸、9−ヒドロキシステアリン酸と10−ヒドロキシステアリン酸との混合物(オレイン酸の硫酸化の後、加水分解によって得られる)、および12−ヒドロキシステアリン酸、ならびに特に、12−ヒドロキシステアリン酸に加え、少量のステアリン酸と少量のパルミチン酸とを含む市販の水素化ヒマシ油脂肪酸が挙げられる。
【0099】
これらのポリエステルを得るためにヒドロキシカルボン酸と組み合わせて使用可能なカルボン酸は、好ましくは、飽和または不飽和の脂肪族化合物のカルボン酸、特に、8〜20個の炭素原子の鎖を含むアルキルカルボン酸およびアルケニルカルボン酸である。このような酸の一例として、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸を挙げてもよい。
【0100】
一実施形態では、ポリエステルは、数平均分子量が約1600の市販の12−ヒドロキシ−ステアリン酸から誘導される。このようなポリエステルは、例えば、英国特許明細書第1373660号および第1342746号に非常に詳細に記載されている。
【0101】
ある実施形態では、上述の添加剤を調製するために用いられる成分は、非ポリエステル含有(non−polyester−containing)ヒドロカルビル置換されたアシル化剤および/または非ポリエステル含有ヒドロカルビル置換されたジアシル化剤、例えば、ポリイソブチレンなどを実質的に含まないか、本質的に含まないか、または完全に含まない。ある実施形態では、これらの除外される剤は、長鎖炭化水素の反応生成物であり、一般的に、一不飽和カルボン酸反応剤、例えば、(i)α,β−一不飽和C〜C10ジカルボン酸、例えば、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸;(ii)(i)の誘導体、例えば、(i)の無水物、またはC〜Cアルコールから誘導されるモノエステルまたはジエステル;(iii)α,β−一不飽和C〜C10モノカルボン酸、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸;または(iv)(iii)の誘導体、例えば(iii)のC〜Cアルコールから誘導されるエステルと、一般式(R)(R10)C=C(R11)(CH(R)(R))(RおよびR10が、それぞれ独立して、水素または炭化水素系の基であり、R11、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、または炭化水素系の基であり、好ましくは、少なくとも1つは、少なくとも20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)によってあらわされるオレフィン結合を含む任意の化合物との誘導体と反応したポリオレフィンである。一実施形態では、除外されたヒドロカルビル置換されたアシル化剤は、ジカルボン酸アシル化剤である。これらの実施形態のいくつかにおいて、除外されたヒドロカルビル置換されたアシル化剤は、ポリイソブチレンコハク酸無水物である。
【0102】
実質的に含まないとは、本発明の成分が、主に、上述のヒドロカルビル置換されたアシル化剤以外の物質から構成され、その結果、これらの剤が、反応に顕著に関与せず、本発明の組成物が、このような剤から誘導される顕著な量の添加剤を含まないことを意味する。ある実施形態では、本発明の成分、または本発明の組成物は、これらの剤またはこれらの剤から誘導される添加剤を10重量%未満含み得る。他の実施形態では、最大限許容され得る量は、5、3、2、1重量%、または0.5重量%または0.1重量%であってもよい。これらの実施形態の目的のひとつは、ポリイソブチレンコハク酸無水物のような剤を本発明の反応から除外することができることであり、そのため、例えば、ポリイソブチレンコハク酸無水物のような剤から誘導される四級化された塩清浄剤添加剤を排除することもできる。本発明の関心は、ポリエステルまたは超分散剤、四級塩清浄剤添加剤に集まっている。
【0103】
上述の四級化されたポリエステル塩の調製に有用な四級化剤には、他の四級化された塩について上に記載した任意の四級化剤が含まれる。一実施形態では、四級化剤は、酸と組み合わせたヒドロカルビルエポキシドであってもよい。ヒドロカルビルエポキシドの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドおよびこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、四級化剤は、スチレンオキシドを含まない。
【0104】
ある実施形態では、ヒドロカルビルエポキシドとともに用いられる酸は、別個の成分、例えば、酢酸であってもよい。他の実施形態では、例えば、ヒドロカルビルアシル化剤がジカルボン酸アシル化剤であるとき、別個の酸成分は必要ない。このような実施形態では、清浄剤は、別個の酸成分(例えば、酢酸)を本質的に含まないか、または含まない反応剤を組み合わせることによって調製されてもよく、その代りに、ヒドロカルビルアシル化剤の酸基に頼ってもよい。他の実施形態では、少量の酸成分が存在してもよいが、ヒドロカルビルアシル化剤1モルあたり、0.2モル未満、または0.1モル未満の酸が存在していてもよい。
【0105】
ある実施形態では、本発明の四級化剤は、20個を超える炭素原子を含む置換基を含まない。言い換えると、ある実施形態では、得られる添加剤が有機物可溶性であり、そのため、本発明の目的にとって有用な長い置換基は、四級化剤によって与えられるのではなく、上述の四級化されていない清浄剤によって添加剤にもたらされる。
【0106】
特定の実施形態では、アミン官能基を有する清浄剤と四級化剤とのモル比は、1:0.1〜2、または1:1〜1.5、または1:1〜1.3である。
【0107】
ある実施形態では、四級塩を調製するために用いられる三級アミノ基を含むヒドロカルビル置換された化合物としては、(1)ヒドロカルビル置換されたアシル化剤と、前記アシル化剤と縮合可能である、酸素原子または窒素原子を含む化合物との縮合生成物であり、さらに三級アミノ基を含む縮合生成物;(2)少なくとも1つの三級アミノ基を含むポリアルケン置換されたアミン;(3)三級アミノ基を含むMannich反応生成物であり、このMannich反応生成物が、ヒドロカルビル置換されたフェノールと、アルデヒドと、アミンとの反応から調製される生成物;(4)三級アミノ基を含有するポリエステル;またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0108】
ある実施形態では、安定化成分は、式[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq−によってあらわされるポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含み、ここで、Yは、水素であるか、または置換もしくは非置換のヒドロカルビル基、例えば、ヒドロキシ置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価のヒドロカルビル基であり、nは、1〜100であり、mは、1〜4であり、qは、1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子によってカルボニル基に結合した二価の架橋基であり、rは、0または1であり、Rは、アンモニウム基であり、Xq−は、アニオンである。ある実施形態では、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の式中のAは、完全に飽和である。
【0109】
ある実施形態では、これらの安定化成分は、式[Y−[O−A−CO]−Z−RpXq−によってあらわされ、Yは、水素、ヒドロ−カルボニル基(例えば、H−A−CO−)、場合により置換されたヒドロカルビル基(例えば、H−A−またはHO−A−)、例えば、ヒドロキシ置換されたヒドロカルビル基またはヒドロカルボニル基(例えば、HO−A−CO−)であり、Aは、二価のヒドロカルビル基であり、nは、1〜100であり、mは、1〜4であり、qは、1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子によってカルボニル基に結合した二価の架橋基であり、rは、0または1であり、Rは、アンモニウム基であり、Xq−は、アニオンである。ある実施形態では、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の式中のAは、完全に飽和である。
【0110】
さらに他の実施形態では、これらの安定化成分は、式[H−[O−A−CO](n+1)−Z−RpXq−によってあらわされ、式中、Aは、二価のヒドロカルビル基であり、nは、1〜100であり、mは、1〜4であり、qは、1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子によってカルボニル基に結合した二価の架橋基であり、rは、0または1であり、Rは、アンモニウム基であり、Xq−は、アニオンである。ある実施形態では、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の式中のAは、完全に飽和である。
【0111】
上述のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、超分散剤(hyperdispersant)とも呼ばれることがある。上の式中のR基は、一級、二級、三級または四級のアンモニウム基であってもよい。ある実施形態では、Rは、四級アンモニウム基である。ある実施形態では、上の超分散剤の式のRは、式−N(R)(R)(R)によってあらわされ、R、R、Rは、水素およびアルキル基(例えば、メチル)から選択されてもよい。
【0112】
上の超分散剤の式において、Aは、二価の直鎖または分枝鎖のヒドロカルビル基であってもよい。Aは、置換された芳香族、脂肪族または脂環式の直鎖または分枝鎖の二価ヒドロカルビル基であってもよい。ある実施形態では、Aは、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基であり、特に、4〜25個、6〜25個、8〜24個、10〜22個、または12〜20個の炭素原子を含むアリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基であってもよい。ある実施形態では、カルボニル基と、ヒドロキシル基から誘導される酸素原子との間を、少なくとも4個、6個または8〜14個の炭素原子が直接連結している。A基の中の任意選択の置換基は、ヒドロキシ基、ハロ基またはアルコキシ基、特に、C1〜4アルコキシ基から選択されてもよい。
【0113】
上の超分散剤の式では、nは、1〜100の範囲であるが、nの下限は、2または3であってもよい。nの上限は、100、60、40、20または10であってもよい。言い換えると、nは、以下の範囲:1〜100;2〜100;3〜100;1〜60;2〜60;3〜60;1〜40;2〜40;3〜40;1〜20;2〜20;3〜20;1〜10;2〜10;および3〜10のいずれかから選択されてもよい。
【0114】
上の超分散剤の式では、Yは、場合により置換されたヒドロカルビル基である。Yは、50個までの炭素原子、または7〜25個の範囲の炭素原子を含有するアリール、アルキルまたはアルケニルであってもよい。例えば、場合により置換されたヒドロカルビル基Yは、簡便には、ヘプチル、オクチル、ウンデシル、ラウリル、ヘプタデシル、ヘプタデセニル、ヘプタデカジエニル、ステアリル、オレイル、およびリノレイルから選択されてもよい。Yの他の例としては、C4〜8シクロアルキル、例えば、シクロヘキシル;ポリシクロアルキル、例えば、天然に存在する酸(例えば、アビエチン酸)から誘導される多環式テルペニル基;アリール、例えば、フェニル;アラルキル、例えば、ベンジル;ならびにポリアリール、例えば、ナフチル、ビフェニル、スチルベニル、およびフェニルメチルフェニルが挙げられる。Yは、1つ以上の官能基、例えば、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アミノ、好ましくは、三級アミノ(N−H結合がない)、オキシ、シアノ、スルホニルおよびスルホキシルを含んでいてもよい。置換ヒドロカルビル基中の水素以外の原子の大部分は、一般的に炭素であり、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素および硫黄)は、一般的に、存在する非水素原子の少量のみ、約33%以下をあらわす。当業者は、置換ヒドロカルビル基Y中の官能基、例えば、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、ニトロおよびシアノが、ヒドロカルビルの水素原子の1つと置き換わりつつ、一方、置換ヒドロカルビル基中の官能基、例えば、カルボニル、カルボキシル、三級アミノ(−N−)、オキシ、スルホニルおよびスルホキシルが、ヒドロカルビルの−CH−部分または−CH−部分と置き換わっていることを理解する。ある実施形態では、Yは、置換されていないか、または、ヒドロキシ基、ハロ基またはアルコキシ基、例えば、C1〜4アルコキシ基から選択される基で置換されている。なおさらなる実施形態では、Yは、ステアリル基、12−ヒドロキシステアリル基、オレイル基または12−ヒドロキシオレイル基、および天然に存在する油(例えば、トール油脂肪酸)から誘導される基である。
【0115】
上の超分散剤の式では、Zは、式:−N(R)−B−によってあらわされる場合により置換された二価の架橋基であってもよく、Rは、水素またはヒドロカルビル基であり、Bは、場合により置換されたアルキレン基である。Rをあらわしてもよいヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、およびオクタデシルが挙げられる。Bをあらわしてもよい場合により置換されたアルキレン基の例としては、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、およびヘキサメチレンが挙げられる。Z部分の例としては、−NHCHCH−、−NHCHC(CHCH−、および−NH(CH−が挙げられる。
【0116】
上の超分散剤の式では、rは、好ましくは、1であり、すなわち、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、場合により置換された二価の架橋基Zを含まなければならない。
【0117】
アニオンXq−は、上の超分散剤の式では、重要ではなく、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミドカチオンの正電荷とバランスを取るのに適した任意のアニオン(またはアニオンの混合物)であってもよい。アニオンXq−は、硫黄含有アニオン、例えば、スルフェートアニオン、およびスルホネートアニオンであってもよい。しかし、ある実施形態では、アニオンXq−は、硫黄を含有しないアニオン、例えば、硫黄を含有しない有機アニオンまたは無機アニオンである。適切なアニオンの非限定例は、OH、CH、NH、HCO、HCOO、CHCOO、H、BO3−、CO2−、C、HCO2−、C2−、HC、NO、NO、N3−、NH、O2−、O2−、BeF、F、Na、[Al(HO)(OH)、SiO、SiF、HPO、P3−、PO3−、HPO2−、Cl、ClO、ClO、ClO、KO、SbOH、SnCl2−、[SnTe4−、CrO2−、Cr2−、MnO、NiCl2−、[Cu(CO(OH)4−、AsO3−、Br、BrO、IO、I、CN、OCNなどである。適切なアニオンは、カルボン酸基を含む化合物から誘導されるアニオン(例えば、カルボン酸アニオン)、ヒドロキシル基を含む化合物から誘導されるアニオン(例えば、アルコキシド、フェノキシドまたはエノレートアニオン)、窒素系アニオン(例えば、ニトレートおよびニトリット)、リン系アニオン(例えば、ホスフェートおよびホスホネート)、またはこれらの混合物から誘導されるアニオンを含んでいてもよい。カルボン酸基を含む化合物から誘導される適切なアニオンの非限定例としては、酢酸アニオン、オレイン酸アニオン、サリチル酸アニオン、およびこれらの混合物が挙げられる。ヒドロキシル基を含む化合物から誘導される適切なアニオンの非限定例としては、石炭酸アニオン、およびこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態では、アニオンXq−は、OH、フェネート基、サリチレート基、オレエート基、およびアセテート基からなる群から選択される硫黄を含有しないアニオンであり、さらに他の実施形態では、アニオンはOHである。
【0118】
1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、アミンおよび式Y−CO[O−A−CO]−OH(Yは、水素または場合により置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の場合により置換されたヒドロカルビル基であり、nは、1〜100である)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、酸または四級化剤との反応によって得られてもよい。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の式のY、Aおよびnは、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の式について上のように定義されてもよい。
【0119】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル」との用語は、炭化水素の炭素原子から1つ以上の水素原子が除去されることによって作られるラジカルをあらわす(より多くの水素原子が除去される場合には、必ずしも同じ炭素原子ではない)。ヒドロカルビル基は、芳香族基、脂肪族基、非環状基または環状基であってもよい。好ましくは、ヒドロカルビル基は、アリール、シクロアルキル、アルキルまたはアルケニルであり、場合には、直鎖であってもよく、分枝鎖基であってもよい。代表的なヒドロカルビル基としては、フェニル、ナフチル、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、メチルペンチル、ヘキセニル、ジメチルヘキシル、オクテニル、シクロオクテニル、メチルシクロオクテニル、ジメチルシクロオクチル、エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ドデシル、ヘキサデセニル、エイコシル、ヘキサコシル、トリアコンチル、およびフェニルエチルが挙げられる。「場合により置換されたヒドロカルビル」との句は、1つ以上の「不活性」なヘテロ原子を含有する官能基を場合により含むヒドロカルビル基を記述するために用いられる。「不活性」とは、化合物の機能とかなりの程度で干渉を起こさない官能基を意味する。
【0120】
一実施形態では、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体のうち、少なくとも1つまたはすべては、硫黄含有誘導体である。このような実施形態では、この誘導体は、ICP−AESによって測定する場合、前記誘導体の合計重量を基準として、硫黄含有量が最大でも2.5重量%、例えば、0.1〜2.0重量%、または0.6〜1.2重量%であってもよい。本発明の別の実施形態では、1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、硫黄を含有しない誘導体である。
【0121】
上述のポリ(ヒドロキシカルボン酸)中の基(−O−A−CO−)およびそのアミド塩誘導体は、12−オキシステアリル基、12−オキシオレイル基または6−オキシカプロイル基であってもよい。
【0122】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)と反応してポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド中間体を生成するアミンとしては、WO97/41092号に定義されるものを挙げることができる。アミン反応剤は、ジアミン、トリアミンまたはポリアミンであってもよい。適切な例としては、エチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、から選択されるジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびトリス(2−アミノエチル)アミンから選択されるトリアミンならびにポリアミンが挙げられる。
【0123】
アミン反応剤と(ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とのアミド化は、当業者が既知の方法によって、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とアミン反応剤とを、場合により、適切な炭化水素溶媒(例えば、トルエンまたはキシレン)中で加熱し、生成した水を共沸によって除去することによって行われてもよい。この反応は、触媒(例えば、p−トルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウムまたはチタン酸テトラブチル)存在下で行われてもよい。
【0124】
アミンとポリ(ヒドロキシカルボン酸)との反応から作られるポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド中間体と、酸または四級化剤とを周知の方法によって反応させ、塩誘導体を作製する。塩誘導体を生成するために使用可能な酸は、有機酸または無機酸から選択されてもよい。この酸は、簡便には、カルボン酸、窒素を含有する有機酸および無機酸、硫黄を含有する有機酸または無機酸(例えば、硫酸、メタンスルホン酸、およびベンゼンスルホン酸)から選択される。
【0125】
塩誘導体を作製するために使用可能な四級化剤は、硫酸ジメチル、1〜4個の炭素原子を含む硫酸ジアルキル、ハロゲン化アルキル(例えば、塩化メチル、臭化メチル)、ハロゲン化アリール(例えば、塩化ベンジル)から選択されてもよい。一実施形態では、四級化剤は、硫黄含有四級化剤であり、特に、硫酸ジメチルまたは1〜4個の炭素原子を含む硫酸ジアルキル、例えば、硫酸ジメチルである。四級化は、当該技術分野で周知の方法である。例えば、硫酸ジメチルを用いる四級化は、米国特許第3,996,059号、米国特許第4,349,389号およびGB 1 373 660号に記載されている。
【0126】
ある実施形態では、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体は、TBN(全塩基価)の値は、ASTM D 4739によって測定される場合、10mg KOH/グラム未満、または5mg KOH/グラム未満、または2mg KOH/グラム未満である。市販されているポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の例としては、Lubrizolから商品名「SOLSPERSE 17000」で入手可能なもの(ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)と、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンおよび硫酸ジメチルとの反応生成物)、ならびに商品名「CH−5」および「CH−7」でShanghai Sanzheng Polymer Companyから入手可能なものが挙げられる。
【0127】
ある実施形態では、安定化成分は、高分子量ポリエーテルアミンを含み、この高分子量ポリエーテルアミンは、1単位のヒドロキシ含有ヒドロカルビル化合物と、2単位以上のブチレンオキシドとを反応させ、ポリエーテル中間体を生成し、ポリエーテル中間体とアミンまたはアクリロニトリルとを反応させることによってポリエーテル中間体をアミノ化し、ポリエーテル中間体およびアクリロニトリルの反応生成物を水素化することによって調製されてもよい。
【0128】
適切なポリエーテルアミンは、2個以上のエーテル単位を含んでいてもよく、一般的に、ポリエーテル中間体から調製される。ポリエーテル中間体は、1単位のヒドロキシ含有ヒドロカルビル化合物と、2単位以上のブチレンオキシドとの反応生成物であってもよい。ヒドロキシ含有ヒドロカルビル化合物は、アルコールまたはアルキル置換フェノールであってもよく、アルコールまたはフェノールのアルキル置換基は、1〜50個の炭素原子、第2の場合に6〜30個の炭素原子、および第3の場合に8〜24個の炭素原子を含んでいてもよい。アルコールまたはフェノールのアルキル置換基は、直鎖炭素鎖、分枝鎖炭素鎖、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。ヒドロキシ含有ヒドロカルビル化合物は、1つ以上のヒドロキシル基を含んでいてもよい。
【0129】
ヒドロキシ含有ヒドロカルビル化合物とブチレンオキシドとの反応から得られるポリエーテル中間体は、2〜100個の繰り返しブチレンオキシド単位、第2の実施形態では5〜50個の繰り返しブチレンオキシド単位、および第3の実施形態では15〜30個の繰り返しブチレンオキシド単位を含んでいてもよい。米国特許第5,094,667号は、ポリエーテル中間体を調製するための反応条件を提供する。
【0130】
本発明の高分子量ポリエーテルアミンは、ブチレンオキシドから調製される上述のポリエーテル中間体から調製することができる。
【0131】
本発明の一実施形態では、米国特許第5,094,667号に記載されるように、ブチレンオキシドから誘導されるポリエーテル中間体と、アクリロニトリルとを反応させてニトリルを作製し、次いで、水素化し、末端が3−アミノプロピルのポリエーテルを作製することによって、ポリエーテルアミンが調製される。
【0132】
本発明の別の実施形態では、欧州特許公開第EP310875号に記載されるように、ブチレンオキシドから誘導されるポリエーテル中間体とアミンとをアミノ化反応において反応させ、アミノ化ポリエーテルを得ることによって、ポリエーテルアミンが調製される。このアミンは、一級または二級のモノアミン、反応性N−H結合を有するアミノ基を含むポリアミン、またはアンモニアであってもよい。
【0133】
本発明の高分子量ポリエーテルアミンは、数平均分子量が300または350〜5000、別の場合には、400〜3500、さらなる場合には、450〜2500、および1000〜2000であってもよい。
【0134】
本発明の別の実施形態では、本発明の高分子量ポリエーテルアミンは、式R(OCHCHRAによってあらわされてもよく、式中、Rは、C〜C30アルキル基またはC〜C30アルキル置換フェニル基であり;Rはエチルであり;xは、5〜50の数であり;Aは、OCHCHCHNHまたは−NRであり、ここで、RおよびRは、独立して、水素、ヒドロカルビル基、または−(RNRであり、ここで、Rは、2〜10個の炭素原子を含むアルキレン基であり、RおよびRは、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、yは、1〜7の数である。この明細書全体で、アルキレン基は、二価のアルカン基である。本発明のポリエーテルアミンのさらなる実施形態では、Rは、C〜C24アルキル基であり、xは、15〜30の数であり、Aは−OCHCHCHNHである。
【0135】
ある実施形態では、高分子量ポリエーテルアミンは、式R(OCHCHRAによってあらわされ、ここで、Rは、C〜C30アルキル基またはC〜C30アルキル置換されたフェニル基であり;Rはエチルであり;xは、5〜50の数であり;Aは、−OCHCHCHNHまたは−NRであり、ここで、RおよびRは、独立して、水素、ヒドロカルビル基、または−(RNRであり、ここで、Rは、2〜10個の炭素原子を含むアルキレン基であり、RおよびRは、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、yは、1〜7の数である。
【0136】
ある実施形態では、安定化成分は、アルカノールアミン置換されたフェノールを含み、ここで、フェノールは、ヒドロカルビル置換基を含む。適切な材料は、以下の式によってあらわされてもよく、
【0137】
【化11】
式中、R1は、ヒドロカルビル基であり、Rは、ヒドロカルビレン基であり、各Rは、独立して、ヒドロカルビレン基であり、各Rは、独立して、水素またはヒドロカルビレン基である。ある実施形態では、Rは、1〜20個、8〜20個、8〜16個、10〜14個、または約12個の炭素原子を含み;Rは、1〜8個、1〜6個、1〜4個、少なくとも1個の炭素原子を含むか、または約1個の炭素原子を含み;各R基は、1〜8個、1〜6個、1〜4個、2〜4個、少なくとも2個の炭素原子、または約2個の炭素原子を含み、同じであってもよく;各R基は、水素、または1〜8個、1〜6個、1〜4個、2〜4個、少なくとも2個の炭素原子、または約2個の炭素原子を含むヒドロカルビレン基であり、同じであってもよい。
【0138】
ある実施形態では、安定化成分は、アルキルコハク酸無水物とアルカノールアミンとから誘導される低分子量アシル化窒素化合物を含む。
【0139】
安定化成分は、低分子量アシル化窒素化合物であってもよく、ある実施形態では、アミノエステルまたはアミノエステル塩として記載されてもよい。これらの材料は、アルキルコハク酸無水物とアルカノールアミンとを1:10〜10:1、1:5〜5:1、3:5〜5:3、1:2〜2:1、1:1の比率で合わせた反応から調製されてもよい。アルキルコハク酸無水物のアルキル基は、約4〜約18個の炭素原子;約6〜約18個の炭素原子、約9〜約18個の炭素原子、特に、約12〜約18個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であってもよい。アルキルコハク酸無水物のアルキル基は、飽和、不飽和、分枝鎖、直鎖、またはこれらの混合物であってもよい。ある実施形態では、アルキル基は直鎖である。
【0140】
アルキルコハク酸無水物は、約4〜約18個の炭素原子;約6〜約18個の炭素原子、約9〜約18個の炭素原子、特に、約12〜約18個の炭素原子を含む分枝鎖または直鎖のオレフィンと、無水マレイン酸との反応生成物であってもよい。この反応は、当業者に周知である。アルキルコハク酸無水物の適切な例としては、ドデセニルコハク酸無水物、ペンタデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、ヘプタデセニルコハク酸無水物などが挙げられる。
【0141】
本発明のアシル化窒素化合物のアルカノールアミン成分は、アミノアルコール、例えば、エタノールアミン(モノエタノール、ジエタノール、およびトリエタノールアミンを含む)、またはプロパノールアミン(モノエタノール、ジエタノール、およびトリエタノールアミンを含む)であってもよく、ここで、窒素は、アルキルアルコールの炭素に直接結合している。アシル化窒素化合物のアルカノールアミン成分の例としては、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。これらのアルカノールアミンの例は、当業者に周知である。ある実施形態では、相溶化剤の調製で使用されるアルカノールアミンは、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノプロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルアミノブタノール、N,N,N−トリス(ヒドロキシエチル)アミン、またはこれらの混合物である。
【0142】
アルキルコハク酸無水物またはその酸またはエステル誘導体と、アルカノールアミンとの反応生成物としては、アミド、イミド、エステル、アミン塩、エステル−アミド、エステル−アミン塩、アミド−アミン塩、酸−アミド、酸−エステル、およびこれらの混合物が挙げられる。アルキルコハク酸無水物とアルカノールアミンの反応および得られる生成物は、当業者には簡単に知られる。
【0143】
安定化成分は、芳香族カルボン酸および/またはアビエチン酸とアミン(例えば、脂肪アミン)との塩である芳香族カルボン酸/アミン塩またはアビエチン酸/アミン塩であってもよい。しかし、他の実施形態では、これらの中程度の安定化を発揮する化合物は、本発明の組成物から除外されてもよく、または、匹敵する性能を与えるために記載された他の安定な化合物のいずれかよりも多い量を少なくとも必要とする。これは、これらの材料が本発明の一部であるいくつかの実施形態であり、他の実施形態では、これらの材料を、少なくとも、より一貫した性能が必要である場合、および/またはより低濃度である場合に、比較例よりもより多くを処理してもよい。
【0144】
芳香族カルボン酸は、カルボン酸基を含む脂肪族部分を含んでいてもよく、脂肪族部分は、1〜26個以上の炭素原子、または1〜10個の炭素原子を含んでいてもよい。または、芳香族カルボン酸は、カルボン酸基が芳香族部分(例えば、安息香酸)に直接結合したものであってもよい。適切な芳香族カルボン酸(aromatic carboxylic add)としては、安息香酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、フェニル酪酸、フェニルペンタン酸、フェニルヘキサン酸、フェニルヘプタン酸、フェニルオクタン酸、フェニルノナン酸、フェニルデカン酸、フェニルドデカン酸、フェニルテトラデカン酸、フェニルヘキサデカン酸(phenylbexadecanoic acid)、およびフェニルオクタデカン酸が挙げられる。
【0145】
さらに、芳香族カルボン酸は、上述のいずれかの酸のフェニルバージョンを含んでいてもよく、このとき、ヒドロキシ基が芳香族環に存在し、一般的に、カルボン酸基を含有する脂肪族部分に隣接している。酸の例としては、サリチル酸が挙げられる。
【0146】
アミン塩の酸部分は、ヒドロキシ基、オキシ基を含んでいてもよく、またはエステル部分を含んでいてもよい。ヒドロキシカルボン酸としては、3〜26個の炭素原子を含有していてもよいヒドロキシアルキル基を含むフェニルヒドロキシカルボン酸が挙げられる。フェニルまたは他の1つ以上のアリール環は、1〜12個、または10個より多い炭素原子を含むアルキル基、1〜12個の炭素原子を含むアルコキシ基、ヒドロキシ、カルバミル、カルボアルコキシ、アミドまたはアミノアルキル基を含め、これに結合する1つ以上の置換基を含んでいてもよい。
【0147】
1個の置換基が存在する場合、フェニル環のヒドロキシ基を置換基として数えずに存在する場合には、一般的に、カルボン酸部分のパラ位置にあってもよい。2個以上の置換基が存在する場合、これらの置換基は、一般的に、フェニル環の3,4位または3,5位にあってもよい。具体的な例としては、メタトルイル酸またはパラトルイル酸、メタ−ヒドロキシ安息香酸またはパラ−ヒドロキシ安息香酸、アニス酸および没食子酸が挙げられる。
【0148】
塩の調製に使用するのに適したアミンは、過度に限定されず、任意のアルキルアミンを含んでいてもよいが、一般的に、脂肪カルボン酸から誘導される脂肪酸アミンである。アミン中に存在するアルキル基は、10〜30個の炭素原子、または12〜18個の炭素原子を含んでいてもよく、直鎖または分枝鎖であってもよい。ある実施形態では、アルキル基は、直鎖で不飽和である。典型的なアミンとしては、ペンタデシルアミン、オクタデシルアミン、セチルアミン、オレイルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、オレイルアミンのサリチル酸の脂肪酸から誘導されたアミン塩である。
【0149】
塩は、任意の適切な様式で調製され、一般的に、アミンと酸とを、アミド、エステルまたは他の縮合生成物への変換を避けるように設計された条件下で混合することを含む。一実施形態では、実質的に等モル分率のアミンと酸を使用する。しかし、所望な場合、過剰量のアミンを使用してもよく、この場合、このモル分率は、酸のモル分率1あたり、約1.0〜約1.2モル分率の範囲であってもよい。
【0150】
ある実施形態では、安定化成分は、脂肪酸アミノサリチレートであり、つまり、塩の調製に使用する脂肪アミンが脂肪酸から誘導されるサリチル酸の脂肪アミン塩である。
【0151】
アミノサリチレートの調製に使用するのに適したアミンは、過度に制限されず、任意のアルキルアミンを含んでいてもよいが、一般的に、脂肪カルボン酸から誘導される脂肪酸アミンである。アミン中に存在するアルキル基は、10〜30個の炭素原子、または12〜18個の炭素原子を含んでいてもよく、直鎖または分枝鎖であってもよい。ある実施形態では、アルキル基は、直鎖であり、不飽和である。典型的なアミンとしては、ペンタデシルアミン、オクタデシルアミン、セチルアミン、オレイルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、オレイルアミンのサリチル酸の脂肪酸から誘導されるアミン塩。
【0152】
ある実施形態では、安定化成分は、窒素含有分散剤またはそのホウ素化バージョンを含む。窒素含有分散剤は、ヒドロカルビル置換されたコハク酸アシル化剤とポリアミンとの反応生成物であってもよく、場合によりホウ素化されていてもよい。このような材料は、米国特許第4,234,435号に記載されている。関連する実施形態では、安定化成分は、(i)窒素含有分散剤;(ii)ホウ素化窒素含有分散剤;(iii)アルキルイミダゾリン;(iv)ポリエチレンポリアミンと脂肪酸との反応生成物;またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0153】
ヒドロカルビル置換されたコハク酸アシル化剤は、コハク酸、ハロゲン化物、エステル、および無水物を含んでいてもよい。ある実施形態では、この剤は、無水コハク酸である。一実施形態では、この剤のヒドロカルビル基は、Mn(数平均分子量)が、500、750、または850から、5000、3000、2000、または1600までであり、多分散性(Mw/Mn)、つまり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比率が1.5、1.8、または2から、または2.5、3.6、または3.2であるポリアルケンから誘導される。ある実施形態では、本発明の窒素を含まない分散剤は、Mnが1600より大きく、または1600〜3000のポリマーを実質的に含まない炭化水素ポリマー、例えば、ポリイソブチレン(PIB)から誘導される。
【0154】
PIBは、従来のPIBであってもよく、または高度に反応性PIBおよび/または高ビニリデンPIBであってもよい。一実施形態では、使用するPIBは、従来のPIBであり、別の実施形態では、使用するPIBは、高度に反応性のPIBであり、さらに別の実施形態では、使用するPIBは、従来のPIBおよび高度に反応性のPIBの混合物である。
【0155】
コハク酸アシル化剤と反応するアミンは、ポリアミンであってもよい。ポリアミンは、脂肪族、脂環式、ヘテロ環式または芳香族であってもよい。ポリアミンの例としては、アルキレンポリアミン、ヒドロキシ含有ポリアミン、芳香族ポリアミン、およびヘテロ環式ポリアミンが挙げられる。このようなアルキレンポリアミンとしては、エチレンポリアミン、ブチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ペンチレンポリアミンなどが挙げられる。より高級なホモログおよび関連するヘテロ環式アミン、例えば、ピペラジンおよびN−アミノアルキル置換ピペラジンも含まれる。このようなポリアミンの具体例は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、トリス−(2−アミノエチル)アミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ヘキサエチレンヘプタミン、ペンタエチレンヘキサミン、およびこれらの混合物である。
【0156】
適切なポリアミンは、Kirk Othmer’s 「Encyclopedia of Chemical Technology」、2d Edition、Vol.7、22〜37ページ、Interscience Publishers、New York(l965)のエチレンアミンという見出しのところに記載されているように、エチレンポリアミンも含む。これらの材料は、環状縮合生成物(例えば、上述のピペラジン)を含むポリアルキレンポリアミンの複合体混合物である。
【0157】
他の有用な種類のポリアミン混合物は、上述のポリアミン混合物をストリッピングし、「ポリアミンボトム(polyamine bottom)」と呼ばれることが多い残渣を残して得られるものである。一般的に、アルキレンポリアミンボトムは、2%未満(重量)、通常は1%未満(重量)の材料が200℃未満で沸騰することを特徴としてもよい。Dow Chemical Company(フリーポート、テキサス)から「E−100」という名称で得られるこのようなエチレンポリアミンボトムの典型的なサンプルは、15.6℃での比重が1.0168であり、窒素の重量%が33.15であり、40℃での粘度が121センチストークスである。このようなサンプルのガスクロマトグラフィー分析は、0.93%の「ライトエンド(Light End)」(最もあり得るのはDETA)、0.72%のTETA、21.74%のTEPA、および76.61%のペンタエチレンヘキサミンおよびこれより高級のもの(重量基準)を含む。これらのアルキレンポリアミンボトムは、環状縮合生成物(例えば、ピペラジン)、およびジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンのこれより高級のアナログなどを含む。これらのアルキレンポリアミンボトムをアシル化剤のみと反応させてもよく、他のアミンおよび/またはポリアミンとともに使用させてもよい。
【0158】
ある実施形態では、窒素含有分散剤は、上述の1つ以上のアミンと脂肪カルボン酸との反応から誘導される。適切な脂肪カルボン酸としては、6、10または12個〜100、60、30または24個の炭素原子を含むヒドロカルビルを含むモノカルボン酸およびジカルボン酸が挙げられる。ヒドロカルビル基は、直鎖または分枝鎖であってもよく、ある実施形態では、ヒドロカルビル鎖の末端に1個のメチル分枝を含む。適切な酸の具体例としては、ドデカン酸、テトラデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸(イソステアリン酸を含む)、イコサン酸などが挙げられる。より小さな酸を上述のもの(例えば、アジピン酸、コハク酸、オクタン二酸など)と組み合わせて使用してもよい。ある実施形態では、これらの窒素含有分散剤は、イソステアリン酸およびアルキレンポリアミン、例えば、DETA、TETAおよび/またはTEPAから調製される。
【0159】
また、窒素含有分散剤は、ホウ素化していてもよい。典型的には、ホウ素化分散剤は、0.1重量%〜5重量%、または0.5重量%〜4重量%、または0.7重量%〜3重量%のホウ素を含む。一実施形態では、ホウ素化分散剤は、ホウ素化したアシル化アミン、例えば、ホウ素化したスクシンイミド分散剤である。ホウ素化分散剤は、米国特許第3,000,916号;第3,087,936号;第3,254,025号;第3,282,955号;第3,313,727号;第3,491,025号;第3,533,945号;第3,666,662号;第4,925,983号に記載されている。ホウ素化分散剤は、1つ以上の分散剤と、1つ以上のホウ素化合物との反応によって調製される。本明細書に記載する任意の分散剤は、ヒドロカルビル置換されたアシル化剤とアミンの反応中、またはその後にホウ素化されてもよい。
【0160】
一実施形態では、ホウ素化合物は、アルカリ金属ボレートまたはアルカリ金属とアルカリ土類金属を混合したボレートである。これらの金属ボレートは、一般的に、当該技術分野で公知の水和した粒状金属ボレートである。アルカリ金属ボレートとしては、アルカリ金属とアルカリ土類金属が混合したボレートを含む。米国特許第3,997,454号;第3,819,521号;第3,853,772号;第3,907,601号;第3,997,454号;第4,089,790号は、適切なアルカリボレートおよびアルカリ金属ボレートおよびアルカリ土類金属ボレート、ならびにその製造方法を開示している。一実施形態では、ホウ素化合物は、ホウ酸である。
【0161】
本発明の窒素含有分散剤は、ホウ素化剤以外の種々の任意の剤との反応によって後処理されてもよい。特に、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素で置換された無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、およびリン化合物である。このような処理の詳細を示す参考文献は、米国特許第4,654,403号に列挙されている。
【0162】
一実施形態では、本発明の窒素含有分散剤は、ホウ素化されており、Mnが1600未満、または850または900〜1500または1200のPIBから誘導されてもよい。
【0163】
一実施形態では、本発明の窒素含有分散剤は、以下のもののうち、任意の1つ以上である。ホウ酸と、ポリエチレンポリアミンおよび/またはボトムの混合物と、従来のPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物との反応から誘導されるホウ素化スクシンイミド分散剤;ホウ酸と、ポリエチレンポリアミンおよび/またはボトムの混合物と、高ビニリデンPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物との反応から誘導されるホウ素化スクシンイミド分散剤;ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤とホウ酸との反応から誘導されるホウ素化分散剤であって、分散剤が、ポリエチレンポリアミンおよび/またはボトムの混合物と、従来のPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物とから誘導されるもの;高ビニリデンPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物とTEPAとから誘導される非ホウ素化ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤;ポリアルキレンアミンと脂肪モノカルボン酸とから誘導される非ホウ素化アルキルイミダゾリン。
【0164】
さらに他の実施形態では、本発明の安定化成分で使用する窒素含有分散剤は、10、20または40個〜500、400または250個の炭素原子を含む少なくとも1つのヒドロカルビル基を含む。また、分散剤は、TBN(以下に定義し、ASTM D4739によって測定される)が、少なくとも9、10、15または20であってもよい。分散剤がホウ素化されている場合、そのTBNは、少なくとも9であってもよい。分散剤がホウ素化されていない場合、そのTBNは、少なくとも20であってもよい。分散剤がホウ素化されているさらなる実施形態では、少なくとも0.1、0.2、0.4重量%のホウ素を含んでいてもよい。ホウ素化分散剤は、0.1、0.2または0.4重量%〜4または2重量%のホウ素を含んでいてもよい。さらに他の実施形態では、分散剤は、N:CO比が0.7:1より大きくてもよい。分散剤のN:CO比は、分散剤分子内のアミノ基とカルボキシル基との当量比である。分散剤がホウ素化されている場合、そのN:CO比は、少なくとも0.7:1、または少なくとも0.75:1であってもよい。分散剤がホウ素化されていない場合、N:CO比は、より境界値が大きくてもよく、例えば、N:CO比は、少なくとも1:1または1.3:1、または少なくとも1.6:1であってもよい。分散剤のN:CO比は、一般的に、4:1以下、3:1以下または2:1以下であってもよい。上述のいずれかの特徴を他の特徴と組み合わせて用いてもよい。
【0165】
列挙した1つ以上の成分を除外して、上述のいずれかの安定化成分を単独で使用してもよいが、他の実施形態では、これらの2つ以上の任意の組み合わせを使用してもよい。
【0166】
有用な相溶化剤は、少なくとも1つの水素供与基と、少なくとも1個の水素受容基と、少なくとも1つのヒドロカルビル基とを有する化合物としてより一般的に記述されてもよく、水素供与基と水素受容基とが、8個を超える結合によって離されておらず、この数えた結合は、共有結合またはイオン結合を含んでいてもよく、一般的に、両方の種類の結合を合わせて含んでいてもよい。
【0167】
ある実施形態では、相溶化剤化合物のヒドロカルビル基は、使用する媒体中の相溶化剤への溶解度を付与するのに十分であるが、他の実施形態では、少なくとも8、10、14個、または20個の炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、相溶化剤化合物のヒドロカルビル基は、相溶化剤成分に関連して上に定義するいずれかのヒドロカルビル基であってもよい。
【0168】
水素供与基は、別の化合物にプロトンを供与することができる置換基または原子である。この基自体が、水素供与基として記述されてもよい。本発明に含まれる水素供与基の適切な例は、−OH、−OR、−C(O)OH、−C(O)OR、−SH、−NRH、−NH、−NRH、−NRH、および−NHであり、ここで、各Rは、独立してヒドロカルビル基である。適切な例は、正の電荷を有していてもよい。
【0169】
水素受容基は、プロトンを受け入れることができる置換基または原子である。この基自体が、水素受容基として記述されてもよい。本発明に含まれる水素受容基の適切な例は、=O、−C(O)OH、−C(O)OR、=S、−NRH、−NRR、−NHHであり、ここで、各Rは、独立して、ヒドロカルビル基;カルボン酸誘導体、例えば、カルボン酸アニオン、イミド、アミド、イミダゾリン、無水物またはエステル;またはホスフェートまたはチオホスフェートである。水素受容基のさらなる例としては、上述のアニオンが挙げられる。適切な例は、負の電荷を有していてもよい。
【0170】
他の実施形態では、上述の受容基と供与基は、少なくとも1個から4、6、7または8個以下までの結合、少なくとも2個、または3個から6、7または8個以下まで、および2個以上から4個以下までの結合によって離されている。ある実施形態では、相溶化剤化合物は、少なくとも1セットの基(すなわち、少なくとも1つの受容基と、少なくとも1つの供与基)を含むが、他の実施形態では、相溶化剤化合物は、複数セットの基を含んでいてもよい。例えば、相溶化剤化合物は、少なくとも2個の受容基と、少なくとも2個の供与基を含んでいてもよく、またはそれより多い数の基を含んでいてもよい。有用な相溶化剤化合物は、1セットの受容基と供与基、2セットのこれらの基、または3セットのこれらの基を含んでいてもよい。理論によって束縛されることを望まないが、受容基と供与基のセット数が多くなると、化合物の相溶化剤としての性能が良くなるが、これらの基の間の距離は、基の間にある結合の数によって測定されるが、これも相溶化剤の性能に影響を与えると考えられる。それに加え、受容基および供与基の官能基は、官能基が立体的に嵩高い場合には妨害となり得ると考えられる。
【0171】
適切な相溶化剤は、(i)1個の水素受容基と1個の水素供与基;(ii)1個の水素受容基と2個以上の水素供与基;(iii)2個以上の水素受容基と1個の水素供与基;または(iv)2個以上の水素受容基と2個以上の水素供与基を含んでいてもよい。
【0172】
ある実施形態では、相溶化剤成分は、(i)4個未満の結合で離され、この結合が共有結合とイオン結合を両方とも含む、少なくとも1セットの受容基および供与基を含む化合物、(ii)少なくとも1つの水素受容基(例えば、窒素原子)と、少なくとも2個、または3個の水素供与基(例えば、−OH基)を含み、1〜8個の結合によって離された化合物、(iii)少なくとも2セットの受容基および供与基を含み、それぞれのセットの基が、1〜8個の結合によって離され、この結合が共有結合とイオン結合を両方とも含む化合物、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0173】
ある実施形態では、安定化成分である成分(c)は、以下の式によってあらわされる化合物:
【0174】
【化12】
またはその塩化したバージョンを本質的に含まないか、または含まず、式中、XはOまたはNRであり、RおよびRは、場合により連結して環を形成していてもよく;Rは、Hまたはヒドロカルビルであり;Rは、H、ヒドロカルビル基、−CHC(O)−Xであり、Xは−OHであるか、またはRは、Rと連結して環を生成し、連結した−R−R−基は、−CHC(O)−であり;ここで、各Rは、独立して、H、ヒドロカルビル基または−(CHCHNH)−Hであり、nは、1〜10の整数であり;各Rは、独立して、H、ヒドロカルビル基または−(CHCHNH)−Hであり、nは、1〜10であるか、またはRは、Rと連結して環を生成し、連結した−R−R−基は、−CHC(O)−であり;Rは、ヒドロカルビル基であるが、但し、R、R、R、RまたはRのうち、少なくとも1つがヒドロカルビル基であり、化合物は、全体として少なくとも10個の炭素原子を含む。ある実施形態では、R、R、R、RまたはRのうち、少なくとも1つが、少なくとも10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。
【0175】
なおさらなる実施形態では、安定化成分である成分(c)は、以下の1つ以上の式によってあらわされる化合物を含まず、
【0176】
【化13】
式中、各Rは、独立してヒドロカルビル基であり;各Xは、独立して、ポリエチレンポリアミンから誘導される窒素含有基であり;nは、1〜10の整数であってもよい。
【0177】
ある実施形態では、安定化成分は、特定の窒素含有分散剤またはそのホウ素化バージョンを除外する。例えば、本発明のコンピューター化された成分は、ヒドロカルビル置換されたコハク酸アシル化剤とポリアミンとの反応生成物であるが、四級化された窒素原子を含まない反応生成物である窒素含有分散剤、またはそのホウ素化バージョンを本質的に含まなくてもよく、または含まなくてもよい。
【0178】
一実施形態では、安定化成分である成分(c)は、ホウ酸と、ポリエチレンポリアミンおよび/またはボトムの混合物と、従来のPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物との反応から誘導されるホウ素化され四級化されていないスクシンイミド分散剤;ホウ酸と、ポリエチレンポリアミンおよび/またはボトムの混合物と、高ビニリデンPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物との反応から誘導されるホウ素化スクシンイミドの四級化されていない分散剤;ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤とホウ酸との反応から誘導されるホウ素化され四級化されていない分散剤であって、この分散剤が、ポリエチレンポリアミンおよび/またはボトムの混合物と、従来のPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物とから誘導されるもの;高ビニリデンPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物とTEPAとから誘導される非ホウ素化の四級化されていないポリイソブテニルスクシンイミド分散剤;ポリアルキレンアミンと脂肪モノカルボン酸と誘導される非ホウ素化アルキルイミダゾリンである。
【0179】
ある実施形態では、安定化成分は、過塩基性清浄剤を含まない。ある実施形態では、安定化成分は、リン含有添加剤、例えば、ヒドロカルビルホスフェート、ヒドロカルビルチオホスフェート、ヒドロカルビルジチオホスフェートのアミン塩、またはこれらの組み合わせを含まない。
【0180】
ある実施形態では、本発明の安定化成分は、以下の式によってあらわされる化合物を本質的に含まず、
【0181】
【化14】
式中、Xは、酸素原子、硫黄原子、または>NRであり;Xは、酸素原子または硫黄原子であり;Xは、炭素原子、S=OまたはP(OR)であり;Yは、−R、−OR、−O−+NHR(R、−S−+NHR(Rであり、Rは、ヒドロカルビレン基であり;Rは、ヒドロカルビル基または−Hであり;各nは、独立して0または1である。
【0182】
なおさらなる実施形態では、本発明の安定化成分は、以下のものを含まない。(i)ホウ酸と、ポリエチレンポリアミンおよび/またはボトムの混合物と、従来のPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物との反応から誘導されるホウ素化スクシンイミド分散剤;(ii)ホウ酸と、ポリエチレンポリアミンおよび/またはボトムの混合物と、高ビニリデンPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物との反応から誘導されるホウ素化スクシンイミド分散剤;(iii)ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤とホウ酸との反応から誘導されるホウ素化分散剤であって、この分散剤が、ポリエチレンポリアミンおよび/またはボトムの混合物と、従来のPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物とから誘導されるもの;(iv)高ビニリデンPIBから誘導されるポリイソブテニルコハク酸無水物とTEPAとから誘導される非ホウ素化ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤;(v)スルホン酸から誘導されるスルホン酸カルシウムの過塩基性清浄剤;(vi)アルキル化フェノールから誘導される過塩基性清浄剤;(vii)リン酸およびエステルの混合物のアミン塩;(viii)ジチオリン酸およびエステルの混合物のアミン塩;またはこれらの混合物。一方、摩擦調整剤は、上述のいずれかの摩擦調整剤を含む。ある実施形態では、摩擦調整剤成分としては、オレイル酒石酸イミド、ステアリル酒石酸イミド、2−エチルヘキシル酒石酸イミド、またはこれらの組み合わせが挙げられ、上述の任意の他の摩擦調整剤、特に、本明細書に記載する媒体および/または機能性流体組成物への相溶性および/または溶解度の課題をもたないさらなる摩擦調整剤も含んでいてもよい。
【0183】
(産業上の利用可能性)
本発明は、(a)溶媒、機能性流体、またはこれらの組み合わせを含む媒体と;(b)媒体に完全に可溶性ではないリン含有化合物を含む摩擦調整剤成分と;(c)(a)に可溶性であり、(b)と相互作用して、(a)への(b)の溶解度を高める安定化成分を含む、組成物を調製するプロセスを含み、ここで、安定化成分が、少なくとも1つの水素供与基と、少なくとも1つの水素受容基と、少なくとも1つのヒドロカルビル基とを含む化合物を含み、水素供与基と水素受容基とが、8個を超える共有結合およびイオン結合によって離されていない。本発明のプロセスは、成分(a)に成分(b)および成分(c)を加えることと、成分(b)および成分(c)の粒子が、平均粒径が10ミクロン未満になるように、成分を混合することとを含む。本発明のプロセスによって、摩擦調整剤が溶液から析出せず、混合物のくもりまたは濁りが起こらず、混合物に懸濁し、分散し、および/または溶解したままであるか、またはこれらの組み合わせである透明および/または安定な混合物、または、安定化成分を含まない同一の組成物と比較したときに、これらの分野の1つ以上で少なくとも向上を示す、透明および/または安定な混合物を生じる。
【0184】
理論によって束縛されることを望まないが、少なくともある種の実施形態では、本発明の組成物は、相溶化剤との複合体に摩擦調整剤成分が可溶化するため、全組成物中の摩擦調整剤成分の安定性および/または相溶性を向上させると考えられる。
【0185】
ある実施形態では、本発明のプロセスによって、安定化成分を含まない同じ組成物と比較して、JTU値および/またはNTU値がより低いことによって特定される、清澄性が高まった混合物が得られる。
【0186】
ある実施形態では、本発明の組成物および/または本発明のプロセスから生じる組成物は、完成した機能性流体と添加剤濃縮物の両方を含む。完成した機能性流体は、使用準備ができた流体である。添加剤濃縮物は、完成した流体に必要なすべての添加剤を含んでいてもよいが、濃縮した形態の組成物である。これにより運搬および取り扱いがより簡単になる。適切なときに、添加剤濃縮物を流体、溶媒(例えば、油)、または同様の希釈剤、およびさらなる添加剤とブレンドし、使用準備ができた完成した機能性流体を製造してもよい。
【0187】
上述のように、成分(b)および(c)、または(b)のみは、成分(a)中、平均直径が10ミクロン未満の分散した粒子の形態で存在していてもよい。ある実施形態では、粒子は、平均直径が10ミクロン未満、5ミクロン未満または3ミクロン未満である。他の実施形態では、粒子は、平均直径が0.01、0.02、0.03または0.09ミクロン〜10、6、5または3ミクロンである。ある実施形態では、粒子の80%が、上述の粒径制限の1つ以上を満たす。他の実施形態では、粒子の90%、95%、99%または100%が、粒径制限を満たす。つまり、ある実施形態では、粒子の10重量%以下は、直径が10、5、3、1または0.5ミクロンよりも大きい。粒子が生成する手段は、過度に限定されず、成分(a)、(b)および(c)を従来の装置および/または技術を用いて混合することを含んでいてもよい。
【0188】
完成した機能性流体について言及する場合、本発明に関わる組成物は、1、3または10重量%〜99、80または70重量%の媒体である成分(a)と;0.1、0.15、0.2、0.3、0.5または1.0重量%〜10、7.5、5、4または3重量%の摩擦調整剤である成分(b)と;0.1、0.2、0.3、0.5または2.0重量%〜20、10、8、5、4または2重量%の安定化成分である成分(c)とを含んでいてもよい。
【0189】
添加剤濃縮物について言及する場合、本発明に関わる組成物は、0.1、1、3または10重量%〜90、60、50、30または20重量%の媒体である成分(a)と;0.1、0.15、0.5、1、5または8重量%〜60、30、20または10重量%の摩擦調整剤である成分(b)と;0.1、0.2、0.3、0.5または2.0重量%〜20、10、8、5、4または2重量%の安定化成分の成分(c)とを含んでいてもよい。上述のように、ある実施形態では、媒体と安定化成分は同じ材料であってもよく、この場合、二重の機能をもつ材料は、成分(a)または(c)のいずれかについて上に与えた任意の範囲で存在していてもよい。
【0190】
ある実施形態では、本発明の組成物は、成分(a)の中に成分(b)が小さな粒子を形成し、成分(c)がこれらの粒子を安定化するように作用するように、成分(b)および(c)を成分(a)中で混合することによって作られる。ある実施形態では、成分(c)および成分(b)は、成分(a)中で混合粒子を生成する。ある実施形態では、生成した粒子のいくつかまたは全てが、上述の粒径の範囲内にある。他の実施形態では、粒子のいくつかまたは全てが、上述の粒径よりも大きい。
【0191】
ある実施形態では、本発明の成分を従来の手段によって混合する。必要な混合量は、組成物ごとにさまざまであり、望ましい粒径および/または安定性を有する粒子を製造するのに十分な量である。ある実施形態では、成分を粉砕することによって混合が達成されてもよく、さらに他の実施形態では、成分を低温で粉砕することによって混合が達成されてもよい。
【0192】
混合は、従来の粉砕装置および技術を用いる粉砕プロセスの形態であってもよい。しかし、ある実施形態では、粉砕は、低温で、ある実施形態では、30℃未満で、他の実施形態では、−10、0または5℃〜30、25または20℃で完結する。低温での粉砕は、冷却した粉砕装置、あらかじめ冷却しておいた成分、粉砕中に冷却剤、例えば、ドライアイス(固体の二酸化炭素)を成分に加えること、またはこれらの組み合わせで行われてもよい。得られた組成物は、ある実施形態では、安定な分散物として記述されてもよく、他の実施形態では、可溶化した溶液として記述されてもよく、またはこれらの組み合わせとして記述されてもよく、このような実施形態の主な違いは、関与する粒子の粒径であってもよい。
【0193】
他の実施形態では、本発明の組成物は、粉砕または任意の他の高エネルギー入力方法によっては作られないが、単純な混合および非常にわずかなエネルギー入力によって作られる。
【0194】
ある実施形態では、本発明の組成物を使用する機能性流体は、燃料である。本発明の燃料組成物は、上述の安定化された組成物と、液体燃料とを含み、内燃機関またはオープンフレームバーナーに燃料を入れるのに有用である。これらの組成物は、本明細書に記載する1種類以上のさらなる添加剤をさらに含んでいてもよい。ある実施形態では、本発明で使用するのに適した燃料としては、任意の市販の燃料、ある実施形態では、任意の市販のディーゼル燃料および/またはバイオ燃料が挙げられる。
【0195】
本発明で使用するのに適した種類の燃料の流れという記載は、本発明の添加剤を含む組成物中に存在していてもよい燃料、ならびに添加剤を含有する組成物を加えてもよい燃料および/または燃料添加剤濃縮組成物を指す。
【0196】
本発明で使用するのに適した燃料は、過度に制限されない。一般的に、適切な燃料は、通常は、周囲条件(例えば、室温(20℃〜30℃))で液体であるか、または、通常は、操作条件で液体である。燃料は、炭化水素燃料、非炭化水素燃料、またはこれらの混合物であってもよい。
【0197】
炭化水素燃料は、ASTM規格D4814によって定義されるような石油蒸留物(ガソリンを含む)、またはASTM規格D975によって定義されるようなディーゼル燃料であってもよい。一実施形態では、液体燃料は、ガソリンであり、別の実施形態では、液体燃料は、無鉛ガソリンである。別の実施形態では、液体燃料は、ディーゼル燃料である。炭化水素燃料は、GTL(gas to liquid)プロセスによって調製される炭化水素であってもよく、例えば、Fischer−Tropschプロセスのようなプロセスによって調製される炭化水素であってもよい。ある実施形態では、本発明で使用する燃料は、ディーゼル燃料、バイオディーゼル燃料、またはこれらの組み合わせである。
【0198】
適切な燃料は、重質燃料油(例えば、5番および6番の燃料油)も含んでおり、これらは、残渣油燃料、重質燃料油、および/または炉燃料油とも呼ばれる。このような燃料を単独で使用してもよく、他のもの(典型的には、軽質燃料)と混合し、低粘度の混合物を作製してもよい。バンカー燃料も含まれており、この燃料は、一般的に船舶用エンジンで用いられる。これらの種類の燃料は、粘度が高く、周囲条件で固体の場合があるが、加熱し、燃焼するエンジンまたはバーナーに供給するときは液体である。
【0199】
非炭化水素燃料は、酸素含有組成物であってもよく(酸素化物と呼ばれることが多い)、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸のエステル、ニトロアルカン、またはこれらの混合物を含む。非炭化水素燃料は、メタノール、エタノール、メチルt−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、エステル交換した油および/または植物由来および動物由来の脂肪、例えば、菜種メチルエステル、および大豆メチルエステル、ならびにニトロメタンを含んでいてもよい。
【0200】
炭化水素燃料および非炭化水素燃料の混合物としては、例えば、ガソリンとメタノールおよび/またはエタノール、ディーゼル燃料とエタノール、およびディーゼル燃料とエステル交換した植物油(例えば、菜種メチルエステル)ならびに他の生物由来の燃料が挙げられ得る。一実施形態では、液体燃料は、炭化水素燃料、非炭化水素燃料、またはこれらの混合物中の水のエマルションである。
【0201】
本発明のいくつかの実施形態では、液体燃料は、硫黄含有量が重量基準で50,000ppm以下、5000ppm以下、1000ppm以下、350ppm以下、100ppm以下、50ppm以下、または15ppm以下であってもよい。
【0202】
本発明の液体燃料は、燃料組成物中に、主要な量で、一般的に、95重量%より多く、他の実施形態では、97重量%より多く、99.5重量%より多く、99.9重量%より多く、または99.99重量%より多く存在する。
【0203】
上述の組成物は、さらに、1つ以上のさらなる添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、酸化阻害剤および酸化防止剤、摩耗防止剤、腐食抑制剤、または粘度調整剤、ならびに分散剤および清浄剤が挙げられる。これらのさらなる添加剤は、特に、媒体が機能性流体を含むときに、媒体中に存在していてもよい。存在する場合、これらのさらなる添加剤は、完成した流体を考えるとき、全組成物の0、0.1、0.5または1重量%〜2、5、10または15重量%をあらわし得、添加剤濃縮物を考えるとき、全組成物の0、0.5、1または2重量%〜4、10、20または40重量%をあらわしてもよい。
【0204】
上の範囲が許容されるため、一実施形態では、添加剤濃縮物は、本発明の添加剤を含んでいてもよく、任意のさらなる溶媒を実質的に含まなくてもよい。これらの実施形態では、本発明の添加剤を含む添加剤濃縮物は未希釈であり、濃縮物の材料取り扱い特性(例えば、粘度)を改良するために加えられる任意のさらなる溶媒を含まない。
【0205】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」との用語は、通常の意味で使用され、当業者に周知である。具体的には、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を含み、主に炭化水素の特徴を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、炭化水素置換基、つまり、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族で置換された芳香族置換基、脂肪族で置換された芳香族置換基、および脂環式基で置換された芳香族置換基、および分子の別の部分によって環が完成する環状置換基(例えば、2個の置換基が一緒になって環を形成する);置換された炭化水素置換基、つまり、本発明の内容で、置換基が主に炭化水素の性質を有することは変わらずに、非炭化水素基を含む置換基(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ);ヘテロ置換基、つまり、主に炭化水素の特徴を有しつつ、本発明の内容で、それ以外は炭素原子で構成される環または鎖に炭素以外のものを含む置換基が挙げられる。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般的に、2個以下、好ましくは、1個以下の非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに存在する。典型的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基が存在しない。ヒドロカルビルおよび/またはヒドロカルビレンという用語も、上の章で与えた定義を有していてもよい。
【0206】
上述の材料のいくつかが、最終的な配合物中で相互作用してもよく、その結果、最終的な配合物の成分は、最初に加えたものと異なっていてもよいことが知られている。例えば、金属イオン(例えば、清浄剤の金属イオン)が、他の分子の他の酸性部位またはアニオン性部位に移動してもよい。それに加え、本発明のアシル化剤および/または置換された炭化水素添加剤は、使用する組成物の他の成分と相互作用したときに、塩または他の錯体および/もしくは誘導体を生成してもよい。これによって作られる生成物(本発明の組成物を意図した用途で使用すると生成する生成物を含む)は、簡単に記述できるものではない場合もある。そうではあっても、このような改変および反応生成物のすべてが本発明の範囲に含まれ、本発明は、上述の成分を混合することによって調製される組成物を包含する。
【0207】
他の意味であると示されていない限り、本明細書のあらゆるパーセント値およびppm値は、重量%の値であるか、および/または重量基準で計算される。
【実施例】
【0208】
特に、有利な実施形態を記載する以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明を説明するために与えられているが、本発明を限定することを意図していない。
【0209】
(実施例セットA)
特定の摩擦調整剤を特定の媒体に加えることによって、1セットのサンプルを調製する。ここで、この摩擦調整剤は、このような組成物中で相溶性の課題があることが知られている。この試験で使用する摩擦調整剤は、ジアルキル水素ホスホネート(FM−1)である。この試験で使用する媒体は、以下のものを含む:グループI基油の油圧用液(MEDIUM−1)、グループIV基油の油圧用液(MEDIUM−2)、およびグループI基油の工業用ギア油液(MEDIUM−3)。この試験で使用する相溶化剤は、以下のものを含む:数平均分子量が1000のポリイソブチレンから誘導されるコハク酸無水物とポリアルキレンポリアミンとから誘導され、酸と組み合わせてアルキレンエポキシドを用いて四級化した四級アンモニウム塩であって、この化合物が、2個の水素受容基の2個の結合の中の水素供与基と、水素受容基から1個の結合によって離された第2の水素供与基とを有するもの(COMPAT−1)、2個の水素供与基の3つの結合の中に水素受容基を含む、低分子量アシル化窒素化合物(COMPAT−2)、ポリイソブテニルコハク酸無水物(ポリイソブチレンから調製されるもの自体は、数平均分子量が約1000である)と、ポリアルキルポリアミンとから調製される、ホウ素化スクシンイミド分散剤(この化合物のN:CO比が>1.6である)(COMPAT−3)、ポリイソブテニルコハク酸無水物(ポリイソブチレンから調製されるもの自体は、数平均分子量が約1000である)と、ポリアルキルポリアミンとから調製される、非ホウ素化スクシンイミド分散剤(この化合物のN:CO比が>1.4である)(COMPAT−4)、ヒドロキシアルキル−アルケニルイミダゾリン(COMPAT−5)、および脂肪酸から誘導されるサリチル酸のアミン塩(COMPAT−6)、および比較例として、本発明のものではない鉱物油(COMPAT−7)。
【0210】
以下の表に明記する量で成分を混合することによって、それぞれの実施例を調製する。それぞれの実施例のサンプルを65℃、室温、0℃、および−18℃で保存する。それぞれのサンプルの清澄性を混合時に調べ、次いで、設定した時間間隔で調べる。くもり、濁り、および摩擦調整剤の析出について、それぞれの実施例を目視で評価する。低温で保存したサンプルは、その温度で評価し、次いで、別の評価を行うときに室温まで加温する。
【0211】
実施例のセットから得た結果を以下の表に提示している。
【0212】
【表1-1】
【0213】
【表1-2】
1−表1のすべての配合値は重量%である。試験した相溶化剤は、固有の量の希釈剤(例えば、希釈油)を含んでいてもよい。
2−何も書かれていないセルは、そのサンプルでそのときに評価を行わなかったことを示す。「固体」との評価は、サンプルの半分より多くが、反転して30秒以内に流動しないことを示す。沈殿に関する評価で、濁りについて記載がないものは、そのサンプルが書かれている以外には透明であることを示す。
【0214】
【表2-1】
【0215】
【表2-2】
1−表1のすべての配合値は重量%である。試験した相溶化剤は、固有の量の希釈剤(例えば、希釈油)を含んでいてもよい。
2−何も書かれていないセルは、そのサンプルでそのときに評価を行わなかったことを示す。「固体」との評価は、サンプルの半分より多くが、反転して30秒以内に流動しないことを示す。沈殿に関する評価で、濁りについて記載がないものは、そのサンプルが書かれている以外には透明であることを示す。
【0216】
【表3】
1−表1のすべての配合値は重量%である。試験した相溶化剤は、固有の量の希釈剤(例えば、希釈油)を含んでいてもよい。
2−結果の部分で何も書かれていないセルは、そのサンプルでそのときに評価を行わなかったことを示す。
【0217】
これらの結果は、本発明の相溶化剤が、未希釈の添加剤濃縮物(それぞれのサンプルの媒体は、相溶化剤中に固有に存在する希釈剤である)中、溶媒で希釈した組成物中、およびガソリン組成物中で、FM−1の相溶性を高めることを示し、摩擦調整剤の相溶性がないことは、非常に低い濃度でさえ比較例で明らかである。
【0218】
上に言及したそれぞれの書類は、本明細書に参考として組み込まれる。実施例の場合を除き、または他に明白に示されている場合を除き、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを明記する本明細書中のすべての数量は、「約」という用語で修飾されていることが理解されるべきである。
【0219】
他の意味であると示されていない限り、本明細書で言及するそれぞれの化学物質または組成物は、商業グレードの材料であると解釈すべきであり、異性体、副生成物、誘導体および商業グレードには存在すると通常理解される他のこのような材料を含んでいてもよい。しかし、それぞれの化学成分の量は、任意の溶媒または希釈剤を除いて存在し、他の意味であると示されていない限り、市販の材料に通常は存在していてもよい。本明細書に記載する上限および下限の量、範囲および比率を独立して組み合わせてもよいことが理解されるべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素についての範囲および量を、他の任意の要素についての範囲または量とともに使用してもよい。本明細書で使用する場合、「〜から本質的になる」という表現は、検討中の組成物の基本的かつ新しい特徴に重要な影響を与えない物質を含むことができる。本明細書で使用する場合、ポリイソブテニルという用語は、ポリイソブチレンから誘導されるポリマーアルケニル基を意味し、飽和または不飽和の基であってもよい。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
組成物であって、
(a)溶媒、機能性流体、添加剤濃縮物またはこれらの組み合わせを含む媒体と;
(b)該媒体に完全に可溶性ではないリン含有化合物を含む摩擦調整剤成分と;
(c)(a)に可溶性であり、(b)と相互作用して、(a)への(b)の溶解度を高める安定化成分と
を含み、
成分(b)および成分(c)、または成分(b)のみは、平均直径が10ミクロン未満の分散した粒子の形態で成分(a)の中に存在しており、
該安定化成分が、少なくとも1つの水素供与基と、少なくとも1つの水素受容基と、少なくとも1つのヒドロカルビル基とを含む化合物を含み、該水素供与基と該水素受容基とが、8個を超える結合によって離されておらず、該結合が、共有結合およびイオン結合を含む、組成物。
(項目2)
前記安定化成分である成分(c)が、
(i)(a)三級アミノ基を含むヒドロカルビル置換された化合物と、(b)(a)の該三級アミノ基を四級窒素に変換するのに適切な四級化剤との反応生成物を含み、該四級化剤が、硫酸ジアルキル、ハロゲン化ベンジル、ヒドロカルビル置換されたカーボネート;酸と組み合わせたヒドロカルビルエポキシド、またはこれらの混合物からなる群から選択される、四級塩;
(ii)式[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq−によってあらわされるポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体(式中、Yは、水素、ヒドロカルビル基または置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価のヒドロカルビル基であり、nは、1〜100であり、mは、1〜4であり、qは1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子によってカルボニル基に結合した二価の架橋基であり、rは、0または1であり、Rは、アンモニウム基であり、Xq−は、アニオンである);
(ii)1単位のヒドロキシ含有ヒドロカルビル化合物と、2単位以上のブチレンオキシドとを反応させ、ポリエーテル中間体を生成し、該ポリエーテル中間体とアミンまたはアクリロニトリルとを反応させることによって該ポリエーテル中間体をアミノ化し、該ポリエーテル中間体およびアクリロニトリルの反応生成物を水素化することによって調製される高分子量ポリエーテルアミン;
(iii)フェノールがヒドロカルビル置換基を含む、アルカノールアミン置換されたフェノール;
(iv)アルキルコハク酸無水物およびアルカノールアミンから誘導される低分子量アシル化窒素化合物;
(v)サリチル酸の脂肪アミン塩;
またはこれらの任意の組み合わせ、
(vi)(a)分散剤が、10〜500個の炭素原子を含む少なくとも1つのヒドロカルビル基を含む、(b)該分散剤は、ASTM D4739によって定義される場合、TBNが少なくとも10である、(c)該分散剤が、少なくとも0.1重量%のホウ素を含む、および(d)該分散剤は、N:CO比が0.7より大きい、
という特性のうちの少なくとも1つを有する、窒素含有分散剤またはそのホウ素化バージョン、
(vii)ポリエチレンポリアミンおよび脂肪酸の反応生成物を含むアルキルイミダゾリン;
またはこれらの組み合わせ
を含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記四級塩を調製するために使用される前記三級アミノ基を含むヒドロカルビル置換された化合物が、
(1)ヒドロカルビル置換されたアシル化剤と、該アシル化剤と縮合させることができる、酸素原子または窒素原子を含む化合物との縮合生成物であって、さらに三級アミノ基を含む、縮合生成物;
(2)少なくとも1つの三級アミノ基を含むポリアルケン置換されたアミン;
(3)三級アミノ基を含み、ヒドロカルビル置換されたフェノールと、アルデヒドと、アミンとの反応から調製された、Mannich反応生成物;
(4)三級アミノ基を含有するポリエステル;
またはこれらの任意の組み合わせを含む、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体の前記式中のAは、完全に飽和である、項目2に記載の組成物。
(項目5)
前記高分子量ポリエーテルアミンは、式R(OCHCHRAによってあらわされ、式中、Rは、C〜C30アルキル基またはC〜C30アルキル置換フェニル基であり;Rはエチルであり;xは、5〜50の数であり;Aは、−OCHCHCHNHまたは−NRであり、ここで、RおよびRは、独立して、水素、ヒドロカルビル基、または−(RNRであり、ここで、Rは、2〜10個の炭素原子を含むアルキレン基であり、RおよびRは、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、yは、1〜7の数である、項目2に記載の組成物。
(項目6)
全組成物の濁度が、前記安定化成分である(c)を含有しない同じ組成物と比較して、JTU値および/またはNTU値がより低いことによって特定される場合、向上している、項目1〜5のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
前記摩擦調整剤成分である(b)が、ホスフェート、ホスファイト、チオホスフェート、これらのいずれかの材料のアミン塩、またはこれらの任意の組み合わせを含む、項目1〜6のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
前記摩擦調整剤成分である(b)が、以下の式によってあらわされるリン含有化合物
(X=)P(X−R)
またはその塩化したバージョンを含み、式中、各Xは、独立して、OまたはSであり、aは0または1であり、各Xは、独立してOまたはSであり、bは0または1であり、Rは、Hまたはヒドロカルビル基であり、但し、R基の少なくとも1つは、少なくとも1個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である、項目1〜6のいずれかに記載の組成物。
(項目9)
前記摩擦調整剤が、(i)ヒドロカルビルリン酸または酸エステル;(ii)そのアミン塩;またはこれらの組み合わせをさらに含む、項目1〜6のいずれかに記載の組成物。
(項目10)
全組成物中の成分(b)の量が、少なくとも0.5重量%である、項目1〜9のいずれかに記載の組成物。
(項目11)
透明で安定な組成物を調製するプロセスであって、この組成物が、
(a)溶媒、機能性流体、添加剤濃縮物またはこれらの組み合わせを含む媒体と;
(b)該媒体に完全に可溶性ではないリン含有化合物を含む摩擦調整剤成分と;
(c)(a)に可溶性であり、(b)と相互作用して、(a)への(b)の溶解度を高める安定化成分と
を含み、
前記方法が、
I.成分(a)に成分(b)および(c)を加える工程であって、成分(b)が該全組成物中に0.15重量%以上の量で存在する、工程と;
II.成分(b)が成分(a)中で平均直径が10ミクロン未満の分散した粒子の形態で存在するように、該成分を混合する工程と
を含み、
該安定化成分が、少なくとも1つの水素供与基と、少なくとも1個の水素受容基と、少なくとも1つのヒドロカルビル基とを含む化合物を含み、該水素供与基と該水素受容基とが、8個を超える結合によって離されておらず、該結合が、共有結合およびイオン結合を含む、プロセス。
(項目12)
前記安定化成分である成分(c)が、
(i)(a)ヒドロカルビル置換されたアシル化剤と、該アシル化剤と縮合させることができる、酸素原子または窒素原子を含む化合物との縮合生成物であって、さらに三級アミノ基を含む、縮合生成物と;(b)(a)の該三級アミノ基を四級窒素に変換するのに適切な四級化剤との反応生成物を含む四級塩であって、該四級化剤は、ジアルキルスルフェート、ハロゲン化ベンジル、ヒドロカルビル置換されたカーボネート;酸と組み合わせたヒドロカルビルエポキシド、またはこれらの混合物からなる群から選択される、四級塩;
(ii)式[Y−CO[O−A−CO]−Z−RpXq−によってあらわされるポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体であって、ここで、Yは、水素であるか、またはヒドロカルビル基であり、Aは、二価のヒドロカルビル基であり、nは、1〜100であり、mは、1〜4であり、qは、1〜4であり、pは、pq=mであるような整数であり、Zは、窒素原子によって該カルボニル基に結合した二価の架橋基であり、rは、0または1であり、Rは、アンモニウム基であり、Xq−は、アニオンである、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体;
(ii)1単位のヒドロキシ含有ヒドロカルビル化合物と、2単位以上のブチレンオキシドとを反応させ、ポリエーテル中間体を生成し、該ポリエーテル中間体とアミンまたはアクリロニトリルとを反応させることによって該ポリエーテル中間体をアミノ化し、該ポリエーテル中間体およびアクリロニトリルの反応生成物を水素化することによって調製される高分子量ポリエーテルアミン;
(iii)フェノールがヒドロカルビル置換基を含む、アルカノールアミン置換されたフェノール;
(iv)アルキルコハク酸無水物およびアルカノールアミンから誘導される低分子量アシル化窒素化合物;
(v)サリチル酸の脂肪アミン塩;
またはこれらの任意の組み合わせ、
(vi)(a)分散剤が、10〜500個の炭素原子を含む少なくとも1つのヒドロカルビル基を含む、(b)該分散剤は、ASTM D4739によって定義される場合、TBNが少なくとも10である、(c)該分散剤が、少なくとも0.1重量%のホウ素を含む、および(d)該分散剤は、N:CO比が0.7より大きい、
という特性のうちの少なくとも1つを有する、窒素含有分散剤またはそのホウ素化バージョン;
(vii)ポリエチレンポリアミンおよび脂肪酸の反応生成物を含むアルキルイミダゾリン;
またはこれらの組み合わせ
を含む、項目11に記載のプロセス。
(項目13)
得られた混合物の清澄性が、前記安定化成分である(c)を含有しない同じ組成物と比較して、JTU値および/またはNTU値がより低いことによって特定される場合、向上している、項目11〜12のいずれかに記載のプロセス。
(項目14)
前記摩擦調整剤成分である(b)が、以下の式によってあらわされるリン含有化合物:
(X=)P(X−R)
またはその塩化したバージョンを含み、式中、各Xは、独立して、OまたはSであり、aは0または1であり、各Xは、独立してOまたはSであり、bは0または1であり、Rは、Hまたはヒドロカルビル基であり、但し、R基の少なくとも1つは、少なくとも1個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である、項目11〜13のいずれかに記載のプロセス。
(項目15)
前記摩擦調整剤成分である(b)が、(i)ヒドロカルビルリン酸または酸エステル;(ii)そのアミン塩;またはこれらの組み合わせを含む、項目11〜13のいずれかに記載のプロセス。