特許第5959634号(P5959634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959634フェニトインによって誘発される薬の副作用のリスク評価
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959634
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】フェニトインによって誘発される薬の副作用のリスク評価
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20160719BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20160719BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20160719BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
   C12Q1/68 A
   G01N33/50 P
   G01N33/50 Z
   G01N30/88 C
   !C12N15/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-516152(P2014-516152)
(86)(22)【出願日】2011年6月23日
(65)【公表番号】特表2014-524736(P2014-524736A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】CN2011076187
(87)【国際公開番号】WO2012174723
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2013年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】513321227
【氏名又は名称】チャン グン メディカル ファンデーション チャン グン メモリアル ホスピタル アット キールン
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ウェン−フン
(72)【発明者】
【氏名】フン,シュウェン−イ
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 日薬理誌,1998年,Vol.112,p15-21
【文献】 Drug Metab. Pharmacokinet.,2005年,Vol.20,No.2,p107-112
【文献】 Eur. J. Neurology,2011年 2月22日,Vol.18,p1159-1164
【文献】 Pharmacogenomics,2010年,Vol.11,No.3,p349-356
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から得られたサンプル中のCYP2C異形のパネルから選択される特異的対立遺伝子の存在を検出するステップと、
前記サンプル中の前記特異的対立遺伝子の存在を薬に対する患者の副作用が発症するリスクと相関させるステップと、
を含み、前記特異的対立遺伝子は、rs1057910(CYP2C9*3)とrs3758581とrs17110192とrs9332245とrs1592037の中から選択され、前記副作用は、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮剥離症、又は好酸球増加および全身症状症候群を含む薬の副作用であり、前記薬は、フェニトインであることを特徴とする、患者が薬に対して副作用を発症するリスクを評価する方法。
【請求項2】
前記特異的対立遺伝子は、rs1057910(CYP2C9*3)又はrs3758581又はrs17110192のハプロタイプの異形であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特異的対立遺伝子は、rs1057910rs3758581又はrs17110192の両方であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
患者から得られるサンプルは、患者のDNAサンプル又はRNA又はたんぱく質又は細胞又は末梢血からの血清又は唾液又は尿又は毛であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は患者の薬の副作用に対するリスクを予測する方法に関し、特に、フェニトインに対する薬の副作用を発症するリスク評価に関する。
【背景技術】
【0002】
薬の副作用(略称はADRs)とは通常の投与量で与えられた薬物の使用に伴う害のことである。薬剤過敏症は医療における一般的な有害事象であり、20%は薬の副作用として報告されている。これら過敏反応は過敏性皮膚発疹(MPE)から致死的な薬物反応である好酸球増加および全身症状症候群(DRESS)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)又は中毒性表皮剥離症(TEN)として現れる。
【0003】
フェニトイン、カルバマゼピン又はラモトリジンなどの多くの芳香性抗てんかん薬(AEDs)はよく過敏性反応と関連付けられる。特に、フェニトインは第一線のAEDであるが、フェニトインを受け取った19%の患者は過敏性反応を発症する。過去の研究によって、ミクロソームエポキシド水酸化酵素及びヒト白血球抗原(HLA)のサブタイプのの欠如がAED過敏性と関連付けられると示された。しかし、薬物代謝/遺伝的感受性とフェニトインによって誘発される過敏性反応の間の関係はやはり不明確である。
【0004】
したがって、CYP2C9の遺伝子学的多様性、フェニトイン血漿濃度及びHLA遺伝子型を含む要素を評価することによってリスクを評価することができる、フェニトインによって誘発される過敏性のリスクを予測する新しくて改良された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は特に重大な皮膚の有害反応であるSJS、TEN及びDRESSといったフェニトインによって誘発される薬の副作用を患者が発症するリスクを評価する方法を提供する。SJS、TEN、DRESSを含む、58のフェニトインによって誘発される深刻な皮膚の薬の副作用(SCARs)及び198の制御の全ゲノム関連解析(アフィメトリクス6.0)を用いる。ある実施形態では、患者がフェニトインによって誘発される薬の副作用を発症するリスクを評価する方法は、フェニトインによって誘発さえる過敏性と関連付けられるCYP2Cs領域の第10染色体上の単一ヌクレオチド多型(SNPs)、例えば、CYP2C18上のrs17110192、rs7896133;CYP2C9上のrs1057910(CYP2C9*3)、rs17110321、rs9332093、rs9332245;CYP2C19上のrs3758581、rs2860905、rs4086116及びCYP2C8上のrs7899038、rs1592037、rs1934952、rs11572139、rs6583967の存在を検出するステップを含む。
【0006】
別の実施形態では、患者がフェニトインによって誘発される薬の副作用を発症するリスクを評価する方法は、フェニトイン耐性対照群と比べて、フェニトインによって誘発されるSJS/TEN/DRESSと関連付けられる統計的重要性を増加させることができるハプロタイプに属するrs1057910(CYP2C9*3)、rs3758581、rs17110192、rs9332245又はrs1592037(特にrs17110192、rs1057910及びrs3758581)を結合させるステップを含む。rs1057910、rs3758581、rs17110192、rs9332245、rs1592037(特にrs1057910及びrs3758581、0/95)の結合を保有する耐フェニトイン個人はいないが、約三分の一のフェニトイン敏感性患者はこの結合を保有している(30/96)。これらSNPsのいくつかはアミノ酸配列の変化を引き起こす。例えば、rs3758581について、CYP2C19エクソン7のミスセンス変化はフェニトイン−SJS/TEN/DRESSと強く関連付けられる。CYP2C9*3はフェニトインによって誘発されるSJS/TEN/DRESSと強い関連を有する。
【0007】
別の実施形態では、本発明は患者がフェニトインによって誘発される薬の副作用を発症するリスクを評価する方法を提供し、候補遺伝子(CYP2Cs及びHLA)を使用して、フェニトインによって誘発される過敏性反応を有する152の患者にアプローチし、53ケースのフェニトイン−SJS/TEN、24ケースのフェニトイン−DRESS及び75ケースのフェニトイン−MPE及びいかなる有害反応なしに3ヶ月以上フェニトインを受け取った118の耐性対照群を含む。結果、30.2%のフェニトイン−SJS/TEN及び37.5%のフェニトイン−DRESSはCYP2C9*3を保有していた。一方、14.7%のフェニトイン−MPE及び2.5%の耐性対照群のみがCYP2C9*3遺伝子型を保有していた。本発明はCYP2C9の遺伝異形及び、CYP2C19、CYP2C8及びCYP2C18は乏しいフェニトインの代謝活動と関連しており、過敏性反応につながる血漿内の薬物貯蓄の増加を指し示している。CYP2Csの遺伝的つながりに加え、HLA−A*0207、HLA−A*2402、HLA−B*1301、HLA−B*1502、HLA−B*4001、HLA−B*4609、HLA−B*5101、HLA−DRB1*1001又はHLA−DRB1*1502もフェニトインによって誘発される過敏性との有意な関連を示した。よって、これらデータからCYP2C9/2C19/2C8/2C18の遺伝子学的多様性又はその欠陥対立遺伝子、フェニトイン血漿レベル及び特定のHLA遺伝子型のすべてがフェニトインによって誘発される重大な皮膚の薬の副作用に寄与することが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】フェニトインによって誘発されるSCARsの全ゲノム関連解析を示しており、それぞれの点はSNPを示す。X軸は染色体上のSNPの位置を示し、Y軸はケース対照群関連研究のSNPの−log10p値を示す。58のフェニトインによって誘発されるSJS/TEN/DRESS及び198個体数の対照群がこの研究に含まれている。P値<10−6であるSNPsは赤でハイライトされている。第10染色体がCYP2C領域にあるという強い傾向がある。
【0009】
図2】フェニトイン−ADRsのフェニトイン血漿レベル及び耐性対照群を示しており、一般の治療に用いられるレベルのフェニトインは通常10−20μg/mlの間であり、耐性対照群のフェニトイン血漿レベルは5−15μg/mlの間である。しかし、フェニトイン−SJS/TENを有する患者のフェニトイン血漿レベルは40−50μg/mlであり、これは耐性対照群より高くなっている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は本発明の観点に基づく実施形態の説明を意図しており、本発明が応用される唯一の形態を示すことを意図しているわけではなく、むしろ、これは本発明の精神や範囲に基づき、同一又は同等の機能や構成を達成する異なった実施形態をも含むことを意図している。
【0011】
定義されないのであれば、ここでのすべての技術及び科学用語は当業者が一般的に理解する意味と同じである。本発明を実施する、又はテストするために、記載されている方法、装置及び物質と同等のいかなるものであっても使用することができるが、以下では、ある実施形態における方法、装置及び物質を記載する。
【0012】
すべての言及されている公開物は詳細な説明及び開示の目的のため、引用文献として含まれ、例えば、公開物に記載されている設計及び方法論は本発明と関連して用いることができる。上記、下記、また文章中で記載されている公開物は本願の出願日前の文献を開示する目的のためだけに提供される。また、ここには、先行発明として開示されているため、発明者が権利を有していないものとして解釈されるものはない。
【0013】
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)及び中毒性表皮剥離症(TEN)の診断は合意基準(Bastuji-Garin S, Rzany B et al, 1993)によって定義される臨床上の形態学に基づくものである。SJSは<体の表面領域の10%、SJS_TEN重複が皮膚剥離の10−29%及びTEN>/=30%と定義される。DRESSの基準は好酸球増多症、非定型循環リンパ球、急性肝細胞損傷、又は腎機能の悪化といった症状を伴う皮膚疹(例えば、拡散丘疹、剥脱性皮膚炎)である((Kardaun SH, Sidoroff A et al, 2007)。フェニトインによって誘発されたSJS、TEN、DRESSの診断基準を満たす患者は長庚紀念病院で特定され、この研究に登録された。
【0014】
CYP2C9、CYP2C19、CYP2C8及びCYP2C18を含む特定のCYP2C遺伝子異形はフェニトインの低代謝活動と関連することが発見され、フェニトインによって誘発される過敏性反応と関連付けられることが発見された。CYP2C異形に加え、HLA−A*0207、HLA−A*2402、HLA−B*1301、HLA−B*1502、HLA−B*4001、HLA−B*4609、HLA−B*5101、HLA−DRB1*1001又はHLA−DRB1*1502もフェニトインによって誘発される過敏性又は皮膚の薬の副作用との強い関連を示すことが発見された。
【0015】
したがって、本発明はフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価する方法を提供し、CYP2C9、CYP2C19、CYP2C8及びCYP2C18を含むCYP2C領域の第10染色体上の単一ヌクレオチド多型(SNPs)の存在を検出するステップを含む。58のフェニトインによって誘発されるSCARs(SJS、TEN及びDRESSを含む)及び198の個体数の対照群の全ゲノム関連解析(アフィメトリクス6.0)を用いることによって、最も重要なSNPsはCYP2C領域の第10染色体(図1参照)、例えば、CYP2C18のrs17110192、rs7896133;CYP2C9のrs17110321、rs9332093、rs9332245;CYP2C19のrs3758581、rs2860905、rs4086116及びCYP2C8のrs7899038、rs1592037、rs1934952、rs11572139、rs6583967にあることがわかった(表1参照)。CYP2C遺伝子座の近くに位置する他のSNPs、例えば、rs2274222、rs11188183、rs7921561、rs10882544、rs7084271、rs644437、rs12769577、rs617848、rs10882551、rs585381、rs648638、rs664093、rs12262878、rs17524438、rs12413028、rs11188246、rs12415795、rs11596107、rs11596737、rs10509685、rs7912686、rs17453729、rs17453764、rs17526000及びrs12769370もフェニトインによって誘発される過敏性反応と強い関連がある(表1参照)。
【0016】
過去の研究ではCYP2C9*3はフェニトインによって誘発される斑丘疹性発疹(MPE)のリスクを増加させることが指摘されている(Lee AY. et al. 2004)。ある実施形態では、CYP2C9*3はフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを予測するために用いられる。他のタイプのフェニトインによって誘発される薬の副作用(ADRs)、特にSJS又はTENの特異な皮膚と粘膜の水疱形成の表現型に対するCYP2C9*3の役割を調べるため、単一ヌクレオチド多型(SNP)遺伝子型決定がフェニトインによって誘発された薬の副作用を有する患者に対して行われた。152の患者がこのフェニトインによって誘発される過敏性反応の研究に登録され、53ケースのフェニトイン−SJS/TEN、24ケースのフェニトイン−DRESS及び75ケースのフェニトイン−MPE及びいかなる有害反応なしに3ヶ月以上フェニトインを受け取った118の耐性対照群を含む。結果、CYP2C9*3異形は53中16(30.2%)のフェニトインによって誘発されたSJS/TEN患者、24中9(37.5%)のフェニトインによって誘発されたDRESS患者、75中11(14.7%)のフェニトインによって誘発されたMPEで存在が見られた。一方、異形は2.5%(3/118)のフェニトイン耐性グループで見られただけであった(表2参照)。フェニトイン過敏性ケース及び耐性対照群の統計的分析により、CYP2C9*3異形はフェニトインによって誘発されるSJS/TEN(SJS/TEN vs. 耐性対照群:P=3.3´10-7, OR=17.5 (4.8-63.7)又はDRESS(DRESS vs. 耐性対照群:P =6.1´10-5, OR=19.2 (4.4-82.7))と最も強く関連付けられることが示されたが、フェニトイン−MPEとの関連は弱く(MPE vs. 耐性対照群:P=0.004, OR=6.2 (1.6-23.3))、このCYP2C9*3異形の存在はフェニトインによって誘発されるADRs、特にフェニトインによって誘発されるSJS/TEN又はDRESSの高いリスクの患者を特定するために用いることができる。
【0017】
別の実施形態では、アミノ核酸の変化を引き起こすCYP2CのSNPsをフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価するために用いることができる。いくつかのアミノ核酸を変化させることができるCYP2C遺伝子のSNPs、例えば、CYP2C9の371G > A(rs12414460、Arg124Gln)、895A > G、(rs72558192、Thr299Ala、CYP2C9*16として知られる)、1362G > C(Gln454His、CYP2C9*19として知られる);CYP2C19の991A> G(rs3758581, Ile331Val)、395G > A(rs72558184、Arg132Gln、CYP2C19*6として知られる)、636G > A(rs4986893、Trp212end、CYP2C19*3として知られる)、681G > A、(rs4244285、スプライシング・サイト・変形を引き起こす、CYP2C19*2として知られる)、781C > T(Arg261Trp)及びCYP2C18の204T > A(rs41291550、Tyr68end)、370C > T(Arg124Trp)、576G > C(Gln192His)、1154C > T(rs2281891、Thr385Met)に対するさらなる研究がなされた。CYP2C酵素のこれら変化はその活動及びその基質の特異性の両方に影響を与えうる。例えば、rs3758581、CYP2C19エクソン7のミスセンス変化はフェニトイン−SJS/TEN/DRESS(SJS/TEN/DRESS vs. 耐性:P=0.0003, OR=7.28 (2.3564-22.4912))と強く関連付けられる(表1参照)。
【表1】
【表2】
【0018】
また、本発明の別の実施形態では、異なるSNPsを組み合わせてフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価した。ハプロタイプに属するrs1057910
(CYP2C9*3)、rs3758581、rs17110192、rs9332245 又はrs1592037は、フェニトイン耐性対照群と比べて、フェニトインによって誘発されるSJS/TEN/DRESSと関連する統計的重要性を増加させることができることがわかった。特に患者がrs1057910とrs3758581又はrs17110192の両方を保有しているとき、フェニトインによって誘発されるSJS/TEN/DRESSとより有意な関連を持つ(表3参照)。
【表3】
【0019】
さらなる実施形態では、本発明はフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価する方法が提供され、HLA−A、HLA−B、HLA−DRB1を含むHLA遺伝子型の存在を特定するステップを含む。フェニトイン−ADRs患者のHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1遺伝子型、及び耐性対照群を特定するため、PCR−SSOが用いられる。結果、HLA−A*0207、HLA−A*2402、HLA−B*1301、HLA−B*1502、HLA−B*4001、HLA−B*4609、HLA−B*5101、HLA−DRB1*1001又はHLA−DRB1*1502はフェニトインによって誘発されるADRs(SJS/TEN/DRESS又はMPE)と有意に関連付けられることが示された(表4−6参照)。また、データから耐性対照群と比べて、フェニトイン−ADRsを有する患者の間でHLA−B*1301対立遺伝子は大幅に頻度が増加した。15のSJS/TEN患者(28.3%)及び12のDRESS患者(46.2%)はHLA−B*1301を保有し、14の耐性患者(11.9%)だけがこの遺伝子型を保有していた(SJS/TEN vs. 耐性対照群: P=0.001, OR=3.8 (1.7-8.5); DRESS vs. 耐性対照群: P =2´10-4, OR=6.4 (2.5-16.5))。しかし、この関連はMPEにおいては有意ではない(MPE vs. 耐性対照群: P=0.296, OR=1.7 (0.7-3.7))。HLA−B*5101対立遺伝子もフェニトインによって誘発されるADRsと関連付けられる。13.2%のSJS/TEN患者、19.2%のDRESS患者及び15.6%のMPE患者はHLA−B*5101を保有し、一方、5の耐性患者(4.2%)だけがこの遺伝子型を保有していた(SJS/TEN vs. 耐性対照群: P=0.05, OR=3.4; DRESS vs. 耐性対照群: P=0.018, OR=5.4; MPE vs. 耐性対照群: P=0.009, OR=4.2)。
【表4】
【表5】
【0020】
我々の過去の研究によれば、HLA−B*1502対立遺伝子はカルバマゼピンによって誘発されるSJS/TENと強く関連付けられることが示されている(Chung WH et al, 2004)。本願のさらなる実施形態では、HLA−B*1502対立遺伝子はフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価するために用いられ、HLA−B*1502はフェニトインによって誘発されるADRsと関連付けられることが示されている。12のSJS/TEN患者(22.6%)がHLA−B*1502を保有しており、一方、9の耐性患者(7.6%)だけがこの遺伝子型を保有していた。耐性対照群と比べて、フェニトインによって誘発されるSJS/TEN患者の間でHLA−B*1502対立遺伝子は大幅に頻度が増加した(SJS/TEN vs. 耐性: P=0.01, OR=3.5 (1.4-9.0))。しかしながら、フェニトインによって誘発されるDRESS及びMPEでは関連は見られなかった(P>0.05)。
【0021】
さらに本発明では、耐性対照群と比べて、フェニトインによって誘発されるDRESS患者の間でHLA−B*4609対立遺伝子は大幅に頻度が増加し(DRESS vs. 耐性対照群: P=0.032, OR=19.7 (0.9-449.8))、HLA−A*0207対立遺伝子はフェニトインによって誘発されるDRESSと関連付けられることがわかった(DRESS vs. 耐性対照群: P=0.024, OR=4.6 (1.3-16.2))。さらに、HLA−DRB1*1001はフェニトインによって誘発されるMPEと関連付けられることがわかった(MPE vs. 耐性対照群: P=0.02, OR=13.2);HLA−DRB1*1502はフェニトインによって誘発されるSJS/TEN(SJS/TEN vs. 耐性対照群: P=0.029, OR=14)と関連付けられることがわかった。一方、HLA−A*2402及びHLA−B*4001対立遺伝子はフェニトインによって引き起こされるADRsの保護効果(フェニトインによって誘発されるADRsでは対立遺伝子頻度を下げ、耐性対照群では増加させる)を示した。
【表6】
【0022】
研究によれば、CYP2C19、CYP2C8、CYP2C18及び、CYP2C9の遺伝子異形は乏しいフェニトインの代謝活動と関連しており、フェニトイン過敏性反応のリスクにつながるその薬物貯蓄を増加していた。ある実施形態では、フェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価する方法は血漿中のフェニトイン濃度を検知するステップを含む。フェニトインは肝酵素によって代謝されるため、シトクロムP450酵素の多型性はフェニトイン血漿濃度に影響を与える。フェニトインの非線形薬物動態及び狭い治療濃度域は血漿のフェニトイン濃度はその有効性と毒性と関連していることを指し示している。
【0023】
この研究では、ADRの発症の間のフェニトイン濃度はHPLC分析による患者の血漿から決定され、非線形の薬物動態式によって予測される:
Km = 4mg/L (代謝率はVmaxの半分である基質濃度)
Vmax = 7mg/kg/day (最大代謝率)
Vd = 0.65L/kg (分配の量)
t : 2つのフェニトイン血漿濃度間の時間(日にち)
【0024】
フェニトインの治療レベルは通常10−20μg/mlの間である。薬物を摂取後、耐性対照群患者のフェニトイン血漿レベルは5−15μg/mlの間であった。しかし、SJS/TEN患者において、フェニトイン血漿レベルは40−50μg/mlであり、これは耐性対照群患者のものより高くなっていた(SJS/TEN vs. 耐性対照群: P=0.006; MPE vs. 耐性対照群: P=0.004)(図2参照)。また、我々はCYP2Cs異形を保有している患者のフェニトイン血漿レベルを比較した。結果を見ると、CYP2C9*3を保有するフェニトイン−ADRs患者はフェニトイン血漿レベルが高いことが示されている。23のフェニトイン−ADRs患者のフェニトインレベルを分析した後、4人の患者のフェニトインレベルは10μg/mlより低く、9人の患者のフェニトインレベルは10−20μg/mlであり、10人の患者のフェニトインレベルは20μg/mlより高かった。これら23人の患者の中で、CYP2C9*3異形を保有する5人の患者のフェニトイン濃度はどれも20μg/mlより高かった。本発明はCYP2Cs異形、特にCYP2C9*3は、乏しいフェニトインの代謝活動を示し、過敏性反応を引き起こすことを証明している。フェニトインの代謝障害は薬物貯蓄のリスクを増加させる可能性があり、重大な過敏性反応、SJS、TEN、DRESS、を誘発するリスクを引き起こす。
【0025】
CYP2Cs異形及びHLA遺伝子型はその領域で知られている方法を用いることによって検知することができる。好ましくは関心のある異形に対して特定である調査のため、ゲノムのDNAが雑種として生じさせられる。調査は直接の発見としてラベル付けされる、又は調査において特定される第二の、検出可能な分子によって接触される。または、異形のcDNA、RNA又はプロテイン生成物を見つけることができる。
【0026】
以上、本発明を記述及び図示によって説明したが、これらは発明の実施形態であるだけであり、限定として考慮されるものではない。よって、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しないいかなる同等物も含まれる。
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図1
図2