(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959642
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】導電性構造接着剤
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20160719BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20160719BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20160719BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20160719BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20160719BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20160719BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20160719BHJP
C09J 121/00 20060101ALI20160719BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20160719BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08F292/00
C09J4/02
C09J5/00
C09J9/02
C09J11/04
C09J11/06
C09J121/00
C09J153/02
H01B1/24 D
【請求項の数】34
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-523928(P2014-523928)
(86)(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公表番号】特表2014-529633(P2014-529633A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】US2012042590
(87)【国際公開番号】WO2013019326
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】61/514,724
(32)【優先日】2011年8月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】レヴァンドスキー、 スーザン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ベイル、 サミュエル シー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ、 ティモシー ピー.
【審査官】
柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0002876(US,A1)
【文献】
特開2011−032335(JP,A)
【文献】
特開昭61−296077(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0331462(US,A1)
【文献】
特表2007−528437(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0023165(US,A1)
【文献】
特開2009−054983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C08F 292/00
C09J 4/02
C09J 5/00
C09J 9/02
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 121/00
C09J 153/02
H01B 1/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
c.i.少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー、
ii.第1の部分の10重量%から30重量%の量で存在し、20m2/gから24m2/gの表面積を有するグラファイト、
iii.酸触媒、
iv.ラジカル開始剤、および
v.ラジカル安定剤
を含む第1の部分、ならびに
d.i.少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー、
ii.触媒、および
iii.前記触媒を安定化させるための安定剤
を含む第2の部分
を含む、前記第1の部分と前記第2の部分とが、一緒に組み合わされて、硬化性組成物を形成する、二液型硬化性組成物。
【請求項2】
前記グラファイトの量が、第1の部分の10重量%超、20重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーが、単官能アクリレートモノマー、二官能アクリレートモノマー、三官能アクリレートモノマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される、少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソボルニル、ジメタクリル酸ジブチレン、トリメタクリル酸トリプロパノール、およびそれらの組合せからなる群から選択される、少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記グラファイトが、合成グラファイトを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記合成グラファイトが、表面積20m2/gから24m2/gを有する合成グラファイトを含み、前記合成グラファイトが、前記第1の部分の10重量%から15重量%の量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の部分および前記第2の部分の少なくとも1つが、ハロゲンフリーエラストマーを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ハロゲンフリーエラストマーが、ポリスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択されるブロックコポリマーを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記酸触媒が、少なくとも1つの有機酸を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記酸触媒が、パーオキサイド、アクリル酸、メタクリル酸、サッカリン、およびそれらの組合せからなる群から選択される組成物を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ラジカル開始剤が、T−ブチルパーオキサイド、T−ブチルパーベンゾエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ラジカル安定剤が、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン、およびホスホネートからなる群から選択される、少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記触媒が、アミン触媒、金属触媒、およびそれらの組合せからなる群から選択される、少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記触媒が、銅触媒を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記触媒を安定化させるための前記安定剤が、ブチルアルデヒドおよびアニリンを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記硬化性組成物が、硬化時に導電性を実現できると共に、硬化性組成物が接着する基材に対して十分に高いラップせん断強度をなお維持できる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
二液型硬化性組成物を調製する方法であって、
a.i.少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー、
ii.第1の部分の10重量%から30重量%の量で存在し、20m2/gから24m2/gの表面積を有するグラファイト、
iii.酸触媒、
iv.ラジカル開始剤、および
v.ラジカル安定剤
を含む、第1の成分一式を用意するステップ、
b.前記第1の成分一式を混合して、第1の部分を形成するステップ、
c.i.少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー、
ii.金属触媒、および
iii.前記金属触媒のための安定剤
を含む、第2の成分一式を用意するステップ、ならびに
d.前記第2の成分一式を混合して、第2の部分を形成するステップ
を含み、
前記第1の部分および前記第2の部分が、一緒に組み合わされて、硬化性組成物を形成することができる方法。
【請求項18】
前記グラファイトの量が、第1の部分の10重量%超、20重量%未満である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記グラファイトが、合成グラファイトを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記合成グラファイトが、表面積20m2/gから24m2/gを有する合成グラファイトを含み、前記合成グラファイトが、前記第1の部分の10重量%から15重量%の量で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記硬化性組成物が、硬化時に導電性を実現できると共に、硬化性組成物が接着する基材に対して十分に高いラップせん断強度をなお維持できる、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の部分および前記第2の部分の少なくとも1つが、ハロゲンフリーエラストマーを含む、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ハロゲンフリーエラストマーが、ポリスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択されるブロックコポリマーを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記金属触媒が、銅触媒を含む、請求項17〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記金属触媒のための前記安定剤が、ブチルアルデヒド/アニリンを含む、請求項17〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
a.i.少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー、
ii.第1の部分の10重量%から30重量%の量で存在し、20m2/gから24m2/gの表面積を有するグラファイト、
iii.酸触媒、
iv.ラジカル開始剤、および
v.ラジカル安定剤
を含む、第1の部分を用意するステップ、
b.i.少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー、
ii.金属触媒、および
iii.ブチルアルデヒド/アニリン
を含む、第2の部分を用意するステップ、
c.前記第1の部分と前記第2の部分とを混合して、硬化性組成物を形成するステップ、ならびに
d.前記硬化性組成物を、電気デバイスの構成部品の少なくとも1つの表面に塗布し、前記硬化性組成物を硬化させるステップ
を含む、電子デバイスの構成部品を接着する方法。
【請求項27】
前記グラファイトの量が、第1の部分の10重量%超、20重量%未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記グラファイトが、合成グラファイトを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記合成グラファイトが、表面積20m2/gから24m2/gを有する合成グラファイトを含み、前記合成グラファイトが、前記第1の部分の10重量%から15重量%の量で存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記硬化性組成物が、導電性を示すと共に、硬化性組成物が接着する表面に対して十分に高いラップせん断強度をなお維持することを示す、請求項26〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の部分および前記第2の部分の少なくとも1つが、ハロゲンフリーエラストマーを含む、請求項26〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ハロゲンフリーエラストマーが、ポリスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択されるブロックコポリマーを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記金属触媒が、銅触媒を含む、請求項26〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
電気デバイスを形成する1つまたは複数の部品をさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性接着剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、導電性成分を含む二液型(two−part)接着剤組成物に関するものであり、熱によってまたは周囲温度(例えば室温)で、硬化可能である。
【背景技術】
【0002】
硬化性接着剤組成物は、さまざまな手持型電子デバイス中の構成部品の接合を含む、多様な用途において使用されてきた。使用者がしばしば、落としたり、低い注意レベルで取り扱うかかるデバイスにとって、高度な強度および接着性が必要とされる。しかし、かかる電子デバイスの使用に適切な導電率を有する組成物を獲得するのは伝統的に困難であった。さらに、適正な量の導電率を実現するばかりでなく、かかるデバイスにとって必要とされる接着性および構造的一体性をなお維持する接着剤組成物を獲得することは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、ハロゲンフリー成分を含んでよく、さまざまな電子機器の使用に適切である急速に硬化する導電性組成物を提供することが望まれる。さらに、熱の存在下および/または室温で急速に硬化できる組成物を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様は、
a.i.少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー、
ii.導電性成分、
iii.酸触媒、
iv.ラジカル開始剤、および
v.ラジカル安定剤
を含む第1の部分(first part)、ならびに
b.i.少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー、
ii.触媒、および
iii.前記触媒を安定化させるための安定剤
を含む第2の部分(second part)
を含む二液型硬化性組成物を提供し、
前記第1の部分と前記第2の部分とは、一緒に組み合わされて、硬化性組成物を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の独創的組成物は、接着剤、密封剤、コーティングおよび埋め込み用途を含む、多様な最終使用用途において有用であり、電子の、自動車の、およびその他の材料の敏感な適用において特に有用な技術である。本発明の組成物は、導電性組成物が非常に有用となり得る電子デバイスに、特に適切である。例えば、本発明の組成物は、ラップトップコンピューター、個人用音楽プレーヤー、GPSデバイス、PDA、ビデオディスプレーデバイス(テレビおよびその他のビデオプレーヤーなど)ならびにその他の同様の製品などの、さまざまな個人用および/または携帯型の電子機器のケースと内部の構成部品とを接合するのに有用である。本発明の接着剤組成物は、テレビ、デスクトップコンピューター等などのその他のより大きな電子製品にもまた、もちろん有用となり得る。個人用電子デバイス、特に携帯型デバイスにおいて使用される接着剤組成物は、デバイスが、使用者によってうっかり落とされる場合、接着および強度を維持するために、高い衝撃強度を有するべきである。本発明の組成物の低いガラス転移温度によって、製品は低温適用に使用でき、なお一体性を維持できる。
【0006】
本明細書で使用されている用語「硬化」および「硬化する」は、時間、温度、湿度、放射線、硬化する触媒または促進剤等のかかる材料における存在有無および量などの、少なくとも1つの変数によって、必ずではないが、通常誘発される、材料の状態、条件、および/または構造における変化のことである。本用語は、一部のおよび全部の硬化を網羅する。
【0007】
本明細書に使用されている通り、用語「ハロ」および「ハロゲン」は、同義であることが意図され、両者とも、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素などの「ハロゲン」として一般に分類される元素を含むことが意図される。用語「ハロゲンフリーの」は、ハロゲンが少なくとも99%無いなど、いずれのハロゲンも実質的に無い組成物または成分のことである。最も望ましくは、「ハロゲンフリーの」成分は、いずれのハロゲンも完全に無い。
【0008】
本発明は、二液型硬化性組成物である。本発明の硬化性組成物は、室温で、すなわち、加熱する必要がなく、約20℃〜約25℃で、望ましくは急速に硬化可能である。したがって、室温で、二液型組成物は、約24時間で、より望ましくは約8〜約16時間で、最も望ましくは約8〜約12時間で、硬化できる。高温で、本発明の二液型組成物は、さらに速い速度(「超高速(ultra fast)」硬化と本明細書で呼ばれる)で硬化し得る。約100〜150℃の温度で、本明細書に記載された超高速組成物は、約5分〜約20分で、最も望ましくは約10分〜約15分で、硬化できる。
【0009】
硬化性組成物は、一液型硬化性組成物または複数液型硬化性組成物を含んでよく、さまざまな液が、一緒に組み合わされて、硬化性組成物を形成する。本明細書に記載された本発明の組成物は、望ましくは、二液型硬化性組成物であり、2つの液は、第1の部分および第2の部分を含む。第1の部分および第2の部分は、組成物の硬化が望まれるまで、別々に貯蔵されてよい。そのような理由として、第1の部分および第2の部分のそれぞれは、2つの成分を一緒に混合する前に、早まって硬化すべきでない。このことは、下記でさらに詳細に考察する。使用において、第1の部分および第2の部分を一緒に混合し、接合が望まれる所望の1つまたは複数の表面に塗布する。上記に説明した通り、次に、組成物は、高速度で(または加熱される場合は超高速度で)硬化し得る。
【0010】
第1の部分は、少なくとも1つの(メタ)アクリレートを、望ましくは含む。本明細書に使用されている通り、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートモノマーとの両方を含む。第1の液は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸−酸化エチレン付加体等などのモノマーを含むが、これらに限定されず任意の所望の(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。特に望まれるのは、アクリル酸イソボルニル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、およびトリメタクリル酸トリメチルプロパノールなどの単官能、二官能、および三官能のモノマーの組合せである。しかし、任意の1つまたは複数の(メタ)アクリレートが、本発明において使用されてよい。
【0011】
第1の部分は、(メタ)アクリレートモノマー、単官能アクリレートモノマー、二官能アクリレートモノマー、三官能アクリレートモノマー、およびそれらの組合せを含む、アクリレートモノマーの任意の組合せを含んでよい。(メタ)アクリレートモノマーは、第1の液の約30重量%〜約80重量%の量で、第1の部分中に存在してよい。より望ましくは、(メタ)アクリレートモノマーは、第1の部分の約30重量%〜約50重量%の量で、第1の部分中に存在してよい。いくつかの実施形態において、第1の部分は、単官能アクリレートモノマー、二官能アクリレートモノマー、三官能アクリレートモノマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される、第2のアクリレートモノマーを、さらに含む。第2のアクリレートモノマーが使用される場合、第1の部分の約5重量%〜約40重量%の量で、存在してよい。
【0012】
一つの実施形態において、(メタ)アクリレートは、一般構造式I
H
2C=CGCO
2R
2 (I)
を有してよく、
式中、Gは、水素または1〜約4個の炭素原子のアルキルでよく、R
2は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルケニル、アラルキル、または6〜約16個の炭素原子のアリール基から選択されてよく、そのいずれも、場合に応じて、酸素、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カルボネートアミン、アミド、硫黄、スルホン等で適宜置換または介在されてもよい。
【0013】
別の実施形態において、(メタ)アクリレートは、一般構造式II
【0014】
【化1】
を有してよく、
式中、R
2は、水素、1〜約4個の炭素原子のアルキル、1〜約4個の炭素原子のヒドロキシアルキル、または
【0015】
【化2】
から選択してよく、
式中、R
3は、水素および1〜約4個の炭素原子のアルキルから選択してよく、R
4は、水素、ヒドロキシ、および
【0016】
【化3】
から選択してよく、
式中、mは、少なくとも1、例えば1〜約8以上、例えば1〜約4の整数であり、nは、少なくとも1、例えば1〜約20以上の整数であり、vは、0または1である。
【0017】
第1の部分は、金属などの導電性充填剤成分またはその他の成分を含んでよい。特に、導電性成分は、例えば、カーボンブラック、グラファイトなどの充填剤、アルミニウム、銅、黄銅、青銅、ニッケル、または鉄などの金属の成分、酸化スズ、酸化鉄、および二酸化チタンなどの導電性顔料、有機または無機の塩、ならびにそれらの組合せを含んでよい。特に有用なのは、グラファイトであり、特に、例えば、Asbury Carbonsによって、Graphite3775およびMicro450の商品名で販売されている製品を含む、合成グラファイトである。導電性成分は、合成グラファイト、天然グラファイト、およびそれらの組合せを含んでよい。
【0018】
しかし、導電性材料が、第1の部分での使用に適切であることが、特に望ましい。すなわち、第1の部分の個別の成分に応じて、導電性材料は、組成物を早まって硬化する、またはさもなければ、第1の部分と第2の部分とを一緒に混合する前に、第1の部分に影響を与える材料であるべきでない。第1の部分がメタクリレートおよび開始剤を含む実施形態において、導電性材料が、第1の部分のその他の成分に対する触媒として潜在的に働く可能性があるいずれの材料も無いことが望まれてよい。例えば、導電性成分が、銅または鉄を欠くことが、望まれてよい。ある種の材料は、しばしば「純粋な」として市場に出ているが、望ましくないことに、触媒として潜在的に働く可能性がある微量の材料を含むことがある。例えば、「純粋な」グラファイトは、微量のその他の、より望ましくない金属を含むことがある。したがって、グラファイト組成物が導電性成分として使用される場合、高純度を有する合成グラファイトが使用されることが望ましい。
【0019】
導電性成分は、望ましくは、粒径、約5〜約50ミクロン、最も望ましくは約5〜約20ミクロンを有する。さらに、導電性成分の任意の形状が使用されてよく、球形状、扁平形状、無定形等を含む。特に有用であるのは、実質的に薄片様の形状、すなわち実質的に扁平形状を有する導電性成分である。薄片対薄片の接触および重なりが相当量あり、接着剤の導電性を増加させうるので、薄片様の形状の使用は有用である。認識できる通り、球形状などの形状を使用してよいが、球対球の接触および重なりは、薄片および扁平形状の成分の接触および重なりより少ない可能性がある。導電性成分は、所望の量の導電率を実現するのに適切である表面積を有することが、特に望ましい。いくつかの実施形態において、導電性成分は、表面積約15m
2/g〜約25m
2/g、より望ましくは約17m
2/g〜約23.7m
2/gを有する。しかし、下記にさらに詳細に記載される通り、導電性成分の表面積は、接着剤材料中に使用される導電性成分の量に応じて、変更されてよい。導電性材料の表面積と添加量との間の均衡をとることは、特に有用である。
【0020】
第1の部分は、導電性成分の任意の所望の量を含んでよい。一つの実施形態において、第1の部分は、第1の部分の約5重量%〜約25重量%の導電性成分を含む。より望ましくは、第1の部分は、第1の部分の約10重量%〜約20重量%の導電性成分を含んでよい。当業者が認識し得るように、導電性成分をあまりに大量に含むことは、接着剤組成物の接着性および接合強度を妨害する可能性があるが、一方で、導電性成分をあまりに少量しか含まないことは、所望のレベルの導電率を実現しない組成物をもたらす可能性がある。
【0021】
しかし、適切な導電率を実現するために、導電性成分の添加レベルを、成分の表面積に応じて選択し得ることが、驚いたことに、本発明者らによって発見された。成分の表面積が、より小さい場合、成分の添加レベルを、十分な導電率が生じるために、より高くする必要があろう。しかし、繰り返しになるが、添加レベルが高すぎる場合、接着性および強度は、望ましくないことに損なわれうる。本出願者らは、適切な導電率を実現する、適切な表面積および添加レベルを決定した。例えば、導電性成分は、第1の部分の約10重量%の量で存在し、表面積約23.7m
2/gを有し、適切な導電率を実現し得る。しかし、同じ導電性成分が、表面積約17m
2/gおよび添加レベル10%を有する場合、適切な導電率がない可能性がある。所望の実施形態において、導電性成分の表面積が、約23m
2/gである場合、添加レベルは、第1の部分の約10〜15重量%である。さらに、導電性成分の表面積が、約17m
2/gである場合、添加レベルは、第1の部分の約15〜20重量%である。
【0022】
より大きい表面積(すなわち約20〜約24m
2/g)を有する導電性成分について、添加レベルは、第1の部分の約10重量%〜約30重量%でもよい。より小さい表面積(すなわち約17〜約20m
2/g)を有する導電性成分について、添加レベルは、第1の部分の約15〜約20重量%でもよい。
【0023】
特に合成グラファイトおよび具体的には複数の薄片の形態の合成グラファイトなどの合成成分の使用は、特にその他の金属充填剤と比較して、十分な構造的一体性および強度をなお維持しながら、良好な導電率を組成物に与えることがわかった。合成材料は、第1の部分の早すぎる硬化を防ぐのに重要となる、高純度で調製し得る点で、特に有用である。さらに、合成成分の使用は、製品の構成部品の製造のために十分なオープンタイムおよび硬化時間を提供することがわかった。合成グラファイトは、低コスト、高純度、および使いやすさに起因して、特に好まれる。
【0024】
第1の部分は、有効量のエラストマーを含んでよい。所望であれば、エラストマーは、少なくとも1つのハロゲンフリーエラストマーを含んでもよい。エラストマー成分は、さらなる強度および安定度を、硬化組成物に与えるのに有用である。上記に説明した通り、個人用電子装置の接合におけるハロゲンの伝統的な使用は、ハロゲン化物の腐食性に起因して、電子装置に有害である可能性がある。このため、本発明中で使用されるエラストマーは、望ましくは、ハロゲンフリーでよい。エラストマーは、任意の所望の量で、第1の部分中に存在してよく、特に、第1の部分の約10重量%〜約50重量%の量で存在してもよい。より望ましくは、エラストマーは、第1の液の約10重量%〜約40重量%の量で、第1の部分中に存在してよい。
【0025】
いずれのエラストマーも、および特にいずれのハロゲンフリーエラストマーも、本発明において有用となり得る。特に有用であるのは、ブタジエン−スチレンおよびスチレン−イソプレン/スチレンエラストマーである。本発明において有用なその他のエラストマーとしては、ポリスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーを有するエラストマーおよびNordmann、Rassmann GmbHから市販されている、商品名Kraton D−1155ES(スチレン含有量40%を有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー)として市場に出ているものなど、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー構造を有するエラストマーが挙げられる。その他の有用なエラストマーとしては、Arkema,Inc.(Philadelphia、PA)によって、商品名Arkema E−21として販売されているエラストマーなど、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーエラストマーが挙げられる。1つまたは複数のエラストマーを、ペレットの形態で第1の部分に組み込んでよく、または液体の形態で添加してもよい。エラストマーが(メタ)アクリレート成分に添加される場合、(メタ)アクリレートは、エラストマーのための溶媒として働き、硬化の間に、エラストマーを(メタ)アクリレート主鎖中に組み込み得る。この組合せは、さらなる支持および強度を最終の硬化組成物に与える。
【0026】
一つの特定の実施形態において、エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーである。好ましいスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーにおいて、スチレンは、コポリマーの約30〜50重量%の量で存在してもよく、より望ましくは、コポリマーの約37〜43重量%の量で存在する。かかるブロックコポリマーを使用する実施形態において、最も望ましくは、スチレンは、約40重量%の量で存在し、ブタジエンは、約60重量%の量で存在する。所望であれば、より少ないスチレン含有量を有するエラストマーが使用されてよいが、しかし、好ましいエラストマーは、コポリマーの約40重量%のスチレン含有量を有する。かかるより少ないスチレンを含有するスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーとしては、商品名Kraton D−1101K(スチレン含有量31%)、Kraton D−1116ES(スチレン含有量23%)、およびArkema E−21として市場に出ているものが挙げられる。
【0027】
本発明の一つの実施形態は、第1の部分中にさまざまなエラストマーを組合せることとは対照的に、第1の部分中にたった一つのエラストマー(好ましくはハロゲンフリーエラストマー)を組み込む。例えば、第1の部分は、所望の量の1つのスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーエラストマーを含んでもよい。下記の実施例においてより詳細に述べられる通り、かかる配合物は、組み合わせた複数のエラストマーを伝統的に必要とした従来の硬化性組成物に対して改善を示して、硬化生成物に所望の強度を達成する。例えば、1つの以前から知られている組成物において、組成物は、アクリロニトリルブタジエンエラストマーとビニル末端ブタジエンエラストマーとクロロスルホン化エラストマーとの混合物を含んでいた。この組合せは、硬化生成物において所望の強度を達成するのに重要であるとみなされていた。この以前の組成物は、望ましくないハロゲン化組成物を含むばかりでなく、任意の1つのエラストマーの除去が、硬化生成物の衝撃強度を大きく低下させることがわかった。対照的に、本発明は、たった1つのエラストマーの使用によって、所望の強度および一体性を実現できる。代替方法として、もちろん、本発明は、所望であれば、エラストマーの組合せを含んでもよいが、かかる組合せは、必要ではない。
【0028】
本発明の組成物の第1の部分は、硬化を補助するために、任意の種数のラジカル開始剤を含んでよい。特に、かかるラジカル開始剤としては、非限定的にT−ブチルパーオキサイド、T−ブチルパーベンゾエート、シクロヘキサノンパーオキサイドなどの、パーオキサイドおよびパーオキシ化合物、ならびにそれらの組合せが挙げられる。パーオキサイドおよびパーオキシ化合物は、任意の所望の量で存在してよく、第1の部分の約0.5重量%〜約5重量%の量で、望ましくは存在する。
【0029】
第1の部分は、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、サッカリン、およびそれらの組合せなどの酸系触媒を、さらに含んでよい。その他の酸触媒もまた使用されてよい。一つの実施形態において、第1の部分は、第1の部分の約0.1重量%〜約5重量%の量で、アクリル酸を含んでよい。第1の部分は、第1の部分の約5重量%〜約10重量%の量で、(メタ)アクリル酸を、さらに含んでもよい。
【0030】
第1の部分は、任意の数の適切な充填剤および充填添加剤を含んでよい。かかる充填剤としては、シリカ、フュームドシリカ、ケイ酸ジルコニウムおよびカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の水酸化物などの水酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。珪藻土ならびに、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムなどの炭酸塩など、その他の充填剤が使用されてよい。カルシウムの粘土および合成繊維もまた組み込まれてよい。さらに、第1の部分は、ロウおよびガラスビーズを含んでもよい。充填剤の混合物が、検討される。1つおよび/または複数の充填剤は、任意の所望の量で存在してよく、一つの実施形態において、第1の部分の約1重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0031】
第1の部分はまた、パーオキサイド成分中の酸素を安定化させるように、1つまたは複数のラジカル安定剤を含んでよい。任意の所望のラジカル安定剤が、本発明において使用されてよい。1つまたは複数のシアノアクリレートモノマーを含む、本発明の接着剤組成物における使用に適切なラジカル安定剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、およびt−ブチルヒドロキノン、ならびにそれらの混合物または組合せが挙げられる。ラジカル安定剤として特に有用であるのは、1−ヒドロキシエチリデン−1,1,−ジホスホン酸(商品名Dequest2010として市場に出ている)などのホスホネートである。
【0032】
ラジカル安定剤は、任意の所望の量で、第1の部分中に使用されてよく、第1の部分中に組み込まれたパーオキサイドの安定化のために適切な量で存在してよい。用語「安定化量」は、第1の部分を有効に安定化させるのに必要とされるラジカル安定剤の量のことである。例えば、ラジカル安定剤は、第1の部分の約0.05重量%〜約2重量%の量で存在してよい。少ないパーオキサイドが第1の部分中に組み込まれる場合、さらに少ない量のラジカル安定剤が、妥当な安定化量を達成するために、組み込まれてよい。
【0033】
本発明の第2の部分は、望ましくは、別箇の成分の組合せであり、第1の部分と反応させて、本発明の導電性硬化性組成物を形成するように、特に設計される。第1の部分と同様に、第2の部分は、(メタ)アクリレートモノマーを所望の量含む。第2の部分は、1つの(メタ)アクリレートモノマーを含んでも、または上記で説明した通り、さまざまな(メタ)アクリレートモノマーの組合せを含んでよい。望ましくは、第2の部分は、(メタ)アクリレートモノマー(複数可)を、第2の部分の約30重量%〜約70重量%の量で含有する。より望ましくは、(メタ)アクリレートモノマー(複数可)は、第2の部分の約40重量%〜約70重量%の量で存在してよい。
【0034】
第2の部分もまた、第2のハロゲンフリーエラストマーを含有してよい。第2の部分は、上に記載されたものなどのハロゲンフリーエラストマーを含む、任意の個数のエラストマーを含んでよい。特に望まれるのは、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを有するエラストマーであり、最も望まれるのは、コポリマーの約37重量%〜約43重量%のスチレン含有量を有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーである。1つまたは複数のエラストマーは、第2の部分の約10重量%〜約40重量%の量で存在してよい。第1の部分と同様に、エラストマー(複数可)は、強度および安定度を最終の硬化組成物に与える。
【0035】
第2の部分は、上に記載されたものを含む、1つまたは複数の充填剤を含んでもよい。望ましくは、充填剤は、第2の部分の約2重量%〜約6重量%の量で、第2の部分中に存在してよい。
【0036】
第2の部分は、1つまたは複数の触媒をさらに含んでよい。第2の部分のための適切な触媒は、ブチルアルデヒド−アニリンなどのアミン含有触媒、または銅含有溶液などの金属触媒を含む。使用される場合、アミン含有触媒は、最終の組成物の硬化を達成するために、任意の所望の量で存在してよく、望ましくは、第2の部分の約3重量%〜約10重量%の量で存在してよい。望ましくは、第2の部分中に使用される場合、銅触媒は、第2の部分の約0.01重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0037】
上記の触媒に加えて、またはその代替物として、第2の部分は、ジヒドロフェニルピリジンまたはジメチルp−トルイジン(DMPT)などのアミン促進剤を含む、1つまたは複数の促進剤を適宜含んでよい。かかる促進剤は、第2の部分の約3重量%〜約10重量%の量で存在してよい。
【0038】
第2の部分は、上に記載された触媒を安定化させるために、1つまたは複数の安定剤を、さらに含んでよい。特に、金属含有触媒(銅触媒溶液など)を組み込む実施形態において、触媒のための安定剤の使用は、とりわけ有用となり得る。任意の所望の安定剤が使用されてよく、例えば、ブチルアルデヒド/アニリンを含む。その他の安定剤が使用されてよく、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン、またはヒンダードフェノール(ブチル化ヒドロキシトルエン)もしくはベンゾフラノンなどの水素供与抗酸化剤を含む。安定剤は、第2の部分中の触媒を安定化させるのに適切な量で、第2の部分中に存在してよい。望ましくは、安定剤は、第2の部分の約3重量%〜約10重量%の量で存在する。
【0039】
第2の部分は、上記に説明した通り、1つまたは複数の充填剤または添加剤を含んでよい。かかる添加剤および充填剤は、第2の液の約0.05重量%〜約0.90重量%の量で存在してよい。
【0040】
二液型組成物の2つの部分は、使用者が硬化性組成物を調製する準備ができるまで、別々に混合され、貯蔵されてよい。例えば、第1の部分は、第1の容器中で混合され、貯蔵されてよく、第2の部分は、第2の容器中で混合され、貯蔵されてよい。2つの容器は一緒に保管してよく、その結果、第1の部分と第2の部分との組み合わせは、使用者の都合で行うことができる。意図しない混合、およびその結果として早まった最終の組成物の硬化を避けるために、硬化が望まれるまで、第2の部分から物理的に離れて、第1の部分が保管されることは、特に有用である。二液型硬化性組成物は、別々に保管される第1の部分および第2の部分を含有するキットの一部分として維持されてよい。
【0041】
硬化性組成物は、第1の部分と第2の部分とを一緒に組み合わせることによって調製されて、硬化性組成物を形成してよい。上記に述べられた通り、硬化性組成物は、約5分〜約30分で、任意の所望の温度で、硬化できる。第1の部分と第2の部分とは、任意の所望の量で組み合わされてよく、望ましくは、約2:1(第1の部分対第2の部分)の重量比で、組み合わされる。しかし、第1の部分は、第2の部分の約1.5〜約2.5倍多い量で存在してもよい。その他の実施例において、第1の部分と第2の部分とは、およそ等しい量で、組み合わされてよい。
【0042】
第1の部分と第2の部分とを一緒に混合して、組み合わせた組成物を形成した後で、組み合わせた組成物を、所望の接合および接着を達成するために必要に応じて、基材に塗布してよい。基材は、プラスチック材料、または鋼、アルミニウム等などの金属材料を含んでよい。基材は、インクで被覆された金属を含んでもよい。例えば、二液型組成物を、個人用電子デバイスのためのケースの上側部品および/または下側部品に塗布してよく、それによってケースを1つに固定する。ケースを接合する一つの方法において、第1の部分と第2の部分とを組み合わせて、硬化性組成物を形成する。次に、硬化性組成物を、携帯型電子デバイスのためのケースの上側部品または下側部品の少なくとも1つに塗布する。ケースに塗布される組成物の量は、ケースを有効に1つに固定するように、所望通りに変更されてもよい。次に、組成物が硬化するまで、上側部品と下側部品とを一緒に保持し、それによって、デバイスの上側部品を下側部品に固定する。使用者が、組成物を基材に塗布し、基材に接着させる位置に任意の他の部品を設置することができる時間内で、組成物は、望ましくは硬化する。所望であれば、硬化していない組成物を、硬化時間を早めるために加熱してよい。
【0043】
本発明の硬化組成物は、所望の導電率レベルに加えて、高い強度および安定度を示す。強度および安定度は、しばしば使用者によって落とされ、構成部品が壊れるまたはバラバラになる高いリスクを有する個人用および携帯型の電子デバイスにおいて、特に重要である。本発明の硬化組成物は、望ましくは、いったん硬化したら衝撃に対して接着性および一体性を維持するのに十分に強固である。いくつかの実施形態において、導電性組成物は、基材が作られる個別の材料に応じて、ラップせん断強度約500〜約2,500psiを有する。例えば、鋼の基材が使用される場合、ラップせん断強度は、望ましくは、約1,000〜約2,000psiである。陽極酸化アルミニウムを含むアルミニウム基材について、ラップせん断強度は、約1,500〜約2,200psiになり得る。ステンレス鋼の基材について、ラップせん断強度は、約1,500〜約2,200psiになり得る。ポリマーの基材について、ラップせん断強度は、約500〜約1,000psiになり得る。所望のラップせん断強度に加えて、硬化組成物は、いったん硬化したら、65℃/相対湿度(RH)95%の条件に耐えることが可能であるべきである。
【0044】
理解し得るように、硬化組成物の強度は、導電性成分の添加レベルに関連し得る。より多くの導電性成分が組成物中に存在する場合、組成物の接着強度は損なわれ、望ましくないことに、低下する可能性がある。したがって、最適には、硬化した接着剤が所望の強度レベルを実現するように、接着剤組成物中に存在する導電性成分の量が選択されよう。望ましくは、導電性成分は、接着剤組成物の約10〜約20重量%の量で存在してもよい。
【0045】
しかし、硬化組成物の所望の導電率を実現する量で、導電性成分を含むことが重要である。望ましくは、硬化組成物のラップせん断強度および導電率は均衡して、適切な製品をもたらす。望ましくは、硬化組成物は、抵抗によって測定される導電率を有し、抵抗は、約8,600〜約425,000オームであり、算出された抵抗は、約10〜約225オームcmである。導電率の測定は、任意の所望の手段によって達成されてよく、一つの実施形態において、測定値は、その内容が本明細書に参照により組み込まれる、ミル規格(Military Specification)MIL−A−87172(1985年、6月3日)にしたがって、算出される。
【0046】
2つの実質的に同様の大きさの基材の間に、接着剤一滴(Bead)を置くことによって、接着剤の導電率を測定することが望ましいこともある。基材は、既知の幅、例えば、幅およそ3インチを有する。接着剤を硬化させ、電気抵抗を、接着された基材の幅に沿って測定してよい。硬化した接着剤の熱伝導率は、ASTM C117またはASTM C518にしたがって、約121℃+/−5℃の温度で、ワット/メートル−ケルビンで測定し得る。
【0047】
体積抵抗率を、以下の通り測定し得る。約100ミル離れて平行にある2本のけがき線を有する、1インチ×3インチのスライドガラスを準備し、スライドガラスを固定できる治具によって、所定位置に固定する。次に、透明なテープを、2本のけがき線のそれぞれに貼り付け、接着剤の一滴を、2細片のテープの間に置き得る。次に、接着剤を、テープ細片の間に広げることにより、塗布した接着剤細片の長さを少なくとも2.5インチにし得る。次に、テープを、取り除き得る。所望であれば、1細片の銅箔またはテフロン(登録商標)膜を、接着剤細片の上に置き、同一寸法の第2のスライドガラスを、箔の上に置き得る。この実施形態において、この組立品に力を加えて、硬化の間、接着剤を圧縮する。次に、接着剤を硬化する。第2のスライドガラスおよび箔/フィルムを、接着剤の上に置いた場合、スライドガラスおよび箔/フィルムを、取り除く。次に、得られた硬化した接着剤の付いたスライドガラスを、体積抵抗について測定する。
【0048】
抵抗測定は、4個のバネ式接点の付いた、アクリル材料から作られた4点プローブ試験装置と連結して、ミリオームメータを使用して行われてよい。接点の2個は電流接点であり、約2インチ離した間隔で配置され、2個は電圧接点であり、電流接点の間に約0.5インチの間隔で配置される。測定された抵抗は、オームでよく、抵抗率は、以下の式
P=(R×(W×T))/L
によって測定されてよく、
式中、Pは、オーム‐mで測定される抵抗率であり、Rは、測定された抵抗(オーム)であり、Wは、幅(m)であり、Tは、塗布される接着剤の厚さ(m)であり、およびLは、内側の1対のプローブの間の長さ(m)である。
【0049】
本発明は、電子システムにおける接着に適切な二液型硬化性組成物を使用する方法を、さらに提供する。本方法は、導電性の、非腐食性硬化性組成物を、電子デバイスの1つまたは複数の部品に塗布し、しっかりした接着および取り付けを提供することを含む。所望であれば、組成物は、ハロゲンフリー組成物でもよい。かかる使用方法において、上記に述べられた硬化性組成物の第1の部分を、使用者に提供する。別々に、上記に述べられた硬化性組成物の第2の部分を、使用者に提供する。次に、使用者は、第1の部分と第2の部分とを一緒に混合して、硬化性組成物を形成してよい。いったん硬化性組成物が調製されると、次に、使用者は、硬化性組成物の所望の量を、1つまたは複数の所望の基材に塗布してよい。一つの実施形態において、基材は、ラップトップ型またはノートブック型コンピューター、LCD画面mp3デバイス、携帯電話もしくはセル方式電話、またはPDAなどの携帯型電子デバイスを含む、電子デバイスのケースでもよい。次に、使用者は、室温または高温のいずれかで、硬化性組成物を硬化させてよく、それによって、電子デバイスの所望の部品のしっかりした、非腐食性の接着を実現する。
【0050】
二液型硬化性組成物を調製する方法もまた、本明細書に提供される。かかる方法において、第1の部分は、上に記載された通り、第1の部分の所望の成分を一緒に混合することによって、最初に調製される。次に、この第1の部分は、第1の容器またはディスペンサー中に貯蔵されてよい。第2の部分もまた、上記に述べられた通り、第2の部分の所望の成分を一緒に混合することによって調製される。次に、この第2の部分は、第2の容器またはディスペンサー中に貯蔵されてよい。望ましくは、第1および第2の容器またはディスペンサーは、組成物の第1の部分および第2の部分が、互いから物理的に分離して保たれるように保管される。使用者が硬化性組成物を調製する準備ができているとき、第1および第2の組成物が便宜上互いの近くに保管され得るよう、第1および第2の容器は、それ自体、キットの中に保管されてよい。一つの実施形態において、第1および第2の容器またはディスペンサーは、供給装置の一種である、別々のカートリッジでもよい。かかる実施形態はまた、組成物のそれぞれの部分の適切な量を受け取り、それらを混合するように設計されたスタティックミキサーなど、混合要素も含んでもよい。次に、混合された組成物を、供給してよい。
【実施例1】
【0051】
二液型、ハロゲンフリー硬化性組成物
二液型硬化性組成物は、下記の表1に述べられた組成物にしたがって、調製される。
【0052】
【表1】
【0053】
部分Aおよび部分Bの組成物を、部分B約1部に対し部分A約2部の量で一緒に組み合わせて、硬化性組成物を形成する。硬化性組成物は、室温で、約8時間〜約24時間、より望ましくは約8時間〜約12時間で硬化できるか、または代替方法として、約115℃〜約150℃の高温で、約30分〜約60分で硬化できる。
【実施例2】
【0054】
二液型導電性組成物
4個の二液型導電性組成物(第1の部分の5重量%、10重量%、15重量%、および20重量%の量で、それぞれ導電性成分を有する)および1個の対照二液型組成物が調製された。5個の組成物は、第1の部分として、以下の配合を有する。
【0055】
【表2】
【0056】
上記の組成物のそれぞれのための第2の部分は、以下を含む。
【0057】
【表3】
【0058】
2つの部分を、組み合わせ、4つの基材、すなわち鋼、陽極酸化アルミニウム、ステンレス鋼、およびSolvay Advanced Polymersによって商品名IXEFとして販売されているポリアリールアミドプラスチック基材に塗布した。ラップせん断強度(硬化後24時間、室温で測定される)、硬化速度および温度、ならびにもたらされた導電率を測定した。結果は、以下の通りである。
【0059】
【表4】
【0060】
上記の表に見ることができる通り、対照接着剤は、抵抗を測定できなかった。試料1の組成物は、第1の部分中に、導電性成分を5%しか含まず、著しく高すぎる(すなわち、導電率は、著しく低すぎる)測定された抵抗がもたらされた。組成物2〜4は、所望の範囲内の抵抗を実現して硬化した接着剤の十分な導電率を証明し、特定の基材に対して所望の範囲内のラップせん断強度を実現した。組成物2〜4についてのラップせん断強度は、組成物が塗布された基材にとって十分に高かった。
【0061】
したがって、上記の実験から、薄片様の形状、表面積23.7m
2/g、および粒径約44ミクロンを有する、合成グラファイト10%〜20%を含むことによって、十分な接着を実現するが、一方でまた十分な導電率も実現すると、結論付けることができる。とりわけ、最も成功した試料は、試料3であり、低い抵抗および高い接着の最良な比率を有し、第1の液の約15重量%の添加レベルで合成グラファイトを含んでいた。上記に説明した通り、例えば、より大きいまたはより小さい表面積を含むグラファイトなどの、グラファイト成分は、異なる添加量でより良好な結果をもたらし得る。
【0062】
組成物における表面積と全含有量との組合せは、構造特性または機械特性を失うことなく、所望のレベルの導電率を実現するように調整できる。この均衡は、少量の接着剤組成物が塗布に必要とされる場合、特に重要である。例えば、セル方式電話およびPDAなどの電子デバイスにおいて、接着剤は、デバイスが使用者によって落とされる場合などの強い衝撃力に耐えることができなければならない。同時に、接着剤は、良好な受信および送信を確保するよう高い導電率を有するべきである。本発明は、比較的少ない量の導電性成分で、強度および衝撃抵抗などの構造特性を損なうことなく、必要な導電率(または反対に、必要な低い抵抗)を達成させる。さらに、室温で急速に硬化する性能は、電気構成部品の破損を回避し、組み立て効率および経費節約を最大化するために、重要な特性である。