【実施例】
【0106】
《実施例1》
〈有機半導体前駆体の調製〉
特許文献1に示される手法により、有機半導体化合物としての[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(以下「DNTT」として言及する)(下記構造式、分子量340.46)を合成した:
【0107】
【化12】
【0108】
得られたDNTTに、特許文献4の実施例1−10でのようにして、N−フェニルマレイミド(PMI、下記構造式、分子量173.16)を付加して、有機半導体前駆体としてのDNTT前駆体を得た。
【0109】
【化13】
【0110】
得られたDNTT前駆体は、下記式を有していた:
【0111】
【化14】
【0112】
〈有機半導体溶液の調製〉
DNTT前駆体及びポリスチレン(Ardrich Chemical社、質量平均分子量280,000(GPC))を、DNTT前駆体とポリスチレンとの質量比が7:3(DNTT前駆体:ポリスチレン)になるようにして、すなわちポリマー及び有機半導体前駆体の合計に対するポリマーの割合が30質量%になるようにして、クロロホルム溶液に溶解させて、有機半導体溶液を調製した。ここで、有機半導体溶液におけるDNTT前駆体の濃度は、0.2質量%であった。
【0113】
〈有機半導体膜の形成〉
基材としては、300nmのSiO
2酸化膜を有するnドープシリコンウェハー(面抵抗0.005Ω・cm)を用いた。この基材のSiO
2酸化膜上に、ドロップキャストにて有機半導体溶液を適用して、ポリスチレン及びDNTT前駆体を含有する未焼成膜を形成した。
【0114】
〈有機半導体膜の評価−厚さ均一性〉
形成した未焼成膜を上面から観察した写真を
図1に示す。この膜は、厚さが300nmであり、均一な面内厚さ(最大高低差20nm以下)を有していた。
【0115】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
この未焼成膜を、250℃に加熱したホットプレート上において、大気下で1分にわたって加熱して、DNTT前駆体からPMIを脱離させてDNTTに転化させ、その後で放冷して、有機半導体膜を形成した。得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真を、
図2に示す。この
図2からは、有機半導体膜が粒径100μm超の大きな結晶粒子を有することが確認された。
【0116】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
この有機半導体膜の1.4cm×1.4cmの領域に対して、チャネル長50μm及びチャネル幅1.5mmのソース/ドレイン金電極を蒸着法により形成して、16個のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0117】
得られた16個のトランジスタはいずれも、0.1cm
2/Vs以上の良好な移動度、及び10
5以上の良好なオン−オフ電流比を示した。
【0118】
《比較例1》
比較例1では、有機半導体溶液にポリスチレンを添加しない以外は実施例1と同様にして、有機半導体膜を形成及び評価した。
【0119】
これによれば、ドロップキャストにより得られた膜は、同心円状に拡がっている波状の凹凸を有していた。この膜の厚さの最大高低差は、100nm超であった。
【0120】
また、実施例1と同様の方法にて、半導体特性の評価を行ったが、16個の素子のうち半数が0.1cm
2/Vsを下回る移動度を示した。
【0121】
《実施例2》
〈有機半導体溶液の調製〉
ポリマー及びDNTT前駆体の合計に対するポリマーの割合を33質量%にしたことを除いて実施例1と同様にして、有機半導体溶液を調製した。すなわち、ポリマー及びDNTT前駆体の合計に対するポリマーの割合は33質量%であり、溶媒としてはクロロホルムを使用し、かつ有機半導体溶液におけるDNTT前駆体の濃度は0.2質量%であった。
【0122】
〈未焼成膜の形成〉
基材としては、300nmのSiO
2酸化膜を有するnドープシリコンウェハー(面抵抗0.005Ω・cm)を用い、このシリコンウェハーの表面を、オクタデシルトリクロロシラン(OTS、信越シリコーン、LS−6495)により化学的に疎水化処理(OTS処理)した。疎水化処理後の基材の水接触角は108度であった。基材のOTS処理したSiO
2酸化膜上に、ドロップキャストにて有機半導体溶液を適用して、ポリスチレン及びDNTT前駆体を含有する未焼成膜を形成した。
【0123】
〈未焼成膜の評価−厚さ均一性〉
形成した未焼成膜を上面から観察した写真を
図3に示す。この膜は、厚さが300nmであり、均一な面内厚さ(最大高低差20nm以下)を有していた。
【0124】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
この未焼成膜を、200℃に加熱したホットプレート上において、大気下で10分にわたって加熱して、DNTT前駆体からPMIを脱離させてDNTTに転化させ、その後で放冷して、有機半導体膜を形成した。得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真を、
図4に示す。この
図4からは、有機半導体膜が粒径10μm超の大きな結晶粒子を有することが確認された。
【0125】
〈有機半導体膜の評価−SEM、TEM、及びEELS観察〉
また、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ S−5200)、及びX線回折(XRD、Rigaku R−AXIS RAPID−S)を用いて、有機半導体膜を解析した。
【0126】
断面SEM観察の結果を
図5に示す。この図からは、ポリマー及びDNTT前駆体を含有する有機半導体溶液から形成した有機半導体膜では、基材51上に、下側層52及び上側層53を有する二層構造が得られていることが理解される。
【0127】
また、下側層52及び上側層53のEELS(電子エネルギー損失分光法)観察によれば、それぞれの層の構成元素は下記の表1に記載のとおりであった。なお、表1において、括弧内の値は、炭素(C)及び硫黄(S)の原子数の合計を100原子%としたときの値である。
【0128】
【表1】
【0129】
有機半導体化合物として用いたDNTT([1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン)の原子組成がC
22H
12S
2であるので、完全にDNTTのみからなる層の原子組成は、炭素(C)及び硫黄(S)の原子数の合計を100原子%とすると、理論上、炭素(C)が91.7原子%であり、かつ硫黄(S)が8.3原子%である。
【0130】
これに対して、ポリマーとして用いたポリスチレンは、炭素(C)及び水素(H)のみからなるので、完全にポリスチレンのみからなる層の原子組成は、上記の元素分析では、理論上、炭素(C)が100原子%となる。
【0131】
この考えに基づけば、下側層及び上側相に存在する硫黄原子は全てDNTTに由来するものであることが理解される。よって、表1からは、この実施例で得られた有機半導体膜では、
図8に示す概念図のように、基材81上に主としてDNTTからなる下側層82が積層されており、その上に主としてポリマーからなる上側層83が積層されていることが理解される。より具体的には、表1からは、この実施例で得られた有機半導体膜では、下側層82におけるDNTTの含有率が、上側層83の中央部分におけるDNTTの含有率の2倍超(8.1原子%/3.6原子%=2.25)であることが理解される。
【0132】
〈有機半導体膜の評価−XRD観察〉
面外について行ったXRD観察の結果を
図6に示し、また面内について行ったXRD観察の結果を
図7に示す。
図6及び7から、得られた有機半導体膜が、面外及び面内の両方向に対して、明瞭な回折ピークを有すること、すなわち高い結晶性を有することが理解される。具体的には、有機半導体膜が面内のXRD観察結果(
図7)において、回折ピークを有していること、特に2θ=18°付近、23°付近、及び27°付近に回折ピークを有していることから、有機半導体膜が多結晶であることが理解される。また、有機半導体膜が面外のXRD観察結果(
図6)において、2θ=5.5°付近に回折ピークを有すること、すなわちDNTT分子の長手方向長さに相当する約15.5Åの面間隔に対応する位置に回折ピークを有することから、DNTTが基材に対して立って(エッジオンの状態で)配列していることが理解される。
【0133】
したがって、面外及び面内について行ったXRD観察の結果からは、この実施例で得られた有機半導体膜では、
図8に示す概念図のように、基材81上にDNTTからなる下側層82が積層されており、その上にポリマーからなる上側層83が積層されていることが理解される。
【0134】
なお、この面外及び面内におけるピークは、蒸着法により形成されたDNTT薄膜のXRD結果として下記の文献に示されるピークと一致しており、このことから、この実施例では、蒸着法で得られたDNTT薄膜と同等の質の薄膜が形成されていることが理解される:
(文献)T. Yamamoto, and K. Takimiya, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 2224−2225
(文献)T. Someya et. al., Nature Comm., 3, 723
【0135】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
この有機半導体膜の1.4cm×1.4cmの領域に対して、チャネル長200μm及びチャネル幅1.0mmのソース/ドレイン金電極を蒸着法により形成して、10個のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0136】
実施例2で得られたトランジスタの特性を、実施例3〜6及び比較例2で得られたトランジスタの特性と併せて、下記の表2及び
図9に示している。
【0137】
また、このトランジスタの伝達特性を、
図10に示している。ここで、
図10では、ドレイン電圧(V
D)が−100Vのときの、ドレイン電流(I
D(A)又はI
D1/2(A
1/2))(縦軸)とゲート電圧(V
G(V))(横軸)との関係を示している。
【0138】
《実施例3〜6、及び比較例2》
〈トランジスタの形成〉
有機半導体溶液におけるポリマーの割合を33質量%から、5質量%(実施例7)、10質量%(実施例8)、20質量%(実施例9)、25質量%(実施例3)、40質量%(実施例4)、50質量%(実施例5)、及び67質量(実施例6)%に変更したこと以外は実施例2と同様にして、実施例3〜9のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。また、有機半導体溶液においてポリマーを用いなかったこと、すなわち有機半導体溶液におけるポリマーの割合を33質量%から0質量%に変更したこと以外は実施例2と同様にして、比較例2のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0139】
なお、有機半導体溶液がポリマーを含有していない比較例2では、
図11に示すように、有機半導体溶液が疎水化処理シリコンウェハーのエッジ部に集まり、DNTT前駆体からなる未焼成膜をシリコンウェハー上に形成できなかったので、トランジスタを形成できなかった。
【0140】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
実施例3〜9及び比較例2で得られたトランジスタの特性を、実施例2で得られたトランジスタの特性と併せて、下記の表2及び
図9に示している。なお、ポリマーの割合に関して括弧内に記載されている値は、DNTT(分子量
340.46)にN−フェニルマレイミド(分子量
173.16)が付加して得られたDNTT前駆体(分子量513.62)から全てのN−フェニルマレイミドが脱離してDNTTに戻った場合の、ポリマー及び有機半導体の合計に対するポリマーの質量分率である。
【0141】
【表2】
【0142】
この表2及び
図9からは、ポリマー及び有機半導体前駆体の合計に対するポリマーの割合が20質量%〜40質量%の間のときに、すなわちポリマー及び有機半導体の合計に対するポリマーの割合が
27.4質量%〜50.1質量%の間のときに、特に優れた特性を有する有機半導体膜が得られていることが理解される。
【0143】
《実施例7》
〈有機半導体膜の形成〉
ポリスチレンの代わりにメタクリル酸メチル樹脂(PMMA、Polymer Science、Mw=100k)を使用したこと以外は実施例2と同様にして、有機半導体膜を形成した。
【0144】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真を、
図12に示す。この
図12からは、有機半導体膜が粒径10μm超の大きな結晶粒子を基板全面に有することが確認された。
【0145】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
この有機半導体膜の1.4cm×1.4cmの領域に対して、チャネル長200μm及びチャネル幅1.0mmのソース/ドレイン金電極を蒸着法により形成して、10個のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0146】
得られた10個のトランジスタは、0.5cm
2/Vs超の均一で高い移動度(最大移動度0.70cm
2/Vs、平均移動度0.66cm
2/Vs)、及び10
6〜10
7の良好なオン−オフ電流比を示した。
【0147】
また、このトランジスタの伝達特性を、
図13に示している。ここで、
図13では、ドレイン電圧(V
D)が−50Vのときの、ドレイン電流(I
D(A)又はI
D1/2(A
1/2))(縦軸)とゲート電圧(V
G(V))(横軸)との関係を示している。
【0148】
《実施例8》
〈有機半導体膜の形成〉
ポリスチレンの代わりにポリカーボネート樹脂(PC、TEIJIN Chemicals、Mw=25k)を使用したこと以外は実施例2と同様にして、有機半導体膜を形成した。
【0149】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真を、
図14に示す。この
図14からは、有機半導体膜が粒径10μm超の大きな結晶粒子を基板全面に有することが確認された。
【0150】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
この有機半導体膜の1.4cm×1.4cmの領域に対して、チャネル長200μm及びチャネル幅1.0mmのソース/ドレイン金電極を蒸着法により形成して、10個のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0151】
得られた10個のトランジスタは、0.5cm
2/Vs超の均一で高い移動度(最大移動度0.83cm
2/Vs、平均移動度0.91cm
2/Vs)、及び10
6〜10
7の良好なオン−オフ電流比を示した。
【0152】
また、このトランジスタの伝達特性を、
図15に示している。ここで、
図15では、ドレイン電圧(V
D)が−50Vのときの、ドレイン電流(I
D(A)又はI
D1/2(A
1/2))(縦軸)とゲート電圧(V
G(V))(横軸)との関係を示している。
【0153】
《実施例9〜13》
〈有機半導体膜の形成〉
ポリスチレンの代わりに下記の表3に示すポリマーを使用したこと以外は実施例2と同様にして、実施例9〜13の有機半導体膜を形成した。
【0154】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真、及びこの有機半導体膜を用いて実施例8でのようにして得たトランジスタの伝達特性を
図19〜28に示している。具体的には、用いたポリマーと図との関係は、下記の表3に記載のとおりである。
【0155】
【表3】
【0156】
実施例9〜13の有機半導体膜の偏光顕微鏡写真からは、有機半導体膜が結晶粒子を基板全面に有することが確認された。また、実施例9〜13の有機半導体膜を用いて得たトランジスタの伝達特性からは、これらの有機半導体膜が、半導体膜として機能していることが確認された。
【0157】
《参考例》
以下の参考例は、E
1〜E
4が置換された上記式(I)の有機半導体化合物の合成方法について説明するためのものである。なお、このような有機半導体化合物については、特許文献7の記載を参照することができる。
【0158】
以下の参考例において、目的化合物の構造は、必要に応じて、1H核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)、質量分析スペクトル(MS)、単結晶構造解析、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。
【0159】
使用した機器は以下のとおりである。
1H−NMR: JEOL ECA−500 (500MHz)
MS: Bruker AutoflexIII (MALDI)
単結晶構造解析: Rigaku RAXIS RAPIDS
GPC: 日本分析工業株式会社 LC−9101(カラム:JAIGEL−2H、JAIGEL−1H)
【0160】
《参考例1》
特許文献1に示される手法により、ジナフトチエノチオフェン(DNTT(Dinaphthothienothiophene))(下記構造式、MW=340.46)を合成した。
【0161】
【化15】
【0162】
上記のDNTT1000mg(2.93mmol)を含有するメシチレン(すなわち1,3,5トリメチルベンゼン)100mLに、臭素(Br
2、MW=159.8)2341mg(14.65mmol)を加え、反応温度を40℃に4時間保ち、その後、放冷して、臭素2置換ジナフトチエノチオフェン(Br2置換DNTT)(下記構造式、Mw=498.25、1431mg、2.87mmol、収率98.1%)を得た。尚、反応物は、クロロホルムにより精製した。
【0163】
【化16】
【0164】
なお、Br2置換DNTTにおける臭素の置換位置は、参考例2におけるTIPS2置換DNTTの単結晶構造解析によるトリイソプロピルシリル(TIPS)基の位置により判定した。
【0165】
得られたBr2置換DNTTについての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0166】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.47(d,J=8.3Hz,2H),8.44(s,2H),7.97(d,J=8.3Hz,2H),7.66(t,J=8.3Hz,2H),7.59(t,J=8.3Hz,2H)
【0167】
MS(m/z): 497.513(ポジティブイオン観測)(ExactMass:495.86)
【0168】
《参考例1A》
参考例1Aでのように合成したDNTT100.7mg(0.296mmol)と塩化アルミニウム17.7mg(0.133mmol)をフラスコに添加し、3回窒素置換を行った。次にクロロホルム5.0mlを添加し、0℃に冷却した。N−クロロスクシンイミド78.7mg(0.589mmol)を添加し、1.5時間撹拌した。
【0169】
質量分析スペクトル(MS)にて原料であるN−クロロスクシンイミドが消失したのを確認した後、水を5.0ml添加して反応を終了した。反応生成物をろ過して、塩素2置換ジナフトチエノチオフェン(Cl2置換DNTT)(下記構造式、Mw=409.35、116.0mg、0.28mmol、収率95.8%)を得た。尚、反応物はクロロホルムにより精製した。
【0170】
【化17】
【0171】
得られたCl2置換DNTTについてMS結果を下記に示す。
【0172】
MS(m/z): 407.822(ポジティブイオン観測)(ExactMass:407.96)
【0173】
《参考例2》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、トリイソプロピルシリル(TIPS)基の導入を行った。
【0174】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)500mg(1.0mmol)に対して、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)191.3mg、CuI(Mw=190.45)134.1mg、ジイソプロピルアミン(Mw=101.20)0.706mL、CsCO
3(Mw=325.82)791.6mg、トリイソプロピルシリルアセチレン(Mw=182.38)1.698mLを加え、減圧脱気と窒素置換を3回行った後、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−DMF)35mLを導入し、減圧脱気と窒素置換を再度3回行い、120℃で20時間にわったって攪拌して反応を行わせた。
【0175】
これにより、トリイソプロピルシリルアセチレン2置換ジナフトチエノチオフェン(TIPS2置換DNTT、下記構造式)(Mw=701.19)479.1mg(68.3mmol、収率68.0%)を得た。得られたTIPS2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.2wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0176】
【化18】
【0177】
得られたTIPS2置換DNTTについての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0178】
1H−NMR(500MHz,CDCl
3): δ8.61(d,J=8.0Hz,2H),8.41(s,2H),7.97(d,J=8.0Hz,2H),7.63(dd,J=8.0Hz,8.0Hz2H),7.57(dd,J=8.0Hz,8.0Hz,2H),1.40〜1.47(m,6H),1.34(d,J=6.9Hz,36H)
【0179】
MS(m/z): 700.3(ExactMass:700.30)
【0180】
得られたTIPS2置換DNTTについての単結晶構造解析結果を下記に示す。
【0181】
a=8.2044(5)Å
b=8.4591(6)Å
c=14.488(1)Å
α=88.475(4)°
β=89.336(3)°
γ=89.555(4)°
V=1005.1(1)Å
3【0182】
また、このTIPS2置換DNTT体についての単結晶構造解析に基づく分子構造ORTEP(Oak Ridge Thermal Ellipsoid Plot)図及び結晶パッキング(ステレオ)図を、それぞれ
図3及び4に示す。
【0183】
《参考例2A》
参考例2により合成したトリイソプロピルシリルアセチレン2置換DNTT(TIPS2置換DNTT)を、水素還元して、トリイソプロピルシリルエタン2置換DNTTを合成した。
【0184】
具体的には、200mlフラスコにトリイソプロピルシリルアセチレン2置換DNTT(Mw=701.18)304.6mg(0.43mmol)、トルエン60ml、10%Pd/C79.2mgを添加して、水素置換を3回行った。水素雰囲気下で、60℃で15時間攪拌して反応を行わせた。
【0185】
これにより、トリイソプロピルシリルエタン2置換DNTT(下記構造式、Mw=709.37、296.1mg、0.42mmol、収率96.1%)を得た。得られたトリイソプロピルシリルエタン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.51wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0186】
【化19】
【0187】
得られたトリイソプロピルシリルエタン2置換DNTTについての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0188】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.33(s,2H),7.26(d,J=8.6Hz,2H),7.97(d,J=8.6Hz,2H),7.57(dd,J=8.6Hz,8.6Hz,2H),7.53(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),3.76−3.72(m,8H),1.39−1.32(m,6H),1.30−1.19(m,36H)
【0189】
MS(m/z): 708.322(ポジティブイオン観測)(ExactMass:708.367)
【0190】
《参考例3》
参考例2で得られたTIPS2置換DNTT(Mw=701.19)を、0.2wt%の濃度でクロロホルムに溶解させ、半導体素子作製用溶液を調整した。
【0191】
次に、300nmのSiO
2酸化膜付nドープシリコンウェハー(面抵抗1
−10Ω・cm)に対して、UV−オゾン処理20分(アイUV−オゾン洗浄装置OC−250615−D+A、アイグラフィックス株式会社)を行った。また、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン((HMDS)1,1,1,3,3,3−hexamethyldisilazane)10mmol/トルエン溶液を調整して、この溶液中に、UVオゾン処理を行ったシリコン基板を24時間にわたって浸漬させて、シリコン基板の疎水化処理を行った。その後、真空蒸着法(サンユー電子、抵抗加熱方式蒸着装置:SVC−700TM/700−2)によって、チャネル幅50μm及びチャネル長1.5mmのソース/ドレイン金電極を作製した。
【0192】
シリコン基板を40℃に加熱しながら、チャネル部分に、半導体素子作成用溶液を滴下して溶媒を揮発させ、TIPS2置換DNTTからなる薄層を形成した。このようにして作製した素子を、真空下において70℃で1時間にわたって加熱処理することにより、クロロホルム溶媒を乾燥除去して、有機半導体素子を作製した。
【0193】
得られた有機半導体素子の有機半導体特性の測定を行ったところ、p型半導体を示した。また、この有機半導体素子は、キャリア移動度が1×10
−3cm
2/Vsであり、オン/オフ比が10
5であり、かつ閾値電圧が−26Vであった。この有機半導体素子についてのFET特性の伝達特性を、
図5に示す。ここで、
図5では、ドレイン電圧(V
D)が−80Vのときの、ドレイン電流(I
D(A)又はI
D1/2(A
1/2))(縦軸)とゲート電圧(V
G(V))(横軸)との関係を示している。
【0194】
《参考例4》
参考例1と同様にして、ジナフトチエノチオフェン(DNTT(Dinaphthothienothiophene))(MW=340.46)を合成した。
【0195】
上記のDNTT5000mg(14.65mmol)を含有するメシチレン(すなわち1,3,5トリメチルベンゼン)500mLに、N−フェニルマレイミド(MW=173.17)12.68g(73.25mmol)を加え、反応温度を160℃に4時間保ち、その後、放冷し、分取精製して、DNTTにN−フェニルマレイミドが1つ付加したジナフトチエノチオフェン−N−フェニルマレイミド1付加体(DNTT−PMI1付加体、立体異性体であるEndo体及びExo体の混合物)(下記構造式、Mw=513.63)、376mg(0.73mmol、収率4.9%)を得た。尚、反応物は、HPLCにより立体異性体を分取し、Endo体132mg、及びExo体151mgを得た。
【0196】
【化20】
【0197】
【化21】
【0198】
上記のDNTT−PMI1付加体(Exo体)151mg(0.29mmol)を含有するメシチレン50mLに、臭素(Br
2、MW=159.8)235mg(1.47mmol)を加え、反応温度を40℃に1間保ち、その後、放冷して、臭素2置換ジナフトチエノチオフェン−N−フェニルマレイミド1付加体(Br2置換DNTT−PMI1付加体)(下記構造式、Mw=673.44)186mg(0.276mmol、収率95.2%)を得た。
【0199】
【化22】
【0200】
得られたBr2置換DNTT−1PMI付加体についての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0201】
1H−NMR(500MHz,CDCl
3): δ8.39(d,J=7.7Hz,1H),8.29(d,J=7.7Hz,1H),7.67(dd,J=7.7Hz,1H),7.64(dd,J=7.7Hz,1H),7.41〜7.44(m,2H),7.31〜7.32(m,3H),7.27〜7.29(m,2H),6.52〜6.54(m,2H),5.25(d,J=3.2Hz,1H),5.23(d,J=3.2Hz,1H),3.59(dd,J=3.2Hz,8.3Hz,1H),3.55(dd,J=3.2Hz,8.3Hz,1H)
【0202】
MS(m/z): 497.513(ExactMass:670.92)
【0203】
なお、MSでは、Br2置換DNTT−PMI1付加体からN−フェニルマレイミドが脱離したBr2置換DNTT(ExactMass:497.86)が観測されたことが推定される。
【0204】
《参考例5》
参考例4により合成したBr2置換DNTT−PMI1付加体に対して、薗頭カップリング法により、トリイソプロピルシリル(TIPS)基の導入を行った。
【0205】
具体的には、Br2置換DNTT−PMI1付加体(Mw=673.44)100mg(0.148mmol)に対して、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)28.1mg、CuI(Mw=190.45)20.0mg、ジイソプロピルアミン(Mw=101.20)0.11mL、トリイソプロピルシリルアセチレン(Mw=182.38)0.1mLを加え、減圧脱気と窒素置換を3回行った後、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−DMF)7mLを導入し、減圧脱気と窒素置換を再度3回行い、120℃で20時間にわったって攪拌して反応を行わせた。
【0206】
これにより、トリイソプロピルシリルアセチレン2置換ジナフトチエノチオフェン−フェニルマレイミド1付加体(exo体)(TIPS2置換DNTT−PMI1付加体(exo体))(下記構造式、Mw=876.37)74.9mg(85.4mmol、収率57.7%)を得た。
【0207】
【化23】
【0208】
得られたTIPS2置換DNTT−PMI1付加体(exo体)についての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0209】
1H−NMR(500MHz,CDCl
3): δ8.52〜8.54(m,1H),8.43〜8.45(m,1H),7.60〜7.64(m,2H),7.43〜7.46(m,2H),7.31〜7.33(m,3H),7.25〜7.29(m,2H),6.52〜6.54(m,2H),5.29(d,J=3.4Hz,1H),5.21(d,J=3.4Hz,1H),3.62(dd,J=3.4Hz,8.3Hz,1H),3.56(dd,J=3.4Hz,8.3Hz,1H),1.36〜1.43(m,6H),1.31(d,J=2.9Hz,12H),1.30(d,J=4.0Hz,24H)
【0210】
MS(m/z): 873.078(Exact Mass:875.37)
【0211】
《参考例6》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、1−デシンを反応させ、1−デシン2置換DNTTを合成した。
【0212】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1000mg(2.01mmol)に対して、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)761.1mg(1.08mmol)、CuI(Mw=190.45)577mg(3.03mmol)、Cs
2CO
3(Mw=325.8)3.20g(9.82mmol)を添加して減圧脱気と窒素置換を5回行った。
【0213】
その後、ジメチルホルムアミド70ml、ジイソプロピルアミン(Mw=101.2,d=0.72g/cm
3)1.41ml(10.0mmol)、1−デシン(Mw=138.25,d=0.77g/cm
3)2.78ml(15.4mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を再度5回行い、120℃で15.5時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0214】
これにより、1−デシン2置換DNTT(下記構造式、Mw=612.93、20.5mg、0.033mmol、収率1.6%)を得た。得られた1−デシン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、2.3wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0215】
【化24】
【0216】
得られた1−デシン2置換DNTTについての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0217】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.45(d,J=8.3Hz,2H),8.25(s,2H),7.86(d,J=8.3Hz,2H),7.54(dd,J=8.3Hz,6.9Hz,2H),7.48(dd,J=8.3Hz,6.9Hz,2H),2.81(t,J=7.2Hz,4H),1.90(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.65(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.31−1.48(m,16H),0.89(t,J=7.2Hz,6H)
【0218】
MS(m/z): 612.284(ポジティブイオン観測)(ExactMass:612.288)
【0219】
《参考例7》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、1−テトラデシンを反応させ、1−テトラデシン2置換DNTTを合成した。
【0220】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1000mg(2.01mmol)に対して、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)830.0mg(1.17mmol)、CuI(Mw=190.45)590.0mg(3.12mmol)、Cs
2CO
3(Mw=325.8)1.62g(4.98mmol)を加え、減圧脱気と窒素置換を5回行った。
【0221】
その後、ジメチルホルムアミド70ml、ジイソプロピルアミン(Mw=101.2,d=0.72g/cm
3)1.41ml(10.0mmol)、1−テトラデシン(Mw=194.36,d=0.79g/cm
3)4.19ml(17.0mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を再度5回行い、120℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0222】
これにより、1−テトラデシン2置換DNTT(下記構造式、Mw=612.93、156.04mg、0.207mmol、収率10.3%)を得た。得られた1−テトラデシン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、6.5wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0223】
【化25】
【0224】
得られた1−テトラデシン2置換DNTTについての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0225】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.38(d,J=8.3Hz,2H),8.14(s,2H),7.78(d,J=8.3Hz,2H),7.48(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),7.42(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),2.76(t,J=7.2Hz,4H),1.86(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.62(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.24−1.46(m,32H),0.86(t,J=7.2Hz,6H)
【0226】
MS(m/z): 724.411(ポジティブイオン観測)(ExactMass:724.414)
【0227】
《参考例7A》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、参考例7で用いた薗頭カップリング法の代わりに根岸カップリングを用いて、1−テトラデシンを反応させ、1−テトラデシン2置換DNTTを合成した。
【0228】
具体的には、10mlフラスコに、1−テトラデシン(Mw=194.36,d=0.79g/cm
3)0.21ml(0.85mmol)、トルエン3.5mlを添加して減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液を0.53ml(0.859mmol)添加した後、室温まで昇温した。
【0229】
ZnCl
2(TMEDA)(Mw=252.50)215.3mg(0.853mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)50mg(0.10mmol)、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)35.2mg(0.05mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0230】
これにより、1−テトラデシン2置換DNTT(上記構造式、Mw=612.93、8.9mg、0.012mmol、収率12.2%)を得た。
【0231】
《参考例8》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、1−オクタデシンを反応させ、1−オクタデシン2置換DNTTを合成した。
【0232】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1010mg(2.02mmol)に対して、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)820.0mg(1.17mmol)、CuI(Mw=190.45)590.0mg(3.12mmol)、Cs
2CO
3(Mw=325.8)1.58g(4.85mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を5回行った。
【0233】
その後、ジメチルホルムアミド70ml、ジイソプロピルアミン(Mw=101.2,d=0.72g/cm
3)1.41ml(10.0mmol)、1−オクタデシン(Mw=250.46,d=0.79g/cm
3)5.34ml(16.8mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を再度5回行い、120℃で14時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0234】
これにより、1−オクタデシン2置換DNTT(下記構造式、Mw=836.54、54.2mg、0.064mmol、収率3.2%)を得た。
【0235】
【化26】
【0236】
《参考例8A》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、参考例8で用いた薗頭カップリング法の代わりに根岸カップリングを用いて、1−オクタデシンを反応させ、1−オクタデシン2置換DNTTを合成した。
【0237】
具体的には、10mlフラスコに、1−オクタデシン(Mw=250.46,d=0.80g/cm
3)0.26ml(0.85mmol)、トルエン3.5mlを添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液を0.53ml(0.859mmol)添加した後、室温まで昇温した。
【0238】
ZnCl
2(TMEDA)(Mw=252.50)216.1mg(0.856mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)49.7mg(0.10mmol)、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)35.6mg(0.05mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0239】
これにより、1−オクタデシン2置換DNTT(上記構造式、Mw=836.54、3.8mg、0.004mmol、収率4.5%)を得た。得られた1−テトラデシン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、1.67wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0240】
得られた1−オクタデシン2置換DNTTについての
1H−NMRおよびMS結果を下記に示す。
【0241】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.48(d,J=8.3Hz,2H),8.30(s,2H),7.89(d,J=8.3Hz,2H),7.56(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),7.51(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),2.83(t,J=7.2Hz,4H),1.91(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,2H),1.66(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,2H),1.24−1.46(m,48H),0.87(t,J=7.2Hz,6H)
【0242】
MS(m/z): 836.539(ポジティブイオン観測)(ExactMass:836.537)
【0243】
《参考例9》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、根岸カップリング法により、トリメチルシリルアセチレン(TMS)を反応させ、TMS2置換DNTTを合成した。
【0244】
200mlフラスコに、トリメチルシリルアセチレン(Mw=98.22,d=0.70g/cm
3)1.68g(17.10mmol)、トルエン70ml添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液10.3ml(16.68mmol)を添加した後、室温まで昇温した。
【0245】
ZnCl
2(TMEDA)(Mw=252.50)4.31g(17.06mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1.0g(2.00mmol)、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)702.5mg(1.00mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0246】
これにより、トリメチルシリルアセチレン2置換DNTT(TMS2置換DNTT)(下記構造式、Mw=532.87、536.30mg、1.00mmol、収率50.1%)を得た。得られたトリメチルシリルアセチレン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.05wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0247】
【化27】
【0248】
得られたTMS2置換DNTTについての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0249】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.53(d,J=8.3Hz,2H),8.43(s,2H),7.96(d,J=8.3Hz,2H),7.63(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),7.57(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),0.52(s,18H)
【0250】
MS(m/z): 532.008(ポジティブイオン観測)(ExactMass:532.111)
【0251】
《参考例10》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、根岸カップリング法により、トリエチルシリルアセチレン(TES)を反応させ、TES2置換DNTTを合成した。
【0252】
200mlフラスコにトリエチルシリルアセチレン(Mw=140.30,d=0.78g/cm
3)2.25g(16.03mmol)、トルエン70mlを添加して減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液を10.3ml(16.68mmol)添加した後、室温まで昇温した。
【0253】
ZnCl
2(TMEDA)(Mw=252.50)4.31g(17.06mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1.0g(2.00mmol)、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)704.8mg(1.00mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0254】
これにより、トリエチルシリルアセチレン2置換DNTT(TES2置換DNTT)(下記構造式、Mw=617.03、321.40mg、0.52mmol、収率26.0%)を得た。得られたトリエチルシリルアセチレン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.10wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0255】
【化28】
【0256】
得られたTES2置換DNTTについての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0257】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.56(d,J=8.3Hz,2H),8.42(s,2H),7.96(d,J=8.3Hz,2H),7.63(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),7.57(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),1.25(t,J=8.0Hz,18H),0.94−0.98(m,12H)
【0258】
MS(m/z): 616.057(ポジティブイオン観測)(ExactMass:616.211)
【0259】
《参考例11》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、スティルカップリング法により、チオフェンを反応させ、チオフェン2置換DNTTを合成した。
【0260】
100mlのフラスコに、Br2置換DNTT(Mw=498.25)500mg(1.00mmol)、PdCl
2(PPh
3)
2(Mw=701.90)351.6mg(0.501mmol)、トリブチル(2−チエニル)スズ(Mw=373.18)3.23g(8.64mmol)、乾燥トルエン35mlを、添加した。窒素置換を3回行い、100℃で終夜攪拌した。
【0261】
MALDIからBr2置換DNTTのピークが消失したことを確認した後で、室温まで冷却した。クロロホルム及び水を添加し、沈殿物をろ過した。ろ液から溶媒を留去し、ろ液からのみMSにて目的物ピークが確認された。黒色オイル状物質にエーテルを10ml加え2回洗浄した。固体をろ過し、暗緑色固体を得た。その後、この暗緑色固体をカラムで精製して、黄色固体として生成物を得た。
【0262】
チオフェン2置換DNTT(下記構造式、Mw=504.71、158.80mg、0.31mmol、収率31.4%)を得た。得られたトリエチルシリルアセチレン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.13wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0263】
【化29】
【0264】
得られたチオフェン2置換DNTTについての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0265】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.31(s,2H),7.92(d,J=6.5,2H),7.87(d,J=7.0Hz,2H),7.76(dd,J=1.0Hz,1.0Hz,2H),7.52−7.49(m,2H),7.47−7.46(m,2H),7.43−7.41(m,2H),7.28−7.26(m,2H)
【0266】
MS(m/z): 503.838(ポジティブイオン観測)(ExactMass:504.013)
【0267】
《参考例12》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、根岸カップリング法により、1−ブロモデカンを反応させ、デカン2置換DNTTを合成した。
【0268】
具体的には、10mlフラスコに、マグネシウム548.2mg(22.5mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を3回行った。THF2.5ml、1−ブロモデカン(Mw=221.18,d=1.07g/cm
3)4.39ml(21.3mmol)を添加し、攪拌しながら60℃で1時間還流した。
【0269】
室温まで冷却後、トルエン100ml、ZnCl
2(TMEDA)(Mw=252.50)5.32g(21.31mmol)を添加し、10分攪拌した。Br2置換DNTT(Mw=498.25)1.25g(2.50mmol)、Pd(PPh
3)
2Cl
2(Mw=701.90)881.5mg(1.25mmol)、トルエン77.5mlを添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0270】
これにより、デカン2置換DNTT(下記構造式、Mw=620.99、44.3mg、0.089mmol、収率2.8%)を得た。得られたデカン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.05wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0271】
【化30】
【0272】
得られたデカン2置換DNTTについての
1H−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0273】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.33(s,2H),8.26(d,J=8.30Hz,2H),7.95(d,J=8.3Hz,2H),7.56(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),7.53(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),3.67−3.64(m,4H),1.93−1.86(m,4H),1.76−1.71(m,4H),1.49−1.45(m,4H),1.41−1.29(m,20H),0.88(t,J=6.8Hz,6H)
【0274】
MS(m/z): 620.083(ポジティブイオン観測)(ExactMass:620.288)