特許第5959647号(P5959647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959647
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】有機半導体溶液及び有機半導体膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/30 20060101AFI20160719BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20160719BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20160719BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20160719BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160719BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20160719BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20160719BHJP
   C07D 495/18 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 220A
   H01L29/28 310A
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 618A
   H01L31/04 154B
   C07D495/04 101
   !C07D495/18
【請求項の数】21
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2014-530569(P2014-530569)
(86)(22)【出願日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】JP2013071982
(87)【国際公開番号】WO2014027685
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-180177(P2012-180177)
(32)【優先日】2012年8月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-73463(P2013-73463)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 吉紀
(72)【発明者】
【氏名】河野 梓
【審査官】 竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/024804(WO,A1)
【文献】 特開2009−267372(JP,A)
【文献】 特表2005−505142(JP,A)
【文献】 特開2009−177136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/336、27/28、29/786、
51/00、51/05−51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒、並びに前記有機溶媒に溶解しているポリマー及び有機半導体前駆体を含有している、有機半導体溶液であって、
前記ポリマー及び前記有機半導体前駆体の合計に対する前記ポリマーの割合が、20質量%以上45質量%以下であり、かつ
前記有機半導体前駆体が、下記式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に求ジエン型アルケンがその二重結合を介して脱離可能に付加されてなる構造を有する、
有機半導体溶液:
【化1】
(A〜A及びE〜Eは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよ、かつ
Yは、硫黄又はセレンである)。
【請求項2】
前記求ジエン型アルケンが、下記の式(II−1a)及び(II−1b)のいずれかの化合物である、請求項1に記載の有機半導体溶液:
【化2】
(R、R、R及びRはそれぞれ独立に、結合、水素、ハロゲン、水酸基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択され、
及びRは、互いに結合して環を形成していてもよく、且つ
及びRは、互いに結合して環を形成していてもよい)。
【請求項3】
前記求ジエン型アルケンが、下記の式(II−1−1)〜(II−2−3)のいずれかを有する、請求項1又は2に記載の有機半導体溶液:
【化3】
(R及びRはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択される)。
【請求項4】
前記求ジエン型アルケンが、下記の式(II−1−3)を有する、請求項3に記載の有機半導体溶液:
【化4】
【請求項5】
前記有機半導体前駆体が下記の式(I−1−1)を有する、請求項4に記載の有機半導体溶液:
【化5】
(A〜A、並びにE及びEは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよく、かつ
はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択され、かつ
Yは、硫黄又はセレンである)。
【請求項6】
前記ポリマーと前記有機半導体前駆体の合計に対する前記ポリマーの割合が、20質量%以上40質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機半導体溶液。
【請求項7】
前記ポリマーの繰り返し単位が、共役二重結合及び/又は芳香族環を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機半導体溶液。
【請求項8】
前記ポリマーの繰り返し単位が、炭素、水素及びハロゲン以外の元素を含有していない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機半導体溶液。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、及びポリサルホンからなる群より選択される非晶性ポリマーである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機半導体溶液。
【請求項10】
前記非晶性ポリマーが、繰り返し単位内にベンゼン環部分を有するスチレン系ポリマーである、請求項9に記載の有機半導体溶液。
【請求項11】
前記非晶性ポリマーが、繰り返し単位内にベンゼン環部分及びカーボネート基を有するポリカーボネート系ポリマーである、請求項9に記載の有機半導体溶液。
【請求項12】
前記非晶性ポリマーが、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体で構成されるアクリル系ポリマーである、請求項9に記載の有機半導体溶液。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の前記有機半導体溶液を、基材に塗布して、未焼成膜を作製するステップ、そして
前記未焼成膜に光照射及び/又は加熱を行って、前記前駆体から前記求ジエン型アルケンを脱離及び除去して、前記ポリマー及び式(I)の有機半導体化合物で作られている有機半導体膜を得るステップ、
を含み、前記有機半導体膜が、互いに積層されている第1及び第2の層を有し、第1及び第2の層がいずれも、有機半導体化合物を含有し、第1の層における有機半導体化合物の質量分率が、第2の層における有機半導体化合物の質量分率よりも高い、有機半導体膜の生成方法。
【請求項14】
ポリマー及び有機半導体化合物で作られている有機半導体膜であって、
前記ポリマー及び前記有機半導体化合物の合計に対する前記ポリマーの割合が、15質量%以上60質量%以下であり、
前記有機半導体化合物が、下記式(I)を有し、かつ
下記の条件(ii)を満たす、
有機半導体膜:
【化6】
(A〜A及びE〜Eは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよく、かつ
Yは、硫黄又はセレンである);
(ii)有機半導体前駆体を更に含有しており、かつ前記有機半導体前駆体が、上記式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に求ジエン型アルケンがその二重結合を介して脱離可能に付加されてなる構造を有すること。
【請求項15】
下記の条件(i)を更に満たす、請求項14に記載の有機半導体膜:
(i)互いに積層されている第1及び第2の層を有し、前記第1及び第2の層がいずれも、前記有機半導体化合物を含有し、かつ前記第1の層における前記有機半導体化合物の質量分率が、前記第2の層における前記有機半導体化合物の質量分率よりも高いこと。
【請求項16】
下記の条件(iii)を更に満たす、請求項14に記載の有機半導体膜:
(iii)長軸径20μm超の前記有機半導体化合物の結晶を有していること。
【請求項17】
ポリマー及び有機半導体化合物、並びに随意の有機半導体前駆体の合計に対するポリマーの割合が、15質量%以上50質量%以下である、請求項14〜16のいずれか一項に記載の有機半導体膜。
【請求項18】
面内のXRD観察において、回折ピークを有し、かつ
面外のXRD観察において、2θ=5.5°付近に回折ピークを有する、
請求項14〜17のいずれか一項に記載の有機半導体膜。
【請求項19】
面内のXRD観察において、2θ=18°付近、23°付近、及び27°付近に回折ピークを有する、請求項18に記載の有機半導体膜。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか一項に記載の有機半導体膜を有する、有機半導体デバイス。
【請求項21】
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁膜、及び前記有機半導体膜を有する薄膜トランジスタであって、前記ゲート絶縁膜によって前記ソース電極及び前記ドレイン電極と前記ゲート電極とを絶縁し、且つ前記ゲート電極に印加される電圧によって前記ソース電極から前記ドレイン電極へと前記有機半導体を通って流れる電流を制御する薄膜トランジスタである、請求項20に記載の有機半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体膜の形成に用いられる有機半導体溶液、及びその使用方法に関する。また、本発明は、このような有機半導体溶液を用いて得られる有機半導体膜に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体化合物については、有機薄膜トランジスタ(TFT)、有機キャリア輸送層、有機発光デバイス等のための有機半導体層への利用に関して、様々な研究がなされている。特に、有機半導体化合物からなる有機半導体層を有する薄膜トランジスタは、低コストかつ軽量のデバイスとして、現在のシリコンベーストランジスタを代替することが期待されている。また、有機半導体層は、軽量でかつフレキシブルであること等、有機材料に特有の利点を活用することで、スマートタグ、軽量ディスプレイ等への応用も期待されている。
【0003】
これらの有機半導体化合物のなかでも、縮合多環芳香族化合物、特に下記の式で示されるペンタセンのように、芳香環が直線的に又は屈曲してつながっている縮合多環芳香族化合物が、キャリアの移動度等の半導体特性に関して好ましいことが分かってきている:
【0004】
【化1】
【0005】
このような縮合多環芳香族化合物は、芳香族性が強く、結晶性が高いことから、有機溶媒等への溶解性がきわめて低く、塗布法で用いることが困難であった。したがって、縮合多環芳香族化合物を用いて有機半導体膜を得る場合には、蒸着法を用いることが一般的であった。
【0006】
しかしながら、溶液法による半導体膜の製造は、製造効率、必要とされる製造設備等に関して好ましいことから、有機溶媒等に対する縮合多環芳香族化合物の溶解性を高めて、溶液法で縮合多環芳香族化合物を製膜できるようにするための試みが行われている。これに関して例えば、溶解性を高めるために、縮合多環芳香族化合物に置換基を導入することが提案されている(特許文献1及び2)。
【0007】
また、縮合多環芳香族化合物に脱離可能な置換基を導入して、溶解性を高めた縮合多環芳香族化合物の前駆体を得、このような前駆体を有機溶媒に溶解させて製膜を行い、その後で、加熱及び/又は光照射によって置換基を脱離させて、有機半導体膜を得ることも提案されている(特許文献3及び4)。
【0008】
さらに、このような溶解性を高めた縮合多環芳香族化合物と共に、半導体性又は絶縁性のポリマーを有機溶媒に溶解させて、有機半導体溶液による製膜性を改良することも提案されている(特許文献5及び6)。
【0009】
具体的には、特許文献5では、有機半導体化合物の前駆体及びポリマーを有機溶媒に溶解させた有機半導体溶液を用いて、有機半導体膜を得ている。
【0010】
しかしながら、特許文献5でのように有機半導体化合物の前駆体を用いる場合には、ポリマー濃度が大きくなったときに、得られる有機半導体膜の半導体特性が顕著に低下するという問題があった。具体的には、特許文献5の実施例では、ペンタセン前駆体及びポリスチレンを有機溶媒に溶解させて得た有機半導体溶液を用いる場合に、ペンタセン前駆体とポリマーとの合計に対するペンタセン前駆体の割合が99質量%であるときには0.05cm/Vsであった移動度が、この割合が50質量%のときには10分の1の0.005cm/Vsに低下することを示している。
【0011】
したがって、特許文献6では、このような問題を解消するために、特定の置換基を有するペンタセンをポリマーと共に有機溶媒に溶解させて、有機半導体溶液を得、この有機半導体溶液を用いて、有機半導体膜を得ている。
【0012】
なお、特許文献7では、特定の位置が置換基によって置換されている有機半導体化合物、及びその合成方法について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−290963号公報
【特許文献2】国際公開第2008/50726号
【特許文献3】特開2009−81408号公報
【特許文献4】国際公開第2011/024804号
【特許文献5】特表2005−505142号公報
【特許文献6】特表2007−519227号公報
【特許文献7】国際公開第2013/021953号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、特許文献6では、特定の置換基を有するペンタセンを有機半導体化合物として用いることによって、実質的な量のポリマーと共に有機半導体化合物を有機溶媒に溶解させたときにも、許容可能な半導体特性を有する有機半導体膜が得られるとしている。
【0015】
これに対して、本発明では、このようなペンタセンを有機半導体化合物として用いない場合であっても、実質的な量のポリマーを含有することによって製膜性を高めつつ、許容可能な半導体特性を有する有機半導体膜を得ることができる有機半導体溶液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の有機半導体溶液は、有機溶媒、並びに有機溶媒に溶解しているポリマー及び有機半導体前駆体を含有しており、ポリマー及び有機半導体前駆体の合計に対するポリマーの割合が、3質量%以上であり、有機半導体前駆体が、下記式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に求ジエン型アルケンがその二重結合を介して脱離可能に付加されてなる構造を有する:
【0017】
【化2】
【0018】
(A〜A及びE〜Eは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基等からなる群より選択され、かつYは、硫黄又はセレンである)。
【0019】
なお、有機半導体前駆体において、式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に求ジエン型アルケンが二重結合を介して「脱離可能」に付加されていることは、例えば減圧及び/又は加熱によって、式(I)の有機半導体化合物を分解させずに、有機半導体前駆体から、求ジエン型アルケンを脱離及び除去できることを意味している。
【0020】
本発明の有機半導体膜は、ポリマー及び有機半導体化合物で作られている有機半導体膜であって、ポリマー及び前記有機半導体化合物の合計に対する前記ポリマーの割合が、3質量%以上であり、有機半導体化合物が下記式(I)を有し、かつ下記の条件(i)〜(iii)の少なくとも1つを満たす有機半導体膜である:
【化3】
(A〜A及びE〜Eは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよく、かつ
Yは、硫黄又はセレンである);
(i)互いに積層されている第1及び第2の層を有し、これら第1及び第2の層がいずれも、上記有機半導体化合物を含有し、かつ第1の層における上記有機半導体化合物の質量分率が、第2の層における上記有機半導体化合物の質量分率よりも高いこと、
(ii)有機半導体前駆体を更に含有しており、かつこの有機半導体前駆体が、上記式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に求ジエン型アルケンがその二重結合を介して脱離可能に付加されてなる構造を有すること、並びに
(iii)長軸径20μm超の前記有機半導体化合物の結晶を有していること。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有機半導体溶液によれば、実質的な量のポリマーを含有することによって製膜性を高めつつ、許容可能な半導体特性を有する有機半導体膜を得ることができる。また、本発明の有機半導体膜によれば、優れた半導体特性を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1で作成した未焼成膜を上面から観察した写真である。
図2図2は、実施例1で作成した有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真である。
図3図3は、実施例2で作製した未焼成膜を上面から観察した写真である。
図4図4は、実施例2で作製した有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真である。
図5図5は、実施例2で作製した有機半導体膜の断面SEM写真である。
図6図6は、実施例2で作製した有機半導体膜の面外XRD観察結果である。
図7図7は、実施例2で作製した有機半導体膜の面内XRD観察結果である。
図8図8は、実施例2で作製した有機半導体膜の概念図である。
図9図9は、実施例2〜6で作製した有機半導体膜における移動度とポリマー含有率との関係を示す図である。
図10図10は、実施例2で得られたトランジスタの伝達特性を示す図である。
図11図11は、比較例2で作製した未焼成膜を上面から観察した写真である。
図12図12は、実施例7で作製した有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真である。
図13図13は、実施例7で得られたトランジスタの伝達特性を示す図である。
図14図14は、実施例8で作製した有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真である。
図15図15は、実施例8で得られたトランジスタの伝達特性を示す図である。
図16図16は、参考例2で得られたTIPS2置換体DNTTについての単結晶構造解析に基づく分子構造ORTEP図である。
図17図17は、参考例2で得られたTIPS2置換DNTTについての結晶パッキング(ステレオ)図である。
図18図18は、参考例3で得られたトランジスタの伝達特性を示す図である。
図19図19は、実施例9で作製した有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真である。
図20図20は、実施例9で得られたトランジスタの伝達特性を示す図である。
図21図21は、実施例10で作製した有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真である。
図22図22は、実施例10で得られたトランジスタの伝達特性を示す図である。
図23図23は、実施例11で作製した有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真である。
図24図24は、実施例11で得られたトランジスタの伝達特性を示す図である。
図25図25は、実施例12で作製した有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真である。
図26図26は、実施例12で得られたトランジスタの伝達特性を示す図である。
図27図27は、実施例13で作製した有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真である。
図28図28は、実施例13で得られたトランジスタの伝達特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
《定義》
本明細書においては、記載を簡潔にするために、「炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基」との記載を、「炭素原子数1〜20のアルキル基等」として表すものとする。
【0024】
ここで、「炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基」における「芳香族基」は、ベンゼン系芳香族基、複素環基、又は非ベンゼン系芳香族基であってよい。具体的なベンゼン系芳香族基としては、ベンゼン基、及びナフタレン基を挙げることできる。また、具体的な複素環基としては、フラン基、チオフェン基、ピロール基、及びイミダゾール基を挙げることができる。また、具体的な非ベンゼン系芳香族基としては、アヌレン、及びアズレンを挙げることができる。これらの芳香族基が置換されている場合、その置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、ケトン基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基を挙げることができる。
【0025】
例えば、「炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基」が、置換又は非置換のチオフェン基である場合、このチオフェン基は下記に示すように、更に置換又は非置換のチオフェン基によって置換されていてもよい:
【0026】
【化4】
【0027】
なお、チオフェン基等の芳香族基が置換されている場合の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換又は非置換の芳香族基、ケトン基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、及びアルキルシリルアルキニル基等であってよい。
【0028】
また、「炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基」は、炭素原子数1〜40のトリアルキルシリルアルキニル基、特に下記の式を有するトリアルキルシリルアルキニル基であってよい:
【0029】
【化5】
【0030】
(R〜Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基からなる群より選択される基)。
【0031】
本明細書において、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、及びアスタチン、特に塩素、臭素、及びヨウ素、より特に臭素を意味している。
【0032】
《有機半導体溶液》
本発明の有機半導体溶液は、有機溶媒、並びに有機溶媒に溶解しているポリマー及び有機半導体前駆体を含有している。
【0033】
本発明の有機半導体溶液では、ポリマー及び有機半導体前駆体の合計に対するポリマーの割合が、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上である。この割合は、例えば90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下であってよい。
【0034】
本発明の有機半導体溶液では、有機半導体前駆体は任意の濃度で含有されていてよく、例えば有機半導体前駆体は、0.01〜10質量%、0.05〜5質量%、0.1〜3質量%の濃度で含有されていてよい。
【0035】
本発明の有機半導体溶液では、有機半導体前駆体が、下記式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に求ジエン型アルケンがその二重結合を介して脱離可能に付加されてなる構造を有する:
【0036】
【化6】
【0037】
(A〜A及びE〜Eは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよく、かつ
Yは、硫黄又はセレンである)。
【0038】
本発明の有機半導体溶液によれば、この溶液を基材に塗布して、未焼成膜を作製し、そしてこの未焼成膜に光照射及び/又は加熱を行って、有機半導体前駆体から求ジエン型アルケンを脱離及び除去することによって、ポリマー及び式(I)の有機半導体化合物で作られている有機半導体膜を得ることができる。
【0039】
この場合、本発明の有機半導体溶液は、比較的多量のポリマーを含有していることによって、改良された製膜性を提供することができる。
【0040】
また、本発明の有機半導体溶液は、比較的多量のポリマーを含有しているにもかかわらず、予想外に良好な半導体特性を有する半導体膜を提供することができる。これに対して、従来、特許文献5でのようにポリマー及び有機半導体前駆体を含有する有機半導体溶液を用いる場合、ポリマーの含有量が多くなると、得られる有機半導体膜の半導体特性が顕著に低下すると考えられていた。
【0041】
本発明はいかなる理論にも限定されるものではないが、特許文献5でのように有機半導体としてペンタセン前駆体を用いる場合に、ポリマーの含有量が多くなると半導体特性が顕著に低下していたのは、ペンタセン等の一般的な芳香族化合物では、結晶化を引き起こす化学的な分子間相互作用が多量のポリマー成分の阻害により抑制され、それによって半導体特性を発現するために有利な連続層での結晶成長が難しくかったことによると考えられる。
【0042】
これに対して、本発明でのように式(I)の有機半導体化合物、すなわちチエノチオフェン部分を有する縮合多環芳香族化合物を用いる場合、この化合物での結晶化を引き起こす分子間相互作用は極めて強く、それによって有機半導体前駆体を分解して式(I)の有機半導体化合物を得る際に、ポリマーと式(I)の有機半導体化合物とが分離し、式(I)の有機半導体化合物が集合して、式(I)の有機半導体化合物の結晶化がポリマーに阻害されることなく促進されると考えられる。また、式(I)の有機半導体化合物の骨格部分は大きい芳香族性を有することから、このことによっても、式(I)の有機半導体化合物の結晶化が強く促進されると判断される。
【0043】
また、本発明でのように式(I)の有機半導体化合物を適切な量のポリマーと組み合わせて用いる場合、ポリマーによって、有機半導体化合物のポリマー中での拡散速度が抑制され、結晶化の速度が適度に制御されることで、比較的大きい結晶を有する有機半導体膜が得られていると考えられる。
【0044】
《有機半導体溶液−ポリマー》
本発明の有機半導体溶液において用いられるポリマーは、使用する有機溶媒に溶解させることができる任意のポリマーであってよい。
【0045】
本発明において使用するポリマーとしては、ポリマーの繰り返し単位が、共役二重結合及び/又は芳香族環を有するポリマーを選択することができる。また、使用するポリマーとしては、ポリマーの繰り返し単位が、炭素、水素及びハロゲン以外の元素を含有していないポリマー、特にポリマーの繰り返し単位が、炭素及び水素以外の元素を含有していないポリマーを選択することができる。
【0046】
このようなポリマーは、ポリマーが式(I)の有機半導体化合物の結晶化及び/又は半導体特性を妨げないようにするために好ましいと考えられる。
【0047】
また、使用するポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、及びポリサルホンからなる群より選択される非晶性ポリマーを選択できる。より特に、このような非晶性ポリマーとしては、繰り返し単位内にベンゼン環部分を有するスチレン系ポリマー、繰り返し単位内にベンゼン環部分及びカーボネート基を有するポリカーボネート系ポリマー、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体で構成されるアクリル系ポリマー、ポリシラン系ポリマー、及びそれらの組合せを選択できる。
【0048】
このような非結晶性のポリマーは、ポリマーと式(I)の有機半導体化合物とを分離し、そして有機半導体化合物を結晶化させる際に、ポリマーが非晶質性を保持すると共に、低分子である有機半導体化合物の熱的な拡散を緩やかに進行させることによって、ポリマーと有機半導体化合物との分離を促進し、かつ有機半導体化合物の結晶性を改良すると考えられる。
【0049】
使用するポリマーは、絶縁性ポリマーであっても、半導体性ポリマーであってもよい。
【0050】
絶縁性ポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリビニル、ポリイミド、ポリエーテル、及びポリエステルを挙げることができる。具体的には、ポリビニルとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブタジエン、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンを挙げることができる。ポリエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)のようなポリフェニレンエーテルを挙げることができる。ポリエステルとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリテレフタル酸エチレン、及びジメタクリル酸ポリエチレングリコールを挙げることができる。また、アセチルセルロース、特にトリアセチルセルロースを挙げることもできる。
【0051】
半導体ポリマーの例としては、ポリチエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリピロール、及びポリフラニレンビニレンを挙げることができる。
【0052】
本発明において使用するポリマーは、例えば1,000以上、3,000以上、5,000以上、又は10,000以上の分子量を有することができる。また、使用するポリマーは、熱可塑性であり、かつ100℃以上、120℃以上、150℃以上、又は200℃以上のガラス転移温度を有することができる。
【0053】
《有機半導体溶液−有機溶媒》
本発明の有機半導体溶液において用いられる有機溶媒は、使用するポリマー及び有機半導体前駆体を溶解させることができる任意の有機溶媒であってよい。
【0054】
したがって例えば、使用可能な溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、酢酸エチル等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1、4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン(すなわち1,3,5‐トリメチルベンゼン)等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;及びジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の含ハロゲン溶媒を考慮することができる。
【0055】
《有機半導体溶液−有機半導体前駆体》
本発明の有機半導体溶液において用いられる有機半導体前駆体は、上記式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に求ジエン型アルケンがその二重結合を介して脱離可能に付加されてなる構造を有する有機半導体前駆体であって、使用する有機溶媒に溶解させることができる任意の有機半導体前駆体であってよい。
【0056】
したがってこの有機半導体前駆体は、例えば下記式(I−1)で表される構造を有することができる:
【0057】
【化7】
【0058】
(A〜A、並びにE及びEは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよく、
Dは、求ジエン型アルケンがベンゼン環に付加した置換基であり、かつ
Yは、硫黄又はセレンである)。
【0059】
また、この有機半導体前駆体は、特に下記式(I−1−1)で表される構造を有することができる:
【0060】
【化8】
【0061】
(Rについては下記のとおりである)
【0062】
具体的な有機半導体前駆体、有機半導体化合物、及び求ジエン型アルケンについては、特許文献4等の記載を参照することができる。
【0063】
なお、E〜Eが置換された式(I)の有機半導体化合物の合成方法については、下記の記載及び本明細書の参考例の記載を参照することができる。
【0064】
〈E〜Eが置換された式(I)の有機半導体化合物の合成方法1〉
〜Eの少なくとも一部がハロゲン原子で置換されている上記式(I)の有機半導体化合物は、下記の工程を含む方法によって合成することができる:
【0065】
(a)有機溶媒及び下記式(I’)で表される縮合多環芳香族化合物を含有する組成物を提供するステップ:
【0066】
【化9】
【0067】
(A〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよく、かつ
Yは、硫黄又はセレンである)。
【0068】
(b)上記組成物にハロゲンを添加するステップ。
【0069】
ここで用いることができる有機溶媒としては、上記式(I’)で表される縮合多環芳香族化合物を溶解及び/又は分散させることができる任意の有機溶媒を挙げることができる。具体的には、この有機溶媒としては、本発明の有機半導体溶液に関して挙げた有機溶媒を考慮することができる。
【0070】
式(I’)で表される縮合多環芳香族化合物を含有する組成物へのハロゲンの添加は、任意の方法で行うことができ、例えばフッ素又は塩素はバブリングによって添加することができ、臭素、ヨウ素及びアスタチンは液体又は固体として添加することができる。また、式(I’)で表される化合物とハロゲンとの反応を促進するために、加熱を行ってもよい。
【0071】
〈E〜Eが置換された式(I)の有機半導体化合物の合成方法2〉
〜Eの少なくとも一部が炭素原子数1〜20のアルキル基等で置換されている上記式(I)の有機半導体化合物は、下記の工程を含む方法によって合成することができる:
(a)有機溶媒及びE〜Eの少なくとも一部がハロゲン原子で置換されている上記式(I)の有機半導体化合物を含有する組成物を提供するステップ、
(b)上記式(I)の有機半導体化合物のハロゲン原子を、炭素原子数1〜20のアルキル基等からなる群より選択される置換基によって置換するステップ。
【0072】
ここで用いることができる有機溶媒としては、E〜Eの少なくとも一部がハロゲン原子で置換されている上記式(I)の有機半導体化合物を溶解及び/又は分散させることができる任意の有機溶媒を挙げることができる。具体的には、この有機溶媒としては、本発明の有機半導体溶液に関して挙げた有機溶媒を考慮することができる。
【0073】
上記式(I)の有機半導体化合物のハロゲン原子を、炭素原子数1〜20のアルキル基等からなる群より選択される置換基によって置換する反応は、芳香族ハロゲン化物を用いる様々なカップリング方法、溝呂木・ヘック反応、根岸カップリング、右田・小杉・スティルカップリング、薗頭カップリング、鈴木・宮浦カップリング、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、熊田・玉尾・コリューカップリングによって行うことができる。このカップリング反応を促進するために、加熱を行ってもよい。
【0074】
なお、それぞれのカップリング反応の概略は下記のとおりである(Arは芳香族部分、Xはハロゲン、Rは水素、炭素原子数1〜20のアルキル基等):
(1)溝呂木・ヘック反応
Ar−X + HC=CHR (+ Pd触媒) → Ar−HC=CHR
(2)根岸カップリング
Ar−X + R−Zn−X (+ Pd触媒) → Ar−R
(3)右田・小杉・スティルカップリング
Ar−X + R−Sn−R’ (+ Pd触媒) → Ar−R
(4)薗頭カップリング
Ar−X + R−C≡C−H (+ Pd触媒) + 塩基 → Ar−C≡C−R
(5)鈴木・宮浦カップリング
Ar−X + R−B(OH) (+ Pd触媒) + 塩基 → Ar−R
(6)ブッフバルト・ハートウィッグ反応
Ar−X + R−NH (+ Pd触媒) + 塩基 → Ar−NHR
(7)熊田・玉尾・コリューカップリング
Ar−X + R−Mg−X (+ Ni触媒) → Ar−R
【0075】
《有機半導体溶液−有機半導体前駆体−求ジエン型アルケン》
本発明の有機半導体溶液において用いられる有機半導体前駆体では、求ジエン型アルケンは、式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に脱離可能に付加できる任意の化合物であってよい。
【0076】
このような求ジエン型アルケン自体、及びこのような求ジエン型アルケンを式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に付加させる方法については、特許文献4を参照することができる。
【0077】
具体的には、この求ジエン型アルケンとしては、例えば下記式(II−1a)及び(II−2a)、特に下記式(II−1b)及び(II−2b)、より特に下記式(II−1c)及び(II−2c)の化合物を挙げることができる:
【0078】
【化10】
【0079】
(R、R、R及びRはそれぞれ独立に、結合、水素、ハロゲン、水酸基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択され、
及びRは、互いに結合して環を形成していてもよく、
及びRは、互いに結合して環を形成していてもよく、
nは、1〜5の整数であり、且つ
Zは、結合(−)、酸素(−O−)、メチレン性炭素(−C(R−)、エチレン性炭素(−C(R)=)、カルボニル基(−C(=O)−)、窒素(−N(R)−)、及び硫黄(−S−)からなる群より選択され、且つnが2又はそれよりも大きいときにはそれぞれ異なっていてもよい(Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択される))。
【0080】
より具体的には、求ジエン型アルケンとしては、下記の式(II−1−1)〜(II−2−3)の化合物を挙げることができる:
【0081】
【化11】
【0082】
(R及びRはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択される)。
【0083】
《有機半導体膜の生成方法》
有機半導体膜を生成する本発明の方法は、本発明の有機半導体溶液を、基材に塗布して、未焼成膜を作製するステップ、そして未焼成膜に光照射及び/又は加熱を行って、前駆体から求ジエン型アルケンを脱離及び除去して、ポリマー及び式(I)の有機半導体化合物で作られている有機半導体膜を得るステップを含む。
【0084】
この溶液の基材への塗布は、任意の様式で行うことができ、例えばキャスト法、スピンコート法、プリント法等、特にドロップキャスト法のようなキャスト法によって行うことができる。
【0085】
光照射及び/又は加熱によって求ジエン型アルケンを脱離及び除去させる場合には、式(I)の有機半導体化合物を実質的に分解させない任意の条件を用いることができる。したがって求ジエン型アルケンの脱離及び除去は例えば、80℃以上、100℃以上、120℃以上、又は140℃以上であって、200℃以下、220℃以下、240℃以下、260℃以下の温度での加熱によって行うことができる。
【0086】
また、求ジエン型アルケンの脱離及び除去は例えば、減圧下又は大気圧下において行うことができる。また更に、求ジエン型アルケンの脱離及び除去は例えば、窒素雰囲気下又は大気雰囲気下において行うことができる。特に、大気圧の大気雰囲気下において求ジエン型アルケンの脱離及び除去を行うことは、有機半導体膜の製造を容易にするために好ましい。
【0087】
また、求ジエン型アルケンの脱離及び除去については、特許文献4の記載を参照することができる。
【0088】
《有機半導体デバイスの製造方法》
有機半導体デバイスを製造する本発明の方法は、有機半導体膜を生成する本発明の方法によって有機半導体膜を生成するステップを含む。またこの方法は随意に、有機半導体膜の上側又は下側に、電極層及び/又は誘電体層を形成するステップを更に含むことができる。
【0089】
《有機半導体膜》
本発明の有機半導体膜は、ポリマー及び有機半導体化合物で作られており、ポリマー及び有機半導体化合物の合計に対するポリマーの割合が、3質量%以上であり、有機半導体化合物が上記式(I)を有し、かつ下記の条件(i)〜(iii)の少なくとも1つを満たす。
【0090】
《有機半導体膜−条件(i)》
本発明の有機半導体膜の条件(i)は、有機半導体膜が、互いに積層されている第1及び第2の層を有し、第1及び第2の層がいずれも、有機半導体化合物を含有し、第1の層における有機半導体化合物の質量分率が、第2の層における有機半導体化合物の質量分率よりも高いことである。
【0091】
この本発明の有機半導体膜では、第1の層における有機半導体化合物の質量分率が、第2の層における有機半導体化合物の質量分率の1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、又は2.0倍以上であってよい。
【0092】
このような本発明の有機半導体デバイスでは、第1の層における有機半導体化合物の含有率が比較的高いことによって、第1の層における有機半導体化合物の結晶化を促進し、それによって高い半導体特性を提供することができる。
【0093】
《有機半導体膜−条件(ii)》
本発明の有機半導体膜の条件(ii)は、有機半導体膜が、有機半導体前駆体を更に含有しており、かつこの有機半導体前駆体が、上記式(I)の有機半導体化合物のベンゼン環に求ジエン型アルケンがその二重結合を介して脱離可能に付加されてなる構造を有することである。
【0094】
ここで、有機半導体膜が有機半導体前駆体を含有していることは、有機半導体膜が検知可能な量で有機半導体前駆体を含有していることを意味する。したがって例えば有機半導体前駆体のモル比は、有機半導体化合物を基準として、1ppm超、10ppm超、100ppm超、1,000ppm超、又は10,000ppm(1%)超であってよい。また、有機半導体前駆体の割合は、10mol%以下、5mol%以下、3mol%以下、1mol%以下、0.1mol%以下、又は0.01mol%以下であってよい。
【0095】
このような本発明の有機半導体膜は、式(I)の有機半導体化合物と並んで有機半導体前駆体を含有しているにもかかわらず、有機半導体膜としての特性を有することができる。すなわち、本発明の有機半導体膜を本発明の方法によって製造する場合、有機半導体前駆体からの求ジエン型アルケンの熱脱離が完全には進行しなくても、本発明の有機半導体膜は半導体膜としての特性を有することができる。これは、本発明の有機半導体膜の製造を容易にするために好ましい。
【0096】
《有機半導体膜−条件(iii)》
本発明の有機半導体膜の条件(iii)は、有機半導体膜が、長軸径20μm超、30μm超、40μm超、50μm超、60μm超、70μm超、80μm超、90μm超、又は100μm超の有機半導体化合物の結晶を有していることである。
【0097】
このような本発明の有機半導体膜では、大きい結晶を有することによって、半導体特性、例えばキャリア移動度及びオン/オフ比を改良することができる。
【0098】
《有機半導体膜−その他》
本発明の有機半導体膜において、ポリマー及び有機半導体化合物、並びに随意の有機半導体前駆体の合計に対するポリマーの割合は、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよい。また、この割合は、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってよい。
【0099】
本発明の有機半導体膜は好ましくは、面内のXRD観察において、回折ピークを有し、特に2θ=18°付近、23°付近、及び27°付近に回折ピークを有し、かつ面外のXRD観察において、2θ=5.5°付近に回折ピークを有する。
【0100】
このような本発明の有機半導体膜では、有機半導体膜を構成する有機半導体化合物が、蒸着法で得られた有機半導体膜に相当する特性を有することができる。
【0101】
これらの本発明の有機半導体膜は例えば、有機半導体膜を生成する本発明の方法によって得ることができる。
【0102】
《有機半導体デバイス》
有機半導体デバイスは、本発明の有機半導体膜を有する半導体デバイスである。
【0103】
特に本発明の有機半導体デバイスは、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁膜、及び本発明の有機半導体膜を有する薄膜トランジスタであって、ゲート絶縁膜によってソース電極及びドレイン電極とゲート電極とを絶縁し、且つゲート電極に印加される電圧によってソース電極からドレイン電極へと有機半導体を通って流れる電流を制御する薄膜トランジスタである。
【0104】
また特に本発明の有機半導体デバイスは、有機半導体膜を活性層として有する太陽電池である。
【0105】
なお、本発明に関して、「有機半導体デバイス」は、有機半導体膜を有するデバイスを意味しており、電極層、誘電体層等の他の層は、無機材料で作られていても、有機材料で作られていてもよい。
【実施例】
【0106】
《実施例1》
〈有機半導体前駆体の調製〉
特許文献1に示される手法により、有機半導体化合物としての[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(以下「DNTT」として言及する)(下記構造式、分子量340.46)を合成した:
【0107】
【化12】
【0108】
得られたDNTTに、特許文献4の実施例1−10でのようにして、N−フェニルマレイミド(PMI、下記構造式、分子量173.16)を付加して、有機半導体前駆体としてのDNTT前駆体を得た。
【0109】
【化13】
【0110】
得られたDNTT前駆体は、下記式を有していた:
【0111】
【化14】
【0112】
〈有機半導体溶液の調製〉
DNTT前駆体及びポリスチレン(Ardrich Chemical社、質量平均分子量280,000(GPC))を、DNTT前駆体とポリスチレンとの質量比が7:3(DNTT前駆体:ポリスチレン)になるようにして、すなわちポリマー及び有機半導体前駆体の合計に対するポリマーの割合が30質量%になるようにして、クロロホルム溶液に溶解させて、有機半導体溶液を調製した。ここで、有機半導体溶液におけるDNTT前駆体の濃度は、0.2質量%であった。
【0113】
〈有機半導体膜の形成〉
基材としては、300nmのSiO酸化膜を有するnドープシリコンウェハー(面抵抗0.005Ω・cm)を用いた。この基材のSiO酸化膜上に、ドロップキャストにて有機半導体溶液を適用して、ポリスチレン及びDNTT前駆体を含有する未焼成膜を形成した。
【0114】
〈有機半導体膜の評価−厚さ均一性〉
形成した未焼成膜を上面から観察した写真を図1に示す。この膜は、厚さが300nmであり、均一な面内厚さ(最大高低差20nm以下)を有していた。
【0115】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
この未焼成膜を、250℃に加熱したホットプレート上において、大気下で1分にわたって加熱して、DNTT前駆体からPMIを脱離させてDNTTに転化させ、その後で放冷して、有機半導体膜を形成した。得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真を、図2に示す。この図2からは、有機半導体膜が粒径100μm超の大きな結晶粒子を有することが確認された。
【0116】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
この有機半導体膜の1.4cm×1.4cmの領域に対して、チャネル長50μm及びチャネル幅1.5mmのソース/ドレイン金電極を蒸着法により形成して、16個のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0117】
得られた16個のトランジスタはいずれも、0.1cm/Vs以上の良好な移動度、及び10以上の良好なオン−オフ電流比を示した。
【0118】
《比較例1》
比較例1では、有機半導体溶液にポリスチレンを添加しない以外は実施例1と同様にして、有機半導体膜を形成及び評価した。
【0119】
これによれば、ドロップキャストにより得られた膜は、同心円状に拡がっている波状の凹凸を有していた。この膜の厚さの最大高低差は、100nm超であった。
【0120】
また、実施例1と同様の方法にて、半導体特性の評価を行ったが、16個の素子のうち半数が0.1cm/Vsを下回る移動度を示した。
【0121】
《実施例2》
〈有機半導体溶液の調製〉
ポリマー及びDNTT前駆体の合計に対するポリマーの割合を33質量%にしたことを除いて実施例1と同様にして、有機半導体溶液を調製した。すなわち、ポリマー及びDNTT前駆体の合計に対するポリマーの割合は33質量%であり、溶媒としてはクロロホルムを使用し、かつ有機半導体溶液におけるDNTT前駆体の濃度は0.2質量%であった。
【0122】
〈未焼成膜の形成〉
基材としては、300nmのSiO酸化膜を有するnドープシリコンウェハー(面抵抗0.005Ω・cm)を用い、このシリコンウェハーの表面を、オクタデシルトリクロロシラン(OTS、信越シリコーン、LS−6495)により化学的に疎水化処理(OTS処理)した。疎水化処理後の基材の水接触角は108度であった。基材のOTS処理したSiO酸化膜上に、ドロップキャストにて有機半導体溶液を適用して、ポリスチレン及びDNTT前駆体を含有する未焼成膜を形成した。
【0123】
〈未焼成膜の評価−厚さ均一性〉
形成した未焼成膜を上面から観察した写真を図3に示す。この膜は、厚さが300nmであり、均一な面内厚さ(最大高低差20nm以下)を有していた。
【0124】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
この未焼成膜を、200℃に加熱したホットプレート上において、大気下で10分にわたって加熱して、DNTT前駆体からPMIを脱離させてDNTTに転化させ、その後で放冷して、有機半導体膜を形成した。得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真を、図4に示す。この図4からは、有機半導体膜が粒径10μm超の大きな結晶粒子を有することが確認された。
【0125】
〈有機半導体膜の評価−SEM、TEM、及びEELS観察〉
また、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ S−5200)、及びX線回折(XRD、Rigaku R−AXIS RAPID−S)を用いて、有機半導体膜を解析した。
【0126】
断面SEM観察の結果を図5に示す。この図からは、ポリマー及びDNTT前駆体を含有する有機半導体溶液から形成した有機半導体膜では、基材51上に、下側層52及び上側層53を有する二層構造が得られていることが理解される。
【0127】
また、下側層52及び上側層53のEELS(電子エネルギー損失分光法)観察によれば、それぞれの層の構成元素は下記の表1に記載のとおりであった。なお、表1において、括弧内の値は、炭素(C)及び硫黄(S)の原子数の合計を100原子%としたときの値である。
【0128】
【表1】
【0129】
有機半導体化合物として用いたDNTT([1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン)の原子組成がC2212であるので、完全にDNTTのみからなる層の原子組成は、炭素(C)及び硫黄(S)の原子数の合計を100原子%とすると、理論上、炭素(C)が91.7原子%であり、かつ硫黄(S)が8.3原子%である。
【0130】
これに対して、ポリマーとして用いたポリスチレンは、炭素(C)及び水素(H)のみからなるので、完全にポリスチレンのみからなる層の原子組成は、上記の元素分析では、理論上、炭素(C)が100原子%となる。
【0131】
この考えに基づけば、下側層及び上側相に存在する硫黄原子は全てDNTTに由来するものであることが理解される。よって、表1からは、この実施例で得られた有機半導体膜では、図8に示す概念図のように、基材81上に主としてDNTTからなる下側層82が積層されており、その上に主としてポリマーからなる上側層83が積層されていることが理解される。より具体的には、表1からは、この実施例で得られた有機半導体膜では、下側層82におけるDNTTの含有率が、上側層83の中央部分におけるDNTTの含有率の2倍超(8.1原子%/3.6原子%=2.25)であることが理解される。
【0132】
〈有機半導体膜の評価−XRD観察〉
面外について行ったXRD観察の結果を図6に示し、また面内について行ったXRD観察の結果を図7に示す。図6及び7から、得られた有機半導体膜が、面外及び面内の両方向に対して、明瞭な回折ピークを有すること、すなわち高い結晶性を有することが理解される。具体的には、有機半導体膜が面内のXRD観察結果(図7)において、回折ピークを有していること、特に2θ=18°付近、23°付近、及び27°付近に回折ピークを有していることから、有機半導体膜が多結晶であることが理解される。また、有機半導体膜が面外のXRD観察結果(図6)において、2θ=5.5°付近に回折ピークを有すること、すなわちDNTT分子の長手方向長さに相当する約15.5Åの面間隔に対応する位置に回折ピークを有することから、DNTTが基材に対して立って(エッジオンの状態で)配列していることが理解される。
【0133】
したがって、面外及び面内について行ったXRD観察の結果からは、この実施例で得られた有機半導体膜では、図8に示す概念図のように、基材81上にDNTTからなる下側層82が積層されており、その上にポリマーからなる上側層83が積層されていることが理解される。
【0134】
なお、この面外及び面内におけるピークは、蒸着法により形成されたDNTT薄膜のXRD結果として下記の文献に示されるピークと一致しており、このことから、この実施例では、蒸着法で得られたDNTT薄膜と同等の質の薄膜が形成されていることが理解される:
(文献)T. Yamamoto, and K. Takimiya, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 2224−2225
(文献)T. Someya et. al., Nature Comm., 3, 723
【0135】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
この有機半導体膜の1.4cm×1.4cmの領域に対して、チャネル長200μm及びチャネル幅1.0mmのソース/ドレイン金電極を蒸着法により形成して、10個のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0136】
実施例2で得られたトランジスタの特性を、実施例3〜6及び比較例2で得られたトランジスタの特性と併せて、下記の表2及び図9に示している。
【0137】
また、このトランジスタの伝達特性を、図10に示している。ここで、図10では、ドレイン電圧(V)が−100Vのときの、ドレイン電流(I(A)又はI1/2(A1/2))(縦軸)とゲート電圧(V(V))(横軸)との関係を示している。
【0138】
《実施例3〜6、及び比較例2》
〈トランジスタの形成〉
有機半導体溶液におけるポリマーの割合を33質量%から、5質量%(実施例7)、10質量%(実施例8)、20質量%(実施例9)、25質量%(実施例3)、40質量%(実施例4)、50質量%(実施例5)、及び67質量(実施例6)%に変更したこと以外は実施例2と同様にして、実施例3〜9のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。また、有機半導体溶液においてポリマーを用いなかったこと、すなわち有機半導体溶液におけるポリマーの割合を33質量%から0質量%に変更したこと以外は実施例2と同様にして、比較例2のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0139】
なお、有機半導体溶液がポリマーを含有していない比較例2では、図11に示すように、有機半導体溶液が疎水化処理シリコンウェハーのエッジ部に集まり、DNTT前駆体からなる未焼成膜をシリコンウェハー上に形成できなかったので、トランジスタを形成できなかった。
【0140】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
実施例3〜9及び比較例2で得られたトランジスタの特性を、実施例2で得られたトランジスタの特性と併せて、下記の表2及び図9に示している。なお、ポリマーの割合に関して括弧内に記載されている値は、DNTT(分子量340.46)にN−フェニルマレイミド(分子量173.16)が付加して得られたDNTT前駆体(分子量513.62)から全てのN−フェニルマレイミドが脱離してDNTTに戻った場合の、ポリマー及び有機半導体の合計に対するポリマーの質量分率である。
【0141】
【表2】
【0142】
この表2及び図9からは、ポリマー及び有機半導体前駆体の合計に対するポリマーの割合が20質量%〜40質量%の間のときに、すなわちポリマー及び有機半導体の合計に対するポリマーの割合が27.4質量%〜50.1質量%の間のときに、特に優れた特性を有する有機半導体膜が得られていることが理解される。
【0143】
《実施例7》
〈有機半導体膜の形成〉
ポリスチレンの代わりにメタクリル酸メチル樹脂(PMMA、Polymer Science、Mw=100k)を使用したこと以外は実施例2と同様にして、有機半導体膜を形成した。
【0144】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真を、図12に示す。この図12からは、有機半導体膜が粒径10μm超の大きな結晶粒子を基板全面に有することが確認された。
【0145】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
この有機半導体膜の1.4cm×1.4cmの領域に対して、チャネル長200μm及びチャネル幅1.0mmのソース/ドレイン金電極を蒸着法により形成して、10個のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0146】
得られた10個のトランジスタは、0.5cm/Vs超の均一で高い移動度(最大移動度0.70cm/Vs、平均移動度0.66cm/Vs)、及び10〜10の良好なオン−オフ電流比を示した。
【0147】
また、このトランジスタの伝達特性を、図13に示している。ここで、図13では、ドレイン電圧(V)が−50Vのときの、ドレイン電流(I(A)又はI1/2(A1/2))(縦軸)とゲート電圧(V(V))(横軸)との関係を示している。
【0148】
《実施例8》
〈有機半導体膜の形成〉
ポリスチレンの代わりにポリカーボネート樹脂(PC、TEIJIN Chemicals、Mw=25k)を使用したこと以外は実施例2と同様にして、有機半導体膜を形成した。
【0149】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真を、図14に示す。この図14からは、有機半導体膜が粒径10μm超の大きな結晶粒子を基板全面に有することが確認された。
【0150】
〈有機半導体膜の評価−半導体特性〉
この有機半導体膜の1.4cm×1.4cmの領域に対して、チャネル長200μm及びチャネル幅1.0mmのソース/ドレイン金電極を蒸着法により形成して、10個のボトムゲートトップコンタクト電界効果トランジスタを形成した。
【0151】
得られた10個のトランジスタは、0.5cm/Vs超の均一で高い移動度(最大移動度0.83cm/Vs、平均移動度0.91cm/Vs)、及び10〜10の良好なオン−オフ電流比を示した。
【0152】
また、このトランジスタの伝達特性を、図15に示している。ここで、図15では、ドレイン電圧(V)が−50Vのときの、ドレイン電流(I(A)又はI1/2(A1/2))(縦軸)とゲート電圧(V(V))(横軸)との関係を示している。
【0153】
《実施例9〜13》
〈有機半導体膜の形成〉
ポリスチレンの代わりに下記の表3に示すポリマーを使用したこと以外は実施例2と同様にして、実施例9〜13の有機半導体膜を形成した。
【0154】
〈有機半導体膜の評価−結晶粒子径〉
得られた有機半導体膜を上面から偏光顕微鏡で観察した写真、及びこの有機半導体膜を用いて実施例8でのようにして得たトランジスタの伝達特性を図19〜28に示している。具体的には、用いたポリマーと図との関係は、下記の表3に記載のとおりである。
【0155】
【表3】
【0156】
実施例9〜13の有機半導体膜の偏光顕微鏡写真からは、有機半導体膜が結晶粒子を基板全面に有することが確認された。また、実施例9〜13の有機半導体膜を用いて得たトランジスタの伝達特性からは、これらの有機半導体膜が、半導体膜として機能していることが確認された。
【0157】
《参考例》
以下の参考例は、E〜Eが置換された上記式(I)の有機半導体化合物の合成方法について説明するためのものである。なお、このような有機半導体化合物については、特許文献7の記載を参照することができる。
【0158】
以下の参考例において、目的化合物の構造は、必要に応じて、1H核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)、質量分析スペクトル(MS)、単結晶構造解析、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。
【0159】
使用した機器は以下のとおりである。
H−NMR: JEOL ECA−500 (500MHz)
MS: Bruker AutoflexIII (MALDI)
単結晶構造解析: Rigaku RAXIS RAPIDS
GPC: 日本分析工業株式会社 LC−9101(カラム:JAIGEL−2H、JAIGEL−1H)
【0160】
《参考例1》
特許文献1に示される手法により、ジナフトチエノチオフェン(DNTT(Dinaphthothienothiophene))(下記構造式、MW=340.46)を合成した。
【0161】
【化15】
【0162】
上記のDNTT1000mg(2.93mmol)を含有するメシチレン(すなわち1,3,5トリメチルベンゼン)100mLに、臭素(Br、MW=159.8)2341mg(14.65mmol)を加え、反応温度を40℃に4時間保ち、その後、放冷して、臭素2置換ジナフトチエノチオフェン(Br2置換DNTT)(下記構造式、Mw=498.25、1431mg、2.87mmol、収率98.1%)を得た。尚、反応物は、クロロホルムにより精製した。
【0163】
【化16】
【0164】
なお、Br2置換DNTTにおける臭素の置換位置は、参考例2におけるTIPS2置換DNTTの単結晶構造解析によるトリイソプロピルシリル(TIPS)基の位置により判定した。
【0165】
得られたBr2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0166】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.47(d,J=8.3Hz,2H),8.44(s,2H),7.97(d,J=8.3Hz,2H),7.66(t,J=8.3Hz,2H),7.59(t,J=8.3Hz,2H)
【0167】
MS(m/z): 497.513(ポジティブイオン観測)(ExactMass:495.86)
【0168】
《参考例1A》
参考例1Aでのように合成したDNTT100.7mg(0.296mmol)と塩化アルミニウム17.7mg(0.133mmol)をフラスコに添加し、3回窒素置換を行った。次にクロロホルム5.0mlを添加し、0℃に冷却した。N−クロロスクシンイミド78.7mg(0.589mmol)を添加し、1.5時間撹拌した。
【0169】
質量分析スペクトル(MS)にて原料であるN−クロロスクシンイミドが消失したのを確認した後、水を5.0ml添加して反応を終了した。反応生成物をろ過して、塩素2置換ジナフトチエノチオフェン(Cl2置換DNTT)(下記構造式、Mw=409.35、116.0mg、0.28mmol、収率95.8%)を得た。尚、反応物はクロロホルムにより精製した。
【0170】
【化17】
【0171】
得られたCl2置換DNTTについてMS結果を下記に示す。
【0172】
MS(m/z): 407.822(ポジティブイオン観測)(ExactMass:407.96)
【0173】
《参考例2》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、トリイソプロピルシリル(TIPS)基の導入を行った。
【0174】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)500mg(1.0mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)191.3mg、CuI(Mw=190.45)134.1mg、ジイソプロピルアミン(Mw=101.20)0.706mL、CsCO(Mw=325.82)791.6mg、トリイソプロピルシリルアセチレン(Mw=182.38)1.698mLを加え、減圧脱気と窒素置換を3回行った後、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−DMF)35mLを導入し、減圧脱気と窒素置換を再度3回行い、120℃で20時間にわったって攪拌して反応を行わせた。
【0175】
これにより、トリイソプロピルシリルアセチレン2置換ジナフトチエノチオフェン(TIPS2置換DNTT、下記構造式)(Mw=701.19)479.1mg(68.3mmol、収率68.0%)を得た。得られたTIPS2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.2wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0176】
【化18】
【0177】
得られたTIPS2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0178】
H−NMR(500MHz,CDCl): δ8.61(d,J=8.0Hz,2H),8.41(s,2H),7.97(d,J=8.0Hz,2H),7.63(dd,J=8.0Hz,8.0Hz2H),7.57(dd,J=8.0Hz,8.0Hz,2H),1.40〜1.47(m,6H),1.34(d,J=6.9Hz,36H)
【0179】
MS(m/z): 700.3(ExactMass:700.30)
【0180】
得られたTIPS2置換DNTTについての単結晶構造解析結果を下記に示す。
【0181】
a=8.2044(5)Å
b=8.4591(6)Å
c=14.488(1)Å
α=88.475(4)°
β=89.336(3)°
γ=89.555(4)°
V=1005.1(1)Å
【0182】
また、このTIPS2置換DNTT体についての単結晶構造解析に基づく分子構造ORTEP(Oak Ridge Thermal Ellipsoid Plot)図及び結晶パッキング(ステレオ)図を、それぞれ図3及び4に示す。
【0183】
《参考例2A》
参考例2により合成したトリイソプロピルシリルアセチレン2置換DNTT(TIPS2置換DNTT)を、水素還元して、トリイソプロピルシリルエタン2置換DNTTを合成した。
【0184】
具体的には、200mlフラスコにトリイソプロピルシリルアセチレン2置換DNTT(Mw=701.18)304.6mg(0.43mmol)、トルエン60ml、10%Pd/C79.2mgを添加して、水素置換を3回行った。水素雰囲気下で、60℃で15時間攪拌して反応を行わせた。
【0185】
これにより、トリイソプロピルシリルエタン2置換DNTT(下記構造式、Mw=709.37、296.1mg、0.42mmol、収率96.1%)を得た。得られたトリイソプロピルシリルエタン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.51wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0186】
【化19】
【0187】
得られたトリイソプロピルシリルエタン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0188】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.33(s,2H),7.26(d,J=8.6Hz,2H),7.97(d,J=8.6Hz,2H),7.57(dd,J=8.6Hz,8.6Hz,2H),7.53(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),3.76−3.72(m,8H),1.39−1.32(m,6H),1.30−1.19(m,36H)
【0189】
MS(m/z): 708.322(ポジティブイオン観測)(ExactMass:708.367)
【0190】
《参考例3》
参考例2で得られたTIPS2置換DNTT(Mw=701.19)を、0.2wt%の濃度でクロロホルムに溶解させ、半導体素子作製用溶液を調整した。
【0191】
次に、300nmのSiO酸化膜付nドープシリコンウェハー(面抵抗1−10Ω・cm)に対して、UV−オゾン処理20分(アイUV−オゾン洗浄装置OC−250615−D+A、アイグラフィックス株式会社)を行った。また、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン((HMDS)1,1,1,3,3,3−hexamethyldisilazane)10mmol/トルエン溶液を調整して、この溶液中に、UVオゾン処理を行ったシリコン基板を24時間にわたって浸漬させて、シリコン基板の疎水化処理を行った。その後、真空蒸着法(サンユー電子、抵抗加熱方式蒸着装置:SVC−700TM/700−2)によって、チャネル幅50μm及びチャネル長1.5mmのソース/ドレイン金電極を作製した。
【0192】
シリコン基板を40℃に加熱しながら、チャネル部分に、半導体素子作成用溶液を滴下して溶媒を揮発させ、TIPS2置換DNTTからなる薄層を形成した。このようにして作製した素子を、真空下において70℃で1時間にわたって加熱処理することにより、クロロホルム溶媒を乾燥除去して、有機半導体素子を作製した。
【0193】
得られた有機半導体素子の有機半導体特性の測定を行ったところ、p型半導体を示した。また、この有機半導体素子は、キャリア移動度が1×10−3cm/Vsであり、オン/オフ比が10であり、かつ閾値電圧が−26Vであった。この有機半導体素子についてのFET特性の伝達特性を、図5に示す。ここで、図5では、ドレイン電圧(V)が−80Vのときの、ドレイン電流(I(A)又はI1/2(A1/2))(縦軸)とゲート電圧(V(V))(横軸)との関係を示している。
【0194】
《参考例4》
参考例1と同様にして、ジナフトチエノチオフェン(DNTT(Dinaphthothienothiophene))(MW=340.46)を合成した。
【0195】
上記のDNTT5000mg(14.65mmol)を含有するメシチレン(すなわち1,3,5トリメチルベンゼン)500mLに、N−フェニルマレイミド(MW=173.17)12.68g(73.25mmol)を加え、反応温度を160℃に4時間保ち、その後、放冷し、分取精製して、DNTTにN−フェニルマレイミドが1つ付加したジナフトチエノチオフェン−N−フェニルマレイミド1付加体(DNTT−PMI1付加体、立体異性体であるEndo体及びExo体の混合物)(下記構造式、Mw=513.63)、376mg(0.73mmol、収率4.9%)を得た。尚、反応物は、HPLCにより立体異性体を分取し、Endo体132mg、及びExo体151mgを得た。
【0196】
【化20】
【0197】
【化21】
【0198】
上記のDNTT−PMI1付加体(Exo体)151mg(0.29mmol)を含有するメシチレン50mLに、臭素(Br、MW=159.8)235mg(1.47mmol)を加え、反応温度を40℃に1間保ち、その後、放冷して、臭素2置換ジナフトチエノチオフェン−N−フェニルマレイミド1付加体(Br2置換DNTT−PMI1付加体)(下記構造式、Mw=673.44)186mg(0.276mmol、収率95.2%)を得た。
【0199】
【化22】
【0200】
得られたBr2置換DNTT−1PMI付加体についてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0201】
H−NMR(500MHz,CDCl): δ8.39(d,J=7.7Hz,1H),8.29(d,J=7.7Hz,1H),7.67(dd,J=7.7Hz,1H),7.64(dd,J=7.7Hz,1H),7.41〜7.44(m,2H),7.31〜7.32(m,3H),7.27〜7.29(m,2H),6.52〜6.54(m,2H),5.25(d,J=3.2Hz,1H),5.23(d,J=3.2Hz,1H),3.59(dd,J=3.2Hz,8.3Hz,1H),3.55(dd,J=3.2Hz,8.3Hz,1H)
【0202】
MS(m/z): 497.513(ExactMass:670.92)
【0203】
なお、MSでは、Br2置換DNTT−PMI1付加体からN−フェニルマレイミドが脱離したBr2置換DNTT(ExactMass:497.86)が観測されたことが推定される。
【0204】
《参考例5》
参考例4により合成したBr2置換DNTT−PMI1付加体に対して、薗頭カップリング法により、トリイソプロピルシリル(TIPS)基の導入を行った。
【0205】
具体的には、Br2置換DNTT−PMI1付加体(Mw=673.44)100mg(0.148mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)28.1mg、CuI(Mw=190.45)20.0mg、ジイソプロピルアミン(Mw=101.20)0.11mL、トリイソプロピルシリルアセチレン(Mw=182.38)0.1mLを加え、減圧脱気と窒素置換を3回行った後、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−DMF)7mLを導入し、減圧脱気と窒素置換を再度3回行い、120℃で20時間にわったって攪拌して反応を行わせた。
【0206】
これにより、トリイソプロピルシリルアセチレン2置換ジナフトチエノチオフェン−フェニルマレイミド1付加体(exo体)(TIPS2置換DNTT−PMI1付加体(exo体))(下記構造式、Mw=876.37)74.9mg(85.4mmol、収率57.7%)を得た。
【0207】
【化23】
【0208】
得られたTIPS2置換DNTT−PMI1付加体(exo体)についてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0209】
H−NMR(500MHz,CDCl): δ8.52〜8.54(m,1H),8.43〜8.45(m,1H),7.60〜7.64(m,2H),7.43〜7.46(m,2H),7.31〜7.33(m,3H),7.25〜7.29(m,2H),6.52〜6.54(m,2H),5.29(d,J=3.4Hz,1H),5.21(d,J=3.4Hz,1H),3.62(dd,J=3.4Hz,8.3Hz,1H),3.56(dd,J=3.4Hz,8.3Hz,1H),1.36〜1.43(m,6H),1.31(d,J=2.9Hz,12H),1.30(d,J=4.0Hz,24H)
【0210】
MS(m/z): 873.078(Exact Mass:875.37)
【0211】
《参考例6》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、1−デシンを反応させ、1−デシン2置換DNTTを合成した。
【0212】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1000mg(2.01mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)761.1mg(1.08mmol)、CuI(Mw=190.45)577mg(3.03mmol)、CsCO(Mw=325.8)3.20g(9.82mmol)を添加して減圧脱気と窒素置換を5回行った。
【0213】
その後、ジメチルホルムアミド70ml、ジイソプロピルアミン(Mw=101.2,d=0.72g/cm)1.41ml(10.0mmol)、1−デシン(Mw=138.25,d=0.77g/cm)2.78ml(15.4mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を再度5回行い、120℃で15.5時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0214】
これにより、1−デシン2置換DNTT(下記構造式、Mw=612.93、20.5mg、0.033mmol、収率1.6%)を得た。得られた1−デシン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、2.3wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0215】
【化24】
【0216】
得られた1−デシン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0217】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.45(d,J=8.3Hz,2H),8.25(s,2H),7.86(d,J=8.3Hz,2H),7.54(dd,J=8.3Hz,6.9Hz,2H),7.48(dd,J=8.3Hz,6.9Hz,2H),2.81(t,J=7.2Hz,4H),1.90(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.65(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.31−1.48(m,16H),0.89(t,J=7.2Hz,6H)
【0218】
MS(m/z): 612.284(ポジティブイオン観測)(ExactMass:612.288)
【0219】
《参考例7》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、1−テトラデシンを反応させ、1−テトラデシン2置換DNTTを合成した。
【0220】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1000mg(2.01mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)830.0mg(1.17mmol)、CuI(Mw=190.45)590.0mg(3.12mmol)、CsCO(Mw=325.8)1.62g(4.98mmol)を加え、減圧脱気と窒素置換を5回行った。
【0221】
その後、ジメチルホルムアミド70ml、ジイソプロピルアミン(Mw=101.2,d=0.72g/cm)1.41ml(10.0mmol)、1−テトラデシン(Mw=194.36,d=0.79g/cm)4.19ml(17.0mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を再度5回行い、120℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0222】
これにより、1−テトラデシン2置換DNTT(下記構造式、Mw=612.93、156.04mg、0.207mmol、収率10.3%)を得た。得られた1−テトラデシン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、6.5wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0223】
【化25】
【0224】
得られた1−テトラデシン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0225】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.38(d,J=8.3Hz,2H),8.14(s,2H),7.78(d,J=8.3Hz,2H),7.48(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),7.42(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),2.76(t,J=7.2Hz,4H),1.86(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.62(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.24−1.46(m,32H),0.86(t,J=7.2Hz,6H)
【0226】
MS(m/z): 724.411(ポジティブイオン観測)(ExactMass:724.414)
【0227】
《参考例7A》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、参考例7で用いた薗頭カップリング法の代わりに根岸カップリングを用いて、1−テトラデシンを反応させ、1−テトラデシン2置換DNTTを合成した。
【0228】
具体的には、10mlフラスコに、1−テトラデシン(Mw=194.36,d=0.79g/cm)0.21ml(0.85mmol)、トルエン3.5mlを添加して減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液を0.53ml(0.859mmol)添加した後、室温まで昇温した。
【0229】
ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)215.3mg(0.853mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)50mg(0.10mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)35.2mg(0.05mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0230】
これにより、1−テトラデシン2置換DNTT(上記構造式、Mw=612.93、8.9mg、0.012mmol、収率12.2%)を得た。
【0231】
《参考例8》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、1−オクタデシンを反応させ、1−オクタデシン2置換DNTTを合成した。
【0232】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1010mg(2.02mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)820.0mg(1.17mmol)、CuI(Mw=190.45)590.0mg(3.12mmol)、CsCO(Mw=325.8)1.58g(4.85mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を5回行った。
【0233】
その後、ジメチルホルムアミド70ml、ジイソプロピルアミン(Mw=101.2,d=0.72g/cm)1.41ml(10.0mmol)、1−オクタデシン(Mw=250.46,d=0.79g/cm)5.34ml(16.8mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を再度5回行い、120℃で14時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0234】
これにより、1−オクタデシン2置換DNTT(下記構造式、Mw=836.54、54.2mg、0.064mmol、収率3.2%)を得た。
【0235】
【化26】
【0236】
《参考例8A》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、参考例8で用いた薗頭カップリング法の代わりに根岸カップリングを用いて、1−オクタデシンを反応させ、1−オクタデシン2置換DNTTを合成した。
【0237】
具体的には、10mlフラスコに、1−オクタデシン(Mw=250.46,d=0.80g/cm)0.26ml(0.85mmol)、トルエン3.5mlを添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液を0.53ml(0.859mmol)添加した後、室温まで昇温した。
【0238】
ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)216.1mg(0.856mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)49.7mg(0.10mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)35.6mg(0.05mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0239】
これにより、1−オクタデシン2置換DNTT(上記構造式、Mw=836.54、3.8mg、0.004mmol、収率4.5%)を得た。得られた1−テトラデシン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、1.67wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0240】
得られた1−オクタデシン2置換DNTTについてのH−NMRおよびMS結果を下記に示す。
【0241】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.48(d,J=8.3Hz,2H),8.30(s,2H),7.89(d,J=8.3Hz,2H),7.56(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),7.51(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),2.83(t,J=7.2Hz,4H),1.91(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,2H),1.66(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,2H),1.24−1.46(m,48H),0.87(t,J=7.2Hz,6H)
【0242】
MS(m/z): 836.539(ポジティブイオン観測)(ExactMass:836.537)
【0243】
《参考例9》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、根岸カップリング法により、トリメチルシリルアセチレン(TMS)を反応させ、TMS2置換DNTTを合成した。
【0244】
200mlフラスコに、トリメチルシリルアセチレン(Mw=98.22,d=0.70g/cm)1.68g(17.10mmol)、トルエン70ml添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液10.3ml(16.68mmol)を添加した後、室温まで昇温した。
【0245】
ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)4.31g(17.06mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1.0g(2.00mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)702.5mg(1.00mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0246】
これにより、トリメチルシリルアセチレン2置換DNTT(TMS2置換DNTT)(下記構造式、Mw=532.87、536.30mg、1.00mmol、収率50.1%)を得た。得られたトリメチルシリルアセチレン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.05wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0247】
【化27】
【0248】
得られたTMS2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0249】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.53(d,J=8.3Hz,2H),8.43(s,2H),7.96(d,J=8.3Hz,2H),7.63(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),7.57(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),0.52(s,18H)
【0250】
MS(m/z): 532.008(ポジティブイオン観測)(ExactMass:532.111)
【0251】
《参考例10》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、根岸カップリング法により、トリエチルシリルアセチレン(TES)を反応させ、TES2置換DNTTを合成した。
【0252】
200mlフラスコにトリエチルシリルアセチレン(Mw=140.30,d=0.78g/cm)2.25g(16.03mmol)、トルエン70mlを添加して減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液を10.3ml(16.68mmol)添加した後、室温まで昇温した。
【0253】
ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)4.31g(17.06mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1.0g(2.00mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)704.8mg(1.00mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0254】
これにより、トリエチルシリルアセチレン2置換DNTT(TES2置換DNTT)(下記構造式、Mw=617.03、321.40mg、0.52mmol、収率26.0%)を得た。得られたトリエチルシリルアセチレン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.10wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0255】
【化28】
【0256】
得られたTES2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0257】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.56(d,J=8.3Hz,2H),8.42(s,2H),7.96(d,J=8.3Hz,2H),7.63(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),7.57(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),1.25(t,J=8.0Hz,18H),0.94−0.98(m,12H)
【0258】
MS(m/z): 616.057(ポジティブイオン観測)(ExactMass:616.211)
【0259】
《参考例11》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、スティルカップリング法により、チオフェンを反応させ、チオフェン2置換DNTTを合成した。
【0260】
100mlのフラスコに、Br2置換DNTT(Mw=498.25)500mg(1.00mmol)、PdCl(PPh(Mw=701.90)351.6mg(0.501mmol)、トリブチル(2−チエニル)スズ(Mw=373.18)3.23g(8.64mmol)、乾燥トルエン35mlを、添加した。窒素置換を3回行い、100℃で終夜攪拌した。
【0261】
MALDIからBr2置換DNTTのピークが消失したことを確認した後で、室温まで冷却した。クロロホルム及び水を添加し、沈殿物をろ過した。ろ液から溶媒を留去し、ろ液からのみMSにて目的物ピークが確認された。黒色オイル状物質にエーテルを10ml加え2回洗浄した。固体をろ過し、暗緑色固体を得た。その後、この暗緑色固体をカラムで精製して、黄色固体として生成物を得た。
【0262】
チオフェン2置換DNTT(下記構造式、Mw=504.71、158.80mg、0.31mmol、収率31.4%)を得た。得られたトリエチルシリルアセチレン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.13wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0263】
【化29】
【0264】
得られたチオフェン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0265】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.31(s,2H),7.92(d,J=6.5,2H),7.87(d,J=7.0Hz,2H),7.76(dd,J=1.0Hz,1.0Hz,2H),7.52−7.49(m,2H),7.47−7.46(m,2H),7.43−7.41(m,2H),7.28−7.26(m,2H)
【0266】
MS(m/z): 503.838(ポジティブイオン観測)(ExactMass:504.013)
【0267】
《参考例12》
参考例1により合成したBr2置換DNTTに対して、根岸カップリング法により、1−ブロモデカンを反応させ、デカン2置換DNTTを合成した。
【0268】
具体的には、10mlフラスコに、マグネシウム548.2mg(22.5mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を3回行った。THF2.5ml、1−ブロモデカン(Mw=221.18,d=1.07g/cm)4.39ml(21.3mmol)を添加し、攪拌しながら60℃で1時間還流した。
【0269】
室温まで冷却後、トルエン100ml、ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)5.32g(21.31mmol)を添加し、10分攪拌した。Br2置換DNTT(Mw=498.25)1.25g(2.50mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)881.5mg(1.25mmol)、トルエン77.5mlを添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0270】
これにより、デカン2置換DNTT(下記構造式、Mw=620.99、44.3mg、0.089mmol、収率2.8%)を得た。得られたデカン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.05wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0271】
【化30】
【0272】
得られたデカン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0273】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.33(s,2H),8.26(d,J=8.30Hz,2H),7.95(d,J=8.3Hz,2H),7.56(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),7.53(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),3.67−3.64(m,4H),1.93−1.86(m,4H),1.76−1.71(m,4H),1.49−1.45(m,4H),1.41−1.29(m,20H),0.88(t,J=6.8Hz,6H)
【0274】
MS(m/z): 620.083(ポジティブイオン観測)(ExactMass:620.288)
【符号の説明】
【0275】
51、81 基材
52、82 下側層
53、83 上側層
図6
図7
図8
図9
図10
図13
図15
図16
図17
図18
図20
図22
図24
図26
図28
図1
図2
図3
図4
図5
図11
図12
図14
図19
図21
図23
図25
図27