特許第5959650号(P5959650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カー エヌ エフ ノイベルガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000002
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000003
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000004
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000005
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000006
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000007
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000008
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000009
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000010
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000011
  • 特許5959650-ロータリーエバポレータ 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959650
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ロータリーエバポレータ
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B01D3/00 C
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-533784(P2014-533784)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公表番号】特表2014-534898(P2014-534898A)
(43)【公表日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】EP2012004000
(87)【国際公開番号】WO2013050111
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】202011106544.1
(32)【優先日】2011年10月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591049066
【氏名又は名称】カー エヌ エフ ノイベルガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】KNF Neuberger GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】エアヴィン ハウザー
(72)【発明者】
【氏名】エーリヒ ベッカー
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0193345(US,A1)
【文献】 特開2010−284604(JP,A)
【文献】 特開2000−024404(JP,A)
【文献】 特開平09−168701(JP,A)
【文献】 実開昭61−019436(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00−3/42
B01L 1/00−99/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーエバポレータ(1)であって、ハブ(58)を備えた回転駆動装置(57)と、該回転駆動装置(57)のハブ(58)内でガラス中空軸(8)として形成された蒸気通流部を緊締するための、スリーブ状の基本形状を備えた緊締インサート(59)とを有しており、該緊締インサート(59)は、長手方向に互いに間隔をあけて配置された2つの緊締部分(K1,K2)を有していて、これらの緊締部分(K1,K2)はそれぞれ、前記緊締インサート(59)の長手方向軸線に対して相対的に傾斜された少なくとも1つの緊締斜面(63,64)を有しており、該緊締斜面(63,64)は、該緊締斜面(63,64)に対応配置された回転駆動装置(57)の対応斜面(65,66)と協働して、前記緊締インサート(59)を軸方向に押圧することにより、前記緊締部分(K1,K2)を前記ガラス中空軸(8)に対して押圧するようになっており、前記緊締インサート(59)は、その長手方向に方向付けられた複数の支持バー(60)を有しており、これらの支持バー(60)は、前記緊締インサート(59)の周方向に方向付けられた複数の結合ウェブ(61,62)を介して互いに結合されており、前記支持バー(60)と結合ウェブ(61,62)とが結合されて、前記緊締インサート(59)のスリーブ状の基本形状を成しているものにおいて、
前記結合ウェブ(61,62)は、隣り合う支持バー(60)の、前記緊締インサート(59)の一方の側又は他方の側に配置されたバー端部領域を交互に結合しており、互いに間隔をあけて配置された前記緊締部分(K1,K2)は、前記緊締インサート(59)の対向する両端部に設けられていて、前記緊締斜面(63,64)を支持している結合ウェブ(61,62)により形成されていることを特徴とする、ロータリーエバポレータ。
【請求項2】
前記緊締インサート(59)の対向する両端部に設けられた前記結合ウェブ(61,62)により支持される前記緊締斜面(63,64)は、それぞれ緊締インサート(59)の隣接する端部に向かってしだいに薄くなる外側横断面を有している、請求項1記載のロータリーエバポレータ。
【請求項3】
前記緊締インサート(59)は、前記ハブ(58)の、蒸発容器(5)に面した側から該ハブ(58)内に、対応斜面(65)として形成された環状段部に到達するまで挿入可能であり、前記緊締インサート(59)を軸方向に押圧するために、前記ハブ(58)に緊締ねじリング(67)が、解離可能にねじ被せられるようになっており、該緊締ねじリング(67)は、緊締ねじリング(67)の内周面に設けられた対応斜面(66)でもって、前記ハブ(58)を越えて突出している前記緊締インサート(59)の緊締部分(K2)を押圧する、請求項1又は2記載のロータリーエバポレータ。
【請求項4】
前記緊締ねじリング(67)は、ねじ山(71)を有しており、該ねじ山(71)は、押圧ねじリング(73)に設けられた対応ねじ山(72)と協働するようになっていて、前記押圧ねじリング(73)を前記緊締ねじリング(67)からねじ外す際に、前記押圧ねじリング(73)が蒸発容器(5)を押圧して、該蒸発容器(5)と、蒸発容器(5)を支持しているガラス中空軸(8)との間のクリップジョイント又は摺り合わせジョイントが外されるようになっている、請求項3記載のロータリーエバポレータ。
【請求項5】
前記ガラス中空軸(8)は、その外周面に少なくとも1つの凹状成形部(68)又は凸状成形部を有しており、該凹状成形部(68)又は凸状成形部には、前記緊締インサート(59)の内周面に設けられた凸状成形部(69)又は凹状成形部が対応配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のロータリーエバポレータ。
【請求項6】
前記ガラス中空軸(8)又は前記緊締インサート(59)に設けられた少なくとも1つの凹状成形部は、環状溝として形成されており、対応配置された凸状成形部は、環状隆起部として形成されている、請求項5記載のロータリーエバポレータ。
【請求項7】
前記緊締インサート(59)に設けられた少なくとも1つの凹状成形部又は凸状成形部は、前記緊締インサート(59)の、前記ハブ(58)を越えて突出している部分領域に配置されている、請求項5又は6記載のロータリーエバポレータ。
【請求項8】
ガラス中空軸(8)として形成された蒸気通流部は、その一方の第1の軸端部に蒸発容器(5)を支持しており且つ他方の第2の軸端部でもって、冷却器(6)の接続管片(9)により画成された接続開口(74)内に突入しており、前記ガラス中空軸(8)に、シールリング(76)が密着しており、該シールリング(76)は、前記接続管片(9)と駆動装置ケーシング(77)との間に締め込まれていて、外側のリングゾーン(78)が締め込み縁部として形成されたリングディスクとして形成されており、該リングディスクは、前記ガラス中空軸(8)の長手方向に曲げられた内側のリングゾーン(79)を有しており、前記シールリング(76)は、前記ガラス中空軸(8)の長手方向に方向付けられた前記リングディスクの部分領域(T)でもって、前記ガラス中空軸(8)にばね弾性的に密着している、請求項1から7までのいずれか1項記載のロータリーエバポレータ。
【請求項9】
前記シールリング(76)は、一体的に形成されている、請求項8記載のロータリーエバポレータ。
【請求項10】
前記シールリング(76)は、材料コンパウンドとして製造されている、請求項8又は9記載のロータリーエバポレータ。
【請求項11】
前記接続管片(9)及び/又は前記駆動装置ケーシング(77)に、少なくとも1つの環状溝又は環状隆起部(81)が設けられており、該少なくとも1つの環状溝又は該少なくとも1つの環状隆起部(81)には、前記シールリング(76)の締め込み縁部に設けられた相補的な環状溝(80)又は環状隆起部が対応配置されている、請求項8から10までのいずれか1項記載のロータリーエバポレータ。
【請求項12】
前記ガラス中空軸(8)の軸線に沿った、前記シールリング(76)の長手方向断面は、U字形、L字形又は字形である、請求項8から11までのいずれか1項記載のロータリーエバポレータ。
【請求項13】
前記シールリング(76)の環状開口を取り囲んでいる内側の縁部領域(95)は、前記ガラス中空軸(8)から離反する方向に曲げられている、請求項8から12までのいずれか1項記載のロータリーエバポレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーエバポレータに関するものであって、該ロータリーエバポレータは、ハブを備えた回転駆動装置と、該回転駆動装置のハブ内でガラス中空軸として形成された蒸気通流部を緊締するための、スリーブ状の基本形状を備えた緊締インサートとを有しており、該緊締インサートは、長手方向に互いに間隔をあけて配置された2つの緊締部分を有していて、これらの緊締部分はそれぞれ、前記緊締インサートの長手方向軸線に対して相対的に傾斜された少なくとも1つの緊締斜面を有しており、該緊締斜面は、該緊締斜面に対応配置された回転駆動装置の対応斜面と協働して、前記緊締インサートを軸方向に押圧することにより、前記緊締部分を前記ガラス中空軸に対して押圧するようになっており、前記緊締インサートは、その長手方向に方向付けられた複数の支持バーを有しており、これらの支持バーは、前記緊締インサートの周方向に方向付けられた複数の結合ウェブを介して互いに結合されており、前記支持バーと結合ウェブとが結合されて、前記緊締インサートのスリーブ状の基本形状を成している
【0002】
ロータリーエバポレータは、既に種々様々な構成で知られている。このようなロータリーエバポレータは、複数の成分の異なる沸点を利用して、液体混合物や溶液を慎重に分離するためのものである。このようにして、ロータリーエバポレータは、乾燥、溶媒回収及び類似のプロセスにも利用可能である。蒸発装置要素として一般にヒーティングバスが用いられ、このヒーティングバス内には所定量の加熱された水又はオイルが位置している。ヒーティングバスの加熱された水又はオイル量内で、蒸発装置フラスコが回転し、この蒸発容器フラスコは、そのフラスコ内部に、蒸発させるべき溶液を含有している。この溶液は、回転している蒸発装置フラスコの加熱されたフラスコ内壁に沿って、薄い液膜として分配され、そこで容易に蒸発することができる。蒸発装置フラスコの回転により、沸騰遅滞も回避され、ヒーティングバスに関連して、蒸発させるべき媒体中の均一な温度分布が達成される。付加的に生ぜしめられるヒーティングバスの混合が、効果的な加熱温度の調整を著しく容易にする。ユーザに対する危険に結びつき且つ媒体中の不都合な化学反応をも惹起する恐れのある高い温度を回避するために、蒸発プロセスは、プロセス空間の真空引きにより支援される。蒸発装置能力は、ヒーティングバス温度、蒸発装置フラスコのフラスコサイズ及び回転速度、並びに調節される真空圧に基づき可変である。媒体の温度の一般的な不変性とプロセスとに基づいて、蒸発は一定の温度で、主に圧力を介して制御される。プロセス空間を真空引きできるようにするため、且つ所要の冷却器に必要とされる冷却媒体流出入部を接続できるようにするために、蒸発装置フラスコを有するロータリーエバポレータのガラス構造体には、少なくとも1つのホース接続部、一般には複数のホース接続部が設けられていて、これらのホース接続部は、それぞれフレキシブルなホース導管を介して、真空ポンプ又は冷却媒体流出入部に接続されている。
【0003】
過去数十年で、公知のロータリーエバポレータの操作性、安全性及び自動化は著しく改良された。しかしながら、いくつかの欠点が度々確認されている。
【0004】
蒸発装置フラスコをヒーティングバス内で回転させるために、この蒸発装置フラスコは、公知のロータリーエバポレータでは摺り合わせジョイントを介して、蒸気通流部として働くガラス中空軸に接続されており、このガラス中空軸は、回転駆動装置のハブに保持される。このためにガラス中空軸には、大抵緊締スリーブとして形成された緊締インサートが被せ嵌められており、この緊締インサートは、回転駆動可能なハブの回転運動を、ガラス中空軸に伝達する。緊締インサートを用いてガラス中空軸をハブ内で緊締できるようにするために、公知のロータリーエバポレータにおいて使用される緊締インサートは、長手方向に互いに間隔をあけて配置された2つの緊締部分を有しており、これらの緊締部分はそれぞれ、緊締インサートの長手方向軸線に対して傾斜された少なくとも1つの緊締斜面を有している。緊締インサートの緊締部分に設けられた緊締斜面は、これらの緊締斜面に対応配置された、回転駆動装置の対応斜面と協働して、緊締インサートを軸方向に押圧することにより、緊締部分をガラス中空軸に対して押圧するようになっている。ガラス中空軸の、回転駆動装置を越えて突出している第1の軸端部が蒸発装置フラスコに接続されている一方で、反対側の第2の軸端部は、冷却器に通じる接続管片を画成する接続開口内に突入している。この場合、回転駆動装置の駆動装置ケーシングに沿って、滑りリングシールが締め込まれており、この滑りリングシールは内側のリングゾーンでもって回転するガラス中空軸に接触して、このガラス中空軸の、冷却器の接続管片に移行する領域をシールしている。
【0005】
公知の緊締インサートは大抵、周方向に環状に延在する少なくとも1つのスリーブ部分を有しており、このスリーブ部分の内法横断面は、ガラス中空軸の外径に相当していなければならない。つまり、この緊締インサートの内法横断面は、少なくとも前記周方向に環状に延在するスリーブ部分において、ガラス中空軸の外径にほぼ等しくなっているので、公知のロータリーエバポレータの緊締インサートは、ガラス中空軸に簡単には被せ嵌められない。前記周方向に環状に延在するスリーブ部分は、既に回転駆動装置内に位置する緊締インサート内に、ガラス中空軸を後から挿入することも困難又は不可能にする恐れがある。
【0006】
公知のロータリーエバポレータにおいて、滑りリングシールは大抵、少なからぬ手間をかけなければ製造することはできない。これらの滑りリングシールは、構造又は形状を複雑に形成されているか、又は種々異なる複数のコンポーネント又は構成部材から製造されている。これらの滑りリングシールは、所定の時間間隔で交換せねばならない摩耗部材なので、滑りリングシールの手間のかかる製造は、ユーザにとってコスト的にも重大である。
EP2213353A1から既に公知の、冒頭で述べた形式のロータリーエバポレータは、ハブを備えた回転駆動装置と、この回転駆動装置のハブ内でガラス中空軸として形成された蒸気通流部を緊締するための、スリーブ状の基本形状を備えた緊締インサートとを有している。この緊締インサートは、長手方向に間隔をあけて配置された2つの緊締部分を有していて、これらの緊締部分はそれぞれ、緊締インサートの長手方向軸線に対して相対的に傾斜された少なくとも1つの緊締斜面を有しており、この緊締斜面は、緊締斜面に対応配置された回転駆動装置の対応斜面と協働して、緊締インサートを軸方向に押圧することにより、緊締部分をガラス中空軸に対して押圧するようになっている。緊締インサートは、その長手方向に方向付けられた複数の支持バーを有しており、これらの支持バーは、結合ウェブを介して互いに結合されており、これらの結合ウェブは、緊締インサートの中心のリングゾーンの領域内に配置されていて、緊締インサートの周方向に方向付けられている。支持バーは、互いに逆方向を向いた両バー端部に、互いに間隔をあけて配置された緊締斜面を支持している。
前掲のEP2213353A1から公知の緊締インサートは、この緊締インサートの長手方向にフィンガ状に突出している支持バーを用いて、ガラス中空軸に容易に被せ嵌めることができる。しかしながら、支持バーを互いに結合している結合ウェブが同様にガラス中空軸に被せ嵌められると直ちに、緊締インサートを引き続き送ることは困難になる。なぜならば、結合ウェブと、隣接する支持バーの領域とは、不変の直径の1つの環状輪郭規定しているからである。緊締斜面は、支持バーの対向位置する両バー端部に設けられているので、ガラス中空軸と緊締インサートとの間の緊締接続は、緊締インサート周面の部分領域においてのみ可能である一方で、結合ウェブの領域では、緊締インサートとガラス中空軸との間の緊締接続は一切想定されていない
【0007】
したがって、ガラス中空軸への緊締インサートの被せ嵌めが著しく容易にされている、冒頭で述べた形式のロータリーエバポレータを提供する、という課題が生じる。
【0008】
この課題を解決する本発明の構成では、結合ウェブが、隣り合う支持バーの、緊締インサートの一方の側又は他方の側に配置されたバー端部領域を交互に結合しており、互いに間隔をあけて配置された緊締部分は、緊締インサートの対向する両端部に設けられていて、緊締斜面を支持している結合ウェブにより形成されている。
【0009】
本発明によるロータリーエバポレータにおいて使用される緊締インサートは、該緊締インサートの長手方向に方向付けられた複数の支持バーを有している。緊締インサートの支持バーは、緊締インサートの周方向に方向付けられた複数の結合ウェブを介して互いに結合されている。この場合、これらの結合ウェブは、隣り合う支持バーの、緊締インサートの一方の側又は他方の側に配置されたバー端部領域を交互に結合しており、各支持バーは、一方の隣接する支持バーに、緊締インサートの一方の側に配置され且つ一方の周方向に張り出した結合ウェブを介して結合されている一方で、他方の隣接する支持バーには、緊締インサートの他方の側に配置され且つ逆の周方向に張り出した結合ウェブを介して結合されている。緊締インサートは、支持バーと、これらの支持バーの対向する両端部領域に交互に設けられた結合ウェブとに基づき、ループ状又はメアンダ(蛇行)状の外側輪郭を有していること、及び緊締インサートのこの外側輪郭は、必要に応じて簡単に周囲長さを広げられることから、緊締インサートは、ガラス中空軸上で簡単に位置決めされるようになっている。この場合、緊締インサートの向かい合う両端部に設けられた結合ウェブは、緊締インサートの長手方向に互いに間隔をあけて配置された緊締部分を形成しており、しかもこれらの緊締部分を形成している結合ウェブは、緊締インサートの自由端部に向かってテーパしており、これにより緊締部分はそれぞれ、緊締インサートの長手方向軸線に対して相対的に傾斜された少なくとも1つの緊締斜面を有することになり、これらの緊締斜面は、該緊締斜面に対応配置された回転駆動装置の対応斜面と協働して、緊締インサートを軸方向に押圧することにより、緊締部分をガラス中空軸に対して押圧するようになっている。
【0010】
緊締インサートの緊締斜面は、それぞれ緊締インサートの同じ長手方向にテーパしていてよい。しかしながら有利な構成では、緊締インサートの向かい合う両端部に設けられた結合ウェブによって支持された複数の緊締斜面は、それぞれ緊締インサートの隣接する端部に向かってしだいに薄くなる外側横断面を有していて、延いては相反する外向きの長手方向にしだいに薄くなっている。
【0011】
緊締インサートを長手方向に押圧して、緊締部分を摩擦接続的にガラス中空軸に当て付けられるようにするために有利なのは、緊締インサートが、ハブの蒸発容器に面した側からハブ内に、対応斜面として形成された環状段部に到達するまで挿入可能な場合、及び、緊締インサートを軸方向に押圧するために、ハブに緊締ねじリングが有利には取り外し可能にねじ被せられるようになっている場合である。この緊締ねじリングは、ハブを越えて突出している緊締インサートの緊締部分を、緊締ねじリングの内周面に設けられた対応斜面によって押圧する。
【0012】
ガラス中空軸は一般に、クリップジョイント又は摺り合わせジョイントを介して蒸発容器に結合されている。この摺り合わせジョイントは、場合によっては再び簡単に解離することができなくなっていてよい。本発明による有利な構成では、緊締ねじリングがねじ山を有しており、このねじ山は、押圧ねじリングに設けられた対応ねじ山と協働して、緊締ねじリングから押圧ねじリングをねじ外す際に、押圧ねじリングが蒸発容器を押圧して、蒸発容器と、この蒸発容器を支持しているガラス中空軸との間のクリップジョイント又は摺り合わせジョイントが解離されるようになっている。
【0013】
ガラス中空軸と、その上に被せ嵌められた緊締インサートとの相対位置を確定するために、ガラス中空軸はその外周面に、少なくとも1つの凹状成形部又は凸状成形部を有していて、この凹状成形部又は凸状成形部には、緊締インサートの内周面に設けられた凸状成形部又は凹状成形部が対応配置されている。
【0014】
前記凸状成形部は、突出しているピンとして形成されていてよく、このピンは、確定された相対位置において、相補的な穴として形成された凹状成形部に係合する。緊締インサート及び有利にはガラス中空軸も、大抵は回転対称的に形成されること、及び緊締インサートとガラス中空軸との相対位置は、大抵長手方向においてのみ確定する必要があり、周方向においても確定する必要はないことから、ガラス中空軸又は緊締インサートに設けられた少なくとも1つの凹状成形部が、環状溝として形成されており且つ対応配置された凸状成形部が、環状隆起部として形成されていると有利である。
【0015】
緊締インサートに設けられた少なくとも1つの凹状成形部又は凸状成形部が、ハブを越えて突出している緊締インサートの部分領域内、特にハブを越えて突出している緊締部分の内周面に配置されている場合には、ガラス中空軸を、回転駆動装置のハブ内に位置する緊締インサートに後から挿入したり、又は緊締インサートから後で引き出すことができるようになっている。
【0016】
本発明の特に有利な改良では、ガラス中空軸として形成された蒸気通流部が、一方の第1の軸端部において蒸発容器を支持しており且つ他方の第2の軸端部でもって、冷却器の接続管片により画成された接続開口に突入しており、この場合、ガラス中空軸にはシールリングが密着しており、このシールリングは、接続管片と駆動装置ケーシングとの間に締め込まれていて、外側のリングゾーンが締め込み縁部として設けられたリングディスクとして形成されており、このリングディスクは、ガラス中空軸の長手方向に曲げられた内側のリングゾーンを有しており、この場合、シールリングは、ガラス中空軸の長手方向に方向付けられたリングディスクの部分領域でもって、ガラス中空軸にばね弾性的に密着している。
【0017】
本発明によるロータリーエバポレータに設けられたシールリングは、外側のリングゾーンが締め込み縁部として働くリングディスクとして形成されており、このリングディスクは締め込み縁部でもって、冷却器に通じる接続管片と、回転駆動装置の駆動装置ケーシングとの間に締め込まれるようになっている。リングディスクは、ガラス中空軸の長手方向に曲げられた内側のリングゾーンを有しているので、シールリングはガラス中空軸の長手方向に方向付けられたリングディスクの部分領域でもって、ガラス中空軸にばね弾性的に密着することができる。つまり、本発明によるロータリーエバポレータで使用される滑りリングシールのシールリングは、簡単な構成及びシンプルな形状という点において優れており、これにより、摩耗部材として必要とされるこのシールリングの製造にかかる手間が、小さく抑えられる。内側のリングゾーンは、少なくとも環状の部分領域でもって、予荷重を加えられた状態でガラス中空軸に密着しているので、このリングゾーンの範囲内のシールリングの摩擦に起因する摩耗は事実上、自動的に相殺されるようになっている。
【0018】
滑りリングシールが、冷却器に通じる接続管片とガラス中空軸との間の領域を確実且つ永続的にシールすることができるようにするために、接続管片及び/又は駆動装置ケーシングに少なくとも1つの環状溝又は環状隆起部が設けられており、且つこの少なくとも1つの環状溝及び/又は少なくとも1つの環状隆起部に、とりわけシールリングの締め込み縁部に設けられた相補的な環状溝又は環状隆起部が対応配置されていると、有利である。接続管片と駆動装置ケーシングとの間の締め込みリングの所望の位置を保証するために、シールリングの締め込み縁部に対応配置され且つ相補的に形成される環状隆起部又は環状溝は、必須ではないが、有利である。
【0019】
小さな製造手間は、シールリングが一体的に形成されていると、更に促進される。
【0020】
本発明の有利な構成では、シールリングが材料コンパウンドとして、特にテフロンコンパウンドとして製造されている。特にテフロンコンパウンドとして製造されたシールリングは、低い摩擦係数、並びに長い保守整備間隔をも可能にすることのできる、減少された摩耗という点において優れている。
【0021】
接続管片と駆動装置ケーシングとの間に締め込まれた締め込み縁部の領域においても良好なシールは、接続管片及び/又は駆動装置ケーシングが、少なくとも1つの環状溝を有しており、この環状溝に、接続管片及び/又は駆動装置ケーシングに設けられた相補的な環状溝又は相補的な環状隆起部が対応配置されていると、促進される。
【0022】
シールリングは特に簡単な形状で、縦断面を例えばU字形、L字形又はj字形に形成されている。
【0023】
この場合、シールリングの環状開口を取り囲んでいる内側の縁部領域が、ガラス中空軸から離反する方向に曲げられていると、シールリングは縦断面で見て例えばj字形、又は特にU字形の形状を有している。
【0024】
本発明の別の特徴は、請求項並びに図面に関連した、本発明による実施形態の以下の説明に記載されている。個々の特徴は、本発明による実施形態においてそれぞれで、又は複数で実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ロータリーエバポレータの全体斜視図であり、該ロータリーエバポレータは、装置スタンドを有しており、該装置スタンドからガイドタワーが突出しており、このガイドタワーに沿って側方を、ホルダとして用いられるキャリッジが移動可能であり、該キャリッジは、恒温槽に浸漬可能な蒸発容器を備えたガラス構造体を支持しており、前記蒸発容器には、恒温槽内の蒸発容器を、該蒸発容器の長手方向軸線を中心として回転させる、回転駆動装置が対応配置されている。
図2図1に示したロータリーエバポレータのガイドタワーの横断面斜視図である。
図3】ホルダとして用いられるキャリッジをガイドタワーに沿って移動させるための、ガイドタワー内に配置された行程駆動装置の部分を概略的に示した図である。
図4】ガイドタワーに沿って移動可能であり且つガラス構造体を支持するキャリッジの縦断面図であり、該キャリッジに、水平方向の旋回軸線を中心として旋回可能な回転駆動装置が設けられており、該回転駆動装置によって、ガラス構造体の蒸発容器が、ロータリーエバポレータの恒温槽内で回転できるようになっている。
図5図2図4に示したガイドタワーのキャリッジの領域を詳細に示す斜視図であり、行程高さを表示するためにガイドタワーに設けられた目盛り付け部と、回転駆動装置に関して選択された旋回角度を表示するためにキャリッジに設けられた目盛り付け部が認識される。
図6図4に示した回転駆動装置の縦断面図であって、該回転駆動装置は、回転駆動可能なハブを有しており、該ハブを、ガラス中空軸として形成された蒸気通流部が貫通しており、前記ガラス中空軸は、その一方の軸端部に蒸発容器を支持しており且つ他方の軸端部でもって、冷却器に通じる接続管片内に開口しており、回転駆動装置の回転駆動可能なハブの回転運動は、ガラス中空軸に被せ嵌められたスリーブ状の緊締インサートによってガラス中空軸に伝達される。
図7図4及び図6に示した回転駆動装置の、ガラス中空軸に被せ嵌められた緊締インサートの領域を縦断して詳細に示した図である。
図8図6及び図7に示した緊締インサートの斜視図である。
図9】回転駆動装置のハブを貫通しているガラス中空軸の、滑りリングシールとして用いられるシールリングの領域を示した図であり、該シールリングは、外側の締め込み縁部でもって、冷却器側の接続管片と、回転駆動装置の駆動装置ケーシングとの間に締め込まれており、且つ内側のリングゾーンでもって、回転するガラス中空軸に密着している。
図10図9に示したシールリングの斜視図である。
図11図1に示したロータリーエバポレータの、遠隔操作部として形成された操作部材の領域を詳細に示した図である。
【0026】
以下に、本発明の実施形態を図面につき詳しく説明する。
【0027】
図1には、ロータリーエバポレータ1が斜視図で示されている。このロータリーエバポレータ1は、装置スタンド2を有していて、この装置スタンド2は、ロータリーエバポレータ1の構造を支持している。装置スタンド2上には、鉛直方向に方向付けられた長手方向軸線を有するガイドタワー3が突出している。ロータリーエバポレータ1は、ガラス構造体4を有していて、このガラス構造体4は、本実施形態では蒸発装置フラスコとして形成された蒸発容器5と、冷却器6と、冷却器6に取り外し可能に結合された受け容器7とを有している。この場合、蒸発容器5は、蒸気通流部として用いられるガラス中空軸8(図6図7及び図9に詳細に図示)に保持されており、このガラス中空軸8の、蒸発容器5とは反対の側の軸端部は、冷却器6の接続管片9内に開口している。
【0028】
ロータリーエバポレータ1は、本実施形態ではヒーティングバスとして形成された恒温槽10を有しており、この恒温槽10内に蒸発容器5が部分的に浸漬される。蒸発容器5の部分領域を恒温槽10内で位置決めできるようにするため、且つ必要に応じて蒸発容器5を恒温槽10から取り出すことにより、蒸発プロセスを中断できるようにするために、ガラス構造体4は蒸発容器5と共に、ガイドタワー3に沿って移動可能に保持されている。
【0029】
本実施形態ではヒーティングバスとして形成された恒温槽10内には、例えば加熱された所定量の水又は油が位置している。恒温槽10の加熱された水量又は油量内で、フラスコ状の内室に蒸発させるべき溶液を含む蒸発容器5が回転する。前記溶液は、回転している蒸発容器5の加熱された容器内壁に沿って薄い液膜として分配され、薄い液膜は、そこで容易に蒸発可能になっている。蒸発容器5の回転によって、沸騰遅滞(過熱)も回避され、恒温槽10内のヒーティングバス10に関連して、蒸発させるべき媒体の均一な温度分布が達成される。ヒーティングバスを付加的に混合することにより、効果的な加熱温度の調整が著しく容易になる。ユーザに対する危険に結びつき、媒体中の不都合な化学反応を惹起する恐れもある高い温度を回避するために、蒸発プロセスは、プロセス空間の真空引きにより支援される。蒸発装置の性能は、ヒーティングバス温度、蒸発容器5の大きさと回転速度、並びに調節される真空圧に基づき可変である。媒体の温度(熱)の一般的な不変性(熱慣性)とプロセスとに基づき、蒸発は一定の温度において、主として圧力を介して制御される。プロセス空間を真空引きできるようにするため、且つ冷却媒体流出入部6を実現するために、ロータリーエバポレータ1の、蒸発容器5も含むガラス構造体4には、少なくとも1つのホース接続部、通常は複数のホース接続部11,12,13が設けられていて、これらのホース接続部11,12,13は、それぞれフレキシブルなホース導管14,15,16を介して、真空ポンプ若しくは冷却媒体流出入部6に接続されている。
【0030】
図2に示した横断面斜視図から判るように、ガイドタワー3は、その長手方向延在部に方向付けられた通路17を有しており、この通路17内には、ガラス構造体4に接続された少なくとも1つの流体導管の導管部分が設けられている。少なくとも1つの流体導管は、この流体導管に対応配置されたホース接続部(ここでは詳細に図示せず)で終わっており、このホース接続部は、ロータリーエバポレータ1の、ガイドタワー3の自由端部とは反対側の、底部側の領域に配置されている。つまり、少なくとも1つの流体導管の比較的長い導管部分が、ガイドタワー3の通路17内を案内されているので、ガイドタワー3の外側に露出して敷設される、本実施形態ではホース導管14,15又は16として形成された前記流体導管の導管部分は、比較的短く保たれる。これにより、これらの露出して設けられたホース導管14,15,16に誤って引っかかるリスクは最小限に抑えられている。少なくとも1つの流体導管は、ガイドタワー3の内部で下方に向かって案内されるので、これらの流体導管の接続部は、ロータリーエバポレータ1の、ガイドタワー3の自由端部とは反対側の底部側の領域において、構造体の不動部分に配置され得る。本実施形態において図示したロータリーエバポレータ1の場合、流体導管の接続部は、装置スタンド2のボトムプレート内に配置されている。
【0031】
ガイドタワー3の通路17内で、例えば真空ポンプに通じる流体導管並びに冷却媒体流出入部として設けられた流体導管、延いては複数の流体導管を案内できるようにするために、通路17内を案内される導管部分は、ホース導管18,19,20として形成されている。この場合、通路17内を案内される、導管部分として用いられるホース導管18,19,20は、底部側の第1のホース接続部とは反対側のホース部分端部においても、ガイドタワー3の自由端部領域に配置された、第2のホース接続部(やはり図示せず)に接続されている。
【0032】
ガラス構造体4を鉛直方向に移動できるようにするため、且つガラス構造体4の蒸発容器5を恒温槽10内に降下させると共に、恒温槽10から再び持ち上げられるようにするために、ガラス構造体4は、キャリッジとして形成されているか又はキャリッジ21を有するホルダに保持されている。キャリッジ21は、ガイドタワー3の側方に沿って移動可能である。つまり、ガイドタワー3は不動のままなので、蒸発容器5の昇降時に運動する構成部材は最小限に抑えられる。
【0033】
ガイドタワー3は、少なくとも2つの成形部分22,23から形成されていて、これらの成形部分22,23は、ガイドタワー3の長手方向延在部に方向付けられた分離位置において、有利には解離可能に互いに結合されている。この場合、ガイドタワー3は、中空成形部材として形成された成形部分22を有しており、前記中空成形部材の少なくとも1つの中空成形内室が、ガイドタワー3の通路17を形成している。ガイドタワー3の成形部分22,23は、中空室24を画成しており、この中空室24は、鉛直方向に方向付けられたガイドスリット25に沿って開放されて形成されている。ガイドスリット25は、成形部分22,23間の分離位置に配置されていて、前記成形部分22,23の隣接する小幅縁部26,27により画成されている。中空室24内には、キャリッジ21に対応配置されたキャリッジガイド28が設けられている。このキャリッジガイド28は、ガイド方向に対して横方向に互いに隔てられた、横断面円形の2つのガイドバー29,30を有しており、これらのガイドバー29,30は、キャリッジ21に設けられたガイド孔31,32により周面を取り囲まれて係合される。
【0034】
キャリッジ21は、少なくとも1つの結合アーム33を支持しており、この結合アーム33は、ガイドスリット25を貫通しており且つガラス構造体4に結合されている。キャリッジ21は、持ち上げ位置から少なくとも1つのガススプリング34の戻り力に抗して降下位置に移動可能である。キャリッジ21を移動させるために、行程駆動装置として働くウィンチ35が設けられていて、このウィンチ35は、ガイドタワー3に対して定置でロータリーエバポレータ1の構造体に保持されている。ウィンチ35は、ロープドラム36に巻き取られるロープ37を有しており、このロープ37はキャリッジ21に沿ってガイドされており、これにより、ロープ37の巻き取り及び繰り出し、並びにウィンチ35上に張り出しているロープ部分の収縮及び伸長によって、キャリッジ21を戻り力により持ち上げるか、又は戻り力に抗して降下させることができるようになっている。停電時には、ウィンチ35が巻き取られたロープ37を解放して、戻り力がキャリッジ21を持ち上げ位置に移動させることができるようになっている。つまり、キャリッジ21は停電時に自動的に持ち上げ位置に移動させられ、この持ち上げ位置において蒸発容器5は恒温槽10から隔てられた上方に位置することになるので、蒸発容器5内で進行しているプロセスが用心のために中断され、蒸発させるべき液体の管理されない過熱が確実に阻止されるようになっている。
【0035】
図3において、ウィンチ35のロープ37は滑車装置38を介してガイドされており、この滑車装置38は、互いに間隔を置いて配置された変向ローラ39,40を有している。滑車装置38は、本実施形態では所定の伝達比を有している。ウィンチ35は、電気的な駆動装置41としてステップモータを有している。このステップモータは、比較的高いトルクを有しているので、付加的な伝動装置は不要である。電気的な駆動装置41の駆動軸は、モータ遮断時にはほぼトルクがかけられていない状態になるので、電流中断時でも、戻り力として働く少なくとも1つのガススプリング34がキャリッジ21を上側の持ち上げ位置に移動させることにより、確実な緊急遮断を保証することができる。この場合、少なくとも1つのガススプリング34は、キャリッジ21を上側の持ち上げ位置において上側の端部ストッパに対して押圧する。調節可能な下側のストッパによって、恒温槽10のヒーティングバス内の蒸発容器5の浸漬深さを、選択された蒸発容器5の大きさ及び充填量に関連して調節することができる。電気的な駆動装置41のステップ制御によって、キャリッジ21はあらゆる所望の行程位置に移動させられるようになっている。この場合、電気的な駆動装置41のステップ制御の基準として、上側の端部ストッパが用いられる。
【0036】
ウィンチ35と、電気的な駆動装置41と、滑車装置38とにより形成される行程機構は、プロセスの開始時及び終了時の蒸発容器5の昇降、並びに蒸発容器5のヒーティングバス内での浸漬深さの微調整に用いられ、大型の蒸発容器5を使用した場合でも、恒温槽10からの蒸発容器5の完全な持ち上げを保証する、比較的長い行程距離の点において優れている。ウィンチ35に対応配置された電気的な駆動装置41の回転数は可変であり、少なくとも2つの回転数段階を有している。高い回転数が、蒸発容器5を迅速に昇降させる、キャリッジ21の高い走行速度を保証するのに対して、より低い回転数では、蒸発容器5の浸漬深さを微調整するために設定された、キャリッジ21のより低い速度が得られる。
【0037】
図4から、キャリッジ21が、本実施形態ではキャリッジ21にガラス構造体4を固定するために用いられるホルダの構成部材である、ということが明らかである。図1及び図6により詳細に図示されたガラス構造体4、特にその蒸発容器5は、水平方向の旋回軸線42を中心として旋回可能に、ホルダに保持されている。このためにホルダは、本実施形態ではキャリッジ21として形成された保持部分を有しており、この保持部分に、蒸発容器5に結合可能な支持部分43が、水平方向の旋回軸線42を中心として旋回可能に保持されている。選択された旋回位置を調節及び固定するために、スピンドル駆動装置44が設けられており、このスピンドル駆動装置44は、セルフロック式のスピンドルねじ山46を備えた調節スピンドル45を有している。この調節スピンドル45を回動させることにより、キャリッジ21として形成されたホルダの保持部分と支持部分43との間の旋回角度が変えられて、支持部分43に取り付けられた蒸発容器5の旋回位置を変化させることができるようになっている。調節スピンドル45はセルフロック式のスピンドルねじ山46を有しているので、場合によっては誤って外される付加的なロックは必要ない。スピンドル駆動装置44は、ロータリーエバポレータ1を種々様々な蒸発容器の異なる寸法に適合させることを可能にする。ホルダの支持部分43は、重心が大幅に中心位置から離れているガラス構造体4の全体を支持している。スピンドルねじ山46がセルフロック式でないと、択一的なロックを解除した際に、ガラス構造体が制止されずに下側のストッパに落下して破損し、その際に、真空状態のガラス構造体に付加的に衝撃が加わる危険の生じる恐れがある。
【0038】
図4で判るように、調節スピンドル45は、キャリッジ21として形成された保持部分と、支持部分43とに、有利には水平方向の旋回軸線47,48を中心として旋回可能に保持されている。キャリッジ21として形成された保持部分に旋回可能に、しかし軸方向には移動不能に支承された調節スピンドル45は、支持部分43に旋回軸線48を中心として旋回可能に保持されたスピンドルナット49と協働する。調節スピンドル45は、一方のスピンドル端部に、操作部として用いられる調整輪50を有している。調節ねじ山46のねじ山タイプとピッチを選択することにより、調節速度と消費力とが最適化され得る。調節ねじ山46はセルフロック式に形成されているので、解除時にガラス構造体が誤ってストッパに落下して破損する危険をはらんだ別のロックを一切必要としない。蒸発容器5の傾動角度を無段階に変化させることができるスピンドル駆動装置44は、調整輪50を片手だけでも操作することができる。恒温槽10内への蒸発容器5の可変の浸漬深さと、以下で更に詳しく説明する恒温槽10の移動の可能性とに関連して、図4に示した旋回機構は、充填量の変更に際して、幅広い範囲の異なる大きさの蒸発容器5を使用可能にする。
【0039】
図1図5との比較から判るように、ガイドタワー3に沿って鉛直方向に移動可能なキャリッジ21は、ガイドタワー3の外周面に設けられた目盛り52を有する目盛り付け部51を用いて位置決めすることができるようになっており、前記目盛り52は、キャリッジ21に位置する指針と協働する。目盛り52が、ガイドタワー3のガイドスリット25に隣接する外側の壁の縁部領域に配置されている一方で、隣接するキャリッジ21の縁部53は、その時々の行程高さの指針として用いられる。
【0040】
支持部分43を位置決めするために、別の目盛り付け部54が設けられていて、この別の目盛り付け部54は、保持部分として用いられるキャリッジ21と、支持部分43との間に設けられている。前記目盛り付け部54も、本実施形態ではキャリッジ21に設けられた目盛り55を有している。この目盛り55は、支持部分43に配置された指針に対応配置されている。この指針は、本実施形態では隣接する支持部分43の縁部56によって形成されている。ホルダによりガイドタワー3に保持されたガラス構造体4のその時々の旋回角度は、目盛り付け部54を用いて測定することができる。目盛り付け部51,54は、実験装置の再現性を著しく容易にし、且つ図示のロータリーエバポレータ1の簡単な操作を促進するものである。
【0041】
図6には、ロータリーエバポレータ1の、ホルダの支持部分43に設けられた回転駆動装置57の領域の詳細な長手方向断面図が示されている。回転駆動装置57は、ハブ58を有しており、このハブ58は、電気的な駆動モータによって回転駆動可能である。回転駆動装置57の駆動モータ(詳細には図示せず)は、本実施形態では歯付きベルト伝動部材を備えた直流ブラシレスモータとして形成されている。ハブ58の回転運動を、蒸発容器5を支持しているガラス中空軸8に伝達できるようにするために、このガラス中空軸8には、緊締インサート59(図7及び図8に詳細に図示)が被せ嵌められている。ガラス中空軸8をハブ58内で緊締するために設けられた緊締インサート59は、スリーブ状の基本形状を有している。更に緊締インサート59は、長手方向に方向付けられた複数の支持バー60を有しており、これらの支持バー60は、緊締インサート59の周方向に方向付けられた複数の結合ウェブ61,62を介して互いに結合されている。結合ウェブ61,62は、隣接する支持バー60の、緊締インサート59の一方の側又は他方の側に配置されたバー端部を交互に結合している。つまり、各支持バー60は、一方の隣接する支持バーに、緊締インサート59の一方の側に配置され且つ一方の周方向に張り出した結合ウェブ61を介して結合されている一方で、他方の隣接する支持バーには、緊締インサート59の他方の側に設けられ且つ逆の周方向に張り出した結合ウェブ62を介して結合されている。この場合、緊締インサート59の向かい合う両端部に設けられた結合ウェブ61,62は、緊締インサート59の互いに隔てられた緊締部分K1,K2を形成している。これらの緊締部分K1,K2を形成している結合ウェブ61,62は、緊締インサート59の自由端部に向かって先細になっていて、緊締部分K1,K2は、それぞれ緊締インサート59の長手方向軸線に対して相対的に傾斜された少なくとも1つの緊締斜面63,64を有しており、これらの緊締斜面63,64は、該緊締斜面63,64に対応配置された回転駆動装置57の対応斜面65若しくは66と協働して、緊締インサート59を軸方向に押圧することによって、緊締部分K1,K2をガラス中空軸8に押し付けるようになっている。緊締インサート59は、支持バー60と、これらの支持バー60の向かい合う両端部領域に交互に設けられた結合ウェブ61,62とに基づいて、ループ状又はメアンダ(蛇行)状の外側輪郭を有していること、及び緊締インサート59の前記外側輪郭は、必要に応じて簡単に周囲長さを広げられることから、緊締インサート59は、ガラス中空軸8上で簡単に位置決めすることができるようになっている。
【0042】
図6と、符号VIIを付した図6の範囲を示す図7の詳細な縦断面図とから、緊締インサート59は、ハブ58の蒸発容器5に面した側からハブ58内に、ハブ58の内周面に対応斜面65として形成された環状段部に到達するまで挿入可能であり、緊締インサート59を軸方向に押圧するために、ハブ58には緊締ねじリング67が取り外し可能にねじ被せられるようになっていることが判る。緊締ねじリング67は、ハブ58を越えて突出している緊締インサート59の緊締部分K2を、緊締ねじリング67の内周面に設けられた対応斜面66によって押圧する。
【0043】
緊締インサート59は、支持バー60と、緊締インサート59の向かい合う両端部領域に交互に設けられた結合ウェブ61,62とに基づいて、ループ状又はメアンダ状の外側輪郭を有していること、及び緊締インサート59の前記外側輪郭は、必要に応じて簡単に周囲長さを広げられることから、緊締インサート59は、ガラス中空軸8上で簡単に位置決めされるようになっている。緊締インサート59の柔軟性は、軸方向に延びる複数の細い支持バー60と、これらの支持バー60を結合している複数の結合ウェブ61,62とによって達成される。これに対して、力伝達領域、つまり緊締部分K1,K2において、緊締インサート59は大面積に形成されており、これにより、蒸気通流部として用いられるガラス中空軸8の面状の緊締が達成されることになる。発生する摩擦接続が、回転駆動装置57のハブ58内でガラス中空軸8を遊び無く位置固定する。緊締インサート59の外周面には、本実施形態では(中断された)リングフランジとして形成された、周方向に延在する突起92が設けられていて、この突起92は、ハブ58の内周面に設けられた環状溝93に係合して、緊締インサート59を軸方向でハブ58内に位置固定している。つまり、ガラス中空軸8を取り外す際には、緊締インサート59はハブ58内に残留しており、ガラス中空軸8を回転駆動装置57のハブ58から取り外すためには、単に緊締ねじリング67が緩められるだけでよく、緊締ねじリング67を取り外す必要はない。
【0044】
図6及び図7では、ガラス中空軸8が、その外周面に、環状溝として形成された凹状成形部68を有していて、この凹状成形部68には、緊締インサート59の内周面に設けられた、環状隆起部として形成された凸状成形部69が対応配置されていることが判る。緊締インサート59に設けられた凸状成形部69は、ハブ58を越えて突出している緊締インサート59の部分領域内で、特にハブ58を越えて突出している緊締部分K2の内周面に配置されているので、例えば蒸発容器5の交換に伴い、ガラス中空軸8の交換も必要となる場合には、ハブ58内に位置している緊締インサート59に後からガラス中空軸8を挿入すること、又は前記緊締インサート59からガラス中空軸8を後から引き出すこともできるようになっている。
【0045】
図6では、蒸気通流部として用いられるガラス中空軸8が、回転駆動装置57のハブ58を貫通していて、ハブ58とガラス中空軸8との間に位置する緊締インサート59を介してハブ58内で緊締されていることが明らかであり、ハブ58の長手方向軸線を中心とした、回転駆動装置57のハブ58の回転は、緊締インサート59と、ガラス中空軸8と、このガラス中空軸8に相対回動不能に結合された蒸発容器5の、相応の回転を生ぜしめる。ハブ58と、緊締インサート59と、ガラス中空軸8とは、互いに同軸的に配置されている。ガラス中空軸8と蒸発容器5との間の相対回動不能な結合は、摺り合わせジョイントにより保証され、この摺り合わせジョイントは、有利には円錐摺り合わせジョイントとして形成されており、この円錐摺り合わせジョイントでは、摺り合わせコア94が形成されている、ガラス中空軸8の蒸発容器5に面した側が、蒸発容器5の容器ネックに形成された摺り合わせスリーブ内に係合するようになっている。ガラス中空軸8と蒸発容器5との間の摺り合わせジョイントを位置固定するために、付加的な摺り合わせクリップ70(図1参照)が設けられていてよい。
【0046】
図6では、緊締ねじリング67がねじ山71を有しており、このねじ山71は、押圧ねじリング73に設けられた対応ねじ山72と協働することが判る。押圧ねじリング73を緊締ねじリング67からねじ外すと、押圧ねじリング73は、蒸発容器5と、その容器ネックとを押圧し、これにより、蒸発容器5と、蒸発容器5を支持しているガラス中空軸8との間のクリップジョイント又は摺り合わせジョイントが外されるようになっている。
【0047】
蒸気通流部として形成されたガラス中空軸8は、蒸発容器5とは反対の側の軸端部でもって、冷却器6に通じる接続管片9の接続開口74の内部に達しており且つこの接続管片9に対して滑りリングシール(図6図9及び図10に詳細に図示)によってシールされている。この滑りリングシールは、接続管片9と、回転駆動装置57の駆動装置ケーシング77との間に締め込まれており且つ回転するガラス中空軸8に密着しているシールリング76により形成される。シールリング76は、リングディスクとして形成されていて、リングディスクの外側のリングゾーン78が締め込み縁部として働く。リングディスクは、ガラス中空軸8の長手方向延在部において曲げられたリングゾーン79を有しており、これにより、シールリング76は、ガラス中空軸8の長手方向に方向付けられたリングディスクの部分領域Tでもって密着するようになっている。この場合、ガラス中空軸8の長手方向に方向付けられたリングディスクの部分領域Tは、ガラス中空軸8にばね弾性的に当接しているので、この領域では常に一貫して良好で永続的なシールが保証されている。シールリング76は、一体的に形成されており且つ小さな手間で、材料コンパウンドとして製造可能である。この場合、低い摩擦係数及び減少された摩耗の点において優れたテフロンコンパウンドが好適である。
【0048】
長手方向断面がj字形又はu字形に形成されており、且つリング開口を画成している内縁95が、ガラス中空軸8とは逆方向に、外側に向かって曲げられていてよいシールリング76は、その締め込み縁部に少なくとも1つの環状溝80を有していて、この環状溝80には、隣接する駆動装置ケーシング77の端縁部に設けられた、相補的な環状隆起部81が対応配置されていてよい。
【0049】
図9において実線で示された内側のリングゾーン79と、破線で示された内側のリングゾーン79との比較により、このリングゾーン79はガラス中空軸8に向かう方向に予荷重を加えられて当て付けられており、これにより、摩耗時にはガラス中空軸8に当て付けられているシールリング76の自動的な後調整が行われる、ということが示唆されている。
【0050】
緊締インサート59は、有利にはプラスチック部品として、特にプラスチック射出成形部品として形成されている。シールリング76の内側のリングゾーン79の領域において、ガラス中空軸8のガラスと、特にプラスチックから製造された緊締インサート59と、回転駆動装置57の有利には金属のハブ58とは、押圧力を加えられた状態で互いに接触し合うことから、前記個別部材8,59,58のこのような材料選択は、互いに回転する個別部材の柔軟性と、剛性と、摩擦接続性の理想的な組み合わせを成すものとなっている。
【0051】
回転駆動装置57には、モータ制御装置(詳しくは図示せず)が対応配置されていて、このモータ制御装置は、有利には特に回転方向逆転手段を備えた回転数無段調節器を有している。特に乾燥プロセス中の、容器内壁における固体残留物の付着を回避するために、回転方向を周期的に逆転させることを想定した運転モードが有効であってよい。回転運動の遮断に際して、ロータリーエバポレータ1の安全遮断を生ぜしめるために、モータ電流の監視装置が設けられている。回転運動の開始用に、回転駆動装置57のソフトスタート装置が設けられており、このために回転駆動装置57のモータ制御装置には、相応の始動特性曲線がメモリされており、この始動特性曲線は、例えばモータ電流の制限を想定したものであってよい。
【0052】
恒温槽10は、この恒温槽10内の液体バスの温度調節のため、及び特に蒸発容器5内への制御された熱供給のために用いられる。このために恒温槽10は、電気的な温度調節装置と、特に電気的な加熱装置とを有している。温度調節液として用いられるオイル又は水が、蒸発容器5の回転により循環させられ、これにより、均一な温度分布が保証されることになる。バスの温度の不変性が、蒸発容器5内の沸騰開始時の加熱温度を安定させる(蒸発冷却)。
【0053】
恒温槽10に簡単に充填し且つ恒温槽10を簡単に空にすることができるようにするために、恒温槽10は、ロータリーエバポレータ1の装置スタンド2に取り外し可能に載置されている。恒温槽10が取り外された状態でも、ロータリーエバポレータ1が傾動しないようにするために、装置スタンド2は十分に安定している。装置スタンド2又は恒温槽10には少なくとも1つの位置決め突起が設けられていて、この位置決め突起は、恒温槽10若しくは装置スタンド2に対応配置された位置決め凹部と協働する。ロータリーエバポレータ1は、有利には各1つの位置決め凹部と協働する、例えばピン状に突出した2つの位置決め突起を有していて、これらの位置決め突起のうちの一方は、恒温槽10に設けられた温度調節装置と、装置スタンド2に設けられた電気的な接続部との電気的な接触接続用に設けられており、前記位置決め突起のうちの他方は、ロータリーエバポレータ1と、恒温槽10に組み込まれた温度センサとの間の信号接続装置の接触接続用に設けられている。
【0054】
回転駆動装置57の回転軸線に対してほぼ軸線平行に移動可能な位置決め突起と位置決め凹部の領域には、電気的なカップリングが配置されていて、この電気的なカップリングは、恒温槽10に設けられた温度調節装置と、装置スタンド2に設けられた電気的な接続部との電気的な接触接続用に設けられている。蒸発容器5の位置を、装置スタンド2に対して相対的に変化させるため、及びロータリーエバポレータ1において異なる大きさの蒸発容器5を使用できるようにするために、装置スタンド2に設けられた少なくとも1つの位置決め突起又は位置決め凹部は、スライドガイド(詳しくは図示せず)によって移動可能に、装置スタンド2に保持されている。前記スライドガイドは、テレスコープ状に互いに内外でガイドされる少なくとも2つのスライド部分を有していて、これらのスライド部分のうちの一方は、装置スタンド2に不動に保持されており、且つ前記スライド部分のうちの他方は、少なくとも1つの位置決め突起又は少なくとも1つの位置決め凹部を支持している。
【0055】
図1から判るように、恒温槽10は、少なくともその内法の内側横断面において、有利には外側横断面においても、ほぼ三角形の基本形状を有している。恒温槽10内に位置する温度調節液が、運転中及び恒温槽10の搬送時にこぼれないようにするために、恒温槽10は、注ぎ口87の領域を除いて鉛直方向に方向付けられた、つまり概ね垂直な容器内壁88を有している。注ぎ口87は、三角形の基本形状の稜線75の延長部に設けられており、この場合、稜線75は、蒸発容器5に面した方向に方向付けられている。恒温槽10の外周面には、複数の人間工学的な取っ手凹部が設けられていて、これらの取っ手凹部において、恒温槽10を簡単に把持することができるようになっている。有利には、少なくとも1つの容器内壁88に設けられた目盛りが、温度調節液の充填高さを表示する。恒温槽10は、回転軸線に沿って移動可能なので、複数の広範な蒸発容器を使用することができるようになっている。比較的大型の蒸発容器5も恒温槽10に浸漬可能である。なぜならば、恒温槽10は相応して深く形成されているからである。恒温槽10には、透明なカバーフード89を被せることができる。このカバーフード89は、恒温槽10の上側の小幅縁部に載置可能な少なくとも1つの第1のフード部分90を有していて、この第1のフード部分90には少なくとも1つの第2のフード部分91が、旋回可能又は開放可能に保持されている。運転中は大抵真空状態にある蒸発容器5は、液体バス内での熱伝達を改良する目的で、コーティングされていないガラスから製造されていること、及び有利にはガラス構造体4のその他のコンポーネントだけが、割れにくいガラス又は破片防止手段としてコーティングされたガラスから成っていることから、カバーフード89は、破片防止手段として用いられる。
【0056】
恒温槽10は、充填レベルセンサを有しており、この充填レベルセンサは、調量ポンプに制御装置を介して接続されており、調量ポンプは、温度調節液リザーバに接続されている。充填レベルセンサは、温度調節液の最小量を下回った場合に、緊急遮断を生ぜしめる充填レベル監視装置の構成部材である。付加的に、又はその代わりに、充填レベルセンサは、蒸発損失を相殺するための充填レベル調整器の構成部材であってもよい。
【0057】
図1図11との比較から判るように、ロータリーエバポレータ1の操作は、中央操作ユニット82を介して行われ、この中央操作ユニット82は、あらゆる技術的な機能性に対して、とりわけ回転駆動装置57、行程駆動装置及び恒温槽10に設けられた温度調節装置に対しても、直接的なアクセスを可能にする。
【0058】
ロータリーエバポレータ1が保護されて、例えば排出口内に位置している場合でも、ロータリーエバポレータ1を操作できるようにするために、操作ユニット82は、ロータリーエバポレータ1から取り外し可能で有利にはワイヤレスの遠隔操作ユニットとして形成されている。例えばUSBインタフェースとして形成されていてよいデータ送信インタフェースが、プロセス制御及び/又はプロセスパラメータのドキュメンテーションを、外部のデータ処理装置、特にPCにおいて可能にする。ワイヤレスの遠隔操作装置として使用可能な遠隔操作ユニット82は、ディスプレイ83を有していて、このディスプレイ83は、有利には運転モードに適合された直観的な操作エレメントを備えたタッチスクリーンとして形成されている。操作ユニット82には、本実施形態では押しボタン及びダイヤルとして形成された操作ボタン84が、例えば数値の入力に利用可能な別の操作エレメントとして設けられている。
【0059】
ロータリーエバポレータ1には、操作ユニット82用のコンソール又はトレイ85が設けられていて、このコンソール又はトレイ85は、操作ユニット82が置かれた場合に操作エレメント及びディスプレイ83の最適な操作高さを保証するものであり、このためにコンソール又はトレイ85は、装置スタンド2から突出している。本発明によるロータリーエバポレータは選択的に、コンソール85上の遠隔操作ユニット82により直接に操作されるか、又は遠隔操作ユニット82を介して距離を置いて操作することもできる。緊急停止装置としても使用可能な電源スイッチ86は、ロータリーエバポレータ1の前面に、良好にアプローチ可能に配置されている。
【0060】
タッチスクリーンとして形成されたディスプレイ83は、例えば液体バスにおける実際温度、恒温槽10に組み込まれた温度調節装置の目標温度、回転駆動装置の回転数の表示、又は同様のプロセスパラメータの表示に用いられる。付加的に、又はその代わりに、ディスプレイ83に表示される制御機能を選択できるようにし且つ/又はプロセスパラメータを変更できるようにするために、操作ボタン84を使用することもできる。有利にはロータリーエバポレータ1内に位置する、回転駆動装置57用のモータ制御装置も含まれていてよい制御装置の操作をできるだけ簡単にするために、この制御装置の個々の機能は、ディスプレイ83に表示可能な1つのメニュー構造内に配置されており、この場合、個々のメニューに基づくスクロールは、操作ボタン84及び/又は場合によってはタッチスクリーンとして形成されたディスプレイ83を介して行われる。
【0061】
ロータリーエバポレータ1において、その装置スタンド2から突出しているトレイ又はコンソール85は、遠隔操作ユニット82を載置又は保管するために設けられている。トレイ又はコンソール85は、操作ユニット82と解離可能に接続可能な、少なくとも1つのコンタクトシステムを有しており、このコンタクトシステムは、操作ユニット82内に位置する蓄電池の充電系に電力を供給し、且つ有利には操作ユニット82の少なくとも1つの操作エレメント83,84と制御装置との間の、導体ベースの制御接続部に、ワイヤレスの制御接続の遮断状態で電力を供給するために設けられている。操作ユニット82がトレイ又はコンソール85に載置されると、ワイヤレスの制御接続は一時的に、操作ユニット82に設けられた少なくとも1つの操作エレメント83,84と制御装置との間の、導体ベースの制御接続を優先するように設定される。
【0062】
ロータリーエバポレータ1の制御装置は、緊急停止機能も有しており、緊急停止機能の発動は、恒温槽10内の温度調節装置への電力供給を中断し、且つガイドタワー3に移動可能に保持されたガラス構造体4の休止位置への上昇運動を生ぜしめる。この場合、制御装置にメモリされた緊急停止機能は、操作ユニット82に電流が最早供給されない場合、又は遠隔操作ユニット82とロータリーエバポレータ1との間のワイヤレスの制御接続が中断された場合に、例えば操作ユニット82に設けられた特別な緊急停止スイッチ又はロータリーエバポレータ1の電源スイッチ86において手動で発動されるか、又は自動でも発動されるようになっている。恒温槽10内の温度調節装置への電力供給が中断されるので、実験装置が引き続き制御されずに加熱される恐れはない。蒸発容器5も、液体バス内に位置する運転位置から、恒温槽10の外側に設けられた休止位置に移動されるので、蒸発容器5内の液体が液体バス中の余熱によって不本意に加熱される恐れはない。
【0063】
操作ユニット82のディスプレイ83上では、例えば恒温槽10内に位置する温度調節液の実際温度も読み取ることができる。タッチスクリーンとして形成されたディスプレイ83及び/又は操作ボタン84を介して、恒温槽10内に位置する温度調節液の所要の目標温度を予め設定しておくことができる。同様に、回転駆動装置57の回転方向転換も、有利には事前に選択可能な時間間隔で、制御装置に予め設定しておくことができる。最後に、操作ユニット82を介して、ガラス構造体4の蒸発容器5をガイドタワー3に沿って下方に移動させる距離も予め設定しておくことができる。この場合は、操作ボタン84の回動による、恒温槽10内での蒸発容器5の浸漬深さの微調整も可能であってよい。
【0064】
蒸発容器5を、恒温槽10の液体バス内で加熱することにより、蒸発容器5内の溶液が蒸発し、蒸気は蒸気通流部として用いられるガラス中空軸8を通って、冷却器6に通じる接続管片9内に流入する。冷却器6内で蒸気は凝縮して、受け容器7内に流出する。複数の材料成分の分離は、これらの材料成分の沸点の違いに基づき達成されるので、予め設定された温度において特定の材料を蒸発させることができる一方で、その他の材料は、差し当たりまだ蒸発容器内に残留することになる。ガラス構造体4に真空を印加することによって、沸騰温度を低下させることができるので、比較的高沸点の溶媒を、通常圧力におけるよりも低い温度で蒸発させることが可能である。真空状態のガラス構造体4内では、熱に弱い物質も蒸留され得る。比較的低い沸騰温度での作業に基づいて、前記のような熱に弱い物質の分解が阻止される。この場合、滑りリングシールとして働くシールリング76が、回転するガラス中空軸8を大気圧に対してシールしており、このようにしてガラス構造体4の内部における真空維持のために役立っている。シールリング76の内径は、この領域のガラス中空軸8の直径よりもやや小さくなっているので、シールリング76には予荷重が加えられることになり、この予荷重は、シールリングに作用する圧力の差によって更に増大される。摩擦によりシールリング76が摩耗した場合、滑りリングシールはそれ自体で、シールリング76の予荷重に基づいて後調整するようになっている。駆動装置ケーシング77に設けられた複数の環状隆起部81が、シールリング76を接続管片9に向かって環状に押圧し、これらの閉じられた2本の線に沿った接触圧の過剰な高まりが、付加的に最適なシールのために役立つ。
【0065】
蒸発プロセスの終了は、蒸発容器5を恒温槽10から持ち上げる場合、回転駆動装置57の回転を停止する場合、ガラス構造体4内に形成された真空を突然解消する場合、又は冷却器6の冷却を遮断する場合に、電流供給とは関係無く行われる、管理された遮断に基づいて行われる。このために冷却器6には、切換弁用のインタフェースが対応配置されている。ロータリーエバポレータ1の遮断、延いては蒸発プロセスの終了は、ユーザによって発動されるか、予め設定されたプロセスパラメータ(プロセス終了)の達成により発動されるか、プロセスエラーにより発動されるか、又は停電によって発動され得る。
【符号の説明】
【0066】
1 ロータリーエバポレータ
2 装置スタンド
3 ガイドタワー
4 ガラス構造体
5 蒸発容器
6 冷却器
7 受け容器
8 ガラス中空軸
9 (冷却器の)接続管片
10 恒温槽
11 (ガラス構造体の)ホース接続部
12 (ガラス構造体の)ホース接続部
13 (ガラス構造体の)ホース接続部
14 (露出して設けられた)ホース導管
15 (露出して設けられた)ホース導管
16 (露出して設けられた)ホース導管
17 通路
18 (ガイドタワー内の)ホース導管
19 (ガイドタワー内の)ホース導管
20 (ガイドタワー内の)ホース導管
21 キャリッジ
22 成形部分(中空成形部材)
23 成形部分
24 (成形部分間の)中空室
25 ガイドスリット
26 (成形部分22の)小幅縁部
27 (成形部分23の)小幅縁部
28 キャリッジガイド
29 (キャリッジガイド28の)ガイドバー
30 (キャリッジガイド28の)ガイドバー
31 (キャリッジ21内の)ガイド孔
32 (キャリッジ21内の)ガイド孔
33 結合アーム
34 ガススプリング
35 ウィンチ
36 ロープドラム
37 ロープ
38 滑車装置
39 (滑車装置の)変向ローラ
40 (滑車装置の)変向ローラ
41 (ウィンチの)電気的な駆動装置
42 (ホルダの)旋回軸線
43 (ホルダの)支持部分
44 スピンドル駆動装置
45 調節スピンドル
46 スピンドルねじ山
47 (保持部分に設けられた調節スピンドルの)旋回軸線
48 (スピンドルナットの)旋回軸線
49 スピンドルナット
50 調整輪
51 (行程高さ用の)目盛り付け部
52 (目盛り付け部51の)目盛り
53 (行程高さの指針としてのキャリッジ21の)縁部
54 (旋回角度用の)目盛り付け部
55 (目盛り付け部54の)目盛り
56 (目盛り付け部54の指針としての支持部分43の)縁部
57 回転駆動装置
58 ハブ
59 緊締インサート
60 支持バー
61 結合ウェブ(左)
62 結合ウェブ(右)
63 緊締斜面(左)
64 緊締斜面(右)
65 (ハブに設けられた)対応斜面
66 (緊締ねじリングに設けられた)対応斜面
67 緊締ねじリング
68 凹状成形部
69 凸状成形部
70 摺り合わせクリップ
71 (緊締ねじリング67に設けられた)ねじ山
72 (押圧ねじリングに設けられた)対応ねじ山
73 押圧ねじリング
74 (接続管片の)接続開口
75 稜線
76 シールリング
77 駆動装置ケーシング
78 (シールリングの)外側のリングゾーン
79 (シールリングの)曲げられたリングゾーン
80 (シールリングに設けられた)環状溝
81 (駆動装置ケーシングの端縁部に設けられた)環状隆起部
82 (遠隔)操作ユニット
83 ディスプレイ
84 操作ボタン
85 (操作ユニット用の)トレイ又はコンソール
86 電源スイッチ
87 注ぎ口
88 恒温槽の容器内壁
89 カバーフード
90 不動のフード部分
91 開放可能なフード部分
92 突起
93 環状溝
94 摺り合わせコア
95 内縁
K1 緊締部分(左)
K2 緊締部分(右)
T (シールリングの)部分領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11