(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生産情報は、前記生産ラインの設備情報、前記生産ラインに供給される原材料情報、前記生産ラインを操作する作業者情報および前記生産ラインの生産手順情報のうちの少なくとも1つである請求項1に記載の生産ライン監視装置。
前記不良兆候検出部は、前記測定情報から算出される工程能力指数または前記生産不良の発生率に基づいて、前記生産不良の兆候を検出する請求項1または2に記載の生産ライン監視装置。
前記生産ラインは、基板上にはんだペーストを印刷するはんだ印刷機と、部品を前記基板に実装する部品実装機と、前記基板に実装された前記部品をはんだ付けするリフロー機と、を備える基板生産ラインであって、
前記検査装置は、前記基板生産ラインの途中に設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の生産ライン監視装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、予め不良要因の発生確率を算出して、算出される発生確率に基づいて不良要因を分析している。そのため、分析された結果が必ずしも実際の不良要因であるとは限らない。また、検査装置によって取得される各種測定情報のすべてを経時的に分析すると、データ量および演算量が膨大になる。その結果、生産工程が完了するまでに分析を終了することが困難となり、測定情報の分析をリアルタイムに行うことが困難となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、生産不良の原因を高精度に特定するとともに、分析データのデータ量および演算量を低減してリアルタイム処理が可能な生産ライン監視装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の生産ライン監視装置は、生産ラインにおける生産不良の兆候を検出する不良兆候検出部と、前記生産不良の原因を特定する不良原因特定部と、を備える生産ライン監視装置であって、前記不良兆候検出部は、製品における位置を特定するリファレンス毎に検査装置によって測定された測定情報を収集して、前記リファレンスにおける測定情報の経時変化から前記生産不良の兆候を検出し、前記不良原因特定部は、前記不良兆候検出部が前記生産不良の兆候を検出した際の前記リファレンスに関係する生産情報に基づいて層別分析を行い、当該分析結果から前記生産不良の原因を特定する。
【0007】
請求項2に記載の生産ライン監視装置は、請求項1に記載の生産ライン監視装置において、前記生産情報は、前記生産ラインの設備情報、前記生産ラインに供給される原材料情報、前記生産ラインを操作する作業者情報および前記生産ラインの生産手順情報のうちの少なくとも1つである。
【0008】
請求項3に記載の生産ライン監視装置は、請求項1または2に記載の生産ライン監視装置において、前記不良兆候検出部は、前記測定情報から算出される工程能力指数または前記生産不良の発生率に基づいて、前記生産不良の兆候を検出する。
【0009】
請求項4に記載の生産ライン監視装置は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生産ライン監視装置において、前記生産ラインは、基板上にはんだペーストを印刷するはんだ印刷機と、部品を前記基板に実装する部品実装機と、前記基板に実装された前記部品をはんだ付けするリフロー機と、を備える基板生産ラインであって、前記検査装置は、前記基板生産ラインの途中に設けられている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の生産ライン監視装置によれば、不良兆候検出部は、製品における位置を特定するリファレンス毎に検査装置によって測定された測定情報を収集して、リファレンスにおける測定情報の経時変化から生産不良の兆候を検出する。そのため、生産不良に関係するリファレンスを特定することが容易であり、特定されたリファレンスにおける測定情報および特定されたリファレンスに関係する生産情報を抽出することが容易である。
【0011】
また、不良原因特定部は、不良兆候検出部が生産不良の兆候を検出した際のリファレンスに関係する生産情報に基づいて層別分析を行い、当該分析結果から生産不良の原因を特定する。そのため、不良原因特定部は、予め算出される発生確率に基づいて不良原因を分析する場合や分析対象を事前に指定して限定する場合と比べて、生産不良の原因を高精度に特定することができる。
【0012】
生産情報は、一般に複数の項目(種類)につき複数の情報を有している。一方、1つのリファレンスに関係する生産情報は、1つの項目(種類)につき1つの情報に限定される。そのため、不良原因特定部は、生産不良の兆候を検出した際のリファレンスに関係する生産情報の各項目(種類)について、それぞれ1つの生産情報に分析対象を限定することができる。したがって、生産ライン監視装置は、すべての生産情報について分析する場合と比べて、分析データのデータ量および演算量を低減させることができ、リアルタイム処理が容易である。
【0013】
請求項2に記載の生産ライン監視装置によれば、生産情報は、生産ラインの設備情報、生産ラインに供給される原材料情報、生産ラインを操作する作業者情報および生産ラインの生産手順情報のうちの少なくとも1つである。そのため、生産ラインにおいて生産不良となり得る原因を容易に把握することができ、生産ラインの不良原因を漏れなく抽出することができる。
【0014】
請求項3に記載の生産ライン監視装置によれば、不良兆候検出部は、測定情報から算出される工程能力指数または生産不良の発生率に基づいて、生産不良の兆候を検出する。そのため、生産品質を定量化することが容易であり、不良兆候検出部は、生産品質が規格範囲内にあるか否かの判断を容易に行うことができる。そして、不良兆候検出部は、生産不良の兆候を定量的に検出することができる。
【0015】
請求項4に記載の生産ライン監視装置によれば、検査装置は、はんだ印刷機、部品実装機およびリフロー機を備える基板生産ラインの途中に設けられている。はんだ印刷機と部品実装機との間に検査装置が設けられている場合、検査装置は、部品実装前のはんだ状態を検査することができる。また、部品実装機とリフロー機との間に検査装置が設けられている場合、検査装置は、部品の実装状態を検査することができる。特に、検査装置は、基板に実装される部品の位置ずれ、回転ずれを検出することができ、部品の実装精度を高めることができる。さらに、リフロー機の後段に検査装置が設けられている場合、検査装置は、基板のはんだ付け状態など完成基板の良否を検査することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0018】
<生産ライン>
本実施形態では、生産ラインの一例として、多数の部品が実装される基板を生産する基板生産ライン1について説明する。なお、説明の都合上、3枚の基板PB1〜PB3に3つの部品P1〜P3をそれぞれ実装する基板生産ライン1について説明するが、基板数および部品数は、これらに限定されるものではない。また、生産ラインは、基板生産ライン1に限定されるものではなく、例えば、工作機械や自動車の生産ラインなど種々の生産ラインに適用することができる。
【0019】
図1は、生産ライン監視装置6の制御ブロックの一例を示すブロック図である。基板生産ライン1は、基板PB1〜PB3上にはんだペーストを印刷するはんだ印刷機2と、部品P1〜P3を基板PB1〜PB3に実装する部品実装機3と、基板PB1〜PB3に実装された部品P1〜P3をはんだ付けするリフロー機4と、を備える。基板生産ライン1には、基板搬送装置(例えば、ベルトコンベアなど)が設けられており、基板搬送装置によって、基板PB1〜PB3がはんだ印刷機2に搬入され、部品実装機3、リフロー機4の順に搬送されて、リフロー機4から完成基板が搬出される。
【0020】
はんだ印刷機2は、公知のはんだ印刷機であり、基板PB1と部品P1〜P3との接合部分に、はんだペーストを印刷する。はんだペーストは、粉末状のはんだにフラックスを加えて粘度を適切にしたものである。基板PB2、PB3についても同様である。
【0021】
部品実装機3は、公知の部品実装機であり、部品P1〜P3を吸着して、実装位置に搬入された基板PB1上に部品P1〜P3をそれぞれ実装する。基板PB2、PB3についても同様である。部品実装機3は、1つの部品実装機3で構成することもできる。また、モジュール化された部品実装機3を複数台列設して部品実装ラインを構成することもできる。
【0022】
リフロー機4は、公知のリフロー機であり、部品P1〜P3が実装された基板PB1を加熱することにより、部品P1〜P3と基板PB1とをはんだ付けする。基板PB2、PB3についても同様である。
【0023】
検査装置5は、公知の基板検査装置であり、生産途中の基板状態および完成基板の良否を検査する。検査装置5は、はんだ検査装置51、実装検査装置52およびリフロー検査装置53を備えている。はんだ検査装置51は、はんだ印刷機2と部品実装機3との間に設けられ、印刷されたはんだ位置、はんだ高さ、はんだ面積、はんだ体積、はんだブリッジの有無などを検査する。つまり、はんだ検査装置51は、部品実装前のはんだ状態を検査することができる。
【0024】
実装検査装置52は、部品実装機3とリフロー機4との間に設けられ、部品P1〜P3の有無、部品P1〜P3の適否、実装された部品位置、実装された部品P1〜P3の極性異常、異物の有無などの部品P1〜P3の実装状態を検査する。特に、実装検査装置52は、基板PB1〜PB3に実装される部品P1〜P3の位置ずれ、回転ずれを検出することができ、部品P1〜P3の実装精度を高めることができる。リフロー検査装置53は、リフロー機4の後段に設けられ、基板PB1〜PB3のはんだ付け状態など完成基板の良否を検査する。本明細書では、検査装置5によって測定される各種の検査結果を測定情報という。
【0025】
<生産ライン監視装置>
生産ライン監視装置6は、ホストコンピュータ内に設けられ、基板生産ライン1における生産不良の兆候を検出して、生産不良の原因を特定する。ホストコンピュータは、CPUおよびメモリを有しており、メモリに記憶されているプログラムを実行することによって、生産ライン監視装置6を駆動させることができる。
図1に示すように、生産ライン監視装置6は、制御ブロックとして捉えると、不良兆候検出部61、不良原因特定部62、不良対処判定部63および不良対処指示部64を備えている。
【0026】
(不良兆候検出部61)
不良兆候検出部61は、基板生産ライン1における生産不良の兆候を検出する。まず、不良兆候検出部61は、基板PB1における実装位置を特定するリファレンスREF1〜REF3毎に測定情報を収集する。基板PB2、PB3についても同様である。
図2は、基板PB1におけるリファレンスREF1〜REF3を説明する説明図である。同図では、紙面左方向下側の基板PB1の角部を原点0とする。そして、紙面右方向をX軸方向とし、紙面上方向をY軸方向とする。また、原点0を中心とするX軸からの回転角をθとする。
【0027】
部品P1が実装される基板PB1上の実装位置をリファレンスREF1で表す。具体的には、部品P1の実装位置は、X軸方向位置X11、Y軸方向位置Y11、θ方向回転角θ11で表すことができる。つまり、リファレンスREF1は、基板PB1における部品P1の実装位置を特定する。部品P2、P3についても同様であり、リファレンスREF2、REF3によって、基板PB1における部品P2、P3の実装位置が特定される。なお、基板PB2、PB3についても同様である。
【0028】
検査装置5によって測定された測定情報は、所定周期で不良兆候検出部61に送信される。
図3は、測定情報および生産情報の一例を示す説明図である。同図は、3枚の基板PB1〜PB3に部品P1〜P3をそれぞれ実装する際の測定情報の一例を示しており、実装検査装置52の検査結果(測定情報)である。例えば、基板PB1における部品P1のX軸方向ずれXS11は、部品P1の正規のX軸方向位置X11に対するX軸方向のずれを示している。部品P1のY軸方向ずれYS11、部品P1のθ方向ずれθS11についても同様である。また、部品P2、P3および基板PB2、PB3についても同様であり、他の検査装置および他の検査結果(測定情報)についても同様である。
【0029】
同図では、検査装置5の測定情報と併せて、リファレンスREF1〜REF3に関係する生産情報の一例が記載されている。生産情報は、基板生産ライン1の設備情報、基板生産ライン1に供給される原材料情報、基板生産ライン1を操作する作業者情報および基板生産ライン1の生産手順情報のうちの少なくとも1つであると好適である。
【0030】
基板生産ライン1の設備情報は、基板生産ライン1の生産設備に関する情報である。例えば、部品実装機3では、部品実装機3を識別する部品実装機番号M1〜M4、部品P1〜P3を実装する部品装着ヘッドを識別する部品装着ヘッド番号H1〜H4、部品P1〜P3を吸着する吸着ノズルを識別する吸着ノズル番号N1〜N6、部品P1、P2を供給するフィーダを識別するフィーダ番号F1〜F4、部品P3を供給するトレイユニットを識別するトレイ番号PT1などが挙げられる。
【0031】
基板生産ライン1に供給される原材料情報は、例えば、部品P1〜P3を識別する部品番号、部品P1〜P3の生産ロットを識別する部品ロット番号、部品製造元を識別する部品製造元番号などが挙げられる。また、基板生産ライン1を操作する作業者情報は、例えば、作業者の氏名、年齢、所属などが挙げられる。基板生産ライン1の生産手順情報には、例えば、部品P1〜P3の実装順序、正圧や負圧の圧力条件等の部品実装時の条件設定などが挙げられる。
【0032】
同図では、例えば、基板PB1のリファレンスREF1における生産情報として、部品実装機番号(部品実装機M1)、部品装着ヘッド番号(部品装着ヘッドH1)、吸着ノズル番号(吸着ノズルN1)、フィーダ番号(フィーダF1)、部品番号(部品P1)が記載されている。リファレンスREF2、REF3についても同様であり、基板PB2、PB3についても同様である。
【0033】
本実施形態では、生産情報は、基板生産ライン1の設備情報、基板生産ライン1に供給される原材料情報、基板生産ライン1を操作する作業者情報および基板生産ライン1の生産手順情報のうちの少なくとも1つである。そのため、基板生産ライン1において生産不良となり得る原因を容易に把握することができ、基板生産ライン1の不良原因を漏れなく抽出することができる。なお、生産情報は、リファレンスREF1〜REF3毎にテーブル化されており、ホストコンピュータのメモリに記憶されている。また、上記の生産情報以外にも、生産に関係する種々の情報を生産情報として用いることができる。
【0034】
次に、不良兆候検出部61は、リファレンスREF1〜REF3における測定情報の経時変化から生産不良の兆候を検出する。
図4は、部品P1〜P3のX軸方向ずれの経時変化を示す波形図であり、(a)は、リファレンスREF1を示し、(b)は、リファレンスREF2を示し、(c)は、リファレンスREF3を示す。同図は、基板PB1〜PB3に部品P1を実装したときの部品P1のX軸方向ずれXS1を実装順にプロットしたものである。部品P2のX軸方向ずれXS2、部品P3のX軸方向ずれXS3についても同様であり、他の測定情報についても同様である。
【0035】
同図では、リファレンスREF1における部品P1のX軸方向ずれXS1の経時変化を曲線L1で示す。また、X軸方向ずれXS1の規格上限値を直線LT1で示し、X軸方向ずれXS1の規格下限値を直線LB1で示す。リファレンスREF2、REF3についても同様である。
【0036】
同図(a)に示すように、リファレンスREF1における部品P1のX軸方向ずれXS1(曲線L1)は、直線LT1、LB1で示される規格範囲内にある。よって、リファレンスREF1について、生産不良の兆候は見られない。リファレンスREF3についても同様である(同図(c))。一方、同図(b)に示すように、リファレンスREF2における部品P2のX軸方向ずれXS2(曲線L2)は、時刻T1から時刻T2にかけて直線LB2で示される規格下限値より小さくなり、時刻T2以降も、その状態が継続している。つまり、時刻T2以降、リファレンスREF2について生産不良の兆候が見られる。
【0037】
図5は、生産不良の兆候を検出する手順の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS1で、リファレンスREF1〜REF3毎に測定情報を収集する。次に、ステップS2で、測定情報から工程能力指数または生産不良の発生率を算出する。そして、ステップS3で、工程能力指数または生産不良の発生率が規格範囲内であるか否かを判定する。
【0038】
工程能力指数または生産不良の発生率が規格範囲内の場合(Yesの場合)は、ステップS4に進む。ステップS4では、生産不良判定フラグをOFFにして、一旦、本ルーチンを終了する。一方、ステップS3で、工程能力指数または生産不良の発生率が規格範囲外の場合(Noの場合)は、ステップS5に進む。ステップS5では、生産不良判定フラグをONにして、一旦、本ルーチンを終了する。
【0039】
工程能力指数は、品質基準を満足する製品(基板PB1〜PB3)を生産する能力を数値化したものである。具体的には、工程能力指数は、必要とされる規格幅を6σ(σの6倍)で除算して算出する。ただし、σは標準偏差であり、規格幅は、規格上限値から規格下限値を減算して算出する。規格上限値および規格下限値は、生産情報の特性を勘案して予め決定され、ホストコンピュータのメモリに記憶されている。
【0040】
不良兆候検出部61は、所定時間の経過毎に工程能力指数を算出する。そして、不良兆候検出部61は、工程能力指数の算出値が所定範囲内のときに、工程能力指数が規格範囲内であると判断する。一方、工程能力指数の算出値が所定範囲外のときは、不良兆候検出部61は、工程能力指数が規格範囲外であると判断する。
【0041】
例えば、
図4(b)に示すように、第1サンプリング時間SP1の5個の測定情報(部品P2のX軸方向ずれXS2)に基づいて、工程能力指数CP1を算出する。次に、第2サンプリング時間SP2の5個の測定情報(部品P2のX軸方向ずれXS2)に基づいて、工程能力指数CP2を算出する。第2サンプリング時間SP2の5個の測定情報は、第1サンプリング時間SP1の5個の測定情報と比べて、測定情報のばらつきが大きいので、工程能力指数CP2は、工程能力指数CP1と比べて小さくなる。例えば、工程能力指数CP2が1.2のとき、所定範囲(例えば、1.33〜1.67)外であるので、不良兆候検出部61は、工程能力指数が規格範囲外であると判断する。なお、工程能力指数CP1は、所定範囲(例えば、1.33〜1.67)内にあるものとする。
【0042】
また、工程能力指数は、規格上限値または規格下限値のいずれか一方のみを用いることもできる。この場合、工程能力指数は、必要とされる規格幅を3σ(σの3倍)で除算して算出する。規格上限値のみを用いる場合、規格幅は、規格上限値から測定情報の平均値を減算して算出する。規格下限値のみを用いる場合、規格幅は、測定情報の平均値から規格下限値を減算して算出する。
【0043】
生産不良の発生率は、生産状態が正常である正常状態または生産状態が異常である異常状態など離散値で生産状態を表すことができる場合に用いられる。具体的には、生産不良の発生率は、所定期間の生産回数のうち、生産状態が異常状態である割合である。リファレンスREF1における部品P1の有無について、生産不良の発生率を算出する場合を例に説明する。
【0044】
例えば、部品P1を10回実装するときに、部品P1が実装されていない状態(異常状態)が1回発生したとする。この場合、生産不良の発生率は10%である。次に、部品P1を10回実装するときに、部品P1が実装されていない状態(異常状態)が3回発生したとする。この場合、生産不良の発生率は30%である。
【0045】
不良兆候検出部61は、所定時間の経過毎に生産不良の発生率を算出する。そして、不良兆候検出部61は、生産不良の発生率が所定値より小さいときに、生産不良の発生率が規格範囲内であると判断する。一方、生産不良の発生率が所定値以上のときは、不良兆候検出部61は、生産不良の発生率が規格範囲外であると判断する。上記の例では、生産不良の発生率が30%のとき、所定値(例えば20%)より大きいので、不良兆候検出部61は、生産不良の発生率が規格範囲外であると判断する。一方、生産不良の発生率が10%のとき、所定値(例えば20%)より小さいので、不良兆候検出部61は、生産不良の発生率が規格範囲内であると判断する。
【0046】
本実施形態では、不良兆候検出部61は、測定情報から算出される工程能力指数または生産不良の発生率に基づいて、生産不良の兆候を検出する。そのため、生産品質を定量化することが容易であり、不良兆候検出部61は、生産品質が規格範囲内にあるか否かの判断を容易に行うことができる。そして、不良兆候検出部61は、生産不良の兆候を定量的に検出することができる。
【0047】
また、不良兆候検出部61は、製品である基板PB1〜PB3における実装位置を特定するリファレンスREF1〜REF3毎に検査装置5によって測定された測定情報を収集して、リファレンスREF1〜REF3における測定情報の経時変化から生産不良の兆候を検出する。そのため、生産不良に関係するリファレンスREF2を特定することが容易であり、特定されたリファレンスREF2における測定情報および特定されたリファレンスREF2に関係する生産情報を抽出することが容易である。
【0048】
(不良原因特定部62)
不良原因特定部62は、不良兆候検出部61が生産不良の兆候を検出した際のリファレンスREF2に関係する生産情報に基づいて層別分析を行い、当該分析結果から生産不良の原因を特定する。不良兆候検出部61は、リファレンスREF2について生産不良の兆候を検出すると、生産不良判定フラグをONにする。リファレンスREF1、REF3については、生産不良の兆候が見られないので、不良兆候検出部61は、生産不良判定フラグをOFFにする。不良原因特定部62は、生産不良判定フラグがONであるリファレンスREF2に関係する生産情報に基づいて層別分析を行う。
【0049】
生産情報は、一般に複数の項目(種類であり、例えば、部品実装機3、部品装着ヘッド、吸着ノズル、フィーダなど)につき、複数の情報(例えば、部品実装機3については、部品実装機M1〜M4の4つ)を有している。一方、
図3に示すように、基板PB1のリファレンスREF2に部品P2を実装するとき、部品実装機3は部品実装機M1を使用し、部品装着ヘッドは部品装着ヘッドH1を使用する。そして、吸着ノズルは吸着ノズルN2を使用し、フィーダはフィーダF2を使用する。
【0050】
このように、1つのリファレンスREF2に関係する生産情報は、1つの項目(種類)につき1つの情報に限定される。そのため、不良原因特定部62は、生産不良の兆候を検出した際のリファレンスREF2に関係する生産情報の各項目(種類)について、それぞれ1つの生産情報(この場合、部品実装機M1、部品装着ヘッドH1、吸着ノズルN2、フィーダF2)に分析対象を限定することができる。したがって、生産ライン監視装置6は、すべての生産情報について分析する場合と比べて、分析データのデータ量および演算量を低減させることができ、リアルタイム処理が容易である。
【0051】
図6は、リファレンスREF2におけるX軸方向ずれの経時変化を示す波形図であり、(a)は、部品装着ヘッドH1を示し、(b)は、吸着ノズルN2を示し、(c)は、フィーダF2を示す。同図は、基板PB1〜PB3に部品P2を実装したときの部品P2のX軸方向ずれXS2をリファレンスREF2に関係する生産情報毎に実装順にプロットしたものである。
【0052】
同図では、部品装着ヘッドH1を使用して基板PB1、PB3に部品P2を実装したときの部品P2のX軸方向ずれXH1(以下、部品装着ヘッドH1のX軸方向ずれXH1という。)を曲線L4で示す。また、X軸方向ずれXH1の規格上限値を直線LT4で示し、X軸方向ずれXH1の規格下限値を直線LB4で示す。吸着ノズルN2、フィーダF2についても同様である。
【0053】
同図(a)に示すように、部品装着ヘッドH1のX軸方向ずれXH1(曲線L4)は、直線LT4、LB4で示される規格範囲内にある。よって、部品装着ヘッドH1は、生産不良の原因ではないと考えられる。フィーダF2についても同様である(同図(c))。一方、同図(b)に示すように、吸着ノズルN2のX軸方向ずれXN2は、時刻T1から時刻T2にかけて直線LB5で示される規格下限値より小さくなり、時刻T2以降も、その状態が継続している。つまり、吸着ノズルN2が生産不良の原因であると考えられる。
【0054】
以上より、不良原因特定部62は、リファレンスREF2についての生産不良の兆候は、吸着ノズルN2が原因であると判断する。なお、生産不良の原因を特定する具体的な手順は、生産不良の兆候を検出する手順と同様であり、工程能力指数または生産不良の発生率に基づいて、生産不良の原因を特定することができる。
【0055】
本実施形態では、不良原因特定部62は、不良兆候検出部61が生産不良の兆候を検出した際のリファレンスREF2に関係する生産情報に基づいて層別分析を行い、当該分析結果から生産不良の原因を特定する。そのため、不良原因特定部62は、予め算出される発生確率に基づいて不良原因を分析する場合や分析対象を事前に指定して限定する場合と比べて、生産不良の原因を高精度に特定することができる。
【0056】
(不良対処判定部63)
不良対処判定部63は、生産不良に対する対処内容を判定する。対処内容および対処の優先順位は、予めホストコンピュータのメモリに記憶されている。不良対処判定部63は、ホストコンピュータのメモリを参照して、不良原因特定部62が特定した生産不良の原因に対する対処内容を取得する。生産不良の原因が複数ある場合は、対処の優先順位も併せて取得する。
【0057】
次に、不良対処判定部63は、生産不良に対する対処を作業者が行う必要があるか否かを判定する。生産不良に対する対処を作業者が行う必要がある場合を作業者対処といい、生産不良に対する対処を作業者が行う必要がない場合を自動対処という。作業者対処の場合、不良対処判定部63は、不良対処指示部64に対処信号を送信する。
【0058】
自動対処の場合、不良対処判定部63は、はんだ印刷機2、部品実装機3またはリフロー機4に対処信号を送信する。はんだ印刷機2、部品実装機3またはリフロー機4は、対処信号を受信すると、受信した対処内容に基づいて生産不良に対する対処を行う。例えば、不良原因特定部62によって、吸着ノズルN2が生産不良の原因であると判断されると、不良対処判定部63は、部品実装機3に吸着ノズルN2の切替えを指示する。部品実装機3は、不良対処判定部63から吸着ノズルN2の切替えの指示を受けると、吸着ノズルN2を正常な吸着ノズルに切替える。
【0059】
(不良対処指示部64)
不良対処指示部64は、不良対処判定部63から対処信号を受信すると、モニタ7に対処内容および対処の優先順位を表示する。作業者は、モニタ7に表示される対処内容および対処の優先順位に従って、生産不良に対する対処を行う。例えば、部品装着ヘッドH1(優先順位は1番とする)およびフィーダF2(優先順位は2番とする)が生産不良の原因である場合を考える。不良対処指示部64は、部品装着ヘッドH1およびフィーダF2が生産不良の原因であり、部品装着ヘッドH1、フィーダF2の順に正常品に交換する必要がある旨をモニタ7に表示して、作業者に喚起する。作業者は、モニタ7に表示される内容に従って、部品装着ヘッドH1、フィーダF2の順に正常な部品装着ヘッドH1、フィーダF2と交換する。
【0060】
本実施形態では、基板生産ライン1における生産不良の兆候を検出することができるので、実際に基板生産ライン1において生産不良が発生する前に生産不良に対して対処をすることができ、基板生産ライン1の稼働率を向上させることができる。
【0061】
<その他>
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、本発明は、生産ラインにおける生産不良の兆候を検出する場合に限られず、実際に生産ラインにおいて生産不良を検出した場合(例えば、部品の欠品など)にも適用することができる。