(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959658
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】オレフィンメタセシス反応用混合触媒およびその製造方法並びにそれを用いたプロピレン製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/30 20060101AFI20160719BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20160719BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20160719BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20160719BHJP
C07C 6/04 20060101ALI20160719BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20160719BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
B01J23/30 Z
B01J37/04 101
B01J37/02 101E
B01J37/08
C07C6/04
C07C11/06
!C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-539572(P2014-539572)
(86)(22)【出願日】2012年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2012076053
(87)【国際公開番号】WO2014054185
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】591110241
【氏名又は名称】クラリアント触媒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 謙
(72)【発明者】
【氏名】菅田 守保
【審査官】
延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/093058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 6/04
C07C 11/06
C07B 61/00
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Science Direct
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化タングステンがシリカ担体に担持されたメタセシス触媒と、1族および2族の金属元素のうち少なくとも3つの金属元素の酸化物により複合化された助触媒とを含むオレフィンメタセシス反応用混合触媒であって、助触媒である金属酸化物は、酸化マグネシウムに対してリチウムと他のアルカリ金属とが添加されてなることを特徴とするオレフィンメタセシス反応用混合触媒。
【請求項2】
エチレンと2−ブテンとからプロピレンを生成するオレフィンメタセシス反応に使用されることを特徴とする請求項1記載のオレフィンメタセシス反応用混合触媒。
【請求項3】
他のアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする請求項1または2に記載のオレフィンメタセシス反応用混合触媒。
【請求項4】
酸化マグネシウムに対する、リチウムおよび他のアルカリ金属の金属担持量はそれぞれ0.01〜4重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のオレフィンメタセシス反応用混合触媒。
【請求項5】
酸化マグネシウムに対し、リチウムおよび他のアルカリ金属を0.01〜4重量%の金属担持量で含浸させ、空気中で400〜700℃にて焼成し複合化させた助触媒と、酸化タングステンをシリカ担体に担持させたメタセシス触媒とを混合することを特徴とするオレフィンメタセシス反応用混合触媒の製造方法。
【請求項6】
酸化タングステンをシリカ担体に担持させたメタセシス触媒と、酸化マグネシウムおよびリチウムに対してナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選択される少なくとも一つの他のアルカリ金属を添加して複合化させた助触媒とを混合してなるオレフィンメタセシス反応用混合触媒の存在下、エチレンと2−ブテンとを接触させることを特徴とするプロピレンを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタセシス反応によりオレフィンを製造する場合に使用されるオレフィンメタセシス反応用触媒中に複数の1族、2族を含む複合化金属酸化物を助触媒として含有させることにより反応性を改善した触媒、およびその製造方法並びにその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィンのメタセシス反応は、同種あるいは異種のオレフィン同士が異なるオレフィンに変換される反応である。たとえば、2分子のプロピレンが、エチレンと2−ブテンに変換される自己メタセシス反応と、2−ブテンと3−ヘキセンが2分子の2−ペンテンに変換される交差メタセシス反応がある。
【0003】
オレフィン類がメタセシス触媒と接触したときに、特定の構造的な規則に従って進行する。これは、供給される原料の性状に影響されるものである。この反応は、4中心活性サイト上で進行すると考えられており、オレフィンの二重結合の部分が、活性サイトに向き合うようにして吸着し、二重結合の一端にある炭化水素基が交換されることによって化学平衡的に進行する反応である。たとえば、2−ブテンとエチレンをそれぞれ1分子ずつ反応させた場合には、炭化水素基の交換反応により2分子のプロピレンを得ることができる。よって、任意のオレフィン炭化水素について適用すれば、様々な反応を予測することができる。
【0004】
プロピレンは様々な工業製品の原料となり、主にナフサの水蒸気改質反応から得られ、副生成物としてエチレンを初めとする各種炭化水素が生成される。このほかにも、プロパン脱水素反応、フィッシャートロプシュ反応を介して得られるものの、これらで得られるプロピレンの量は水蒸気改質反応よりも少量である。近年、プロピレンの需要に上記方法によるプロピレンの生産が追いつかず、エチレンおよび2−ブテンのメタセシス反応による生産も行われている。
【0005】
1964年、Phillips社は、プロピレンからエチレンおよび2−ブテンを生産するという酸化モリブデン触媒を用いたメタセシス反応プロセスを開発した。その後、特許文献1において、酸化タングステンをシリカに担持した触媒および酸化マグネシウムを助触媒として用いた方法が開発されLummus社によりプロピレン製造のためのプロセスとして完成された。しかしながら、上記文献は、助触媒については複合化されたものを使用しておらず、プロピレン選択率の向上のみが示されており、触媒反応性については明らかとなっていない。また、当該文献が開示しているメタセシス触媒は異性化を促進する部位があるため、高濃度の2−ブテンを用いた場合には、1−ブテンへの異性化が起こるため1−ブテンが2−ブテン等と反応することで副生成物が生じ、選択率が低下する。また、酸化マグネシウム等を含む異性化触媒を混合するとメタセシス反応を阻害すると述べている。
【0006】
非特許文献1には酸化タングステン触媒と酸化マグネシウム触媒とを混合して反応に供することで活性が向上することが報告されている。しかしながら上記文献においても、酸化マグネシウム触媒に対し、更に複合化させた助触媒については何ら記載がなく、触媒反応性については未だ不十分である。
【0007】
特許文献2には高表面積のγ−アルミナに酸化マグネシウムとナトリウムを担持した異性化触媒とメタセシス触媒を用いることで活性が向上することが開示されている。しかしながら、アルミナには酸点が含まれており、これらの酸点がオリゴマーの生成など副反応を起こす恐れがある。また、ブテンの異性化反応の活性が高い触媒をメタセシス反応に使用しているため、高濃度の2−ブテンを用いた場合、2−ブテンが1−ブテンに異性化されるため、高転化率の条件では1−ブテンが2−ブテン等と反応することで副生成物が生じ、選択性が低下する。
【0008】
また特許文献3には1、2、3または12族の金属を担持した触媒をメタセシス触媒と共に反応させる方法を開示している。しかしながら、上記文献は、水素ガスを共存させることにより、反応速度を高めることを報告しているが、水素ガスを使用しなければならないことによりプロピレンの製造コストが高くなる。また、水素を反応中に使用するためプロピレンがプロパンに水素化されることからプロピレンの収率が低下する。また、エチレンがエタンに水素化されるなど原料の水素化が起こり原料の損失が生じる。さらに、アルミナを担体とした場合、上記文献2と同様、アルミナに含まれる酸点がオリゴマーなど副反応を起こす恐れがある。助触媒を複合化させて使用したメタセシス反応についてもいまだ分かっていない。
【0009】
特許文献4には酸化イットリウムまたはハイドロタルサイト焼成品をメタセシス触媒と共に反応させる方法を開示している。しかしながら、酸化イットリウムは高価な希土類金属であり工業的に使用する場合にはコスト上問題がある。また、ハイドロタルサイト焼成体は水分によりハイドロタルサイトに戻ってしまう性質があり、保管および実際の反応器への投入など取り扱いに問題が生じる。また、活性については開示しているが、選択性については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2008−519033号公報
【特許文献2】特公平06−20556号公報
【特許文献3】国際公開第2006/093058号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2010/024319号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal of Molecular Catalyst(1985年、28巻、117−131頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
メタセシス反応は、主反応以外にも重合反応をはじめとする様々な副反応が進行する事によって、活性中心が巨大なオレフィンによって閉塞・被毒されてしまうため、触媒活性の低下が引き起こされ再生周期が短くなる。このため、高活性でより低温で反応できることにより再生周期を伸ばすことが求められている。また、このほかに起こり得る副反応としては、異性化反応が上げられる。たとえば、2−ブテンとエチレンの反応では、2−ブテンの1−ブテンへの異性化が挙げられる。この反応が進行すると、メタセシス触媒に供給されるオレフィンの性状が変化してしまい、不必要な反応生成物が形成されてしまい、触媒選択性の低下を引き起こす原因となる。
【0013】
例えば、オレフィンメタセシス反応の供給原料がエチレンおよび2−ブテンならば、反応の主生成物はプロピレンのみである。ところが、2−ブテンが1−ブテンに異性化した場合、1−ブテンは2−ブテンと反応して目的物のプロピレン以外にも2−ペンテンを生成する。1−ブテン同士が反応した場合エチレンおよび3−ヘキセンを生成する。また、生成したプロピレンと1−ブテンが反応して、エチレンおよび2−ペンテンを生成する。このとき、2−ペンテンおよび3−ヘキセンは非選択的な生成物となる。
【0014】
このため副反応である重合反応や、2−ブテンから1−ブテンへの異性化および1−ブテンと他の分子との反応が起こらない高選択性であり、また高活性である触媒が求められている。
【0015】
従来技術では、酸化タングステンを担持したシリカ触媒に固体塩基触媒である酸化マグネシウム触媒を混合することでメタセシス反応の活性を上げることが報告されている。しかし、固体塩基である酸化マグネシウムはメタセシス反応の活性を上げるのみならず、2−ブテンから1−ブテンへの異性化反応に関しても活性があり、供給原料として高濃度の2−ブテンを用いた場合や、メタセシス反応を高活性で行うための高温などの条件では、同時に2−ブテンから1−ブテンへの異性化反応が生じてしまい、2−ブテンからプロピレンへの反応の選択性を低下させてしまう。また、これまで報告されてきた触媒では、酸化マグネシウムの塩基性の強度の制御に着目されておらず、2−ブテンから1−ブテンへの異性化反応が高活性となるようなものをメタセシス反応用の触媒として使用しているに過ぎなかったため、メタセシス反応が高活性となるような条件で反応を行い、2−ブテン転化率を高くすると、1−ブテン生成量も増加していた。また、2−ブテン濃度が高い場合にも1−ブテン生成量が増加した。
【0016】
今回、Liともう1種類のアルカリ金属を酸化マグネシウムに添加して複合化触媒とすることにより塩基性を調整することによって、2−ブテンから1−ブテンへの異性化反応の活性を抑え、かつ2−ブテンとエチレンからプロピレンを生成するメタセシス反応を高活性で効率よく行う触媒を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
オレフィンメタセシス反応に用いられる触媒は酸化タングステンを担持したシリカ触媒と固体塩基である酸化マグネシウムの混合触媒が提供されている。本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、助触媒である固体塩基触媒を3種類以上の塩基性酸化物にて複合化しオレフィンメタセシス反応を促進するように表面の塩基性を調整することで、反応活性を大幅に向上させ、かつ少なくとも90%以上の高いプロピレン選択率を示すことを見出した。
【0018】
より具体的には、本発明の重要な特徴は、オレフィンメタセシス反応用触媒に対して、固体塩基触媒として酸化マグネシウムとリチウムを必須成分とし、これにアルカリ金属を加え3種類以上の金属酸化物からなる助触媒を混合して用いることにある。
【0019】
すなわち本発明のオレフィンメタセシス反応用混合触媒は、酸化タングステンがシリカ担体に担持されたメタセシス触媒と、1族および2族の金属元素のうち少なくとも3つの金属元素の酸化物により複合化された助触媒とを含む。この触媒は、エチレンと2−ブテンとからプロピレンを生成するオレフィンメタセシス反応に用いられることが好ましい。前記金属酸化物は、好ましくは、酸化マグネシウムに対してリチウムと他のアルカリ金属とが添加されてなる。前記他のアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択される少なくとも一つの金属であることが好ましい。また、前記酸化マグネシウムに対する、リチウムおよび他のアルカリ金属の金属担持量はそれぞれ0.01〜4重量%が好ましい。
【0020】
また、本発明のオレフィンメタセシス反応用混合触媒の製造方法は、酸化マグネシウムに対し、リチウムおよび他のアルカリ金属を0.01〜4重量%の金属担持量で含浸させ、空気中で400〜700℃にて焼成し複合化させた助触媒と、酸化タングステンをシリカ担体に担持させたメタセシス触媒とを混合する方法である。また、本発明のプロピレン製造方法は、酸化タングステンをシリカ担体に担持させたメタセシス触媒と、酸化マグネシウムおよびリチウムに対してナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選択される少なくとも一つの他のアルカリ金属を添加して複合化させた助触媒とを混合してなるオレフィンメタセシス反応用混合触媒の存在下、エチレンと2−ブテンとを接触させる方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の触媒は、助触媒である固体塩基触媒を3種類以上の塩基性酸化物にて複合化しオレフィンメタセシス反応を促進するように表面の塩基性を調整することで、反応活性を大幅に向上させ、かつ少なくとも90%以上の高いプロピレン選択率を示すことができる。また、メタセシス反応を促進するような固体塩基性を高めることができたため、2−ブテンから1−ブテンへの異性化反応を抑えて、2−ブテンとエチレンからプロピレンを生成するメタセシス反応のみを効率よく行うことができた。この触媒を使用することにより、2−ブテン転化率を高めると同時に、1−ブテンへの異性化を低くし、プロピレン選択性を上げることで、より低温で高い収率でプロピレンを生産できることでエネルギー効率を高めることができると同時に、1−ブテンが関わる副反応を低下させることにより重合反応等の活性劣化を生じる反応を低下させ、触媒再生周期を延ばすことも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明の助触媒の二酸化炭素の脱離に基づく塩基性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
本発明で用いるオレフィンメタセシス反応用触媒は、メタセシス触媒および助触媒を含む。そのうち、メタセシス触媒は、公知のタングステン、モリブデン、レニウムなどの金属元素を少なくとも1種類以上含むものが望ましく、この中ではタングステンが最も好ましい。該当する触媒の構造は、各々の金属酸化物、硫化物、塩化物、水酸化物などを組成とする固体状態の単体でもよく、これらの金属酸化物、硫化物、塩化物、水酸化物などを担体と呼ばれる高い表面積を持つ無機化合物上に固定化したものでもよい。また、アルカリ金属などを添加してもよい。また、該当する触媒は固定床流通式反応装置で用いる場合、活性劣化後の再生処理を空気で行うことから酸化物形態であることが好ましい。
【0025】
担体は酸性を有さないものであればシリカ、酸化チタン、アルミナ等いずれのものでも用いることができるが、好ましくは、シリカが挙げられる。担体の担持方法は、当業者の間で公知の方法を用いることができ、金属の硝酸塩、水酸化物、ポリ酸およびイソポリ酸のアンモニウム塩を原料として、それらの水溶液に担体を含浸、又は噴霧により担持し、空気雰囲気化において300℃以上の温度で焼成することにより得られる。
【0026】
助触媒として、含まれる2族の金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムが好ましく、特に酸化マグネシウムがもっとも好ましい。
【0027】
さらに助触媒の性能を高めるには、固体塩基性を高めることから、上記助触媒に対し、さらに、2種類以上のアルカリ金属を添加した複合化助触媒とすることが必要である。性能を高めることができる金属元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムを2種類以上組み合わせて使用することにより助触媒の性能が改善される。この時リチウムを添加することが必要で、例えばリチウム−ナトリウム、リチウム−カリウム、リチウム−ルビジウム、リチウム−セシウムの組み合わせが好ましい。
【0028】
上記の助触媒の性能を高めることができる金属元素の前駆体としては、上記の金属のギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物が使用可能である。
【0029】
助触媒に添加する方法として、これらの金属元素の前駆体の水溶液を2族金属酸化物の成形体に含浸または噴霧させてもよいし、2族金属酸化物の粉末に混練した後成形してもよい。
【0030】
このアルカリ金属を添加した助触媒を空気中で400〜700℃にて焼成することにより複合化助触媒を得ることができる。焼成温度が、400℃未満であると、原料のアルカリ金属塩の分解が不十分であり、700℃を超えると、活性が低下するため、好ましくない。この時、アルカリ金属の金属元素の担持量は2族金属酸化物に対して0.01〜4重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。0.01重量%より少ないと、アルカリ金属の添加効果が少なく好ましくない。助触媒に含まれるアルカリ金属において、他のアルカリ金属に対するリチウムの重量比は0.01〜100であることが好ましい。より好ましい重量比は、0.1〜10である。他のアルカリ金属に対するリチウムの重量比が0.01より少ないとリチウムの効果が少なくなり転化率に対して1−ブテン生成量が多くなる。このリチウムと他のアルカリ金属を適切な比率で含む複合化助触媒は、エチレンおよび2−ブテン転化率が高く、またプロピレン選択性が90%以上であり、1−ブテン生成量も少ないことから触媒性能の向上に大きく貢献する。
【0031】
複合化助触媒の形状は、粉末、顆粒状、球状、押し出し成型品もしくは打錠品でも構わない。
【0032】
メタセシス触媒に対する助触媒の比率は体積比で0.1〜20の間の任意の量で構わないが、助触媒量が0.1より少ないと助触媒の量が少ないために活性を高める効果が少なく、また20を超えるとメタセシス触媒量が少なくなるため活性が低くなり好ましくない。また、固定床流通装置で触媒を充填する場合、メタセシス触媒と助触媒とを物理的に混合して充填してもよいし、原料供給方向に近いほうから、助触媒、メタセシス触媒の順で充填してもよい。
【0033】
本発明のオレフィンメタセシス反応に用いるオレフィンの構造には特に限定がないが、原料として用いるオレフィンと得られるオレフィンとして、エチレンと2−ブテンとからプロピレン、エチレンと2−ペンテンとからプロピレンと1−ブテン、エチレンと2−ヘキセンとからプロピレンと1−ペンテン、エチレンと2−メチル−2−ブテンとからプロピレンとイソブテン、エチレンと4−メチル−1−ペンテンとからプロピレンと3−メチル−1−ブテンなどが挙げられる。なお、オレフィンメタセシス反応用混合触媒は、水分、炭酸ガス、メルカプト化合物、アルコール、カルボニル化合物によって活性を低下させるため、予め、原料中の不純物を除去する必要がある。これら除去方法は、公知の蒸留、吸着、抽出、洗浄などいずれの方法でも可能である。
【0034】
本発明のオレフィンメタセシス反応用混合触媒のメタセシス触媒および助触媒に供給される反応ガスとして、エチレンと2−ブテンとを用いてプロピレンを得ることが好ましい。また、2−ブテンに対するエチレンの量比は1〜5が好ましい。2−ブテンに対するエチレンの比が1より少ないとブテン同士の好ましくない反応が生じ、比が5を超えると未反応のエチレンの回収に多くのエネルギーを使用するので好ましくない。
【0035】
本発明に従うオレフィンメタセシス反応条件は、約50〜600℃、好ましくは約200〜500℃の温度である。反応温度が50℃より低いと反応速度が低下し、反応生成物の生産性が低下し、600℃を超えると、副反応が進行し副生成物の増大や触媒の劣化が生じるため好ましくない。反応圧力は1気圧以上である。圧力を高くすることで反応速度を高めることができ、反応温度を低下させることができるが、通常は反応速度、機器コスト、運転コストなどから100気圧以下で使用される。
【0036】
本発明のオレフィンメタセシス反応を実施する際に、使用する触媒量は限定されない。
【0037】
また、本発明を実施するに際し、反応系内に触媒および反応試剤に対して不活性な溶媒もしくは気体を添加して、希釈した状態で行うことも可能である。具体的には
、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどのアルカンや、窒素、ヘリウムなどの不活性気体を希釈剤として使用することができる。さらに、バッチ式、セミバッチ式または連続流通式のいずれの方法でも利用することができ、液相、気相、気−液混合相のいずれの形態でも実施できる。好ましくは、反応効率の観点から気相反応で実施される。さらに、触媒は、固定床、流動床、懸濁床、棚段固定床などで実施することができる。
【0038】
本発明の実施の際に、メタセシス触媒、助触媒は公知の方法で脱水することが望ましく、固定床反応方式の場合、触媒を充填した反応器に窒素、ヘリウムなどの不活性ガスを流通させ、その後、特に、タングステンやモリブデンを含有する場合には、一酸化炭素や水素のような還元性ガスを300℃以上の温度にて10分以上流通させて還元処理を行い、再度、不活性ガスを300度以上の温度にて10分間流通させて所定の反応温度に設定することができる。また、反応器は、複数並列させてオレフィンの生産量を維持することが可能であり、また流動床流通反応方式や、移動床反応方式では、一部、または全ての触媒を抜き出し、相当する分を補充することで一定の活性を維持することができる。
【0039】
反応後の反応生成物は、触媒から公知の分離方法によって分離回収することができ、オレフィン生成物は、蒸留、抽出、吸着などの公知の方法によって分離され、未反応原料は回収して反応系に再利用することができる。
【実施例】
【0040】
[性能評価方法]
メタセシス触媒としてのWO
3/SiO
2触媒と実施例1〜16および比較例1〜6に記載する方法で調製した助触媒1〜10をそれぞれ15mLずつ計30mLをポリエチレン袋中で物理的に混合した。この物理混合物を内径30mm、高さ400mmのステンレス製反応器に充填し、反応塔とした。また、同じサイズの反応器に100gのγ−アルミナ(住友化学社製NKHD−24)を充填し、エチレンおよびブテン精製塔とした。
【0041】
エチレンおよびブテン精製塔の下部および、反応塔の上部から大気圧で630mL/minの窒素を10分流通させた後、さらに70mL/minの水素を追加で流通させ、400℃で1時間保持した。その後、窒素300mL/minを流しながら、エチレンおよびブテン精製塔を50℃、反応塔を450℃で1時間保持した。反応前にエチレン精製塔の下部から、エチレン(高千穂化学製、純度99.5%)を333mL/minを、ブテン精製塔の下部から167mL/minのトランス−2−ブテン(高千穂化学製、純度99.0%)と混合し、反応塔の上部から混合ガスとして供給した。反応器の温度は、350および450℃とした。また、反応塔下部より得られた生成ガスを、ガスクロマトグラフィーにてオンライン分析した。反応を開始してから24時間後の反応ガスの組成からトランス−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率を式1および式2から求めた。
【0042】
【数1】
【0043】
【数2】
【0044】
直径4.8mm、高さ4.8mmに成型した酸化マグネシウムのタブレットを助触媒1とする。この助触媒を性能評価方法に従って試験を行った結果、助触媒1を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン
選択率は、20%および99%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、67%および98%であった。
【0045】
比較例1で用いられた助触媒1の酸化マグネシウム触媒100gにリチウム担持量として1重量%の硝酸リチウム9.95gを水20mLに溶解させた水溶液を担持し、110℃で1時間乾燥後600℃で2時間空気中にて焼成することにより、助触媒2を得た。これを比較例1と同様な操作で性能試験を行ったところ、助触媒2を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、33%および97%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、62%および92%であった。
【0046】
比較例1で用いられた助触媒1の酸化マグネシウム触媒100gにナトリウム担持量1重量%に相当する硝酸ナトリウム3.73gを水20mLに溶解させた水溶液を比較例2と同じ操作にて助触媒3を得た。これを比較例1と同様な操作で性能試験を行ったところ、助触媒3を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、50%および95%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、70%および93%であった。
【0047】
比較例1で用いられた助触媒1の酸化マグネシウム触媒100gにカリウム担持量1重量%に相当する硝酸カリウム2.61gを水20mLに溶解させた水溶液を比較例2と同じ操作にて助触媒4を得た。これを比較例1と同様な操作で性能試験を行ったところ、助触媒4を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、53%および99%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、70%および96%であった。
【0048】
比較例1で用いられた助触媒1の酸化マグネシウム触媒100gにセシウム担持量1重量%に相当する硝酸カリウム1.48gを水20mLに溶解させた水溶液を比較例2と同じ操作にて助触媒5を得た。これを比較例1と同様な操作で性能試験を行ったところ、助触媒5を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、33%および99%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、65%および97%であった。
【実施例1】
【0049】
リチウムおよびナトリウム金属担持量がそれぞれ1重量%に相当する硝酸リチウム9.95gと硝酸ナトリウム3.73gを水20mLに溶解させた水溶液をタブレット状の酸化マグネシウム100gに担持し、110℃で1時間乾燥後600℃で2時間空気中にて焼成することにより、複合化助触媒6を得た。この助触媒7.5mLとWO
3/SiO
2触媒22.5mLを混合した後反応器に詰め、性能評価方法に従って試験を行った結果、複合化助触媒6を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、49%および97%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、73%および97%であった。
【実施例2】
【0050】
リチウムおよびカリウム金属担持量がそれぞれ1重量%に相当する硝酸リチウム9.95gと硝酸カリウム2.61gを溶解させた水溶液および、タブレット状酸化マグネシウム100gを実施例1と同じ操作で処理し複合化助触媒7を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、複合化助触媒7を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、74%および95%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、78%および96%であった。また、300℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、58%および97%であった。
【実施例3】
【0051】
リチウムおよびルビジウム金属担持量がそれぞれ1重量%に相当する硝酸リチウム9.95gと硝酸ルビジウム1.74gを溶解させた水溶液および、タブレット状酸化マグネシウム触媒100gを実施例1と同じ操作で処理し複合化助触媒8を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、複合化助触媒8を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、46%および94%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、75%および94%であった。
【実施例4】
【0052】
リチウムおよびセシウム金属担持量がそれぞれ1重量%に相当する硝酸リチウム9.95gと硝酸セシウム1.48gを溶解させた水溶液および、タブレット状酸化マグネシウム触媒100gを実施例1と同じ操作で処理し複合化助触媒9を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、複合化助触媒9を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、56%および93%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、74%および93%であった。
【0053】
各金属担持量1重量%相当の硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウム1.76gおよび1.48gを溶解させた水溶液および、タブレット状酸化マグネシウム触媒100gを実施例1と同じ操作で処理し助触媒10を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、助触媒10を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、32%および99%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、58%および97%であった。
【0055】
助触媒1〜10を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒の性能評価試験結果を表1にまとめた。表1から、2種類の金属を組み合わせて酸化マグネシウム担持した助触媒6〜9を使用した触媒は、添加金属がないか、1種類のみ添加した助触媒1〜5を使用した触媒と比較して、2−ブテン転化率とエチレン転化率が向上し、特にエチレン転化率が著しく向上し、反応活性を大幅に向上させたことが分かる。それと同時に転化率が高い高温においても、プロピレン選択率を同じレベルに保持することができ、プロピレンの製造効率も大きく改善されたことが明らかになった。また、1−ブテン生成量もエチレンおよび2−ブテン転化率が高いにもかかわらず、比較例に比べて低い値となっており、高い選択性であることを示している。さらに、助触媒10のようにリチウムを含まない2種類のアルカリ金属の組み合わせを選択して触媒に使用した場合には、助触媒1〜5の1種類のアルカリ金属を使用した触媒あるいはアルカリ金属を使用していない触媒よりもさらに2−ブテン転化率が低く、反応活性が非常に低下することから、リチウムは助触媒として必ず含まれていなくてはならないことを示している。特に助触媒7は、反応温度が350℃の時と450℃の時は同等の活性を示しており、選択性も高くなっている上に、300℃で反応をさせた場合、エチレン転化率が27%、2−ブテン転化率が58%、プロピレン選択率が97%、1−ブテン生成量が1.2%であり、助触媒1から5及び10と比べて50度低い反応温度でも、同等以上の活性及び選択性を示していた。
【実施例5】
【0056】
<Li/K=0.01>
リチウム担持量0.01重量%、カリウム担持量1重量%に相当する硝酸リチウム0.09gおよび硝酸カリウム2.61gを溶解させた水溶液とタブレット状酸化マグネシウム触媒100gを実施例1と同じ操作で処理し助触媒11を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、助触媒11を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、43%および98%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、67%および96%であった。
【実施例6】
【0057】
<Li/K=0.1>
リチウム担持量0.1重量%、カリウム担持量1重量%に相当する硝酸リチウム0.99gおよび硝酸カリウム2.61gを溶解させた水溶液とタブレット状酸化マグネシウム触媒100gを実施例1と同じ操作で処理し助触媒12を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、助触媒12を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、65%および98%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、75%および98%であった。
【実施例7】
【0058】
<Li/K=0.5>
リチウム担持量1重量%、カリウム担持量2重量%に相当する硝酸リチウム9.95gおよび硝酸カリウム5.22gを溶解させた水溶液とタブレット状酸化マグネシウム触媒100gを実施例1と同じ操作で処理し助触媒13を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、助触媒13を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、68%および98%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、75%および98%であった。
【実施例8】
【0059】
<Li/K=2>
リチウム担持量2重量%、カリウム担持量1重量%に相当する硝酸リチウム19.90gおよび硝酸カリウム2.61gを溶解させた水溶液とタブレット状酸化マグネシウム触媒100gを実施例1と同じ操作で処理し助触媒14を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、助触媒14を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、69%および98%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、71%および98%であった。
【実施例9】
【0060】
<Li/K=10>
リチウム担持量1重量%、カリウム担持量0.1重量%に相当する硝酸リチウム9.95gおよび硝酸カリウム0.26gを溶解させた水溶液とタブレット状酸化マグネシウム触媒100gを実施例と同じ操作で処理し助触媒15を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、助触媒15を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、72%および99%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、76%および98%であった。
【実施例10】
【0061】
<Li/K=100>
リチウム担持量1重量%、カリウム担持量0.01重量%に相当する硝酸リチウム9.95gおよび硝酸カリウム0.03gを溶解させた水溶液とタブレット状酸化マグネシウム触媒100gを実施例1と同じ操作で処理し助触媒16を得た。これを実施例1と同じ操作にて性能試験を行ったところ、助触媒16を用いたオレフィンメタセシス反応用混合触媒における350℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、44%および99%で、450℃でのt−2−ブテン転化率およびプロピレン選択率は、69%および99%であった。
【0062】
以下に、酸化マグネシウム担持させるリチウムとカリウムの含量を変化させた助触媒7、11〜16を使用したオレフィンメタセシス反応用混合触媒の性能評価試験結果を表2にまとめた。比較対照として、酸化マグネシウムに対し、リチウムがなく、カリウムのみを含む助触媒2および酸化マグネシウムに対してリチウムのみを含む助触媒4を使用したオレフィンメタセシス反応混合用触媒の性能評価試験結果を示した。この結果から、助触媒の酸化マグネシウムに対する添加金属としてリチウムのみ、あるいはカリウムのみを使用した場合、オレフィンメタセシス反応用混合触媒存在下で350℃および450℃の両温度でオレフィンメタセシス反応を実施した場合、エチレン転化率及び2−ブテン転化率が低い上に、1−ブテン生成量が多い。一方、リチウムとカリウムを組み合わせて助触媒として添加すると、両温度とも、エチレン転化率、2−ブテン転化率、プロピレン選択率は非常に高まる上に1−ブテン生成量が低下する。特に、低温の350℃において、助触媒におけるLi/K比が0.1〜10の場合には、該助触媒を含むオレフィンメタセシス反応用混合触媒を用いた2−ブテン転化率、プロピレン選択率がいずれも非常に高い値が得られ、また1−ブテン生成量も活性に対して低い値であることから、高い反応活性および低い副反応を示すことがわかった。
【0063】
【表2】
【0064】
さらに、二酸化炭素の脱離(昇温脱離法:TPD)によりメタセシス助触媒自体の塩基性を評価した。触媒にプローブ分子として二酸化炭素を吸着させて、触媒層の温度を連続的に上昇させることによって生じる脱離した二酸化炭素の量および脱離温度を測定することによって測定した。弱い塩基点に吸着している二酸化炭素は低温で脱離し、強い塩基点に吸着している二酸化炭素は高温で脱離する。その結果を
図1に示した。縦軸はイオン強度を示し、横軸は温度を示す。比較例1の助触媒1(MgOで示す)は、200℃および600℃付近に二酸化炭素の脱離ピークが表れた。比較例2のリチウムを担持した助触媒2(Li/MgOで示す)では、200℃付近の脱離ピークが減衰し、400℃と600℃付近に新たに脱離ピークが現れた。また、比較例4のカリウムを担持した助触媒4(K/MgOで示す)では、200℃付近の脱離ピークと600℃付近に脱離ピークが現れた。これに対して、実施例2のリチウムとカリウムを担持した助触媒7(Li−K/MgO)では400℃付近にのみ脱離ピークが現れ、単純なカリウムを担持した助触媒4のピークおよびリチウムを担持した助触媒2のピークの和となるようなピークではなかった。これは酸化マグネシウムとリチウムおよびカリウムが反応して新しい塩基点を触媒表面に生成したためと考えられる。これにより、助触媒にリチウムと他のアルカリ金属、特にカリウムと複合化させたことによって、触媒表面の塩基点が変化し、2−ブテンの異性化反応を伴わず、エチレン及び2−ブテンのメタセシス反応のみの活性が最大限に引き出されることにより、この2つの反応物が1対1で定量的に効率よく反応が起こることで、高い選択性と低い副反応物の生成となるものと推測される。
【0065】
このように、オレフィンメタセシス反応用混合触媒に用いる助触媒に2種類以上の金属を組み合わせることによりオレフィンメタセシス反応用混合触媒全体の表面の塩基点が調整され、低温での触媒全体の反応性を高めることができた。反応性を高めることで、副反応の進行が懸念されたが、350℃で95%以上の高いプロピレン選択率を示すとともに、エチレン転化率、2−ブテン転化率が高いにもかかわらず2.2%以下と低い1−ブテン生成量を示し、リチウム複合化により従来に比較して活性の高いメタセシス助触媒を作り出すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の触媒は、助触媒を複合化することによって、表面の塩基性を調整することができるため、従来のように、原料の純度を考慮せずとも、簡単に反応活性および選択率の両方を向上させることができ、低温で反応活性が高いにもかかわらず、低温でプロピレン生産率を高めることができ工業生産上、安全性、コストの面で非常に有利である。