(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2成形体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、エラストマーおよび前記第1成形体である金属成形体とは異なる金属から選ばれる材料からなるものである、請求項1記載の複合成形体の製造方法。
前記レーザー光を連続照射する工程が、下記要件(A)、(B)であるときの加工時間が0.1〜30秒の範囲になるようにレーザー光を連続照射する工程である、請求項1または2記載の複合成形体の製造方法。
(A)レーザー光の照射速度が5000〜20000mm/sec
(B)金属成形体の接合面の面積が100mm2
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の複合成形体は、2つの成形体が接合された複合成形体であって、一方の成形体(第一成形体)は金属成形体であり、接合対象となる他方の成形体(第二成形体)は、前記金属成形体とは異なる構成材料からなる成形体である。
本発明の複合成形体は、一つの金属成形体(第一成形体)に対して複数の第二成形体が接合されたものすることができ、このときは複数の第二成形体として異なる構成材料からなるものを使用することもできる。
また本発明の複合成形体は、一つの第二成形体に複数の金属成形体(第一成形体)が接合されたものにすることができ、このときは複数の金属成形体(第一成形体)として異なる金属からなるものを使用することもできる。
本発明の複合成形体は、第一成形体である金属成形体の接合面が特定状態に粗面化されている(開放孔〔幹孔または枝孔〕などを有している)ことに特徴を有しているものであり、接合面に形成された開放孔(幹孔または枝孔)などの内部に第二成形体の構成材料を入り込ませることで、第一成形体と第二成形体が高い接合強度で接合されたものである。
金属成形体とは異なる構成材料からなる成形体(第2成形体)としては、前記接合面の開放孔などの内部に入り込ませることができ、その後、固化または硬化できるものであればよく、樹脂、ゴム、エラストマー、第一成形体の金属とは異なる金属などを挙げることができる。
【0021】
<金属成形体と樹脂成形体からなる複合成形体(接着剤層を含まない)>
本発明の複合成形体1は、
図1(a)または
図2に示すように、金属成形体10と樹脂成形体20が金属成形体10の粗面化された接合面12において接合されたものである。
複合成形体1は、
図1(b)に示すように、一つの金属成形体10の二つの面に対して二つの樹脂成形体20が接合されたものにすることができる。二つの樹脂成形体20は、同じ樹脂からなるものでもよいし、異なる樹脂からなるものでもよい。
複合成形体1は、
図1(c)に示すように、二つの金属成形体10の間に一つの樹脂成形体20が接合されたものにすることができる。二つの金属成形体10は、同じ金属からなるものでもよいし、異なる金属からなるものでもよい。
【0022】
粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部の断面状態について、
図3、
図4、
図5により説明する。
図3は、接合面12に多数の線(図面では3本の線61〜63を示している。各線の間隔は50μm程度)が形成されて粗面化された状態を示している。なお、「金属成形体10の表層部」は、表面から粗面化により形成された開放孔(幹孔または枝孔)の深さ程度までの部分であり、50〜500μm程度の深さ範囲である。
粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部は、
図4、
図5に示すように、接合面12側に開口部31のある開放孔30を有している。
開放孔30は、厚さ方向に形成された開口部31を有する幹孔32と、幹孔32の内壁面から幹孔32とは異なる方向に形成された枝孔33からなる。枝孔33は、1本または複数本形成されていてもよい。
なお、複合成形体1において金属成形体10と樹脂成形体20の接合強度が維持できるのであれば、開放孔30の一部が幹孔32のみからなり、枝孔33がないものでもよい。
【0023】
粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部は、
図4、
図5に示すように、接合面12側に開口部のない内部空間40を有している。
内部空間40は、トンネル接続路50により開放孔30と接続されている。
【0024】
粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部は、
図4(b)に示すように、複数の開放孔30が一つになった開放空間45を有していてもよいし、開放空間45は、開放孔30と内部空間40が一つになって形成されたものでもよい。一つの開放空間45は、一つの開放孔30よりも内容積の大きなものである。
なお、多数の開放孔30が一つになって溝状の開放空間45が形成されていてもよい。
【0025】
図示していないが、
図5(a)に示すような2つの内部空間40同士がトンネル接続路50で接続されていてもよいし、
図4(b)に示すような開放空間45と、開口孔30、内部空間40、他の開放空間45がトンネル接続路50で接続されていてもよい。
【0026】
内部空間40は、全てが開放孔30および開放空間45の一方または両方とトンネル接続路50で接続されているものであるが、複合成形体1において金属成形体10と樹脂成形体20の接合強度が維持できるのであれば、内部空間40のうちの一部が開放孔30および開放空間45と接続されていない閉塞状態の空間であってもよい。
【0027】
本発明の複合成形体1は、金属成形体10が有している開放孔30、内部空間40、トンネル接続路50、開放空間45内に、樹脂成形体20を形成する樹脂が入り込んだ状態で一体化されている。
開放孔30(幹孔32と枝孔33)と開放空間45の内部には、それぞれの開口部分から樹脂が入り込んでおり、内部空間40の内部には、開放孔30や開放空間45の開口部から入り込んだ樹脂がトンネル接続路50を通って入り込んでいる。
このため、本発明の複合成形体1は、開放孔30や開放空間45内のみに樹脂が入り込んだ複合成形体と比べると、
図1において金属成形体10と樹脂成形体20の接合面12に対して、金属成形体10の端部を固定した状態で樹脂成形体20を平行方向(
図1のX方向)に引っ張ったときの引張強度(S1)と、金属成形体10と樹脂成形体20の接合面12に対して垂直方向(
図1のY方向)に引っ張ったときの引張強度(S2)の両方が高くなる。
S1とS2は、開放孔30や開放空間45の形成密度や深さを調整し、同時に内部空間40とトンネル接続路50などの形成密度を調整することで、適宜調整することができる。
【0028】
次に本発明の複合成形体1の製造方法を説明する。
本発明の複合成形体1は、金属成形体10の接合面12を粗面化する工程と、金属成形体10と樹脂成形体20を一体化する工程を含んだ方法により製造することができる。
粗面化工程では、金属成形体10の接合面12に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射する。
この工程では、接合面12に対して高い照射速度でレーザー光を連続照射することで、ごく短時間で接合面12を粗面にすることができる。
図1の接合面12(部分拡大図)は、粗面にされた状態が誇張されて図示されている。
【0029】
連続波レーザーの照射速度は、2000〜20,000mm/secが好ましく、5000〜20,000mm/secがより好ましく、8000〜20,000mm/secがさらに好ましい。
連続波レーザーの照射速度が前記範囲であると、加工速度を高めることができ(即ち、加工時間を短縮することができ)、接合強度も高いレベルに維持することができる。
【0030】
この工程では、下記要件(A)、(B)であるときの加工時間が0.01〜30秒の範囲になるようにレーザー光を連続照射することが好ましい。
(A)レーザー光の照射速度が5000〜20000mm/sec
(B)金属成形体の接合面の面積が100mm
2
要件(A)、(B)であるときの加工時間を上記範囲内にするとき、接合面12の全面を粗面にする(粗面化する)ことができる。
【0031】
レーザー光の連続照射は、例えば次のような方法を適用することができるが、接合面12を粗面化できる方法であれば特に制限されるものではない。
(I)
図6、
図7に示すように、接合面(例えば長方形とする)12の一辺(短辺または長辺)側から反対側の辺に向かって1本の直線または曲線が形成されるように連続照射し、これを繰り返して複数本の直線または曲線を形成する方法。
(II)接合面の一辺側から反対側の辺に向かって連続的に直線または曲線が形成されるように連続照射し、今度は逆方向に間隔をおいての直線または曲線が形成されるように連続照射することを繰り返す方法。
(III)接合面の一辺側から反対側の辺に向かって連続照射し、今度は直交する方向に対して連続照射する方法。
(IV)接合面に対してランダムに連続照射する方法。
【0032】
(I)〜(IV)の方法を実施するとき、レーザー光を複数回連続照射して1本の直線または1本の曲線を形成することもできる。
同じ連続照射条件であれば、1本の直線または1本の曲線を形成するための照射回数(繰り返し回数)が増加するほど接合面12に対する粗面化の程度が大きくなる。
【0033】
(I)、(II)の方法において、複数本の直線または複数本の曲線を形成するとき、それぞれの直線または曲線が0.005〜1mmの範囲(
図6に示すb1の間隔)で等間隔に形成されるようにレーザー光を連続照射することができる。
このときの間隔は、レーザー光のビーム径(スポット径)よりも大きくなるようにする。
また、このときの直線または曲線の本数は、金属成形体10の接合面の面積に応じて調整することができる。
【0034】
(I)、(II)の方法において、複数本の直線または複数本の曲線を形成するとき、それぞれの直線または曲線が0.005〜1mmの範囲(
図6、
図7に示すb1の間隔)で等間隔に形成されるようにレーザー光を連続照射することができる。
そして、これらの複数本の直線または複数本の曲線を1群として、これを複数群形成することができる。
このときの各群の間隔は0.01〜1mmの範囲(
図7に示すb2の間隔)で等間隔になるようにすることができる。
なお、
図6、
図7に示す連続照射方法に代えて、
図8に示すように、連続照射開始から連続照射終了までの間、中断することなく連続照射する方法も実施することができる。
【0035】
レーザー光の連続照射は、例えば次のような条件で実施することができる。
出力は4〜4000Wが好ましく、50〜1000Wがより好ましく、100〜500Wがさらに好ましい。
波長は300〜1200nmが好ましく、500〜1200nmがより好ましい。
ビーム径(スポット径)は5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、5〜50μmがさらに好ましい。
焦点位置は-10〜+10mmが好ましく、−6〜+6mmがより好ましい。
【0036】
金属成形体10の金属は特に制限されるものではなく、用途に応じて公知の金属から適宜選択することができる。例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム、亜鉛、チタン、銅、マグネシウムおよびそれらを含む合金から選ばれるものを挙げることができる。また、上記金属に対して、アルマイト処理、めっき処理などの表面処理を施した金属へも適応可能である。金属成形体10の接合面12は、
図1に示すような平面でもよいし、
図2に示すような曲面でもよいし、平面と曲面の両方を有しているものでもよい。
【0037】
連続波レーザーは公知のものを使用することができ、例えば、YVO4レーザー、ファイバーレーザー(好ましくはシングルモードファイバーレーザー)、エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。これらの中でもエネルギー密度が高められることから、ファイバーレーザーが好ましく、特にシングルモードファイバーレーザーが好ましい。
【0038】
次の工程では、粗面化された金属成形体10の接合面12を含む部分と樹脂成形体20を一体化させる。
この工程では、
前工程においてレーザー光が照射された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂を射出成形する工程、または
前工程においてレーザー光が照射された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂を接触させた状態で圧縮成形する工程、
のいずれかの方法を適用することができる。
その他、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の成形方法として使用される公知の成形方法も適用することができる。
熱可塑性樹脂を使用した場合には、溶融した樹脂に圧力などをかけることで、金属成形体に形成された孔や溝やトンネル接続路内に樹脂を入り込ませた後、樹脂を冷却固化させることで複合成形体を得られる方法であればよい。射出成形や圧縮成形のほか、射出圧縮成形などの成形方法も使用することができる。
熱硬化性樹脂を使用した場合には、液状或いは溶融状態の樹脂に圧力などをかけることで、金属成形体に形成された孔や溝やトンネル接続路内に樹脂を入り込ませた後、樹脂を熱硬化させることで複合成形体を得られる成形方法であればよい。射出成形や圧縮成形のほか、トランスファー成形などの成形方法も使用することができる。
【0039】
圧縮成形法を適用するときは、例えば、型枠内に接合面12が露出された状態で(接合面12が表側になった状態で)金属成形体10を配置し、そこに熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂(但し、プレポリマー)を入れた後で、圧縮する方法を適用することができる。
なお、射出成形法と圧縮成形法で熱硬化性樹脂(プレポリマー)を使用したときは、後工程において加熱などをすることで熱硬化させる。
【0040】
この工程で使用する樹脂成形体の樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のほか、熱可塑性エラストマーも含まれる。
熱可塑性樹脂は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
【0041】
熱硬化性樹脂は、用途に応じて公知の熱硬化性樹脂から適宜選択することができる。例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
【0042】
熱可塑性エラストマーは、用途に応じて公知の熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを挙げることができる。
【0043】
これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーには、公知の繊維状充填材を配合することができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等のものを用いることができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維等を挙げることができる。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの合成繊維や天然繊維(セルロース系繊維など)や再生セルロース(レーヨン)繊維などを用いることができる。
【0044】
これらの繊維状充填材は、繊維径が3〜60μmの範囲のものを使用することができるが、これらの中でも、例えば金属成形体10の接合面12が粗面化されて形成される開放孔30などの開口径より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。繊維径は、より望ましくは5〜30μm、さらに望ましくは7〜20μmである。
このような開放孔30などの開口径より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体の開放孔30などの内部に繊維状充填材の一部が張り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー100質量部に対する繊維状充填材の配合量は5〜250質量部が好ましい。より望ましくは、25〜200質量部、さらに望ましくは45〜150質量部である。
【0045】
本発明の複合成形体の製造方法では、金属成形体の接合面12に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射しているため、レーザー光が連続照射された部分は粗面化される。
このとき、粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部が
図4、
図5に示すような状態になることを説明する。
図3に示すとおり、レーザー光(例えば、スポット径11μm)を連続照射して多数の線(図面では3本の線61〜63を示している。各線の間隔は50μm程度。)を形成することで粗面化する。1本の直線への照射回数は1〜30回が好ましい。
このようにレーザー光を連続照射したときに
図4、
図5で示されるような開放孔30、内部空間40、開放空間45などが形成される詳細は不明であるが、所定速度以上でレーザー光を連続照射したとき、金属成形体表面に一旦は孔や溝が形成されるが、溶融した金属が盛り上がって蓋をしたり、堰き止めたりする結果、開放孔30、内部空間40、開放空間45が形成されるものと考えられる。
また、同様に開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50が形成される詳細も不明であるが、一旦形成された孔や溝の底部付近に滞留した熱によって、孔や溝の側壁部分が溶融する結果、幹孔32の内壁面が溶融して枝孔33が形成され、さらに枝孔33が延ばされてトンネル接続路50が形成されるものと考えられる。
なお、連続波レーザーに代えてパルスレーザーを使用したときには、金属成形体の接合面には開放孔が形成されるが、前記開放孔同士を接続するトンネル接続路、開口部を有していない内部空間は形成されない。
【0046】
<金属成形体と樹脂成形体または金属成形体(第二成形体)からなる複合成形体(接着剤層を含む)>
金属成形体(第一成形体)と第二成形体である樹脂成形体または金属成形体の間に接着剤層を介在させた複合成形体の製造方法について説明する。
第一成形体と第二成形体で金属成形体を使用するときは、同じ金属からなるものでもよいし、異なる金属からなるものでもよい。
以下においては、金属成形体と樹脂成形体からなる複合成形体の製造方法として説明する。
最初の工程にて、上記した方法と同様に連続波レーザーを使用して、金属成形体の接合面を粗面化する。
この粗面化処理によって、金属成形体の接合面は
図4、
図5に示すような状態になっている。
【0047】
次の工程にて、粗面化した金属成形体の接合面に接着剤(接着剤溶液)を塗布する。このとき、接着剤を圧入するようにしてもよい。
接着剤を塗布することで、
図4、
図5に示すような開放孔30、内部空間40、開放空間45、開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50内に接着剤を侵入させ、さらにそれらから溢れた接着剤が接合面12の表面(開放孔30などの外)も覆うようにする。
接着剤(接着剤溶液)は、開放孔30などの内部に侵入し易くなるように粘度を調節することが好ましい。
なお、この工程では、金属成形体の接合面と接合させる樹脂成形体の面にも接着剤を塗布することができる。
【0048】
接着剤は、特に制限されるものではなく、公知の熱可塑性接着剤、熱硬化性接着剤、ゴム系接着剤などを使用することができる。
熱可塑性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル系接着剤、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、塩素化ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、プラスチゾル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ナイロン、飽和無定形ポリエステル、セルロース誘導体を挙げることができる。
熱硬化性接着剤としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
ゴム系接着剤としては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、ポリイソブチレン−ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンRTV、塩化ゴム、臭化ゴム、クラフトゴム、ブロック共重合体、液状ゴムを挙げることができる。
【0049】
次の工程にて、接着剤を塗布した金属成形体の接合面に樹脂成形体を接着する。
前工程の処理のとおり、接着剤は、開放孔30、内部空間40、開放空間45、開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50内に侵入しており、さらにそれらから溢れて接合面12の表面(開放孔30などの外)も覆っているため、接着剤によるアンカー効果がより強く発揮されることになる。
このため、このようにして得られた金属成形体と樹脂成形体の複合成形体の接合強度は、例えば、金属成形体の表面に対して、エッチング処理などの化学的処理またはサンドブラスト処理などの物理的処理をした後で接着剤を使用して樹脂成形体を接合して得た複合成形体の接合強度よりも高くすることができる。
【0050】
<融点の異なる金属成形体同士の複合成形体>
次に、融点の高い第1金属成形体と融点の低い第2金属成形体の複合成形体の製造方法について説明する。
最初の工程にて、上記した方法と同様に連続波レーザーを使用して、融点の高い第1金属成形体(例えば、鉄、SUS、他の鉄合金)の接合面を粗面化する。
この粗面化処理によって、融点の高い第1金属成形体の接合面は
図4、
図5に示すような状態になっている。
【0051】
次の工程にて、金型内に粗面化した融点の高い第1金属成形体を接合面が上になるように配置する。
その後、例えば周知のダイカスト法を適用して、溶融状態の融点の低い金属(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、マグネシウムおよびそれらを含む合金)を金型内に流し込む。
このようにすることで、第1金属成形体の
図4、
図5に示すような開放孔30、内部空間40、開放空間45、開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50内に、第2金属成形体を構成する溶融金属が侵入する。
【0052】
その後、冷却することで、融点の高い第1金属成形体と融点の低い第2金属成形体の複合成形体を得ることができる。
前工程の処理のとおり、溶融金属(第2金属成形体を構成する融点の低い金属)は、開放孔30、内部空間40、開放空間45、開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50内に侵入しているため、前記開放孔30などに侵入した金属によるアンカー効果がより強く発揮されることになる。
このため、このようにして得られた第1金属成形体と第2金属成形体からなる金属成形体同士の複合成形体の接合強度は、第1金属成形体の表面に対して、エッチング処理などの化学的処理またはサンドブラスト処理などの物理的処理をした後で、公知のダイカスト法を適用して得た金属成形体同士の複合成形体の接合強度よりも高くすることができる。
融点の高い第1金属成形体と融点の低い第2金属成形体の複合成形体は、
図1(a)〜(c)及び
図2における金属成形体10と樹脂成形体20と同様の接合状態にある複合成形体にすることができる。
【実施例】
【0053】
実施例1〜6、比較例1〜3
実施例および比較例は、
図9に示す金属成形体(厚さ1mm:アルミニウム:A5052)の接合面12の全面(40mm
2の広さ範囲)に対して、表1に示す条件でレーザー光を連続照射した。
実施例1〜5、比較例1〜3は
図6に示すようにレーザー光(シングルモードファイバーレーザー;SMFレーザー)を連続照射し、実施例6は
図7に示すようにレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、下記の方法で射出成形して、実施例および比較例の
図17に示す複合成形体を得た。
【0054】
図10は、実施例1の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍、700倍、2500倍)である。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図11は、実施例2の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図12は、実施例3の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図13は、実施例4の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図14は、実施例5の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図15は、実施例6の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図16は、比較例2の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。照射速度が1000mm/secであることから、接合面の粗面化が十分になされていなかった。
【0055】
<射出成形>
樹脂:GF60%強化PA66樹脂(プラストロンPA66−GF60−01(L7):ダイセルポリマー(株)製),ガラス繊維の繊維長:11mm
樹脂温度:320℃
金型温度:100℃
射出成形機:ファナック製ROBOSHOT S2000i100B)
【0056】
〔引張試験〕
実施例および比較例の
図17に示す複合成形体を用い、引張試験を行ってせん断接合強度を評価した。結果を表1に示す。
引張試験は、金属成形体10側の端部を固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで
図17に示すX方向(
図1のX方向であり、接合面12に対して平行方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重(S1)を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1と比較例1との対比から確認できるとおり、実施例1では1/50の加工時間で、より高い接合強度の複合成形体が得られた。
工業的規模で大量生産することを考慮すれば、加工時間の短縮ができる(即ち、製造に要するエネルギーも低減できる)実施例1の製造方法の工業的価値は非常に大きなものである。
実施例1と実施例2、3との対比から確認できるとおり、実施例2、3のようにレーザー照射の繰り返し回数を増加させることで接合強度を高めることができるが、その場合であっても、比較例1〜3と比べると加工時間を短縮することができた。
実施例1〜3と実施例4〜6との対比から確認できるとおり、実施例4〜6のようにレーザーの照射速度を高めたときにはより接合強度(
図1、
図17のX方向への接合強度S1)を高めることができた。
【0059】
実施例7〜9、比較例4〜6
実施例および比較例は、
図18に示す金属成形体(厚さ3mm:アルミニウム:A5052)の接合面12の全面(90mm
2の広さ範囲)に対して、表2に示す条件でレーザー光を連続照射した。
その後、実施例1〜6、比較例1〜3と同様に実施して、
図19に示す複合成形体を得た。
得られた複合成形体について、
図1で示すY方向(
図20のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、
図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで
図20のY方向(
図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重(S2)を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0060】
【表2】
【0061】
表2の実施例7〜9(接合面12の面積90mm
2)は表1の実施例1〜3(接合面12の面積40mm
2)に対応するものであるが、接合面12の面積が2.25倍となっている。
しかし、表2の比較例4〜6との対比から明らかなとおり、本願発明の製造方法を適用することにより、金属成形体10と樹脂成形体20の接合面12(面積90mm
2)に対して垂直方向(
図1のY方向)に引っ張ったときの引張強度(S2)も高くできることが確認できた。
【0062】
実施例10〜15、比較例7〜9
実施例および比較例は、
図21に示す金属成形体(厚さ3mm:アルミニウム:A5052)の接合面12の全面(40mm
2の広さ範囲)に対して、表3に示す条件でレーザーを連続照射した。
実施例10〜14、比較例8、9は
図6に示すようにレーザー光を連続照射し、実施例15は
図7に示すようにレーザー光を連続照射し、比較例7は
図8に示すようにレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、下記の方法で圧縮成形して、実施例および比較例の複合成形体を得た。
【0063】
<圧縮成形>
金属成形体10を接合面12が上になるように型枠内(テフロン製)に配置し、接合面12上に樹脂ペレットを加えた。その後、型枠を鉄板で挟みこみ、下記条件で圧縮して、
図22に示す複合成形体を得た。
樹脂ペレット:PA66樹脂(2015B,宇部興産(株)製)
温度:285℃
圧力:1MPa(予熱時)、10MPa
時間:2分間(予熱時)、3分間
成形機:東洋精機製作所製圧縮機(mini test press-10)
【0064】
〔引張試験〕
実施例および比較例の複合成形体を用い、引張試験を行って引張り接合強度を評価した。結果を表3に示す。
引張試験は、次のようにして実施した。
図23に示すように、複合成形体の樹脂成形体20の露出面に対して、アルミニウム板72aとその面に対して垂直方向に固定された引張部73aからなる治具74aを接着剤71aにより固着した。
同様に
図23に示すように、複合成形体の金属成形体10の露出面に対して、アルミニウム板72bとその面に対して垂直方向に固定された固定部73bからなる治具74bを接着剤71bにより固着した。
固定部73bを固定した状態で、下記条件にて引張部73aを引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重(S2)を測定した。
<引張試験条件>
試験機:テンシロン
引張速度:5mm/min
チャック間距離:16mm
【0065】
〔内部空間の観察方法〕
開口部を有していない内部空間の有無を確認した。以下にその方法を示す。
複合成形体の接合面12を含む接合部において、レーザ照射方向に対して垂直方向(
図3のA-A、B-B、C-C方向)にランダムに3箇所切断し、それぞれの表層部の断面部を走査型電子顕微鏡(SEM)で無作為に3点観察した。
SEM観察写真(500倍)において内部空間の有無を確認できた場合、その個数を数えた。なお、内部空間の最大径が10μm以下のものは除外した。
内部空間の個数(9箇所での平均値)を示した(表3)。
また、内部空間を微小部X線分析(EDX)で分析し、樹脂が内部空間まで侵入していることを確認した。
SEM:日立ハイテクノロジーズ社製 S-3400N
EDX分析装置:アメテック(旧エダックス・ジャパン)社製 Apollo XP
また、
図2のように複合成形体の金属面が曲面の場合には、曲面の接線に対して垂直方向にサンプルを切断することで、同様の測定が可能である。
なお、顕微レーザラマン分光測定装置を用いても樹脂が内部空間まで侵入していることを確認できる。
【0066】
【表3】
【0067】
実施例10〜15は、金属成形体10の接合面12に対して、それぞれ実施例1〜6と同様にしてレーザー光を連続照射したものであるから、金属成形体10の接合面12の表面は、それぞれ実施例1〜6において示したSEM写真(
図10〜
図15)と同様のものとなる。
【0068】
図24は、実施例10の複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真である(
図3のA〜Cの断面図)。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
図24からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
このため、実施例10の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(
図1のY方向)の接合強度(S2)が高くなっている。
【0069】
図25は、実施例11の複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真である(
図3のA〜Cの断面図)。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
図25からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
このため、実施例11の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(
図1のY方向)の接合強度(S2)が高くなっている。
【0070】
図26は、実施例12の複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真である(
図3のA〜Cの断面図)。
図26からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
このため、実施例12の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(
図1のY方向)の接合強度(S2)が高くなっている。
【0071】
図27は、実施例15の複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真である。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
金属成形体10には、多数の開放孔30が形成されていることが確認できる。
このため、実施例15の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(
図1のY方向)の接合強度(S2)が高くなっている。
【0072】
実施例16
実施例16は、
図28に示す金属成形体100(厚さ3mm:SUS304)の接合面112の全面(120mm
2の広さ範囲)に対して、表4に示す条件でレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体100を使用して、下記の方法でハンダ付けをおこない、
図29に示す金属成形体100(SUS304)/ハンダ110の複合成形体を得た。
図30は、SUS304/ハンダ複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真(1500倍)である。相対的に白く見える部分がハンダであり、相対的に黒く見える部分がSUS304である。粗面化されたSUS304の凹内にハンダが浸入していることが確認できた。
【0073】
未処理の金属成形体100(SUS304)を使用して、実施例16と同様の面積(120mm
2の広さ範囲)に対して、実施例16と同様のハンダ付けを試みたが、ハンダが金属成形体100(SUS304)表面から弾かれ、全体にハンダが行き渡ることなく自然に剥がれてしまい、SUS304/ハンダ接合成形体が得られなかった。
【0074】
<ハンダ付けの方法>
ハンダごてを金属成形体(SUS304)100の接合面112(120mm
2の広さ範囲)の一部表面に10秒程度当てて温めた。次に、こて先にハンダ(白光金属工業(株)製へクスゾール)を軽く押し当て、ハンダが溶け始めたら、そのまま接合面全体に溶融ハンダが行き渡るように移動させた後、ハンダ、ハンダごてを金属成形体(SUS304)100表面から離した。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例17、18
実施例17は、
図31に示す金属成形体200(厚さ3mm:アルミニウム:A5052)の接合面212の全面(120mm
2の広さ範囲)に対して、表5に示す条件でレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、下記の方法でコンプレッション成形して、
図32に示す金属成形体200(A5052)/フェノール樹脂成形体220の複合成形体を得た。
実施例18は、
図31に示す金属成形体200(厚さ3mm:SUS304)の接合面212の全面(120mm
2の広さ範囲)に対して、表5に示す条件でレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、下記の方法でコンプレッション成形して、
図32に示す金属成形体200(SUS304)/フェノール樹脂成形体220の複合成形体を得た。
【0077】
実施例17、18の複合成形体を用い、引張試験を行って引張り接合強度を評価した。結果を表5に示す。
実施例17と同じ金属サイズの未処理金属成形体(アルミニウム:A5052)を使用して、下記の方法でコンプレッション成形したが、金型から取り出し時にA5052とフェノール樹脂が自然に剥がれてしまい、複合成形体を得ることができなかった。
また、実施例18と同じ金属サイズの未処理金属成形体(SUS304)を使用して、下記の方法でコンプレッション成形したが、金型から取り出し時にSUS304とフェノール樹脂が自然に剥がれてしまい、複合成形体を得ることができなかった。
【0078】
<コンプレッション成形>
樹脂:GF強化フェノール樹脂(AV811:旭有機材工業(株)製)
金型温度:175℃
型閉圧:95kg/cm
2
樹脂サンプル重量:5.6g
加熱時間:90秒
コンプレッション成形機:東邦製26t上部フライホイール型コンプレッション成形機
【0079】
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT-1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0080】
【表5】
【0081】
実施例19および比較例10
実施例19は、
図33に示す金属成形体100(厚さ3mm:SUS304)の接合面112の全面(120mm
2の広さ範囲)に対して、表6に示す条件でレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体100を使用して、接合面112に接着剤(コニシ(株)製MOS7-200)を塗布し、GF60%強化PA66樹脂(プラストロンPA66-GF60-01(L7):ダイセルポリマー(株)製)を接合させ、
図34に示す金属成形体100(SUS304)/PA66-GF60-01(L7)の成形体120の複合成形体を得た。
比較例10は、実施例19と同じサイズの未処理金属成形体(SUS304)に接着剤(コニシ(株)製MOS7-200)を塗布し、GF60%強化PA66樹脂(プラストロンPA66-GF60-01(L7):ダイセルポリマー(株)製)を接合させ、
図34に示すSUS304/PA66-GF60-01(L7)複合成形体を得た。
実施例19および比較例10の複合成形体を用い、実施例17、18と同じ方法で引張試験を行って引張り接合強度を評価した。結果を表6に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
実施例20および比較例11
実施例20は、
図35に示す金属成形体300(厚さ1mm:アルミニウム:A5052)の接合面312の全面(40mm
2の広さ範囲)に対して、表7に示す条件でレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体300を使用して、接合面312に接着剤(コニシ(株)製MOS7-200)を塗布し、全く同様にレーザー処理した金属成形体320(アルミニウム:A5052)を接合させ、
図36に示す金属成形体300(A5052)/金属成形体320(A5052)の複合成形体を得た。
比較例11は、実施例20と同じサイズの未処理金属成形体(A5052)に接着剤(コニシ(株)製MOS7-200)を塗布し、全く同様の未処理金属成形体を接合させ、
図36に示す金属成形体300(A5052)/金属成形体320(A5052)の複合成形体を得た。
実施例20および比較例11の複合成形体を用い、
図37に示すせん断試験を行ってせん断接合強度を評価した。結果を表7に示す。
【0084】
<せん断試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT-1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0085】
【表7】
【0086】
本発明の複合成形体は、第一成形体として金属成形体を使用し、第二成形体として樹脂成形体を使用した場合には、高強度でかつ軽量である複合成形体となるため、金属代替品として使用することができる。
本発明の複合成形体は、第一成形体として金属成形体を使用し、第二成形体として第一成形体と異なる金属成形体を使用した場合には、一面側と反対面側で異なる性質を有する金属成形体にすることができる。
このため、本発明の複合成形体は、自動車の内装部品および外装部品、電子機器および電気機器のハウジングなどとして使用することができる。