(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記除菌剤には、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、エタノール、セチル酸化ベンザニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、イソプロピルメチルフェノールのうち少なくとも何れか一の薬品を含むことを特徴とする請求項1に記載の水解性シート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である水解性シートを詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0016】
なお、本発明である水解性シートにおいて、水解性シートはトイレクリーナー100を一例にして説明するが、本発明の水解性シートにはトイレクリーナー以外の清拭用途の薬液を含浸させたウェットティシューなども含まれる。また、トイレクリーナー100の製造時の紙の搬送方向をY方向(縦方向)、搬送方向に直交する方向をX方向(横方向)として説明する。
【0017】
[トイレクリーナー100の構成]
まず、トイレクリーナー100の構成について説明する。
トイレクリーナー100は、複数枚(例えば、2枚)の原紙がプライ加工(積層)されたものであって、所定の薬液が含浸されている。また、トイレクリーナー100のシート全面には、
図1に示す通り、2種類のエンボスEM11及びEM12がエンボス加工により施されている。なお、2種類のエンボスEM11及びEM12により生じる清掃対象物等との接触面積は、100mm
2当り、15mm
2〜30mm
2程度であることが好ましい。
【0018】
例えば、エンボスEM11は菱形格子となるように配置されることにより、エンボスEM11が正方格子や矩形格子に配置される場合と比較して拭きムラを軽減することができる。また、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されている。
【0019】
また、トイレクリーナー100は、折り加工されることにより、長手方向(Y方向)の中央部で2つ折りに折り畳まれる。そして、折り畳まれた状態で保管用のプラスチックケースや包装フィルム内等に保管され、使用時には必要に応じて広げて使用される。なお、トイレクリーナー100の折り畳み方は、2つ折りに限ることはなく、例えば、4つ折りにしても良く8つ折りにしても良い。
【0020】
また、本実施形態のトイレクリーナー100は、トイレを掃除した後、そのまま便器の水溜りに廃棄できるように、水解性の繊維集合体から構成されている。
【0021】
繊維集合体としては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、を混合した繊維を使用する。好適な原料繊維としては、当該原料繊維の成分のうち広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50重量%を超えるもの、すなわち広葉樹晒クラフトパルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの配合比が1/1未満となるものがあげられる。針葉樹晒クラフトパルプに比べて広葉樹晒クラフトパルプの配合比を増加させることにより、繊維間の隙間を減少させ、薬液中の水分の蒸散を抑制することができ、繊維集合体内部に薬液をより保持しやすく、拭き取り時にトイレクリーナー100を押させる動作によってより多くの薬液が拭き取り対象物に移りやすい。また、トイレクリーナー100の基材である原紙シートの強度を向上させるために、当該原紙シートには紙力増強剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)が塗布されている。より具体的には、当該原紙シートの厚み方向内側から表面及び裏面に向かうにつれてCMCの含有量が増加するように塗布されている。
【0022】
また、本実施形態のトイレクリーナー100には、所定の薬液が含浸されており、具体的には、水性洗浄剤の他、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤、有機溶剤等の補助剤を含む所定の薬液が含浸されている。当該薬液は、トイレクリーナー100の基材である原紙シートの重量に対して150〜300重量%含浸させることが望ましい。
【0023】
薬液としては、適宜のものを使用することができ、例えば、水性洗浄剤としては、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。香料としては、水性香料の他、オレンジオイル等の油性香料の中から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。除菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、エタノール、セチル酸化ベンザニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、イソプロピルメチルフェノール等を使用することができる。紙力増強剤(架橋剤)としては、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができる。有機溶剤としては、グリコール(2価)、グリセリン(3価)、ソルビトール(4価)等の多価アルコールを使用することができる。
【0024】
また、上述した薬液の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を薬液に含ませてもよい。
【0025】
エンボスEM11は、
図2(a)に示すように、膨出部PR21が曲面の形状を有している。
【0026】
また、エンボスEM12は、
図2(b)に示すように、膨出部PR22が平面の形状を有している。
【0027】
そして、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されているので、エンボスEM11の膨出部PR21及びEM12の膨出部PR22は近接して密着することにより、
図2(c)に示すように連なったエンボスEM21として形成されることになる。
また、エンボスEM11の膨出部PR21とエンボスEM12の膨出部PR22が近接するだけであって、連なっていない場合であってもよい。
【0028】
このように形成された2種類のエンボスEM11及びEM12により、清掃対象物等との接触面積を増やすことができるので、トイレクリーナー100の硬さが緩和されて、拭き取り性能が高くなる。
【0029】
すなわち、トイレクリーナー100のシート全面に、膨出部PR21が曲面であるエンボスEM11と、膨出部PR22が平面であるエンボスEM12を組み合わせて形成することにより、拭取り作業時にトイレクリーナー100に力が加わった時点で各エンボスが変形して、初めて接触面積が増加することになるので、接触面積を増加させると共に、各エンボスの変形に起因して、しなやかさも向上することになる。
【0030】
例えば、
図3(a)に示すように、単一のエンボスEM11の場合には、拭取り作業時にトイレクリーナー100に加わる力によりエンボスEM11が変形して生じる接触面積CN31は、エンボスEM11近傍に離散的に生じる。これに対して、2種類のエンボスEM11及びEM12を組み合わせた場合には、
図3(b)に示すように、拭取り作業時にトイレクリーナー100に加わる力によりエンボスEM11及びEM12が変形して生じる接触面積CN32は、
図3(a)の接触面積CN31と比較して、増加することが分かる。
【0031】
また、2種類のエンボスEM11及びEM12は、通常のエンボスの効果を同様に得ることができ、トイレクリーナーの風合い、吸収性及び嵩高性等を向上させることができる。さらに、連なったエンボスEM21は、通常のエンボスと同様に、エンボスを施すことによる見栄えの良さの効果も得ることができる。
【0032】
[トイレクリーナー100の製造方法]
次に、トイレクリーナー100の製造方法について説明する。
図4は、トイレクリーナー100の製造方法を示すフローチャートである。
図5は、トイレクリーナー100の原紙シートに対して水溶性バインダーを含むバインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。
図6は、
図5に示す溶液付与設備でバインダー溶液が付与された原紙シートを加工する加工設備の模式図である。
【0033】
トイレクリーナー100の製造方法では、
図4に示すように、先ず、抄紙機(図示省略)で原紙となる紙を抄造する抄紙工程(S1)を行う。
【0034】
次いで、
図4及び
図5に示すように、溶液付与設備において、抄造された原紙を巻取った複数(例えば、2本)の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工しプライ連続シート1Bとするプライ加工工程(S2)と、プライ連続シート1Bに対してバインダー溶液を付与し連続シート1Cとする溶液付与工程(S3)と、連続シート1Cを乾燥させる乾燥工程(S4)と、乾燥させた連続水解性シート1Dをスリットし巻取るスリット・巻き取り工程(S5)とを行う。なお、1次原反ロールは2本以上であれば適宜本数を変更可能であるが、以下の説明においては、2本使用する場合の例について説明する。
【0035】
次いで、
図4及び
図6に示すように、加工設備において、上記スリット・巻き取り工程(S5)で巻取った2次原反ロール11から繰り出される連続水解性シート1Dに対してエンボス加工を施すエンボス加工工程(S6)と、エンボス加工が施されたエンボス済シート1Eに対して仕上げ加工を施す仕上げ加工工程(S7)とを行う。なお、各工程の詳細については、後述する。
【0036】
〔抄紙工程〕
本発明にかかる抄紙工程について説明する。本発明の抄紙工程では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートを形成する。
原紙シートの原料としては、例えば、既知のバージンパルプ、古紙パルプなどを利用でき、少なくともパルプ繊維を含むものである。この原料となるパルプは、特にLBKPとNBKPを適宜の割合で配合したものが適する。なお、パルプ繊維以外の繊維として、レーヨン繊維や合成繊維などが含有されていてもよい。
また、本発明の原紙シートには、凝集剤として、アニオン性アクリルアミド系重合体(以下、「アニオン性PAM」する。)が含有される。アニオン性PAMとは、アクリルアミド系単量体とアニオン性単量体とを共重合して得られる重合体である。
アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド単独や、アクリルアミドと以下のようなアクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体等と、の混合物である。アクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体としては、メタクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−ビニルロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドが例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
アニオン性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの中和塩が例示される。
なお、アニオン性PAMの水溶性を損ねない程度であれば、スチレン、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体を配合してもよい。
アニオン性PAMの添加量としては、好適には、10〜1000ppm程度である。このような、パルプと同電荷のアニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの凝集を低下させることができ、毛細管現象により水解性を向上させることができる。
なお、原紙シートには、上述したパルプ及び凝集剤の他、湿潤紙力剤、接着剤、剥離剤等の抄紙用薬品を適宜用いてもよい。
【0037】
〔連続乾燥原紙〕
連続乾燥原紙1Aの物性としては、好適には、目付けが15〜75gsm程度である。また、プライ加工された水溶性バインダーを含むシート(連続水解性シート1D)の目付けは、30〜150gsm程度である。なお、目付けは、JIS P 8124に基づくものである。
連続乾燥原紙1Aは、後述するプライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)、スリット・巻き取り工程(S5)を経て、プライ加工された水解紙となり、更に、後述するエンボス加工工程(S6)、仕上げ加工工程(S7)を経て、トイレクリーナー100に加工される。
【0038】
〔プライ加工工程〕
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、
図5に示すように、原反ロール1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続原紙1A,1Aをプライ加工し、プライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
【0039】
〔バインダー溶液〕
次いで、バインダー溶液について説明する。バインダー溶液は、水溶性バインダーとしてのカルボキシルメチルセルロース(CMC)を含むものである。バインダー溶液中におけるカルボキシルメチルセルロースの濃度としては、1〜30重量%、好ましくは、1重量%以上、4重量%未満とする。
【0040】
他方、CMCについては、そのエーテル化度が0.6〜2.0、特に0.9〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となる。
【0041】
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることができる。これは、薬液中の特定金属イオンの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができる。
【0042】
バインダー溶液中のカルボキシルメチルセルロース以外の成分としては、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
【0043】
水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。
【0044】
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
【0045】
〔溶液付与工程〕
次いで、本実施形態の溶液付与工程(S3)ついて説明する。溶液付与工程(S3)では、
図5に示すように、プライ連続シート1Bの両方の外面(連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工した時に連続乾燥原紙1A,1A同士が対向しない面)に2流体方式の各スプレーノズル3,3により上述のバインダー溶液を噴霧する。これにより、バインダー溶液に含まれる水溶性バインダーをプライ連続シート1Bに添加することができる。
なお、バインダー溶液の噴霧方法としては、例えば、上述の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aの各シートの外面(各シートが対向しない面)に対して、2流体方式の各スプレーノズルより上述のバインダー溶液を噴霧し、直後に当該連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工することにより、上述の連続シート1Cと同等のシートを生成するようにしてもよい。
【0046】
2流体方式のスプレーノズル3は、2系統に分けられた圧縮空気と液体を混合し、噴射させる方式のスプレーノズルであり、圧縮した液体を単独で噴射させる1流体方式のスプレーノズルに比べて、液体をきめ細かく均一に噴霧することができる。
本実施形態で2流体方式のスプレーノズルを使用する場合、プライ加工されたプライ連続シート1Bの各々の外面に高い圧力(噴射圧1.5MPa以上)でバインダー溶液(粘度400〜1200MPa.s)を塗布するので、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させやすい。
一方、本実施形態で1流体方式のスプレーノズルを使用する場合、プライ加工されたプライ連続シート1Bの各々の外面に噴射圧1.5MPa以下でバインダー溶液(粘度400〜1200MPa.s)を塗布することで、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させやすく、シート表面にバインダー溶液を均一に塗布させやすくしている。
【0047】
〔乾燥工程〕
次いで、本実施形態の乾燥工程(S4)について説明する。乾燥工程(S4)では、
図5に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cのバインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
ここで、連続シート1Cの外面(表面及び裏面)から厚み方向内側に向かうにつれて、バインダー溶液の浸み込む量が減少していくことから、当該厚み方向内側に向かうにつれて、CMCの定着量が減少することとなる。そのため、後述する仕上げ加工工程(S7)で薬液が含浸された際、当該厚み方向内側に向かうにつれて、架橋反応が起こり難く、空隙を多く有することから、シート内部に当該薬液を閉じ込めた状態とすることができる。これにより、得られるトイレクリーナー100を乾き難くすることができる。また、連続シート1Cの外面付近でCMCの架橋反応が多く生じることとなるので、得られるトイレクリーナー100の表面強度を強固なものとすることができる。
乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程(S4)の前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
【0048】
また、上記乾燥設備として赤外線照射による設備を用いても良い。この場合、上記連続シート1Cの搬送方向に複数の赤外線照射部を並列し、搬送される当該連続シート1Cに対して赤外線を照射して乾燥を行なう。赤外線により水分が蒸発し乾燥されるものであるため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後段のスリット・巻き取り工程においての皺の発生が防止できる。
【0049】
〔スリット・巻き取り工程〕
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S5)について説明する。スリット・巻取り工程(S5)では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程(S5)で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
【0050】
〔エンボス加工工程〕
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S6)について説明する。エンボス加工工程(S6)では、
図6に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール12によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めるとともに、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
【0051】
〔仕上げ加工工程〕
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S7)について説明する。仕上げ加工工程(S7)では、
図6に示すように、仕上げ加工設備13において、エンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートの折り加工、折り加工がなされた各シートへの上記薬液の含浸、当該薬液を含浸させた各シートの包装を一連の流れで行う。ここで、薬液に含有される架橋剤は、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
以上の、各工程を経ることにより、トイレクリーナー100が製造される。
【実施例】
【0052】
次に、本実施形態の水解性シート(トイレクリーナー)の除菌効果について評価した結果を表1を用いて説明する。
【0053】
<実施条件>
実施例1、2では、上述のトイレクリーナー100の製造方法により製造されたトイレクリーナー100を用い、下記の評価方法に基づき除菌効果の評価を行った。
原紙シートの目付(実施例1、2):90gsm(45gsm×2)
薬液含浸率(実施例1、2):原紙シートの重量に対して200重量%
薬液(実施例1)の成分:プロピレングリコール3%、プロピレングリコールモノメチルエーテル13%、塩化ベンザルコニウム0.2%、硫酸亜鉛1%、界面活性剤・香料・防腐剤など0.7%、水82.1%
薬液(実施例2)の成分:プロピレングリコール5%、プロピレングリコールモノメチルエーテル10%、塩化ベンザルコニウム0.2%、硫酸亜鉛1%、界面活性剤・香料・防腐剤など0.7%、水83.1%
エンボスパターン(実施例1、2):段落0068、及び
図8〜10に示すパターン
【0054】
一方、比較例では、抄紙段階でCMCを添加することにより、抄造された原紙の厚み方向に対してCMCが均一となるように当該CMCを添加した原紙を上述のプライ加工工程にて2プライ加工し、次いで、上述の実施例と同様に、乾燥工程、スリット・巻き取り工程、エンボス加工工程、仕上げ加工工程を経て製造されたトイレクリーナーを用い、下記の評価方法に基づき除菌効果の評価を行った。
原紙シートの目付(比較例):90gsm(45gsm×2)
薬液含浸率(比較例):原紙シートの重量に対して200重量%
薬液(比較例)の成分:プロピレングリコール5%、プロピレングリコールモノメチルエーテル10%、塩化ベンザルコニウム0.2%、硫酸亜鉛1%、界面活性剤・香料・防腐剤など0.7%、水83.1%
エンボスパターン(比較例):段落0068、及び
図8〜10に示すパターン
【0055】
<評価方法>
ウェットワイパー類の除菌性能試験方法(平成25年4月1日制定 監修:高麗寛紀 徳島大学名誉教授)に従い、上述の実施例1、2、及び比較例の各トイレクリーナーの除菌効果の評価を行った。
なお、大腸菌及び黄色ブドウ球菌の除菌率がいずれも99.99%以上(除菌活性値が4以上)の場合は総合判定を「◎」、当該除菌率がいずれも99.9%以上(除菌活性値が3以上)の場合は総合判定を「○」、当該除菌率がいずれも99%以上(除菌活性値が2以上)の場合は総合判定を「△」、当該除菌率がいずれも99%未満(除菌活性値が2未満)の場合は総合判定を「×」とした。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示す結果のとおり、比較例の除菌効果の総合判定が「△」であるのに対し、実施例1の除菌効果の総合判定が「○」、実施例2の除菌効果の総合判定が「◎」であり、比較例に対し、実施例1、2の除菌効果が向上することを確認した。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、トイレクリーナー100の基材である原紙シートの厚み方向内側から表面及び裏面に向かうにつれてCMCの含有量を増加させた状態とすることで、薬液を当該原紙シートに含浸させた際に、当該原紙シートの内部に多量の薬液を閉じ込めた状態とすることができる。
したがって、拭取り作業時にトイレクリーナー100に圧を加えることによって、除菌剤を含んだ薬液が対象物に対して多量に放出されるので、当該対象物に付着している菌を好適に死滅させ除去することができることとなり、当該対象物の除菌効果を向上させることができる。
【0059】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
本発明の実施形態等の説明に際しては、膨出部PR21が曲面の形状を有しているエンボスEM11と、膨出部PR22が平面の形状を有しているエンボスEM12を例示しているが、必ずしもこの形状に限定されるものではなく、例えば、エンボスEM11及びエンボスEM12の膨出部が高さの異なる平面の形状であってもよい。また、例えば、エンボスEM11の膨出部が平面の形状であり、エンボスEM12の膨出部が曲面の形状であってもよい。
【0060】
言い換えれば、膨出部の形状が同一形状ではない2種類のエンボス(第1のエンボス及び第2のエンボス)であって、第1のエンボスの周囲に、第2のエンボスが配置されるものであれば、各エンボスの膨出部の形状はどのようなものであってもよい。
【0061】
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、膨出部が平面のエンボスEM12は、膨出部が曲面のエンボスEM11の間に配置されているが、エンボスEM11が互いに交差するものであってもよい。
【0062】
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、すべてのエンボスEM11及びEM12が、
図1の図面手前方向に凸になっているが、図面手前方向に凸なエンボスEM11及びEM12と、図面手前方向に凹なエンボスEM11及びEM12を交互に配置するものであってもよい。
【0063】
例えば、
図7に示すように、
図7の図面手前方向に凸なエンボスEM11及びEM12(実線部分)と、
図7の図面手前方向に凹なエンボスEM11及びEM12(破線部分)を交互に配置することにより、エンボス加工により家庭用薄葉紙の表面強度を高めると共に、トイレクリーナー100両面のどちらでも拭き取り性能の高い家庭用薄葉紙を提供することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、エンボスEM11の膨出部PR21及びEM12の膨出部PR22は近接して密着することにより、連なったエンボスEM21として形成されているが、エンボスEM11の膨出部PR21及びEM12の膨出部PR22は近接するだけで密着しないものであってもよい。
【0065】
また、本発明の実施形態の説明に際しては、エンボスEM11の形状として、円形若しくは楕円形の形状を例示しているが、エンボスの形状は方形、多角形等の任意の形状でよい。
【0066】
また、
図2におけるエンボスEM11及びEM12の膨出部の高さHT21及びHT22は、例えば、0.40mm〜0.75mmであることが好ましい。なお、例えば、キーエンス製デジタルマイクロスコープで表面を3D測定し、エンボスEM11及びEM12の膨出部の高さHT21及びHT22を測定する。
【0067】
例えば、高さが0.40mm未満であると、拭き取り時の摩擦が強くなって、拭き取りがしにくく、また、高さが0.75mmを超えると、包装時にエンボスEM11及びEM12の形状がくずれやすくなって、見栄えが悪くなる。
【0068】
また、エンボスパターンは、上述のパターンに限らず、
図8〜10に示すようなエンボスパターンであってもよい。
図8〜10に示すように、凹部e2は、凸部e1を反転した形状である。凸部e1と凹部e2は、交互に一例に配置され、この列が多列に、かつ隣り合う列における凸部e1と凹部e2が互いに半ピッチずれるように配列されたエンボスパターンを形成している。このように、凸部e1及び凹部e2が縦方向においても横方向においても交互に形成されていることで、凸部同士や凹部同士が一列に並んでいるエンボスパターンよりも汚れの拭き取り性を向上させることができる。なお、凸部e1と凹部e2の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形等が用いられる。各形状を組み合わせたものとしてもよい。
【解決手段】水溶性バインダーが添加された原紙シートに対して薬液を含浸させた水解性シートであって、前記原紙シートは、複数枚の原紙をプライ加工したものであり、かつ目付が30〜150gsmであり、広葉樹パルプに対する針葉樹パルプの配合比を1/1未満とし、当該原紙シートの厚み方向内側から表面及び裏面に向かうにつれて前記水溶性バインダーの含有量を増加させた状態とし、前記薬液には、前記水溶性バインダーに架橋反応を起こさせる架橋剤、及び除菌剤を含み、前記原紙シートの重量に対して150〜300重量%の前記薬液を含浸させた状態とする。