(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ略矩形をなした背板及び前板を有し、これら背板及び前板の一端同士が折り込み線を介して接続された板状のブランクであって、前記背板及び前記前板を互いに重ね合わせるべく前記折り込み線に沿って折り込み可能である、ブランクと、
前記ブランクの内面に前記長手方向に沿う両側縁部をそれぞれ残し、前記背板から前記前板に亘って接着された粘着シートであって、害虫を捕獲可能な粘着面及び該粘着面を覆うフィルム状の剥離材を有する、粘着シートと、
前記背板及び前記前板の他端部にそれぞれに設けられ、前記前板が折り込まれた際に前記前板を円弧状に湾曲させて前記背板と前記前板との間に側方からの害虫の侵入を許容するスペースを確保し、この状態で前記他端同士を互いに分離可能に結合する一方、前記背板及び前記前板の吊り下げを可能にする、一対の係合要素と、
前記背板及び前記前板の一方の前記両側縁部に設けられ、前記両側縁部を部分的に前記粘着シートに沿い前記背板及び前記前板の他方に向けて折り込み可能とし且つ折り込まれたときに互いに対向する少なくとも一対のフラップと
を具備する吊り下げ式組立型虫捕獲器。
前記背板の前記両側縁部は、前記一対の主フラップとは別個に一対の副フラップを含み、前記一対の副フラップ及び前記一対の主フラップは前記背板の長手方向に間隔を存して配置されている請求項5に記載の吊り下げ式組立型虫捕獲器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係る
吊り下げ式組立型虫捕獲器(以下、単に虫捕獲器と称する)は、組立前の状態で示されている。
組立前の虫捕獲器は1枚の紙製ブランク(blank)10を備え、該ブランク10は二つ折りにして折り畳まれている。
図2にブランク10の展開図が示されているように、ブランク10は細長い板状をなし、略矩形の背板12と、同じ
く矩形の前板14とを有する。
図1でみて背板12及び前板14の下端(一端)同士は折り込み線16を介して接続されている。それ故、前板14は折り込み線16に沿い背板12に向けて折り込むことができ、虫捕獲器が組立前の状態にあるとき、
図1に示されるように前板14は背板12に重ね合わされている。
【0012】
図2に示されるように、背板12及び前板14の長手方向に沿う長さがそれぞれLr,Lfで表されるとき、前板14の長さLfは背板12の長さLrよりも所定の長さだけ長い。それ故、
図1に示されるように前板14が背板12に重ね合わされたとき、前板14の上端(他端)は背板12の上端(他端)からはみ出す。
更に、背板12はその長手方向の全域に亘って一定の幅Wrを有しているものの、前板14の幅は一定ではない。詳しくは、前板14の上端部は背板12の幅Wrと同一の幅を有するが、前板14における上端部と下端部との間の部位は幅Wfを有し、この幅Wfは幅Wrよりも所定の幅だけ広い。更に、前板14の下端部の幅はWfからWrまで徐々に減少されている。
再度、
図2を参照すれば、ブランク10の内面には長尺な粘着シート(adhesive sheet)18が予め接着されている。この粘着シート18は背板12の上端部から折り込み線16を越えて前板14の上端部まで延びている。
【0013】
詳しくは、粘着シート18はブランク10の外周縁部を除き、ブランク10の内面の全域に貼り付けられている。それ故、背板12及び前板14共に、粘着シート18から露出した両側縁部及び上端部をそれぞれ有する。
粘着シート18は両面接着テープ(double-coated adhesive tape)のような形態をなし、ブランク10の内面に接着される接着面と、露出した粘着面20とを有する。虫捕獲器が組立前の状態にあるとき、
図3に示されるように粘着面20はフィルム(film)状の剥離材22で覆われている。
【0014】
更に、粘着面20には害虫誘引剤の貼り付け位置が例えば2箇所に規定されており、これら貼り付け位置は
図2中、参照符号24
U,24
Lで示されている。貼り付け位置24
U,24
Lは何れも背板12に位置付けられ、貼り付け位置24
U,24
L間には背板12の長手方向に沿い所定の間隔が確保されている。背板12の長手方向でみて背板12の中央位置は例えば、貼り付け位置24
U,24
L間に規定されている。
【0015】
本実施形態の場合、貼り付け位置24
U,24
Lはそれぞれマーク(mark)で表され、これらマークはブランク10の内面又は粘着面20に印刷されている。
貼り付け位置24
U,24
Lには、性フェロモン(sex pheromone)誘因剤及び食餌誘因剤の何れかが貼り付けられる。性フェロモン誘因剤は捕獲対象となる害虫の性フェロモンを含み、食餌誘引剤は害虫の食餌成分を含んでいる。
【0016】
一方、粘着シート18から露出した背板12の上端部には切り込み線26が形成されている。この切り込み線26は背板12の幅方向でみて中央に位置付けられ、背板12の上端に向けて開いたU字形をなす。このような切り込み線26は背板12の上端部に係合タブ(engagement tab)28を形成する。この係合タブ28は背板12の内面から持ち上げることができ、持ち上げられた係合タブ28は後述する一対の係合要素のうちの一方の係合要素を形成する。
【0017】
また、切り込み線26の両端26eは係合タブ28の外側に向けて折り返され、係合タブ28のU字形とは逆向きのU字形をなしている。係合タブ28が持ち上げられたとき、両端26eは係合タブ28における根元の両側に円弧状の隅部を形成する。
更に、本実施形態の場合、係合タブ28の中央には貫通孔30が形成されている。この貫通孔30はブランク10、即ち、背板12の吊り下げを可能とする。
一方、前板14の上端には係合切欠32が形成され、この係合切欠32は前板14の幅方向中央に配置されている。係合切欠32は他方の係合要素を形成する。本実施形態の場合、係合切欠32はU字部32
Uと、このU字部32
Uの両側にそれぞれ隣接するV字部32
Vとを含み、これらV字部32
Vは前板14の上端に滑らかに連なっている。
【0018】
ここで、V字部32
Vの底と折り込み線16との間の距離Dは背板12の長さLrに一致する。また、U字部32
Uは貫通孔30の直径と同一の幅を有し、貫通孔30と合致可能である。
更に、前板14は折り込み線34を有する。この折り込み線34は粘着シート18と係合切欠32との間に配置され、前板14を横断して延びている。なお、折り込み線34と前板14の上端との間の距離は、背板12の上端と粘着シート18との間の距離に一致する。
【0019】
本実施形態では、背板12の両側縁部には例えば三対のフラップ(flap)、即ち、一対の主フラップ36m、一対の副フラップ36s及び一対の予備フラップ36pが形成されている。詳しくは、一対の主フラップ36m及び一対の副フラップ36sは折り込み線16側及び背板12の上端側にそれぞれ分かれて配置され、一対の予備フラップ36pは主フラップ36mと副フラップ36sとの間に配置されている。
上述の各フラップ36は2つの切り込み線38と、1つの折り込み線
(折り曲げ線)40(
図4参照)とによって区画されている。2つの切り込み線38は背板12の長手方向に互いに離間し且つ背板12の対応する側の側縁部を横断している。折り込み線40は切り込み線38の内端同士を互いに接続し、粘着シート18に沿い背板12の長手方向に延びている。
【0020】
更に詳しくは、
図4に示されるように切り込み線38は、粘着シート18側に位置付けられたスリット(slit)38aと、背板18の側縁に開口したスリット38bとを有し、スリット38bの長さはスリット38aの長さよりも短い。これらスリット38a,38b間には破断可能な継ぎ目42が残され、この継ぎ目42の長さLjは例えば2mm程度である。
更に、一対の主フラップ36mは貼り付け位置24
Lと折り込み線16との間に配置されており、主フラップ36mを区画する上側の切り込み線38は貼り付け位置24
Lの直下に位置付けられている。
【0021】
一方、一対の副フラップ36sは貼り付け位置24
Uを両側から挟み込むように配置され、副フラップ36sを区画する下側の折り込み線38は貼り付け位置24
Uの直下に位置付けられている。
更に詳しくは、本実施形態の場合、背板12の長手方向に沿う各フラップ36m、36s,36pの長さを比較したとき、主フラップ36mは副フラップ36s及び予備フラップ36pよりも長く、副フラップ36s及び予備フラップ36pは同一の長さを有する。
【0022】
上述の虫捕獲器は
図1に示された折り畳み状態から組み立てて使用される。以下、虫捕獲器の組み立てに関して詳述する。
虫捕獲器が
図1の折り畳み状態にあるとき、前述したようにブランク10は剥離材22で覆われた粘着シート18とともに折り込まれ、背板12及び前板14が剥離材22及び粘着シート18を介して互いに重なり合っている。
【0023】
このような状態からブランク10は
図2に示されるように展開され、剥離材22が粘着シート18から剥がされる。それ故、粘着シート18の粘着面20が露出され、粘着面20の貼り付け位置24
U,24
Lに性フェロモン誘引剤A及び食餌誘引剤Bがそれぞれ貼り付けられる。ここで、誘引剤A,Bの貼り付け位置は逆であってもよい。
この後、前板14の上端部は折り込み線34に沿って谷折りされる。つまり、前板14の上端部は前板14の外面側に向けて折り込まれ、差し込みタブ44を形成する。一方、係合タブ28が切り込み線26に沿い背板12の内面から持ち上げられ、係合タブ28と背板12の内面との間にギャップ(gap)が形成される。
【0024】
この後、前板14が粘着シート18とともに折り込み線16に沿い背板12に向けて再び折り込まれる。この際、
図5に示されるように前板14の差し込みタブ44が込みギャップに部分的に差し込まれる。この際、
図6から明らかなように、係合タブ28における根元の両側部分が係合切欠32の両V字部32
Vに填まり込み、これにより、係合タブ28及び係合切欠32が互いに係合する。
この結果、背板12及び前板14が互いに分離可能に結合される結果、背板12及び前板14は
図5に示される籠体17を形成する。この際、係合タブ28の貫通孔30が係合切欠32のU字部32
Uに合致し、これら貫通孔30及びU字部32
Uは互いに協働してフック孔(hook hole)46を形成する。
この時点にて、虫捕獲器の組立が完了し、この組立済みの虫捕獲器は例えば屋内の柱や壁面等から突出したフック(図示しない)にフック孔46を介して吊り下げられる。
【0025】
一方、前述の距離Dが背板12の長さLrに一致するにも拘わらず、係合タブ28の根元に係合切欠32の両V字部32
Vが係合するので、籠体17の前板14は
図5に示されるように外側に向けて湾曲した状態に変形され、この結果、
図7に示されるように背板12と前板14との間には、籠体17の縦断面でみて三日月形のスペース(space)Sが確保される。なお、
図7中、前述のフック孔46はその軸線のみで示されている。
このようなスペースSは籠体17の両側面にてそれぞれ開口する。それ故、前述の性フェロモン誘引剤A及び食餌誘引剤Bからそれぞれ放出された成分はスペースS内に充満し、更に、スペースSから籠体17の外に放出される。この結果、捕獲対象の害虫は上述の成分に誘引されてスペースS内に侵入し、侵入した害虫は粘着シート18の粘着面20に貼り付いて捕獲される。
【0026】
虫捕獲器が設置された屋内が清澄な環境下にあれば、粘着シート18における粘着面20の粘着性は、性フェロモン誘引剤A及び食餌誘引剤Bの有効使用期間よりも十分に長い粘着保証期間に亘って維持される。
しかしながら、例えば製粉工場の建屋内等のように粉塵が多い環境下に虫捕獲器が設置されていれば、粉塵が籠体17のスペースSに侵入し、粘着シート18の粘着面20に付着してしまう。この場合、粘着面20は本来の粘着性を前記粘着保証期間に亘って維持できず、この結果、虫捕獲器による害虫の捕獲性能が大幅に低下する。
この点、本実施形態の虫捕獲器は粉塵の多い環境下に設置される場合、前述の三対のフラップ36m,36s,36pのうち、少なくとも1つの対のフラップを起立させることで、粉塵に対して対処可能となる。
【0027】
図7に示された虫捕獲器の場合、三対のフラップ36m,36s,36pの何れも起立されておらず、このような
図7の虫捕獲器の態様を態様0とする。これに対し、
図8に示された虫捕獲器の場合、一対の主フラップ36mは折り込み線40(
図4参照)に沿い前板14に向けてそれぞれ折り込まれることにより、共に起立し且つ互いに対向している。このような
図8の虫捕獲器の態様を態様1とする。また、
図9に示された虫捕獲器の場合、一対の主フラップ36mに加えて、一対の副フラップ36sもまた同様に起立されている。このような
図9の虫捕獲器の態様を態様2とする。
更に、
図10に示された虫捕獲器の場合、三対のフラップ36m,36s,36pの全てが起立されている。このような
図10の虫捕獲器の態様を態様3とする。
【0028】
態様1,2,3の虫捕獲器の何れにあっても、主フラップ36m及び副フラップ36sは衝立として機能する。しかしながら、態様1〜3何れであっても、主フラップ36m、副フラップ36s及び予備フラップ36pは
図8〜
図10から明らかなように籠体17における両側面の開口を完全に閉じるのではなく、その開口を部分的に閉じるだけに過ぎない。それ故、態様1〜3の虫捕獲器の場合、主フラップ36m、副フラップ36s及び予備フラップ36pはスペースS内への害虫の侵入を妨げることなく、スペースS内への粉塵の侵入を低減し、それ故、粘着シート18の粘着面20への粉塵の付着が大幅に低減されることになる。
この結果、虫捕獲器が粉塵の多い環境下に設置される場合、虫捕獲器(籠体)の態様が態様0から態様1、態様2又は態様3に変更されるだけで、虫捕獲器は粘着シート18における粘着面20の粘着性、即ち、害虫の捕獲性能を長期に亘って維持することができる。
【0029】
なお、フラップ36m,36s,36pが折り込み前の状態にあるとき、これらフラップ36を区画する切り込み線38の一部には継ぎ目42が残されている。それ故、フラップ36は継ぎ目42によって背板12における側縁の他の部位に接続された状態にあるので、折り込み前のフラップ36m,36s,36pが不用意にばたつくようなことはない。
起立した主、副及び予備フラップ36m,36s,36pの機能を検証するために、種々の粉塵濃度を有した粉塵環境を再現する暴露試験装置が準備された。この暴露試験装置に関して、
図11を参照しながら以下に説明する。
【0030】
暴露試験装置は透明な暴露ケージ(exposing cage)Gを備え、この暴露ケージGはその内部に暴露空間を規定する。該暴露空間は各辺が50cmの立方体である。暴露ケージGの天板はその中央に給気口Ainを有する一方、その周縁に排気口Aoutを有する。これら給気口Ain及び排気口Aoutは給気源及び排気源にそれぞれ接続されている。給気源及び排気源は協働して暴露ケージG内を通過する空気流を発生させる。ここでの空気流量は60L/minである。
【0031】
一方、暴露ケージG内にはその中央に四角柱Pが配置され、該四角柱Pは給気口Ainの下方に位置付けられている。四角柱Pの幅、奥行き及び高さはそれぞれ17cm,14.5cm,25cmである。
四角柱Pの上面にはカップ(cup)Cが配置されており、このカップCには粉塵として例えば小麦粉(品種:ゆきちから)が受け入れられている。例えば、カップCは90gまでの小麦粉を受入れ可能な容積を有し、カップCの内径及び深さはそれぞれ7.5cm,4.5cmである。
【0032】
次に、上述の暴露試験装置を使用して、種々の粉塵濃度を有した環境下にて、組立済みの虫捕獲器を暴露させる試験を行う。この試験の具体的な手順を以下に説明する。
(i)先ず、態様0の虫捕獲器Tを12個準備し、これら虫捕獲器Tの総重量を測定する(各虫捕獲器には前述の性フェロモン誘引剤A及び食餌誘引剤Bが取り付けられている)。
(ii)四角柱Pの4つの側面に虫捕獲器Tを3個ずつ重ねて吊り下げる。
【0033】
(iii)四角柱P上のカップCに粉塵としての小麦粉を試験量だけ投入する。
(iv)暴露ケージGに対する給気及び排気を実行し、暴露ケージG内を通過する空気流を上述の空気流量にて連続的又は間欠的に発生させる。このような空気流の発生はカップC内の小麦粉が全て暴露ケージG内に飛散されるまで継続される。
(v)暴露ケージGから12個の虫捕獲器Tを回収し、これら虫捕獲器Tから余分な小麦粉を払い落す。
(vi)次に、粉塵量(小麦粉量)の条件が異なる状態で、前記(i)〜(v)までの試験手順を行い、各粉塵条件下に暴露された態様0の虫捕獲器Tをそれぞれ得る。
(vii)前記(i)〜(vi)までの試験手順を態様1〜3の虫捕獲器に対しても同様に実施し、各粉塵条件下に暴露された態様1〜3の虫捕獲器Tをそれぞれ得る。
【0034】
一方、粉塵に暴露された虫捕獲器の捕虫性能を検証するために捕虫試験装置が準備された。この捕虫試験装置に関して、
図12を参照しながら以下に説明する。
捕虫試験装置は透明な捕虫ケージHを備え、この捕虫ケージHはその内部に捕虫空間を規定し、この捕虫空間は各辺が50cmの立方体である。
捕虫ケージHの天板はその周縁に外気導入口Binを有する。一方、外気導入口Bin側の捕虫ケージHの側壁に対向する側壁は捕虫ケージHの底の近傍に吸引口Boutを有する。外気導入口Binは外気に開放されている一方、吸引口Boutは例えば吸引ポンプに接続されている。この吸引ポンプは捕虫ケージH内の空気を吸引する。このような空気の吸引は、外気導入口Binを通じて捕虫ケージH内に空気を導入する。それ故、捕虫ケージH内を通過する空気流が発生され、ここでの空気流量は250ml/minである。
【0035】
次に、上述の捕虫試験装置を使用し、様々な粉塵の環境下で得られた虫捕獲器Tの害虫捕獲試験を行う。ここでの捕獲試験の具体的な手順について以下に説明する。
(a)先ず、態様0の虫捕獲器Tの1つを捕虫ケージHの内側面に吊り下げる。
(b)捕虫ケージH内に捕獲対象として100匹のタバコシバンムシを放飼する。ここでのタバコシバンムシは、餌の表面に出現したタバコシバンムシの中から2日目のタバコシバンムシをランダムに採取して得られたものであり、それ故、100匹中には雌雄のタバコシバンムシが混在する。
【0036】
(c)捕虫ケージHを室温30℃且つ全暗の環境下に置き、そして、24時間が経過した後、捕虫ケージHから虫捕獲器Tを回収する。
(d)虫捕獲器Tに捕獲されたタバコシバンムシの数を測定する。
(e)前記(a)〜(d)までの試験手順を同一の粉塵環境下に暴露された態様0の虫捕獲器Tに対して4回ずつ繰り返し、平均捕虫数及び態様0の虫捕獲器Tにおける平均捕虫率を相対比にて算出する。ここで、相対比は、粉塵に晒されない態様0の虫捕獲器の平均捕虫率を1.00として表されている。
(f)前記(a)〜(e)までの試験手順を態様1〜3の虫捕獲器Tに対しても同様に実施し、態様1〜3の虫捕獲器の平均捕虫率を相対比にて算出する。
【0037】
上述の試験手順にて得られた試験結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0038】
表1から明らかなように虫捕獲器が粉塵の多い環境に設置されたとき、態様0の虫捕獲器における捕虫率の相対比は粉塵の量が多ければ多い程、大きく低下した。これに対し、態様1〜3の虫捕獲器における捕虫率の相対比は、粉塵の量が極端に多くなければ、余り低下しなかった。このことは、態様1〜3の虫捕獲器がスペースS内への害虫の誘引及び侵入を妨げることなく、粘着シート18の粘着面20に付着する粉塵を低減でき、この結果、態様1〜3の虫捕獲器が長期に亘って害虫を捕獲できることを示す。
【0039】
粉塵の量が極端に多い環境下(例えば、表1中の粉塵量が90g)の場合、態様3での捕虫率の相対比は態様1,2での捕虫率の相対比に比べて余り低下していなかった。このことは一見、虫捕獲器(籠体)における両側面の開口が減少される程、害虫の捕虫性能に優れることを示すものの、これは真実ではない。
詳しくは、虫捕獲器における害虫の捕虫性能は粘着シート18の粘着性のみによって決定されるのではなく、前述のスペースSへの害虫の侵入し易さにも大きく左右される。即ち、虫捕獲器の前記開口は減少されればされる程、スペースS内への粉塵の侵入を低減できる一方、害虫の侵入をも阻止してしまう虞がある。それ故、粉塵の多い環境下では捕獲対象の害虫のサイズ及び粉塵量に応じて、使用すべき虫捕獲器を態様1〜3の中から必要がある。
本発明の場合、主フラップ36m、幅フラップ36s及び予備フラップ36pを粉塵量や害虫のサイズに合わせて起立させることで、どのような環境・害虫にも対応が可能である。
【0040】
上述の実施形態の虫捕獲器の場合、上側の貼り付け位置24
Uに性フェロモン誘引剤Aが貼り付けられ、下側の貼り付け位置24
Lに食餌誘引剤Bが貼り付けられている。これら性フェロモン誘引剤A及び食餌誘引剤Bの貼り付け位置が捕虫性能に影響するか否かを検証するため、態様0'の虫捕獲器が準備され、態様0'の虫捕獲器の場合、上側の貼り付け位置24
Uに食餌誘引剤Bが貼り付けられ、下側の貼り付け位置24
Lに性フェロモン誘引剤Aが貼り付けられている。
態様0'の虫捕獲器に対して害虫の捕獲試験を同様に行い、以下の表2に示す結果を得た。
【表2】
なお、態様0'の虫捕獲器の場合もまた、態様0の虫捕獲器と同様に何れのフラップ36も起立されていない。
表2から明らかなように、性フェロモン誘引剤A及び食餌誘引剤Bの貼り付け位置は、害虫の捕獲性能に実質的に影響しなかった。このことは、性フェロモン誘引剤A及び食餌誘引剤Bが背板14及び粘着シート18の任意の位置に貼り付け可能であることを示す。例えば、性フェロモン誘引剤A及び食餌誘引剤Bは粘着シート18の幅方向に隣接して貼り付けられていてもよい。
【0041】
本発明は上述の一実施形態に制約されるものではなく種々の変更が可能である。
例えば、予備フラップ36pは、主フラップ36m及び副フラップ36sと切込み線38を共有しているが、自身のみの切込み線によって区画されていてもよい。
また、虫捕獲器は四対以上のフラップを備えていてもよい。更に、フラップは背板12ではなく前板14の両側縁部に配置されてもよいし、背板12及び前板14の双方に配置されていてもよい。
フラップの起立姿勢を安定させる必要があれば、例えば前板又は背板にスロットを形成し、該スロットに対し、起立されたフラップを部分的に差し込むようにしてもよい。
更に、虫捕獲器は使用時、吊り下げに限らず、所望の場所に背板12を下にして配置されてもよい。
最後に、虫捕獲器の吊り下げ手段や、背板と前板との間の結合手段なども種々に変更可能であることは言うまでもない。