(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該パレットレバーを有し、メインプレート(40)への取り付けのために、前記パレットヘッド(2)によって支えられる第1の固定及び/又はガイド手段と、及び前記フォーク(6)によって支えられる第2の固定及び/又はガイド手段とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のパレットレバー(1)。
当該パレットレバーは、前記第1の軸(5)及び/又は前記第2の軸(9)上で可撓性ガイドメンバーをそれぞれ形成する第1の可撓性ないし仮想的ピボット(61)及び/又は前記第2の可撓性ないし仮想的ピボット(62)上で有する
ことを特徴とする請求項3に記載のパレットレバー(1)。
当該パレットレバーは、前記に少なくとも1つの可撓性細長片(10)の2つの端(101、102)において、第1の可撓性ないし仮想的ピボット(61)及び第2の可撓性ないし仮想的ピボット(62)を有し、
これらは、前記第1の軸(5)及び前記第2の軸(9)上でそれぞれ可撓性ガイドメンバーを形成する
ことを特徴とする請求項5に記載のパレットレバー(1)。
当該機構は、前記双安定細長片(10)が張っていてエネルギーをリチャージされている場合に前記第1(CE1)又は第2(CE2)のエネルギーパスの前で前記双安定細長片(10)を止めるように構成する止めを有し、
前記パレットヘッド(2)及び前記フォーク(6)の間の角運動を制限する止めは、可動であり、前記フォーク(6)及び前記パレットヘッド(2)それぞれの面で形成され、
前記パレットヘッド(2)の角運動は、前記フォーク(6)に備えられる2つの第2のアーム(17A、17B)で形成される止めによって制限されている
ことを特徴とする請求項13に記載の計時器用エスケープ機構(100)。
当該機構は、前記双安定細長片(10)が張っていてエネルギーをリチャージされている場合に前記第1(CE1)又は第2(CE2)のエネルギーパスの前で前記双安定細長片(10)を止めるように構成する止めを有し、
前記パレットヘッド(2)及び前記フォーク(6)の間の角運動を制限する止めは、可動であり、前記フォーク(6)及び前記パレットヘッド(2)それぞれの面で形成され、
前記パレットヘッド(2)の角運動は、前記フォーク(6)に備えられている2つの第2のアーム(17A、17B)で形成される止めによって制限されている
ことを特徴とする請求項14に記載の計時器用エスケープ機構(100)。
前記フォーク(6)は、前記可撓性双安定細長片(10)に直接取り付けられるようにマウントされており、前記可撓性双安定細長片(10)は単独では、前記バランス(30)に対する前記フォーク(6)の回転が確実となっており、
前記パレットヘッド(2)が回転する第1のピボット軸(5)に対する前記フォーク(6)の移動は、前記パレットヘッド(2)又は前記プレート(40)と一体化されたバンキング要素(71)によって制限されており、これによって、前記双安定細長片(10)が、その動作範囲全体にわたって予応力を与えられ続ける
ことを特徴とする請求項13に記載の計時器用エスケープ機構(100)。
前記フォーク(6)は、前記可撓性双安定細長片(10)に直接取り付けられるようにマウントされており、前記可撓性双安定細長片(10)は単独では、前記バランス(30)に対する前記フォーク(6)の回転が確実となっており、
前記パレットヘッド(2)が回転する第1のピボット軸(5)に対する前記フォーク(6)の移動は、前記パレットヘッド(2)又は前記プレート(40)と一体化されたバンキング要素(71)によって制限されており、これによって、前記双安定細長片(10)が、その動作範囲全体にわたって予応力を与え続けられている
ことを特徴とする請求項14に記載の計時器用エスケープ機構(100)。
前記プレート(40)は、一方では、前記パレットヘッド(2)又は前記フォーク(6)をピボット的にガイドするための固定位置に第1のジュエル(42)又は第1のアーバー(43)を有し、
他方では、前記フォーク(6)又は前記パレットヘッド(2)をそれぞれピボット的にガイドするための第2のジュエル(44)又は第2のアーバー(45)を有し、
前記第2のジュエル(44)又は前記第2のアーバー(45)は、前記前記プレート(40)に対して可変な位置にガイドされ、第2の弾性戻し手段(47)の作用を受ける
ことを特徴とする請求項19又は20に記載の計時器用エスケープ機構(100)。
前記プレート(40)は、一方では、前記プレート(40)に対して可変な位置にガイドされ、前記パレットヘッド(2)又は前記フォーク(6)をピボット的にガイドする第1の弾性戻し手段(46)の作用を受ける第1のジュエル(42)又は第1のアーバー(43)を有し、
他方では、前記プレート(40)に対して可変な位置において平行移動するようにガイドされ、前記フォーク(6)又は前記パレットヘッド(2)をそれぞれピボット的にガイドする第2の弾性戻し手段(47)の作用を受ける第2のジュエル(44)又は第2のアーバー(45)を有する
ことを特徴とする請求項19又は20に記載の計時器用エスケープ機構(100)。
前記エスケープ車(20)の前記ピボット軸(23)と、前記バランス(30)の前記ピボット軸(32)と、前記第1のジュエル(42)又は前記第1のアーバー(43)と、及びそれぞれ前記第2のジュエル(44)又は前記第2のアーバー(45)は、位置合わせされている
ことを特徴とする請求項19又は20に記載の計時器用エスケープ機構(100)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、計時器用エスケープ機構の分野に関する。
【0024】
動作の規則性を改善するために、本発明は、衝撃を良好に制御することを探求するものである。
【0025】
定力機構によって、時間にわたっての再現性を確実にすることができる。
【0026】
具体的には、エスケープ車とバランスの間に挿入された双安定要素を使用することによって、規則的な強さでバランスにエネルギーを回復させることが可能になり、この規則的な強さは、双安定要素の固有特性のみに依存し、エスケープ車によって伝達されるバレルトルクには依存しない。本発明によれば、この双安定要素は、特定の構成のパレットレバーによって形成される。
【0027】
図21は、定力機構の原理を示しており、これにおいて、バレル80からパレットレバー1のエスケープ車20に歯車列81を介してバランス30へのエネルギー伝達が行われる。この機構は、
図21において可撓性パレットレバーを有する。
図22は、双安定パレットレバーの構成を示す。本発明は、これらの2つの機構の構造体を組み合わせることを提案するものであり、これによって、保全性のレベルが高く、部品の数が少なく、反動なしでロック解除ができるようにして最大限に規則的にする。
【0028】
このために、本発明は、計時器用エスケープのためのパレットレバー1であって、少なくとも1つの入口パレット3及び/又は出口パレット4を支えるパレットヘッド2を有し、エスケープ車20と連係するように構成している。パレットアセンブリー1は、さらに、バランス30と連係するように構成するフォーク6を有する。フォーク6の角位置は、ヘッド2に対して可変である。
【0029】
本発明によると、反発的な相互作用がヘッド2とフォーク6の間で作られる。
【0030】
これは、不連続な形態でのエスケープ車からバランスまでのパレットレバーを通り抜けるエネルギー伝達であり、このパレットレバーは、エネルギーバッファとして機能する。本発明は、機構部品の運動を最小限にすることを目的とする。パレットレバーからバランスへのエネルギーの解放は、衝撃の形態になるように注意深く設計される。このようにして、パレットレバーは、これらの可動部品(ここではヘッド2及びフォーク6)の各位置に応じてエネルギーを格納し解放する手段を有する。なお、本発明の範囲から逸脱せずに、ヘッドとフォークの間に中間的なステージを加えることができる。ヘッドとフォークを有する好ましい実施形態は、部品の数を最小限にするという利点を有する。これは、特に、一部品で構成することができるからである。
【0031】
本説明は、機械的要素に予応力が与えられるようにして、反発的な反作用が機械的に達成されるような好ましい実施形態に関連する。これは、具体的には、双安定細長片を介して行われる。
図32及び
図33に示すような他の実施形態も可能である。ここにおいて、各パレットレバーはばねを有し、これはそれぞれ、直線状のばね112又はS字形のばね113であり、ヘッド2とフォーク6の間で予応力が与えられている。このばね112又は113は、パレットレバーの2つの半分の部分どうしを反発させ、その端を中心に自由に回転することができる。
図32は、フォーク6に作用するばね112の方向に働く力のレバーアームを点線で示す。他の図示していない実施形態において、反発は、本質的に機械的ではなく、ヘッドとフォーク6の間で本質的に磁気的及び/又は静電気的であって、好ましくは、2つのピボット軸5及び9を中心に回転するようにマウントされている。
【0032】
ヘッド2及びフォーク6は、好ましくは、運動軸に従い、これらは、特定の実施形態のものを図示してあり、ピボット軸である。実際に、ヘッド2及びフォーク6の運動は、独立しており、理論的には、それらがエスケープ車とバランスの間のエネルギー伝達と共存できることを前提に、任意の種類の運動を行うことができる。
【0033】
特に記載されない限り、以下の説明は、
図1〜20に示した本発明の好ましい実施形態に関し、これらにおいて、パレットレバー1は、双安定のふるまいを示し、少なくとも1つの双安定要素を有し、これは、好ましくは、少なくとも1つの可撓性細長片10である。可撓性細長片の生産は単純である。本発明の範囲から逸脱せずに、双安定要素は他の形態であってもよい。
【0034】
本発明は、さらに、エスケープ車20と前記のようなパレットレバー1と連係するバランス30とを支える少なくとも1つのメインプレート40を有する計時器用エスケープ機構100に関する。
【0035】
本発明によれば、ヘッド2及び前記フォーク6は、メインプレート40に直接又は間接的に組み立てられている。これによって、前記少なくとも1つの可撓性の予応力を与えられた座屈が形成される細長片10が、第1の端101のヘッド2と第2の端102のフォーク6の間にマウントされ、前記パレットレバー1は、2つの安定状態及び2つの準安定状態を少なくとも有する双安定系を形成する。これらの2つの第1の端101及び第2の102は、以下の通りである。
− それぞれがハウジング1010、1020内で自由に回転することができ、これらのハウジング1010、1020は、メインプレート40に対して自由に運動することができるか又は固定され、あるいは
− それぞれが、ハウジング1010、1020内に埋め込まれ、これらのハウジング1010、1020は、メインプレート40に対して自由に運動することができ、この場合に、これらのハウジング1010、1020の少なくとも一方には、他方のハウジング1020、1010の方向の復帰力が与えられる。あるいは
− それぞれが、ハウジング1010、1020内に埋め込まれ、これらのハウジング1010、1020の一方がメインプレート40に対して自由に運動することができ、この場合において、他のハウジング1020、1010がメインプレート40に対して固定され、自由である前記一方のハウジングは、弾性戻し手段401、402によって他方の方向に戻される。
【0036】
図41は、可撓性細長片10の2つの端101及び102が、それぞれハウジング1010、1020内で回転するような特定の構成を示しており、これらハウジング1010、1020は、V字形であり、それぞれがヘッド2及びフォーク6によって支えられている。ヘッド2は、トラニオン71を有し、これは、固定要素411によってプレート4に固定されたばねアーム401に支えられている。このばねは、フォーク6の方にヘッド2を押す傾向があり、同様に、フォーク6は、トラニオン72を有し、これは固定要素412によってプレート4に固定されたばねアーム402に支えられており、このばねは、ヘッド2の方にフォーク6を押す傾向がある。
【0037】
このようにして、2つのハウジング1010、1020の少なくとも1つ(
図41の特定の例においては両方)は、可撓性細長片10に対して座屈を形成させる予応力を与える復帰力を、直接的又は間接的に(この場合、ヘッド2を介して、あるいは
図41の場合においてフォーク6を介して)与えられる。
【0038】
簡明さのために、
図1〜20において、本発明は、単一の可撓性の双安定のマウントされた細長片10の特定の場合について説明している。
図30及び31は、2つの可撓性ストリップの例を示しており、他の構成も当然可能である。
【0039】
ヘッド2とフォーク6の間の唯一の直接的で恒久的な機械的接続が、ここにおいて、少なくとも1つの可撓性細長片10によって与えられる。すなわち、単一の可撓性細長片10によって、あるいは同様な座屈を形成させる予応力を与えられた形態でマウントされた複数のこのような可撓性細長片10によってである。
【0040】
パレットレバー1が双安定要素としてふるまうために、可撓性細長片10は、パレットレバー1の動作位置において予応力を与えられる。以下の説明でわかるように、予応力付与は以下によって達成することができる。すなわち、
− 変位によって
− 力又はトルクを与えることによって
− 製造時にである。
【0041】
可撓性細長片10は、座屈によって動作する。力又はトルクが与えられる予応力は、調整可能である。
【0042】
結果的に、図に示した本発明の好ましい一実施形態において、可撓性細長片10は、自由状態において、パレットレバー1がエスケープ機構100に組み入れられ、プレート40に固定される場合にとりうる形とは異なる幾何学的構成を有する。
【0043】
パレットレバー1は、プレート40への取り付けのためにヘッド2によって支えられる第1の固定及び/又はガイド手段、及びフォーク6によって支えられる第2の固定及び/又はガイド手段を有する。これらの2つの主要構成要素、ヘッド2及びフォーク6のそれぞれは、ピボット又は平行移動ガイドのような従来の機械的な接続を有していたり、メインプレート40に対する一又は複数の固定アンカー小数点を有し、メインプレートに対してピボット回転及び/又は平行移動の可動性を与えるような可撓性部分を有することができる。これは、本願と同じ出願人によるPCT特許出願EP2011/061244又は特許出願EP2455821に記載されているようにである。この構成については、以下の説明において「仮想ピボット」と呼ぶ。
【0044】
図1〜20、
図30及び
図31に示す特定の実施形態において、パレットヘッド2は、第1のピボット軸5に対して可動であるか、あるいは前記第1のピボット軸5を中心に回転し、フォーク6は、第2のピボット軸9に対して可動であるか、あるいはこの第2のピボット軸9を中心に回転する。
図1〜20において、第2のピボット軸9は、第1のピボット軸5とは別個である。
【0045】
図1〜20の特定の実施形態は、これらに限定されないものであり、ヘッド2が第1のピボット軸5に対して回転するようにマウントされたような特定の場合に関する。この同じ変種において、フォーク6は、第2のピボット軸9を中心に回転するようにマウントされている。一実施形態において、図示するように、ヘッド2及びフォーク6は、実質的に同一平面にあり、これらのピボット軸5及び9は、好ましくは別個である。層をなした変種を示す
図30及び31におけるように、他の実施形態も可能であり、これにおいて、軸5及び9は幾何学的に同じものになっており、この場合、パレットレバー1は2つの双安定細長片10S及び10Jを有し、これらのそれぞれは、プレート(図示せず)に固定された第1の端10ES及び10EJと、及びフォーク6とヘッド2にそれぞれ埋め込まれている第2の端103S、103Jとを有する。ヘッド2及びフォーク6は、部分的に重なり合っており、同じ幾何学的なピボット軸Pを中心に回転し、ループ状の戻しばね104によって接続されており、これは、フォーク6の104S、ヘッド2の104Jにおいてフックされている。このばね104は、バッファーばねとして機能し、双安定細長片のトルクよりも高いトルクを有する。
【0046】
図37は、ヘッド2及びフォーク6と同一平面状の2つの可撓性双安定細長片10、10を有するパレットレバーの別の実施形態を示す。
【0047】
他の変種も可能であり、例えば、エスケープ車20とバランス30の間の中心線に対する実質的に線形なヘッド2の振動運動を行うものであって、軸9を中心にフォーク6がピボット回転運動をするものである。
【0048】
図において示した特定の実施形態において、フォーク6は、バランス30及びローラー31の通過用くぼみ34と連係する耐衝撃機能を有するガードピン7と、衝撃機能のためにバランス30の衝撃ピン35とを連係する、ここでは、2つのホーン8の少なくとも1つのホーン8を支える。
【0049】
パレットレバー1は、ヒンジ付けされている。すなわち、ヘッド3とフォーク6は、互いに対して運動可能であり、ここでは可撓性細長片10である少なくとも1つの中間部品によって互いが間接的に接続されており、これによって、これらの間の相対的な運動の可動性が確実になる。
【0050】
この双安定要素は、好ましくは、埋め込まれたビームの形態である。図に示す特定の実施形態において、このビームは、両端において埋め込まれる。すなわち、2つの端の間の距離は、安静時のビームの長さよりも小さく、これによって、2つの安定位置及び少なくとも1つの準安定位置を有することが可能になる。双安定要素に格納されるエネルギーは、2つの端において双安定細長片10が形成する角度の関数として計算することができ、あるいは、複数の双安定細長片の場合には、各細長片の各端における各細長片と、場合に応じて、パレットレバー1、ヘッド2又はフォーク6、又はプレートの40又は他の中間部品の1つであるものと形成する角度の関数として計算することができる。複数の細長片を組み合わせることによってより多くの安定状態を得ることが可能になる。例えば、3つの細長片を組み合わせることによって3つの安定状態を得ることが可能になる。
【0051】
ビームの端はそれぞれ、具体的には、以下のように埋め込むことができる。
− 自由に回転するアーバーに
− 可撓性ピボットを形成するようにプレートにである。
【0052】
この少なくとも1つの双安定要素又は可撓性双安定細長片10は、ヘッド2とフォーク6の間で予応力が与えられ座屈を形成するようにマウントされる。好ましくは、ヘッド2とフォーク6の間の唯一の直接的で恒久的な機械的接続、すなわち、それらのピボット又はプレート40の固定要素とは別のものが、この少なくとも1つの双安定細長片10によって与えられる。
【0053】
図示したバージョンにおいて、可撓性細長片10は、ヘッド2と角度的に一体化されていて第1の軸5のすぐ近くに配置された第1の端11と、及びフォーク6と角度的に一体化され、第2の軸9のすぐ近く配置された第2の端12とを有する。
【0054】
ここで、第1の軸5と第2の軸9が、ヘッド2とフォーク6のピボット回転が発生するような幾何学的な軸であることは明らかである。これらの軸は、従来の物理的なピボットに対応するとは必ずしも限らない。それらは可撓性ピボット又は仮想ピボットに対応することができる。
【0055】
図に示した特定のバージョン(これに限定されない)において、スイス式レバーと同様に、このパレットレバー1は、入口パレット3と出口パレット4を支える。特定の変種において、入口パレット3及び/又は出口パレット4は、
図34に示す突出舌状端13を第1の軸5と反対側に有し、
図34に示すように、エスケープ車20の歯21の先端22と隣接するように受けることができる平胆な面14を有する。
【0056】
好ましい実施形態において、計時器用エスケープのためのパレットレバー1は、少なくとも1つの入口パレット3及び/又は少なくとも1つの出口パレット4を支え、エスケープ車20と連係するように構成するパレットヘッド2を有し、さらに、バランス30と連係するように構成するフォーク6を有する。フォーク6の角位置は、ヘッド2に対して可変であり、ヘッド2とフォーク6の間の唯一の直接的で恒久的な機械的接続が少なくとも1つの可撓性細長片10によって与えられる。
【0057】
本発明によると、ヘッド2及びフォーク6のピボット回転の範囲は、止めによって互いに対して制限され、ヘッド2は、少なくとも第1のアーム15を有し、これは、第1の支持及び止め面16を有し、これは、フォーク6の少なくとも第2のアーム17において備えられる第2の支持及び止め面18と、ヘッド2とフォーク6の特定の相対的な位置において、当接するように又は支持して、連係するように構成されている。
【0058】
用語「アーム」15又は17は、限定する意味において理解されてはならず、図に示した実施形態において、この部品は細長の形であるが、このアーム15又は17はパレットレバーの運動と共存できる任意の形状であることができる。
【0059】
好ましいことに、ヘッド2とフォーク6の特に
図1〜20の場合における回転範囲どうしのクリアランスが、止めによって互いに対して制限される。
【0060】
特定の好ましい実施形態において、ヘッド2は、少なくとも第1のアーム15を有し、これは、第1の支持及び止め面16を有し、これは、フォーク6の少なくとも第2のアーム17において備えられる第2の支持及び止め面18とヘッド2とフォーク6の特定の相対的位置において、当接するように又は支持して、連係するように構成されている。
【0061】
これらのアーム15及び17によって、双安定要素の巻きが完了したときに、堅牢性を有するようにエスケープ車を止めつつ、パレット石が、衝撃時に適切にロック解除されることが可能になる。
【0062】
図示した変種において、ヘッド2は、フォーク6に関する第2のアーム17A、17Bの第2の面18A、18Bと連係している第1の面16A、16Bと2つの第1のアーム15A、15Bを有する。
【0063】
特定の好ましい一実施形態において、パレットレバー1は少なくとも前記1つの可撓性細長片10又は双安定要素を1つの部品で作られており、ヘッド2、細長片10及びフォーク6は、単一の部品である。
【0064】
具体的には、このバージョンにおいては、好ましいことに、パレットレバー1は、ケイ素、酸化ケイ素、金属性ガラス、又は「LIGA」ニッケル−リン、すなわち、「LIGA」を介して特に得られたものによって作ることができる。実際に、双安定要素又は双安定細長片10の予応力付与は、非常に小さく、具体的には、5μmであり、その調整は可能であるが、互いに組み合わせて組み立てられるような場合には困難である。
【0065】
LIGAプロセスによって生産された、NiPで作られ、寸法構成が2.1×0.10×0.02mmであり、作動角度の範囲が−7°〜+7°(止めによって定められる)であるような、平胆な細長片ばねの両端の間に8μmの予応力を与えると、波状の位置(最大応力レベルが約400MPa)と単純な凹状又は凸状の弧の位置の間のエネルギーの差は、0.5μJのエネルギーパスの間の横断、そして0.13μJのエネルギー井戸の間の横断に対応する。すなわち、0.37μJの差であり、これは、各振動においてETA calibre 2824−2のエスケープ車が利用可能なエネルギーに匹敵する。このようなこれらの寸法構成は、通常の強さの衝撃を与えるのに十分である。
【0066】
別の特定の実施形態において、パレットレバー1は、第1の可撓性ピボット61及び/又は第2の可撓性ピボット62を有し、これは、第1の軸5及び/又は第2の軸9の上に可撓性ガイドメンバーをそれぞれ形成する。
【0067】
特定の実施形態において、パレットレバー1は、少なくとも1つの可撓性細長片10の2つの端101及び102において、第1の可撓性ないし仮想的なピボット61及び第2の可撓性ないし仮想的なピボット62を有し、これらのそれぞれは、第1の軸5及び第2の軸9それぞれに可撓性ガイドメンバーを形成する。
【0068】
この第1の可撓性ピボット61及び/又は第2の可撓性ピボット62は、さらに、仮想ピボットであることができる。例えば、
図39は、2つの細長片2S及び2Jによってプレート40に接続され、第1の可撓性ピボットがエスケープ車20のピボット軸23と同じになったヘッド2の例を示す。
【0069】
図18は、可撓性細長片10又は双安定要素におけるエネルギー分布の図を示しており、その角度はパレットヘッド2における対応する取り付け点又は埋め込み点11、12と細長片10の2つの端101及び102のそれぞれを形成し、フォーク6はXとYで示される。
【0070】
エネルギーのレベルは、0〜8でランダムに等級を付けられており、Zで示される。
図19は、このエネルギー分布の面の平面XOY上への射影を対応するエネルギーレベルカーブと共に示している。
【0071】
このエネルギー分布は、サドル形であり、軸OX及びOYを二分する線に沿って配向している鉛直方向の平面PSに対して対称的である。非常に高いエネルギーも尾根D(6〜8)がこの対称面PSにおいて延在する。尾根Dは、2つのエネルギーパス、第1のエネルギーパスCE1及び第2のエネルギーパスCE2によって定められ、これらはそれぞれ、エネルギー井戸と呼ばれる低いエネルギー領域と尾根Dとの間の2つの急な傾斜の間に延在し、これらは第1の安定位置PS1及び第2の安定位置PS2に対応する(エネルギー面における谷)。尾根Dの延在部分及びそれを超える部分において、エネルギーパスCE1、CE2は、低いエネルギー領域A1及びA2によってそれぞれ境界が定められている。これらのエネルギーパスCE1及びCE2は、2つの準安定位置に対応する。
【0072】
図19は、可撓性細長片10が面T18上にいずれのエネルギー位置をもとることができないことを示している。すなわち、パレットレバー1の端部分(この場合では、ヘッド2、フォーク6)は、フォーク6についての第2のバンキングピン41A、41B、あるいは第2のアーム17A、ヘッド2のピボット回転を制限するフォーク6の17Bのいずれかによって、制限される運動範囲を有する。双安定細長片10は、常に、これらの端部分、ヘッド2及びパレットレバー1のフォーク6をこれらの止めに対して押しつける。結果的に、これらの端のうちの1つが固定され、他方が自由に動くことができれば、
図20に概略的に示すように、長方形Rの縁は常に運動していることになる。この
図20は、
図1〜17に示した段階それぞれに対応するエネルギーレベルを、エネルギー軌跡がほぼ直線状であってエネルギー軌跡の四角形が良好な近似であるような、単純化された手法でまとめたものである。このようにして、フォーク6のピボット回転のようなヘッド2のピボット回転は、止めによって角度的に制限されている。図示した変種の特定の場合において、ヘッド2及びフォーク6の間の角運動を制限する止めは、可動であり、フォーク6及びヘッド2それぞれの面で形成される。
【0073】
ここで、バンキングピン41は、プレートの下にあるように示されている。なお、それらは他の位置にあってもよく、例えば、エスケープ車20の歯21の下の平胆な位置であってもよい。
【0074】
図に示した例において、このように、パレットレバー1は、閉じたサイクルを実行し、このサイクルの間、可撓性細長片10が連続的に4つの主な構成を占める。すなわち、
− エスケート車20によってエネルギーをリチャージされた後であって、波状のZ字形の輪郭(符号54)を有するような第1のエネルギーパスCE1に近づく遷移的な高エネルギー段階にある構成、
− 双安定細長片10が利用可能なエネルギーが解放された後であって、第1の方向(例、反時計回り)のバランス30に及ぼされる衝撃の形態で、前記第1のエネルギーパスCE1上を通り、細長片10が、凸状の弧の輪郭(符号51)を有する第2の安定的な低エネルギー位置PS2を占める構成、
− エスケープ車によってエネルギーをリチャージした後であって、波状のS字形の輪郭(符号53)を有し、第2のエネルギーパスCE2に近づく遷移的な高エネルギー段階にある構成、
− 細長片10が利用可能なエネルギーが解放された後であって、第2の方向(例、時計回り)のバランス30に及ぼされる衝撃の形態で、前記第2のエネルギーパスCE2上を通り、細長片10が、凹状の弧の輪郭(符号52)を有する第1の安定的な低エネルギー位置PS1を占める構成である。
【0075】
当然、双安定細長片10で形成された予応力が与えられたビームの形は、例であってこれに限定されない。細長片10が占めることができる凹状、凸状、S字形Z字形の幾何学構成は、本事例に特有のものである。例えば、安定的な休止状態において、S字型やZ字型のように、より複雑な幾何学的構成を用いることもできる。
【0076】
正方形ではなく長方形Rに従うような好ましい選択は、双安定細長片10が再び張られた際にエネルギーパスの前で止める目的の下で説明したものである。実際に、エネルギーパス上の不安定な位置で止まるリスクとして、衝撃が非常に小さい場合、双安定細長片10が傾いて、その後、ガードピン7がバランスローラーによってブロックされ、恒久的にローラーをこすることになるということがあり、これが、動作を害し効率を害する。このように、双安定細長片10が張られ、エネルギーをリチャージされた際に、第1のエネルギーパスCE1又は第2のエネルギーパスCE2の前で、止めによって双安定細長片10を止めるように構成することが好ましい。
【0077】
ヘッド2及びフォーク6の間の角運動を制限する止めは、好ましいことに、可動であり、フォーク6及びヘッド2それぞれの面によって形成されている。
【0078】
図において、ヘッド2の角運動は、フォーク6において備えられる2つのアーム17A、17Bによって形成される止めによって制限される。
【0079】
面18A、18Bは、引き出しデバイスなしでロックを達成することと同等の止めを形成する。好ましくは、
図1に示すように、これらは、第2のピボット軸9を中心とする円Aの弧の輪郭を有し、これによって、バランス30の衝撃ピン35がフォーク6(以後の段階T2からT3まで)の駆動を開始しても、ヘッド2が回転せず、従って、克服する摩擦がなくなる。
【0080】
サイクルの各段階の番号は、対応する図の番号と一致する。
【0081】
図1の第1段階T1において、エスケープ車20は不動であって、その歯21Aがパレットヘッド2の入口パレット3で休止している。
− パレットヘッド2は不動であって、その第1のアーム15Bは、フォーク6の第2のアーム17Bの第2の支持面18Bによってその先端16Bで止められている。この図に示したロックモードは、これに限定されるものではなく、小型で製造化単純化であるという利点を有する。
− 双安定細長片10は、Z字形(符号54)であり、エネルギーパスCE1に近い。
− フォーク6は不動であって、その止め面19Aは、対応するバンキングピン41Aで止められる。
− バランスの自由な弧となっている。バランス30が反時計回りである第1の方向に回転し、衝撃ピン35は11時の位置にある。
【0082】
T2において、
− エスケープ車20は不動のままである。
− パレットヘッド2は不動のままである。
− 双安定細長片10はZ字形(符号54)であり、エネルギーパスCE1に近い。
− フォーク6は不動のままであり、ピン41Aで休止している。
− バランス30は第1の方向に回転し、10時の位置の衝撃ピン35は、ホーン8Bの内側面81Bで休止しており、したがって、バランス30は、フォーク6を解放し始める。
【0083】
T3において、
− エスケープ車20は不動のままである。
− パレットヘッド2は不動であり、その第1のアーム15Bは第2のアーム17Bによって止められ、これは、その解放を開始し、これによって、パレットヘッド2が次の段階において解放されることが可能になる。ここにおいても、本発明の趣旨に逸脱せずに、代わりの手法を用いることができる。
− 双安定細長片10は、Z字形(符号54)であり、エネルギーパスCE1を横断し始める。
− フォーク6は、第2の方向(例、時計回り)に回転し、そのストップ面19Aは、ピン41Aから離れ、その第2のアーム17Bは、第1のアーム15Bを離れる時点にある。
− バランス30は、第1の方向に回転し、9時の位置の衝撃ピン35がホーン8Bの内側面81Bで休止しており、したがって、バランス30がフォーク6を解放する。
【0084】
T4は、駆動段階であり、細長片10はエネルギーパスCE1を横断し、バランス30に対して第1の方向の衝撃を与える。
− エスケープ車20は自由に運動することができ、その慣性のためにほとんど瞬間的に不動のままである。
− 双安定細長片10への接続を除いて、パレットヘッド2は自由に運動することができる。
− 双安定細長片10は、エネルギーパスCE1を横断し、緩和し、凸状の形51に変わる。
− フォーク6は、第2の方向(例、時計回り)に回転し、パレットヘッド2を解放し、ホーン8Aの内側面81Aが衝撃ピン35を第1の方向に駆動する。これが衝撃である。
− バランス30は第1の方向に回転し、これにおいて、9時の位置の衝撃ピン35がホーン8Aによって駆動される。
【0085】
T5は、フォーク6によってバランス30に与えられる衝撃の終わりであって、これは、そのバンキングピン41Bで止められる。
− エスケープ車20は、自由に運動することができ、その慣性のためにほとんど瞬間的に不動のままである。
− パレットヘッド2は自由に運動することができる。
− 双安定細長片10は、凸状の形51の安定的な低エネルギー位置PS2に達する。
− フォーク6は、第2の方向(例、時計回り)に回転し、そのホーン8の内側面81Aは衝撃ピン35との接触がなくなり、これが衝撃段階の終わりである。
− バランス30は、第1の方向に回転し、8時の位置の衝撃ピン35は、ホーン8Aとの接触がなくなる。
【0086】
T6において、回転して自由な弧を描くのはバランス30のみである。
− エスケープ車20は、第1の方向に回転し始める。
− パレットヘッド2は自由に運動可能である。
− 双安定細長片10は、凸状の形51で、安定的な低エネルギー位置PS2にある。
− フォーク6は不動であって、その止め面19Bがピン41Bで休止している。
− バランス30が第1の方向に回転し、6:30の位置衝撃ピン35は衝撃の影響下にある。
【0087】
T7において、エスケープ車2はヘッド2によって解放される。
− エスケープ車20は第1の方向に回転する。
− パレットヘッド2は第1の方向に回転する。
− 双安定細長片10は、わずかに曲げられ又は曲げを解除する。これは回転のためである。
− フォーク6は不動のままであり、ピン41Bで休止している。
− バランス30は第1の方向に回転し、その衝撃ピン35は、衝撃の影響の下で6時の位置に達する。
【0088】
好ましいことに、第1のバンキングピン48A、48Bは、衝撃又は力学的な影響を受けた場合の保全デバイスとしてヘッド2の近傍に配置されている。これは、ヘッド2が、第2の方向(例、時計回り)に回転するような段階6から段階7へと変わる際にである。過度に速い速さになった場合には、過度になったというリスクが発生する。これに対して、段階8では、反対方向に再び出発する必要がある。
【0089】
T8では、エスケープ車20が、パレットレバー1の別のパレット石4に達する。ドロップ角、すなわち、エスケープ車20が段階T7及びT8の間を自由に動く角度は、本発明の理解のために図示した従来のエスケープ車20には大きすぎることがある。エスケープ車20及びパレットヘッド2のパレット石3及び4の歯21の幾何学的構成を最適化して、ドロップ角を減らすことは有用である。
− 歯21Bが出口パレット4で止められるまで、エスケープ車20は第1の方向に回転する。
− パレットヘッド2は自由に運動でき、瞬間的に不動である。
− 双安定細長片10は、凸状の形51で安定位置PS2に留まる。
− フォーク6は、ピン41Bにて休止しているしていて不動のままである。
− バランス30は可動であり、移動を継続する(その衝撃ピン35は6時の位置にある)。T9において、エスケープ車20によって提供されるエネルギーによって、双安定細長片10を張り、エネルギーをリチャージすることが可能になる。双安定細長片10は次のエネルギーパスCE2に近づく。
− エスケープ車20は、パレット石4に当接して第1の方向に回転し、パレットヘッド2をピボット回転させる。
− パレットヘッド2は、第2の方向(例、時計回り)に回転し、当接するように動き、その第1のアーム15Aは、フォーク6の第2のアーム17Aの第2の止め面18Aによってその先端16Aで止められ、そして、止められると、これによって、エスケープ車20をロックする。
− 双安定細長片10は、パレットヘッド2を介してエスケープ車によって再び張られ、エネルギーパスCE2のすぐ近くでS字形の波状の位置53に変わる。
− フォーク6はピン41Bによって休止しているしていて不動のままであり、双安定要素の巻きは終了し、ロックが達成される。
− バランス30は可動である(次の段階T10まで1回の振動を行う)(その衝撃ピン35は6時の位置にある)。
【0090】
T10において、バランス30は、次の振動において戻り始める。
− エスケープ車20は、不動であり、パレット石4にて休止している。
− パレットヘッド2は、不動であり、フォーク6の第2のアーム17A上のその第1のアーム15Aを介して休止しており、止められると、これによって、エスケープ車20をロックする。
− 双安定細長片10は、エネルギーパスCE2のすぐ近くにて形53でS字形の波状の位置にある。
− フォーク6は不動のままであり、ピン41Bにて休止している。
− バランス30は、第2の方向に回転し、8時の位置のその衝撃ピン35は、ホーン8Aの内面81Aにて休止し、フォーク6は解放され始める。
【0091】
T11では、バランス30は、フォーク6を解放し、これは、次にはパレットヘッド2を解放する。
− エスケープ車20は不動であり、パレット石4で休止する。
− パレットヘッド2は不動であり、第2のアーム17Aで休止する。
− 双安定細長片10は、形53でS字形の波状の位置にあり、エネルギーパスCE2を横断しつつある。双安定要素は駆動要素になり、エネルギーパスを横断すれば、再生をやめる。
− フォーク6は第1の方向に回転し、パレットヘッド2を解放する位置に到達する。
− バランス30は、第2の方向に回転し、その際、9時の位置のその衝撃ピン35はホーン8Aの内面81Aで休止している。そして、フォーク6を解放する。
【0092】
T12において、双安定細長片10は、エネルギーパスCE2を横断し、T4と対称的に、第2の方向の衝撃をバランス30に与える。
− エスケープ車20は自由に動くことができるが、その慣性により未だ瞬間的にはほとんど不動である。
− パレットヘッド2は、双安定細長片10への接続を除いて、自由に動くことができる。
− 双安定細長片10は、エネルギーパスCE2を横断し、緩和し、凹状の形52に変わる。
− フォーク6は、第1の方向に回転し、パレットヘッド2を解放する。そのホーン8Bの内面81Bは、衝撃ピン35を、第2の方向(例、時計回り)に駆動する。これが衝撃である。
− バランス30は、ホーン8Bの内面81Bによって駆動され、第2の方向に回転し、その際、衝撃ピン35は9:30の位置にある。
【0093】
T13では、衝撃は終了し、フォーク6は停止位置に到達する。
− エスケープ車20は自由に動くことができるが、その慣性によりまだ瞬間的にはほとんど不動である。
− パレットヘッド2は自由に動くことができる。
− 双安定細長片10は、安定な低いエネルギー位置PS1にて凹状の形52である。
− フォーク6は、第1の方向に回転し、そのホーン8Bは、第2の方向(例、時計回り)に衝撃ピン35を駆動し、その止め面19Aはピン41Aで休止する。
− バランス30は、ホーン8Bの内面81Bによって駆動されて、第2の方向に回転し、その際、衝撃ピン35は10:30の位置にある。
【0094】
T14では、T6と同様に、バランス30は、今回は第2の方向に、補助的な弧を描く。
− エスケープ車20は自由に動くことができるが、その慣性によりまだ瞬間的にはほとんど不動であり、回転し始める。
− パレットヘッド2は自由に動くことができる。
− 双安定細長片10は、安定な低いエネルギー位置PS1にて凹状の形52である。
− フォーク6は不動であり、ピン41Aで休止している。
− バランス30は、第2の方向に回転し、衝撃ピン35は11時の位置にある。
【0095】
T15では、T7と同様に、車20がパレット石4を通過する。
− エスケープ車20は第1の方向に回転する。
− パレットヘッド2は第2の方向に回転し、パレット石3は、車20の歯の軌道に入る。
− 双安定細長片10は、安定な低いエネルギー位置PS1にて、凹状の形52である。
− フォーク6はピン41Aで休止しており、不動のままである。
− バランス30は可動である(衝撃ピン35は11時の位置にある)。
【0096】
T16では、T8と同様に、エスケープ車20がパレット石3に達する。
− エスケープ車20は第1の方向に回転し、歯21Cはパレット石3で休止する。
− パレットヘッド2は自由に動くことができるが不動である。
− 双安定細長片10は、安定な低いエネルギー位置PS1にて、凹状の形52である。
− フォーク6はピン41Aで休止しており、不動のままである。
− バランス30は可動である(衝撃ピン35は11時の位置にある)。
【0097】
段階T17は、段階T9と同様な形態で、段階T1に戻る前に、サイクルを終了し、双安定細長片10は、エスケープ車20によって提供されるエネルギーによって、張ってエネルギーをリチャージすることができる。双安定細長片は次のエネルギーパスCE1に近づく。
− エスケープ車20は第1の方向に回転し、パレット石3で休止し、ヘッド2を回転する。
− パレットヘッド2は第1の方向に回転し、細長片10を張る。
− 双安定細長片10は、波状のZ字形(符号54)であり、これは、第1のエネルギーパスCE1に近づく。
− フォーク6はピン41Aで休止しており、不動のままである。
− バランス30は可動である(衝撃ピン35は11時の位置にある)。
【0098】
サイクルの連続的な段階の説明を単純化するために、「バランス30に対する双安定細長片10の衝撃」及び「エスケープ車20による双安定細長片10の巻き」の2つの段階は、図においてまったく関連づけられていない。しかし、実際には、これらの2つの段階は、部分的に時間において重なり合っており、これは、エスケープ車の慣性が大きい場合は、比較的少しである。
【0099】
典型的には、
−速度バランス30によって与えられる段階2及び5(双安定要素の衝撃)の間の持続時間は、4Hzにおける300°の振幅及び50°のリフト角に対して、約7m秒と、非常に短い。
− エスケープ車の慣性が大きい場合(約1回の振動)には、段階7及び9(双安定細長片10の巻き)の間の持続時間は、長いことがあり、約120m秒までになる。
【0100】
バランスに伝達されるエネルギーが常に同一であるためには、双安定細長片10がゆっくり張られることが好ましく、したがって、エスケープ車(又は歯車列の残り)の慣性が大きいことが好ましい。
【0101】
なお、2つの重なり合った双安定細長片10S及び10Jを備えた
図30及び31の一実施形態において、ヘッド2とフォーク6の間の戻しばね104の剛性を調整することによって、2つのエネルギー井戸が尾根によって分離されている状況で同様なエネルギー分布を得ることができるということは注目される。
【0102】
好ましくは、エスケープ機構100は、エスケープ車20と、このようなパレットレバー1の1つと連係する少なくとも1つのバランス30とを支える少なくとも1つのメインプレート40を有する。プレート40は、バランス30のローラー31の近傍におけるフォーク6の近くにバンキングピン41(図において41A、41B)を有する。
【0103】
本発明によると、パレットレバー1はプレートに接続される。これは、
− 一方では、パレットレバー1がピボットとベアリングによって従来の手法でガイドされる場合には第1のピボットアーバー63によって、あるいはパレットレバーが第1の可撓性ピボット61を備えた可撓性ガイドメンバーを有する場合には第1の固定接続65によって、第1の軸5上にである。
− 他方では、パレットレバー1がピボットとベアリングによって従来の手法でガイドされる場合には第2のピボットアーバー64によって、あるいはパレットレバー1が第2の可撓性ピボット62を備えた可撓性ガイドメンバーを有する場合には第2の固定接続66によって、第2の軸9上にである。
【0104】
プレート40は、
− 一方では、ヘッド2のピボット回転のガイドのために固定位置の第1のジュエル42又は第1のアーバー43又は第1の可撓性ガイドメンバー、
−他方では、フォーク6のピボット回転のガイドのための第2のジュエル44又は第2のアーバー45又は第2の可撓性ガイドメンバーを有する。
【0105】
図35に示すように、第1の変種Aにおいて、第2のジュエル44又は第2のアーバー45は、第1のジュエル42又は第1のアーバー43に対して、固定距離離れており、特定の実施形態においては固定位置にある。
【0106】
第2の変種Bにおいて、第2のジュエル44又は第2のアーバー45は、プレート40に対して位置を変えるように可動であり、特定の実施形態においては平行移動するようにガイドされることは注目すべきであり、第2の弾性戻し手段47の作用を受ける。当然、また、逆の構成も可能であり、第1のジュエル42又は第1のアーバー43がこのようにして可動である。当然、第2のジュエル44又は第2のアーバー45の可動性が平行移動を行っておらず、ピボット回転運動などの運動を行っているような変種を作ることができる。
【0107】
第3の変種Cでは、プレート40は、一方では、第1のジュエル42又は第1のアーバー43を有し、これは、可動であって、特定の実施形態においては、プレート40に対する可変位置において平行移動するようにガイドされ、パレットヘッド2を回転するようにガイドするために第1の弾性戻し手段46の作用を受ける。また、他方では、第2のジュエル44又は第2のアーバー45を有し、これは、可動であって、特定の実施形態においては、プレート40に対する可変位置において平行移動するようにガイドされ、フォーク6を回転するようにガイドするために、第2の弾性戻し手段47の作用を受ける。ここでもまた、逆の構成が可能である。当然、第1のジュエル42又は第1のアーバー43の可動性が平行移動を行うものではなくピボット回転運動や他の任意の運動を行うような変種を作ることができる。
【0108】
好ましくは、これらの異なる変種において、エスケープ車20のピボット軸23、バランス30のピボット軸32、第1のジュエル42又は第1のアーバー43、第2のジュエル44又は第2のアーバー45は整列する。
図36は、別の構成を示しており、フォーク6は、エスケープ車−バランスのアライメントから外れて可動であり、可撓性細長片10は、例えば(これに限定されない)、バランススタッフを中心とする円の弦又は弧である、中間位置を中心に変形される。この構成によって、従来の位置合わせされたボアを有する既存のムーブメントであって通常スイス式レバーに用いられる軸がヘッド2の軸5となったものを変更することが可能になる。
【0109】
本発明の特定の実施形態では、双安定パレットレバー1は、カセット内にて予め組み立てられ、可撓性細長片10は、カセット内にて既に予応力を与えられている。これによって、パレットレバー1はこの正確な双安定なふるまいを示す。カセットは、プレートに集中化及び/又は固定する手段を有する。好ましいことに、カセットは、集中化手段を有し、これは、既存のムーブメントにおいてスイス式レバーのために通常用意されるピボットと連係するように構成する。場合に応じて、カセットは、まだピボットを中心に回転し、又はピボットを支えるプレートに対してある位置に不動にされる。このカセット内のアセンブリは、パレットレバーの上にブリッジを必要としなくなったという利点を有する。また、カセットには、微小位置調整システムを設けることができる。カセットは、さらに、懸架された耐衝撃デバイスと一体化させていることができる。
【0110】
正確な手法で予応力付与を達成するいずれの手段も、一又は複数の犠牲的な部品を有するエスケープ機構100を設ける。これにおいて、損傷を受けていない犠牲的な要素で前組み立てが行われ、そして、前組み立てが完了すると、犠牲的な要素は壊れ、必要な予応力を得るように前計算された張力を解放する。この実施形態は、ケイ素、酸化ケイ素などで作られたMEMsタイプの実施形態とともに用いることが適している。予応力付与は、酸化ケイ素の成長によっても達成することができ、これによって、制御された非常に正確な手法で幾何学的構成を局所的に変更することが可能になる。代わりに、材料において応力の発生を誘引させることもできる。
【0111】
図38は、パレットレバーのヘッド2及びフォーク6における双安定可撓性細長片10を埋め込むための2つの変種を示しており、これにおいて、まず、細長片10は、実質的にピボット軸5及び9に位置合わせされているが、その端は軸から遠い。第2に、アセンブリはより深いエネルギー井戸を作ることによって衝撃のうちの1つを促進するために非対称である。
【0112】
本発明は、さらに、この種の少なくとも1つのエスケープ機構100を有する計時器用ムーブメント200に関する。
【0113】
本発明は、さらに、この種の計時器用ムーブメント200を少なくとも1つ及び/又はこの種のエスケープ機構100を少なくとも1つ有する計時器300に関する。
【0114】
当然、可撓性細長片10は、パレットレバーの2つの半分の間の双安定要素を作るための多数あるうちの1つの方法(これに限定されない)である。
【0115】
同様に、双安定要素が張られた後のパレットレバー1のヘッド2のロック、及びバランス30に与えられた衝撃の端におけるヘッド2の解放は、本発明の範囲から逸脱せずに、他の変種によって達成することができる。
【0116】
本発明の更なる別の変種は、双安定要素に、又は場合によっては双安定細長片10に、直接取り付けられたフォーク6をマウントすることを伴う。これは、いずれの中心を中心とするいずれの角運動も可能とせず、バンキング要素71によって、ヘッド2の第1のピボット軸5に対するフォーク6の移動を制限することによってフォーク6を回転させずにである。これによって、回転フォーク6をバランス30に対して回転することができる唯一の要素である、双安定要素(すなわち、双安定細長片10)は、その全動作範囲にわたって予応力を与え続けられる。
図25及び
図26に示すように、このバンキング要素71は、ヘッド2と一体化されているか又はパレットレバー1が固定されるプレート40(
図26に示すように突き出ているか、くぼんでいる)と一体化されており、フォーク6に備えられる相補的なバンキング要素72と連係する。好ましいことに、要素71はV字形であり、要素72は、ピン又はトラニオンである。ピン49は、フォーク6の運動を制限する。
【0117】
図27は、プレート40へ固定された要素74に固定されたばね73を介して予応力付与が達成され、前記ばね73がフォーク6の移動を制限し可撓性細長片10に予応力を与えるような変種を示す。
【0118】
図23及び24は、エスケープ機構を支えるメインプレート40に対してピボット軸の2つの特定の構成を示す。
図23では、第1のピボット軸5及び第2のピボット軸9は、メインプレート40に対して固定された位置にあり、
図24では、第2の軸9が可動位置にあって、ここでは平行移動であり、弾性戻し手段46と組み合わされている。
【0119】
図29は、これらの変種に特に使用することができる様々なピボットモデルをグループ化したものである。すなわち、従来の単一のピボット91、単一の可撓性ピボット92、従来のピボット92と、所定の剛性を有するガイドメンバー93(特に線形ガイドメンバー)、可撓性ピボット92及び所定の剛性を有するガイドメンバー(特に、線形ガイドメンバー)である。後者の場合の両方において、予応力を引き起こす変位Δdは、ねじ、カム、ウェッジ又は同様の要素によって達成することができる。この予応力は、ガイド要素−ばね93又は可撓性ピボット92に対して、特に作用する。これらの異なる種類のピボットどうしは、もちろん組み合わせることができる。
【0120】
本発明に係る可撓性パレットレバーは、他の種類のエスケープにおいても使用することができ、特に、ETA名義の欧州特許EP1967919に開示されているもの及びこれが引用している従来技術の文献に記載されているものである。
【0121】
まとめると、本発明は、定力機構の使用の結果、規則的な強さで単独でバランスにエネルギーを伝える双安定要素を有する衝撃の非常に良好な制御を確実にする。
【0122】
関与するエネルギーは、機構の複数の部品において明白に分離される。
【0123】
可撓性細長片10の端11、101、12、102における支持点、又はピボット点又は埋め込み点は、予製造に有利な特定の変種において、機構のプレート又はブリッジに対して可動である。
【0124】
本発明の機構によって、高い動作保全性を達成することが可能になる。
【0125】
本発明は、容易に緩衝手段に組み入れることができる。例えば、支持体又は止め面16の近傍において、ヘッド2の第1のアーム15のブランチの形をしている緩衝バッファーを組み入れることが可能である。
【0126】
本発明に係るエスケープ機構の部品の分離によって、衝撃時に全機構ではなくフォークのみを加速させることが可能になる。
【0127】
したがって、本発明によって、以下が可能になる。
− バランスに与えられる衝撃の強さの規制であって、トルクは一定である。
− 振動の際に運動慣性を減らして、車に対する何らかの引き出しなしでロックを達成すること。