【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は請求項1の特徴を備える本発明に係る方法により達成される。この方法は、触媒装置の酸素貯蔵体の酸素充填状態が、第1のラムダセンサの発する第1のラムダ信号およびオフセット量に基づき求められ、第2のラムダセンサにより発せられる第2のラムダ信号が下限ラムダ信号値を下回ったときには、空乏状態の酸素貯蔵体に相当する第1の値に設定され、かつ/または、第2のラムダ信号が上限ラムダ信号値を上回ったときには、酸素充填状態は満量状態の酸素貯蔵体に相当する第2の値に設定され、そこから引き続いて少なくとも1回の制御期間の間、基準充填状態へ向けて制御されて、制御期間の終了時点で第2のラムダ信号に基づきオフセット量が調節されるようになっている。酸素貯蔵体の酸素充填状態は例えばモデル計算によって求められる。これは好ましくは、触媒装置への酸素流入や触媒装置からの酸素放出を積算した出力値に基づき行われる。
【0007】
よって、酸素充填状態の精度は、第1のラムダ信号の精度に強く依存する。このため、先に述べたようにオフセットが行われることが多く、第1のラムダ信号はオフセット量で補正される。したがって、酸素充填状態は第1のラムダ信号とオフセット量から例えば加算によって求められる量に帰着する。酸素充填状態を積算で求めると、第1のラムダ信号の、排気ガス内で現に生じている実際の比率からのズレも積算されることになるので、酸素充填状態の誤差は時間経過につれて増加していく。これはオフセット量を用いることによって―設定が適切であれば―第1のラムダ信号が現に生じている実際の比率の方へと修正されるので、少なくとも部分的に防止できる。
【0008】
ただしこれを行うためには、第1のラムダ信号を精度よく正確に修正できるようにオフセット量を設定することが必要となる。この設定を行うことにより、第1のラムダ信号がオフセットされており、かつ内燃機関の空燃比が理論空燃比λ=1からズレていて所望の酸素充填状態の達成のため相応に調節される場合に、第2のラムダセンサは少なくとも所定期間の後に、排気ガス内で空気が欠乏しているか空気が過剰であるかのどちらかを示すという効果が得られる。よって第2のラムダ信号は触媒装置の酸素貯蔵体の充填状態に関して、オフセットのある第1のラムダ信号よりも正確な出力になる。
【0009】
ここで、第2のラムダ信号が下限ラムダ信号値を下回ると、酸素充填状態は空乏状態に相当する第1の値に設定される。これに対し、第2のラムダ信号が上限ラムダ信号値を上回ると、酸素充填状態は第2の値に設定される。この値は満量状態に相当する。下限ラムダ信号値および上限ラムダ信号値は通常様々に選択され、例えば固定値とされる。ただし当然ながら、内燃機関の作動状態に応じて選択することも可能である。こうして、酸素貯蔵体の酸素充填状態は第2のラムダ信号を用いて高信頼性で確かめられた規定値に再設定される。つまり、第2のラムダ信号が下限ラムダ信号値を下回るということからは、酸素貯蔵体が実は空乏状態になっているということがわかる。同様に、上限ラムダ信号値を上回っているということからは、酸素貯蔵体は満量状態であるということがわかる。こうした酸素貯蔵状態の再設定が行われた時刻は、例えば制御装置のような本方法を実行する手段によって一時的に記録される。
【0010】
この酸素充填状態の再設定の後、内燃機関において設定される空燃比は、酸素貯蔵体が基準充填状態となるように制御期間にわたって制御および/または調節されて、例えばモデル計算を用いて算出される酸素充填状態が基準充填状態と一致するようにされる。基準充填状態は好ましくは、第1の値と第2の値との間の、例えば両値のちょうど中間の値、とりわけ50%の酸素充填状態とされる。この制御は通常、排気ガス内での触媒装置の上流側におけるその時点での比率を示す第1のラムダ信号に基づいて行われる。そうして制御期間の間、酸素充填状態の計算は引き続き先に説明したように行われる、ただしそれは制御期間の開始時に求められた酸素充填状態、すなわち第1の値または第2の値から開始される。なお、このような技術および方法により求められる酸素充填状態は、必ずしも実際の酸素貯蔵体内のその時点での酸素充填状態と必ずしも一致しないことに留意すべきである。
【0011】
そして、制御期間の終了時に、オフセット量は第2のラムダ信号に基づき調節される。第1のラムダ信号とオフセット量から求められる値が排気ガス内の触媒装置手前で生じている空燃比を実質的に正確に示していれば、制御期間の終了時点では実際の酸素充填状態が基準充填状態に相当したものとなる。これはつまり酸素貯蔵体の中に求められた量の酸素が貯蔵されているということである。そして、実質的に第1のラムダ信号には依存しない第2のラムダ信号は、排気ガス内の触媒装置下流側にて理論空燃比を示す。この場合、オフセット量の修正が必要ないので、オフセット量の調節は行われないか、行われたとしてもほんのわずかだけの変更となる。
【0012】
一方、第2のラムダ信号が酸素空乏状態または酸素過剰状態を示していれば、計算で求められる酸素充填状態は確かに基準充填状態であるのに、酸素貯蔵体は実際には完全に満量状態または空乏状態であるということになる。よって、第1のラムダ信号とオフセット量の組み合わせが、排気ガス中に実際に生じている状態を反映していないと結論することができる。そのためオフセット量は、第2のラムダ信号が1より大きいか1より小さいかに応じた値で修正される。この調節は、第2のラムダ信号が下限ラムダ信号値を下回ったときか、上限ラムダ信号値を上回ったときのみに行われるのが好ましく、特に、下回ったときまたは上回ったときから続けて行われるのがよい。
【0013】
本発明の好適な実施形態の一つにおいては、制御期間の終了時点で第2のラムダ信号が薄い空燃比に相当する場合はオフセット量(Δλ)を
修正値だけ増加させるよう調節し、かつ/または、制御期間の終了時に第2のラムダ信号が濃い空燃比に相当する場合はオフセット量を
修正値だけ減少させるように調節することが行われる。第2のラムダ信号によって空気過剰状態が検出されているならば、オフセット量はその
修正値だけ増加させられる。その一方、触媒装置の下流側で酸素欠乏状態が生じているならば、その
修正値だけ減少させられる。ここで、この
修正値は一定値であってもよく、また内燃機関の動作パラメータや状態パラメータに応じて可変に設定してもよい。
【0014】
ラムダ差分量は、排気ガス内で実際に生じている空燃比に対する第1のラムダ信号とオフセット量の組み合わせの差分を少なくとも近似的に示すものである。ラムダ差分量は例えば、基準充填状態、排気ガス質量流量、制御期間の長さから求められる最小偏差を表すものである。基準充填状態は、触媒装置の酸素貯蔵体が制御期間中に設定または制御される状態である。これはつまり、制御期間後に酸素貯蔵体内で一時的に貯蔵されているべき酸素の量である。
【0015】
排気ガス質量流量は、触媒装置を通り抜けて流れる排気ガスの単位時間当たりの量、特に質量を表す。よって、排気ガス質量流量および制御期間の長さから、制御期間中に触媒装置を通り抜けて流れる排気ガスの量を求めることができる。酸素貯蔵体内に貯蔵される酸素の質量は、少なくとも理論的には数1の関係式となる。
【0016】
【数1】
なお、λはラムダ値に、m’は排気ガス質量流量に、Δtは制御期間の長さに対応する。ここで、ラムダ差分量は、例えば数2の関係式から算出することができる。
【0017】
【数2】
なお、使用している値は上記にて定義したものと対応している。この算出の基礎として酸素質量差分Δm
O2を用いており、これは制御期間中に酸素貯蔵体内へ入り込んだりそこから出て行ったりした酸素の質量を表すものである。よってこれは基準充填状態に相応するものであるか、少なくともそこから求められるものであるのが好ましい。
【0018】
関係式を見れば明らかなように、ラムダ差分量引く1、つまりΔλ−1は、排気ガス質量流量に対しても制御期間の長さに対しても反比例するものであり、酸素質量差分に対しては比例するものとなっている。後者は、例えば使用される触媒や酸素貯蔵体の酸素貯蔵能力にのみ依存して決定されるので、特に連続した制御期間の間は一定である。そして制御期間の長さも一定であるならば、Δλ−1の値は実質的に排気ガス質量流量に依存する。
【0019】
ラムダ差分量は例えば、制御期間の終了時点で、制御期間にわたっての排気ガス質量流量の時間平均から求めることができる。あるいは当然ながら、時間分解されたラムダ差分量の算出を、排気ガス質量流量に関しての制御期間中の特定時点までの積分または加算によって行うこともできる。これにより、ラムダ差分量の算定精度をさらに向上させることができる。
【0020】
本発明の発展形態の一つにおいては、
修正値は、一定であるか、ラムダ差分量に応じて求められ、かつ/または、制御期間における第2のラムダ信号の勾配に応じて求められるようになっている。この
修正値は、オフセット量を調節することにより、一定となるように選択することができる。例えば第2のラムダ信号の符号に応じて、前回のオフセット量に加算を行うか、あるいはその量からの減算を行う。ただし、一定の
修正値では、例えば第2のラムダ信号およびオフセットから求められる量の、排気ガス内で現に生じている状態に対する差異に応じた調節を行うことはできない。そのため
修正値は少なくとも一つのパラメータに応じて可変に求められるようになっていることが好ましい。
【0021】
そうしたパラメータの一例は、
修正値に対応するラムダ差分量である。これに加えて、あるいはこれに代えて、
修正値を第2のラムダ信号に応じたものとする。排気ガス内における触媒装置の下流側で実際に生じている空燃比が依然として理論空燃比から大きく離れている場合は、基準充填状態へ向けての制御の結果、制御期間中の第2のラムダ信号の勾配は大きなものとなる。そのため酸素貯蔵体が著しく理論空燃比の範囲から外れている場合にはほんのわずかな働きしか得られないことがわかる。しかし実際の空燃比が既に理論空燃比近くであると判定される場合、つまり既にλが近似的に1と等しければ、酸素貯蔵体の作用は顕著に大きなものとなる。このとき第2のラムダ信号は、基準充填状態への制御に係る空燃比の変化に対して小さな勾配でもって反応する。
修正値の決定には、例えば制御期間中に生じる勾配の最大値が用いられる。当然ながらこれに代えて、制御期間にかけての時間平均値を用いてもよいことが理解されよう。
【0022】
修正値は例えば、少なくとも比例部、積分部、および/または差分部を有する制御装置を用いて決定されるようにすることができる。
修正値のこの決定方法は特に
修正値が可変のとき、つまり例えばラムダ差分量および/または第2のラムダ信号の勾配に依存するときに、用いられるものであることが理解されよう。
【0023】
本発明の実施形態の一つにおいては、制御期間の長さが一定であるか、または、少なくとも1つの内燃機関の動作パラメータ、特に第1のラムダ信号および/または第2のラムダ信号、に応じて選択されるようにされる。制御期間の長さは―固定値に選択されている場合―常にゼロよりは大きく、例えば少なくとも1sか、少なくとも2sか、少なくとも3sか、少なくとも4sか、少なくとも5sか、になるようにされる。あるいは、この長さの選択が、例えば動作パラメータに応じて行われるようにしてもよい。ここで使われるのは2つのラムダ信号のうちの少なくとも1つ、特に触媒装置の下流側に配置された第2のラムダセンサの第2のラムダ信号であるのが好ましい。例えば、制御期間の始めにラムダ信号の初期値が記録され、この時点では、初期値は現在のラムダ信号と等しくなっている。制御期間中には、初期値からの現在ラムダ信号の
修正値が連続的にまたは間隔をおいて求められる。制御期間中の
修正値の最大値は最大
修正値の形で記録される;つまり、酸素充填状態が第1の値であるか第2の値であるかに応じて、ラムダ信号の最小値または最大値が設定される。
【0024】
オフセット量により修正されたラムダ信号が実際の空燃比と一致していなければ、ラムダ信号は、再度最大
修正値を超過したら、初期値の方へ変更される。(現在の)
修正値が最大
修正値を下回った場合、または(現在の)
修正値と最大
修正値との差異が予め定められた非ゼロの閾値を上回った場合、制御期間は打ち切られ、オフセット量は説明したように調節される。オフセット量を用いたオフセットは
修正値の推移に応じて行われるものであって完全な補整とはならないので、好ましくは直ちに動作を繰り返して、酸素充填状態を、第1の値または第2の値に設定するとともに、更新された追加の制御期間の間に基準充填状態へ向けて制御して、追加の制御期間の終了時には、オフセット量を(必要であれば)修正する。
【0025】
さらに、酸素充填状態がモデル計算によって、特に積分演算によって、第1のラムダ信号から求められるようにしてもよい。このような動作方法については既に説明してある。酸素充填状態は第1のラムダ信号のみに基づいて求めて、第2のラムダ信号は考慮しないのが好ましい。これは、酸素貯蔵体への酸素流入と酸素貯蔵体からの酸素放出との収支を確定するのに十分である。ただし酸素充填状態を求めるのに第1のラムダ信号と共に第2のラムダ信号を用いてもよい。この技術および方法によれば、触媒装置を出て行く酸素の量をより正確に求めることができるので、精度がさらに向上する。例えば第2のラムダ信号を線形化する目的で、第2のラムダセンサとしてジャンプラムダセンサを用いることもできる。酸素充填状態の算出は積分で行われるのが特に好ましく、酸素充填状態は第1の値や第2の値といった固定値から前述の条件の下で再設定される。
【0026】
さらに好適な本発明の実施形態の一つにおいては、酸素充填状態を第1の値または第2の値に設定し、続いて基準充填状態への制御を複数回行うようにされる。この技術および方法によれば、オフセット量を徐々に修正することができ、前述の工程を複数回実行した後には、第1のラムダ信号とオフセット量との組み合わせは、排気ガス内で実際に生じている空燃比と正確に、あるいは少なくともほとんど一致する。
【0027】
さらには、基準充填状態が、第1の値と第2の値との間の値に設定されているようにしてもよい。基準充填状態を少なくとも第1の値と第2の値の両方とも異なるようにするということである。制御期間中の制御によって橋渡しされる間隔ができるだけ大きくなるように、この相異はできるだけ大きくするのが好ましい。したがって基準充填状態は正確に第1の値と第2の値との中間に設定するのが好ましく、つまり例えば50%とされる。
【0028】
また、本発明は内燃機関にも関するものであり、特に上述の方法を実行するものであって、排気ガス浄化装置を有する内燃機関において、排気ガス浄化装置は、内燃機関の排気ガス流が通過可能な触媒装置と、排気ガス流路内で触媒装置の上流側に配置された第1のラムダセンサと、排気ガス流路内で触媒装置の下流側に配置された第2のラムダセンサと、を備えたものに関する。
ここで、第1のラムダセンサとしては広域ラムダセンサが用いられ、かつ/または第2のラムダセンサとしてはジャンプラムダセンサが用いられる。ジャンプラムダセンサは広域ラムダセンサに比べて、ラムダ信号の変化範囲内で比較的小さなラムダ値域のみを有する。ジャンプラムダセンサのラムダ値域は例えば、ラムダセンサから発せられるラムダ信号が変動する範囲が0.98から1.02程度となっている。一方、このラムダ値域から外れると、ラムダ信号は一定値に留まる。これに対し、広域ラムダセンサを用いると、ジャンプラムダセンサのラムダ値域に比べて数倍のラムダ値域をカバーできる。広域ラムダセンサのラムダ値域は例えば下限と上限で規定され、下限は例えば0.8から0.9、上限は1.1から1.2である。当然ながら、ラムダセンサを両方とも広域ラムダセンサとして構成してもよいし、ジャンプラムダセンサとして構成してもよい。ただし、特に好ましいのは、第1のラムダセンサを広域ラムダセンサとして構成し、第2のラムダセンサをジャンプラムダセンサとして構成することである。
ここで、内燃機関の制御装置は、触媒装置の酸素貯蔵体の酸素充填状態を第1のラムダセンサの発する第1のラムダ信号およびオフセット量に基づいて求め、第2のラムダセンサの発する第2のラムダ信号が下限ラムダ信号値を下回ったときには酸素充填状態を空乏状態の酸素貯蔵体に相当する第1の値に設定し、かつ/または、第2のラムダ信号が上限ラムダ信号値を上回ったときには酸素充填状態を満量状態の酸素貯蔵体に相当する第2の値に設定し、そこから引き続いて少なくとも制御期間の間、基準充填状態へと制御して、制御期間の終了時点で第2のラムダ信号に基づきオフセット量が調節されるように構成される。こうした制御方法の利点は先に説明した通りである。この内燃機関およびその制御方法は上述したものに係る実施形態をとることができ、上述したように構成することができる。
【0029】
以下、実施形態例を表しており本発明を限定するものではない図面を用いて、本発明をより詳しく説明する。図面が示すものは以下のとおり。