(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス圧縮部は複数段式のガス圧縮機を備え、前記燃料ガスラインは、前記ガス圧縮機の最終段よりも手前側の段の吐出側に接続され、前記ボイルオフガスラインから分岐していることにより、前記ガスエンジンの受入圧力まで昇圧されたボイルオフガスが当該ガスエンジンに供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の液化天然ガスの受入設備。
前記燃料ガスラインは、前記ガス圧縮部の手前側にて前記ボイルオフガスラインから分岐し、前記ガスエンジンへ供給されるボイルオフガスを当該ガスエンジンの受入圧力まで昇圧する昇圧部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の液化天然ガスの受入設備。
前記ガスエンジンに供給されるボイルオフガスの性状が予め設定された基準値を外れた場合に、前記燃料ガスラインへのボイルオフガスの供給を停止する供給停止部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の液化天然ガスの受入設備。
前記燃料ガスラインには、ガスエンジンに供給されるボイルオフガスに含まれる窒素の濃度を低減するための窒素除去部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の液化天然ガスの受入設備。
前記ガスエンジンから排出される冷却水の排熱または排ガスの排熱を回収する排熱回収部を備え、前記排熱回収部は、前記気化器、気化したガスに熱量調整用の液化石油ガスを供給するための熱量調整設備、または前記貯蔵タンクのヒーターの少なくとも一つに熱源を供給するためのものであることを特徴とする請求項1または2に記載の液化天然ガスの受入設備。
前記発電機で発電された電力を、当該液化天然ガスの受入設備内の電力消費機器に供給する電力供給設備を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の液化天然ガスの受入設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般にガスエンジンは、ガスタービンと比べて燃料ガスを高圧に圧縮する必要がなく、また幅広い外気温範囲、負荷範囲で安定したエネルギー変換効率を実現できる。一方で例えばLNGタンカーからLNGを受け入れる受入設備では、LNGの受け入れ時におけるBOGの発生量が通常時の数倍にまで急激に増大し、また受け入れるLNGの性状変化に起因してBOGの性状も大きく変化する現象がみられる。
しかしながら特許文献2には、このようなBOGの発生量や性状の変化に対応する技術は記載されていない。
【0009】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、液化天然ガスの貯蔵タンクで発生するボイルオフガスを安定して処理することが可能な液化天然ガスの受入設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液化天然ガスの受入設備は、
液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクと、
外部の液化天然ガスタンカーから前記貯蔵タンクに液化天然ガスを受け入れるための受入ラインと、
液化天然ガスを気化するための気化器を備え、前記貯蔵タンクから送出された液化天然ガスを前記気化器にて気化させて、ガスの状態で払い出すための払出しラインと、
前記貯蔵タンク内で発生したボイルオフガスを昇圧するガス圧縮部を備え、昇圧されたボイルオフガスを前記払出しラインに払い出すためのボイルオフガスラインと、
発電機を駆動するガスエンジンと、
前記ボイルオフガスラインから分岐して設けられ
、前記貯蔵タンク内で発生したボイルオフガスを前記ガスエンジンに燃料として供給するための燃料ガスラインと、
前記燃料ガスラインに設けられ、
前記受入ラインを介した液化天然ガスの受け入れに起因した、当該燃料ガスラインに供給されるボイルオフガスの供給量の変化を吸収すると共に、前記ガスエンジンに供給されるボイルオフガスの性状の変化を緩和するための、ガス混合部を備えるガスホルダーと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また他の発明に係る液化天然ガスの受入設備は、
液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクと、
外部の液化天然ガスタンカーから前記貯蔵タンクに天然ガスを受け入れるための受入ラインと、
液化天然ガスを気化するための気化器を備え、前記貯蔵タンクから送出された液化天然ガスを前記気化器にて気化させて、ガスの状態で払い出すための払出しラインと、
前記貯蔵タンク内で発生したボイルオフガスを昇圧して液化するガス圧縮部を備え、液化されたボイルオフガスを前記貯蔵タンクに戻すため、または前記気化器に供給するためのボイルオフガスラインと、
発電機を駆動するガスエンジンと、
前記ボイルオフガスラインから分岐して設けられ
、前記貯蔵タンク内で発生したボイルオフガスを前記ガスエンジンに燃料として供給するための燃料ガスラインと、
前記燃料ガスラインに設けられ、
前記受入ラインを介した液化天然ガスの受け入れに起因した、当該燃料ガスラインに供給されるボイルオフガスの供給量の変化を吸収すると共に、前記ガスエンジンに供給されるボイルオフガスの性状の変化を緩和するための、ガス混合部を備えるガスホルダーと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記液化天然ガスの受入設備は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記ガス圧縮部は複数段式のガス圧縮機を備え、前記燃料ガスラインは、前記ガス圧縮機の最終段よりも手前側の段の吐出側に接続され、前記ボイルオフガスラインから分岐していることにより、前記ガスエンジンの受入圧力まで昇圧されたボイルオフガスが当該ガスエンジンに供給されること。または前記燃料ガスラインは、前記ガス圧縮部の手前側にて前記ボイルオフガスラインから分岐し、前記ガスエンジンへ供給されるボイルオフガスを当該ガスエンジンの受入圧力まで昇圧する昇圧部を備えること。
(b)前記ガスエンジンに供給されるボイルオフガスの性状が予め設定された基準値を外れた場合に、前記燃料ガスラインへのボイルオフガスの供給を停止する供給停止部を備えること。そして前記燃料ガスラインには、ボイルオフガスの性状を検出する性状検出部が設けられていること。このとき、前記ボイルオフガスの性状は、メタン価または熱量であること。
(c)前記燃料ガスラインには、ガスエンジンに供給されるボイルオフガスに含まれる窒素の濃度を低減するための窒素除去部を備えること。
(d)前記ガスエンジンから排出される冷却水の排熱または排ガスの排熱を回収する排熱回収部を備え、前記排熱回収部は、前記気化器、気化したガスに熱量調整用の液化石油ガスを供給するための熱量調整設備、または前記貯蔵タンクのヒーターの少なくとも一つに熱源を供給するためのものであること。
(e)前記発電機で発電された電力を、当該液化天然ガスの受入設備内の電力消費機器に供給する電力供給設備を備えたこと。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液化天然ガスの貯蔵タンクで発生したボイルオフガスを昇圧して払い出すための、またはボイルオフガスを液化して貯蔵タンクに戻し、若しくは気化器に供給するためのボイルオフガスラインと、前記ボイルオフガスをガスエンジンに供給するための燃料ガスラインとが併設され
、この燃料ガスラインにはガスホルダーが設けられているので、ボイルオフガスの発生量や性状の変化に応じて適切な処理先を選択し、安定した処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1を参照しながら、LNGタンカー1によって輸送されてきたLNGを受け入れる受入設備に本発明を適用した実施の形態について説明する。
本受入設備は、LNGを貯蔵するLNGタンク2と、需要先7へガスを払い出すためにLNGタンク2からLNGを送出するためのLNGポンプ21、41と、LNGを気化してガスの状態にするLNG気化器42と、気化したガスに熱量調整用の液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)を添加する熱量調整部43とを備えている。
【0016】
LNGタンク2は、LNGタンカー1から受け入れたLNGを−162℃程度に冷却された液体の状態で貯蔵する貯蔵タンクであり、その形式(地上式タンク、地下式タンク、地中式タンクなど)や容量に特段の限定はない。LNGタンクには地盤の凍結を防止するためにヒーターが設けられている。例えば、地下式タンクでは側面と底面にヒーターが設けられ、地上式タンクでは底面にヒーターが設けられている。
図1には、円筒形状の側壁の上面をドーム状の屋根で覆った地上式タンクの例を示してある。LNGタンク2の底面には地面の凍結を防止するための熱媒を通流させるヒーター22が設けてある。
【0017】
LNGタンク2には、アンローディングアーム11を介してLNGタンカー1から荷揚げされたLNGをLNGタンク2に受け入れるLNG受入ライン101と、LNGタンク2内に配設されたLNGポンプ21を介してLNGが送出されるLNG払出しライン102aとが接続されている。LNG払出しライン102aには、昇圧用の送出ポンプ41が介設され、その末端部はLNG気化器42に接続されている。
【0018】
LNG気化器42は、液体の状態でLNGタンク2から送出されたLNGを気化し、需要先7にて要求される圧力に調整されたガスとして払い出すための機器である。LNG気化器42は、従来、海水を利用してLNGを気化させるオープンラック方式や、水槽中に下向きに開口するガスバーナーでガスを燃焼させて得た燃焼ガスを水槽内の水中にバブリングさせることにより加熱された温水でLNGを気化させるサブマージドコンバッション方式のものなどが利用されている。本例の受入設備においては、後述するガスエンジン6の冷却水の排熱または排ガスの排熱を利用することができるので、当該排ガスとの直接の熱交換、または前記排ガスによって加熱された熱媒を介した間接的な熱交換によりLNGを加熱して気化させる方式のLNG気化器42として構成してもよい。
【0019】
LNG気化器42は、気化された気化ガスを払い出す気化ガス払出しライン102bに接続され、この気化ガス払出しライン102bの末端部は熱量調整部43に接続されている。熱量調整部43は、気化ガスに熱量調整用のLPGを混合し、需要先7にて要求される熱量を有する製品ガスを払い出すための設備である。熱量調整部43に対しては、LPGタンク8に貯蔵されているLPG(ブタンやプロパン)が、LPGポンプ81を介して液体の状態で送出される。このLPGが熱量調整部43にて熱媒を利用して気化され、LNG気化器42側から送出された気化ガスと混合されて製品ガスとなる。熱量調整部43で熱量調整された製品ガスは、出荷ライン105を介して需要先7に払い出される。
上述のLNG払出しライン102a、気化ガス払出しライン102bや受入設備の敷地内の出荷ライン105は、本例の払い出しラインに相当する。
【0020】
以上に説明した基本構成を備えるLNGの受入設備には、LNGタンク2内で発生したBOGを処理する設備が設けられている。以下、当該BOGを処理する設備の構成例について説明する。
図1に示すようにLNGタンク2には、その内部で発生したBOGを抜き出すためのBOG抜出ライン103aが接続されている。このBOG抜出ライン103aはBOGを昇圧する圧縮部であるBOG圧縮機3に接続されている。
【0021】
本例のBOG圧縮機3は、例えば3つの圧縮段31〜33を有する複数段式のガス圧縮機として構成されている。BOG圧縮機3は、例えば圧縮段31の吸込側の圧力が12〜22kPa-G程度のBOGを2〜7.5MPa-G程度まで昇圧する。BOG圧縮機3にて昇圧されたBOGは、高圧BOGライン103bを流れた後、気化ガスが流れる気化ガス払出しライン102bと合流し、熱量調整された後、製品ガスとして需要先7へ払い出される。
BOG抜出ライン103aや高圧BOGライン103bは、本例のボイルオフガスラインを構成している。
【0022】
さらに本実施の形態に係るLNGの受入設備においては、BOGをガスエンジン6の燃料ガスとして活用し、発電機61を駆動して発電した電力やガスエンジンの冷却水の排熱または燃料ガスの燃焼排ガスの排熱を受入設備内の各機器にて利用している。
ここで背景技術にて説明したように、ガスエンジン6はガスタービンと比べて低圧の燃料ガスを利用することが可能である。一方で、LNGタンク2から抜き出されたBOGをそのまま利用するには圧力が十分でなく、またBOG圧縮機3にて昇圧された後のBOGは圧力が高すぎるため、降圧操作が必要となってエネルギー損失が発生する。
【0023】
そこで本例の受入設備においては、複数段に分けてBOGの昇圧を行うBOG圧縮機3の中間段を利用し、中間段の吐出側からBOGを抽気することにより、適切な圧力(例えば0.5〜1MPaG)に昇圧されたBOGを燃料ガスとしてガスエンジン6に供給する。
図1に示した例では、ガスエンジン6に燃料ガスを供給するための燃料ガスライン104aの基端部が、BOG圧縮機3の1段目の圧縮段31の吐出側に接続されている。
【0024】
さらにBOGを燃料ガスとしてガスエンジン6に供給する燃料ガスライン104a〜104cには、BOGの発生量や性状の変動に対応して安定してガスエンジン6を稼働させるための各種機器が設けられている。
供給断弁51は、燃料ガスライン104aの下流側へのBOGの供給、停止を実行する開閉弁である。当該供給断弁51は、LNGタンク2側から供給されるBOGの性状が予め設定された基準値を外れた場合に、燃料ガスライン104aの下流側へのBOGの供給を停止する供給停止部として機能する。
【0025】
供給断弁51によってBOGの供給、停止を実行する基準となるBOGの性状としては、メタン価や熱量を挙げることができる。
メタン価は、ガスエンジンにおけるノッキングの発生しにくさ(アンチノック性能)を示す指標であり、ガソリンエンジンにおけるガソリンのオクタン価に相当している。メタン価が低い燃料ガスはノッキングを引き起こしやすく、メタン価の高い燃料ガスはノッキングを引き起こしにくい。メタン価の算出法としては、AVL社が規格化したものやCARB(California Air Resources Board)の基準(「石油・天然ガスレビュー」(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)vol.39 No.5 p20参照)などがある。供給断弁51における燃料ガスの供給断判断の基準としては、当該受入設備に設けられているガスエンジン6の仕様に採用されている算出法に準じて算出したメタン価が採用される。
【0026】
また熱量は、BOGを燃焼させた場合に発生する発熱量や当該発熱量をBOG比重の1/2乗根で除したウォッベ指数などの指標が採用される。
ガスエンジン6に燃料ガスとして供給されるBOGに要求されるメタン価や熱量は、ガスエンジン6の仕様として基準値の範囲が予め設定されている。
【0027】
またBOG抜出ライン103aには、オンラインのメタン価分析器やガス熱量計からなる分析計55(性状検出部)が介設されている。この分析計55にて検出されたBOGのメタン価や熱量の値が、受入設備の制御を行うDCS(Distributed Control System)などからなる制御部511に出力されて、供給断弁51の開閉動作の判断に活用される。
【0028】
なお、分析計55を設ける位置は、BOG圧縮機3の出口側の燃料ガスライン104aに限られるものではない。例えば、後述のPSA部52にて窒素を除去した後の燃料ガスライン104bに分析計55を設けてもよい。
また燃料ガスライン104aにオンラインの分析計55を設ける場合に限らず、燃料ガスライン104aに供給されるBOGを定期的にサンプリングしてオフラインで分析し、その結果に基づいて供給断弁51の開閉を判断する構成としてもよい。
【0029】
供給断弁51の下流側には、ガスエンジン6の燃料ガスとなるBOGに含まれる窒素(N
2)の濃度を低減するための窒素除去部であるPSA(Pressure Swing Adsorption)部52が配設されている。PSA部52は、窒素を吸着する吸着剤を充填した2つの吸着塔により構成され、その一方側にBOGを通流させてBOG中の窒素を吸着除去する。またBOGの通流を行っていない他方側の吸着塔においては、塔内圧力を降下させて吸着剤から窒素を脱離させ、塔内に供給されたエアなどと共に排出する再生操作が行われる。
【0030】
そして、窒素の吸着、吸着剤の再生操作が行われる吸着塔を交互に切り替えることにより、BOGから窒素を除去する処理を連続して行うことができる。
ここで、窒素除去部にて採用される窒素の除去方法はPSA法による場合に限定されるものではない。例えばBOGを冷却して液化し、窒素とメタンなどの燃料ガス成分とに蒸留分離する深冷分離法を採用してもよい。
【0031】
PSA部52にて窒素が除去されたBOGは、燃料ガスライン104bを介してガスホルダー53に導入される。ガスホルダー53は、燃料ガスとしてガスエンジン6に供給されるBOGを一時的に貯蔵する。ガスホルダー53の構成は、特別な形式のものに限定されないが、本例ではガスホルダー53内に貯蔵されているBOGの量に応じて昇降するピストン532を備えたものを例示してある。
【0032】
また、ガスホルダー53の内部には、ガスホルダー53内のBOGと、燃料ガスライン104bから受け入れたBOGとを混合するためのバッフル板531が配置されている。バッフル板531は、LNGタンカー1から受け入れたLNGの性状変化などにより、BOGの性状が大きく変化した場合に、今まで使用していたガスホルダー53内のBOGと新たなLNGから発生したBOGとを十分に混合して、ガスエンジン6に供給される燃料ガスの性状変化を緩和するガス混合部の役割を果たしている。
【0033】
上述のガスホルダー53内のBOGは、燃料ガスライン104cを介してガスエンジン6に供給される。ガスエンジン6は、メタンを主成分とするBOGを燃料ガスとして発電機61を駆動し、発電を行うことが可能な内燃機関である。ガスエンジン6は、30%〜100%の幅広い負荷範囲で運転することが可能であり、ガスタービンに比べて外気温の変化の影響も受けにくいという特徴がある。
【0034】
ガスエンジン6にて発電機61を駆動して発電された電力は、電力供給設備である給電部62を介してBOG圧縮機3やLNGポンプ21、41、LPGポンプ81などの電動機や受入設備内の照明のような電力消費機器に供給される。
またガスエンジン6にてBOGを燃焼し、内部のシリンダを駆動した後の排ガスは、LNG気化器42や熱量調整部43におけるLNG、LPGの気化、LNGタンク2の底面などの加熱に利用される。冷却水を熱源とする場合は、冷却水が熱媒となり、LNG気化器42、熱量調整部43、ヒーター22へ熱を供給する。冷却水、排ガスそのものを熱源とする場合には、ガスエンジン6から排出された冷却水や排ガスがそのままLNG気化器42、熱量調整部43、ヒーター22へ供給される。この場合にはこれらの機器42、43、22が排熱回収部を構成することとなる。また、排ガスの熱を利用して不図示のボイラーでスチームや温水などを発生させ、これを熱媒(熱源)として利用する場合にはボイラーが排熱回収部となる。
【0035】
以上に構成を説明したLNGの受入設備において、LNGタンク2にて発生したBOGを処理する動作の具体例を説明する。ここで
図2は、供給断弁51の開閉判断の流れを示すフロー図である。
図1に示したLNGタンク2において、LNGタンカー1からのLNGの受け入れを行っていないとき、例えば5t/h(トン毎時)のBOGが発生しているとする。ガスエンジン6は、当該受入設備内の電力を賄うことが可能な出力を有しており、電力消費バランスで例えば1t/hのBOGを消費する。
【0036】
従って、BOG抜出ライン103aを介してBOG圧縮機3に供給されたBOGのうち、4t/h分が気化ガスに混合され、製品ガスとして需要先7に払い出される。そして、LNGタンク2から送出されるLNGの送出量は、前記BOGの混合分を考慮して増減されることになる。
【0037】
一方、燃料ガスとしてガスエンジン6に供給されるBOGは、BOG圧縮機3の中間段から燃料ガスライン104aへ抜き出され、分析計55にてメタン価や熱量が測定される(
図2のスタート)。そして、BOGのメタン価及び熱量がいずれも基準値を満たしている場合には(同図のステップS101;YES、及びS102;YES)、燃料ガスライン104aを介して下流側にBOGが供給される(同図のステップS103)。
【0038】
燃料ガスライン104aから供給されたBOGは、PSA部52にて窒素が除去された後、ガスホルダー53に流入して一時的に貯蔵され、次いでガスエンジン6に供給されて燃料ガスとして燃焼される。BOGを燃焼して発電された電力は、BOG圧縮機3やLNGポンプ21、41などで消費される。またガスエンジン6から排出される冷却水の排熱または燃焼排ガスの排熱はLNG気化器42や熱量調整部43、ヒーター22で使用される。
【0039】
ここでLNGタンカー1からのLNGの受け入れは、1カ月に1回〜数回程度行われるが、この際にはLNGタンク2におけるBOGの発生量が通常時の数倍、例えば4倍程度にまで増大する。この場合には、BOG圧縮機3を介して気化ガスに混合するBOGの量を増やす一方、LNGタンク2から送出するLNGの量を減らしてBOGの増大分を吸収する。このとき、ガスエンジン6は受入設備内の電力消費量にバランスしてBOGを消費している。
また、気化ガスへ混合可能な量を上回るBOGが発生した場合には、燃料ガスライン104a側への供給量を増やし、ガスホルダー53におけるBOGの貯蔵量を一時的に増やしてもよい。
【0040】
また、LNGタンカー1からLNGを受け入れるタイミングにおいては、産地や井戸の違いによってLNGの性状が大きく変化する場合がある。このような場合にはLNGタンク2にて発生するBOGの性状も大きく変化し、ガスエンジン6におけるBOGの燃焼状態も変化する。しかしながらガスエンジン6の入口側にはガスホルダー53が設けられており、今まで使用していたBOGと新たなLNGから発生したBOGとがバッフル板531によって混合されるので、ガスエンジン6で燃焼されるBOGの性状変化はゆっくりと進行する。この結果、ガスエンジン6はBOG性状の変化に対して余裕をもって追随することが可能であり、給気量などの運転条件を変更しながら稼働を継続することができる。
さらに本例の燃料ガスライン104a〜104bにはPSA部52が介設されているので、BOG中の窒素濃度が上昇する性状変化があった場合でも、窒素の含有量を低減し安定した熱量を有する燃料ガスをガスエンジン6に供給することもできる。
【0041】
一方、BOGの性状の変化幅が大きく、メタン価や熱量の値がガスエンジン6にて使用可能な基準値を外れた場合には(
図2のステップS101;NO、またはS102;NO)、供給断弁51を閉じて燃料ガスライン104aから下流側へのBOGの供給を停止する(同図のステップS104)。燃料ガスライン104aからのBOGの供給を停止しても、ガスホルダー53内にはBOGが貯蔵されているので、ガスエンジン6は稼働を継続することができる。
【0042】
また、BOGの性状変化が長時間に亘りそうな場合には、ガスエンジン6の稼働を下げ、ガスホルダー53内に貯蔵されているBOGにてガスエンジン6の稼働を継続してもよい。この結果、発電機61の発電量が低下し、受入設備内の電力消費機器への電力供給を賄えなくなった場合には、外部から電力を購入すればよい。
【0043】
燃料ガスライン104aの下流側へのBOGの供給を停止する上述の例において、ガスエンジン6側へ送られないBOGは、高圧BOGライン103bを介して気化ガスに混合される。このとき、気化ガスへ混合可能な量を上回る量のBOGが発生している場合には、不図示のフレアスタックへ余剰なBOGを抜き出し、燃焼させてもよい。
【0044】
ここで、例えば供給断弁51の上流側の燃料ガスライン104aには、BOG圧縮機3の中間段から抜き出されたBOGをBOG圧縮機3の吸込側へ戻す不図示のリサイクルラインが設けられ、下流側へのBOGの供給を停止しても分析計55による燃料ガスの分析を行うことができる構成となっている。そして、分析計55にて検出されるBOGの性状が基準値内の値となったら、供給断弁51を開いて燃料ガスライン104aの下流側にBOGを供給する(
図2のステップS101;YES、及びS102;YES、S103)。このとき、供給断弁51を閉じている期間中に消費されたガスホルダー53内のBOGを補充するために、ガスホルダー53へ向けて供給するBOGの量をガスエンジン6におけるBOGの消費量よりも一時的に増やしてもよい。
【0045】
本発明の実施の形態に係るLNGの受入設備によれば以下の効果がある。LNGタンク2で発生したBOGを昇圧して払い出すためのLNG払出しライン102a、気化ガス払出しライン102b、出荷ライン105と、ガスエンジン6にBOGを供給するための燃料ガスライン104a〜104cとが併設されているので、BOGの発生量や性状の変化に応じて適切な処理先を選択し、安定した処理を行うことができる。
【0046】
次いで
図3には、BOGを再液化するタイプのLNG受入設備にガスエンジン6を併設した例を示している。本例の受入設備は、BOG圧縮機3aの圧縮段31、32の数が、
図1のBOG圧縮機3に比べて少なく、その吐出圧力が低い点と、BOG圧縮機3aの後段にLNGとの熱交換によりBOGを冷却して液化するためのコンデンサー44が設けられている点と、コンデンサー44にて液化したBOGが液化BOGライン103cを介してLNGタンク2に回収され、または液化BOG送出ライン107を介して、LNGタンク2から送出されたLNGに合流した後、需要先7へ払い出される点とにおいて
図1に示した例と異なっている。
【0047】
背景技術にて説明したように、再液化したBOGを回収する受入設備は、窒素が循環して濃縮される問題があるが、ガスエンジン6へ向けてBOGを常時、抜き出すことにより、窒素の濃縮度合を低減することができる。また、PSA部52にて窒素が除去されたBOGを燃料ガスとしてガスエンジン6へ供給するので、BOGの再液化により窒素が濃縮しても、窒素濃度の上昇によるガスエンジン6への影響を抑えることができる。
【0048】
ここで、
図1に示した高圧BOGライン103bを流れるBOGは、気化ガス払出しライン102bの気化ガスと混合されて払い出される場合に限定されるものではない。例えば当該気化ガスとは混合せずにそのまま熱量調整を行い、製品ガスとして払い出してもよい。
【0049】
また、ガスエンジン6へ供給されるBOGの圧力を調整する手法は、複数段式のBOG圧縮機3、3aの中間段からBOGを抽気する方式に限定されない。例えば
図4に示すようにBOG圧縮機3の手前側で燃料ガスライン104aを分岐させ、この燃料ガスライン104aに昇圧用の燃料ガス圧縮機54(昇圧部)を設け、BOGをガスエンジン6の受入圧力(例えば0.5〜1MPaG)まで昇圧してもよい。
【0050】
以上、
図1、3、4には、LNGタンカー1からLNGを受け入れ、LNG気化器42にてLNGを気化させて需要先7へ出荷するタイプの受入設備の例を記載したが、本発明を適用可能な設備はLNGタンカー1からLNGを受け入れるタイプの受入設備に限定されない。例えばガス田の井戸元から産出された天然ガスを冷却、液化して得られたLNGを受け入れるLNG液化基地の払出設備にも本発明は適用することができる。この場合には、上述の各図に示したLNG受入ライン101の接続元が、LNGタンカー1に替えてガス田に設けられたLNGの液化基地の払出設備となる。
【0051】
さらに、ガス田の井戸元から産出された天然ガスを冷却、液化して得られたLNGを受け入れるLNG液化基地の払出設備の場合には、LNGタンク2内のLNGを払い出す場合、LNGを気化させることも必須ではない。例えばLNGタンク2内のLNGを液体の状態のままLNGタンカー1に払い出す構成のLNG液化基地の払出設備にも本発明は適用することができる。
【0052】
さらには、本発明に係るLNGの受入設備において、燃料ガスライン104a〜104cに対して、供給断弁51(供給停止部)、PSA部52(窒素除去部)、ガスホルダー53の全てを設けることも必須の要件ではない。LNGタンク2に貯蔵されるLNGやBOGの性状変化やBOG発生量の変化に応じて、これらの設備51、52、53のいずれかを選択して設けてもよい。
【0053】
さらに、例えば共通の敷地内に複数基のLNGタンク2を備える受入設備などにおいて、全てのLNGタンク2に燃料ガスライン104a〜104b及びガスエンジン6を設けることも必須ではない。複数基のLNGタンク2のうち1基に燃料ガスライン104a〜104b(
図4に示す燃料ガス圧縮機54を設置したものである)のみを設けて当該LNGタンク2にて発生するBOGは全てガスエンジン6の燃料ガスとする構成としてもよい。一方、他のLNGタンク2は従来通り、BOG抜出ライン103a−BOG圧縮機3−高圧BOGライン103b(
図1)やBOG抜出ライン103a−BOG圧縮機3a−液化BOGライン103c、液化BOG送出ライン107(
図3)を設け、ガスエンジン6へのBOGの供給は行わない構成とする。そして、ガスエンジン6に接続されたLNGタンク2の燃料ガスライン104aを分岐させてこの分岐ラインを他のLNGタンク2のBOG抜出ライン103aに接続する。
【0054】
この結果、複数のLNGタンク2を備える受入設備全体で見たとき、当該受入設備にはBOGを昇圧して払い出す系統(BOG抜出ライン103a−BOG圧縮機3−高圧BOGライン103b)、または再液化して回収、払い出すための系統(BOG抜出ライン103a−BOG圧縮機3a−液化BOGライン103c、液化BOG送出ライン107)と、ガスエンジン6にBOGを供給するための燃料ガスライン104a〜104cとが併設された構成となる。
【0055】
こうして1基のLNGタンク2で発生したBOGの全量をガスエンジン6にて燃焼し、発電して得られた電力が受入設備における電力消費量を上回る場合には、余剰の電力を売電することができる。BOGの性状がガスエンジン6にて受け入れ可能な基準を外れた場合には、既述の分岐ラインを介して、当該LNGタンク2で発生したBOGを他のLNGタンク2のBOG抜出ライン103aへ抜き出し、ガスエンジン6へのBOGの供給は停止すればよい。