特許第5959802号(P5959802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959802
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】カウルルーバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20160719BHJP
   B60K 13/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B62D25/08 H
   B60K13/02 C
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-69618(P2011-69618)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2012-201298(P2012-201298A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2013年10月25日
【審判番号】不服2015-10117(P2015-10117/J1)
【審判請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 公宏
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 小原 一郎
【審判官】 出口 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−90621(JP,U)
【文献】 特開2010−168036(JP,A)
【文献】 特開2008−56106(JP,A)
【文献】 特開2010−132171(JP,A)
【文献】 特開平10−67340(JP,A)
【文献】 実開昭59−158562(JP,U)
【文献】 実開昭61−81478(JP,U)
【文献】 特開2003−201843(JP,A)
【文献】 実開昭58−45130(JP,U)
【文献】 実開昭61−108610(JP,U)
【文献】 実開昭55−142621(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B60K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた空調装置に送り込むための外気を取り込み可能なカウルルーバーであって、
車両のエンジンルーム内においてエンジンから発せられる熱がこもる熱滞留部へ向けて、車両前部側からエンジンルームに取り込んだ外気を案内するためのフィンが、カウルルーバー自身の先端側の外面に対して交差するように設けられた支持パネルの先端側を橋渡すように設けられていることを特徴とするカウルルーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウルルーバーに関し、詳しくは、車両に設けられた空調装置に送り込むための外気を取り込み可能なカウルルーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、図11に示すように、車両に設けられた空調装置(図示しない)に送り込むための外気a1を取り込み可能なカウルルーバー310が既に知られている。このカウルルーバー310は、ゴミや雨水等を取り込むことなく、外気a1のみを取り込むことができる形状となっている。そのため、空調装置に確実に外気a1のみを送り込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−276642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した車両では、図11からも明らかなように、フロントグリル328からエンジンルーム334に取り込んだ外気a2は、エンジン322の燃焼空気としてエンジン322に取り込まれると共に、エンジンルーム334の上内面に沿って(ボンネット324、カウルルーバー310、カウルダクト330に沿って)車両301の外部へ排出されていた。その際に、外気a2は、エンジン322を冷却するが、エンジンルーム334におけるエンジン322の後方には、エンジン322から発せられる熱が逃げ難い部位(熱がこもってしまう部位であり、熱滞留部b)が発生し、十分な効果をあげられなかった。したがって、例えば、エンジン322の排気管内(図示しない)の触媒に不具合を生じさせてしまうことがあった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決しようとするもので、その目的は、エンジンルーム内の熱のこもりを解消できるカウルルーバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、車両に設けられた空調装置に送り込むための外気を取り込み可能なカウルルーバーであって、車両のエンジンルーム内においてエンジンから発せられる熱がこもる熱滞留部へ向けて、車両前部側からエンジンルームに取り込んだ外気を案内するためのフィンが、カウルルーバー自身の先端側の外面に対して交差するように設けられた支持パネルの先端側を橋渡すように設けられていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、車両前部側からエンジンルームに取り込んだ外気の一部の向きを、熱滞留部に向くように変えることができる。そのため、車両前部側から取り込んだ外気の一部によって、エンジンルーム内にこもっている熱を車両の外部へ逃がすことができる。
【0007】
また、発明に係る参考例1として、車両に設けられた空調装置に送り込むための外気を取り込み可能なカウルルーバーであって、車両のエンジンルーム内においてエンジンから発せられる熱がこもる熱滞留部へ外気を取り込むための開口が設けられており、開口を開閉可能なカバーが付勢部材を介して取り付けられており、この付勢部材の付勢力は、車両の停止時には、カバーが閉じ状態を成すように、また、車両の走行時には、取り込む外気によってカバーが開き状態を成すように設定されている構成も考えられる。
この構成によれば、請求項1と同様の作用効果を得ることができる。
【0008】
また、発明に係る参考例2として、外気の取り込み口の両側には、一方側のエリアと他方側のエリアとに分割する仕切り板が形成されており、外気の取り込み口は、一方側のエリアに形成されており、車両のエンジンルーム内においてエンジンから発せられる熱がこもる熱滞留部へ外気を取り込むための開口は、他方側のエリアに形成されている構成も考えられる。
この構成によれば、開口から逃がされた熱滞留部の熱が外気の取り込み口に回り込むことを防止しつつ、熱滞留部の熱を開口から車両の外部へ逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施例に係るカウルルーバーを下側から見た全体斜視図である。
図2図2は、図1のカウルルーバーの側面図である。
図3図3は、図1のカウルルーバーを車両に組み付けたときの外気の流れを示す模式図である。
図4図4は、本発明の参考例1に係るカウルルーバーを下側から見た全体斜視図である。
図5図5は、図4のカウルルーバーの側面図である。
図6図6は、図4のカウルルーバーを車両に組み付けたときの外気の流れを示す模式図である。
図7図7は、本発明の参考例2に係るカウルルーバーの平面図である。
図8図8は、図7のカウルルーバーを下側から見た全体斜視図である。
図9図9は、図7のカウルルーバーの側面図である。
図10図10は、図7のカウルルーバーを車両に組み付けたときの外気の流れを示す模式図である。
図11図11は、従来技術に係るカウルルーバーを車両に組み付けたときの外気の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
実施例
まず、本発明の実施例を、図1〜3を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、車両1(図1〜2において、図示しない)を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0011】
はじめに、図1〜3を参照して、本発明の実施例に係るカウルルーバー10を説明する。このカウルルーバー10には、後述するように、自身10を車両1に組み付けたとき、車両1に設けられた空調装置(図示しない)に送り込むための外気A1を取り込み可能な取込口12が形成されている。
【0012】
また、このカウルルーバー10の先端側の外面には、この外面に対して交差するように3枚の支持パネル14、14、14が適宜の間隔で設けられている。この3枚のパネル14、14、14には、その先端側を橋渡すようにフィン16が形成されている。
【0013】
このフィン16は、エンジンルーム34におけるエンジン22の後方に向けて、すなわち、エンジン22から発せられる熱が逃げ難い部位(熱がこもってしまう部位であり、熱滞留部B)へ向けて、フロントグリル28からエンジンルーム34に取り込んだ外気A2を案内できるように湾曲状(図2に示すように、フィン16の先端が下を向いた屈曲形状)に形成されている。このように湾曲状に形成されていると、外気A2の案内の度合いを高めることができる。カウルルーバー10は、このように構成されている。
【0014】
次に、図3を参照して、上述したカウルルーバー10を組み付ける車両1のフロント部分Fの概略構成を説明する。このフロント部分Fは、主として、車両フロントボデー20(図3では、車両フロントボデー20の一部しか図示していない)と、エンジン22と、ボンネット24と、フロントガラス26と、フロントグリル28とから構成されている。
【0015】
このフロント部分Fのうち、ボンネット24とフロントガラス26との間には、上述したカウルルーバー10が組み付けられている。また、このフロント部分Fのうち、カウルルーバー10の後方には、カウルルーバー10の取込口12から取り込んだ外気A1を空調装置へ送るためのダクトDを成すように、カウルダクト30とカウル32とが組み付けられている。これにより、カウルルーバー10の取込口12から取り込んだ外気A1を空調装置へ送ることができる。車両1のフロント部分Fは、このように構成されている。
【0016】
続いて、図3を参照して、上述した車両1のフロント部分Fにおいて、フロントグリル28から取り込まれる外気A2の流れを説明する。フロントグリル28から取り込まれた外気A2は、エンジン22の燃焼空気としてエンジン22に取り込まれると共に、エンジンルーム34の上内面に沿って(ボンネット24、カウルルーバー10、カウルダクト30に沿って)車両1の外部へ排出されている。
【0017】
このとき、ボンネット24沿いにカウルルーバー10に到達した外気A2の一部は、カウルルーバー10のフィン16によって、その風向が変えられて熱滞留部Bへ向けて送られる。なお、熱滞留部Bへ送られた一部の外気A2も、最終的には、車両1の外部へ排出される。
【0018】
本発明の実施例に係るカウルルーバー10は、このように構成されている。この構成によれば、カウルルーバー10の先端側の外面には、フィン16が形成されている。そのため、フロントグリル28から取り込まれボンネット24からカウルルーバー10沿いに流れている外気A2の一部の向きを、カウルダクト30から熱滞留部Bに向くように変えることができる。したがって、フロントグリル28から取り込まれた外気A2の一部によって、エンジンルーム34内にこもっている熱を車両1の外部へ逃がすことができる。
【0019】
参考例1
次に、本発明の参考例1を、図4〜6を用いて説明する。この参考例1は、既に説明した実施例と比較すると、カウルルーバー10から取り込む外気A1によって、エンジンルーム34内にこもっている熱を車両1の外部へ逃がすことができる形態である。なお、以下の説明にあたって、実施例と同一もしくは均等な構成の部材には、図面において、同一符号を付すことで、重複する説明は省略することとする。このことは、後述する参考例2においても同様である。
【0020】
図4〜5に示すように、この参考例1のカウルルーバー110は、実施例のカウルルーバー10に設けられていた3枚の支持パネル14、14、14およびフィン16が設けられていない。替わりに、この参考例1のカウルルーバー110には、実施例のカウルルーバー10において、3枚の支持パネル14、14、14が設けられていた先端側の外面に、その厚み方向を貫通する開口114が形成されている。
【0021】
この開口114は、エンジンルーム34におけるエンジン22の後方に向けて、すなわち、エンジン22から発せられる熱が逃げ難い部位(熱がこもってしまう部位であり、熱滞留部B)へ向けて、自身114から取り込んだ外気A1を案内できるように形成されている。この開口114の縁には、その開口114を開閉可能となるようにカバー116がヒンジ結合されている。
【0022】
このとき、カバー116は、常時、開口114を閉じる方向にトーションばね(図示しない)を介して付勢された状態でヒンジ結合されている。なお、このトーションばねの付勢力は、車両1の停止時には、カバー116が閉じ状態を成すように、また、車両1の走行時には、カウルルーバー110から取り込む外気A1によってカバー116が開き状態を成すように設定されている。カウルルーバー110は、このように構成されている。
【0023】
続いて、図6を参照して、上述した車両1のフロント部分Fにおいて、カウルルーバー
110の開口114から取り込まれる外気A1の流れを説明する。この開口114から取り込まれた外気A1は、熱滞留部Bへ向けて送られる。そして、熱滞留部Bへ送られた外気A1は、最終的には、車両1の外部へ排出される。
【0024】
本発明の参考例1に係るカウルルーバー110は、このように構成されている。この構成によれば、カウルルーバー110の先端側の外面には、開口114が形成されている。そのため、実施例のカウルルーバー10と同様の作用効果を得ることができる。
【0025】
更に、この構成によれば、開口114の縁には、その開口114を開閉可能となるように、カバー116が、常時、開口114を閉じる方向にトーションばねを介して付勢された状態でヒンジ結合されている。そのため、車両1の停止時には、エンジンルーム34内の熱が空調装置へ取り込まれることを防止できる。
【0026】
参考例2
次に、本発明の参考例2を、図7〜10を用いて説明する。この参考例2は、既に説明した参考例1と比較すると、熱滞留部Bの熱B1を開口114から車両1の外部へ逃がすことができる形態である。
【0027】
図7〜9に示すように、この参考例2のカウルルーバー210には、その取込口12の両側に仕切り板S1、S2が形成されている。この仕切り板S1、S2によって遮られたエリア(以下、「第1のエリア210A」と記す)が、特許請求の範囲に記載の「一方側のエリア」に相当する。なお、この第1のエリア210Aを除いたエリア(以下、「第2のエリア210B」と記す)が、特許請求の範囲に記載の「他方側のエリア」に相当する。なお、カウルルーバー210の取込口12は、第1のエリア210Aに形成されており、カウルルーバー210の開口114は、第2のエリア210Bに形成されている。
【0028】
このようにエリア210A、210Bによって区画されていることにより、後述するように、開口114から逃がされた熱滞留部Bの熱B1が取込口12に回り込むことを防止できる。なお、この参考例2のカウルルーバー210には、参考例1のカウルルーバー110において説明したカバー116が設けられていない。カウルルーバー210は、このように構成されている。
【0029】
続いて、図10を参照して、上述した車両1のフロント部分Fにおいて、カウルルーバー210の開口114から取り込まれる外気A3の流れを説明する。参考例1の説明と同様に、この開口114から取り込まれた外気A3は、熱滞留部Bへ向けて送られる。そして、熱滞留部Bへ送られた外気A3は、最終的には、車両1の外部へ排出される。このとき、熱滞留部Bの熱B1を開口114から車両1の外部へ逃がすことができる。図10において、点線の矢印が逃げている熱B1を示している。なお、図示しないが、この参考例2においても、カウルルーバー10の取込口12から取り込んだ外気A1を空調装置へ送ることができる。
【0030】
本発明の参考例2に係るカウルルーバー210は、このように構成されている。この構成によれば、取込口12の両側に仕切り板S1、S2が形成されている。そして、カウルルーバー210の取込口12は、第1のエリア210Aに形成されており、カウルルーバー210の開口114は、第2のエリア210Bに形成されている。そのため、参考例1のカウルルーバー110と同様の作用効果を得ることができる。また、この構成によれば、開口114から逃がされた熱滞留部Bの熱B1が取込口12に回り込むことを防止しつつ、熱滞留部Bの熱B1を開口114から車両1の外部へ逃がすことができる。
【0031】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、フィン16は、3枚のパネル14、14、14を介してカウルルーバー10の先端側の外面に設けられている例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、フィン16は、カウルルーバー10の先端側の外面に直に設けられていても構わない。
【符号の説明】
【0032】
1 車両
10 カウルルーバー(実施例
16 フィン
28 フロントグリル
22 エンジン
34 エンジンルーム
110 カウルルーバー(参考例1
114 開口
116 カバー
210 カウルルーバー(参考例2
214 開口
A1 外気
A2 外気
B 熱滞留部
B1 熱
S1 第1の仕切り板
S2 第2の仕切り板


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11