【実施例】
【0017】
以下本発明の一実施例による折りたたみ式担架について説明する。
図1は本実施例による折りたたみ式担架の平面図、
図2は同折りたたみ式担架の使用状態を示す平面図、
図3は同折りたたみ式担架を示す斜視図、
図4は同折りたたみ式担架の端部持ち手の使用状態を示す要部斜視図、
図5は同折りたたみ式担架の持ち手を示す要部断面図、
図6は同折りたたみ式担架の持ち手を示す要部斜視図、
図7は同折りたたみ式担架の折り曲げ位置を示す平面図、
図8は同折りたたみ式担架を折りたたんだ状態を示す斜視図である。
【0018】
図1から
図3に示すように、本実施例による折りたたみ式担架は、被搬送者を乗せるシート10の外周部に複数の持ち手20を有している。
シート10には、撥水加工を施した布や、ポリエステル系繊維の織物を軟質な合成樹脂フィルムで挟んだビニール系素材、例えばターポリンが適している。
複数の持ち手20は、長手方向中心線Yに対してシート10の両側に対になって配置されている。
一つの持ち手20は、シート10に形成した長孔21と、長孔21の外方に形成した握り部22とから構成される。持ち手20は、シート10の外周より外方に突出させない。握り部22をシート10の外縁に沿って形成することで、シート10の剛性を高めている。また、隣り合う握り部22の間に位置するシート10の外縁を直線で構成することで、隣り合う握り部22を最短距離で接続している。このように隣り合う握り部22を最短距離で接続することでシート10の外縁にたるみが発生することを防止し、シート10の剛性を高めることができる。
持ち手20は、シート10の四隅に位置する端部持ち手20ART、20ALT、20ARU、20ALUと、シート10の中央部Xに位置する中央部持ち手20BR、20BLと、四隅の端部持ち手20ART、20ALT、20ARU、20ALUと中央部持ち手20BR、20BLとの間に位置する中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3、20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3とから構成される。
【0019】
本実施例では、シート10の長手方向の一方には、一対の端部持ち手20ART、20ALTが配置され、シート10の長手方向の他方には、一対の端部持ち手20ARU、20ALUが配置するが、一方若しくは他方、又は一方及び他方を2対で構成してもよい。
また、本実施例では、一対の中央部持ち手20BR、20BLを設けた場合を示しているが、2対又は3対設けてもよい。
また、本実施例では、シート10の一方に位置する一対の端部持ち手20ART、20ALTと一対の中央部持ち手20BR、20BLとの間には、3対の中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3を有し、シート10の他方に位置する一対の端部持ち手20ARU、20ALUと一対の中央部持ち手20BR、20BLとの間にも、3対の中間部持ち手20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3を有する場合を示しているが、一方若しくは他方、又は一方及び他方を2対又は4対で構成してもよい。
シート10の長手方向長さを1800〜1850mm、シート10の幅を600〜630mmの範囲とした場合には、9対の持ち手20で構成することが好ましい。
【0020】
一対の端部持ち手20ART、20ALTの間は、シート10の中央部X側が広くなるように、端部持ち手20ART、20ALTを、長手方向中心線Yに対して角度を持って配置している。
また、一対の端部持ち手20ARU、20ALUの間は、シート10の中央部X側が広くなるように、端部持ち手20ARU、20ALUを、長手方向中心線Yに対して角度を持って配置している。
ここで、端部持ち手20ART、20ALT、20ARU、20ALUの長手方向中心線Yに対する角度は、10°より大きく90°より小さくし、より好ましくは20°より大きく40°より小さく、本実施例で示す30°が最も好ましい。
なお、端部持ち手20ART、20ALT、20ARU、20ALUの角度として説明したが、握り部22の長手方向中心線Yに対する角度が重要であり、長孔21の形状にとらわれない。
【0021】
一対の中間部持ち手20CRT1、20CLT1の間は、シート10の中央部X側が広くなるように、中間部持ち手20CRT1、20CLT1を、長手方向中心線Yに対して角度を持って配置している。
また、一対の中間部持ち手20CRT2、20CLT2の間は、シート10の中央部X側が広くなるように、中間部持ち手20CRT2、20CLT2を、長手方向中心線Yに対して角度を持って配置している。
また、一対の中間部持ち手20CRT3、20CLT3の間は、シート10の中央部X側が広くなるように、中間部持ち手20CRT3、20CLT3を、長手方向中心線Yに対して角度を持って配置している。
なお、シート10の一方に配置する中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3について説明したが、他方に配置する中間部持ち手20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3についても同様である。
ここで、中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3、20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3の長手方向中心線Yに対する角度は、端部持ち手20ART、20ALT、20ARU、20ALUの長手方向中心線Yに対する角度より小さくし、より好ましくは5°より大きく30°より小さく、本実施例で示す10°が最も好ましい。
【0022】
また、本実施例では、全ての中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3、20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3の角度を同じ角度として説明したが、それぞれが異なる角度で構成されてもよい。
例えば、一対の中間部持ち手20CRT1、20CLT1は、一対の中間部持ち手20CRT2、20CLT2よりも大きな角度とすることが好ましく、20CRT2、20CLT2は、一対の中間部持ち手20CRT3、20CLT3よりも大きな角度とすることが好ましい。
同様に、一対の中間部持ち手20CRU1、20CLU1は、一対の中間部持ち手20CRU2、20CLU2よりも大きな角度とすることが好ましく、20CRU2、20CLU2は、一対の中間部持ち手20CRU3、20CLU3よりも大きな角度とすることが好ましい。
なお、中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3、20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3の角度として説明したが、握り部22の長手方向中心線Yに対する角度が重要であり、長孔21の形状にとらわれない。
一対の中央部持ち手20BR、20BLは、長手方向中心線Yに平行に配置している。
なお、中央部持ち手20BR、20BLとして説明したが、握り部22の長手方向中心線Yに対する角度が重要であり、長孔21の形状にとらわれない。
【0023】
一対の持ち手20の間のシート10の裏面には、ベルト通し部40RT、40LT、40RU、40LUを設けている。本実施例では、中間部持ち手20CRT2、20CLT2の間にベルト通し部40RT、40LTを設け、中間部持ち手20CRU2、20CLU2の間にベルト通し部40RU、40LUを設けている。
図2及び
図3では、ベルトを装着した状態を示している。
本実施例のように、ベルト通し部40RT、40LT、40RU、40LUを設けることで、ベルト通し部40RT、40LT、40RU、40LUに通したベルト41T、41Uを、持ち手20に形成した長孔21に通すことができ、ベルト41T、41Uのずれを防止することができるとともに、握り部22を塞ぐことなく被搬送者の固定を行うことができる。
【0024】
以上のように、本実施例によれば、中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3、20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3を長手方向中心線Yに対して角度を持って形成することで、搬送者の手首への負担と必要握力を低減できる。
また、本実施例によれば、端部持ち手20ART、20ALT、20ARU、20ALUは、中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3、20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3よりも大きな角度で形成している。
従って、
図4に示すように、搬送負担を低減できるとともに、被搬送者に対して背骨を曲げる方向への反りを低減して被搬送者を包み込む反りを発生させることができ、被搬送者への圧迫感を低減できる。
また、本実施例によれば、中央部持ち手20BR、20BLを、長手方向中心線Yに平行に配置したことで、中央部Xに臀部を位置させた時に、搬送者の手首への負担と必要握力を低減できる。
【0025】
図5及び
図6に示すように、握り部22は、シート10で円柱形状の芯材23を覆って構成する。握り部の直径は15〜22mmとしている。芯材23を用い、この芯材23の直径を15〜22mmとすることで、握りやすく必要握力を低減できるとともに、シート10に対する剛性を持たせることができる。
また、シート10が撥水性や防水性を有する場合には、シート10で芯材23を覆うことで、芯材23の汚れ、特に、血液や失禁による汚れの付着を防止できる。
芯材23は、使用時に大きな湾曲を伴わない程度の剛性を有していることが好ましく、複数本のロープを撚った綱であってもよく、中空であっても中実であってもよい。また、芯材23の断面外形は、円形以外に楕円形であってもよく、均一な断面形状でなくてもよい。
【0026】
図7に折り曲げ位置W、Yを示している。なお、本実施例では、長手方向中心線Yも折り曲げ位置としている。
本実施例では、隣接する持ち手20の間には剛性を有する部材を配置しないことで、隣接する持ち手20の間の位置W、Yで折りたたむことができる。
図8に示すように、本実施例によれば、シート10をコンパクトに折りたたむことができ、持ち運びの負担軽減を図ることができる。
【0027】
次に、持ち手を傾斜させることによる搬送者の手首への作用について以下に説明する。
図9は比較例として持ち手を傾斜させない場合の手首の状態を示す説明図、
図10は本実施例による持ち手を傾斜させた場合の手首の状態を示す説明図である。なお、以下の説明では、中間部持ち手20Cの場合で説明する。
図9及び
図10は、被搬送者の頭部側が高くなるようにした搬送状態を示しており、上体側のシート10の水平面に対する角度をθとしている。実際の現場では、被搬送者は、座位姿勢や臀部の落ち込みにより、図示のように体幹が屈曲した姿勢が多いため、上肢の傾斜角度(以下、上肢傾斜角度)をθと仮定してモデル化して検討を行っている。
図9に示すように、中間部持ち手20Cは上肢傾斜角度θとなるため、搬送者は中間部持ち手20Cを水平にするために、上肢傾斜角度θだけ中間部持ち手20Cを曲げる力が必要となる。
これに対して、
図10に示すように、中間部持ち手20Cを長手方向中心線Yに対してあらかじめ持ち手角度θ
Gだけ傾斜させておくことで、搬送者は中間部持ち手20Cを水平にするために、角度(θ−θ
G)だけ中間部持ち手20Cを曲げればよい。
【0028】
図11は、上肢傾斜角度θと仮定した場合における持ち手に加わる力を示している。
図11に示すように、頭部が位置する端部持ち手20ATにはF
1、脇腹部が位置する中間部持ち手20CTにはF
2、大腿部が位置する中間部持ち手20CUにはF
3の力がかかる。
【0029】
図12は、脇腹部が位置する中間部持ち手20CTに加わるF
2に対する保持力を示している。
図11に示す姿勢を維持したまま搬送するには、搬送者は、F
2と同等の保持力F
2′(以下、必要保持力)を発揮する必要がある。必要保持力F
2′は、中間部持ち手20CTに垂直方向に必要な力F
A(以下、必要垂直保持力)と、中間部持ち手20CTに対して水平方向に必要な保持力F
B(以下、必要水平保持力)とに分力される。
F
Bを、F
2、θを用いて表すと、式1のように示される。
F
B=F
2×sinθ・・・・・式1
必要水平保持力F
Bは、手を滑らせる方向の力であり、また手首を捻る方向に回転させようとする力(モーメント)でもあるため、増大すれば、手首に負担がかかる。
【0030】
図13は、手首に加わる力を示す説明図である。
手首の仮想回転中心をP、仮想回転中心Pから握り位置までの距離をLとすると、手首にはF
B×Lのモーメントが加わる。
【0031】
図14は、中間部持ち手20CTを長手方向中心線Yに対してあらかじめ持ち手角度θ
Gだけ傾斜させた場合の中間部持ち手20CTに加わるF
2に対する保持力を示している。
必要保持力F
2′は、必要垂直保持力f
Aと、必要水平保持力f
Bとに分力される。
必要水平保持力f
Bを、F
2、θ、θ
Gを用いて表すと、式2のように示される。
f
B=F
2×sin(θ−θ
G)・・・・・式2
持ち手角度θ
Gを10°とした場合には、式1、式2から、F
Bとf
Bの関係式は、次の関係で示される。
5°<θ<95°の範囲において、
F
2×sinθ>F
2×sin(θ−10°)
F
B>f
B・・・・・式3
よって、上肢傾斜角度θが5°から95°の範囲においては、本実施例の必要水平保持力f
Bの方が比較例の必要水平保持力F
Bより小さくなる。
【0032】
仮に、上肢傾斜角度θが30°、中間部持ち手20CTにかかる力F
2が15kgであるとすると、本実施例と比較例との中間部持ち手20CTに水平方向に必要な保持力は、
F
B=F
2×sinθ=15×sin(30°)=7.5kg
F
B=F
2×sin(θ−θ
G)=15×sin(30°−10°)=5.1kg
よって、上肢傾斜角度が30°の場合、本実施例と比較して、比較例の必要水平保持力F
Bは32%減少する。
【0033】
同様にして、上肢傾斜角度θを0°から45°まで変化させた場合の必要水平保持力を
図15に示す。
図15に示すように、上肢傾斜角度θが5°未満では、本実施例の必要水平保持力f
Bが大きくなるが、5°より大きくなれば必要水平保持力f
Bが小さくなる。
なお、中間部持ち手20CTについて検証を行なったが、被搬送者の大腿や下腿部を保持する場合にも、同様の関係が成り立つ。
【0034】
次に、模擬搬送による評価結果を示す。
図16は模擬搬送の方法を示す階段上方からの写真、
図17は同模擬搬送の方法を示す階段下方からの写真、
図18は同搬送方法の評価結果を示す図である。
模擬搬送で用いた本実施例の折りたたみ式担架は、外形長さ1830mm、外形幅622mm、内径幅(中央部持ち手20BR、20BLの長孔21間のシート10幅)480mmのシート10を用い、端部持ち手20ATの長手方向中心線Yに対する角度を30°、中間部持ち手CTの長手方向中心線Yに対する角度を10°とし、握り部の直径は20mmである。握り部の総数は、
図1〜
図3に示すとおり、9対18個設けている。
熟練者4名と非熟練者14名を被験者とし、3名での階段搬送を模擬し、本実施例と比較例とのどちらが使い易いかを評価して頂いた。評価者の保持位置は、傷病者の側面とした。批搬送者は、身長178cm、体重65kgの成人男性とした。またいずれの被験者にも先入観を与えないため本実施例と比較例との違いを説明せずに搬送して頂いた。
図18に示すように、半数以上の被験者が本実施例が使い易いという評価を得ることができた。
【0035】
シート10の四隅に位置する端部持ち手20ART、20ALT、20ARU、20ALUは、担架全体の剛性を出すためには側面に設けた持ち手(中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3、20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3、中央部持ち手20BR、20BL)と同じ角度とすることが好ましいが、本実施例では、シート10の四隅に位置する端部持ち手20ART、20ALT、20ARU、20ALUを、長手方向中心線Yに対して角度を持たせることで、担架全体の剛性保持と、搬送者の保持のしやすさとを両立させることができる。担架全体の剛性を保持することで、被搬送者の体の沈みが減少し、被搬送者への圧迫感を抑制することができる。
また、本実施例では、中間部持ち手20CRT1、20CLT1、20CRT2、20CLT2、20CRT3、20CLT3、20CRU1、20CLU1、20CRU2、20CLU2、20CRU3、20CLU3についても傾斜させることで、搬送者の手首にかかる力と必要握力を減少させ、持ちやすくすることができる。
また、本実施例のように、持ち手20を9対、18個設けることで、被搬送者の体格や体位に応じて持つ位置を選択でき、無理な姿勢を緩和でき、負担の少ない体制となるように持ち手20を選択することができる。また、被搬送者を、膝を曲げた状態と、膝を伸ばした状態とのいずれでも、持ち位置を選択することで対応することができる。
また、本実施例のように、持ち手20に芯材23を用いることで、持ち手20の食い込みを押さえることができ、力が入りやすい。
また、本実施例のように、持ち手20をシート10外縁よりも内方に形成し、シート10外方にリング状にはみ出さないことで、シート10の垂れ下がりを防ぐことができ、また被搬送者の保持面幅を確保することができる。
【0036】
次に、本発明の他の実施例による折りたたみ式担架について説明する。なお、基本構成は上記実施例と同じであるので、相違点だけを以下に説明する。
被搬送者の身体が、階段等の搬送中に傾斜することにより、担架からずり下がることがある。被搬送者がずり下がると被搬送者本人が不安を感じるのみならず、重心がずれることにより、安定感を失うことで搬送者にも負担となる。
そこでシート10に滑り防止部を設けることで、被搬送者の臀溝(脚の付け根)が引っかかり、滑りを防止することができる。
図19は、本発明の他の実施例による折りたたみ式担架の平面図である。
本実施例では、シート10の中央部Xに、幅方向(長手方向中心線Yに対して垂直方向)のスリット(切込み)51を滑り防止部として設けたものである。スリット51は、中央部持ち手20BR、20BLの間に位置させている。スリット51の両端には、孔61を設けることが好ましい。本実施例によれば、スリット51をシート10の中央部Xに設けることで、被験者の頭がシート10のいずれの側であっても、被搬送者の臀溝をスリット51に引っかけることができる。また、孔61によってスリット51の開きを大きくすることができるとともに、スリット51の両端からの裂けを防止することができる。
【0037】
図20は、本発明の更に他の実施例による折りたたみ式担架の平面図である。
本実施例では、シート10の中央部Xに対称に、幅方向(長手方向中心線Yに対して垂直方向)の二本のスリット(切込み)52A、52Bを滑り防止部として設けたものである。スリット52Aは、中央部持ち手20BR、20BLと中間部持ち手20CRT3、20CLT3との間、スリット52Bは、中央部持ち手20BR、20BLと中間部持ち手20CRU3、20CLU3との間に位置させている。スリット52A、52Bのそれぞれの両端には、孔62A、62Bを設けることが好ましい。本実施例によれば、スリット52A、52Bをシート10の中央部Xに対称に設けることで、被験者の頭がシート10のいずれの側であっても、被搬送者の臀溝をスリット52A、52Bに引っかけることができる。また、孔62A、62Bによってスリット52A、52Bの開きを大きくすることができるとともに、スリット52A、52Bの両端からの裂けを防止することができる。
なお、本実施例によれば、二本のスリット52A、52Bによって、スリット52A、52Bの間には、使用状態において凹部が形成され、この凹部についても、滑り防止部として機能する。
【0038】
図21は、本発明の更に他の実施例による折りたたみ式担架の平面図である。
本実施例では、シート10の中央部Xに、幅方向(長手方向中心線Yに対して垂直方向)のスリット(切込み)53A、53Bを滑り防止部として設けたものである。スリット53A、53Bは、中央部持ち手20BR、20BLの間に同一線上に位置させている。スリット53A、53Bの両端には、孔63A、63Bを設けることが好ましい。本実施例によれば、スリット53A、53Bをシート10の中央部Xに設けることで、被験者の頭がシート10のいずれの側であっても、被搬送者の臀溝をスリット53A、53Bに引っかけることができる。このとき、一方の臀溝をスリット53Aで、他方の臀溝をスリット53Bで保持することができる。また、孔63A、63Bによってスリット53A、53Bの開きを大きくすることができるとともに、スリット53A、53Bの両端からの裂けを防止することができる。
【0039】
図22は、本発明の更に他の実施例による折りたたみ式担架の平面図である。
本実施例では、シート10の中央部Xに、滑り防止部として角度の異なるスリット54A、54BをV字型に設けたものである。スリット54A、54Bは、中央部持ち手20BR、20BLの間に位置させている。スリット54A、54Bの端部には、孔64A、64Bを設け、スリット54Aとスリット54Bとの交点には孔64Cを設けることが好ましい。本実施例によれば、スリット54A、54BをV字型に設けることで、臀部の丸みに近い形状で、臀部を保持することができる。また、孔64A、64B、64Cによってスリット54A、54Bの開きを大きくすることができるとともに、スリット54A、54Bの両端からの裂けを防止することができる。
【0040】
図23は、本発明の更に他の実施例による折りたたみ式担架の平面図である。
本実施例では、シート10の中央部Xに、滑り防止部としてスリット55をU字型に設けたものである。スリット55は、中央部持ち手20BR、20BLの間に位置させている。スリット55の端部には、孔65A、65Bを設けることが好ましい。本実施例によれば、スリット55をU字型に設けることで、臀部の丸みに近い形状で、臀部を保持することができる。また、孔65A、65Bによってスリット55の開きを大きくすることができるとともに、スリット55の両端からの裂けを防止することができる。
【0041】
図24は、本発明の更に他の実施例による折りたたみ式担架の平面図である。
図24は、
図19に示すスリット51を設け、更にスリット51の位置に対応させてシート10の裏面にカバー71を設けたものである。スリット51の下面にカバー71を設けることで、搬送時に臀部が床面等で擦れることを防止することができる。
ここで、カバー71は、両端をシート10に接合するが、使用状態でスリット51が十分に開口するように、シート10に対してたるみを持たせておくことが好ましい。
なお、本実施例では、
図19に示すスリット51を用いて説明したが、
図20から
図23に示す実施例においても適用することができる。
【0042】
図25は、本発明の更に他の実施例による折りたたみ式担架の平面図である。
本実施例では、シート10として2枚のシート部材10A、10Bを用い、2枚のシート部材10A、10Bを中央部付近で重ね合わせ、一方のシート部材10Aの端部の両側10Cを他方のシート部材10Bに接合したものである。接合された両側10Cの間には、シート部材10Aの端部による滑り防止部56が形成される。滑り防止部56の下には、シート部材10Bが存在することで、搬送時に臀部が床面等で擦れることを防止することができる。
【0043】
図26は、比較例による折りたたみ式担架の平面図である。
比較例では、シート10の中央部付近に、長手方向中心線Yの方向にスリット57を設けたものである。スリット57の端部には、孔67を設けている。比較例によれば、スリット57を設けることで、臀部の落ち込みを生じるが、
図19から
図25に示す滑り防止部と比較すると、滑り止めの効果は低い。